七十四話 オオソウジノヒ 大人なギンガさん (微裏な表現あり)

 

 

「大体、良介は昔から・・・・」

良介がアルバムを見て過去の思い出に浸り、蔵の大掃除をサボっていると、その行為がアリサに見つかり、良介が長々とアリサのお説教を受けている頃、

「あら?」

作業中だったギンガも段ボールの中にあった別のアルバムを見つけ、作業をしている手を一時休め、おもむろにそのアルバムを手に取ると、アルバムの表紙を開いていた。

アルバムの中の写真に写る自分はまだ桜花が自分のお腹の中に居る頃の写真で、ギンガのお腹は大きく膨れていた。

写真を見て、ギンガはフッと口元を緩め、あの頃を思い出していた・・・・。

 

 

始めて自分が愛しいと思っていた彼と逢瀬を重ねたあの日の夜・・・・あの後すぐに自分のお腹には彼との間にできた新しい命が宿り始めていた・・・・。

 

それからすぐに自分は彼と結婚した・・・・。

 

所謂出来ちゃった婚と言うやつだ・・・・。

 

でも、自分は幸せだった・・・・。

 

愛する人と結婚し、その人の子供をすでに身篭れていたのだから・・・・。

 

毎日が夢のような幸せな日々だった・・・・。

 

そして早く、お腹の中に居る子供とも会いたかった・・・・。

 

日増しに大きくなっていく自分のお腹・・・・。

 

もうすぐだ・・・・もうすぐであの人と自分の子供と会えるのだ・・・・。

 

 

ギンガがそんな幸せを感じているある日の朝・・・・。

「ちょっと!!良介!!鍋が噴いているわよ!!」

「わっ!!やべっ!!・・・・あっちぃ〜!!」

「あ〜もう、何をやっているのよ!!」

「す、すまん」

「・・・・」

台所の方から良介とアリサの轟く声を聞き、ギンガは寝室で苦笑する。

結婚当時は宮本家の家事はアリサとギンガが勤めていたのだが、次第にお腹が大きくなり始めたギンガに代わり、最近は良介がアリサと共に家事を勤めると言い出し、そして、その言葉通り、良介はアリサと共に家事を勤めている。

しかし、元々家事なんてやる機会が無かった良介にとって初めての家事は馴れないモノはかりで、毎日悪戦苦闘する日々だった。

料理に関しても、貧乏生活が長かったため、基本良介は悪食であり、こちらの方も苦労していた。

特に妊娠しているギンガとお腹の中の子供に配慮しての食事作りは、細心の注意を払っていた。

「クスッ さて、そろそろ起きますか・・・・よいしょっと・・・・」

片手で大きくなったお腹を抱える様にして、ベッドから起き上がり、寝室を後にするギンガ。

台所に降りると、何とか朝食の料理は出来たのだが、リビングにあるテーブルの上にはまだ並べられておらず、良介とアリサ、そして少女モードのミヤが皿に盛り付けて運んでいる最中であった。

「あら?ギンガ、起きたの?おはよう」

アリサがギンガの姿に気がつき、声をかける。

「おはようございます。アリサさん。何か手伝いましょうか?」

「大丈夫よ。ギンガは先に座っていて」

「そうだぞ、ギンガ。今が一番大事な時期なんだから。お前の身に万が一の事があったら、お腹の子やゲンヤのとっつぁん、そしてクイントに顔向けできないからな」

料理が盛られた皿を運びつつ良介がギンガに言う。

「今は安定期に入っているので大丈夫ですよ。それに少しくらい運動しなきゃ体に悪いですから」

と、微笑みながら言うギンガの姿は既に母親のようで母性愛を感じ、同性のアリサやミヤまでも顔を少し赤らめた。

 

