八話 ストレスノヒビ

 

 

あれからギンガに対するナギのアプローチはしつこかった。

どうやって番号を調べたのか? 仕事用の携帯端末には一日何十件とメールや通話が入り、半ストーカー化している。

挙句の果てはギンガが現在、更生官を務めているナンバーズ達の居る海上施設にまでもやってきた。

そこでナギは更生教育中のナンバーズにまでも色目を使っていた。

「へぇ〜君たちがナンバーズか〜。なかなかイイ女なじゃいか・・・・」

「なんだ?このバカ?どっから湧いて出たんだ?」

ナンバーズ達がナギの手に落ちるかと思いきや、ギンガ同様ナギからただ漏れている下心を瞬時に見抜いたナンバーズ達全員はナギに対し、警戒感と嫌悪感をむき出す。

感情表現の乏しいデェイチ、オットー、ディードでさえ顔を顰め、彼から距離をおいている。

そしてまずは先制と言わんばかりにノーヴェがナギに対し毒を吐く。

「おやおや、恥ずかしいのかな?そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。もしかして君、ツンデレ属性なのかな?」

「ハァ?何言ってんだ?こいつ?」

「チンク姉、こいつバカなんっスか?」

今のナギの言葉を聞いてウェンディがナギを指さしながらチンクに尋ねる。

「ああ、どうやらそのようだ。しかも特上の大バカだ。ウェンディ、こいつに近づくなよ?バカが移るぞ」

「了解っス」

チンクの言葉に敬礼して答えるウェンディ。

自分が嫌悪されているのにも分からないのか、その後もナンバーズ達を口説きまくるナギ。

そして彼が彼女たちに言い放ったこの一言が一触即発の事態を生んだ。

「それにしても君たちも大変だよね?生みの親がS級の広域犯罪者で、お姉さん達もそんなクズと一緒にムショ暮らしなんて」

「「「「「「「ッ!!」」」」」」」

確かに犯罪者かもしれないが、チンク達にとってスカリエッティは自分たちをこの世に生み出してくれた大切な人であり、彼と共に刑務所に入ったウーノ達も大切な家族なのだ。それをなんで何も知らない見ず知らずの他人に貶されなければならないのか?

「ここから出たら君たちの面倒を僕が見てあげてもいいよ〜。犯罪者の再就職なんて難しいからね〜。ちゃんと仕事先も見つけてあげるよ。もちろん、女としての幸せもね」

ナギは多くの女を虜にした時と同様のキメ顔で、ナンバーズ達のことを見つめるが、

「て、テメェ〜」

見つめられたナンバーズ達はうっとりするどころか殺気を露わにしてノーヴェ、ウェンディ、セインは殴りかかる寸前である。

「よせ、お前たち!!」

チンクも殴りかかりたい衝動を必死に抑え、今にも殴りかからんとする妹達を宥める。

今ここで局員を殴り、問題を起こせば担当官であるギンガに迷惑が掛かるだけではなく、下手をしたら全員処分されてしまう恐れもある。

「ちっ」

「くっ」

「むぅ〜」

苦虫を潰したかのようにナギを睨むナンバーズ。

その時・・・・

「何をしているんですか!?」

教室に突如ギンガの声が響く。

「ぎ、ギンガ」

「ファースト・・・・」

睨みあっているナンバーズにナギ。

ギンガにはここで何があったかは大体想像がついた。

「はぁ〜・・・・一体此処で何をやっているんですか?ナギさん?」

顔を引き攣らせながら何故、更生官でない筈のナギが何故此処に居るのかを尋ねる。

「やあ、ギンガ。今日も君は美しいね〜」

先程、ナンバーズ達を口説いていたにもかかわらず、その舌の根が乾く前にギンガに歯の浮くようなセリフを吐くナギ。

そしていわゆる二コポと呼ばれる笑みを浮かべるナギであったが、嫌悪感を剥き出しにしているギンガやナンバーズ達には通じていない様子。

「質問に答えてください。何故貴方が此処に居るんですか?」

「仕事をするギンガの姿が見たくてね。それにギンガが教える生徒達の姿も・・・・」

ナギはナンバーズ達を見るが、即座にナンバーズの皆はナギから視線を逸らす。

「はぁ〜兎に角、此処は局員といえども許可がないと入れません。どうぞ、お引き取りください」

ナギの背中を押しながら出口へと向かうギンガ。

「それじゃあまたね〜ナンバーズの皆〜」

「「もう二度とくんじゃねぇ (っス)!!」」

ナギの別れ際の挨拶にピッタリと息の合った悪態をつくノーヴェとウェンディ。

 

 

