六十五話 ワスレタヒ 取り戻した記憶 (微裏な表現あり)

 

 

「・・・・追いかけないのか?良介?」

ギンガが勢いよく診察から飛び出して行き、良介が意気消沈している中、ゲンヤがその良介に問う。

そんなゲンヤの問いに良介は片手で顔を覆いながら言う。

「・・・・無理っぽい」

「えっ?」

「ギンガの記憶を取り戻すのは・・・・もう無理っぽい・・・・だから追いかけても、もう何の意味も無い・・・・それに追いかけた所でギンガの機嫌が余計に悪くなるだろうから・・・・運よく自然に記憶を取り戻すのを待つしかないっぽいな・・・・もう・・・・無理・・なのかな・・・・ギンガと一緒の時間を過ごして行くのは・・・・」

ネガティブなオーラを纏いながら良介は自分に言い聞かせるように呟いた。

良介の言うことも分かる・・・・。

宮本家の皆を忘れたギンガと身体の関係を持って、あの夜のように強烈なショックを与えられるほどの快楽への極地へ導くなど・・・・。

いや、それ以前にまず今のギンガが良介との肉体関係にOKを出すとはとても思えない。

強引に事を進めれば関係は今よりも悪化し、記憶云々の問題ではなくなり、ギンガから離婚届けを突きつけられるだろう。

まさに八方塞り、もうギンガの事を諦めるしかないのかとさえと思った。

「もう・・・・ダメかもな・・・・・」

俯いて肩を落とし、少し鼻声で良介が呟いた。

家庭を持ち、ある意味強くなった良介であったが、その反面、ある意味脆くもなっていた。

意気消沈している良介に、

「いつまでグダグダ言っていやがる!?」

ゲンヤがウジウジしている良介の態度にとうとうキレ、良介の胸倉を掴む。

「とっつぁん・・・・でも、とっつぁんも見ただろう?・・・・ギンガのあの目・・・・もう・・・・無理だって・・・・」

死んだ魚の様な目でゲンヤから視線を逸らし、良介は弱々しく呟く。

「この大馬鹿野郎!!無理だの意味が無いだのまだやってもいないのに何故、直ぐに諦める!?お前はいつからそんな腰ぬけになった!?ギンガと桜花を次元世界一、幸せにするんじゃなかったのか!?人間、バカなこと言っている内はまだやれるんだよ!!ほら、さっさと行け!!宮本 良介!!」

ゲンヤは良介の背中を叩き、良介にギンガの後を追うように促す。

「とっつぁん・・・・すまねぇ・・・・」

ゲンヤに促され、眼の色が元に戻った良介は勢いよく部屋から飛び出していった。

 

「ふぅー・・・・まったく世話の焼ける夫婦だぜ・・・・クイントが見たら、それこそ、問答無用で二人に拳骨を入れていたぞ」

良介が出て行った後、一息つきながら椅子にもたれかかる様に座るゲンヤ。

そして、今は亡き妻がこの光景を見た場合の事を想像する。

「お疲れさまです。三佐」

そんなゲンヤにマリエルはコーヒーの入ったカップを差し出す。

「どうも・・・・」

神妙な面持ちで差し出されたカップを受け取るゲンヤ。

「なんだかんだ言ってやっぱり、やる時には、やりますねからね・・彼・・・・」

「そうでなければ困る・・・・簡単に諦めるような奴だったらギンガを嫁になんてやらなかったさ・・・・」

そう言って、カップに入ったコーヒーに口をつけるゲンヤ。

マリエルはそんなゲンヤの姿を苦笑しながら自らもコーヒーの入ったカップに口をつけた。

 

良介より前にマリエルの診察室から飛び出したギンガは無意識的にクラナガンの街中にある公園まで走っていた。

公園のベンチに座り、これからの事を考えていると、ふいに赤ちゃんの泣き声が聞こえ、反射的にその泣き声のする方へ視線を向けた。

すると、そこでは公園へ散歩に来ていたお母さんが泣いている赤ちゃんをあやしている姿が映った。

(桜花・・・・今頃どうしているだろう・・・・? 私が居なくても泣いてないかな?食事もちゃんと食べているのかな?)

赤ちゃんを見て、ふと自分の娘だと言われた桜花の事が脳裏をよぎったが、ギンガは頭を振った。

(違う・・・・私は子供なんて産んでない・・・・あの子は私の子供なんかじゃ・・・・ない・・・・ない・・はずなのに・・・・・どうしてここまで気になるんだろう?)

