三十四話 さらばデジタルワールド・・・・

 

 

「お前の思い通りにはならないぞ!!」

太一がアポカリモンに宣言し、子供達もそしてデジモン達も皆、アポカリモンを睨む。

「バカな!?紋章無で進化できるとは・・・・」

アポカリモンには信じられなかった。

体を構成するデータを分解をされ、さらに紋章も無しに進化してこの自分の目の前に戻って来たのだから、それも当然といえば当然であった。

「さあ、みんな行くぞ!!」

「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」

子供達は自身のパートナーデジモンの背に乗り、アポカリモンへ立ち向かう。

「死ねぇ!!」

アポカリモンが触手を伸ばしてくる。

「ハンマースパーク!!」

ズドモンの攻撃がアポカリモンの触手の一つを破壊する。

「触手は僕達に任せてくれ!!」

「アタシ達も・・リリモン!!」

「ええ」

リリモンのフランカノンが更にもう一つの触手を破壊する。

しかし、背後から触手が迫ってきた。

そこを、

「ヘブンズゲート!!」

「ホーリーアロー!!」

二体の天使デジモンが破壊する。

丈、ミミ、タケル、ヒカリ、ズドモン、リリモン、ホーリーエンジェモン、エンジェウーモンの四組が触手の相手をし、

太一、ヤマト、良介、ウォーグレイモン、メタルガルルモン、スレイヤードラモンの三組がアポカリモン本体の攻撃にまわり、空、光子郎、ガルダモン、アトラーカブテリモンの二組がその護衛にまわった。

「おれの!!プラグボム!!」

アポカリモンはナノモンの必殺技で行く手を阻む。

 

ナノモン 完全体 マシーン型デジモン 属性 ウィルス

超小型の治療用マシーンデジモン。

もともとはクラッシュしたコンピュータを修復するためのワクチン的なデジモンだったが、強力なウィルス型デジモン、エテモンに攻撃を受けたときに思考回路が破壊され暴走してしまった。

正常に作動しているコンピュータでも勝手にデータを再構築し(もちろんメチャメチャに)、狂わしてしまう。あらゆるデータの破壊を得意とし、どんなに強いデジモンでもナノモンの前では体を構成するデータをいとも簡単に破壊されてしまうだろう。

必殺技は指先から発射される『プラグボム』。

 

「シャドーウィング!!」

ガルダモンが必殺技でプラグボムを破壊していき、血路を開く。

「おのれ!!ムゲンキャノン!!」

「今度はワテの番やな!?ホーンバスター!!」

アトラーカブテリモンがアポカリモンのムゲンキャノンが発射される前にムゲンドラモンの形をした触手を破壊する。

「ぬおっ!?」

「止めだ!!」

「くらえ!!」

「これで終わりだ!!」

「ガイアフォース!!」

「コキュートブレス!!」

「昇竜斬波!!」

三つの技がアポカリモンに向かって放たれた。

三つの技は見事アポカリモンの本体へ命中した。

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!」

アポカリモンは断末魔の悲鳴をあげ、上部の人型部分が消滅した。

「やったぞ!!」

「これで終わりだ!!」

「ふふ・・それで勝ったつもりか?」

正十二面体状態のアポカリモンが不敵なセリフを吐く。

「ああ、これで終わりだ」

「確かに我々は滅びる。だが、ただでは滅びん!!」

アポカリモンが暗く、点滅を始めた。

「お前達も・・・・この世界も道連れにしてやる!!くらえ、これが最大最強の必殺技!!グランデスビッグバン!!」

アポカリモンは残る正十二面体の部分も周辺の空間もろとも自爆した。

アポカリモンが自爆した事により空間に大きな歪みが発生した。

「自爆しやがった!?」

「そんな!?」

「ここまでなの!?」

「いや、終わりじゃない!!」

「そうだ、終わらない!!」

「諦めない!!」

「だって・・・・」

「私たちには・・・・」

 

 

「「「「「「「「「明日があるから!!」」」」」」」」」

 

 