それから朝食を摂ると良介は仕事へと出かける。

出かける前、良介はギンガとギンガのお腹の中にいる我が子に出かける前の声掛けを忘れない。

「それじゃあ行って来る」

「行ってらっしゃい」

「それじゃあ行ってくるからな〜良い子にしているだぞ〜」

そう言って良介はギンガのお腹を優しく撫でた。

「それじゃあ・・・・」

良介が玄関の扉のノブに手をかけた時、背後から視線を感じた。

「・・・・」

良介がゆっくりと振り向くと、そこにはちょっと切なげに自分の姿を見るギンガの姿。

「はぁ〜」

良介は小さな溜め息をつくと、

「いってきます。ギンガ」

「いってらっしゃい」

そう言って自らの唇をギンガの唇に重ねた。

「「んっ・・・・」」

朝からお熱い二人の姿に、

「朝っぱらから何やっているのよ。あの二人は・・・・」

「まぁまぁ、仲が良い事にかわりませんから良いじゃないですか」

と、アリサは少し呆れながら言って、この甘ったるい空気に対抗するかのようにブラックコーヒーを一口啜り、ミヤはそんなアリサを宥める。

朝から・・しかも玄関先でギンガとキスをしてから良介は今日の仕事場へと向かった。

 

今日の良介の仕事は108部隊で事務の仕事だった。

ギンガが産休のため、管理局を休職中なので、人出が足りず、良介がギンガの代わりにアシスタントを行っているのだ。

そして昼時、

108部隊の敷地内にある駐車場に一台の車が停まり、マタニティドレス姿の一人の女性が降り立つ。

 

ばたん。

 

「よいしょっと・・・・」

彼女は車から降りるとぐるりと回り、助手席から荷物である大きなバスケットを降ろす。

バスケットの中身・・それは愛する旦那の昼食のために作って来た弁当・・・・つまり手作り弁当・・・・またの名を愛妻弁当と言う・・・・。

「お、おい、あれ・・・・」

そんなギンガの姿に気がついた一人の局員が同僚に声をかける。

「あの男の奥さん・・・・だよな?」

「くぅっ、あんな美人で可愛くて、しかも若い・・・・幼な妻をゲットだと、あの野郎・・・・」

「いや幼な妻じゃなくて若妻だろ? そこを間違えるとかなり痛い。でも、羨ましいぜ・・・・」

「妬みで人を殺せたらなぁ・・・・」

女性の姿を見た男性局員達は彼女の旦那に嫉妬の思いを募らせた。

 

受付に彼女が姿を現したとき、奇妙な静けさが生まれた。

「宮本ギンガです。今日、此処(108部隊)に嘱託として来ている宮本良介に届け物があって来ました。呼び出しをお願いしたいのですが・・・・」

彼女の言葉を聞いて受付嬢の頭の中に、この来客のデータがインプットされ、記憶の中の情報と照らしあわされる。

管理局内である意味様々な伝説を立てている男、宮本良介。

その名を聞き、目の前の美人が何者であるのか受付嬢にはすぐに分かった。 っていうか、彼女も元々はここの部隊の所属なのだから、知っていて当然だ。

しかし、受付嬢が知っている部隊に所属していた頃の彼女と目の前の彼女の女性らしさのレベルが断然違っていた。

「は、はい、只今確認しますので少々お待ちください・・・・はい、分かりました。 暫くお待ちください、こちらに向かっているとこの事ですので・・・・」

「はい、分かりました」

少しして、彼女の旦那がロビーにやって来た。

「ギンガ、どうしたんだ?」

「お弁当を作って、持ってきちゃいました」

昼食が入ったバスケットを微笑みながら掲げ、良介に此処に来た理由を言うギンガの姿がそこにあった。

「あ、ありがとう・・ギンガ//////

照れながらもギンガに礼を言う良介。

そんな夫妻の姿を見ていたロビーの男性局員の背後には黒い嫉妬のオーラが滲み出ていた。

その反面。女性局員は、ギンガを羨ましそうな目で見ていた。

 

 

ティアナ・ランスターは何故か不幸だった・・・・。

今日は上官であるフェイトと共に108部隊に用事があって隊舎へ来ており、丁度昼食の時間と言う事で、部隊長室で此処の部隊長で、元相棒兼親友であるスバルの父親、ゲンヤ・ナカジマと共に昼食を摂る事になったのだが、今日、此処(108部隊)に良介もアシスタントで来ていると言う事で、良介もゲンヤとフェイト達と共に昼食を摂る事になった。