ギンガはマリエルやゲンヤから桜花を自分の娘だと言われたが、今のギンガにはそれを受け入れる事が出来なかったが、完全に否定することも出来なかった。

でも、心の六割方は自分が子持ちだと言う事に対し、否定的だった。

突然、娘が居るといわれてもすぐには受け入れがたかった。娘をがいるということはあの男(良介)を旦那として認知しているということ・・・・それがギンガにとって一番受け入れがい事実であった。

再び公園を眺めていると、公園の片隅に絵を描いている人を見て、ギンガの目にはそれが別の人の背中に見えた。

その背中はたくましく自分を優しく包み込んでくれそうな気がした。

そして、

(いやー天下のギンガさんもついに悪事を働きましたか)

(ギンガ!管理局にばらされたくなかったら、これからは俺の営業には目をつむるんだな)

人を食ったようなふざけまじりの軽い声。

・・・・が聞こえてきたように感じた。

ギンガは再び頭を振り、忘れようとした。

(どうしちゃったんだろう?私・・・・)

さっきから他人の事を想ったり、幻覚や幻聴が見えたりと、普段の自分らしからぬ事ばかりだ・・・・。

(俺は・・・・宮本良介は・・・・お前を・・・・ギンガ・ナカジマを愛している・・・・俺はお前が好きだ・・・・ギンガ・・・・・)

「っ!?」

(俺はお前を愛してる!!ギンガ、俺はお前のことが好きだぁぁぁぁ!!)

ギンガの脳裏にあの男の声がした。

ギンガはさっきよりも勢いよく頭を振って必死にあの男の声を、姿を忘れようとした。

(認めない・・・・私が結婚しているなんて・・・・あの男が私の夫だなんて・・・・私があの男の妻だなんて・・・・そんな事・・・・認めてたまるか!!)

そこへ、

「ギンガ・・・・」

今度は本当にあの男(良介)の声が・・・・。

ギンガの目の前に良介の姿があった。

 

 

時系列は少し時間を戻し、良介は診察室を出ると、ギンガの後を追った。

しかし、ギンガが診察室を出て行ってから良介が後を追うまで、ロス時間があった、しかもギンガは物凄い勢いで飛び出していったので、そう簡単に追いつけない。良介はギンガを探しにクラナガンの街を探し回った。

ギンガを探し回っている中、良介は昔あった出来事を思い出した。

(そういえばあの時もこうしてギンガを探してクラナガンの街中を探し回ったっけ・・・・)

そう、ギンガとの結婚のきっかけともなったナギの事件でギンガがナギの社会的嫌がらせで、精神的、社会的に追いつめられて、現実に疲れ切ったギンガが行方不明になった時、良介は雨の降りしきる夜のクラナガンの街中を・・・・ギンガを求めて走り回り、復活後ギンガと出会った公園でギンガに告白した。

その事から、ギンガはあの公園に居るのではないかと思い、良介はあの公園へ向かった。

そして良介の予想通り、その公園にギンガは居た・・・・。

「ギンガ・・・・」

良介は公園のベンチに座っているギンガに声をかけた。

 

声をかけられたギンガは良介をあからさまに迷惑そうな目で見上げる。

「・・・・すみませんが、記憶がどうこうは諦めて下さい。その・・・・昨日していたらしいことはその・・・・犬に噛まれたと思って忘れますけど・・・・またする気はありませんから・・・・」

