十三話 海竜
VS海獣
フジテレビの内部に潜入に成功した裕明は衛星回線を開き、外部との連絡を試みるが、やはりどの回線も使用不能だった。
「衛星放送もダメか。くそっ、なにか方法はないのか?外と連絡をとる方法は・・・・・」
裕明は頭を抱えながら外部との連絡手段を考えた。
その頃、光子郎は結界の中心がフジテレビだとゲンナイから教えられていたので、テントモンと共にフジテレビの中へ入って行った。
海上ではイッカクモンに乗り、海からお台場を目指していた丈とタケルはまもなくレインボーブリッジに差し掛かるところまで来ていた。
「あれ?今何か動かなかった?」
丈は霧の漂う海の向こうに何かが居た気配を感じた。
「えっ?どこ?」
「ほら、あの辺・・・・」
丈が気配を察知した方に視線を向けると、そこには赤い大きなウミヘビのようなデジモンが居た。
「うわぁぁぁぁ!!」
「メガシードラモンだ!!」
メガシードラモン 完全体 水棲型デジモン 属性 データ
シードラモンが完全体に進化した姿。
体も一回り大きくなり、頭部を覆う外殻も硬度を増し、頭頂部にイナズマ型のブレードが生えている。シードラモン種より知性が発達しており、追尾型魚雷のようにしつこく敵を追い回し、確実に敵を仕留める。
必殺技は頭頂部のブレードから発する強力な雷撃『サンダージャベリン』。頭部の外殻は、この必殺技を可能にするための発電装置が仕込まれている。
メガシードラモンはレインボーブリッジに体を巻きつけており、締め付ける力を強める。すると、その力に耐えられなくなり、レインボーブリッジは崩壊しはじめる。そしてそのガレキが真下を通っているイッカクモンに降り注ぐ。
「あっ、レインボーブリッジが・・・・」
とうとうレインボーブリッジの半分は崩壊しそのまま海へと沈んでいった。
「ハープーンバルカン」
イッカクモンが必殺技のハープーンバルカンを連射し、メガシードラモンの頭部に命中する。
「やった!命中だ!」
丈は頭部に命中した事により、メガシードラモンを倒したと思ったが、爆煙が収まると、そこには無傷のメガシードラモンがいた。
そして、突然攻撃されたメガシードラモンは怒り、必殺技のサンダージャベリンを放ってきた。
「「うわぁぁぁ!!」」
水棲デジモンに電気はよく効きイッカクモンの体が傾くと、丈とタケルは海に投げ出されてしまった。
「タケル!丈!」
かろうじてパタモンは空を飛べたので、海に落ちることは免れた。
「タケル!」
海からタケルが顔を出すと、タケルは溺れていた。
「助けて・・・・泳げないんだ・・・・・」
パタモンはタケルの腕を掴むが小さなパタモンがタケルをそのまま岸に連れて行くのは不可能に近かった。
パタモンは力一杯タケルの腕を掴むが徐々にパタモンの手とタケルの手が離れていき、タケルは海に沈んだ。
(助けて・・・・お兄ちゃん・・・・)
タケルの脳裏に兄、ヤマトの姿が浮かび上がる。
その時、タケルの体を持ち上げ、タケルを海の上に引き上げ、浮いていた木片に捕まらせた人物がいた。
「ぷはっ」
「つかまって・・・・」
それはタケルと共に海に投げ出された丈だった。
「丈さん!」
「君のお母さんに約束したからね・・・・僕が君を守るって・・・・約束は・・・・守らなきゃね・・・・・」
徹夜で酷く体力を消耗していた丈はそう言うと、海へ沈んでいった。
「丈さん!!丈さん!!」
タケルは必死に呼びかけるが、丈は浮いてこなかった。
海へ沈んでいく丈・・・・・。
沈んでいく中、突然、丈の紋章が光始めた。
イッカクモンモン超進化
―――――ズドモン―――――
ズドモン 完全体 海獣型デジモン 属性 ワクチン
イッカクモンが更に進化し二足歩行が可能になったパワー型デジモン。徹底的に鍛え上げられた筋肉を、対戦相手から奪った皮や甲羅で自ら作った防具でさらに守っている。頭の角は再生が不可能になった代りに、これも自ら鋸状に加工した。しかし、なんといっても最強の武器は、太古の氷から掘り起こした、クロンデジゾイト製の「トールハンマー」だ。
必殺技はトールハンマーを振り降ろした時に生じる衝撃波や火花を相手にぶつける『ハンマースパーク』。
ズドモンは左手で丈を海から引き上げ、タケルも一緒に乗せた。
