この物語の世界は良×クイの流れとなりますので、原作(リョウさんの作品To a you side アニメ 魔法少女リリカルなのは)と異なる部分があります。

以下の部分が原作と異なります。

 

物語の開始時の良介君の年齢がリョウさんの原作では17歳ですがこの世界では15歳〜16歳。

良×クイなので、クイントさんはゲンヤのとっつぁんと結婚していません。 ←ゲンヤのとっつぁん・・・・すみません・・・・。

ゲンヤと結婚していないので、クイントのファミリーネームは「ナカジマ」ではなく、作者がつけたオリジナルとなります。

ギンガとスバルも登場させますが、戦闘機人としてのギンガ・スバルではありませんし、戦闘機人としてのギンガ・スバルはこの世界には存在していません。

ギンガ・スバルの年齢も原作と異なります。 原作ではなのはとギンガは2歳差 スバルは4歳差ですが、もっと開きます。

 

 

では、本編をどうぞ・・・・。

 

 

少年剣士とお姉さんな戦乙女

 

 

「さて、行くとするか・・・・」

桃の花が真っ盛りな3月の初旬。

物心ついたときから住んでいた児童養護施設・・・・。

義務教育の終了と同時に俺はソコを旅立つ事にした。

他の同期の連中は施設の近くにある町工場や小さな商店に就職したり、一部の頭の良い天才君なんかは奨学金が支給される高等学校へ進学し、もう数年はこの施設に世話になる奴も居たが、俺はそのどちらも属さなかった。

着替えや数少ない私物の入った少し痛んだバストンバック片手に俺は旅立った・・・・。

 

 

「よし、こんなもんだろう」

今、俺の手の中には、剣、と呼ぶには貧相な出来そこないの木刀が握られている。

山中で拾った太い木の枝を、刀に似せて作った貧相な物。

何の道具もなく、腕力に物を言わせて折っただけ。

俺の孤独を支えてくれる力・・・・。

俺だけの獲物・・・・。

正直に言うと本当は日本刀が良かった。

某剣客漫画に出てくる新撰組の三番隊組長も「刀は日本刀に限る」と言うぐらい、日本が世界に誇る武器。

男女問わず、自分の中で一度は夢見る憧れの理想像――

俺が描いた自分の理想は侍だった。

アニメより時代劇、銃より刀を好きになった子供の頃。

当時と違い、明治の世で廃刀令が出されてから持ち歩くだけで犯罪なのは理解しているが、ガキの憧れなんてそんなものだ。

色々な町の骨董品屋や刀剣類の店を回って見たのだが、日本刀は高い。

伝統芸術品としても一級の価値があるとかで、平気で数十万・数百万単位で売られている。

当然のごとく、その日暮しの俺にそんな大金がひねり出せる訳がなかった。

木刀を買ってもいいのだが、きちんと成型された木刀もまた値段がついている。

学校の剣道部で捨てられた木刀でも良いやと思って探したが、そう簡単に木刀は壊れるような物ではなかった。

拝借しようにも学校の木刀には刻印がされており、身元がバレるので、止めた。

壊れた竹刀ならば沢山あったが、ほとんどが修復不可能だった。

身寄りのない旅人が持てる刀は、山に埋もれる木切れだった。

形からという言葉もあるが、情けなさを感じるのは事実。

せめて、中身から鍛えていく事にしよう。

この手に何もないからこそ、せめて壮大に夢を描きたい。


男なら一番
――侍ならば、天下人。


俺の名前は宮本 良介。

天下を目指す男だ。

始まりを今日に定めて、俺は広大な春の空を見上げた。

 

 

 

 

と、勇んで旅立ったのはいいのだが、旅立った途端、俺は窮地に陥った。

財布をどこかに落としたのだ・・・・。

もともと大して入っていた訳ではないが、それでも俺にとっては貴重な財産であり、この先の食料を確保するためには必要不可欠なものだったのに・・・・。

俺は財布を探しながら見知らぬ街を彷徨った。

すると、目の前に財布ではないが、宝石のような石が落ちていた。

宝石店か質屋に持って行けば当分の生活の足しになるのではないかと思い、俺はその宝石に手を触れた。

その瞬間、宝石が眩い光を放ち始めた。

もしかしてコレ、宝石型の爆弾だったのかと思い、手の中の宝石を放り投げようとしたが、その瞬間俺の体は奈落の底へ落ちて行く様な感覚に陥った。

やがて、奈落の底なのか、尻を思いっきり打った。

痛む尻を手でさすりながら辺りを見渡すと、そこは誰かの家の中だった。

「あの・・・・」

そして俺の背後から女の声が聞こえた・・・・。

「え?」

振り向くとそこには長い明紫色の髪をした女が立っていた。

「貴方は誰?どこから来たの?」

俺は女から名前を尋ねられたので、

「俺の名前は宮本 良介。天下をとる男だ。・・・・で?アンタは?」

堂々と目の前の女に自分のことを名乗った。

「私の名前はクイント・・・・クイント・インテグラ」

すると、目の前の女も自らの名を名乗った。

 

