七十一話 サイレンノナルヒ 悪魔の研究所

 

 

日没後の光源確保の為、丘の上にある南田医師の研究所へと向かうこととなった一同。

志村の案内の下、小高い丘の上にある南田医師の研究所へと着いた一同はその研究所の姿を見て、唖然とした。

「な、なんだ?これは・・・・ちょっと来ない内に・・・・何時の間にこんな要塞に・・・・」

志村が南田の研究所を見て、驚きの言葉を述べる。

研究所を見た志村が驚き、皆が唖然となるのもうなずける。

研究所の周りは有刺鉄線の着いたフェンスで囲まれており、研究所の屋上には全方位を照らせる探照灯が幾つも設置されており、死角は無く、さらに電波塔まで立っており、その様子から研究所内はおそらく無線、テレビ等の電波機器は電波が入る様になっているのだろう。

とりあえず、南田医師と話をするため、フェンス門を開け、皆は研究所の敷地内へと入る。

その様子を南田は二階の窓から気付かれぬように見ていた。

 

「驚いたな・・一階には窓はなく、建物のつくりは全て頑丈なコンクリートで作られている・・・・扉もかなり頑丈そうだ・・・・」

良介が研究所の壁に手を当てながら研究所の作りを言い、

「発電機もどうやら中にあるようっスよ!!すげぇ!!完璧だ!!これなら助かるっスよ俺達!!」

東の言うとおり、発電機を外に設置していた役場や学校と違い、研究所の周りには自家発電機が設置していなかった。

しかし、昨夜この研究所は確かに電気を灯してた。そのことから発電機は研究所の中に設置してあることが伺える。

助かるかるかもしれないという事で東は興奮しているが、良介はどうにも腑に落ちなかった。

(いや・・・・あまりにも完璧すぎる・・・・まるで昔から奴らの存在を知り、奴らの習性や弱点を知り、それに対抗して作られたようにしか思えない・・・・)

南田程ではないが、志村と東もこの島に来てそれなりの月日を送った筈・・・・しかし、昨日の志村と東の様子から奴らの襲撃は昨夜初めて経験したように思えた。

それにもかかわらず、南田はこうして研究所を砦ともいうべき完璧な武装を施し、奴らの対抗処置を完璧にこなしている。

南田は志村と東がこの島に来る前からこの島で生活をしていた。その事から、もしかして南田は過去に連中と遭遇していたのであろうか?

そうでなければここまで完璧な対抗処置をとることは不可能だ。

もし、遭遇していたのであれば、南田は故意に志村と東に連中の事を黙っていた事になる。

それは何故だ?

あんな危険な奴等が居れば、開発なんてしない方が良いのに・・・・。

まぁ、それ以前に奴等と遭遇してよく生きていたと思う・・・・。

そして、連中の事を話さなかったのは、志村と東に話しても信用されないと思ったのか?

まぁ、実際に話しただけでは信じられないかもしれないが・・・・。

それとも連中の存在を他者に知られると南田にとって何かマズイ事でもあるのだろうか?

連中の存在が知れて、この島が危険地帯となれば、当然島に居る人間は退去せざるを得ない。

南田が志村と東に連中のことを黙っていたのは、自分がこの島から強制退去させられるのを防ぐ為だったのだろうか?

良介が南田について考えていると、後ろの方で言い争う声が聞こえた。

「ちょっと!!江戸!!あんた、まさかカメラ置いてきたんじゃないでしょうね!?」

「怪我で歩くのが精一杯なんだ。あんな重い物持ってこれないよ」

美保子がカメラマンの江戸と言い合っていた。

江戸は昨夜の襲撃で片足を連中の一人にかまれ、足を負傷している状態で、長い木の枝を杖代わりにして此処まで歩いてきた。その状態じゃあ、とてもあの大きく重いテレビカメラを持ってくるような余裕はない。

江戸の選択はある意味正しい選択であった。

しかし、あのカメラには島に響き渡る謎のサイレンの音、そのサイレンの音に導かれるように現れた光を恐れる異型人の姿が記録されており、番組的には高視聴率間違いなしの映像であった。

