九十三話 ゴエイノヒ 家族愛

 

 

良介はノアの記憶喪失について、検査してもらおうとシャマルの下に来ていた。

はやてからノアの事を知っていたシャマルは快くノアの検査を行なってくれた。

ノアが控え室にて検査着に着替えている最中、良介はノアの記憶喪失について考えていた。

(ノアの記憶喪失は事件によるショックなのか?それとも何か人為的なものなのか・・・・?)

ノアもその頃、検査着に着替えながら自分の父親について考えていた。

(どうしてお父様は私の命を・・・・何故・・・・私、お父様にそこまで憎まれていたの?)

ノアが考え込んでいると、控え室のドアをノックする音が聴こえた。

「着替えは終わりましたか?」

「あ、はい・・・・」

ノアが着替えが終わったことを伝えると、良介とシャマルの二人が控え室に入ってきた。

「あの・・・・貴女は?」

ノアはシャマルに対し、若干警戒気味にシャマルの正体を聞く。

「はじめまして。シャマルと申します。良介さんの友人ではやてちゃんの守護騎士を務めています」

「はぁ・・・・」

良介とはやての知り合いだと言うことで警戒を解くノア。

「ノア、そんなに警戒しなくても大丈夫だ。こいつは昔からの俺の知り合いだからな。・・ちょっと変質的な所もあるが問題はないはずだ・・多分・・・・」

「ちょっと良介さん、変質的なんて酷いじゃないですか!!」

良介の『変質的』と言う言葉に思わず声をあげるシャマル。

「俺が幼児化したときにザッフィーに頼んで隠し撮りしていた奴のどこが変質的じゃないんだ?」

良介がジト目でシャマルを見ると、シャマルは・・・・

「さて、では早速検査をしましょうか?」

良介から視線を逸らし、あっさりと話題を切り替えた。

シャマルとノアが検査機のある部屋へと入り、シャマルが振り返り良介に伝える。

「検査には1〜2時間かかりますので、良介さんは外で待っていてください」

「ああ、分かった」

良介は自販機で飲み物を買い、通路にある待ち合い用のソファーに座り、再び考え込む。

(これでノアの記憶が戻ってくれれば話が早いのだが・・・・)

今回の検査でノアの記憶が戻ってくれることを思いながら、一連の事件において、分かった事を纏めた。

(今回の件で分かった事で、政治家である実父に命を狙われていたのは、ノアだけでなく、妹のイヴも同様命を狙われている・・・・それは何故だ?何故、ノアの父は娘達の命を狙う・・・・?ノアを拉致しようとした管理局の連中・・・・アイツらはゴウゾウの命令で動いているのか?それとも誰か別の黒幕が居るのか?)

(それに気になる人物はまだいる・・・・)

(キザキ邸の事件場に居たと言うノアの叔父ハミルトン・・・・)

(ノアは事件当時の記憶を無くしている・・・・もしかしたら、ノアを消そうとしているのは叔父と言う可能性もある・・・・)

(いや、それを言うなら、ノアの母親・・エフィ自身も怪しい・・・・実の娘を他人に預けておきながら、一度も会いに来るどころか、電話一本寄こさない・・・・)

良介が思考の海にどっぷり浸かっていると、

「検査、終わりましたよ」

シャマルが良介の肩を叩き、ノアの検査が終了した事を知らせに来る。

「ん?あ、ああ・・・・」

 

診察室には、シャマル、良介、ノアの三人の男女が居た。

「ノア、お前は外で待っていろ」

良介はノアを外で待たそうとするが、

「忘れたの?私は保護される立場でもあり、依頼主でもあり、今は貴方のアシスタント(助手)なのよ。それに私自身の記憶の事なのよ」

「・・・・分かった」

ノアの決意を聞き、良介はシャマルの検診結果をノアに伝えることを許した。

 