 

???side

 

私同様、管理局に勤めていた父がある日、仕事中に殉職をした・・・・。

母は私を産んだ時、私の命と引き換えにこの世を去った。

父が言うには、私と違い元々病弱な体質だったらしい。それから父は仕事をする傍ら、男手一つで私を大切に、そして立派に育ててくれた。

そして私はそんな父の役に立ちたい一心で小等部を卒業後、中等部へは進学はせず、管理局の局員育成の訓練校へ入り、若くして管理局の局員となった。

しかし、父は局員となった私に複雑な表情をしていた。

局員は時には命をかけて仕事(任務)を行う時があり、その過程で命を落とすこともある。

父にとって私は母の忘れ形見なのだから、できれば普通の女性として生活を送って欲しかったのだろう。

そんな中、父が突然この世を去り、私は一人ぼっちになってしまった・・・・。

運悪く、母の親戚も父の親戚も皆、早くにこの世を去ってしまい、天涯孤独となった。

局員だったため、収入はあったが、やはり一人は辛い・・・・。

そんな中、その人は突如として現れた。

家の中でただ一人、今日のお夕飯どうしようか考えていた中、突然目の前が光ったと思ったら、ボストンバッグと木の枝を腰に差した男の子がそこにいた。

一瞬、泥棒かと思ったが、男の子は突然の事態に状況が把握できていないようで、強く打ったお尻を、手でさすりながら辺りを見回していた。

「あの・・・・」

私は恐る恐る男の子に声をかけた。

「え?」

男の子が私の声に反応し、こちらを見た。

「貴方は誰?どこから来たの?」

私が名前を尋ねると、

「俺の名前は宮本 良介。天下をとる男だ。・・・・で?アンタは?」

と、男の子は自分の名前を名乗った後、少し夢見がちな事を言った。

「私の名前はクイント・・・・クイント・インテグラ」

私は静かに自分の名前を名乗った。

 

??? side out

 

 

二人は互いに自己紹介をした後、良介はここがどこなのかクイントと名乗った女性に尋ねた。

「ここはミッドチルダの首都、クラナガンにある私の家よ」

「・・・・みっど?・・・・・くらな?」

「クラナガン」

良介はクイントの言う地名にまったく思い当たる所が無く、頭の上に?マークを飛ばしている。

(ここは外国じゃないし、そんなハイカラな県や市、町の名前なんて聞いたこともない)

「貴方はどこから来たの?」

「俺か?俺は日本の・・・・県の・・・・ってところだ」

「どこ?それ?」

今度はクイントの方が、良介の出身地に思い当たる場所がない様子だった。

「日本を知らないのか!?」

「そんな世界聞いたことがないわね」

「ちょっと待て!!地球の中じゃ、結構メジャーな国だぞ!!それよりミッドチルダってなんだよ?そんな名前の町や市の名前なんて聞いたこともないぞ!!」

「町の名前じゃないわ。ミッドチルダっていうのはこの世界の名前よ。貴方の言う地球って一体何?」

「えっ?」

クイントの口調から地球なんて知らないという言葉に良介は、

(コイツ、大丈夫か?ファンタジー小説の読みすぎで現実と空想の区別がついていんじゃないのか?)

と、勝手にクイントを危ない奴と思い込んだ。

一方クイントの方も、

(この子大丈夫かしら?突然現れたということは、転移してきたのよね・・・・もしかして衝撃で頭が変になったのかしら?)

と、良介と同じようなことを考えていた。

しかし、ここで転移してきたということで、新たな可能性に気がついた。

「貴方、もしかして、次元漂流者?」

「な、なんだ?その次元漂流者っていうのは・・・・?」

クイントは良介に次元漂流者の事、ミッドチルダのことを話した。

「それじゃあここは地球じゃないのか!?」

「え、ええ・・・・貴方は恐らく何らかの理由でその地球と言う世界からこの世界に跳ばされてきたんだと思うわ」

「・・・・」

あまりにも信じがたい現実を突きつけられ、唖然とする良介。

「あ、でも、大丈夫。その地球と言う世界が見付かればそこに送り返してくれるはずだから」

クイントは良介に地球に帰れると言うが、

「いや、別にいい」

と、良介は地球に帰らなくても良いとあっさりと言い出した。

「えっ?で、でも家族の人が心配するでしょう?」

「俺は物心つく前から一人だった・・・・親父やお袋の顔も名前も知らない」

「ご、ごめんさない」

良介の家族の事を聞き、クイントは聞いては不味かったと思い。良介に謝罪する。

「いや、別に気にしていないから」

良介の方は覚えの無い両親の事は特に気にしていない様子。

 

