これは、「魔法少女リリカルなのは」と宮沢賢治先生の作品「銀河鉄道の夜」を合わせた作品です。
尚、本編とは一切関係ありません。
そしてこの物語に登場する宮本良介もリョウさんの作品
To a you sideの宮本良介とは異なる人物です。では、どうぞ・・・・
番外編 リリカルな銀河鉄道の夜 一夜
午後の授業
「では、皆さんはそう言う風に川だと云われたり、ミルクの流れた後だと云われたりしていたこのぼんやりと白いものが本当は何かわかりますか?」
私立聖祥大附属小学校。
私、高町なのはが通う小学校の教室で先生は黒板に吊るした大きな星座の図が描かれた絵を長い物差しで指しながら皆に問いかける。
すると、皆が手を挙げる。
アレがみんな星だということは知っている。
私も手をあげようとしたけど、止めました。
この所、とてつもなく眠い。
私が今、眠い訳。それは夜遅くまで起きているためだ。
何故そんな夜ふかしをしているのか?
その理由は・・・・・・。
「では、高町さん。答えて下さい」
ぼんやりとしすぎていたのか、私は中途半端な形で手を上げており、先生はそんな私を指名したのだ。
「はい・・・・」
私はスっと席を立った。
「では、高町さん。大きな望遠鏡で銀河をよく調べると銀河は大体何で出来ているでしょう?」
先生が再度、同じ様な質問をしてきたので、私は答えた。
「星です・・・・」
「はい、正解です」
先生が私の答えに満足し、私は自分の席に着いた。
「このぼんやりと白い銀河を大きな望遠鏡で見ますと、沢山の小さな星に見えます」
先生は私の答えをおさらいするかのように言う。
そして更に付け足す様に言い続けた。
「この天の川がほんとうに川だと考えるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利の粒にもあたるわけです。またこれを大きなミルクの流れと考えるならもっと天の川とよく似ています。つまりその星はみな、ミルクのなかにまるで細かにうかんでいる脂油の球にもあたるのです。そんなら何がその川の水にあたるかと云いますと、それは真空という光をある速さで伝えるもので、太陽や地球もやっぱりそのなかに浮んでいるのです。つまりは私どもも天の川の水のなかに棲んでいるわけです。そしてその天の川の水のなかから四方を見ると、ちょうど水が深いほど青く見えるように、天の川の底の深く遠いところほど星がたくさん集って見えしたがって白くぼんやり見えるのです」
先生は次に天の川が描かれた絵を黒板に吊るし、物差しで指す。
「天の川の形はちょうどこんななのです。このいちいちの光る粒がみんな私どもの太陽と同じようにじぶんで光っている星だと考えます。私どもの太陽がこのほぼ中ごろにあって地球がそのすぐ近くにあるとします。光る粒即ち星がたくさん見えその遠いのはぼうっと白く見えるというこれがつまり今日の銀河の説なのです。さまざまの星についてはもう時間ですからこの次の理科の時間にお話します。では、今日はここまで」
先生が授業の終了を告げると、タイミングよくチャイムが鳴った。
「起立、礼」
日直の人が号令をかけると、先生は教材を片付け、教室を出ていった。
そして、今日の授業はこれで全て終わった。
教室や各班が割り振られた掃除場所を掃除し、帰りの会を終えると、皆鞄を持って校門を潜り、家へと帰っていった。
(家、帰りたくないなぁ・・・・)
でも、ずっと学校にいるわけにもいかないので、私も鞄を背負い自分の家へと帰った。
重い足を引きずりながら・・・・・
高町家
「ただいま・・・・」
玄関のドアを開け、帰宅の挨拶をするが、中からは何の返答もない。
私は玄関を上がり、リビングを通り抜けるが、そこには昼間人の居た形跡も気配も全くない。
ただシンと静まり返った静寂がこの空間を支配しているだけだった。
私はこの静かさがイヤだった。
広い家・・・・。
父さんと母さんが、家族みんなで住むために買った家・・・・。
でも、誰もいない家・・・・。
そんな家に居るのが嫌で嫌で堪らなく、私は自分の部屋に鞄を置いたらすぐに家を出て公園に向かった。
何かをするわけでもなく、私はベンチに座り、ボォーっとしながら公園にいる人たちを眺めていた。
やがて、太陽が沈みかけると、そういう時間帯なのだろうか、親が子供を迎えに来ていた。
「あ、お母さん」
「そろそろご飯よ。帰りましょう?」
「うんっ!」
私の耳に聞こえてくるのは、楽しげな親子の会話。
「うっく・・・・」
会話を聞いていて鼻の奥がツンとする。
考えるな・・・・。
考えたらダメだ・・・・。
あんな小さい子供に嫉妬するなんて、みっともないにも程がある。
でも、駄目だった。
考えを消そうとすればするほど、考えてしまう。
何で私には、御飯を作ってくれるお母さんがいないんだろう?