「結論ですが・・・・率直に言って分からない・・・・そう言った方が正しいでしょう。ノアさんの脳には何の異常も見当たりませんでした・・・・ですが・・・・」

「ですが?」

「実は、数年くらい前に記憶を操作する薬が作られたと言う噂を聞いたことがあります・・・・」

「記憶を・・・・」

「操作・・・・」

「ええ、記憶改ざん魔法と違い、何の痕跡も残さない薬だと聞いています」

「で、でも・・そんな薬本当に有ったんですか?」

「残念ながら、医療の世界に居た私も実物は見た事ないし、管理局でも押収した記録はないから、そんな薬なんて存在せず、ただの噂じゃないかって・・・・」

「しかし、噂が出たいじょう、そう言う薬の開発が行われた可能性もあると言う事だろう?」

「え、ええ・・・・」

「そうか・・・・ノア、行くぞ」

「い、行くって何処に?」

「エターナル製薬・・・・」

「えっ!?」

「お前の母親の会社だ」

良介は、ノアの母親が経営する製薬会社、エターナル製薬へと向かった。

製薬会社ならば、そう言った薬に関する噂の出所や何処かの製薬会社で開発・研究していないか分かるかもしれないと思った。

 

良介とノアはエターナル製薬本社ビルの前に来ていた。

「エターナル製薬・・・・どのみち今回の依頼者であるエフィ・キザキには一度会って話がしたいと思っていた・・・・」

本社ビルをジッと見ながら良介は呟く。

(この依頼をもってきたはやて自身もあまり詳しい話は聞かされていなかったらしい・・・・今回の事件について何か知っている事は間違いない・・・・まぁ、話してくれるかどうかは分からんがな・・・・)

(だが・・もし、ノアの母親がこの事件に関係しているとしてその場にノアを連れて行っていいものか・・・・)

良介はノアの身を案じ、チラッとノアの方を見ると、

彼女は帽子にコード、眼鏡をかけて変装し、やる気満々の様子だった。

 

「失礼ですが、此処は関係者以外立ち入り禁止です」

と、正面玄関前で良介とノアはガタイ良い警備員に呼び止められる。

「アポイントメントはお取りですか?」

「アポは取っていないが、社長に会って話がしたい。宮本 良介が会いたいと言えば、向こうの方が会いたいと言って来ると思うが・・・・」

警備員はジト目で良介とノアを見ながら、無線で確認を取る。

「そういえば・・・・」

警備員が確認を取っている間、ノアが何かを思い出したかのように声を出す。

「この間、管理局の連中が私の事を『サンプル』って言っていたわ・・・・」

「サンプル?それってどういう事だ?」

良介がノアにもう少し詳しい事を尋ねようとした時、

「社長は只今、外出中です。お引き取りを・・・・」

警備員が社長の行方を伝えると共に、良介とノアに帰る様に促す。

「そうか、それじゃあ中で待たせてもらうわ」

良介とノアが警備員の横をスルーして中に入ろうとするが、そうは問屋が卸さない。

二人は警備員の手によってつまみ出された。

その行為にムカついたのか、

「ちょっと!!私を誰だと思っているの!?私は・・・・」

ノアが自分は社長の娘だと言いそうになったのを良介がノアの口を手で塞いで黙らせる。

「ん――っんん――――っっ」

良介に口を塞がれながらもノアは警備員に向かって何かを叫んでいる。

「あの・・・・」

そこに話しかける人物が居た。

「社長に何か?」

良介がノア振り向くと、其処には女性用のビジネススーツを来たキャリアウーマン風の女性が立っていた。

 

エターナル製薬本社ビルから少し離れた公園のベンチにて、良介とノアは先程会った女性から話を聞いた。

「へぇ〜貴女は、現社長の妹さん・・亡くなったエヴァさんの秘書を務めていたと・・・・」

「はい。勿論亡くなられる前の話ですが・・・・あっ、私エターナル製薬秘書課のイザベラ・シーベルトと申します。元は製薬品開発に興味があってこの会社に入社したのですが・・・・」