「それでこれからどうするの?」

クイントが良介にこれからの事を尋ねる。

良介本人は地球に帰らなくても良いと言う事は、彼はこの後、自分の見知らぬ世界で生きて行こうと言う事だ。

「特に行き先とかは決めていない。俺はコレで天下に名を轟かせたいと思っているから」

そう言って良介は木の枝(本人にとっては刀)を構える。

「・・・・」

その様子をクイントは唖然とした表情で見ていた。

そりゃ、木の枝で天下に名を轟かせると言われたら、どうリアクションをとれば良いか不明である。

まぁ、幼稚園児くらいの年頃ならば、「そう、頑張ってね」と、言えるが、今の良介の年頃で言われればリアクションに困るのは当然である。

「と、とりあえず。今日は泊まっていく?もうすぐ暗くなるし・・・・」

「えっ?良いのか?でも、アンタの家族に了解をとらないと・・・・」

「私も・・・・家族が居ないから・・・・」

「えっ?」

家族が居ないと言った時のクイントは少し俯いて哀愁が漂っていた。

「す、すまん・・・・」

今度は良介の方がクイントに謝罪する事となった。

クイントの様子から今のクイントの家庭環境が理解できたからだ。

「大丈夫・・・・もう慣れたから・・・・それよりも、久しぶりに他の人と食事を摂れるから、今日は少し頑張れるわ」

先程の様子とはうってかわってクイントは明るい表情となる。

そんなクイントに良介は、

「なぁ、アンタ・・・・」

「なに?」

「もしかして友達が居ないのか?」

と、失礼な事を尋ねる。

「なっ!?」

突然、失礼な物言いにクイントは面食らうが、

「そ、そんな訳ないじゃない!!た、たまたま親友(メガーヌ)が研修でミッドを留守にしているだけよ!!本当よ!!決して友達が居ない訳じゃないからね!!」

ビシッと良介に指を突きつけ、友達が居ない事を必死に否定するクイントだった。

その必死さから良介はこれ以上何も言わなかった。

 

 

翌日、良介はクイント共に管理局へと赴き、住民登録手続きを行った。

次元漂流者である良介本人が元の世界(地球)への帰還の意志が薄いため、「この際、ここの住人になっちゃえば?」とクイントに言われたので、登録したのだ。

住民登録する際に、簡単な魔力検査も同時に行われた。

良介自身の魔力数値は低いが、それ以外に、未知の力が秘められていた事が分かった。

例え、魔法以外の未知の力を秘めていると分かっても良介は特に嬉しい様子は無く、「あっそう・・・・」程度で済ませた。

良介は魔法よりも剣の道を極める事が目的だったのだから・・・・。

登録を終え、もう、この場に用は無いと良介は去って行こうとする。

去って行く良介をクイントが眺めていると、

「クイント、さっきの彼、どこに行ったの!?」

クイントの後ろから息を荒げながら先程良介の魔力を測定したマリエル・アテンザ技術官が慌てた様子で来た。

「あそこだけど・・・・」

「引き止めて」

「えっ!?」

マリエルはクイントに良介を引き止めてと慌てて言う。

「どうして?」

「彼の未知の力・・・・とっても魅力的じゃない!!」

研究者魂に火でもついたのか、クイントも引く勢いで迫ってくるマリエル。

「でも、彼・・あまり魔法とか興味ないみたいよ・・・・」

「だったら・・・・」

マリエルは「我に策あり」と言わんばかりに良介を引き止める策をクイントに言った。

 

 

「本当だろうな?」

良介がジト目でクイントに尋ねる。

「本当だって!!少し、研究に協力してくれれば管理局の知り合いが刀・・・・だっけ?それをプレゼントしてあげるって・・・・しかもタダで・・・・」

「・・・・」

良介としては欲しかった刀をタダでくれると言う話は渡りに舟、棚から牡丹餅だったが、その「タダで」という部分になんとなく胡散臭さを感じた。

「少なくともその樹の枝よりは様になると思うけど?」

「・・・・」

クイントに愛刀の事を指摘され、渋々協力する良介だった。

 

それから良介はマリエルに付き合って研究の手伝いをするハメになった。

研究が終わるまで良介はクイントの家に下宿することとなった。

「今日の夕食はどうする?」

「う〜ん・・・・」

二人で買い物もよくするようになった。

宿泊先と食べ物を提供させて貰っているので、たまにクイントが仕事で遅く帰って来る時はお世話になっているので、良介自身が腕を振るうこともあった。

施設時代、食事は当番制だったので、良介はまったく料理が出来ない訳ではなった。

「今日は魚料理がいいな」

「それじゃあ・・・・コレなんてどう?」

「いいね」

こうしてみると、仲の良い姉弟の様にも見える二人だった・・・・。

 