その時、デジヴァイスから光が伸び、爆発を包み込んだ。

良介以外のデジヴァイスから出た八つの光は結界の様なモノを作り、爆発を封じ込め、その中心点には鍵穴の様なものが現れ、

「良介・・・・」

「スレイヤードラモン・・・・分かっている・・・・」

良介のデジヴァイスから光がその鍵穴へ導かれるように行き、やがて鍵を閉めるかのように入ると、爆発を起こすことなく完全に消滅した。

「今のは!?」

「爆発はどうなったの?」

「封じ込めたのでしょう・・・・デジヴァイスの力が働いて・・・・」

「じゃあ俺達勝ったのか!?」

「そのようだな・・・・」

「ってことは世界の滅亡も・・・・」

「食い止めたってことね!!」

「うん!!」

「おーい、オマエらー!!」

「あ、オーガモンにアンドロモンたちまで」

オーガモンが棍棒を振りながら、アンドロモンがエレキモンを抱きながら皆の下へやってきた。

「やったな!!」

「本当に、ありがとう」

「ミミちゃん、ありがとう」

「「やったな!!」」

アポカリモンが消滅し、世界の歪みが正されると、地球に現れていたデジモンたちも消えていき、世界が元に戻っていく。

地球から見えていたデジタルワールドも見えなくなり、普段と変わらない空模様となった。

 

「お主達の世界も救われた様じゃな?」

メカノリモンに乗ったゲンナイが飛んできた。その隣にはケンタルモンもいる。

「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」

「ねぇデジタルワールドはどうなるの?」

タケルが今後のデジタルワールドはどうなるのか、ゲンナイに尋ねる。

「足元を良く見て御覧」

ケンタルモンがそう言って皆が自分達の足元を見ると、ファイル島が再構築されていた。

「デジタルワールドは新たな天地創造をむかえているようじゃ」

「あの光は?」

「デジモンたちも復活しておるのかも知れんな」

「なら、いってみようぜ!!」

「「「「「「「「「うん!!」」」」」」」

 

皆は再構築されたファイル島の中にあるはじまりの町へと向かった。

「も、元に戻っている!!町が元に戻っている!!」

エレキモンが嬉しそうに言う。

「あー、デジタマがいっぱいだ!!」

空からは沢山のデジタマがふってきていた。

エレキモン、タケル、パタモンはデジタマを優しそうに、そして大切そうに撫でる。

「何してんの?」

良介とヒカリがタケル達に近づき、ヒカリがタケル達に何をしているのかを尋ねる。

「デジタマを孵化すのさ」

エレキモンが答える。

「これ、みんな孵すの?」

「そうさ、デジタルワールドの未来はここから始まるんだ!!」

「二人もやってみる?」

「まあ、やってみるか?」

「そうだね」

良介とヒカリはタケル達に習ってデジタマを撫でた。

 

「そうだ、みなさん、写真を記念にどうですか?」

アンドロモンが記念写真を撮ろうと提案してきた。

「いいですね!!」

「そうじゃのう、記念に一枚・・・・」

全員が集まり、アンドロモンが写真を撮った。

 

「さて、俺はもう行くかな」

オーガモンは記念写真を撮った後、江戸時代の旅人の様な縦縞のマントに三度傘を被っていた。

「オーガモン・・・・」

「俺は旅に出るぜ!!」

「そんな、みんなで一緒に・・・・」

「いや、俺は一匹狼が性に合っているからな、それに誇り高き、ウィルス種の俺がワクチン種やデータ種の連中と一緒にはいられん」

(前世の俺もあんな感じだったのかな?)

オーガモンを見て、ふと前世の自分の姿を重ねる良介。

「そうか・・・・じゃあ、またな」

「おう、それじゃあ達者でな」

そう言ってオーガモンは颯爽と当てもない旅へと出かけて行った・・・・。

 

 