イザベラと言う秘書は苦笑しながら入社理由を話す。

 

「そう言えば、エヴァさんは自動車事故で・・・・」

「はい。彼女達姉妹は私達・・・・いえ、多くの女性達の憧れでした。エヴァ様の死は本当にショックで世界的に多大な損失で、姉であるエフィ様もかなりのショックを受けておられていました・・・・お子様が生まれてから、何とか元気を取り戻された様で、社員一同ホッとしました」

イザベラの後半部分・・「お子様」と言う言葉を聞き、ノアは帽子を目深に被った。

「あの・・一つ質問したいのだが・・・・」

イザベラがノアの事に感づく前に良介は彼女に質問をして逸らす。

「なんでしょう?」

「記憶を操作する薬・・・・そんな薬の存在を見たり、噂を聞いた事とかありませんか?」

「っ!?」

良介の質問にイザベラは一瞬顔色を変えたが、すぐに顔色を戻し、質問に答える。

「い、いえ・・当社ではその様な薬の製造・研究は・・・・同じく他社でもその様な薬の開発・研究をしている話は聞いたことは・・・・」

イザベラの態度に良介は彼女は・・いや、エターナル製薬または、社長のエフィは何かを隠しているのではないかと思った。

一瞬であるが、彼女が顔色を変えたのを良介は見逃さなかったためである。

「ですが・・・・」

「ですが?」

「例え当社でその様な薬が開発されたとしてもその薬はきっと正義のために使用さえるでしょう。不正に使用される事なんてあり得ません」

「随分な自信ですね」

良介はイザベラの言うその絶対の自信に不審を抱く。

あの「正義」「法の番人」をうたう時空管理局でさえ、不正に汚職、違法な研究を行っていたのだから記憶を操作する薬なんてモノが開発され市場に出回ってもそれは絶対に犯罪に用いられる事は明白である。

にも関わらず、イザベラがその様なことは無いと断言する。

その自信は一体何処からくるものなのだろうか?

「ええ、エターナル製薬の薬は全てエフィ様の管轄ですから」

(な、なんなんだ!?さっきっから社長に対して様付で呼ぶなんて・・ノアの母親は社員に対し、様付を強要する程のドSなのか?)

良介は先ほどからイザベラから様付されているエフィに対し、疑問を感じつつ、

「そうですか・・社長さんは随分と部下からの信頼が厚い方なんですね」

「はい。社長達姉妹は人間的にも女性的にも優れたお方です。私なんて嫉妬するくらいに・・・・」

「・・・・」

「でも、私も科学者の端くれなので分かりますが、科学者とは全て科学の力でどうにかできると思っていますからそんな薬を作ってみたい。開発に成功したらその効果を試してみたいと言う欲求は科学者ならば必ずあるでしょう。またその薬を利用しようとする輩もきっと現れるでしょう」

「・・・・」

「あっ、すみません余計な事を・・・・それでは私は仕事が有りますのでこれで失礼します・・・・」

イザベラは慌ててそう言うと、その場から去って行った。

「匂うわ・・・・」

イザベラが去って行った方向を見ながらノアは呟く。

「何が?」

「彼女、お母様と叔母様に対して嫉妬しているって言ってたじゃない。人間的にも女性的にもって・・・・」

「ああ。そうだな」

「お母様達の幸せの邪魔をしたかったんだわ・・・・はっ!?彼女、きっとお父様の愛人よ!!きっと!!お父様と一緒になるために共謀して私達を殺そうとしているのよ!!きっとそうだわ!!」

「お前な・・・・」

ノアの推理に呆れながらも、

(まぁ、それもあながち考えられなくはないが・・・・しかし、この事件はただの痴情のもつれとも思えないのだが・・・・)

ノアの推理は動機の一つとしては考えられなくもないが、やはり決定にはかけていた。

そんな中、

(っ!?殺気!?)