そっけなく言うとギンガは良介から視線を逸らした。

「―――ギンガ」

「だから馴れ馴れしく呼ばないで下さい!!」

それは完全な拒絶だった。

「聞いてくれ!!」

「・・・・」

「俺はお前が好きだ!!」

「っ!?」

一度告白した公園で二度目の告白。

ギンガが耳を塞がなかったのは幸いというか、意外だったが、ギンガの方も良介の二度目の告白に先程の事が脳裏がよぎった。

「たとえ、お前が記憶を忘れても俺はお前の事を全部知っている・・・・お前の可愛い所も、真面目な性格も、脆い所も、秘密も全部だ!!」

耳を塞ぐ事もその場から立ち去ることも無かったが、ギンガは無視を決め込んだ様だ。

しかし、良介はギンガを諦めきれない。

当初はクイントの約束を守るため・・・・・それだけだったが、今の良介は本気でギンガを愛している。

ほんのさっきまで心が折れそうだったが、ゲンヤの言う通り、やる前から諦めるのはたしかに俺(良介)らしくない。

諦めたら、今度こそギンガが自分の下から去ってしまいそうだった・・・・だからこそ、自分の愛妻を諦めることなどもう出来ないのだ。

勿論手放す気も、毛頭無い。

「だから・・・・お前も・・・・お前も、もう一度俺の事を知ってくれ!!」

「・・・・は?」

「だからもう一度最初から恋をしよう・・・・夫婦とかそんなのを忘れて恋人からやり直そう」

「いい加減にして下さい。ウザいですよ」

ギンガは溜息まじりに呟く。

「もう、いいじゃないですか諦めれば・・・・好きとかどうかなんてそんなの時間が経てばおのずと冷めていきますよ。そんな一時の感情なんて意味無いですよ。そんなくだらない意味にこだわる貴方に理解しかねますね・・・子供(桜花)の事は、もう少し考える時間を下さい・・・・」

そう言ってこの話題を切り上げ、ギンガはこの場から去ろうとベンチから立ち上がる。

そして良介の真横を通り過ぎた長い前髪でギンガがその時、どんな表情をしていたのか分からないが・・・・。

「さようなら」

それだけ言って公園から去ろうとした時、

「たとえ一時の感情だったとしても意味はあるぞ・・・・お前にこだわる意味が・・・・」

ギンガが振り返った瞬間、ギンガの体に太い腕がまわされた。

良介がギンガの体を抱きしめたのだ。

「俺が、お前の事が好き・・・・それ以上の意味はない・・・・俺はギンガ・・お前の事が好きだ!!」

ギンガの体を抱きしめながら良介はギンガの耳元で呟く。

良介としては、ギンガが自分を投げ飛ばさなかった事、手を跳ね除け、また勢いよくその場から去らなかった事が幸いだった。

「・・・・良・・・・介・・・・さん・・・・・」

良介の告白を聞き、ギンガは無意識に良介の名を呼んだ。

 

 

「いやーどうもすみませんですゲンヤさん」

「なぁに気にするな・・・・」

ミヤがゲンヤに礼を言う。

あれから良介とギンガが宮本家に戻ってきた時、今回のギンガの記憶喪失の治療法をマリエルから聞いていたアリサ達はゲンヤの家、ナカジマ家に来ていた。

二人の邪魔をしないために・・・・。

幸いスバルは寮暮らしをしていて居ないし、他の姉妹達は、今日、なのはの家にお泊り会をしていたので、ギンガの記憶喪失とその治療の事は知らない。

「今頃、上手くやっているかしら?あの二人・・・・」

アリサは宮本家にいる良介とギンガの事を想った。上手く治療がいくように・・・・と、願って・・・・。

 

「ぎ、ギンガ・・・・そ、その・・・・何か飲むか?それとも何か食べるか?」

「・・・・・」

(き、気まずい・・・・)

一言も発しない彼女に良介も口を閉ざしてしまい、気まずい空気が部屋を包む。

「・・・・」

(でも、本当にコレでいいのだろうか?)

あの後、良介はギンガを説得し、一度だけ・・・・一度だけ、マリエルが言った治療法を試し、もしダメだったら、自然に記憶が戻るまで良介はギンガの目の前に現れないという条件で手を打ったのだ。

いつも見慣れた部屋に二人っきり・・・・記憶を無くす前ならば何も変わらないシュチュエーションだったのに、こんなにも緊張するのは初めてギンガを抱いた時以来だ・・・・。

しかしそれは仕方がないことだ。

今のギンガは良介を信頼しているわけではないからだ。

(はぁ〜あの変態ドクターに洗脳されていたときよりもやり辛れぇ〜)

「あ、あのさ・・・・」

気まずい空気の中、ようやく良介が先に口を開いた。

「き、昨日の再現をするわけだけど・・・・その・・・今のギンガには・・・・初めてに近い経験になるんだろう・・・・?」

「・・・・はい」

「ギンガ・・・・その・・・・もし、怖かったら遠慮なく言ってくれ」

「・・・・」

良介は精一杯優しく投げ掛けたが、ギンガはその言葉を侮辱ととったのか、ムッとした様子で、

「べ、別に怖くなんてないです!!・・・・それよりも約束・・・・守ってくださいよ」

「ああ・・・・これ一回きりだ・・・・これでもし、ギンガの記憶が戻らなかったら、記憶が戻るまで二度とギンガの目の前には現れない・・・・そ、それじゃあ・・いくぞ・・・・」