思考錯誤しながらようやく完成したデバイスとかいう愛刀・・・・。

魔導士と呼ばれる他の奴が使っているデバイスとは少し違うらしい。

多異形はなるも、八割は日本刀の形をしている。

型を撮るのにマリエルはベルカ地区にあるベルカ騎士のデバイス店や無限図書へと赴き、形を見て、研究してきた。

「おぉーこれが俺の愛刀・・・・」

良介はここでようやく手にした刀らしい刀・・・・自分の愛刀を手に持ち少し興奮気味。

「ええ、そうよ。これからそのデバイスの説明をするわね。まず・・・・」

マリエルがデバイスの説明をし始めたが、良介は元々ミッドの住人ではないし、初めて手にした愛刀に興奮気味でマリエルの説明はあまり理解できなかった。

愛刀を持ち喜んでいる良介に、

「始めましてマスター」

と、デバイスが良介に挨拶をしてきた。

「うわぁ!!刀が喋った!?」

突然、デバイスから話かけられ、驚いたあまりにデバイスを床に落としてしまった良介。

「あっ、其のデバイス、インテリジェンスだからAIを搭載しているのよ」

マリエルが「忘れてた」と言わんばかりに、デバイスの種類を言う。

「い、インテリジェンス?」

マリエルが言うにはデバイスには大きく分けて三つあるとの事だ。

一つは今、良介が貰ったAI機能が搭載されたインテリジェンス・デバイス

もう一つはAIが搭載されていないストレージ・デバイス

そして三つ目は、今は存在が確認されていない自立融合型のユニゾン・デバイス。

「そ、それで、コイツにはAIって奴が搭載されている・・・・っと・・・・」

「ええ」

「でも何で?」

「あなたの性格上無茶しそうだから、お目付役にと思って」

(なんか妖刀みてぇ・・・・)

今でもピカピカとメーターのような部分を点滅している愛刀を見ながらそんなことを思っていた。

AIが搭載されているインテリジェンスはかなり高価な物らしいが、デバイスの価値を知らない良介にはインテリジェンスがそのくらい、高価な物なのか分かる筈もなかったが、タダで貰った物だったので、このAI機能を外してくれとは言えなかった。

 

その後、訓練場である程度の機能を確認した。

研究に協力したし、愛刀も手に入ったので、これで俺は自由だ!! と、思っていたが、まだまだ調節が必要らしく、もう少し此処に通ってほしいらしい。

良介としては早く武者修行の旅に出たかったのに、まだここに足止めを喰らうのに少し不満だった。

そんな良介にクイントが、

「強い人なら私が紹介するわよ。それに剣術系の道場ならあてが有るし」

「なっ!?なんでそれを早く言わないんだよ!?」

思わず、クイントに噛みつく良介。

「デバイスが完成していなかったら貴方、あの木の枝で戦う事になっていたのよ?」

「うっ・・・・」

「あんな木の枝じゃあ、三十秒も持たなかったわよ」

「・・・・」

確かにクイントの言う事も一理有りだった。

「で、でも、これでデバイスは手に入った訳だし、良いんじゃない?」

マリエルが空気を和ませようと恐る恐る言った。

「そう言えばデバイスにはそれぞれ名前が有るんだけどこの子は何て言う名前なの?」

クイントがマリエルに良介のデバイスの名前を尋ねる。

「まだ無いわよ。良介君がつけてあげて」

「えっ!?名前・・・・う〜ん・・・・」

突然名前をつけてあげてと言われて、すぐに名前が思いつく訳がなく、考え込む良介。

「う〜ん・・・・・それじゃあ・・・・妖刀 ドドリー・・・・」

「嫌です!!」

良介の言う名前を一瞥する良介のデバイス。

「えー・・・・それじゃあ・・・・・ブ○リー」

「へぇあ!!なんなんだぁ〜その名前はぁ?」

それから良介は思いついた名前をあげていくが、良介のデバイスはそのあげた名前をことごとく却下していった。

「コラ!!ちょっとは手加減しろ!!」

「手加減ってなんだ?」

そんなやり取りが続き・・・・

「彼にここまでネーミングセンスが無いとは・・・・」

「今日中に帰れるかしら?」

「帰れるといいな・・・・」

マリエルとクイントが良介とデバイスのやり取りを呆れながら眺めている。

「それじゃあ・・・・武蔵」

「ムサシ?」

「ああ、昔、俺の国に宮本 武蔵って言う剣豪がいたんだ。俺の苗字も宮本・・・・そして俺はその宮本 武蔵のような大剣豪になりてぇ・・・・そんな思いを込めてお前にその大剣豪の名前を送る」