良介は何処からか殺気を感じ、

「ノア危ない!!」

ノアを庇いながら物陰へと押し倒した。

その直後、先程までノアが立っていた場所に弾丸が撃ち込まれた。

そして、その弾丸を撃ち込んだ人物が姿を現した。

「やはり生きていたのか・・ノア・・・・」

「お父様・・・・」

姿を現した人物・・それはノアの父親ゴウゾウ・キザキだった。

「会いたかったよ、ノア・・・・だが、私はどうしてもお前達を殺さなければならない」

「『ならない』・・だと?自分の子供を殺さなければならない訳とやらを是非ともお聞きしたいね。ゴウゾウさんよ」

良介は愛刀の柄に手をかけて、何故ゴウゾウがノアたちの命を狙うのか、その訳を尋ねる。

「貴方は知らないみたいだな?その娘の正体を・・・・」

「おい、自分の娘をまるで化け物みたいに言うなよ!!」

「化け物?そうだな・・その娘は化け物に近い存在なのかもしれない」

(此奴も俺の両親やプレシアと同類か・・・・)

ゴウゾウの発言を聞き、良介はこのゴウゾウと言う人物も自分を捨てた両親・・この世に生み出した癖に全く愛情を注がなかったフェイトの母親・・プレシア・テスタロッサ・・・・それら、自分の子供達に全く愛情を注がない・・親として人として最低の部類に入る人間だと判断した。

良介とゴウゾウが押し問答をしている中、ノアが良介の一瞬の隙を見て、良介の愛刀を抜いてそれを持ったままゴウゾウの前に飛び出した。

「お、おい!!」

「お父様・・・・一つだけ訊かせて・・・・」

(理由は分からないけど、お父様はやっぱり私達の事を愛していないの?)

ノアは刀の切っ先をゴウゾウに突きつけながら尋ねる。

「私の事が憎い?」

「私がお前の事が憎い?ノアお前はあの時、聞いていただろう?」

「っ!?」

ゴウゾウの言葉を聞いた瞬間、ノアの脳裏に何かがフラッシュバックした。

「私の事を・・殺して・・・・」

ノアが・・・・ノア自身が父に自分を殺してくれと頼んでいる場面が脳裏を過った。

(何!?今の・・・・?)

「ノア・・まさか・・・・まさか、あの薬を投与されたのか!?アレが世間に知られれば大変な事になるからな」

(アレ・・だと?)

「はは・・ハハハハ・・・・ノア・・やはりお前には死んでもらえなければならない様だな・・・・」

ゴウゾウはその銃口をノアに向ける。

彼が持っているのは飛び道具・・・・しかし、ノアの持っているのは、使い慣れていない刃物・・・・。

勝敗は火を見るよりも明らかである。

「くっ・・・・」

それはノア自身も分かっている様で、悔しそうに唇を噛む。

「くそっ」

良介は親指を噛み、血を出すと、

「ブラッディ・ダガー」

自らの血液で錬成したブラッディ・ダガーをゴウゾウに投げつけ、ノアを押し倒す良介。

良介が投げたブラッディ・ダガーはゴウゾウの頬を掠めた。

しかしゴウゾウはノアに銃口を向けたにも関わらず、引き金を引こうとしなかった。

彼の行動が理解できず、ノアは震える声で父に問う。

「どうして・・・・どうして撃たなかったの!?」

ノアの問いにゴウゾウは銃を降ろし、

「私には・・・・私には無理だ・・・・お前を殺すなど・・・・」

「お父様・・・・」

銃を降ろしたゴウゾウには殺気も無く、その目は慈愛・・父性が満ちている瞳だった。

 

「ゴウゾウ・キザキ・・さん・・・・貴方に幾つか聞きたい事がある・・・・管理局の警備課の連中がノアの事を狙っていたのだが、それはアンタの命令か?」

「いや、私は単独で動いている・・管理局には一切関わっていない・・・・」

「そいつらがノアの事を『サンプル』と言っていたのだが、それについて何か知らないか?」

「そ、それは・・・・」

「それは?」

「それは・・・・」

ゴウゾウがその『サンプル』の意味を良介に言おうとした時、

 

パァンッ

 

一発のシューターの閃光がゴウゾウの体を貫く・・・・。

「なっ!?」

「っ!?」

良介とノアの目が大きく見開く。

二人の目の前でゴウゾウの体がグラリと倒れる。

(何処だ?何処から・・・・)

良介は狙撃地点を確認すべく辺りを見回す。

(あのビルか!?)