さらにそこへ、良介の昼食をギンガが持ってきたので、ギンガも一緒に昼食を摂る事となった。

しかし・・・・

ティアナの顔色は少し青い。

キリキリと痛む胃の部分を手でグッと押さえながら、医務室へ駈け込んで胃薬を貰ってくるかどうか真剣に迷っていた。

「ティアナ、少し顔色が悪いけど大丈夫?」

ギンガが心配そうな様子でティアナに声をかける。

ティアナはまさか、「貴女が原因ですよ!!」とは、答えられる筈もなく、

「いえ、最近仕事が大変で、胃が・・・・」

と、誤魔化すティアナ。 ・・・・実に健気である。

「そう、それは大変ね。私もお手伝いできたらいいのに・・・・」

何も知らないギンガの様子からやはり、ティアナは「貴女が原因です!!」と言う勇気は無い。

 

ティアナの前の前で繰り広げられる良介とギンガのアットホームな夫婦の空気に触発されるように、金色の死神こと、フェイトから放たれている嫉妬と妬みのオーラがティアナの精神をガリガリ削り、胃にキリキリとしたプレッシャーと痛みを与える。

しかし、宮本夫妻はそんな死神のオーラなどまるで感じていない様子。

ゲンヤは年長者故かフェイトのダークオーラに耐えているが、顔は少し引き攣っている。

そんな中、フェイトがまず軽くジャブを入れる。

「それにしてもリョウスケ、ギンガが妊娠していて大変じゃない?」

挑発を含む、悩ましいほどに艶を含んだ視線。

それは、「妊娠中の女房(ギンガ)よりも私を抱いてみない?」と言う誘いの視線である。しかし、良介はその質問に関しては敢えて無視を決め込んだ。

この手の話に対し、少しでも反応をすれば、飛んできた火の粉で全身大火傷の後、入院確定だからだ。

もうすぐ、愛しい我が子が生まれる大事な時期に入院なんかしたくない・・・・。とはいえ完全に無視すれば、それはそれで後々に問題を残す。

そこで良介は適当な言葉でお茶を濁す事にした。

「いや、大丈夫だ・・・・問題無――――」

良介が『無い』を言いきる前に、

「大丈夫ですよ、テスタロッサ執務官。 問題ありません」

ギンガが親しい間柄の筈のフェイトに対し、名前でなく、ファミリーネーム(苗字)と役職名を口にした瞬間、場が一気に硬直する。

心なしかフェイトとギンガ・・両者の米神が引きついて、目から火花が出ている様にも見えた。

「アリサさんもいますし、それに最近、良介さんが家事やお料理を始めたんですよ。ですから全然平気です」

と、笑みを浮かべながら言うが、その表情には、

「だから、人の家庭に口や手を出すんじゃない!!」 

「人の旦那を誘惑するな!!」

そんな意思が込められていた。

「うっ・・・・」

両者の放つ重圧な空気に耐えられなくなり、ティアナが思わず、自分のお腹の下腹部を両手でおさえる。

そんなティアナ(部下)の異変を気がつかないフェイトとギンガ。

フェイトは既にギンガとの心理バトルに夢中であり部下のティアナの事は完全にアウト・オブ・眼中だった。

二人のやり取りをゲンヤと良介は顔を引き攣らせて見ている。

良介を巡る戦いにおいて既に良介の奥さんと言う立場を得ているギンガの方が圧倒的に有利なのだが、フェイトもただでは転ばない。

「でも、奥さんが妊娠中じゃ、持て余すんじゃない?・・・・そ、その・・・・性欲を!!//////

今度はジャブどころでは無く、渾身のストレートを放ってきた。

しかし、

「大丈夫ですよ。テスタロッサ執務官」

ギンガからは、ほんわかと、余裕のある大人の女性の・・・・実年齢では無く精神年齢での応対がなされる。

「な、何が大丈夫なのかな?」

反対にフェイトは余裕が無い様で、顔を引き攣らせながら、ギンガに尋ねる。

「下の口が使えなくても、上の口と胸でご奉仕しますから。良介さんはそれだけでも十分に満足してくれますから・・・・」

やはり、余裕の表情でフェイトにカウンターを喰らわすギンガ。その表情の中には、良介の妻の座を手に入れたと言う勝者の笑みと余裕が含まれていた・・・・。

しかも言葉同様、強烈で威力は抜群だ!!

