七十三話 オオソウジノヒ アルバム

 

 

この日、宮本家の敷地内にある蔵にて大掃除が行われた。

その発端になったのが、数日前、アリサが蔵にしまった昔の資料を取りに行った事から始まった・・・・・。

「えっと・・・・確かこの箱ね・・・・」

アリサが、探し物が入っているであろうダンボール箱を取ったその瞬間・・・・・。

「えっ?」

 

ガラガラガラ・・・・

 

ドサドサドサ・・・・

 

ダンボール箱の上に積んであった大量の他の荷物がアリサ目掛けて落ちてきた。

「きゃあああぁぁぁぁぁぁー!!」

悲鳴を聞きつけ・・・・というか、荷物が崩れた轟音に気がついたギンガが蔵へと行ってみると、蔵の荷物が荷崩れを起こしており、その中から・・・・・・

「た・・・・助けてぇ〜・・・・・」

アリサの弱々しい声が聞こえてきた。

「あ、アリサさん!?大丈夫ですか!?」

自分は捜査官であり、妹のように救助隊所属ではないのだが、この際そんな事は関係ない。

ギンガは急いでアリサの上の荷物を退け、アリサを救助した。

「ハァハァハァハァ・・・・」

ギンガの手によって救助されたアリサは息を荒げていた。

まさに九死に一生を得る様な体験だった。

「大丈夫ですか?アリサさん?」

「え、ええ・・・・大丈夫よ・・・・でも、死ぬかと思ったわ・・・・・」

そう言ってアリサはギンガが退けた蔵の荷物に視線を移す。

「この荷物(ガラクタ)、ほとんど良介の物ばかりじゃない!?」

自分に降り注いできた荷物(ガラクタ)の正体を見て、アリサは声をあげる。

「えっと・・・・そう・・みたい・・ですね・・・・」

「今度、アイツが休みの日に蔵の大掃除をするわよ!!」

アリサが意気込んで蔵の大掃除をすると宣言した。

事実、この蔵にあった荷物の割合は7:2:1の割合で、良介:ギンガ:アリサの割合となっていた。

良介は仕事柄色々な資料や報告書、記録をコンピュータの中にデータとして保管するのとは別に書類をファイル状にしたり、スクラップ帳にして保管してある。

この他に、他の世界へ行った時に、その世界で変な民芸品の土産を買ってきたり、世話になった人から贈られてきたりと、人付き合いから貰った品が数多く蔵に収蔵されている状態だった。

こうなる前にミヤの持っている本の中に入れてしまおうかと思ったが、ミヤにもプライドがあるらしく、以前良介宛てに他の世界の民芸品が大量に送られてきた時、良介はミヤの本の中に置かせてくれと頼むと、「ミヤの本は物置じゃありません!!」と、断った事があった。

それ故、宮本家の蔵の中が訳の分からない物だらけになっている要因の一つでもある。

 

そして、時系列は現在に戻し、

「くそっ、折角の休日を何で蔵の大掃除なんかで潰されなきゃならねぇんだ?」

と、手には軍手を着け、ジーンズにタンクトップ、頭にタオルを巻いた良介が愚痴をこぼしながら蔵の中にある荷物を庭へと出している。

「文句言わない!!大体このガラクタ品のほとんどアンタが他の世界で買ってきたり、貰ってきた物ばかりでしょう!?」

割烹着を着て、頭に三角巾を着け、手にはハタキを持ったアリサが呆れながら言う。

「そうですよ、良介さん。 休みだからと言って身体を動かさないと鈍っちゃいますよ」

と、アリサ同様、割烹着を着て、頭に三角巾を着けたギンガが甲冑一式を持って蔵から出てきた。

「・・・・・」

言葉よりも平然とした様子で重い筈の甲冑一式を持っているギンガに突っ込みたい良介であったが、彼女が戦闘機人という存在であることから、無理矢理納得した良介だった。

ちなみにミヤは家の中で桜花の面倒をみている。

チラッと良介が窓越しに家の中を見ていると、ミヤが桜花とじゃれ合っている姿が見えた。

羨ましいと思いつつ作業へと戻る良介であった。

 