狙撃地点を突き止め、スナイパーの下に行こうかと思った良介だったが、

「リョウスケ!!」

ノアが良介を呼び止める。

良介が振り返ると、

「お父様が・・お父様が・・・・」

ゴウゾウは胸の辺りを撃たれており、其処からは血が流れ出ている。

どうやらさっきのシューターは非殺傷設定ではなく、殺傷設定で放たれたモノだった様だ。

そしてシューターは心臓付近を掠めており、その負傷箇所と出血量から助からない事は明白だった。

「これは・・・・」

ノアはゴウゾウの胸ポケットから血に濡れた一枚の写真がある事に気づく。

「ノア・・・・欺く事とは言え・・・・お前を・・化け物と・・・・言った事を・・許してくれ・・・・お前達には・・何の・・罪もないのだ・・・・・全ては・・我々・・大人達が・・悪いのだ・・・・ノア・・・・生きろ・・私は・・お前を・・愛して・・・・い・・た・・・・よ・・・・」

弱弱しく震えながら、力なくノアの頬を撫でるゴウゾウの手。

「お父・・様・・・・」

そして、その手は力なく地面へと落ち、それと同時にゴウゾウの命の灯も消えた。

「いやあああ!!」

父の死を目の当たりをし、ノアは大声で泣き叫んだ。

 

そこへ、良介の携帯が鳴る。

ディスプレイを見ると、それははやてからの番号だった。

「どうした?」

「あっ、良介。実はな、こっちで色々調べた所、分かった事があったんよ」

「ああ、こっちも分かった事がある」

「何なん?」

「その前に・・今、ゴウゾウ・キザキさんが死んだ・・・・」

「なんやて!!事故死なんか!?」

「いや、何者かに狙撃された。それとゴウゾウ氏の話では彼と管理局の警備課との接点は無かったそうだ」

「そうか・・・・」

「それで、はやてが分かった事って何だ?」

「それがな・・・・」

はやては独自で調べ上げた事実を良介に伝えた。

「何っ!?管理局との癒着!?エターナル製薬がか!?」

「そうや。良介の話で、ゴウゾウ氏と管理局が繋がっていなかったとしたら、警備課の連中はエターナル製薬が雇ったのかもしれへんな・・・・」

「でも、製薬会社の社長はノアの母親だろう?その母親が自分の娘を攫おうとするなんて妙じゃないか?」

「その辺はもう少し調査してみるわ。エターナル製薬は大きな会社やからな、もしかしたら社長の指示ではなく、他の幹部社員の仕業かもしれへんからな・・・・」

「そうか・・よろしく頼む・・・・ああ、そうだ。イザベラ・シーベルトって言う秘書課の女性社員の事なんだが、何か彼女について知らないか?」

良介は一応、彼女についてはやてに尋ねた。

ゴウゾウ氏が死去した今では、ノアの言った彼女とゴウゾウが愛人関係だったと言う事実は消えたが、それでもイザベラが言った『人間的にも女性的にも優れたお方』『嫉妬する』の言葉が妙に気になったのだ。

「その人については、会社内である噂があったんよ」

「噂?どんな?」

「それがな・・・・」

「何っ!?イザベラがハミルトンの愛人!?」

はやてから齎された情報でなんと彼女はノアの叔父であるハミルトンの愛人だと言う。

「その件ももう少しこっち詳しく調べてみるわ」

「あ、ああ・・それじゃあ何か分かったら、知らせてくれ。それじゃあ・・・・」

携帯をきり、此処まで分かったことを纏める良介。

(ハミルトンとイザベラが繋がっている。イザベラはエフィを嫉妬するくらいと言っていた・・・・しかし、彼女はノアの叔母であり、故人のエヴァの地位までとはいかないが、彼女の旦那(ハミルトン)は手に入れた・・・・ノアの言う通り、彼女もこの事件に関わっているのか?)

