十八話 デジタルワールドへ・・・・

 

 

突如、人々の目の前に出現したデジタルワールドに一度デジタルワールドを旅した太一達でさえ、戸惑いが隠せない中、

「ちょっと来てごらん」

携帯テレビを見ていたシンが皆を呼び寄せる。

「ご覧ください、これは特撮映画ではありません」

携帯テレビの画面の中にはゴリラに似たデジモンに翼をもった竜型のデジモン、赤いティラノサウルスに似たデジモン、そして先ほど見たクワガ―モンが映っていた。

 

ゴリモン 成熟期 獣人型デジモン 属性 データ

ゴリラに似たパワー型デジモン。

あらゆる物を砕く腕力と、どんなに硬い物でも踏み潰す脚力を備えている。

しかし、その体つきからは思いもよらない軽やかな動きで相手を驚かせ、そのすきに右手のエネルギーカノンで攻撃を加える。

必殺技は『パワーアタック』。

 

エアドラモン 成熟期 幻獣型デジモン 属性 ワクチン

巨大な翼を生やした幻獣型デジモン。

非常に貴重なモンスターで神に近い存在といわれている。空中からの攻撃を得意とし、その咆哮は嵐を呼び、翼を羽ばたかせることで巨大な竜巻を起こす。性格はかなり凶暴だが、高い知性を持っている。

必殺技は巨大な翼を羽ばたかせ、鋭利な真空刃を発生させる『スピニングニードル』。

 

ティラノモン 成熟期 恐竜型デジモン 属性 データ

古代の恐竜のような姿をしたデジモン。

発達した2本の腕と巨大な尾で全ての物をなぎ倒す。知性もあり、おとなしい性格のため、とても手なづけやすい。

必殺技は身体の色と同じ、深紅の炎を吐き出す『ファイアーブレス』。

 

「あのデジモン達には迂闊に手が出せないわ。触ると皆、石みたいに固まってしまうの」

「メガブラスターも突き抜けてしまいよってん」

「なんだっていうんだよ!!」

事態がまったくの見込めず、声をあげる太一。

 

その頃、ヒカリは空を見上げていた。

「あれが、プロットモンがいた世界?」

「違う・・・・あれは、私達が知るデジタルワールドではなく、全く知らないデジタルワールド・・・・」

プロットモンの話では空に浮かぶデジタルワールドはデジモンである自分達も知らないまったくの未知のデジタルワールドだと言う。

 

「コッチの世界で三日経っているので、アッチの世界では何十年もの時間が経っていることになっています。恐らくデジタルワールドの歪みが酷くなって、僕達の世界に影響が出たんだと思います」