「・・・・」

良介はギンガをキュッと抱きしめた。すると、やはり緊張していたのだろう。抱きしめたギンガの体はひどく強張っていた。

身体もビクッと震わせた。

そんなギンガの強張った体を良介は優しく撫でてやると少しずつギンガの体は緊張を緩めて行った。良介にとってその事が愛らしさを感じさせた。

良介はギンガの背後に回ると、彼の手は自然とギンガの前へ行き、着衣越しに、ギンガの大きく実った胸の果実を掴む。

「んぅ・・・・」

覚えている限り、異性に生れて初めて胸を掴まれ、揉まれたことにより、ギンガは鼻を鳴らし、小さく喘ぐ。

良介はギンガの喘ぎに気付きながらもいつもと同じく力加減を調整しつつ、ギンガの胸を愛撫する。

「ほ、本当に慣れて・・・・いるんですね・・・・//////

「そりゃそうだ今まで一体何回お前を抱いていると思っているんだ?」

そう言って左右の乳頭を少し強めに摘む。

「っ〜・・・・・//////

「ちなみに俺はお前以外の女は抱いた事は無い・・・・俺の『慣れ』は全てお前の体によるものだ・・・・」

そう言って良介は舌を出し、ギンガの耳下へと近づける。

「んにゃ!?」

直後にギンガの驚いた声と共に水音と立てた生温いものが耳を這う。

言うまでもなく、背後に立った良介がギンガの敏感な耳たぶを舐めたのだ。

記憶になくとも今まで散々良介の手によって開発されてきたギンガの身体は、性感帯を責める刺激の前に徐々に火照っていく。

「可愛いよ・・・・ギンガ・・・・」

耳たぶから舌を話し、耳元で囁かれ、熱い吐息を吹きかけられると、ギンガの上半身がブルっと痙攣する。

ギンガは慌てて肩越しの良介をキッと睨むと、

「ちょっ、止めてくださいそういうの・・・・//////

「ん?どういうの?」

とぼけながら良介はまたギンガの耳たぶに舌を這わせ、胸を揉む。

「っあ・・・・っ。――――だ、だからそういうのです//////

恥かしい声を良介の前で、また出してしまった恥ずかしさを紛らわすかのように眉をつりあげるギンガ。

「でもなぁギンガ・・これは俺たちにとっちゃ当たり前のことなんだよ?ギンガはこうやって耳下で・・・・」

ふっーっと息を耳元で吹きかけ、

「・・・・好きだよ・・・・ギンガ・・・・」

囁く。

「〜〜〜・・・・っ//////

今度は声こそ出さなかったが、体がピクッと動いたのを良介は見逃さなかった。

「って囁くと嬉しそうにする」

「・・・・と、とにかくやめてください!!これ以上やると帰ります!!」

「・・・・そこまで怖がる事か?」

「こ、怖がってなんかいません!!ただ精神的に不快なだけです!!」

今のギンガにしてみれば、強がっているようにも思える。

この場から逃げ出せば、それはこの男に自分が負けた事を意味する。

ギンガとしては、この男に抱かれるのは不快だし、正直怖いが、持ち前の負けず嫌いな性格がギンガをこの場に留めていた。

「はいはい」

そんなギンガの事情を知る由もなく、本当に帰られたら困るので苦笑しつつ良介はギンガの耳元から口を離した。

 

「ちょ・・・・本当にコレ必要あるんですか?」

「あるさ・・・・マリエルが言ってただろう?出来る限り同じシチュエーションでやった方が記憶が戻る可能性が高いって・・・・」

「・・・・私、本当にこんな事してたんですか・・・・?」

ギンガは自らの両手を縛ってあるタオルを複雑そうに見ながらため息をついた。

まさか記憶を無くす前の自分がまさかこんなSMプレイをしていたなんて軽くショックでもあった。

「すぐに取れるから大丈夫だって、そんなにビビるなよ」

「本気で縛る気だったのならとっくに帰っています。って言うか、ビビっていません!!」

だんだんと意固地になってきているギンガの身体をベッドに仰向けで横たわらせた。

シーツの海に一糸纏わず寝そべるギンガの姿に良介は目を奪われる。

「なんですか?」

いぶかしげに睨んでくるギンガ。

「い、いや・・・・なんでもない・・・・そ、それじゃあ・・・・いくぞ・・・・・」

「綺麗だ」と言いたかった良介であったが、またギンガに煙たがれそうだったので、それ以上良介は何も言わなかった。

そして、良介は戸惑いつつも普段通りにギンガを抱いた・・・・・。

 