オーガモンを見送った後、

「此処で私達、初めてデジタルワールドで一夜を過ごしたのよね・・・・」

空が懐かしみながら、湖の畔で皆に聞こえる様に言った。

「そうです。ガブモンがガルルモンに進化して、シードラモンと戦った場所です」

光子郎が、あの日居なかった良介とヒカリにデジタルワールドで過ごした初めての夜の事を説明をした。

「色々あったけどさ、楽しかったね!帰ったら僕達、英雄かな?」

「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」

丈が立ち上がって皆にそう言うが、皆は空気が重くなって何も言えなかった。

「丈ぉ〜」

ゴマモンがこの気まずい空気の中、丈に「お前空気読めよ」みたいに注意した。

「で、でも、また帰ってくれば!」

「「「「「「「「・・・・」」」」」」」」

丈は必死に空気を変えようとしたが、更に空気を重くした。

「丈ぉ〜」

「そっか、帰ってきてもダメなんだ。・・僕達の世界とデジタルワールドの時間の進みは違うから、生きてまた会えるかどうか分からないんだ。・・・・ごめん」

丈は俺達に反省した声で謝ってきた。するとヤマトが突然、手を枕にして仰向けに寝転がった。

「夏休みはまだまだ残っていたよな? 俺さ、夏休みの間はコッチの世界で過ごそうと思うんだ」

ヤマトがそう言うと、皆の目が期待に満ちた目になった。

「あっ、それ良い考えかも」

「お兄ちゃんが残るなら、僕も残るよ!」

「わ、私も!」

「ぼ、僕もです!」

「私もよ!」

「ぼ、僕だって!」

「私も!良いでしょ、お兄ちゃん?」

「ん?ああ勿論だ!良介、お前も残るだろう?」

「え、ええ・・・・」

「じゃあデジタルワールドで過ごせる時間は、僕達の世界の一分がデジタルワールドで一日と考えて、四週間だから・・・・」

 光子郎が暗算で、この世界に居られる日数を計算し始めた。

(いや、普通は無理じゃね?暗算で計算するのは?あ、でも、アリサなら出来そうだな)

「暗算なら僕に任せてくれ!えっと・・・・」

(此処にも居たよ、アリサ並みに暗算が出来る人が・・・・)

「ざっと110年だ!!」

「そんなに!?」

ミミが丈の答えに驚きの声をあげる。

(いや、それだけこの世界に居たら、人間である俺達普通に寿命で死んじゃうから)

でも、長くこの世界に居られる事は分かった。

「そんなにあるのか!?」

ヤマトは体を起こして、驚きながら聞いた。

「それだけあれば、また新しい旅が出来るわね!!」

空が声の高さを上げて、皆を見てそう言った。

「ああ!さぁ行こうぜ、新しい冒険だ!!」

 太一は立ち上がって、腕を上げてそう言った。

「「「「「「「「おぉ!!」」」」」」」」

皆が腕を上げて、そう叫んだ。

 

「ん?あれ?」

アグモンが太陽を見ながら、首を傾げた。

「日食ですね」

皆が見た太陽は、皆既日食の様に太陽に影が出来ていた。

「お主達に言わねばならん話がある」

ゲンナイが気まずそうに言ってきた。

「話?良い話?悪い話?」

ミミは、ゲンナイに不安そうな顔をしながら聞いた。するとゲンナイは、暗い顔をした。

「多分・・・・悪い話じゃ」

「えぇ!!」

ゲンナイの答えを聞いて、皆が声を出して驚いた。

「まず初めに、アポカリモンの影響でお主達とデジタルワールドの時間の進みが一緒になった。」

「そ、それでも、俺達の夏休みはまだ大分残っているんだ。それ位なら大丈夫だよ。」

ヤマトは、ゲンナイの言葉を聞いてそう応えた。しかし、ゲンナイの顔を暗いままだった。

「あの日食は、お主達の世界とデジタルワールドを結ぶゲートなのじゃ。お主達は、このゲートを使って帰らねばならん。」

「つ、次のゲートが開いた時にでも帰るさ。」

太一は、動揺しながらゲンナイさんに言った

「次のゲートが開くのは何時なのか、ワシ等でも分からんのじゃ。何年、否、何十年、否下手した何百年後かもしれないんじゃ」

「それでも残ると言ったら!?」

「ヤマト・・・・」

ヤマトは最後の最後迄諦めずにゲンナイに聞いた。

「この世界がお主等を異物として消去するじゃろう」

「「「「「「「「「・・・・」」」」」」」」」

ゲンナイの言葉を聞いて、皆も顔を下げた。

 

 

空とピヨモンは湖の近くの木の枝に乗っていた。

(ゲンナイさんに言われて別れの挨拶をしようと思ったけど、何を話したら良いのか全然頭に浮かんでこない。只でさえ、時間が限られているって言うのに・・・・)

「向こうに帰ったら、お母さんによろしくって言っておいてね」

ピヨモンが、何時もと違って元気の無い声で空にそう言ってきた。

(ピヨモンのお陰でお母さんと誤解が解けた・・・・ちゃんとお礼を言わないと・・・・)