ある程度、蔵の中から荷物をかき出し、使える物と使えない物、取っておく物と捨てる物を選び分ける宮本一家。

「捨てるか取っておくか迷ったら、迷わず捨てなさい。 そう言う物に限って、使う試しなんて無いから」

「了解」

アリサの忠告通り、迷った物は取っておいても使うか怪しいので、捨てることにした。

「改めて蔵の中を整理してみると、変な物が多いな・・・・」

良介が蔵から出された品々を見渡し呟く。

今まで手掛けてきた仕事の記録や書類以外にも、面妖な仮面に木彫りで出来た人形や置物、更には奇妙な生物の標本やバネで出来ているギブス、果ては、ギンガが今、外へ出している甲冑まである。

蔵から出来た品を見ながら、我ながら何でこんなモノを買ってしまったり、貰ってしまったのだろうと思い返す良介。

「ほら、良介、手が止まっているわよ」

「はいはい」

アリサに指摘され、再び作業に戻る良介であった。

 

「えっと・・・・やくそうに、聖水、世界樹の葉・・・・なんかゲームで出てきそうなモノだな・・・・大体これ本物なのか?」

良介は蔵の中から出てきた皮袋の中に入っている物を一つずつ出していく中で、説明書のような巻物で袋の中身の品を確認していく。

と、言ってもパッと見ただけでは効果の分からない物が多い上、効果が怪しい物が大半を占める。

「あっ、良介さん。コレ貰ってもいいですか?」

袋の中を整理していると、ギンガが声をかけてきた。

ギンガが手にしたのはスポイト付きの小瓶で中には赤い液体が入っている。

その赤い液体を見て良介は、

(まさか、あの時の赤い水じゃないだろうな・・・・)

と、少し警戒した。

良介の言うあの時の赤い水とは、少し前に故郷の地球で体験した非現実的な事件に関わりのあるもので、あの事件で多くの人命が失われたため、良介にとっては、決して後味の良い依頼とは言えなかった。

「ギンガ、ちょっとその瓶見せてくれるか?」

「いいですよ」

ギンガから小瓶を受け取り、中の液体が何なのか、調べる良介。

瓶に張られている説明文では、中身は植物の成長促進剤である旨が書かれており、あの時の赤い水とは別物と判断した良介は小瓶をギンガに返した。

 

「どうやら、問題ないようだ・・・・でも、なんで植物の薬なんか必要なんだ?」

良介がギンガに訳を聞くと、

「家の中の観賞用植物が、少し元気が無いので・・・・」

と、植物の薬が必要な訳を話すギンガであった。

それから再び作業を進めていくと、

「おっ?これは・・・・アルバムか・・・・」

良介が一冊のアルバムを見つけ、表紙を開いた。

何故、アルバムが蔵の中にあるのか謎だが、大方沢山あるファイル状の資料と一緒に間違えて蔵の中にしまったのだろうと良介は思った。

「えっと・・・・これは・・・・忘年会の時に撮った写真か・・・・・」

開いたページには以前、旧六課のメンバーと一緒にアルピーノ親子が暮らしているカルナージで行われた忘年会の写真があった。

「そう言えばあの時・・・・・」

良介は写真を見ながらその時にあった出来事を思い出し始めた・・・・。

 

 

年の瀬が迫ったミッドで、ある日はやてから宮本家に一本の電話が入った。

「忘年会?」

「そうや、今度皆で忘年会をしようと思うてな、良介にも声をかけたんよ」

「忘年会って言っても、年末はせっかくだから家族皆で過ごそうかと思っていたんだが・・・・」

はやてからの誘いに良介にしては珍しく口ごもる。

なにせ、娘が生まれて初めての年末なので、ここは家族団欒で過ごそうかと思っていたのだ。

「それなら大丈夫や。場所はメガーヌさんとルーテシアが暮らしとるカルナージで、静かな上に温泉もある所や!!ギンガや桜花ちゃん、アリサちゃんやミヤちゃんも連れて皆で行こうや」

(温泉か・・・・)

はやての言う温泉と言う言葉に揺れ動いた良介は、

「分かった。皆で行こう」

と、家族と旧六課のメンバーで忘年会を兼ねたカルナージの旅行へ行く事にした。

ギンガやアリサ、ミヤもこの話には賛成の様子で、久しぶりの旅行を楽しみにしていた。

 