その映像を記録したカメラを置いてきたことに美保子は憤慨した。

「あんたの怪我なんて知ったこっちゃないわよ!!」

「な、なんだと!?俺が死んでもいいって言うのかよっ!?」

「江戸!!あんたいつから私にそんな口きくようになったの!?」

美保子と江戸が言い合いをし、その場にいる皆の視線が二人に向いている中、研究所のドアが人知れず開くと、

「むぅっ・・・・」

研究所の出入り口の扉の近くにいた美耶子の口と鼻が突如、布で塞がれ、美耶子本人も研究所の中に引きずり込まれていった。

「み、美耶子!!」

良介が慌てて駆け寄るが、美耶子の体が研究所の中に引きづり込まれるのと同時に扉は再び固く閉ざされてしまった。

「おい!!開けろ!!開けろ!!」

良介は扉を叩くが中からは何の応答もなく、扉が開かれる様子も無い。

「くそっ、なんだ?この扉は!?分厚い鋼鉄製で、しかも中からしか開かないようになっていやがる!!」

良介の言うとおり、この研究所の扉は鋼鉄製でドアノブがなく、鍵穴しかない状態で、扉を開けるには鍵を使って開けるか、中から開けないと開かない仕様になっていた。

愛刀で切りつけても刀の刃がかけるか折れるかのどちらかの為、扉を切りつけても無駄だった。

「美耶子!!返事をしろ!!美耶子!!」

良介は扉を叩いたり、体を扉に打ちつけながら研究所の中に引きずり込まれた美耶子を呼び続けた。

 

その頃、南田の手によって研究所の中へ引きずり込まれた美耶子は、地下の研究室にある検診台の上に横たえられていた。

南田が美耶子を引きずり込む時に使った布には特殊な薬が予め染み込ませており、美耶子は眠っている状態だった。

南田は美耶子が眠っているのを良い事に、美耶子の来ている服を一部脱がし、その白い肌を触りまくっている。

「はぁはぁ・・・・や・・・・やった・・・・はぁはぁ・・・・やったぞぉ〜・・・・はぁはぁ・・・・・」

息を荒げ、口からは涎を垂れ流すその様子はとても医学研究者の姿には見えず、どう見ても変質者と言う言葉がお似合いの姿であった。

「こ、これは・・・・はぁはぁ・・・・僕のモノだ・・・・これはもう、僕のものなんだぁ〜」

美耶子の貞操が危機に瀕している時、美耶子本人の意識は夢の中にいた。

しかし、いつも見ている様な悪夢ではなく、とこまでも続く草原で気持ち良いそよ風が吹く空間にいる。

そして目の前には大きな樹が一本生えていた。目を凝らして見てみると、その樹の幹には一人の青年が磔にされていた。

「あ、あなたはっ・・・・!!」

美耶子は急ぎその青年の下に駆け寄る。

青年は手足を大きな釘の様なもので幹に磔にされて、顔全体には変な絵柄の入った布を巻かれていた。

「ひ、酷い・・・・一体誰がこんなことを・・・・」

美耶子は青年を助けようとするが、青年の体は美耶子が手を伸ばしてもギリギリの高さで磔られており、とても彼を助けることは出来なかった。

それでも足の杭を何とか抜こうと必死に手を伸ばしていると、美耶子の脳裏にまたあの声が聞こえてきた。

 

君に危機が迫っている・・・・

 

一刻も早く目を覚まさなければいけない・・・・

 

「やっぱりいつも夢の中で声をかけてくれていたのは貴方だったのね?」

美耶子はいつも夢の中に語りかけてくれている声の主の姿をここでようやく見る事が出来た。

「そんな体でいつも私の事を励ましてくれて・・・・」

声の主に出会えたのは嬉しいが、その声の主がまさかこのような惨い姿になっていたとは美耶子も予想外だった。

だからこそ、いつも悪夢の中で自分を励ましてくれている彼を助けたかったのだ。

たとえこの世界が自分の見ている夢の世界と言えど・・・・。

しかし、青年の方はと言うと、

 

目を覚ますんだ・・・・

 

ここに留まっていっていてはいけない・・・・・

 

早く!!

 

と、美耶子を必死に現実の世界へと戻そうとする。

「待って!!貴方はどうして私を助けてくれるの!?本物の貴方はどこにいるの!?やっぱりあの塔の中にいるの!?答えて!!」

美耶子は現実世界へ戻る前に青年の居場所を聞き出そうとしたが、

 

今から・・・・

 

気味の神経にちょっとした刺激を送るよ・・・・

 

少し痛いかもしれないけど、それで君は目が覚める。

 

「待って!!もう少し・・・・もう少しだけ、ここに居させて!!」

美耶子は青年に悲願するも、美耶子の願いもむなしく、美耶子の体にバチッと電気ショックのような痛みを感じ、美耶子は現実の世界へと引き戻された。

体中に走る一瞬の痛みと共に美耶子はハッと目を覚ました。

(あれは!!・・あ、赤い水!?)