「ピヨモン、私ね、ピヨモンのお陰でお母さんと誤解が解けたの」

空がそう言うと、ピヨモンは驚いた顔をした。

「ほ、ホント?私、空に甘えっぱなしだったから、迷惑を掛けていたって思っていた」

「そんな事ないよ。ピヨモンは、私にとって大切なパートナーよ」

空とピヨモンは、目に涙を溜めて抱き合った。

 

丈とゴマモンは、湖の近くに座っていた。

「い、色々あったけどさ、本当に楽しかったよ。ありがとう、ゴマモン」

「どういたしまして・・・・」

ゴマモンは笑いながら丈に言った。

丈は右手をゴマモンの前に出した。

ゴマモンは、丈の右手を見て?マークを頭に浮かべていた。

「握手だ、握手をしよう、ゴマモン」

丈がそう言うと、ゴマモンは頷いて右の前足を自分の体で拭いて、丈の右手を掴んできた。

「あっ!?やっぱりそれって手だったんだ・・・・」

丈がそう言うとゴマモンは怒った顔をしたが、直ぐに笑顔になった。

「「アハハハハハ」」

丈とゴマモンは握手をしながら声を出して笑った。

 

光子郎とテントモンは、路面電車の中におり、光子郎は帰る準備をしていた。

「テントモン」

「光子郎はん・・・」

テントモンは、今にも泣きそうな声で光子郎の名前を呼んだ。

「今迄、お世話になりました。」

「アラァ!!」

テントモンは光子郎の言葉を聞いて、床に倒れた。

「て、テントモン!?」

光子郎は直ぐにテントモンを椅子に座らせた。

「光子郎はんは、最後の最後迄他人行儀なんですな。せやけど、何時かは他人行儀じゃなくなりますやろ。」

「僕もそうなったら・・・」

光子郎は涙を流してテントモンを抱き締めた。テントモンも、泣きながら光子郎を抱き締め返してくれた。

 

「うわぁぁぁぁあん!!!」

「なかないで、タケルぅ!!!」

 タケルとパタモンは、湖の近くの花畑で大声を出して泣いていた。

「だって!!だってぇ!!」

「ぼくたちの世界とタケルたちの世界の時間の流れ一緒になったから、いつかまた必ず会えるよぉ!!!」

「ホント?」

タケルは泣くのを止めて目に涙を溜めて、隣に居るパタモンに聞いた。するとパタモンも、泣くのを止めて目に涙を溜めてタケルを見てきた。

「デビモンの時だって、また会えたでしょ?」

パタモンがデビモンの時の事を言ってきた。

あの時はエンジェモンが『何時かまた会える』って言ってくれた・・・・。

「あの時はまた会えるって信じていたから・・・・」

「じゃあ今回もまた会えるって信じてよ!!僕もタケルとまた会える事を信じるからさ!!」

(パタモン・・・・そうだよね、信じていたら必ずまた会えるよね!!)

「約束だよ、必ず会おうね!!」

「うん!!」

タケルとパタモンは笑って握手して約束した。

 

ヤマトとガブモンは、湖の近くの丘の上に座っていた。

しかし、二人は無言のまま・・・・。

「ヤマト?」

ガブモンは、何時もの元気のある声じゃなく、元気の無い声でヤマトに話し掛けてきた。ヤマトは視線を変えずにガブモンに聞いた。

「何だ?」

「最後にもう一度聴かせてほしいんだ・・・・ヤマトのハーモニカの音色を・・・・・」

「分かったよ・・・・」

ヤマトはそう言ってポケットからハーモニカを取出しハーモニカを吹いた。

 

太一の耳には遠くからヤマトのハーモニカの音色が聴こえてきた。

「ったく、ヤマトの奴は・・・・」

太一はそう言うと、目から涙が出てきた。

「どうしたの、太一?」

少し離れた場所から、アグモンが聞いてきた。

「な、何でもないよ!」

太一は涙を手で拭いて、アグモンの所に向かった。

「此処だよね、太一?僕がベビーフレイムで、薪に火を付けた場所は。」

アグモンがあの日を思い出しながら、太一に聞いてきた。

「そうだな。そしてその薪の所為で、シードラモンを怒らせたんだ。」

太一はアグモンに抱き付きながらそう言った。するとアグモンは、顔を傾けた。

「あれ?それって僕の所為だっけ?」

「違うわ。俺がシードラモンの尻尾を薪の中に入れて、それで怒らせたんだ。」

太一は笑いながらアグモンにそう言った。

「もう太一!」

アグモンは太一に怒りながらも、太一と一緒で笑ってくれた。

 