そしてやってきた、アルピーノ親子が住んでいるカルナージ。

カルナージの世界も冬の様で、辺り一面雪で真っ白な銀世界となっていた。

「お久しぶりです。メガーヌさん」

桜花を抱っこしたギンガが、メガーヌに挨拶をする。

「いらっしゃいギンガちゃん。桜花ちゃん」

メガーヌも微笑みながら挨拶を交わす。

「ギンガちゃんももう、すっかりお母さんが板についてきたわね・・・・昔のクイントを思い出すわ・・・・」

「い、いえ・・私なんてまだまだです・・・・」

謙遜しているが、メガーヌに褒められてまんざらではない様子のギンガだった。

 

忘年会は夜にやると言う事で、昼間は宮本家の面々はアルピーノ親子のペンション内で静かに過ごしていたが、なのは達は、折角雪が積もっているのだからと言う事で、外で雪合戦をして遊んでいた。

ただ、最初はなんの変哲もない雪合戦だったのだが、何時しかデバイスまで機動させるほど、過激となり、最終的に雪の中での模擬戦にまで発展していた。

その様子を見たギンガは、桜花を抱きながら、

「あらあらスバルったら何時まで経ってもヤンチャなんだから」

と、笑みを浮かべながら雪の中で模擬戦をしているスバル達を眺め、

良介は、

「あの場に居なくて良かったぜ・・・・」

と、ホッと一息ついていた。

実は良介自身もなのは達に雪合戦に誘われたのだが、家族団欒でゆっくり過ごしたいと言って断っていたのだ。

今回はその選択肢は正解だった様だ・・・・。

 