何で私には、私を迎えに来てくれるお父さんがいないんだろう?
何で私には、一緒に遊んでくれるお兄ちゃんとお姉ちゃんがいないんだろう?
何で・・・・
何で・・・・
何で・・・・
何で・・・・
何で・・・・
宮本良介
「・・・・・」
ぎゅっと目を瞑り、膝を抱え、声を上げて泣くのを我慢してはいたけど、涙は我慢出来なかった。
そして私は声を殺して泣いた。
涙を流し泣き続けた。
一体何時まで私は泣いていたのだろう?
自分でも何時まで泣いていたのか分からなくなる程、私は公園で一人泣いていた。
私が泣いている間にすっかり日も落ち、公園や街には外灯が灯り、公園にいるのは私一人だけだった。
家でも一人。
公園でも一人なんて本当にやるせなくなる。
でも、家に帰っても誰も居ないし、誰も私のことなんて心配していない。
だから私はもう少しここに居ようと決め、涙で濡らした顔をあげ、夜空の星を見ていた。
普段星なんて見ないのに、今日に限って見ようと思ったのはやっぱり理科の授業に影響されたかな?
そんなことを思いつつ星を見ていると、
「あれ?何をしているの?」
突然声を掛けられた。
私が声をした方を向くと、そこには私と同じくらいの年の一男の子が一人立っていました。
「何をしているの?こんな時間に一人で?」
男の子は私にもう一度質問をしてきた。
「ほ、星を見ていたの」
咄嗟に口から出た言葉だったが、嘘ではない。
「そう言う君は?塾の帰り?」
私もこの男の子が何でこんな時間に公園へ来たのかを聞いた。
「僕?僕はね・・・・」
男の子は夜空を見上げながら公園へ来た理由を話した。
「汽車を・・・・待っているんだ・・・・」
しかし、男の子の話した理由はあまりにも突拍子だった。
「汽車?」
「そう、汽車」
男の子は当たり前のように答える。
えっ?汽車ってあの汽車だよね?
煙を吐いて走る蒸気機関車のことだよね?
いやいや、そんなことありえないでしょう!?
第一、ここには線路なんてないでしょう!?
私はそう思い男の子に聞いた。
「ね、ねぇ」
「ん?」
「汽車ってあの汽車だよね?乗り物の汽車だよね?」
「?それ以外に乗り物の汽車があるの?」
男の子は首を傾げながら私に尋ね返してきた。
「で、でもここには線路何て無いよ」
「線路なんてこれから来る汽車には無用だよ」
「そ、それってどんな汽車なの?」
線路が必要ない汽車なんて想像が着かない。
「う〜ん・・・・説明するよりも見た方が早いかも。あっ、でも家の人が心配しているんじゃあ?」
「家には・・・・誰も居ないから・・・・」
「・・・・そう・・・・・あっ、ここいいかな?」
男の子はそれ以上私の家族の事は触れずに私の座っているベンチに近づく。
「うん。いいよ」
男の子は私の隣に座り、汽車を待つことにした。
「そう言えば名前を言っていなかったね。僕は良介・・・・宮本良介。君は?」
「なのは。・・・・高町なのは」
これが私と良介君との出会いだった。
銀河ステーション
「なのははどうして泣いているの?」
「えっ!?」
突然の良介君の問いに私は声をあげる。
「わ、私は別に泣いてなんか・・・・」
「嘘」
良介君の顔が私の顔の近くまで寄ってきた。
「だってこんなに涙を流してる」
良介君の指が私の目尻に浮かんだままの涙を拭う。
「何か悲しいことでもあったのかい?」
良介君は私の頭を撫でながら尋ねてきた。
「うん・・・・実は・・・・」
私は話した。
どうして私が一人ぼっちなのかを・・・・。
なのはの父親である高町士郎はボディーガードの仕事をしており、その仕事の最中に護衛対象を狙うヒットマンから護衛対象を守り大怪我をして現在入院中である事。
母親の高町桃子は、昼間は自身が経営している喫茶店「翠屋」で働き、店が終わると士郎の看病で病院に行き、家に帰ってくるのが遅い。
高校生の兄、高町恭也と姉の高町美由希も学校が終わると共に剣術道場で行き、この二人も帰ってくるのが遅い。