ヒカリはテイルモンと共に、湖の近くの林に来ている。

「これをあげる。」

ヒカリは首に掛けていたホイッスルを、テイルモンの首に掛けた。

「い、良いのか、ヒカリ?」

テイルモンが不安そうにヒカリに聞いてきた。

「うん!凄く似合っているよ。」

ヒカリは笑顔でテイルモンにそう言うと、テイルモンは頬を赤くした。

「ありがとう。それじゃあ、ヒカリ」

「うん、またね。」

ヒカリがそう言うと、テイルモンは不思議そうな顔をした。

「また?」

「そう、また・・・・」

ヒカリがそう言うと、テイルモンはヒカリの言葉の意味を理解してくれた。

「ええ、また・・・・」

テイルモンがそう言ってくれたので、ヒカリは笑顔になった。

 

良介とドラコモンは湖の近くに流れる小川に来ていた。

「ドラコモン・・・・お前はどうする?」

「僕は・・・・この世界に残るよ・・・・」

「そうか・・・・それが自分で決めたことならいいと思うぞ・・・・今まで、こんな俺に付いて来てくれてありがとな。何時も、お前を危険な目に合わせちまったモンな・・・・ホントにスマン」

「まったく、本当にそう思っているなら、今度からちゃんと自重した行動をとってよね!!」

「・・・・」

「何で無言なのさ!!ホントにこれじゃあおちおちデジタルワールドでのんびりと暮せないよ・・・・心配し過ぎて僕、禿げちゃうよ・・・・」

ドラコモンは、目に涙を溜めて言ってくれた。

「お前に毛は生えていないだろう・・・・」

「そうだね・・・・毛は生えていないね・・・・でも、本当に自分を大切にしてね・・・・僕は良介に長生きしてもらいたいんだからね・・・・」

「ドラコモン・・・・」

良介は涙を流しながらドラコモンを抱きしめた。

ドラコモンも泣きながら良介を抱き返してくれた。

そこへ。

「「おーい良介!!」」

「お、パンプモンにゴツモン」

パンプモンとゴツモンが手を振りながら良介に近づいてきた。

ドラコモンと良介は慌てて涙を拭った。

「どうした?二人とも?」

「えっと、お礼が言いたくて・・・・」

「俺達を助けてくれてありがとうな・・・・」

「そんな・・俺達も最後はお前さんの援軍には感謝しているぜ・・・・ありがとな・・・・」

「「さくらさんにもよろしくね・・・・」」

「ああ」

良介はパンプモン、ゴツモンと互いに握手した。

 

「パルモーン!!パルモーン!!」

ミミはパルモンの名前を叫びながら、林の中を歩いている。

ゲンナイの話を聞いた後、パルモンは何処かに行ってしまった・・・・。

自分達が此処に居られる時間は、もう余り無い。

別れも言えず、パートナーと別れるのはあまりにも辛い。

だからこそ、ミミはパルモンを必死に探していた。

「ミミ、どうしたゲコか?」

そこへ、ミミに話し掛ける者がいた。

ミミが振り返るとそこには二体のゲコモンがいた。

ミミはゲコモンならばパルモンの居場所を知っていると思い、パルモンの行方を聞いた。

「ねぇ、この辺りでパルモンを見なかった?」

「見てないゲコ」

「そう・・・・」

ミミはゲコモンの答えを聞いて、少し落ち込んだ。

「パルモーン!!パルモーン!!」

ミミはパルモンの名前を、さっきより大きい声を出してまた歩きだした。

路面電車がある小島・・・・

其処には、パルモン以外の全員が既に集まっていた。

「別れの挨拶は済んだか?コッチの準備は出来たぞ」

「それが・・・・」

「うわぁぁぁぁぁあああああん!!!!パルモンのバカバカバカァ!!!」

ゲンナイが選ばれし子供達に聞くと、空が意味有りげな顔でミミを見ると、ミミが大声を出して泣き出した。

「どうしたんじゃ、一体?」

ゲンナイは、ミミが泣いている理由を皆に聞いた。

「それが、パルモンが居なくなっちゃったんだ。」

アグモンが不安そうな顔をしながら、ゲンナイにミミが泣いている理由を言った。

「もう少しだけ、もう少しだけ待って欲しいんです!」

良介はゲンナイにそう言うが、ゲンナイは困った顔をしながら太陽を見た。

「じゃが、ゲートは待ってくれんよ。」

ゲンナイは、皆にそう言った。

 