目を覚ました美耶子が見たのは南田がフラスコに入った赤い水を自分に飲ませようとしている姿だった。

美耶子がまさか夢の中の住人によるショックで起きるとは思わなかった南田は手を止め、驚きの声をあげる。

「まさか、目を覚ますなんて・・・・数時間は意識が戻らない筈なのに・・・・あり得ない!!」

そう言うと南田は急ぎ部屋を出て行った。

美耶子は自分の口にテープで固定されているロートを外した。

おそらく南田が赤い水を注ぎやすいように取り付けたのだろう。

「オェェェ〜・・・・ハァハァ・・・・・ハァハァ・・・・」

美耶子が改めてここが何処なのか辺りを見回すと、隣の検診台の上には頑丈なベルトで固定された例の異型人がいた。

しかもお腹を解剖されており、中の臓器が丸見えであった。

そして普通の人同様、痛みを感じるのか、呻き声をあげながら、体や首を小刻みに動かしている。

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

目を覚まし、隣にお腹を開かれた人・・・・しかも昨日の夜、自分を襲ってきた異型人がいれば悲鳴をあげるのは当然であり、美耶子は悲鳴をあげる。

そこへ、一度部屋を退出した南田が戻って来た。

「どうだい?すごいだろう?みんなこの赤い水の力のおかげさ・・・・体内に一定の量を注ぎ込むと不死身になれるのさ・・・・どんなに切り刻んでも細胞が増殖し、再生する・・・・足りない分は他の生物の肉やたんぱく質・・・・骨を取り込んで遺伝子を組み換え再生する・・・・」

「・・・・・」

「でも、その代わりに肉体は変な形に変形していき、知能もどんどん低下していく・・・・だから・・・・だから今、僕が欲しいのは新しい体・・・・君のその美しい体が欲しい・・・・」

美耶子の前に現れた南田は興奮している様子で、息を荒くし、口からは涎を垂らし、そして手には赤い水が入った大きな注射器を持っていた。

「さぁ・・・・これを打てば君は永遠に生きている事が出来るんだよぉ〜・・・・そ、そして僕がずっと君のご主人様になってあげるからねぇ〜・・・・」

もはや今の南田の姿に医学者としての面影など微塵も無く、変態、精神異常者と言った言葉がお似合いな姿であった。

美耶子はそんな南田の姿に若干怯えながらも、言い返した。

「貴方・・・・どうかしている・・・・とても正気じゃないわ・・・・・」

「・・・・・」

美耶子の言葉を聞き、冷静になったかと思ったが、南田はため息を一つついた後、やれやれといった感じで言う。

「はぁ〜〜〜・・・・やっぱり女って奴は体以外邪魔だなぁ〜・・・・眠らせるんじゃなくて頭を潰しておくべきだったかな・・・・」

やはり、南田は、美耶子の言う通り正気ではなかった。

嵐の前の静さのように独り静かに呟くと、次の瞬間、南田の態度が急変した。

「女なんてみんなそうだ!!調教してやる!!僕好みに調教して!!僕のお人形にしてやる!!」

南田は声をあげ美耶子に襲いかかって来た。

「来ないで!!」

「君はもう僕のモノなんだ!!」

南田は美耶子の髪を乱暴に掴み羽交い絞めにする。

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

「さぁ、僕だけのお人形さんに生まれ変わろうね〜?僕が一生可愛がってあげるからね」

「いや!!離して!!」

美耶子は声をあげ、手や体を必死に動かし、抵抗するが、南田の体が小太りで大きいのと、リミッタ―を外したかのような馬鹿力のため、逃げる事が出来ない。

「さぁ〜お注射するよぉ〜」

美耶子の腕に注射器の針が段々と近づいていく・・・・。

だが、その針は美耶子の腕に刺さる事は無かった。

逃げ回っている中、美耶子本人もそうだが、南田自身も失念していた事があった。

それはこの部屋にはもう一人の人物が居た事だった。

有る意味奇跡の様な偶然だが、南田は検査台に括り付けている異型人の至近距離で背を向けている状態だった。

検査台の異型人は南田の手によってあちこちの臓器を摘出されている状態であり、他の生物の体を構成する肉やタンパク源を欲していた。

そんな異型人の目の前にたるみ切った脂肪と肉の塊が映った。

異型人はその口を大きく開け、その肉に食らいついた。

 