「ムサシ・・・ムサシ・・・・良い名前ですね・・・・それでいきましょう」

ようやく決まったデバイスの名前・・・・。

かつて極東の島国にその名を轟かせた大剣豪の名前・・・・。

一人の少年剣士が目指すその領域・・・・。

その思いを込められてつけられたデバイスの名前・・・・。

「これからよろしくな・・・・ムサシ」

「了解。マスター」

クイントとマリエルは微笑みを浮かべながら少年剣士とその相棒となったデバイスの姿を見つめていた。

 

 

デバイスを手に入れたからといって強くなった訳ではない。

約束通りクイントに紹介された人物・・・・。

クイントの上官であり、首都防衛隊の隊長を務めるゼスト・グランガイツ。

勇んで彼に挑戦した良介は当然、敗北した。

まぁ、ヒヨっ子剣士に負けるようでは首都防衛隊の隊長は務まる筈が無い。

分かっている・・・・分かっていも割り切れない・・・・。

強さを求め、旅に出た良介に大きな壁が立ち塞がった。

 

漫画・アニメの様に山にでも籠るかと思っていた良介に、デバイスの製作者のマリエルが、ミッド南部に門を構えるのとある道場を紹介した。

抜刀術天瞳流 門にそう書かれた看板を掲げる道場は日本の剣術道場となんら変わらない佇まいだった。

「な、なぁ・・・・マリエル」

「はい?」

「本当にミッドって魔法の世界?」

「そうですよ。何をいまさら」

マリエルはそう言うが、良介にはにわかに信じられなかった。

良介が抱く魔法のイメージと言ったら、ゴスロリっぽい衣装に身を包んだ女の子が魔法のステッキを持っているか、黒いローブをきた老人が木の枝っぽい杖を振る印象があったのだが、このミッドに来てそのイメージは崩壊した。

クイントはローラーブーツにナックル・・・・。

ゼストは槍・・・・。

そして目の前の道場では、刀を振っている師範と門下生達・・・・。

これが魔法と言われても少々無理があった。

しかし、その違和感をいつまでもそれを引き摺っているわけにもいかず、無理矢理納得しつつもマリエルの紹介した道場に良介は通い、まずは、道場最強、そして、打倒ゼストの修行に入ったのだった。

 

 

クイントの家から道場やマリエルの下に通う日々を過ごしている中、クイントの職場ではいつの間にか良介とクイントが付き合い同棲しているから、いつ結婚してもおかしくないと言う噂がにわかに囁かれた。

クイントはこの噂を否定しつつも、良介と過ごす日々を楽しんでいた。

そんなある日、良介が、「もうすぐマリエルから給料が貰えるので、ここから出て行く」と言いだした。

クイントはその事に物凄い寂しさを感じるのと同時に良介と離れたくないという思いがあった。

そしてその思いに行きつく先で、自分はいつの間にか彼を・・・・宮本良介を愛していたのだと自覚した。

その愛している男が今、ここを・・・・自分の前から消えようとしている・・・・。

そうなれば、また自分はこの家でまた独り・・・・。

嫌だ・・・・

そんなの嫌だ・・・・

彼にこの思いを伝えて引き止めたい・・・・。

でも、自分はこれまで、異性との付き合いはなく、恋愛は下手だ・・・・

それは自分でもちゃんと自覚している・・・・。

でも、ここで諦める訳にはいかない・・・・。

だから・・・・

 