丈の紋章は未だ光を失っておらず、お台場までの道のりをその光で指し示していた。
「霧が・・晴れてる・・・・」
メガシードラモンはまるで、海上の番人の様にズドモンの前に立ちふさがり、再び必殺技のサンダージャベリンを放ってきたが、ズドモンは頭に生えている角でサンダージャベリンを弾いた。
「凄い!!」
タケルはズドモンの力に驚き、
「行け、ズドモン!!」
丈はメガシードラモンを倒すよう、ズドモンに指示を出す。
「ハンマースパーク!!」
ズドモンはメガシードラモンの喉の辺りをトールハンマーで思いっきり叩くと、メガシードラモンはレインボーブリッジから落ち、海へと沈んでいった。
「やった!!」
「急がないとまた霧でふさがっちゃうよ」
「よし、急ごう」
丈達を乗せたズドモンは霧が晴れている間にお台場へと急いだ。
しかし、途中で光が消え、再び海は霧に閉ざされてしまった。
「うわぁ・・・・真っ白・・・・」
「コレじゃぁ右も左も分からないよ・・・・」
(私を、テイルモンのところへ連れて行ってくれ・・・)
突然、丈達の頭の中に声が聞こえた。
「だ、誰?」
パタモンがタケルの頭の上で不安そうに辺りを見回す。すると、前方に魔女が被っているような帽子を被ったデジモンが丸太に捕まり漂流していた。
「あっ!」
「私はウィザーモン・・・・テイルモンの所へ・・・・」
「おまえ、ヴァンデモンの手下じゃないのか?」
「怪我しているみたいだよ」
「た、頼む・・・・テイルモンにコレを・・・・」
ウィザーモンは光の紋章を丈達に見せた。
「見て、紋章とタグだ」
「これは・・・・九人目の、オリジナル・・・・」
そう言ってウィザーモンは気絶した。
「「な、なんだってぇ!?」」
九人目の紋章に丈とタケルはそろって驚きの声をあげた。
フジテレビに潜入した光子郎は局の中を歩き回り、結界の中心点を探していた。
「どこかに結界の中心があるはずです。そこを叩けば・・・・」
通路の角を曲がろうとしたとき、進行方向からバケモンが近づいてきた。
「まずい、戻りましょう」
引き返そうとしたら、そこからもバケモンが近づいてくる気配を感じた。
「しまった挟み撃ちだ・・・・」
このままでは見付かってしまう・・・・。
どう行動すればいいのか迷う光子郎。
すると、光子郎の背後の扉が開くと、そこから手が伸びてきて光子郎をその部屋へ引きずり込んだ。
そして光子郎の口を手で塞いだ。
テントモンも慌ててその部屋に飛び込む。
テントモンが部屋へ飛び込むと、扉は閉められ、バケモン達は何事も無かったかのように擦れ違った。
「ん・・・・うぐ・・・・ん」
「静かに・・・・」
男の声がして、光子郎が黙ると、光子郎の口を塞いでいた手が退けられる。
「貴方は?」
光子郎を助けたのはヤマトの父裕明だった。
「そろそろ二時間だ」
ヤマトがデジヴァイスの時計で約束された時間の刻限が迫って来ているのに焦りを感じていた。
そこへ、
「ヤマトー!ヒカリちゃーん!!」
上空から聞き覚えのある声が聞こえた。
「空!?」
「ヤマト!・・太一にココだって聞いたの・・みんな、ビッグサイトに捕まっているの」
「ビックサイトか・・・・」
ヤマトは空から捕らわれた人々の居場所を聞き、助けに行くか、太一との約束通り、さくらと共にヒカリを連れてお台場を脱出するか判断に迷った。
すると、そこへ、
「ヒッヒッヒッヒ、八人目と九人目を探し出さずともお前達をたおせば同じ事・・ここで果てるがよい!!」
バードラモンを尾行してきたファントモンが空達の前に現れた。
「いでよ!」
そして、恐竜の様なデジモンとカマキリの様な二体のデジモンを召喚した。
タスクモン 成熟期 恐竜型デジモン 属性 ウィルス
肩から巨大な角を生やした恐竜型デジモン。
怖いもの知らずで、目の前に何があっても全てを壊しながら突き進む。
腕にある星マークは一つにつき、100体のデジモンを倒した証とされている。
必殺技は相手に突進しながら激しいパンチを繰り出す「パンツァーナックル」。
スナイモン 成熟期 昆虫型デジモン 属性 ワクチン
カマキリのような姿をした昆虫型デジモン。
冷たい性格で同じワクチン種からもデータ種からも恐れられている存在だ。両腕の大鎌は鋭く研ぎ澄まされており、あらゆるものを鋭利に切り刻むことが可能となっている。