だが、良介本人は妊娠中と言う事でギンガに対し、そう言う事は一切行っていないし、ギンガ以外の女を抱こうとも思っていない。

その決意は事実であり、彼はギンガが子供(桜花)を出産をするまで、ギンガとは肉体関係は持たなかった。

「「ブッ―!!」」

ギンガの核兵器並の爆弾発言を聞き、良介とゲンヤの口からは先程から食べていた昼食とお茶が吐き出され、良介はその場から急いで立ち去った。

そして部隊長室から逃げる良介の後を金色の風が追いかけて行った。

ちなみにティアナはその後すぐに、その場に倒れ、108部隊の医務室へと担ぎ込まれた。

核爆弾並の言葉を投下したギンガはと言うと、金色の死神に追いかけられて行った旦那に気にすることなく、昼食を摂っている。

それは、良介は自分以外の女に惚れる事は無いと、良介を信じていたからだ。

 

 

それから暫くしてギンガは無事に女の子の赤ちゃん・・・・娘の桜花を出産した。

難産であったため、出産時の痛みは相当なもので、旧六課の隊長陣との模擬戦よりも辛く、そして痛いモノであった。

しかし、今となってはその痛みも辛さも懐かしい思い出である。

ギンガは下腹部を手で擦りながらあの時の痛みと、辛さ、そして愛する人との間に子供を設ける事が出来たのだと改めて実感し、ふと、家の方を見ると、そこには、少女モードのミヤと娘の桜花がいる。

ギンガが目を細め二人の様子を見ていると・・・・

「ギンガ!!貴女まで何をやっているの!?」

と、アリサの大声で現実へと引き戻された。

どうらや、良介の説教が終わり、ギンガに声をかけようとしたら、彼女もアルバムを見て、作業を中断しているのを見つけた様だ。

「す、すみません」

ギンガは慌ててアルバムを閉じ、急ぎ作業へと戻った。

 

 

その後、何とか蔵の整理は終わり、いらない物でもリサイクルに出来そうな品はリサイクルしようと言うことで、電話でリサイクル業者を呼び、品物を引き取ってもらった。

思い出に浸った日であったが、流石にその日は両者とも疲れ、泥の様に眠った。

 

 