良介に抱かれている最中、ギンガは経験した筈のないことなのに、何故か快楽を感じてしまう。

気持ちいい・・・・。

もっとしてほしい・・・・

もっと彼の寵愛を受けたい・・・・。

そんな抱くはずのない思いを抱いている中、

 

「待ちなさいっ!」

「断るっ!」

 

「今日は俺は何もしてないぞ!」

「なら何で逃げるんですかっ!?」

 

「・・・・やく・・・・そく・・果たし・・た・・ぜ・・・・クイント・・・・」

 

「よくがんばったな、ギンガ!娘だ!俺たちの子供だぞ!!」

 

ギンガの脳裏に様々な場面がフラッシュバックしてきた。

どれもこれも自分には体験した覚えが無い事ばかりだ・・・・。

覚えもない事の筈なのに、妙に懐かしく感じた。

ギンガがそんな思いを抱いている中、二人の行為は終わった・・・・。

これ以上激しくしなくてもただ性の快楽に落ちいるだけならば、出来るが、それは二人の気持ちが通じている事が大前提であり、今の状態ではそれは難しいのではないのかと良介は思った・・・・。

そして事が終わり、失敗したと思いつつも、

汗でべったりと額についたギンガの前髪をすいてやり、ぐったりとして息を荒く呼吸しているギンガの背中と後頭部に手を回し、横向きに抱っこをする形をとる。

「あっ・・・・」

朦朧としているギンガが自然と主人に甘える子犬のように身を寄せてきた。

良介はそんなギンガに対し、優しく背中を摩り、頭を撫でてやる。

「良・・・・介・・・・さん・・・・?」

少し戸惑い気味な声で良介の名を呼ぶギンガ。

夢心地な表情を浮かべたギンガは、

「なんだか・・・・前にもこうされたような気がします・・・・」

息を切らしながら、ギンガは艶っぽい声で言う。

「ああ、昨日もしてたよ・・・・つぅか週に二、三回な・・・・」

「・・・・はい・・・・

濡れた吐息を漏らしギンガは、

「良介さん・・・・もう一回・・・・・してくれます・・・・?」

もう一度、良介からの寵愛を求めた。

ギンガの言葉と行動からどうやら成功した様だ。

「ああ・・・・もちろんだ・・・・」

「良介さん・・・・大好きです・・・・・」

もう一度、身も心も通じ合った二人は一緒に性の快楽の絶頂を迎え、そのまま眠りについた。

 

 

「記憶喪失騒動から一週間経ったけど、その後、身体に何か異常は無い?ギンガ?」

診察室でマリエルがギンガを診察する。

「はい、問題ないです」

「そう、それなら良かった。 いやぁ〜一時はどうなるかと思ったけど、無事治ってくれてよかったわ。やっぱり愛の力は偉大ね」

「・・・・////

マリエルがニンマリとした笑みを浮かべ、ギンガを見ると、ギンガは顔を赤くし俯く。

しかし、この一件以降、二人の夜の営みの中で身体を縛るようなことは無くなったと言う。

 

 

おまけ

 

 

海水浴

 

 

良介がまだ海鳴に居た頃、八神家の皆で海に来た事があった。

「たまには親分らしいとこをみせねぇとな、かき氷でもおごっていやるぜ良介」

「ごちになります。親分」

珍しくヴィータが良介にかき氷を奢ると言うので、良介とヴィータは海の家に行き、かき氷を頼んだ。

「いらっしゃい。何にします?」

「イチゴをくれ」

「俺はメロン」

「毎度〜二つで300円になります」

そう言って店員は良介に代金を要求する。

傍からみたら良介とヴィータはその身長差から兄妹に見えて当然だった。なので、店員が兄(と思い込んでいる)良介から代金を請求するのは至極当然のことだった。

「ま、まぁこれぐらいで腹を立てるほどアタシは子供じゃねぇぞ・・・・」

「・・・・そうだね・・・・あまり力を入れて持つと容器が壊れるぞ・・・・」

ヴィータは無意識に手に力を入れていると、かき氷の容器がベコッと音を立てて凹んだ。

かき氷の上の部分はそのまま砂浜に落ちた・・・・。

 

