十七話 迷走する世界
アグモンワープ進化
―――――ウォーグレイモン―――――
ガブモンワープ進化
―――――メタルガルルモン―――――
ドラコモン
ワープ進化―――――スレイヤードラモン―――――
光が収まると、そこには三体の究極体デジモンが生まれると言う奇跡が起こった。
「究極体・・・・究極体デジモンに進化したんだ・・・・」
「なんか、えろう差、つけられましたなぁ〜」
光子郎は三体のデジモンをスキャンして、三体のクラスを見て呟く。
テントモンは光子郎の話を聞き、同じパートナーデジモンでも、究極体へ進化した三体を見て、少し羨ましそうに呟く。
ウォーグレイモンは体に炎を纏いヴェノムヴァンデモンに突撃する。
大きさで言えば、ウォーグレイモンはメタルグレイモンよりも小さくなった。しかし、パワーは圧倒的に違う。
「グァァァー!!」
ウォーグレイモンの体当たりをくらい、ヴェノムヴァンデモンは本日二度目の転倒をする。
「いけ!ウォーグレイモン!!」
「グヌゥゥ〜」
ヴェノムヴァンデモンは立ち上がり、攻勢にでようとしたが、そこにメタルガルルモンが追撃する。
メタルガルルモンは全身からミサイルを発射し、ミサイルはヴェノムヴァンデモンに全弾命中する。
ミサイルがあたった箇所はたちまち氷結しだした。
そして、追撃はまだ終わらない。
スレイヤードラモンがまた凍りついていないヴェノムヴァンデモンの部分を伸縮自在の大剣、フラガラッハで斬りつける。
「ガァァァァー」
「やったか!?」
「いや、まだだ!!」
究極体三体で押しているにも関わらず、未だにヴェノムヴァンデモンに致命傷を与えていない。
「グググ、ヨクモヤッタナ」
怒り狂ったヴェノムヴァンデモンは辺りに見境無く攻撃し始めた。
その姿を見ているビッグサイトに残ったメンバー。
そこへ、眠る人々の様子を見てきたシンが来た。
「シン兄さん、父さん達は?」
丈がシンに聞くと、シンは首を横に振る。
人々は未だに眠ったままと言う事だ。
「きっとヴァンデモンを完全に倒さないと元に戻らないんだよ」
ゴマモンがヴェノムヴァンデモンを見ながら言う。
「私のパパとママを・・・・私、ヴァンデモンを倒したい!!」
「ミミ、アタシまだ戦えるよ」
「パルモン・・・・」
「うん・・・・」
「空・・・・」
「うん・・・・」
「君たち・・・・ん?」
ゴマモンがジッと丈を見ると、ゴマモンは丈に飛びつき、頭まで登ると、
「『行くぞ!!ゴマモン!!』・・って何で言えないかな?」
と、丈に問う。
すると、丈もやる気になったのか、
「よぉし!!行くぞ!!ゴマモン!!」
「がってんだい!!」
「母を・・・・母をお願いします」
空とピヨモンは母親をシンに託し、戦場へと向かう。
「私のパパとママも・・・・」
ミミも空同様、眠っている両親をシンに託し、戦場へと向かった。
「無茶はするなよ・・・・」
戦場へ向かった弟と空、ミミの後ろ姿を見送りつつ、シンはそう呟いた。
「ガァ
!!ガァ!!」ヴェノムヴァンデモンは無差別攻撃を止めず、皆はそれぞれ攻撃をから逃げる最中にはぐれてしまった。
「お兄ちゃん・・・・」
「ヒカリー!!」
「タケル!!どこだ!?」
「父さん!!母さん!!」
はぐれたメンバーの中で、特に兄である太一とヤマトは必死に自分の妹と弟を探し回った。
「どうしよう、お兄ちゃん達とはぐれちゃったよ・・・・」
ヒカリは戦場を必死に走り回り、兄や他の皆を探し回った。そこへ、ビルの瓦礫が降りかかってきた。
「ヒッ・・・・」
ヒカリは戦場の恐怖と迫りくる瓦礫に思わず、目を閉じた。
そこへ、
「ブラッディダガ―!!」