必殺技は目にもとまらぬ速さで鎌を振り下ろす「シャドー・シックル」
「ガブモン!」
ガブモン進化
―――――ガルルモン―――――
ガルルモンはタスクモンに飛びつき、バードラモンはスナイモンと空中戦を行なった。
しかし、タスクモンの方が、パワーが上のようで、タスクモンのパンチをくらい、ビルに激突、反対側の海岸まで飛ばされた。
さくらは木刀でファントモンと戦っているが、相手が完全体出ることと、そして互いの獲物が研ぎ澄まされた鎌と木刀とでは、さくらはファントモンに対して圧倒的に不利だった。
しかもファントモンは自分が不利な状況になるとフヨフヨと空へ逃れ、次に急降下をかけてさくらを圧倒していく。
流石のさくらも空に飛びあがった相手には手も足も出ない。
「アングリーロック!!」
「トリックオアトリート!!」
パンプモンとゴツモンはさくらを援護しようと必殺技をファントモンに繰り出すが、あっさりとかわされた。
「ふん、裏切りものめ、お前らの相手はバケモン達で十分だ!!」
ファントモンは更に部下のバケモンを召喚し、パンプモンとゴツモンはバケモンの奇襲にあい、吹き飛ばされ、壁に激突する。
「パンプちゃん!がんちゃん(ゴツモン)!きゃっ!」
パンプモンとゴツモンに気を取られたさくらは木刀をファントモンの鎌で切断された。
「おねがい、バードラモン!!」
バードラモン超進化
―――――ガルダモン―――――
完全体のガルダモンに進化したバードラモンはスナイモンに挑むが、スナイモンの鋭い鎌捌きに技をかわすのがやっとである。
(私のせいだ・・・・私のせいでみんなが・・・・)
目の前で繰り広げられている戦いを見て、ヒカリは心が押しつぶされそうになった。
そして、決定打となったのが、さくらとファントモンの戦いで、ファントモンの鎖鎌の鎖がさくらの首に巻き付き、さくらを占め上げた。
このままでは、良介の母親が死んでしまうと思い、ヒカリは声をあげて言った。
「おねがい・・・・やめてぇ!!」
ヒカリの叫び声で辺りは一瞬の静寂に包まれる。
「私が・・貴方たちが探している選ばれし子供なの、どこにでもついて行くから・・・・もう皆を傷つけるのはやめて・・・・」
「いい心がけだ・・よかろう」
ファントモンがそう言うと、スナイモンは何処かへと去り、タスクモンも地面に潜った。そしてファントモンもさくらの首から鎖を離した。
(怖い・・でも、私のせいで誰かが傷付くのはいやだから・・・・)
「ありがとう・・・・・」
ヒカリの体が周りに青黒い球体に包まれる。
「だめっ!! ヒカリちゃん!!」
「いっちゃだめだ!!」
「「「ヒカリちゃん!!」」」
青黒い球体に包まれたヒカリの体はフジテレビの方へと飛んで行った・・・・。
これ以上自分のために傷つく者を見てられない・・・・。
ヒカリは自ら選ばれし子供だと名乗りをあげ、敵の手に落ちた・・・・。
しかし、太一と良介はこの事実を知る由も無かった・・・・。
(まっていろよ、ヒカリ・・・・必ず皆を助け出すからな・・・・)
ヒカリが連れ去られた中、ビッグサイトの中ではいまだテイルモンと子供達との顔合わせが続いていた。
そこへ、
「ヴァンデモン様!! テイルモンのテイマーらしき子供が見つかりました!!」
「なに!?」
(ヒカリ・・・・)
ファントモンから連絡を受けたピコデビモンがヴァンデモンに伝える。
ピコデビモンの話を聞いたテイルモンは悔しさと不安から顔を俯けた。
そんなテイルモンにヴァンデモンは、
「聞いたか?テイルモン?」
と、余裕の表情でテイルモンに尋ね、テイルモンはヴァンデモンを睨む。
「よし、そうと分かればココにはもう用は無い」
「はっ・・・・こやつらはどういたしましょう?」
「眠らせておけ・・後でゆっくりと味見する」
ヴァンデモンは舌舐めずりをしながらピコデビモンに命令を下す。
ピコデビモンは再び催眠術を使い、顔合わせのために集めた子供達も他の人同様、深い眠りへと誘った。
そして、テイルモンを連れ、ヴァンデモンとピコデビモンはヒカリが捕らえられているフジテレビへと向かった。
その姿を太一達はビッグサイトの玄関ホールの物陰から見ていた。
