七話 ヒジョウナゲンジツ

 

 

ミミズ退治に行く前日の夜、良介はなんとなくだが、ギンガにメールを送り、明日から他の世界での仕事で、しばらくミッドには不在であることを知らせる。

メールを送ってからすぐにギンガから返信が送られてきた。

メールの内容は「気をつけて、お仕事がんばってください」の後、

「くれぐれもさぼらないように!!」

「あまりアリサさんやミヤさん、周りの人に迷惑をかけないようにしてください」

など、後半はお小言でいっぱいだった。

ギンガらしいといえばギンガらしい。

良介も「お前も数の子達の面倒がんばれ」と返信し明日のため、早めにベッドに入って休んだ。

 

 

翌日、仕事のため、良介の見送りに行けないギンガは更生施設の屋上から良介が乗っているであろう、次元航行船を見送った。

ギンガが更生施設で更生担当官を行っている頃、ゲンヤのもとに一本の通信が入った。

後にこの通信がギンガと108部隊にとって厄災を齎すこととなった。

「はい、こちら陸士108部隊、部隊長のゲンヤ・ナカジマです」

「君が、ゲンヤ・ナカジマ君か?私は本局のレイモンド・カミンスキィー中将だ」

(ちっ、厄介なやつからきたもんだぜ・・・・)

ゲンヤは心の中で舌打ちをする。

この通信を送ってきた人物の評判は決して良いものではなく、むしろJ・S事件の折、スカリエッティーと共に管理局上層部の将校が行なってきた汚職が明らかとなり、かなりの人数が粛清されたにも関わらず、この将校が何故、裁かれなかったことが不思議なくらいであった。

「それで本局の中将閣下が一体なんの御用でしょうか?」

不機嫌なのを隠しつつ、ゲンヤは要件を聞く。

「ふむ、今回、君の部隊に息子のナギを捜査官の研修として派遣したい」

(ふざけるなよ、面倒ごとを押し付けやがって・・・・なんでお前のバカ息子の面倒を俺たちが見なきゃなんねぇんだ?)

ゲンヤの腸は煮えくり返りそうだった。

この将校の息子も父親と同じく評判が悪かった。

顔は良いのだが、実務能力、魔法能力はお世辞にも高くはなく、その上、女に見境がなく、何度も局内で問題視されてきたが、父親の手口が巧妙なのと、父親と自らの権力を利用して、すべてが公に取りざたされずうやむやになってきた。

「なんだ?その顔は?」

不快感が顔に出ていたのか、カミンスキィーが睨んでくる。

「いえ、元々こんな顔なんで、気にしないで下さい中将閣下」

「それでどうなのだ?もし、受け入れてくれるなら今年の部隊の予算額だが、君の部隊には大幅に値上げをしてもらえるよう頼んでおくが?」

(ちっ、権力にモノを言わせやがって)

予算も何もゲンヤの権力では「拒否権」など存在せず、この話が来た時点で受けざるを得なかった。

「・・・・分かりました。そのお話、謹んで受けさせて頂きます・・・・・」

「おおそうか、そうか受けてくれるか。いや、君なら受けてくれると思っていたよ。ハハハハハハ」

断れないと知っているにも関わらず、カミンスキィーは芝居がかった言葉でゲンヤを褒めるが、逆にそれがゲンヤの神経を不快にさせる。

「それじゃあ頼んだよ。ナカジマ君」

「はい、ただしやり方はこちらの流儀でやらせていただきますので、そのおつもりで。陸は決して本局と違って生易しい職場では無いので」

「まぁ息子の他にも何人か向かわすからな、それで少しは楽になるだろう?それではな、ナカジマ君」

カミンスキィーからの通信が切れてもゲンヤの機嫌は収まらず、部下のカルタスを含めた古参組みが引くぐらい凄まじかった。

 

 

やがてカミンスキィー中将の一人息子、ナギ・カミンスキィー一佐が取り巻きの部下を引き連れ108部隊にやって来た。

確かに容姿は良が、噂通り、能力的にはイマイチな人物であった。

事務などの仕事も全て取り巻きの部下が行い、本人はデスクでゲームをやっている姿が度々目撃され、それを注意しても反省の色はまったくない。

それどころか自分と親の権力をチラつかせて、脅しまでかけてくる始末。

また女にも見境がなく、部隊の年頃の女性局員に色目を使いまくっていた。

ナギが来てからゲンヤはストレスのため、胃薬を服用することが多くなり、このままいけば胃薬から精神安定剤に変わるのもそう時間が掛からないのではないかと、カルタスは思っていた。

そしてゲンヤが一番恐れたことはギンガがナギの手に落ちないかということだった。

噂通りならばナギはさんざん女を弄んだ挙句、ボロ雑巾のように平気で捨てる最低の男だ。

「そんなクズに大事な娘を汚されてたまるか」と、思っていたが、現実は非情で恐れていた事態が起きてしまった。

 

 

最近ギンガには悩んでいることがあった。

それは良介のことではなく自分自身の体調のことだった。

ここ最近はナンバーズ達の更生に専念しており、捜査任務や模擬戦等の激しい運動はしていないにも関わらず、ひどく疲れやすく、そのため家には戻らず、そのまま更生施設の宿直室に寝泊りすることも屡々である。