(もしそうだとしたら、イザベラとハミルトンが管理局の連中を裏から糸を引いているのか?だが、目的は何だ?)

(エフィに変わってエターナル製薬の社長になる事なのか?)

(だが、それだけの事でノアを狙うか?)

(ノアを人質にして、エフィを脅そうとしているのか?しかし、ノアの事を『サンプル』と言った事も気になるし・・・・)

「うーん・・・・」

良介は考え込んでいると、

「良介」

「ん?」

父の死を受け入れ、泣き止んだノアが良介に声をかける。

「管理局と繋がっていたのはお父様ではなくて、お母様だったのね・・・・」

「・・そこまでは、まだ分からないが、聞かなければならないな・・・・お前の母親に・・・・エフィ・キザキにな・・・・」

(エフィ・キザキ・・・・お前は一体何をしようとしているんだ?)

良介は、はやてにもう一度、コンタクトをとり、エフィの今日の予定が分からないかを尋ねた。

先程、会社正面玄関に居た警備員は『社長は外出している』と言っていた。

外ならば、会う事が出来るかもしれないからだ。

其処で、何としても会って彼女に聞かなければならない。

何が目的で自らの娘を狙うのかを・・・・。

そして、はやてからエフィの今日の予定が分かったと知らせが来た。

はやて曰く、今日エフィはノアの妹のイヴと共に講演会を開いているらしい。

良介とノアはその講演会会場へと向かった・・・・。

 

 

おまけ

 

メガネ

 

ある日、エリオ。キャロ、スバル、ティアナら六課のFW陣が食堂で休憩をしていると、

「大変だあああああああああああー!」

「んー?」

「どうかしましたか?」

シャリオが凄い剣幕で食堂の扉を開けて、食堂に入って来た。

「私のメガネがどこかにいっちゃって・・・・誰かみませんでしたか!?」

シャリオが慌てていた理由はどうやら自分のメガネを何処かに無くしてしまったのだと言う。

「いつから無くなったんですか?」

キャロがシャリオに最後にメガネをはずした場所と時間を尋ねる。

「えっと・・・・トイレでさっき顔洗ったからその時かも」

「確かにそこらへんですよね、メガネ外すときって」

「途中で落したんじゃないんですか?」

スバルとティアナがトイレの中、またはその周辺で落したのではないかと指摘し、皆でシャリオのメガネを探す事となった。

 

流石にエリオが女子トイレ内に入る訳にはいかず、外で待っていた。

女子トイレ内では、

「ないなー」

「見つかりませんね・・・・」

「個室の中にも落ちてないわよ」

女子たちは、女子トイレ内をくまなく探したが、やはりシャリオのメガネは見つからない。

 

女子たちがトイレから出た後、次にシャリオが立ち寄った場所へと移動する。

その最中、エリオは一つ気になった事があった。

しかし、他の誰もなにも触れてないからエリオは敢えて言っていないのだが・・・・。

「トイレの前はどこにいたの?」

「うーん・・・・何してたかなぁ・・・・」

スバルの質問にシャリオは考え込む仕草をとる。

そんな中でもエリオの視線はジッとシャリオの一点を見つめている。

(シャリオさん・・メガネ・・頭かにかけているのに・・・・)

エリオの思っている通り、シャリオはメガネを頭にかけている状態なのだが、それを誰も指摘しないし、シャリオ自身も気づいていない。

「あっ、そうだ!!休憩スペースでコーヒーを買いました」

「休憩スペースね」

「とりあえず行きますか」

「そうね」

エリオはなんかもやもやした思いをを残しつつ、休憩スペースへと向かった。

しかし、休憩スペースにもやはり、ていうか当たり前だがメガネは落ちていない。

「落ちてないな・・・・」

(落ちている訳ないでしょう!!)