「僕達、デジタルワールドの歪みをそのままにしてきたから向こうの世界じゃ、大変なことがおきているんじゃないかな?」

光子郎の仮説を聞き、コロモンは心配そうな表情でデジタルワールドを見上げた。

それにつられ、皆も不安そうな表情で空を見上げた。

「行ってみよう!・・・・もう一度、デジタルワールドへ!!」

太一がこの事態を解決するため、もう一度デジタルワールドへ行こうと言いだした。

「でも、どうやって行くの?」

ミミが尋ねる。

確かにどうやって空の上に浮かぶデジタルワールドへ行けばいいのか見当がつかない。

「はじめてデジタルワールドへ行った時はデジヴァイスに導かれたんだ・・・・だったら、きっと!!」

丈が初めてデジタルワールドへ行った日の事を思い出す。そこで、もう一度、デジタルワールドへ行くにはデジヴァイスを使えばいけるかもしれないと提案する。

「試してみる価値はありますね」

光子郎も丈の意見に賛成する。

そして、皆はデジヴァイスを手に持って前に出した。

「頼む!!俺達をもう一度、デジタルワールドに連れて行ってくれ!」

太一がそう言うと皆のデジヴァイスが光り出し、空に浮かぶデジタルワールドへつづく虹のゲートが出来た。

「この光に乗ればデジタルワールドへ・・・・・」

「ああ、きっと行けるさ」

「タケル!!!」

皆が虹のゲートに入ろうとした時、タケルの母さん、奈津子がタケルを呼び止めた。

「折角皆が集まったのにごめんね、ママ・・・・でも、ちょっと行って・・・・」

「ダメよ!!」

タケルが別れの挨拶を言う前に奈津子はタケルがデジタルワールドへ行く事を反対する。

しかし、

「行かせてやれ。俺達だって散々勝手なことしてきたんだ・・・・」

タケルの父、裕明はタケルがデジタルワールドへ行く事に止めはしなかった。

裕明の言葉を聞き、奈津子は離婚し、タケルを連れ、ヤマトと裕明の下を去った日の事を思い出した。

裕明の言うとおり、今更自分達に二人の仲を裂く権利はなかったのかもしれない。

ヤマトとタケル・・・・仲の良かった兄弟を引き裂いたのは自分達の勝手な都合からだったからだ。

「このままじゃあきっと地球はおしまいなんだ!だから俺が・・・・俺達が母さんを守る!!」

ヤマトの言葉にタケルも頷いている。

「ヤマト・・・・」

奈津子は涙を流し、我が子の成長を実感した。

「頼んだよ皆!!夜がくれば夜明けはくるものが当たり前だとおもっていたけど、今度ばかりは永遠に夜明けはこないかもしれない」

シンがそう言うと、

「そんな縁起でもないこと言わないで下さい。私はこの子たちを信じています」

住江が抗議する。

「あ、いや僕だってですね・・・・」

迫る住江にタジタジなシン。

「大丈夫だよ、兄さん。明日の朝日は必ず僕達が登らせて見せるから!!」

丈が珍しく熱血しているが、

「おー丈先輩カッコイイ」

「似合わない〜♪」

空とミミに茶化され、いつもの丈に戻った。

そして、虹のゲートに入ると、皆の体がフワリと宙に浮かんだ。

良介も虹のゲートに入ったら、ウィザーモンにパンプモン、ゴツモンも虹のゲートに入ってきた。

「うぃ、ウィザーモン!?それにパンプモンにゴツモンも!!」

「私を忘れてもらっちゃ困るぞ!!世界が危険だというのに指をくわえているわけにはいかないからな」

「そうだぜ、リョウスケ」

「俺達戦友だろう?」

「お前ら・・・・ありがとう・・・・・」

「空!!」

デジタルワールドへ向かっている中、空は自分の名前を呼ばれ、ふと下を見ると、空の母、淑子の姿があった。

淑子の他にもミミと太一とヒカリの両親の姿、良介の母、さくらの姿もあった。

「お母さん・・・・お母さん!!」

「パパ!!ママ!!」

「父さん!!」

「お母さん!!」

「母さん!!」

「行ってきます!!必ず帰ってくるから!!」

ヒカリは両親に別れの言葉を言いながら手を振る。

九人の選ばれし子供とデジモン達は多くの人々に見送られながらデジタルワールドに向かった。

 

 

その頃、デジタルワールの某所にて、

「フフフフ・・・・愚か者たちは恐怖の仮面を纏い、裁きの時を永遠に待ち続ける・・・・素晴らしい・・・・実に素晴らしい・・・・」

「手ぬるい!!一気に叩きつぶせばいいものを!!」

「時の流れが違うんだよ。じっくりかまえていればいいのさ・・・・あいつみたいに・・・・」

「・・・・・」

「もうすぐ、選ばれし子供たちが帰ってきます。退屈な時間は終わりです。・・・・さぁ、楽屋を後にしましょう。 舞台の幕が上がります。・・・・タイトルは『選ばれし子供たちの最後』」

四体のデジモン達は自分たちの居城を後にし、選ばれし子供達を出迎えに出た。

 

 