迫りくる瓦礫に血の色のナイフが刺さったと思うと、瓦礫は木っ端微塵に爆発した。
「ハァハァハァ・・・・大丈夫か?・・・・ヒカリ・・・・・」
「良介君!!」
よほど怖かったのか、目に涙を浮かべ、ヒカリは良介に飛びついた。
「大丈夫か!?怪我はないか?」
「う、うん・・・・大丈夫」
「そうか、良かった」
「良介君は?・・・・あっ!良介君、手から血が!!」
ヒカリの言う通り、良介の手には切り傷がありそこから血が滲み出ていた。
「さっき、逃げる途中で瓦礫でね・・・・でも、そのおかげでヒカリを助ける事ができたけどな・・・・・」
ニッと、ヒカリに笑みを浮かべる良介。
「『無茶しないで』って言ったのに・・・・」
咄嗟の事とはいえ、体力が完全に回復していない状態から再び魔法を使ったことにより、良介の息は完全に上がっている。
「ごめん。だけど、もう目の前でこれ以上皆が傷つくのが嫌だったんだ・・・・」
良介はヒカリに支えられながら他の皆を探した。
光子郎がテントモンと共に両親を探していると、
「光子郎はん、みんな来ましたで」
「ヴァンデモン!アタシ達が相手よ!!」
光子郎の眼前にはヴェノムヴァンデモンに向かうバードラモン、イッカクモン、トゲモンの姿があった。
「ほな、ワテも行きまっせ!!」
テントモン進化
―――――ガブテリモン―――――
「いくぞ、皆で一斉攻撃だ!!」
ウォーグレイモンが指示をだし、皆がそれに答える。
「チクチクバンバン!!」
「ハープーンバルカン!!」
「メテオウィング!!」
「メガブラスター!!」
「ヘブンズナックル!!」
「ホーリーアロー!!」
「フリーズボンバー!!」
トゲモン、イッカクモン、バードラモン、カブテリモン、エンジェモン、エンジェウーモン、メタルガルルモンの必殺技がヴェノムヴァンデモンに命中し、ヴェノムヴァンデモンは怯んだ。
そして、ウォーグレイモンは回転を始め、スレイヤードラモンはフラガラッハを構える。
「ブレイブトルネード!!」
「昇竜斬波!!」
二体のデジモンがヴェノムヴァンデモンに突撃し、ヴェノムヴァンデモンの体に風穴を開けた。
「グ、グガァァァァァァー!!」
崩れ落ち、片膝をついたヴェノムヴァンデモン。
「やったのか?」
誰もがヴェノムヴァンデモンに致命傷を与えたと思った。
しかし、
「グ、グルル・・・・グギャガガガ!!」
ヴェノムヴァンデモンは立ち上がり、腹に開いた風穴から、もう一つの顔が飛び出した。
「きゃあ!」
「な、なんだよ!?あれ?」
突然出てきたもう一つの顔を見てミミは悲鳴をあげ、太一を驚きの声をあげる。
「ギギャァァァァー!!」
腹から出た顔は口から黒い瘴気を吐き出し、デジモンたちを吹き飛ばした。
「「うわぁぁぁ!!」」
「「ぐわぁぁぁぁ!!」」
「ウォーグレイモン!?」
「オマエラ・・ミンナ・・・・喰イ殺シテヤル!!」
目の前の強大な敵を前にして、子供達は誰もが諦めかけていた。
だが、そのとき、子供達の紋章が輝き始めた。
そして紋章から出た光はヴェノムヴァンデモンの首、両手、両足にバインドのように絡みつき、ヴェノムヴァンデモンの動きを完全に封じた。
ヴェノムヴァンデモンは上の顔では苦痛の表情で、苦しみだし、腹の顔は、
「コシャクナ、エラバレシ、コドモタチメ」
と、喋りだした。
「喋った!?・・・・そうか、きっとあの化け物がヴァンデモンの正体なんだ!!ウォーグレイモン!!」
「分かった!!」
「ウォーグレイモン!!」
ウォーグレイモンは飛び上がり、それに合わせるようにメタルガルルモンが落ちていたフジテレビの球体展望台を蹴り上げる。