そして夜になり・・・・

「えぇー今年も間もなく終わりです。皆さん、今年一杯お疲れ様でした・・乾杯!!」

『乾杯!!』

はやての音頭で皆がグラスを傾け、忘年会が始まった。

皆は出された料理に舌鼓を打ち、話しにも花が咲いていき、楽しい一時を過ごしていた。

そして時間は深夜になり、既に宴会は二次会へと突入した頃、

「さてと、それじゃあ私と桜花は先に休ませてもらうわね」

アリサが既に眠っている桜花を抱き上げ、ペンション内に用意されている部屋へと向かおうとする。

「あっ、そんな・・アリサさん、悪いですよ」

ギンガが慌てて言うが、アリサは、

「いいのよ、ギンガ。良介ももう一風呂浴びたら戻るって言っていたから、二人でゆっくりしなさい」

アリサなりにギンガと良介を思っての行動だった。その良介は一次会の後、「もう一風呂浴びてくる」と言って温泉へ行ってしまった。

「は、はい・・・・」

ギンガはアリサの行為に甘え、良介を待つ事にした。

アリサと桜花同様、ヴィヴィオ、キャロ、エリオ、そしてルーテシアのお子様組も限界の様子で部屋に向かい、寝る事にした。

宴会場にいるのはギンガを除いては、旧六課の隊長陣とスバルとティアナのメンバーで、隊長陣達は、久しぶりの休みにハメを外し、浴びる様に酒を飲んでいた。

まぁ、日頃の仕事の疲れやストレス、悩み、そして男との出会いが無い事が拍車をかけていた様である。

しかし、いくら休みとは言え少々ハメを外し過ぎである。

「あ、あの・・・・皆さん・・もうそのぐらいで・・・・少し飲み過ぎではないでしょうか?」

ギンガが心配し、なのは達に恐る恐る声をかける。

なのは達の周りには空になった酒瓶やお銚子、徳利が転がっている。

これでは、翌日二日酔いを起こす可能性がある。

「ひっく!! 良いじゃない、ギンガ。たまには〜」

「そうやでぇ〜ギンガ・・・・今日は無礼講なんにゃから〜」

「ギンガちゃん固いのぉ〜」

顔を酒で赤くし、既に呂律が回らないなのは達。

しかし、彼女達は飲む事を止めない。

「いくら無礼講や休みでも少し飲み過ぎですよ。それにそんな飲み方をしていたら身体に毒ですよ」

「そ、そうですよ」

「明日二日酔いになっても知りませんよ」

ギンガ同様にスバルやティアナもなのは達が飲む酒の量が多くて注意する。

しかし、なのは達は聞く耳を持たない。

「はぁ〜それにしても、この中で結婚しとるのはギンガだけかぁ〜」

はやてが愚痴る様に呟くと、そこからなのはとフェイトも自分に出会いが無い事、昔から兄として・・・・男として惚れていた良介を取られた事を愚痴りだした。

「み、皆さんにも何時か良い人が現れますよ。きっと・・・・」

絡んできたなのは達に嫌な予感を感じつつ、慰めようとするギンガ。

そんなギンガに対し、なのは達はジト目で見てくる。

「むぅ〜やっぱり既婚者は余裕があるのねぇ〜。何か妬ましい〜」

「ギンガったら、いつも兄さんとイチャついて・・・・・」

「羨ましすぎるで!!一日位私と代われ!!」

「そ、そんな事ありませんよ。ほ、ホラ、もう時間も遅いですから、今日はこの辺で・・・・ねっ?」

「やあだぁ!! ちょっと、ギンガも一緒に飲もう」

「そうやで、良介とのイチャつきぶりを赤裸々に語ってもらうで・・・・」

完全に絡み酒になって、ギンガに絡むなのは達。

「わ、私は良いですから。それよりも、もうお酒を飲むのは・・・・」

ギンガがやんわりと断りを入れても、

「だぁめぇ!! ギンガが飲んでくれなきゃお酒飲むのを止めないもん」

と、まったく聞く耳を持たないなのは達。

その姿から普段の凛々しい姿がウソの様である。

「ちょっ、シグナムさん、スバル、ティアナ、助けて!!」

やむを得ず、ギンガはこの場に居るその他のメンバーに助けを求めるが、

「シグニャム、まさか、主であるワラシよりもギンガの頼みを聞く筈ないよなぁ〜?」

「ティアナ、スバル・・・・O・HA・NA・SHI・・・・する?」

はやてとなのはの目線攻撃で、

「うっ・・・・すまない・・ギンガ・・・・許せ・・・・」

「いえいえ、とんでもありません」

「私達がなのはさんの邪魔なんて・・・・ねぇ・・・・」

と、あっさりとギンガを見捨てたシグナム達。

「は、薄情者ぉ〜」

見捨てられたギンガはシグナム達に悲痛な叫びを言う。

そして、

「ギンガ、わたひの酒が飲めねえのかぁ〜」

「んぐっ・・・・グビグビグビグビ・・・・」

フェイトはギンガの口に直接酒瓶をあてがう。瓶の中には酒が一合ほど入っていたようで、ギンガは其れを一気に飲みほした。

いや、飲み干してしまった。

「ひっく、わ〜い。ギンガさんが飲んでくれた〜」

「なんや〜ギンガ、結構いける口やないか〜」

「良い飲みっぷりなの〜」

ギンガに酒を飲ませたなのは達は上気分だった。

しかし、酒を飲まされてからのギンガは様子がおかしい・・・・顔を俯けたまま動かないのだ。

「あ、あれ〜?」

「ギンガ?」

「お〜い、ギンガさんや?」

ギンガの様子がおかしい事に気がついたなのは達。

もしかして、酔い潰れて寝てしまったのか?

そこで、酒を飲ませたフェイトがギンガの肩を揺する。

すると、突然ギンガはフェイトの手を払いのけ、顔をあげる。

「ああん? んだぁ、てめぇ? 何か用でもあんのか? 金髪?」

「にゃっ!?」

目が座り、いつも温厚で若奥様然とした彼女からは想像できない程のドスの効いた声で答える。その様子、口調もまるで別人の様だ。

そして目ツキは鋭く、瞳は濁っている感じがする。

しかし、瞳の色は金色になっていないため、決してキレているわけではない。

ただ単に酔っぱらっているだけだ。

しかも、悪い方向に・・・・。

「ひゃ、ひゃい。ど、どうしちゃったのかなぁ? ギンガ?」

「な、なんかギンガらしくないの〜」

普段のおしとやかな様子から一転、豹変したギンガを見て、フェイトとなのはは心なしか低姿勢になった様に思える。

「うっせんだよ、この行かず後家共が!! ボケっとしてねぇで、さっさと酒持ってこい!!そういう所で気が付かねぇから何時まで経っても男が出来ねぇんだよ、タコ共!!」

「ふぇ、ギンガちゃんが壊れた〜」

「なの〜」

「いいから早く!!酒持ってこ〜い!!」

「「「ひぇ〜!!」」」

それからフェイト達はギンガに言われるまま酒を用意するのであった。

 