「戻ってきたのか?」

太一が辺りを見回しながら言う。

「戻ってきたのよね?」

ミミも同じことを疑問形ながらも言う。

「あ、太一さん」

「良介・・・・皆も無事か?」

「ええ、無事よ」

空が答える。

とりあえず、欠けた人はいないようだ。

「あっ!!皆!!あれ!!」

空が上空を見上げて声をあげる。

空の声につられ、皆が上空を見上げると、そこにあったのは・・・・

「ほ、北海道!?」

「地球なのか?」

「人間世界からデジモン世界が見えたように、此方からも地球が見えるようになっているんですよ」

皆が上空を見上げていると、近くの草むらでガサガサと音がなった。

「ん、ゴマモン? そこで何をしているんだ?」

丈はてっきり、ゴマモンが鞄から出て、何かをしているのだと思い、草むらを手でかきわける。

「丈さん、ゴマモンならここにいますよ」

「ああ。丈、オイラならここだぜ」

良介が丈の鞄を指差すと、良介の指先にはたしかにゴマモンがいた。

「えっ?じゃあここにいるのは・・・・・?」

丈が草むらを覗きこむと、突如、草むらから何かが飛び出してきた。

飛び出してきたナニかは丈の顔を踏みつけ、別の草むらに逃げ込んでいった。

「う、うわっ!?」

草むらから飛び出してきたナニかに顔を踏まれた丈はバランスを崩し、崖から落ちそうになった。

 

草むらから飛び出してきたナニかを迎え撃つため、幼年期Uだったデジモン達は次々と成長期へと進化していった。

 

コロモン進化―――――

         アグモン―――――

 

ツノモン進化―――――

         ガブモン―――――

 

モチモン進化―――――

         テントモン―――――

 

トコモン進化―――――

         パタモン―――――

 

ピョコモン進化―――――

         ピヨモン―――――

 

そしてパルモンも向かったが、途中でコケた。

ベビドモンもドラコモンに進化したが、悪意を感じなかったため、何かが潜む草むらにはいかなかった。

「みんな、まって!!」

ヒカリがアグモン達を止めると、草むらにかがみこんで、

「大丈夫、怖くない。怖くないよ。何もしないから出ておいで・・・・」

優しく声をかける。

すると、草むらから小さなピンク色のネズミのようなデジモンが震えながら出てきたが、疲れてはてているのか、その場に倒れた。

「あっ!あなたチューモンじゃない!?」

「ホントだ、ファイル島にいたチューモンだわ!!」

ピンク色のネズミに似たデジモンを見て、パルモンとミミが声をあげる。

どうやら、このピンク色のネズミ型デジモンはミミたちの知り合いのようだ。

 

チューモン 成長期 獣型デジモン 属性 ウィルス

いつもスカモンにワル知恵を入れ込んでいるネズミのようなデジモン。

基本的には小心者だが、ワル知恵だけは天下一で、危なくなるとスタコラサッサと逃げていく。

必殺技はチーズの形をした爆弾を投げる『チーズ爆弾(ボム)』。

 

スカモン 成熟期 ミュータントデジモン 属性 ウィルス

金色に輝くウチの形をしたデジモン。

コンピュータの画面上にあるゴミ箱に捨てられたデータのカスが集まって突然変異をおこして誕生したとされるデジモン。

暗所を好み、データのカスの集まりということで他のデジモンからは嫌がられている所がヌメモノに似ている。

知性や攻撃力は皆無。相棒のチューモンはネズミのような小型デジモンで戦うことは出来ないが、悪知恵だけは誰にも負けず、いつもスカモンをそそのかしては、悪事を働いている。

必殺技は、自分の体の形と同じモノをなげつけてくる。

 

「ミミちゃん・・・・パルモン・・・・よかった・・・・戻ってきてくれたんだ・・・・」

チューモンは弱弱しくそう呟くと、気絶した。

「おーい誰か!!」

「あっ!丈先輩の事忘れていた!!丈さん、大丈夫ですか!?」

良介、ゴマモン、ドラコモンは急いで、丈が必死にしがみついている崖へ向かった。

は、早く手を貸してくれ!!」

「じゃあ、掴まってください」

「あ、ああ」

(うわぁ、崖の底が見えない・・・・これは言わないほうがいいな。下を見たらパニックを起こして暴れるかもしれないし・・・・)

良介は丈を救うべく、手を差し伸べる。

(えっと、お袋が言っていたよな・・確か・・・・『腰を落として、叩きつけるように後ろへ投げる』だっけ?)