良介とヴィータがかき氷を買って砂浜を歩いている頃、シャマルはナンパに引っかかっていた。

「そう言わずにいいじゃん」

ナンパ男はしつこいようでシャマルは困っていたそこへ、かき氷を持った良介とヴィータがシャマルの視線に入った。

「あ、良くぅーん!」

「えっ?」

「良くん?」

シャマルが良介を普段呼んでいない呼び方で呼び、良介に近づくと、シャマルは腕をからめ、

「この人が私の彼氏――――」

ふと、シャマルが良介の隣にいるヴィータを見て、「彼氏」の部分を

「・・・・夫です!!」

と、彼氏から夫へグレードアップしてナンパ男に言い放った。

 

「ごめんね、ナンパがしつこくって」

「なるほど、まぁ俺でよければ相手役ぐらいにはなってやるよ」

「ホントですか!?ありがとう♪〜」

(本音を言うとこのまま夫婦になりたいんですけどねぇ〜)

良介の言葉にご機嫌な様子のシャマル。

ナンパ男を退けた後、良介、シャマル、ヴィータの三人は、ヴィータを真ん中にし、手を繋いで砂浜を歩いている。

その光景はどう見ても子供のいる家族連れに見えた。

ご機嫌のシャマルに対し、

「アタシはごめんなんだが・・・・・」

子供役をさせられたヴィータは不機嫌だった。

 

夕方になり、そろそろ帰ろうとした時、

「はやて、シグナムの奴が寝ているぞ」

良介が運転手役のシグナムがパラソルの下で寝ているのを発見し、はやてに言うと、

「なら早く起こして・・・・」

「いや、そう簡単にはいかないようだ・・・・・」

「ん?どないしたん?」

はやてがシグナムを見ると、眠っているシグナムからはほのかにアルコール臭がした。

彼女の近くに落ちていた紙コップからはビールの匂いがした。

シグナムは海の家で無料で配られていた試供品のビールを炭酸飲料と思い飲んでしまい、そのまま酔って眠ってしまったのだ。

「・・・・しゃーない。宿でも探すか」

日帰りの海水浴が突然のトラブルで一泊旅行となってしまった。

 

八神一家+良介はここでは体裁を考え家族設定で泊まることとなった。

ザフィーラは当然人型バージョンになり、父親役を務めてもらい、母親役は良介の背中で眠っているシグナム。残りは皆、姉弟と言う設定になった。

「ホント、一部屋とはいえ、取れてよかったね・・・・お・に・い・ちゃ・ん」

末っ子設定のヴィータが黒いオーラを纏いながら良介に声をかける。

「ごめんね、お兄ちゃんでごめんね」

良介はダークオーラを纏うヴィータに謝ることしか出来なかった。

 

夕食時間ゴロにシグナムは目が覚め、自分の不手際で思いもよらない事態になった事を知ったシグナムははやてに何度も頭を下げ謝罪した。

 

夕食が終わり、各自で風呂に入り、そして寝る時間となった頃、

「じゃあ俺は皆と離れて寝るわ」

良介は自分は一人、皆とは少し離れて寝ると言いだした。

「そんな、ええやん良介も家族みたいなモンやし、私は良介のこと信用しとるで」

はやては良介の言葉と態度に少し不満の様子。

良介としても小学生を襲う特殊な性癖は持ち合わせていない。

だが、ちゃんと理由はあった。

そこで良介は離れて眠る理由をはやてに話した。

「ありがとな、はやて。でも―――」

良介は自分のため用意された布団の方へチラッと視線を向けると、

「俺はいつの間にか隣を陣取っているコイツラが信用出来ない。・・・・しかもご丁寧に服を脱いでいるし・・・・・」

良介の布団の隣にはシャマルとヴィータが寝ていた。しかもご丁寧に枕元にはさっきまで自分達が着ていた浴衣を折りたたんだ状態で・・・・。

「・・・・シャマル、ヴィータ。そこは私とザフィーラが寝るからそこ退き」

はやてがドスの効いた声でシャマルとヴィータを退けた。

こうして良介の体裁は守られたのであった。

 

 

あとがき

ちょっと・・・・いや、かなり強引な方法でしたが、無事に記憶を取り戻したギンガさんでした。

ゲンヤさんもこの夫婦に関しては気苦労が絶えないでしょうが、その反面おそらく自分達の新婚時代でも思い出している事でしょう。

では、直にまたお会いいたしましょう。

 




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