蔵の大掃除から数日後・・・・。

「うーん・・・・」

ミヤは家の中で飾ってある観賞用の植物をジッと見ていた。

「どうしました?ミヤさん?」

そんなミヤにギンガが声をかける。

「あっ、ギンガ。実はこのお花、もう咲く時期が来ているのに、まだ咲いてくれなくて・・・・ミヤが買って貰った花なので、花が咲くのを楽しみにしているのですが・・・・」

ミヤは折角買って貰った花がなかなか咲かない事に残念がっている様子。

確かにミヤの言うとおり、今年は全体的に植物の成長が遅いらしく、ミヤの花以外の観賞用植物も成長が遅い。

「そうですね、ちゃんと水や栄養剤をあげているので、育て方には問題は無い筈なんですが、植物も生き物ですし、成長が遅れることもありますから」

「そうですか〜」

ミヤがなかなか咲かない自分の花にがっかりしていると、ギンガはふと、先日行った蔵の大掃除で見つけたアンプル剤の事を思い出し、さっそくソレを持ってきた。

良介が何処からの世界で買ってきたか、貰って来た謎のアンプル剤・・・・。

ミッドで売っている市販の植物用の栄養剤よりは効果があると思い持ってきたのだ。

「ミヤさん、コレを試してみましょう」

ギンガはミヤに赤い液体が入った小瓶を見せる。

「何ですか?それは?」

ミヤは見せられた赤い液体が入った小瓶を見て首を傾げる。

「先日、蔵の大掃除をしていた時に蔵から出てきたんです」

「大丈夫ですか?ソレ?」

怪訝な表情で小瓶を見るミヤ。

確かに怪しさ100%の代物だ。

警戒して当然だ。

「それじゃあ・・・・」と、ギンガは念のため、別の観賞用植物にアンプルの液をポタ、ポタと数滴垂らしてみた・・・・・。

すると、

「えっ?」

「うわぁ!!」

液を垂らした植物に生じた変化に二人は唖然とした。

液体を浴びた植物の茎が急に太くなったかと思うと葉っぱが一気に仰け反る程開き、まだ蕾さえ付いていなかった植物が瞬時に蕾を実らせ、その蕾も瞬く間に開き、花を咲かせた。

小等部に通っていた頃、ギンガは、理科の授業で花が咲く瞬間を倍速映像で見た事があるが、それを遥かに凌ぐ、明らかに植物の成長としてはおかしい現象にもはや言葉がでない二人。

魔法が日常的に使われているミッドでさえ、この様な魔法や現象は見た事がなかった。

 

「そのアンプル、栄養剤じゃなくて瞬間成長促進剤だったんですね・・・・」

再起動を始めたミヤが謎のアンプルの正体を呟く。

アンプルの正体が分かり、ミヤも早速試す事にした。

「ただいま」

ミヤが自分の花にアンプル液をかけようとした時に良介が帰宅した。

リビングに入った時、ミヤが花にアンプル液をかけ、良介の眼前で花が突然巨大化して、蕾を付け、花が咲いた。

突然の植物の現象にド肝を抜かれる良介。

ギンガがアンプルの事を良介に説明すると、良介が、

「生き物にかけると、どうなるのかな?」

と、質問し、ギンガと良介はほんの少し、興味が出たので庭に出て虫にでもかけてみようと思い、庭へ出ようとした時、

 

ツルッ

 

「わっ?」

ギンガが足を滑られた。

幸い即座に踏ん張って転びはしなかったが、ギンガの手の中のアンプルは真上に放られて・・・・

 

パシャッ

 

ギンガはアンプルを頭から被った。

 

そして・・・・

 

「な、成程・・生き物が被るとそうなるのか・・・・」

二人は洗面所の鏡の前に立っている。

しかし、鏡に映るギンガの姿は本来の姿とは明らかに別人となっており、本人もその事で声が出せない様子。

「ん〜ギンガは元から美人だったけど、大人になると、更に磨きがかかるな〜」

大人姿のギンガを見て、良介は感想を言うが、流石に今のギンガにとってそんな場合じゃないと困り顔である。

誤って頭からアンプルを被って急成長したギンガ・・・・。

急成長した当初は、その影響でどこか身体に不具合が生じていないか、心配であった良介だが、特に痛がるような素振りもなかったので、一安心し、大人の姿になったギンガをジッと観察している。