「「「・・・・」」」

シグナム、スバル、ティアナは無言のまま、目の前の光景に成す術なくただ見守る事しか出来なかった。

「だいたい、豆狸は雑誌とかの取材で『私は仕事と結婚しました』みたいな事ばかり言ってんじゃねぇか!! それで男欲しいだぁ〜?羨ましいだぁ〜? 寝言言ってんじゃねぇよ!! 寝言は寝てから言え!!それと家の旦那に手ぇ出してみろ!! ワラシのドリルで尻の穴増やすぞ〜!!ボケ狸!!」

「うぐっ!!」

胸にグサッと言う音と共にはやてはその場に崩れる。

「莫大な魔力に物を言わせ、何が『O・HA・NA・SHIしましょう』だぁ〜!!そんなんだから『管理局の白い悪魔』なんて呼ばれるんだよ!!いい加減それに気づけやボケが!!そんな悪魔にはヘタレフェレットがお似合いなんだよ!!ホワイトボケェデビル!!」

「はぅ!!」

はやてに続きなのはもその場に倒れ、落ち込む。

「金髪、そんなに男とヤリたかったら、あのマニアックで淫乱なバリアジャケットを着て歓楽街にでも行け!!この万年発情期の変態露出狂が!!痴女の分際で、わらひの旦那を寝取ろうなんて、一億年早ぇんだよ!!」

「おぅ!!」

他の二人よりもフェイトには何故か辛口のギンガ。

そのギンガの言葉を受け、二人よりも大きなショックを受けるフェイト。

管理局が誇る三人の魔導士が言葉攻めで撃沈されていくその様子は何ともシュールである。

三人が落ち込んでいてもそんな事は気にせず、ギンガは再び酒瓶に口をつけ、グビグビと酒を煽る。

其れは良介が温泉から上がって来るまで続いた。

そして、他のメンバーはただその様子を見ているだけしかなかった。

今のギンガに下手に何か言えば、床に転がっているなのは達と同じ目に合うのは目に見えていたからだ。

 

「ふぅーさっぱりした。やっぱ温泉は最高だな」

やがて待ち人である良介が、温泉から上がり、宴会場に現れると、

「い、一体何があったんだ・・・・?」

宴会場の様子を見た良介が顔を引き攣らせながら呟いた。

「悪魔・・・・悪魔だなんて・・・・」

宴会場では床に「の」の字を書いていじけているなのは。

「私かて女やもん、結婚願望くらいあるんや・・・・幸せになりたいんや・・・・」

と、膝を抱えながらブツブツと何かを呟きながら涙を流しているはやて。

「露出狂・・・・淫乱・・・・発情・・・・痴女・・・・変態・・・・」

と、まるで壊れた自動人形のように目は虚ろで同じ言葉を繰り返し呟くフェイト。

そして、酒を瓶ごとラッパ飲みしているギンガ。

事態を見ていない者には一体何があったのかなんて、分かる筈がない。

「あっ、宮本さん、ギン姉をなんとかして〜ギン姉が怖いよ〜」

と、良介の姿を見つけ、助けを求めてくるスバル。

すると、ギンガは良介の姿を見つけると、空になった酒瓶を置き、良介を見つめて言葉を言い放つ。

一同は今のギンガが良介に対し何て言うのか、ドキドキしながらその様子を窺った。

すると、

「にゃ? ダーリンだ!!ダーリン、こっちに来て!!」

普段のギンガの声と違い、甘ったるい声で、両手をバッと広げて良介を呼ぶギンガ。

その姿は飼い主に甘える猫の様だ。

目ツキも先程までなのは達に毒を吐いていた時の様に鋭く、濁っている様子は無く、むしろ、キラキラと輝いている。

「だ、ダーリン!?」

ギンガから突然ダーリンと呼ばれ狼狽える良介。

何せ、結婚してからこの方、ギンガから一度も「ダーリン」等と呼ばれた事が無かったからである。

「じ、実はギンガさん、フェイトさんにお酒を飲まされて酔っ払っちゃったみたいで・・・・」

ギンガの豹変にうろたえている良介にティアナが、何故ギンガがこんなにも豹変したのか訳を話す。

確かにギンガの傍には沢山の御銚子や徳利が転がり、先程宴会場に入って来た時には酒瓶をラッパ飲みしていた。

「な、なるほど・・・・」

「宮本、ギンガは酒を飲むとああして悪酔いするのか?」

悪酔いしているギンガを横目で見ながらシグナムが尋ねる。

「いや、たまに晩酌を一緒にしているが、酔い潰れることはない・・・・多分、飲まされた酒のアルコール度が高すぎたのと量が多かったんだろう・・・・」

「そうか・・・・」

良介の言うとおり、ギンガはたまに良介と共に晩酌を共にすることがあるのだが、良介自身、次の日の仕事のため、あまり影響が出ないように、たいてい愛飲している酒はアルコール度が低い酒で、量もそんなには飲まない。