「ふぅ〜」

ナギを帰し、教室に戻るギンガ。

「ギンガ、なんなのだ?あのバカは?」

チンクがナギの正体を聞く。

「女の敵よ」

「「「「「「「?」」」」」」」

ギンガはゲンヤから聞いたナギのことを話す。

「なんて奴だ!!」

「サイテーだな!!」

「まさに女の敵っス!!」

「死ねばいいのに」

「「「うんうん」」」

チンク、ノーヴェ、ウェンディ、セインは再び怒りを露わにして悪態をつき、寡黙トリオはひたすら頷く。

「ごめんね、皆。もう此処には来ないようにするから」

「ギンガが謝ることはないよ!!」

「そうっスよ!!悪いのは全部あの女たらしっスよ!!」

「ありがとう、さぁ今日もはりきってプログラムをこなしていきましょう」

こうして何事もなかったかのように本日の更生プログラムは開始された。

午前中の講義はナギの突然の乱入と言うアクシデントがあり、多少開始時刻が遅れたが、午前の部の更生プログラムは何の支障も無く、行われ、無事に終了した。

 

しかし、食事の時間にその異変はギンガに突如襲いかかった。

更生施設に居るとき、ギンガは基本的にナンバーズの皆と一緒にいることが多い。それは食事の時も例外ではなく、ナンバーズの皆と一緒に食事を摂っている。

この日もいつもと変わりなくナンバーズの皆と昼食を共にしていたギンガは、半分程昼食を食べ終えた時、突然、猛烈な吐き気に襲われた。

「うっ・・」

「お、おい大丈夫か?」

ノーヴェが突然口元を抑え、苦しみ出すギンガを心配して声をかけるが、ギンガにその言葉に返答する余裕はなかった。

ギンガは急いで食事の席を立ち、洗面所へと走ると、先程食べていた昼食を全て吐き出してしまった。

胃の中のモノを全て吐き出した後、口を濯ぎ、ハンカチで口元を拭いている中、ギンガは即座にこの異変の原因を考える。

まず、最初に疑ったのは食べていた料理に何か問題があったのか? ということ。

しかしそれだと、他のナンバーズの皆にも異変が有るはずだが、異常を訴えたのは自分だけなので、料理にも使用した食材にも問題があるとは思えない。

するとやはり自分自身の体に問題があるわけだ。

 

吐いたということは消化器官に問題があるということ、ここ最近ゲンヤが同じく胃腸を患い、胃薬を服用していることから同じ理由?

あのナギって人が来て、しばらくしてからゲンヤは胃薬を服用するようになった。恐らく重度のストレスからくる胃炎。

もしかすると自分もそれではないだろうか?

初めて行う更生担当官という仕事と朝のあの一件を含め、知らないうちにナギに対するストレスや緊張による疲れが溜まり、胃に負担をかけていたのだろう。

自らの体調の異変を仕事の疲れとストレスが原因と決めつけたギンガは帰りにドラッグストアーに寄って行こうと思った。

 

 

「大丈夫かギンガ?」

洗面所にいるギンガにチンクが後ろから心配そうに声をかける。

「ええ、大丈夫よ。仕事で少し疲れていただけだから」

「そうか?」

「ええ、心配してくれてありがとう」

ギンガが食事の席に戻ると、ナンバーズの皆が心配そうに声をかけてくれた。

「大丈夫か?ファースト?顔色が少し悪いぜ」

「無理はしない方がいいよ」

「そうっスよ!!無理はいけないっス!! ってなわけで午後は自由時間ってことで・・・・」

「お前はただサボリたいだけだろう?」

 

ゴン!!

 

チンクは無言でウェンディに拳骨を食らわせる。

「い、痛いっスよ。チンク姉ぇ〜」

「お前が不真面目なことを言うからだ」

 

その後、ギンガは残りの食事を残さず食べ、何事もなかったかのように午後の部の更生プログラムにとりかかった。

施設からの帰り、ギンガはドラッグストアーで胃薬を購入して自宅へ戻った。

自宅に帰るとギンガは夕食の仕度、お風呂の準備をして、ゲンヤの帰りを待つ。

スバルは機動六課卒業後、特別救助隊のスカウトがきて、正式に特別救助隊に配属となり、訓練期間終了後、今は救助隊の寮に住んでいる。

夜、ゲンヤが帰宅し、二人で夕食を摂った後、ギンガは入浴を楽しんだ。

体を洗っているとき、胸部をスポンジで擦ると、胸が貼っているのか、ちょっとした刺激で体が、ビクっと震えた。

(やっぱり疲れが溜まっているのかな?今日はもう早めに休もっと・・・・)

風呂から出て、他の世界で仕事中の良介の事を想いつつギンガはベッドの中に入り、眠りについた。

 

 

あとがき

次回、あの男がミッドに帰ってきます。

ギンガ視点をもう少し長く期待した皆さんすみません。

ギンガの体調不良の原因におそらく読者の皆さんは心当たりがあると思いますが、その原因が分かるまでもう少し、分からないフリをしてください。

お願いします。orz

では。次回またお会いしましょう。




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