「「「「「「「「「シュート!!」」」」」」」」」
子供たち全員の声が重なる。
ウォーグレイモンは腹部の顔にめがけて鋭いシュートを放つ。
「グ、ア!!!」
ヴェノムヴァンデモンが怯んだ隙に三体の究極体デジモンたちは必殺技を放つ。
ウォーグレイモンは両手に気を集め、
メタルガルルモンは口に冷気を凝縮し、
スレイヤードラモンはフラガラッハを構え、
「ガイアフォース!!!」
「コキュートスブレス!!!」
「咬竜斬刃!!!」
一気に放った。
三つの技が重なり、ヴェノムヴァンデモンの腹部へと吸い込まれた。
そして、
「ギ、ギギ、ギギャァァァァアアァァァァアー!!!!!!」
断末魔の声を残して、ヴェノムヴァンデモンの体は崩れていき、やがて粒子となり消え去った・・・・。
ヴァンデモンが消滅したことで、ビッグサイトではヴァンデモンの呪縛から解き放たれた人たちが眼を覚まし始めていた。
そして、お台場を覆っていた霧もようやく晴れ始めた。
「やったよ、太一!!」
「ヤマトー!!」
「良介!!」
「コロモン!!」
「ツノモン!!」
「ベビドモン!!」
究極体に進化したためか、三体は幼年期Uに退化していた。
太一達は自分達のパートナーデジモンを抱きしめ、ヴァンデモンにようやく勝利した事を喜んだ。
そこへ、一体の見知らぬデジモンがいた。
「あら?あなたは?」
「始めまして、プロットモンです」
クリーム色の身体に外見が子犬のようなそのデジモンはプロットモンと名乗った。
プロットモン 成長期 哺乳類型デジモン 属性 ワクチン
テイルモンが成長期に退化した垂れ耳が特徴的な神聖系デジモン。
必殺技の『パピーハウリング』は超高音の鳴き声で、敵を金縛りにしてしまう。
「アグモンたちを究極体にするのに力を使っちゃって成長期に戻っちゃったのね」
ヒカリはプロットモンの頭を撫でながら言う。
「見て、霧が晴れていく!!」
空の言葉を聞いて、皆は安心した顔のまま上を見た。
長い一日だった・・・・。
すでに夜の八時に近いのではないだろうか?
早く家に戻り、食事をし、風呂に入って休みたい・・・・。
そこにいる誰もがそう思っていた。
やがて完全に霧が晴れると・・・・。
「う、嘘・・・・だろう・・・・」
「な、何だよ!!あれ!?」
皆の目に前に映ったのは見慣れた夜空じゃなかった・・・・。
皆の目に映ったのは・・・・・。
逆さに映ったデジタルワールドだった・・・・。
「な、何なんだよ!?コレ!?」
太一は、空に浮かぶデジタルワールドを見て大きな声で叫んだ。
否、太一だけが空に浮かぶデジタルワールドを見て驚いている訳じゃない。
此処に居る人、否、日本に居る人、違う、世界中に居る人が太一と同じ様に空に浮かぶデジタルワールドを見て驚いているに違いない。
空に移る謎の不気味な大陸・・・・。
しかし、世界中の監視衛星からレーダーにいたる全ての電子機器はデジタルワールドの存在を認識していなかった。
「タケル、タケル!!」
「あ、ママ!!」
霧が晴れたことで、水上バスが運行を開始し、タケルの母、奈津子がタケルの下へとやっていた。
「タケル、心配したのよ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃんが一緒だったから」
「・・・・ヤマト」
「か、母さん・・・・」
「・・・・元気そうね・・・・よかったわ」
そう言って、顔を綻ばせる奈津子。
「奈津子・・・・暫くだな・・・・・」
「・・ええ」
裕明が奈津子に話しかける。
「久しぶりだね。皆がそろったの」
タケルが嬉しそうに言う。
謎の大陸ははたして幻なのだろうか?