「ね、ねぇ・・・・良介君」

良介を引き止めるため、クイントは勇気を振り絞り、良介に声をかけるが、その声は少し、裏返っている。

しかし、良介はそんなクイントの様子にまったく気が付いていない様子。

「ん?どうした?」

寝間着姿の良介は寝室のベッドで雑誌を読みながら横になっていた。

クイントの訪問を受け、手に持っていた雑誌を置き、上半身をムクッと起きあげ、クイントの方へと視線を向ける。

「りょ・・・・良介君・・・・その・・・・わ、私を貴方の物にしてください!!」

「は?」

意を決したクイントの言葉に良介は固まっている・・・・というか、思考が追いついていない。

「私と結婚を前提に付き合ってください!!」

「なっ!!ちょ、ちょっと待て!!少し落ち着け!!ほ、ほら、あれだろう?少しだけ一緒に暮らしていたから愛着がわいたとか・・・・感覚が狂ったとかそんなんだろう?」

ようやくクイントの言葉の意味を理解した良介はタジタジ。

今までの人生を好き勝手に生きてきた良介に恋愛なんて経験することの無かったジャンルであったため、突然のクイントの告白に混乱した。

そんな様子の良介にクイントは、

「私は至って正常よ・・・・私は他の誰かが良介君を取る前に証が欲しい・・・・私は良介君が欲しい・・・・」

「ちょ!!」

「無理に出て行くなんて事なじゃない・・・・二人で一緒にいる・・・・それがとても温かく楽しい事なんだから」

クイントは寝間着の上着のボタンをプチプチと外しながら良介に迫る。

寝間着だったので、胸にはブラをつけておらず、上着が取り除かれたその下にはクイントの見事な乳房が姿を現す。

「お、落ち着け・・・・なっ?少し冷静になろう?今なら引き返せるぞ・・・・」

「私は至って冷静です。・・・・それに私は少し、期待していたんですよ・・・・良介君が襲ってくることに・・・・それなのに良介君ったらちっとも襲ってこないで・・・・」

「いやいや。俺、そこまで鬼畜じゃないから」

冷静を取り戻そうとクイントの言葉に突っ込みを入れる良介だったが、内心は焦りに焦りまくっている。

「だから、私が良介君を襲う事にしたの」

「おい!!」

クイントは良介の体に収まるように歩いていく。

パサリと落ちた寝間着のズボンは足に引っかかっているがそんなのを気にせず、良介がいるベッドに乗り、目の前まで顔を近づけて、良介の身体に自らの身体を当てる。

「りょうすけ・・・・んっ・・・・」

クイントは熱に火照った顔で良介に口づけをする。

「く、クイント・・・・」

「今夜は・・・・寝かせないわよ・・・・」

「い、いや・・・・それ、セリフが逆じゃ・・・・・アーッ!!」

その後、クイントの言葉通り、良介はクイントに食われた。

 

 

「うぅ〜・・・・も、もう御婿にいけない・・・・」

「大丈夫よ。私が貰ってあげるから♪〜」

普通なら男女逆のセリフの様だが、良介はベッドの上でシクシクと泣いていて、反対にクイントは満足そうな表情をしていた。

良介はそんなクイントが気に食わなくなり、

「うぅ〜・・・・お前ばかり満足しやがって!!こうなれば自棄だ!!」

「えっ!?ちょっ・・・・!?」

そう言って今度は良介がクイントに襲い掛かった。

「今夜は寝かせないんだろう?」

「えっ・・・・でも・・・・その・・・・優しく・・・・して・・ね・・・・・」

「それは少し無理かも・・・・」

こうして二人は、徹夜でお互いの身体を求めあった。

 

 

そして朝になり・・・・

 

「うっ・・・・うぅ〜・・・・」

クイントがベッドの上でけだるい声をだしている。

昨夜、お互いに初めて肌を重ねた二人であったが、最初にクイントが良介に襲い掛かった以外、後は良介が一方的にクイントに襲い掛かっていた。

しかし、クイントの方は、自分が描いたシナリオ通りに事が運び、満足そうだったが、一つのミスをした。

それは良介の体力を舐めていた事だった。

日々、道場で稽古を続けてきた彼の体力はハンパ無く、

その日は体を動かすことが出来ず、良介自らが、クイントの職場に連絡をいれた。

ついでにクイントの世話も行った。

 

それから半年後、良介とクイントは結婚し、ようやく身を固めた。

周囲からしてみれば、「やっとか・・・・」みたいな空気があった。

そして結婚から一年後、クイントは女の子の赤ちゃんを出産し、その子にはギンガという名前がつけられた。

 

ギンガが生まれてから暫くしてマスコミにある少女の名前が出始めた。

少女の名前は高町 なのは

良介と同じく地球の・・・・日本出身の少女だった。

そんな中、クイントが突然、旅行へ行こうと言い出し、向かった先は良介の生まれ故郷・・・・第97管理外世界、地球・・・・・

地球の日本、神奈川県にある海鳴市・・・・。

そこは高町 なのはの生まれ故郷だと言う。

良介がクイントに何故、旅行先にここを選んだのか聞くと、

高町 なのはの実家が喫茶店をしており、そこのシュ―クリームが物凄く絶品なのだと言う情報を掴み、自分も食べてみたくなったのだという。

「シュークリームの為に、わざわざ、他の世界に旅行へ行くか?」

と、良介が問うと、

「良介君もたまには里帰りをしてみてみ良いんじゃない?」

と、ついでに里帰りも薦められ、クイントと共に地球へ旅行することになった良介だった。

 

翠屋と看板に書かれた建物の中に入ると、そこはレトロな感じのある喫茶店だった。

「「いらっしゃいませ」」

カウンターの反対側には従業員と思しき男女の姿があった。

「何名様でしょうか?」

「えっと・・・・この子を入れて三人・・・・」

クイントが良介に抱きあげられているギンガを入れた人数を言うと、

「それでは禁煙席でよろしいでしょうか?」

女性の従業員がギンガの姿を見て、禁煙席を勧めてきた。

「はい」

「では、こちらへどうぞ・・・・」

女性従業員の案内でテーブル席に着く良介達。

「ご注文がお決まりになりましたら、お呼び下さい」

そう言って女性の従業員は再びカウンターの反対側へ戻っていった。

 