しかし、今回フェイトによって飲まされた酒はいつも飲んでいる酒と違い、アルコール度が高く、しかも、飲まされた量も一合と普段とは比べられないほどの量だったので、完全にギンガは酔っ払い・・・・悪酔いしている真っ最中であった。

だが、嘔吐していない所を見ると、肝臓はかなり丈夫な様子。

流石、戦闘機人。

「宮本さん、早く行ってあげて!!このままだとギン姉、何するか分からないから・・・・」

「あ、ああ・・・・」

本音を言うと、今の悪酔い状態のギンガと関わり合いを持ちたくはないのだけれども、スバルの言うとおり、このままギンガを放置しておくと、大変な事になりそうなので、良介は恐る恐るギンガに近づいた。

「ど、どうした?ギンガ?そこまで、酔っ払って?」

「う〜ん。分かんない〜。それよりダーリン、チュウしよっ!! チュ〜♪」

ギンガは良介に抱きつき甘える。そして強引に良介の唇を奪う。

「んっ・・・・」

酔っ払っているギンガからのキスの味は当然酒の味がした。

『なっ!?//////

突然のキスシーンを見せられ、顔を赤くする一同。

それは酒の影響ではない。キスシーンを見せつけられた羞恥からくるものだった。

「ぷはっ。お、おい、よせよギンガ。皆が居るだろ?」

口では拒絶しているが内心は満更ではなさそうな良介だった。

「ヤダぁ〜ヤダぁ〜。 ねえ、ダーリン抱っこしてぇ〜。一緒にお部屋に行こよぉ〜?」

ギンガは良介の膝の上に移動し良介の眼を見ながらお願いした。

その表情は扇情的なものだった。潤んだ瞳と水気を帯びた唇。酒により体温が上がって暑いのか、着ている浴衣を着崩し、胸の谷間が見えている。

しかも部屋に行こうということは、良介を誘っていると言う事・・・・。

「うっ・・・・わ、分かったよ・・・・」

ゴクっと生唾を一飲みした後、良介はギンガの誘惑に負け、ギンガを抱き上げる。

所謂お姫様抱っこと言うやつだ。

「それじゃあ俺とギンガはもう休むから」

「おやすみ〜」

ギンガは良介に抱っこ(お姫様抱っこ)され、満足そうな顔をし、宴会場にいる皆にヒラヒラと手を振っている。

「ギンガさん・・まさかこれから先輩と・・・・//////

「う、うむ。あの様子では・・・・恐らく・・・・//////

((((((良いなぁ〜))))))

その様子を皆は顔を赤くしつつも羨ましそうに見ていた。

しかし、その様子を出歯亀しようとする勇者は居なかった。

バレたら後が怖いので・・・・。

ただ、良介はこの後、後悔することとなった。

その後、夫妻の部屋からは、

「ちょっ、ギンガ!これ以上は流石に無理だから!!」

「いやぁ!!もっとぉ〜!!私〜もっとぉ〜良介さんの欲しぃ〜!!」

「い、いや・・・・だから・・これ以上は・・・ちょっと!!ギンガ・・・・・アッー!!・・・・・・」

等と、良介の悲痛な声とギンガの甘える声、そして色々な音が聞こえたと言う。

 