「ぎゃー!!」

突如、美耶子を羽交い絞めにしていた南田が大きな声で悲鳴をあげ、美耶子から離れ、手に持つ注射器を床に落とした。

一瞬何が起きたのか理解できなかった美耶子であるが、南田の背後を見ると、事態を把握できた。

検査台に括り付けられていた異型人が南田の尻に噛みついたのだ。

異型人は南田の尻に噛みつき、首を動かし、南田の尻の肉を引きちぎった。

それは見るからに痛そうであった。

たとえ、精神は病んでいても痛感は常人と同じらしく、南田は噛み千切られた箇所を手で押さえながらのたうち回ったが、その際誤って薬品が大量においてある棚に激突し、棚に有った大量の薬品を被った。

さらに運が悪く、棚が南田の重さに耐えきれずに倒れ、棚の近くにある机にはアルコールランプがフラスコに入った薬品を熱しており、棚が倒れた衝撃で机からアルコールランプが落ちてきた。

「はへ?」

そして薬品まみれになった南田の体に落ちると、体に着いていた薬品に一気に引火した。

「ぎゃあああああー!!」

断末魔の悲鳴をあげながら火ダルマになる南田。

一瞬の出来事だったため、美耶子は火ダルマになった南田を唖然として見ている事しか出来なかった。

しかし、火ダルマになった南田と目が合うと、南田は美耶子を諦めきれなかったのか、それとも道連れにしようとしたのか、美耶子の方へと近寄って来た。

「あぎゃあああー!!」

「キャーッ!!」

しかし、火ダルマになった南田は先ほどとはうってかわり、動きはあまりにも鈍く、美耶子がスッと南田の体当たりを避すと南田はそのまま倒れ込んだ。だが、南田が倒れ込んだ場所が最悪だった。

彼が倒れ込んだのは自家発電機のすぐ傍でそこには発電機の燃料となる油が大量に置かれていた。

火だるまとなった南田が火種となり、研究所は瞬く間に火の海と化した。

 

研究所の外で良介は相変わらず扉を開けようと何度も南田や美耶子に呼びかけ、扉を叩いたり、体当たりをするが、一向に開く気配は無い。

そんな中、突如、研究所の内部から爆発が起こった。

「な、なんだ!?地下で爆発!?」

良介が突然起きた爆発に驚いていると、扉が開き、そこから美耶子が息を切らせながら出てきた。

「ゴホッ・・・・ゴホッ・・・・ゴホッ・・・・」

「美耶子!!大丈夫か!?」

良介は美耶子に駆け寄り、彼女を研究所の建物から遠ざけた。

 

発電機の燃料と薬品に次々と引火し研究所は炎に包まれた。

「も・・・・燃えちまう・・・・俺達の最後の砦が・・・・燃えちまう・・・・」

「もう・・・・逃げる所が・・・・ない」

燃える研究所を見ながら東と江戸がぼやく。

研究所の建物自体はコンクリート作りのため、燃える事は無かったが、内部はそうもいかず、滅茶苦茶になった。特に発電機が壊れたのは痛手で、夜のための光源が確保出来なくなり、電波塔も破損し、此方も使用不能となり、外部との連絡をとる事も不可能となった。

「この疫病神!!どうしてくれるのよ!?」

美保子が美耶子の頬を引っ叩こうとしたので、

「止めろ!!彼女のせいじゃないだろう!!」

と、良介が二人の間に割って美耶子を庇う。

「赤い水を使って人の体を弄んでいたとは・・・・人間は化け物以上に恐ろしい存在だな・・・・」

(確かに・・・・)

志村は南田の所業を知り、改めて人間の残酷さを思い知った。そして良介もその考えに同意した。

南田がこの島を離れたく無かった理由は赤い水を使用しての不老不死の研究を行っていたからであった。

もしかしたら、木暮も治療の最中、赤い水を打たれたのかもしれない。

もし、そうだとしたら、志村や東も木暮同様、南田の人達実験の糧にされていたかもしれなか釣った。

(フェイトあたりが聞いたら、憤慨していただろうな・・・・)

南田の所業を知り、良介はミッドに居る妹分の一人がもし、この場に居たらと想像した。

 