「ヴァンデモン・・・・」
「どこへ行くんだろう・・・・」
「兎に角、中へ行きましょう。ヴァンデモンが出ていってくれた今がチャンスです」
「ああ、そうだな」
ビッグサイト内に入り、通路を走る太一達の前にバケモンが立ち塞がった。
アグモン進化
―――――グレイモン―――――
ドラコモン進化
―――――コアドラモン―――――
「メガフレイム!」
「ブルーフレアブレス!」
「「「「うわぁぁぁぁー!!」」」」
「「「「「ぎゃぁぁぁあぁぁー!!」」」」」
バケモンは被っている布に火がつき、熱さでのたうち回りながら粒子となって消えた。
「ありがと、グレイモン」
「いいぞ、コアドラモン」
「あっ、太一さーん!」
バケモンを倒した太一達も下に、ミミが駆け寄ってきた。
ミミは催眠術で一度は眠りについたが、ヴァンデモンたちが去ったあと、紋章の力によって直ぐに眠りからさめたのだ。
「ミミちゃん。他の皆は?」
「眠らされちゃったの。それよりもヴァンデモンがテイルモンのテイマーが見つかったとか言ってたけど、もしかしてその子が八人目か九人目の選ばれし子供なの?」
「何っ!?・・・・まさか、ヒカリの身に・・・・」
「えっ?ヒカリちゃん?」
太一はミミに良介とヒカリがヴァンデモンが探している八人目と九人目だということを話した。
そして、ヒカリが捕まっているフジテレビへと向かった。
その頃、フジテレビ内にいる光子郎と裕明は、局内のある部屋でこれからの事を考えていた。
そして、ふと光子郎が窓の外を見ると、フジテレビに近づいてくる二体のデジモンが居た。
「あ、アレはヤマトさんと空さん」
「何!?ヤマト?どうして此処に?」
裕明が窓の外を見ると、そこにはガルルモンの背に乗るヤマトとガルダモンの手の上に乗る空がいた。
さくらはファントモンとの戦いで傷を負ったので、パンプモンとゴツモンが「護衛をする」と言ってそのままあのビルの中で留守番となった。
「か、怪獣!!」
思わず裕明は声をあげる。
「怪獣ではなく、デジモンです」
「えっ!?」
「前から報道されている怪獣はデジモン達のことなんです。でも、安心してください。ヤマトさん達を乗せているデジモンは僕たちの味方です」
光子郎は裕明にデジモンについて説明する。
「味方?・・・・しかし・・・・」
裕明は未だに納得できない様子。
「デジモンの中にも良いデジモンと悪いデジモンがいるのです。・・・・彼らは僕たちの味方・・・・いや、仲間なんです」
「そういうことですわ」
「か、関西弁・・・・」
関西弁を喋るテントモンに顔を引き攣らせる裕明だった。
その頃、ズドモンに乗り海上からお台場を目指していた丈たちは途中で拾ったウィザーモンについて考えを巡らせていた。
「この人なんで紋章を持っているんだろう?」
「さぁ・・・・」
二人がのぞき込むようにウィザーモンを見ていると、
「・・・・うっ・・・・うーん・・・・」
ウィザーモンが目をさました。
「き、君たちは?」
「僕、タケル」
「はっ、ヒカリは?」
「ヒカリ?」
「ヒカリにコレを渡さなくては・・・・」
そう言ってウィザーモンは二人に光の紋章を見せる。
「ヒカリに紋章・・・・?ヒカリ・・・・・はっ、ヒカリってもしかして太一の妹のヒカリちゃんの事!?」
意外な人物が選ばれし子供なのだと知ると、丈は声をあげる。
「それじゃあヒカリちゃんも僕たちと同じ選ばれし子供なのか!?太一の妹が?」
「あっ、僕ヒカリちゃんが選ばれし子供だって知ってたよ」
「えっ!?何で!?」
「良介君から聞いたの」
「誰?良介君って!?」
「話を戻していいだろうか?」
混乱している丈にウィザーモンが声をかける。
「あ、ああ」
「・・・・これはヒカリとテイルモンにとって大切なモノなんだ」
「テイルモン!!」
ウィザーモンの口から出たテイルモンの名前にまたも丈は驚きの声をあげる。
「テイルモンってヴァンデモンの手下でしょう?」
タケルがウィザーモンに尋ねる。
「そいつがヒカリちゃんのデジモンなのか?」
「そうだ」
ウィザーモンはあっさりと肯定し、その言葉をきいた二人は怪訝な表情をした。
「ヤマトさん、空さん」
フジテレビに来たヤマトと空を光子郎と裕明は玄関ホールまで迎えに出た。