それに学校が休日の日も兄は朝から晩まで道場に行き、姉はお店の手伝いで、家には殆どいない。
なのはは学校が休みの日さえも一人で過ごしていた。
食事は朝に桃子が作り置きしているので、皆それぞれ勝手に食べるので、食堂では家族の団欒や語らいの場など無く、なのはは一人寂しく食事をとる日が続いている。
結果的になのはは殆ど家の中では一人で過ごしている事となり、学校でも入学してから既に三年も経つのに未だ腹を割って話せる親友と呼べる友達がいない。
そのため、なのはは家でも学校でも一人ぼっちだったのだ。
「・・・・そう・・・・辛かったね・・・・」
「うん」
「でも、寂しいなら、『寂しい』って言えばいい。家族なんだし我侭を言って、泣けばいい。それは、子供の特権だ。そんなこと、求めて当然なんだよ。無理をしてまで自分の心を殺してまで、我慢しなくてもいいんじゃないかな?」
「私だって、お母さんのご飯が食べたい、家族みんなで、食べたい、でも、そうしたら、お母さん、困っちゃうから、私は、『いい子』じゃないと、『手のかからない子』じゃないと、いけないから・・・・でも・・・・でも・・・・」
話していくうちに、なのはの心の堰は崩壊した。
「もう、嫌だ!もう、寂しいのは嫌だ! 一人ぼっちは嫌だ!『行ってきます』って言ったら、『いってらっしゃい』って言ってほしい!『ただいま』って言ったら、『お帰りなさい』って言ってほしい!一人でご飯を食べるのは嫌だ! もっとみんなとお話がしたい! テストで百点を取ったら褒めてよ! 誕生日にはお祝いしてよ! もっと私に・・なのはに構ってよ!私を見てよ!!」
突然泣き出してしまった私を良介君は優しく抱きしめてくれた。
私は良介君に抱かれながら涙を流し続けた。
泣いて、泣いて、泣き疲れてしまった私を良介君はずっと優しく抱きしめてくれていた。
私はどれくらい良介君に抱きしめてもらい、良介君とベンチの上で汽車を待っていたのだろう?
泣き疲れ眠ってしまい、寝ぼけ眼な私の耳にどこからともなく不思議な声が聞こえた。
「銀河ステーション。銀河ステーション」
その声を聞き、目を開けるといきなり目の前がパッと明るくなった。
私は思わず何回も目を擦った。
そして私の目の前にはいつの間にかシューっと白い煙を吐く大きな黒い鉄の塊が・・・・蒸気機関車が止まっていました。
「ほ、本当に汽車が・・・・」
私は目の前の光景が信じられなかった。
街中の・・・・しかも公園のど真ん中に汽車がいつの間にか堂々と止まっているのだから。
ふと、隣を見るとさっきまでそこに居た良介君の姿がありませんでした。
「良介君?」
私は慌てて辺りを見回すと、お客さんが乗る車両に乗り込む良介君の姿が目に映った。
「良介君!!」
私は急いで良介君の後を追った。
「良介君待って!!」
「なのは?」
私の慌てた声を聞き、良介は客車に乗る足を止めた。
「どうしたんだいなのは?」
「良介君。私も・・・・私も一緒に連れてって!!」
私の頼みを一瞬驚いた目で見た良介君であったが、
「うん。いいよ。さぁ、行こう・・・・星の海へ・・・・」
良介君が手を伸ばす私は躊躇することもなく当然のように自らの手を伸ばし、良介の手をとった。
あとがき
なのはの二次小説を書く前から銀河鉄道の夜とのクロスは書きたいと思っており、今回書かせてもらいました。
本来の主人公のジョバンニ役を性別は違いますが、なのはにしました。
カンパネルラ役を誰にしようかと悩みましたが、やはりこのサイトに投稿するなら男性キャラの名前は「宮本良介」しかなかったので、同性同名ですが、カンパネルラ役には良介君の名前を当てました。
流れは原作の銀河鉄道の夜通りですが、多少文字表現が原作のままだったり改変したりしている箇所があります。
この話では、なのは視点で書きましたが、次回からは二次視点で書こうと思います。
では、次回にまたお会いしましょう。