また妙に体が熱っぽく、昼夜問わず眠くなることもあり、トイレに行く回数も増えている。その上、些細なことでイライラを感じる。

最初のうちは更生担当官という初めての役職についたため、「緊張しているのかな?」程度にしか思っておらず、自分たちの体をメンテナンスしているマリエル・アテンザ技術官にも相談はしていなかった。

そんな中、ギンガはそいつと出会ってしまった。

 

 

その日、ギンガはナンバーズ達の今までの更生記録とこれからのスケジュール表を記した報告書を持って、108部隊隊舎に来ていた。

ギンガが通路を歩いていると向かい側から部下を大勢連れて歩く見慣れない人が歩いてきた。

「おや?君は?」

その人は突然ギンガを見つけると、さも当然の様にギンガに話しかけてきた。

「えっと・・・・あなたは?」

「失礼、僕はナギ・カミンスキィー、つい最近この部隊に研修として配属になった者だ。それで君の名前は?」

「ぎ、ギンガ・ナカジマと言います」

「ふぅ〜ん、どこの所属だい?」

「108部隊ですけど、今は別件の任務でここを離れています。今日は報告書を提出に来ました」

「へぇ〜ということは、僕らは同じ部隊仲間ってことだね。今後ともよろしく」

ナギはギンガに馴れ馴れしく話しかけ、握手を求めてきたが、ギンガは「両手がふさがっておりますので・・・・」と、丁重に断った。

本音を言うと、このナギという人物が生理的に受付けなかった。

捜査官としてJS事件をはじめとする数々の死線をくぐり抜けてきたギンガの本能がナギから漏れている下心を感じ取ったのである。

「大変そうだね?手伝おうか?」

「い、いえ結構です。それでは」

ギンガは一礼し即座にその場から立ち去った。

これ以上ナギに話しかけられたくはなかった・・・・・話したくなかったためである。

立ち去って行くギンガの後ろ姿を見ていたナギはニヤリとイヤらしい笑を浮かべ一言呟いた。

「ギンガかぁ・・・・イイ女だ。是非とも僕のコレクションに加えたいね・・・・・いい声で鳴いてくれそうじゃないか」

 

 

ギンガはゲンヤの部屋に駆け込むとさっき通路で出会ったナギについて聞いた。

「お父さん、なんなの?あのナギって人!?」

「お前、ナギに会っちまったのか!?」

「さっき通路で会ったわ。馴れ馴れしく話しかけてくるし、鼻の下を伸ばしたいやらしい目で私をみてくるし」

「そうか・・・・会っちまったのならしかたがねぇ。ただ、あいつには気をつけろ、あいつは・・・・」

ゲンヤの話を聞き、ギンガはより一層不快な気持ちになった。

「なにそれ!?なんでそんな人が今も平然と局員を続けられているの!?」

「隠蔽の手口が巧妙なのと権力を盾に使っているからだよ」

「そんな・・・・」

「ハァ〜・・・・せめて良介の奴がいれば見合いでもさせて、あのバカからお前を遠ざけられるんだがなぁ・・・・」

良介のミッド不在はゲンヤも知っており、早く良介が戻ってくることを祈るしか出来なかった。

「ちょっ、お父さん!!私、良介さんとお見合いだなんて・・・・//////

「でも、お前、良介の事が好きなんだろう?」

「そ、それは・・・・//////」」

「それにだ、良介の奴には公園での一件の責任はとってもらうつもりだしな・・・・」

ゲンヤはこの何気ない一言が口を滑らせたとは思っていなかった。

「ちょっとお父さん。なんで公園のコト、知っているのかな?・・かな?」

突然普段のギンガからは想像できない程のドスの効いた声がした。ゲンヤが慌ててギンガの方を見ると、ギンガからは黒いオーラが出ていた。

「まさか、覗き見していたのかな?・・そういえばあの時、お父さんの部下の人が突然出てきたよね?」

「い、いやあれはお前のことが心配で護衛をな・・・・」

ゲンヤは声を震わせ、護衛を付けていた理由を話そうとしたが、

「問答無用!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁー」

ゲンヤが理由を話す前にギンガのリボルバー鉄拳が炸裂し、部隊長室からはゲンヤの絶叫が響いた。

ただでさえ、体の調子が悪く、その上、いけすかない人に声をかけられ、挙句の果てあの公園での出来事を覗き見られ、そして病室での情事も覗き見られたと思った、ギンガの怒りが爆発したのだ。

最もギンガの監視は良介が復活後はされておらず、当然ゲンヤはギンガが病室で良介に抱かれたことは知らない。

しかし、今回の件については、半分は八つ当たりだが、半分はゲンヤの自業自得なのかもしれない。

ギンガが自分の体調不良の原因を知るのはもう少し後になってからであり、その原因を知った時、ギンガと良介の運命は大きく動くことになる。

 

 

あとがき

戦闘模写もそうですが、悪党の演出も難しいものですね。

以前、感想板で名無しASさんが仰っていた3話での良介とギンガの情事の時、ベッドのしたにへの28が潜んでいるかもしれない可能性は流石に問題があると思い、なかったことにしました。

期待させてすみませんでした。orz

あと、1,2話が終わるまで、良介君は登場せず、ギンガ視点で描いていこうと思っております。

では次回またお会いしましょう。








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