「どりゃぁぁぁぁぁ!!」

「えっ?えっ?ええええええぇぇぇぇー!?」

良介の間違った救助手順により、丈は後方へ投げ飛ばされた。

「ゲフッ!!」

(あっ、ヤバっ、これは護身術だった・・・・あーでも、助かったみたいだから良いか)

投げ飛ばされ、体を打ち付けた箇所をさすりながら痛がっている丈に声をかけづらい一同であった。

 

その後、全員で集まってチューモンが目を覚ますのを待つ。

チューモンが目を覚ますその間、光子郎はゲンナイと連絡を取り合おうと、ノートパソコンを操作しているが、未だに連絡は無い。

「ミミちゃんの顔をみて安心したのね」

「気力だけで支えていたのよ」

「かわいそうに・・・・」

ミミの膝枕で眠るチューモンを心配そうにみる光子郎とテントモン以外の皆。

やがて、

「ん、んん・・・・」

チューモンは目を覚ました。

 

「チューモン・・・・」

「ミミちゃん?本物のミミちゃんだ・・・・」

「そうよ、一体何があったの?」

「仲良かったスカモンは?」

ミミとパルモンがチューモンに事情を聞く。

自分達がデジタルワールドを去った後、一体何があったのかを・・・・・。

チューモンは暗い顔をして話し出した。

「スカモンは・・・・スカモンは死んじまった・・・・」

目に涙を浮かべ、相棒の死を伝えた後、チューモンはデジタルワールドを支配した暗黒の力を持つデジモン達が住む場所へと案内した。

「所々に昔の残骸が残っているけど、ほとんどはあの山に組み込まれてしまったんだ・・・・」

「「「「「「「「「あ〜」」」」」」」」

海や大地が螺旋状にねじ曲がり、山頂に島の様なものがあるゆがんだ山を見て、声をあげる一同。

「スパイラルマウンテンって呼ばれているんだ・・・・」

「スパイラルマウンテンン・・・・」

「デジタルワールドがこんなになっちゃうなんて・・・・」

「他のデジモン達はどうしたんだ?レオモンとか・・・・」

太一はチューモンにデジタルワールドで知り合ったデジモン達の行方を聞く。

「分からない・・・・でも、逆らう奴は皆倒すみたいなこと行っていたから・・・・・」

「誰が?」

「だ、ダークマスターズ・・・・」

チューモンが震えながらデジタルワールドの新たな支配者達の名を言う。

「俺達が戦う相手はそのダークマスターズってことだな?」

「た、戦う!?とんでもない!!かないっこない!!」

「俺達はあのヴァンデモンでさえ倒したんだぜ」

「大丈夫よ。選ばれし子供がそろえば世界を救えるんだから」

太一とミミはチューモンを励ますかのように言う。

「良介・・・・」

突然、ドラコモンが周囲を睨みながら良介に声をかける。

「どうした?・・・・まさか・・・・」

良介にはドラコモンの態度が分かっていた。

ドラコモンがこんなに周囲を警戒しているという事は近くに敵がいると言う事だ。

「うん・・・・近くに・・・・いる・・・・」

その直後、

「ハハハハハ・・・・選ばれ子供達よ!待っていたぞ!!」

ドラコモンの予想通り、突如、地面が裂けると選ばれし子供達とパートナーデジモン達の前に一体の大型デジモンが姿を露わした。

これが新たなる敵、ダークマスターズとの戦いの始まりだった。

 

 

あとがき

今回からダークマスターズ編が始まりました。

まだまだなのは編までの道のりは遠いですが、お付き合いの程、よろしくお願いします。

では、次回にまたお会い致しましょう。

 




作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。