注文する品が決まり、従業員の人に品を注文すると、従業員の人はギョッとした顔をした。

そりゃ、シュークリームを30個注文・・・・しかもテイクアウトではなく、この場で食べるとなれば驚かない方が不思議だ。

クイントは皿に積まれたシュークリームの山をキラキラとした目で見つめ、

「それじゃあ・・・・いただきます」

従業員の業員の人や店に居た他の客もクイントの食欲にはギョッとした目で見ていた。

ただ、良介だけは既にクイントの食欲に関してはもう耐久性がついたのか、満面の笑みを浮かべてシュークリームを食べているクイントを見ていた。

 

「ごちそうさまでした」

クイントは30個あったシュークリームを5分も掛からない内に平らげてしまった。

「す、凄い食欲ですね・・・・」

良介達のテーブルの傍には案内をした従業員の女性が立っていた。

「ええ、とても美味しくてつい・・・・」

「そう・・ありがとう」

クイントの笑みと嘘偽りの無い様子に従業員の女性も嬉しそうだった。

その後、この従業員とクイントは馬が合ったのか、世間話に花を咲かせていた。

この女性の従業員、名前を高町 桃子と言い、なんとあの高町 なのはの母親なのだと言う。

良介の印象として桃子はその外見からとても子供のいる母親には見えなかった。

「クイントさん達は御姉弟ですか?」

桃子がクイントに良介とギンガとの関係を尋ねてきた。

まぁ、桃子同様、クイントもその外見からとても一児の母親には見えないから、桃子が姉弟と間違えるのも無理はなかった。

「いえ、私達はふうh・・・・」

「はい!!そうです!!」

クイントが桃子の答えを否定し、自分達は夫婦だと言いそうになった時、クイントの声よりも良介が大きな声をあげて、クイントの声を遮った。

「どうしたの?」

「クイント、日本では男子は18歳以上じゃないと結婚できないんだよ」

「面倒な国ね・・・・」

ミッドでは労働基準法が事実上、白紙な状態で、序でに結婚年齢も日本と違い、男女ともに15、16で結婚可能と定めているため、ミッド出身のクイントにしてみれば面倒な法律だと思った。

 

地球への旅行から暫くして、クイントのお腹に再び新しい命が宿った。

クイントは良介との結婚後、正規局員から嘱託局員とランクを落とし、管理局務めをしていた。 

そんな中、クイントの正規局員時代からの上司であるゼストが密かに進めていた戦闘機人製造プラントの一斉摘発・・・・。

そこには親友のメガーヌも含まれていたが、クイントは既に嘱託局員であり、さらに妊婦であると言う理由から摘発の情報は一切知らされなかった。

 

そして摘発が行われたが、どこからか情報が事前に漏れており、突入したゼスト隊は全滅、ゼストとメガーヌの遺体は発見されなかったが、生存の可能性は極めて低いと判断され、殉職という結果となった。

上官、親友、同僚や部下を一度に亡くしたクイントはショックを受けた。

良介も「これでゼスト隊長を倒す機会を永遠に失った・・・・」と呟いた。

 

ゼスト隊全滅の知らせを聞いたその日からクイントは笑みを浮かべることもなく、また食事の量も減っていった。

父親を失った時には、クイントの周りにはまだ、大勢の仲間達がおり、さらに良介もそこへ加わったため、深い悲しみに包まれる事をかろうじて防ぐ事が出来たが、今回はその時、自分を慰めてくれた大勢の仲間が皆死んでしまったことからクイントは深い悲しみに押しつぶされてしまった。

良介が悲しみを紛らわすため、どこかへ出掛けに連れ出しても、ちっとも楽しそうでなく、時折笑みを浮かべるが、それはクイント本来の笑みでは無く、どこか無理をして笑みを浮かべているのが分かる。

良介本人としては、クイントが食事の量を減らしている事が気がかりだった。

今のクイントはクイント一人の体ではなく、お腹の中にはもう一つの命が宿っている。そんな大事な中、クイントが悲しみの所為で半ば生きることに諦めかけている・・・・。

このままではお腹の子はもとよりクイント本人の生命に関わる。

そこで、良介は・・・・

「なぁ、クイント・・・・しばらくミッドを離れよう・・・・」

「えっ?」

ミッドから引っ越す・・・・。

その言葉にクイントは驚いた。

「勘違いするな。ゼストさんやメガーヌを忘れるためにミッドを引っ越す訳じゃねぇ・・・・でも、今のここはお前にとって楽しかった思い出と悲しい思い出が交差する場所だ・・・・そして、今のお前は悲しい思い出ばかりに支配されて、生きる気力を失いかけている・・・・せめてその踏ん切りがつくまで、他の世界でリハビリをしよう・・・・」