翌日、ギンガは昨晩の事を一切覚えてはいなかった。しかも二日酔いの様子もなかった。

流石、戦闘機人・・・・その肝臓は鋼の如き強さの様である。

そして彼女の肌は何時も以上に艶々しており、良介はゲッソリとし、干からびているようだった。

その様子を見たヴィヴィオがなのはに、

「なのはママ、なんで良介パパまるでお爺さんみたいになっているの?」

と、質問した。

ヴィヴィオの質問になのはは、

「ヴィヴィオ、世の中には知らなくて良い事が沢山あるのよ・・・・うっ・・・・気持ち悪ぃ〜・・・・」

二日酔いで青い顔をしながらヴィヴィオに忠告するなのは。

「 ? 」

なのはから忠告を受けたヴィヴィオはなのはの言葉の意味が分からず、終始首を傾げていた。

ただ、良介の不幸はこれだけではなかった。

朝起きた時、当然ギンガは一糸纏わぬ姿で目を覚まし、隣には同じく一糸纏わず、疲れ切った様子で寝ている良介。しかし、ギンガには昨日の記憶が無い。

そこで、

「良介さん、今日の夜も・・・・その・・・・しましょう・・・・」

と、夜のお誘いをする。

「いっ!?きょ、今日はもう、勘弁してくれ、昨日絞り尽くされる寸前だったんだぞ!!」

「でも、私、昨日の事は覚えていないので・・・・それに『寸前』ってことは、まだ残っているんですよね?」

と、ギンガはすっかり狩人モードになっていた。

「ちょっ!?ギンガさん?・・・・め、メガーヌさん助けて!!ギンガが・・・・ギンガが狩人に!!」

と、慌ててメガーヌに助けを求める良介であったが、当のメガーヌは、

「若いっていいわねぇ〜クイントも結婚当時は、ゲンヤさんをヒィヒィ言わせていたものねぇ〜やっぱりギンガちゃんはクイントの娘ね〜」

と、言って助けてくれる気が全く無い!!

なのは達に助けを求めても余計な混乱を招くし、義妹のスバルに求めても「宮本さん、諦めて・・・・そして頑張って」と言って親指をグッと上げてくる始末・・・・。

孤立無援・・・・こうなってしまってはギンガから逃れる術はなく、結局その日の晩も良介はギンガに食われた。

良介がギンガに食われている中、はやて達も昨夜同様、酒を飲んで荒れていた。

「くそー!!いつか私だっていい男みつけたるで!!」

酒を飲みながらウガーと吠えるはやて達であった。

「飲み過ぎよ、貴女達・・・・」

見るに見かねたアリサが止めに入るが、

「大丈夫であります!!大佐殿!!朝と夜だけ飲めば効く!!」

既に酔っているのか、訳の分からない事を言うはやて。

それに対してアリサは、

「何に効くのよ?それに私は大佐じゃないわよ」

と、酔っ払い相手に尋ね、ツッコミを入れた。

そして朝には干からびたような状態で良介は見つかり、

そして弱弱しく一言こう呟いた。

「ふ、不幸だ・・・・」

とある高校生と同じセリフを吐く良介。

その直後、どこからか、

リア充は爆発しろー!!

首をマミられてしまえ!!

と、幻聴が聞こえた気がした良介であった。が、もはやそれに対しツッコミをする気力も無かった。

「うぅ〜・・・・気持ちわる〜・・・・」

「うぇ〜・・・・」

「うっぷ・・・・」

はやて達も連続二日酔いでその日は一日中部屋で魘されていた・・・・。

まさに死屍累々な様子で忘れたくても忘れなれない忘年会となった。

 

 

「・・・・・」

アルバムの写真を引き攣った顔で見ている良介。

楽しい思い出の反面、ギンガに絞りつくされた事を思い出していた。

そんな良介の背後から迫る一つの影があった。

「りょ〜う〜す〜けぇ〜」

声をかけられ、恐る恐る振り返る良介。

そこには、コメカミを引き攣らせ、イイ笑みを浮かべたアリサが仁王立ちしていた。

「あ、アリサ・・・・」

「さっきから妙に静かだと思ったら・・・・」

「あ、アリサこれには訳が・・・・」

「問答無用!!」

「ひぇ〜!!」

「大体、良介は昔から落ち着きが無くて!!注意力が散漫なのよ!!それだから・・・・」

と、クドクドとアリサの長い説教を受けるハメになった良介であった。

 

 

あとがき

桜花(良介とギンガの娘)が生まれた頃にはなのは達も二十歳になっているでしょうから、彼女達も普通に飲酒をさせました。

ギンガも度々、良介君と一緒に飲んでいる設定ですが、今回は悪酔いしました。

大掃除はまだ続きます。

では、次回にまたお会いしましょう。




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