「ど、どうするんだよ!?夜になったらまたあの化け物が襲ってくるぞ!!もう光のある建物もないし・・・・」

「「・・・・」」

「何か考えなさいよアンタ達!!」

皆、夜の・・・・あの異型人対策を練っていると、

「そ、そうだ!!採掘場だ!!採掘場が有る!!」

と、東が思い出したかのように声をあげた。

「志村さん、確か地質調査に使ったあの坑道の奥に・・・・」

「ああ、確かにあると言えばあるが・・・・」

東の意見を聞き、志村も何か心当たりが有る様子。

「坑道の奥に何があるんです?」

「坑道の奥に従業員専用の小さな船着き場があるんです。従業員はその船着き場から船で島周辺の海底調査や地質調査を行っていた」

「それじゃあ今でも使える船が?」

「はい。そしてこれが始動キーです。わしが管理していました」

良介の質問に志村は一つの鍵を見せ、この島にまだ動く船が有る事を告げる。

「なんで今まで黙っていたのよ!?ボケジジィ!!」

島にまだ動く船が有ると言うのにそれを今まで黙っていた志村にキレる美保子。

「坑道を通るという意味をお前は分からんのか?」

志村が呆れる感じで美保子に言い返す。

「坑道・・・・つまり、トンネルと言う暗闇の中を歩いて行くとなれば当然、奴等はそこに潜伏しているし、襲いかかってくる。これは連中の巣の中に自ら飛び込んで行く様なものだ」

良介が補足説明をし、坑道を通る危険性を伝える。

あの異形人が出現する前ならば、坑道を通っても問題ではないが、今の状態は余りにも危険だ。

「バカね!!夜になればどうせ同じじゃない!!銃を撃ちまくって走るしかないわ!!」

結局美保子の言う事も最もであり、皆は坑道を突破し、その先に停泊しているであろう船でこの島から脱出することとなった。

 

坑道へ向かおうとしている途中、美耶子が突然歩みを止めた。

「美耶子?どうした?」

突然歩みを止めた美耶子に良介が声をかける。

「・・・・私は・・・・残ります」

美耶子は島から脱出せずこの島に残ると言い出した。

「な、何言ってんの!?あんた頭がおかしいの?」

島に残るという美耶子に美保子はイカれていると言い、

「島に残ってどうするんだよ!?」

東が島に残る理由を尋ねる。

「助けたい人がいるんです・・・・皆さんは先に行ってください」

美耶子は真剣な表情で伝える。

「その人って、例の夢に出てくる人か?」

良介が尋ねると美耶子は無言で頷く。

「付き合っていられないわ!!残りたきゃ勝手に残ればいいわ!!止めはしないから!!」

「分かった、美耶子がそう言うなら俺も一緒に残ろう」

良介も美耶子と共にこの島に残ると言い出した。

「おいおい、マジかよ」

「探偵さん!!アンタまで残るっていうのか?俺達と来てくれよ。あんた結構頼りにしてんだから!!」

東は一緒に来てくれと頼むが良介は美耶子と共に島に残ることを選んだ。

「み、宮本さん・・・・そんな・・・・夜になれば危険なんですよ・・・・」

「依頼人を見捨てて逃げるのは探偵として失格だからな、それにお前を無事に帰すって施設長と約束しているんでな・・・・」

美耶子を無事連れて帰すと言う施設長との約束もあったが、良介はこの一連の事件に美耶子が重大な存在と確信付けていた。

この島に起こった異変は美耶子がこの島に来てから起こり始めた。そして美耶子はこの島での唯一の生存者・・・・。

美耶子の夢に出てくると言う謎の人物との関連はまだ分かっていないが、もし、彼女までもがむざむざと連中の餌食にされてしまったり、消えてしまってはこの謎を解くカギが永遠に失われてしまう。

この非現実的な悪夢のような出来事はここで終わらす事を自分の心の中で決意した。

 

美耶子と良介が残ると決めた後、

「すまないがわしも残る事にするよ」

と、志村までもが島に残ると言い出した。

「し、志村さん!?」

「何考えてんだ!?あんた!!」

「ちょっと!!残るのは構わないけど、鍵と銃は私達に渡してくれるんでしょうね!?」

鍵を管理している志村が残るとなると折角船着き場についても船が動かない。

また、銃と言う強力な武器も連中と対抗するためどうしても必要だったため、美保子はその二つを自分達に渡すよう要求した。

「ああ、持って行け・・・・」

志村はあっさりとその二つを美保子達に渡した。

「志村さん、あんた・・・・一体なんで・・・・?」

良介としては美耶子と違い志村には島に残る理由が見当たらず、何故危険を冒してまで島に残るのか尋ねる。

「気にするな、別にアンタ達二人のためじゃない」

「それじゃあどうして・・・・?」

「わしにも事情があるんじゃ・・・・」

「「・・・・」」

二人は志村の言う事情に対し、深く追求はしなかった。

 