それを調査するため、アメリカ空軍の偵察機が空に浮かぶ大陸へ調査に向かった。
空に浮かぶ謎の大陸へと接近する偵察機は一瞬の内に石へと変わり、海へ墜落した。
「私のパパとママ大丈夫かしら?」
ミミが両親の心配をしていると、ビッグサイトからバイクに乗ったシンが来た。
「ビッグサイトにいる人達は元に戻ったよ」
「良かった!!」
ヒカリやミミは両親が元に戻ったことに喜んだ。
シンは携帯テレビをつけると、空に浮いている謎の大陸は世界中でも確認されている事がわかった。
「これもヴァンデモンの仕業なのか?」
「そんなわけないよ!!」
「うん、今度こそ完全に倒した筈だよ」
ヤマトの推測をコロモンとツノモンは否定する。
誰もが空を見て不思議がっているが、ただ一人だけ、光子郎だけがある山を集中して見ていた。
(あの山・・・・ムゲンマウンテンにそっくりだ・・・・でも、そんな事って・・・・)
「光子郎さん、どうしたんですか?」
良介は光子郎に近付いて、ずっと上を見ている光子郎に話し掛けた。
「い、いえ、ただ、少し気になるものが在りまして・・・・。太一さん、単眼鏡でちょっとあそこを覗いてくれませんか!!」
「えっ?」
太一は光子郎に言われた通り、ポケットから単眼鏡を取り出し、空に浮いている大陸をのぞき始める。
「どこ?」
「ほら、あの山なんですけど・・・・」
「どれ?何処の山だよ?沢山あって分からねぇよ・・・・」
光子郎と太一の行動が噛み合わず、太一は光子郎の言う山がどの山なのか分からなかった。
「あそこです!!あの山です!!」
「あっ!!」
単眼鏡で光子郎の言う山を探しながら大陸を見ていた太一が何かを見つけた。
「どうしたんですか?」
「飛行機だ!!飛行機がいる!!」
太一の言う通り、空には一機の飛行機が飛んでいた。
しかし、その飛行機にはすでに燃料が無く、羽田か成田まで飛べる余裕は無かった。
やむを得ず近くの米軍基地にでも着陸しようとしたが、突然飛行機の電子計器が狂いだし、バランスを崩し始めた。
このままではあの飛行機は墜落してしまう。
「ピヨモン!!」
「うん!!」
ピヨモン進化
―――――バードラモン―――――
バードラモンは飛行機を救うべく、飛行機へと近づくが、そこへ赤い大きなクワガタのようなデジモンが飛行機に近づいてきた。
クワガ―モン 成熟期 昆虫型デジモン 属性 ウィルス
デジタルワールドの森の奥に生息している昆虫型デジモンで、性格は攻撃的で凶暴。
強力な肉体に素早い身のこなしをもち、さらに森の中の木をも簡単によけながら高速で移動できるほどの器用さもかねそろえている。
必殺技は高速で相手に近づきたいあたりを食らわせると同時に頭のハサミで相手を真っ二つにする『シザーアームズ』。
そして、飛行機の翼にクワガーモンが触れたとたん、翼が石化し、エンジンが止まり、飛行機は回転しながら落ちて言った。
「ぐ、ぐぬぅ〜」
バードラモンは飛行機の下に回り込み飛行機を支える。
しかし、バードラモンではパワーが足りず、
バードラモン超進化
―――――ガルダモン―――――
バードラモンは完全体のガルダモンに進化し、飛行機を支える。
「ワテも手伝いまんがな!!」
ガルダモンの応援にガブテリモンが飛行機へ近づくが、カブテリモンが飛行機に所に着く前に、クワガーモンがカブテリモンに突撃してきた。
カブテリモンはクワガーモンの攻撃をギリギリ避け、必殺技の
“メガブラスター”をクワガーモンに放った。「メガブラスター!!」
しかし、カブテリモンが放ったメガブラスターはクワガーモンの体を擦り抜けた。
「なっ!?どないなっとるんのや!!?」
「カブテリモン、奴に触れてはダメ!!!」
「っ!?」
再び突進してきたクワガーモンを迎え撃とうとしていたカブテリモンだが、ガルダモンに言われてギリギリクワガーモンを避けた。
そしてクワガ―モンは何処かへと飛んでいった。
飛行機は東京湾に着水させて、乗員・乗客は救命ボートに乗り、避難した。飛行機に乗っていた人々の無事を確認した二体のデジモンは皆の下へ帰ってきた。
「あれ、クワガ―モンだったのか?」
太一がピョコモンにクワーがモンの事を尋ねる。
「うん、あの大陸から飛んできたの」
ピョコモンはクワガ―モンがあの大陸から飛来してきた事を話した。
「やっぱりそうでしたか・・・・」
光子郎が納得したように呟く。
「『やっぱり』ってどういうことだよ?」
「あの大陸はデジタルワールドなんです!!」
「ええっー!!」
光子郎の言葉を聞き、丈は声をあげる。
突如、人々の前に出現したデジタルワールド・・・・・。
一体デジタルワールドで何があったのか?
そして地球はどうなってしまうのか?
迷走する未来の行方は、誰にもわからない・・・・。
あとがき
やっとヴァンデモン編が終わりました。
次回からダークマスターズ編へ入ります。
なのは編までまだまだ道のりは先ですが、お付き合いの程よろしくお願いします。
では、次回にまたお会いしましょう。