「光子郎君、此処にいたの?」
「ヤマト」
「親父」
「何故、隠れていなかった」
裕明がヤマトに詰め寄ると、ガルルモンが顔を裕明に寄せる。
「うわっ」
突然、ガルルモンが顔を寄せてきたので、裕明は思わず後ろにさがる。
そりゃ、バカデカイ狼が顔を寄せてくれば驚きもする。
「ヤマトのお父さん。またお会いしましたね」
「ま、またって、お前は何もんだ?」
「ナニモンじゃなくて、カブモンから進化したガルルモンです」
「カブモン?進化?」
ガルルモンの言葉に首を傾げる裕明。
そこに丈とタケルが合流した。
「おーい」
「丈先輩?」
「お兄ちゃん!パパ!」
「タケル」
「タケル・・・・」
「パパ」
タケルは裕明に抱きつく。
「タケル・・・・お前、どうして此処に?」
「お兄ちゃんやパパの事がどうしても心配で来ちゃったんだ。ママも途中まで一緒だったんだよ」
裕明はタケルの頭に優しく手を置いた。
そんな中、ウィザーモンはヴァンデモンの技をくらい石像のように固まってしまったリリモンへ近づく。
「そのデジモンは・・・・?」
「何をするつもりだ?」
「ヴァンデモンのデッドストリームを受けたのですね?」
「だったら何なの?」
光子郎もヤマトも空も警戒しながらウィザーモンを睨んでいる。
ウィザーモンは手で印を組む。
やがてウィザーモンの手に緑色の光が灯ると、その光をリリモンへ向ける。するとリリモンは瞬きをし、起き上がる。
「あれ?私・・・・」
「このデジモンは良いデジモンだよ。紋章とタグを持っているんだ」
「紋章を!?」
「本当だ。嘘じゃない」
タケルがウィザーモンの前に立ち、ウィザーモンは味方だと言う。丈も同じくウィザーモンを弁護する。
そしてウィザーモンは証拠だと証明するためにみんなの前にタグと紋章を出す。
「これは・・・・?」
「ヒカリの紋章とタグだ」
「「えっ!?」」
「ヴァンデモンに捕まっているテイルモンを助けたい」
「テイルモン?」
「テイルモンはヒカリちゃんのパートナーなんだって」
「「「「ええっ!?」」」」
ヒカリが自分たち選ばれし子供なのだということにも驚いたが、ヒカリのパートナーがヴァンデモンの手下だったテイルモンだということにも皆驚いた。
「ヒカリは一体どこに?」
ウィザーモンがヒカリの行方をヤマトに尋ねると、
「それが・・・・」
ヤマトは声を低め、悔しそうにヒカリがヴァンデモンの手下のファントモンに捕まったことを話した。
「先程、ゲンナイさんからメールがあったのですが、あそこにはヴァンデモンの結界の中心があるそうです」
光子郎はフジテレビの展望台を指さす。
そしてちょうどそこへ、展望台へと向かうヴァンデモンの姿があった。
「あれは・・・・」
「ヴァンデモンだ」
「テイルモン・・・・」
空を飛ぶヴァンデモンの手の中には人形の様に体を鷲掴みにされているテイルモンの姿があった。
「フッ」
ヴァンデモンは玄関前のロータリーにいるヤマト達を見て不敵に笑をこぼした。
「ヴァンデモン・・・・」
ウィザーモンは悔しそうにヴァンデモンを睨む。
「皆、展望台へ行くぞ!!」
「よし、案内しよう」
裕明の案内の下、ヤマトたちが展望台へ向かおうとすると、目の前の地面が割れ、そこからスナイモンとタスクモンが現れた。
ガルルモン超進化
―――――ワーガルルモン―――――
完全体に進化したワーガルルモンはタスクモンとスナイモンに拳をぶつける。
「ここは私達任せて」
「早く、ヒカリを・・・・!!」
「わかった!」
タスクモンとスナイモンの相手をワーガルルモン達に任せ、ヤマトたちはフジテレビの中へと向かうが、途中でまだダメージが抜けきれていないウィザーモンが倒れてしまう。
「ウィザーモン。大丈夫?」
タケルが心配そうに声をかける。
「私が手を貸そう」
「すまない・・・・」
裕明がウィザーモンに肩をかし、皆は展望台へと向かった。
あとがき
原作で、メガシードラモンはズドモンに負けましたが、他のデジモンと違い、粒子になって消えず、海に沈んでいったので、死んでないと思ったのですが、仮に生きていたとしてあの後のメガシードラモンの事が気になります。
UMA
にでもなったのでしょうか?相変わらず良介君の登場シーンが短くて申し訳ありません。