鍵と銃を受け取った美保子、江戸、東の三人は坑道の奥にある船着き場へと向かっていった。

良介が持っていた拳銃は昨夜、学校の襲撃時に弾を撃ち尽くし、只の鉄の塊と化していたので、美保子達は持って行かなかった。

・・・・と、言うのは表向きの理由で良介はこの先のため、此方側も拳銃だけは確保しようと思い美保子達に弾が無いと説明し、実際は夜実島の資料と共に今も良介の鞄の中に何発かの弾薬と共に忍んでいる。

「結局、ダイナマイトを残してライフルも鍵もライトも持っていかれましたね」

「やむを得ん、我儘を言ったのは我々の方なんだからな・・・・坑道はさほど長くは無い・・無事船着き場にたどり着いてくれれば良いが・・・・」

残った良介、美耶子、志村は坑道へ向かう三人を見送る。

「す、すみません!!私が悪いんです・・・何もかも・・・・私が・・・・」

美耶子はこうなってしまった事態が全て自分のせいだと決め、良介と志村に頭を下げて二人に謝罪した。

「何度も言わせるな、お嬢ちゃん。皆それぞれ理由があるから残っておるんじゃ、さぁ塔へ向かおうぐずぐずしている暇は無いぞ・・・・」

良介達もあの謎の塔へと向かった。

 

 

おまけ

 

スカート

 

ある日、宮本家に家主である良介、クロノ、ユーノの三人が居た。

女性陣は買い物等で今は家には居ない。

今回、このメンバーが宮本家に居るのは、ユーノからある相談を受けたからだ。

ユーノ曰く、「そろそろ、なのはとの関係を進展させたいと言うモノだった」

と言うのも、ユーノの周りの男性陣達は皆、彼女持ちや既婚者ばかり・・・・。

クロノは知り合いの男性陣で一番早くにエイミィと結婚し、今では双子の子供も居る。

グリフィスは最近、ルキノと彼女彼氏の仲らしいし、ヴァイスは、シグナムにティアナ、アルトの三人と仲が良い・・・・リア充爆発しろ・・・・。

エリオは既にキャロとルーテシアと言う同年代の美少女がおり、まさに両手に花状態・・・・。

そして、良介までもがギンガと結婚し、ユーノとしては焦っているのだろう。

良介がユーノと話をしていると、

「なぁ、宮本・・・・」

「ん?」

クロノが話しかけて来た。

「スカートってどう思う?」

「ちょっと!!クロノ!!今は僕が相談に乗って貰っているのに全然関係ないよね!?その話!!」

ユーノは突然割り込んで来たクロノに声をあげる。

「そりゃお前、ありえねーだろ大体・・・・」

良介もクロノの質問に答える。

「って!!良介、君までも!?」

「確かに、あれ腰の周りに布巻いているだけだからな・・・・」

「全然隠せてないよな」

「いやいや、古代ベルカ時代から存在している立派な衣装だし、良介の故郷の地球でも中世から存在しているから!!」

「いやだとしてもだよ、パンツむき出しでそこらを歩いている訳だろ? 俺だったら絶対に耐えられん!」

「あんな低防御力で破廉恥だよ!」

良介は以前、女性化してスカートを履いた事があるにも関わらず、平然とスカートが破廉恥だと言う。

「落ち着けよ、二人とも!!」

このスカートの議題を切り上げようとユーノが二人を宥める。

そして、クロノは冷静に良介を見つめる。

「な、なぁ・・宮本。奥さん(ギンガ)のスカートを拝借できんか?」

「何を言っているの!?君は!?無理に決まってるだろうが!」

クロノの要求に良介ではなく、ユーノがクロノに声をあげて言う。

二人が言い争いをしている時に、良介は両腕にスカートをかけて冷静に。

「あったぞ!!」

「うわぁ!!マジで持って来やがった!!」

良介の行動にユーノの口調が思わず変わる。

「更にもう一つ!」

そう勢いよく叫んでスカートを上へと放り投げ、良介は両手をばん! と音を立てて鳴らす、上げた瞬間にひらひらと舞ったスカートが降りた瞬間に良介は静かに手を広げる、すると良介の手の中からギンガのものかと思われる女性モノの下着(パンツ)が出てきた。