「・・・・」

クイントは良介の言葉を理解しているが、完全に納得している訳ではない様子。

そんなクイントに良介は抱きつき、

「今のお前を見ているのは辛いんだ・・・・クイント・・・・今、お前の身体はお前だけの身体じゃないんだ・・・・」

良介にそう指摘され、クイントは渋々ながらも首を縦に振った。

 

良介、クイント、ギンガの三人は地球の海鳴市へ一時的に引っ越した。

海鳴を選んだ理由として、地球は良介の故郷でもあり、以前旅行した海鳴ならば、クイントも知っている・・・・それにクイントが好きな翠屋もあるし、そこで知り合った高町 桃子もいる・・・・それらの要素からクイントのリハビリ先に海鳴が選ばれた理由であった。

海鳴に引っ越したクイントは良介の薦めで、翠屋へ通う日々が続いた。

良介が事前に桃子に訳を話し、桃子にクイントのカウンセラーを頼んだのだ。

桃子自身も旦那を仕事の最中に亡くし、大切な人を失うと言う点についてはクイントと共通する点があり、ミッドに居た頃と比べると、クイントは次第に明るさを取り戻していったが、まだ決定打が無い・・・・。

何とか、クイントの笑顔を取り戻す方法・・・・

良介は考えた末・・・・。

「そう・・・・そこはあまり泡立てない様に・・・・・」

「は、はい・・・・」

翠屋の厨房でコック服に身を包んだ桃子と良介の姿があった。

そう、洋菓子職人として桃子に弟子入りしたのだ・・・・。

始めて翠屋に来た時、シュークリームを食べている時のクイントの浮かべたあの嬉しそうな笑顔・・・・。

その笑顔を今度は自分が・・・・

自分がこの手で取り戻してやると決意した結果が、桃子への弟子入りだった。

今まで、剣術以外、真面目に取り組んだ事の無い良介が自分以外の人のためにここまで真面目に何かに取り組んだ事はこれが初めてだっただろう。

ようやく桃子から認めてもらい、自分が作ったシュークリームをクイントに食べて貰った時、今までの苦労と成果が功を奏し、クイントは本来の明るさを取り戻した。

良介お手製のシュークリームを食べた後、良介が自分の為に、必死に努力し、桃子に弟子入りをしてまで、自分の笑顔を取り戻そうとした経緯を桃子から聞いた時には、涙を流し、良介に抱きついた。

 

地球でのリハビリを終えたクイント達は再びミッドへと戻った。

 

ミッドに戻った良介はクラナガンの一角に小さな喫茶店を開いた。

クイントから「この味で他の人達にも笑顔を届けてほしい」と、言われ、桃子からも了承を得て、店の名前は「翠屋 ミッドチルダ・クラナガン店」となった。

やがてクイントは無事に赤ちゃんを出産した。

生まれてきた子はまたも女の子だった。

その子にはスバルと言う名前がつけられた。

 

 

長女のギンガは父親(良介)にべったりなパパっ子で、容姿が母親(クイント)に似ていることから、父親の掌中の珠であった。

次女のスバルは長女とは反対に母親(クイント)にべったりなママっ子に育っている。その性格は、幼少期の良介のように、人見知りで寂しがり屋で甘えん坊・・・・。

 

良介は喫茶店のマスターに剣士、父親、その三つを上手く両立しつつ、マリエルが以前紹介した剣術道場に通い、今度師範代試験を受けると言う。

クイントは良介が喫茶店を開いてから、嘱託局員を退職し、良介と共に店を切り盛りしながら、店のウェイトレスを行いつつ、二人の娘達を育てている。

ゼストやメガーヌ・・・・大勢の仲間達を忘れた訳じゃない・・・・。

でも、今の自分には、大切な子供達が・・・・

守るべき大切なモノが沢山出来た・・・・。

大勢の仲間の死を割り切り、戦乙女は旦那である剣士と子供達と共にこれからを・・・・今日も生きて行く・・・・。

愛する大切な家族と共に・・・・。

 

 

あとがき

締めがなんとなくクイントが主人公っぽい終わりになってしまいましたが、クイントも一応、この物語の主人公なので、こんな形にしました。

クイントの名前の由来が自動車メーカー『ホンダ』が販売したクイントなので、クイントの苗字はホンダが、開発したクイントをフルモデルチェンジしたクイントインテグラからインテグラとしました。

洋菓子職人の弟子になった良介君ですが、本来は何年もの歳月が必要ですが、そこは二次小説と言うことで割り切ってもらえれば幸いです。