場所は変わり、湖の近くの林の中・・・

其処には、一人座り込んで泣いているパルモンの姿が在った。

「ぅ、ぅぅ、ミミ・・・・ミミ・・・・」

「あっ、こんな所に居たゲコ!!ミミが捜していたゲコよ!」

パルモンの後ろから二体のゲコモン達が現れ、ミミが捜していた事をパルモンに教えた。

「知っている・・・・けど、会いたくない。」

パルモンはゲコモン達の顔を見ずにそう言った。

「ど、どうしてゲコか?」

ゲコモンは、パルモンがミミに会いたくない理由を聞いた。

もう二度と会えないかもしれないのだから、最後に会ってお別れを言わないといけないのに・・・・。

「ど、どうしてって、会ったら悲しくなるから・・・・会いたくないの!!」

パルモンの口からミミに会わない理由を聞いたゲコモン達は、

「ホントにそれで良いゲコか?」

「後悔しないゲコか?」

と、心配そうにパルモンに問い掛けた。

 

その頃、路面電車がある小島では・・・

「時間じゃ・・・」

等々、子供達がデジタルワールドから元の世界に帰らなければならない時間が来てしまった。

「うわぁぁぁぁぁあああああん!!!!」

ゲンナイが時間切れを告げると、ミミはまた大きな声を出して泣き出した。

「さぁ、速く電車に乗るんじゃ。」

ゲンナイに促され、九人の選ばれし子供は路面電車の中に乗った。そして、デジモン達が居る方の窓を開けた。すると、路面電車の向かう先がお台場になった。

「皆、元気でな・・・・」

「太一達こそ、元気でね・・・・」

太一が代表してデジモン達に言うと、アグモンが代表して選ばれし子供達に言った。

 

ピィー!!

 

テイルモンが発車の合図のようにヒカリから貰ったホイッスルを吹くと、路面電車が動きだした。

「「「「「「「「さよなら、さよならぁ!!!」」」」」」」」

ミミ以外の選ばれし子供達は、窓から顔を出して手を振りながらデジモン達に言った。

ミミは、パルモンが自分の見送りに来なかった事がショックで顔を見られまいと手で顔を隠しながら泣いていた。

すると、

 

ペタペタペタ(ry

誰かが走っている音がした。

「っ!?ミミちゃん!!」

空はそれに気付き、ミミに伝えた。

「うん!!」

ミミもその足音に気付き、窓から顔を出して走っている人物を見た。走っていたのは、先程迄姿を見せなかったパルモンだった。

パルモンは、泣きながら手を振って走っていた。

「ミミ、ミミィ!!!」

パルモンは泣きながらミミの名前を叫んでいた。

「パルモン!!!」

ミミはパルモンに手を振って合図をした。

「ミミ、ごめんなさぁい!!」

パルモンは先程の事を泣きながら謝った。

「良いの、パルモン!!さよなら!!」

ミミはパルモンに別れの言葉を言った。

「ミミィ、あっ!?」

するとパルモンは躓きコケてしまった。それと同時に、ミミが被っていたテンガロンハットが電車の外の宙を舞った。

「「「「「「「「「さよならぁ!!さよならぁ!!」」」」」」」」」」

すると、他のデジモン達も走りながら手を振って、選ばれし子供達に『さよなら』を言い続けていた。

「「「「「「「「「さよならぁ!!さよならぁ!!」」」」」」」」」

選ばれし子供達も、電車の窓から手を出して手を振りながら『さよなら』を言い続けた。

すると、デジモン達は走る道が無くなり、選ばれし子供達を乗せた電車はゲートへと入っていった。

こうして、選ばれし子供達とデジモン達の一夏の冒険は終わった・・・・。

しかし、選ばれし子供達とそのデジモン達は何時の日かきっと、再会する日がきっと在るだろう・・・・。

どんなに離れていてもまた会えると信じている心と・・・・

絆がある限り、ゲートはまた再び開くかもしれないのだから・・・・。

 

 

あとがき

これにてデジモンアドベンチャー無印編は終了です。

次回は映画版デジモンアドベンチャー、ウォーゲーム編へと突入します。

もう少し、デジモン編とお付き合い下さい。

では、次回にまたお会いしましょう。

 




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