「練成しやがった!!」

「ソレ、まさかっ!?ギンガさんの下着か!?」

「安心しろ!!等価交換だ!! 代わりに俺のパンツを置いてきた!!」

「お前本当に馬鹿だな!!」

もう完全に口調が変わっているユーノだった。

 

「よし、早く履け!」

そして、スカートを頭から被るクロノと良介。

「なぁ、これ下から履くんじゃないの?」

「おい本当に履くのかよ!?」

必死に叫ぶユーノの言葉を無視して良介達はスカートに脚を通す、すると。

「あっ、スネ毛!!」

「どっちでもいいだろ!!」

「馬鹿野郎スネ毛があるのがいいんじゃねーか!」

「何がだよ!?」

何が彼達を怒らせたのか良介が切れてクロノへ啖呵を切る。

「んだとてめぇー!!」

「やんのか?コラああ!」

「どっちでもいいから早く履けよ!!」

ユーノのこの一言で二人は、

「お前そんな履きたかったのか!?」

「この変態が!!」

「落ち着けぇ!! ツッコムのも、もうめんどくさいわ!!」

そして、スカートを持った三人は・・・・。

「じゃ俺はあっちで・・・・」

「俺はこっちで・・・・」

「ちょっと!!待って!!マジで履くの!?」

一人一人が定位置へとついてスカートを履き始める、数分経ってクロノが、

「履いた?」

「ああ」

「なんとかな・・・・」

緊張した空気が部屋を包み込む、三人が頬を赤らめながら定位置から出て行く、それぞれの目に映ったのは・・・・

 

 

スカートを履いたユーノ、ズボンを履いたクロノと良介が静寂した空気の中立っていた。

「・・・・」

吹っ切れたのかユーノは近くにあった椅子を掴むと勢いよく振り回した。

「死ねええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇー!!」

一暴れして恥かしくなり、座り込んだユーノは両手で顔を覆って、

「もう、お婿に行けない」

と、泣いていた。

「お前、結構似合っているぞ」

「お前コレ普通に金稼げるんじゃねーの? いやそう意味でなく」

二人がそう言った瞬間に、ユーノの表情が少しだけ変わった。

「マジで?」

「イケてるイケてる」

起き上がるとユーノは恥かしそうに、少し自身あり気に二人を見つめる。

「いやそれはないだろ」

「何言っているんだ! マジでいけているって自信持てよ!」

「大体、お前さんの声、妙に女声っぽいじゃん!!いけるって!!」

二人は明らかに面白がっているが、ユーノは割とマジな感じであった。

 

そして・・・・

「ど、どうかな・・・・?」

ユーノは脚を組んで女の子座りをして問うた、それに対してクロノと良介は、

「それだあああぁぁぁぁぁー!!」

「いいぞ、ユーノ心なしか体格も変わってきたぁ!!」

「お前男性ホルモンはどうなってんだぁ!?」

「よし、次のステップに行くぞ!!」

クロノのその声と共に扉が開かれた。

そこにはギンガが居り、彼女の目には、自分のブラジャーをつけようとしているユーノとその近くでそれを面白そうに見ているクロノと良介の姿。

下着の持ち主の姿を見た三人は、怖さとなにかが交えた顔で硬直した後に。

「「「わあああああああああああああぁぁぁぁぁー!」」」

と大きな声で叫んだ。

「どうしたの?続けなさいな・・・・三人とも・・・・」

ギンガは目が全く笑っていない笑顔で迫って来る。

しかも目はいつの間にか金色になっている。

それに対して防衛体制の良介達は声を揃えて・・・・

「「「ご、ごめんなさい!」」」

と、謝罪したが、この後三人がギンガによる鉄拳制裁を喰らったのは言うまでもない。

 

 

あとがき

光源を失い、日没と言う迫るタイムリミット・・・・。

しかし、真相はすぐそこにありそうな気がすると言う事で、島に敢えて残る良介達・・・・。

制限時間が有る中、良介達は真相に迫る事が出来るのだろうか?

SIREN編は次回でクライマックスを迎えます。

では、次回にまたお会いしましょう。

 

 




作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。