メガネを探す女性陣に心の中でツッコミを入れるエリオ。

(頭にのっかっているのに、なんで誰も指摘しないの?)

「そうだ、東棟にも行ってた」

シャリオの行動力に呆れつつも東棟へと向かう一同。

エリオが呆れてそろそろ指摘しようと思っていたら、

(あっ、もしかしてシャリオさんボクをからかっているんだ・・・・それにキャロやティアナさん、スバルさんたちはノッているんだ)

シャリオの行動は自分(エリオ)をからかっているネタであり、そのネタにキャロたちは便乗しているのだと思い、それならば自分もそのネタにノルべきなのだろうと思い、エリオも分かっていながら、シャリオのメガネ探しを手伝う。

(ネタに乗るのは良いとして、ツッコミのタイミングは大事だな・・・・本来はティアナさんの役割(?)なんだけど、そのティアナさんはツッコム様子が無いし・・・・此処はボクが行くしかない!!)

FW陣でツッコミ担当のティアナがツッコム様子が無いので、エリオが自身でツッコム事を決め、ツッコミのタイミングを見計らっていた。

「シャリオさん東棟で何をやっていたんですか?」

キャロがシャリオに尋ね、

「ああ、資料整理でね・・・・」

シャリオが東棟で何をしていたのかを話していると、

「あっ、シャリオさん。メガネ頭にあるじゃないですか」

と、スバルがシャリオのメガネの有りかを明かした。

「えっ!?」

「は?」

瞬間のエリの顔は、なんともかわいそすぎて切なくなった。

「うっかり屋さんですねシャリオさんは」

『ハハハハハハ!』

エリオ以外のメンツは笑うが、

「笑うなァァアアアアア!」

エリオのツッコミが機動六課の隊舎全体にこだましていったのだった。

 

 

進路相談

 

 

これはまだティアナとスバルが訓練校にいた頃の話・・・・。

既に訓練校での訓練日程もまもなく終了と言う中、訓練生達はそれぞれ、希望先の勤務アンケートを記入し、この日、担当教官へと提出した。

「皆、書けたぁ? 書けたら前に集めてー!」

教官は集まったアンケート用紙を見て、何かを考えて言葉を発した。

「・・・・一応聞くけどさあ・・・・真面目に書いたよね?」

その瞬間、教室内に微妙な空気が漂う。

「この場でチェックするわ」

そう言ってアンケート用紙の一番上を見ると、其処には・・・・

『中学生』

スバルは兎も角、それ以外のメンツは今、中学生と変わらない年齢の訓練生達、訓練校を出ても中学校へは行ける筈がない。

「そら見ろこれだよ! 頼むから真面目にやってくれよ!」

次の用紙を捲ると、

『地縛霊』

「死ねよ!!本当死ねよ! すぐ死ねよ!」

教官は既に切れ気味寸前だった。

その為、教官らしくない言葉が飛び交った。

次の紙を捲ると、

『スポーツ冒険家』

「どっちだよ!」

アンケート用紙を床に叩き付ける教官。

『教官の御嫁さん』

男文字で書かれたアンケート用紙に

「うわーもう、キモイなああああああ!」

ドン引きする教官。

『サイエンスエンターテイナー?』

「はああああああああ!?」

訳の分からない職業に呆れる教官。

『弁護士に・・・・なりたくない・・・・』

「なら書くなよ!」

今度はアンケート用紙に拳を打ち付ける。

次に捲ったアンケート用紙を見ると、

『災害担当将来は救助隊』

と、スバルの書いたアンケート用紙が読み上げられる。

(あっ、アタシが書いたやつだ)

教官は暫く黙った後に、教卓をひっくり返して叫んだ。

「ボケろよおおおおお!」

「ひどーい!!」

教官の態度に思わずスバルも叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




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