大人になったギンガのその姿は彼女の母、クイント・ナカジマに似ている面影がある。

まぁ、親子でもあるし、スバルよりも母、クイントに似ている容姿のギンガなのだから、当然と言えば当然だろう。

ただ、成長に合わせて髪の毛も長くなっており、膝の位置辺りまで伸びている。

「とりあえず、マリエルの所に行くか?」

流石にこのままと言う訳にもいかず、良介はギンガとスバルの身体をメンテしているマリエルの下へ行くかギンガに尋ねる。

「え、ええ・・・・あっ、でもマリーさん、今日は出張でクラナガンに居ないんです」

「仕方ない、とりあえず、今日はこのまま様子を見る事にするか・・・・」

マリエルがクラナガンに不在ではギンガを診てもらうことも出来ないので、今日はやむを得ず、様子見と言う形になった。

「うぅ〜髪がベタベタして気持ち悪い〜ちょっと洗い落としてきますね」

髪に付着したままのアンプルに不快感を抱いたギンガはそのまま隣接する浴室へと入り、髪の毛を洗う事にした。

しかし、いつもの長さよりも更に長くなった髪を一人で洗うには大変だろうと思い、良介も浴室へと入った。

風呂とはいえ、髪の毛と顔に着いたアンプルを洗い落とすだけのギンガは服を着たままの状態だった。

壁に手をついて顔を俯かせ、器用にシャワーで髪の毛についたアンプルを洗うギンガの姿を見て、ギンガの方へと歩み出すのにそう時間は掛からなかった。

「ひゃぁ!?」

愛らしい甘い悲鳴が、ギンガの桃色の唇から零れ、浴室に反響した。

「あ、す、すまん・・・・」

良介の手は無意識にギンガの身体へと伸びていた。

「あ、あの・・・・どうしたんですか? いきなり?」

高鳴る鼓動に声を震わせながら、良介に尋ねるギンガ。

だが理性的な言葉の反面、既にギンガの中の“女”としての部分は彼の求むるものと、事の機微を予見していた。胸の奥を熱くさせるものは、彼女の期待に他ならない。

「ゴメン・・・・でも、最後に抱いたのは何時だったかと思って・・・・」

「ぁ・・・・」

此処最近、良介は仕事やら蔵の大掃除やらで、二人は逢瀬もご無沙汰だったのだ。

「と、とりあえず、アンプルを洗い落とそう・・・・後ろ、洗ってやるから//////

「は、はい・・・・//////

良介も平然さを装うもギンガの身体を洗っているうちに、抑え続けていた欲望が我慢できず、我慢の限界に達した。

何せ成熟した体に水でピッタリくっついた服がそのボディーラインを浮き彫りにするのだから・・・・。

それからすぐに浴室からギンガの甘やかで、張りのある嬌声が木霊したのは言うまでもなかった。

 

浴室に木霊するギンガの声はリビングにも聞こえ、ミヤは顔を赤くしながら、浴室〜洗面所のある脱衣所に結界を張り、声が漏れないようにした。

ミヤが結界を張り、自分の花を眺めていると、

「ただいま」

出かけていたアリサが帰宅した。

「お、おかえりです。アリサ・・・・//////

ミヤは顔を少し赤らめてアリサを出迎えた。

「ミヤ、少し顔が赤いわよ、大丈夫?それにその花、どうしたの?」

アリサはミヤの事やミヤが眺めていた大きな花について聞いてきた。

ミヤがアンプルの事をアリサに説明し、そのアンプルを誤ってギンガが頭から被ってしまった事も話した。

「そう。それで今、ギンガはどうしているの?マリーの所?」

アリサがギンガの行方をミヤに尋ねると、ミヤはアリサから視線を逸らし、顔を更に赤くして、俯かせると、

「良介と・・・・お風呂場で盛っています・・・・//////

ボソリと呟いた。

「そ、そう・・・・//////

アリサもミヤの言葉の意味を理解した様で、顔を赤らめ、ミヤから視線を逸らした。

リビングには気まずい空気が流れた・・・・。

 

その後アンプルを被ったギンガは数時間後には元の姿に戻った。

どうやら植物には永続的に効き目があるが、人間に対しては、効果は一時的なモノだった様だ。

ギンガは良介に、

「良介さん・・・・その・・・・良介さんが望むなら、今後大人姿の私で相手をしますけど・・・・//////

と、良介のリクエストに応えると言うが、

「いや、今のままのギンガで良い・・・・時が経てばあの姿になるんだから・・・・今は・・今の姿のギンガを堪能させてくれ」

と、ちょっとキザっぽいセリフを言うと、ギンガ顔を赤らめた。

 

その後、あのアンプルはミヤが貰う事となった。

良介が今のギンガで良いと言うのであれば、何も無理して大人姿になる事は無いとの事だ。

ギンガからその言葉と共にアンプルを受け取ったミヤは心の中で仲良きことは良きかなと思う反面、やや呆れていた。

 

 

あとがき

大掃除編はこれにて終了。

ティアナは苦労人と言うイメージがあったので、こうなりました。

何時か彼女にも素敵な出会いが有ると信じています。

では、次回にまたお会いしましょう。

 




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