六十四話 ワスレタヒ 奥さま(ギンガ)は記憶喪失 (微裏な表現あり)

 

 

ある日の夜、良介は自宅の寝室にて、いつものようにギンガを抱いていた。

良介はギンガとの行為を重ねて行く内に、一つ分かった事があった。

お姉ちゃん肌で、真面目なギンガにはなんと、Mっ気・・・・つまり、マゾヒストな部分があったのだ。

しかし、その事実を知るのは、今の所、良介ただ一人だけであるし、良介はこの先、ギンガのこの秘密を誰にも言うつもりは無い。というか、彼が誰にも知られていない妻の秘密を誰かに語る訳がない。

ギンガ自身も良介以外の他人に、こんな恥ずかしい事を言う事はないだろう。

良介曰く、行為をする前、じらすにじらしたギンガは極限までお預けをされた子犬の様で物凄く可愛く、いじりがいがあるとのことだ。

白い・・・・まるでミルクを溶かし込んだかのように白く染みもくすみもない瑞々しくすべすべした肌・・・・それは、年不相応に熟れ、どんな男も虜になりそうなくらい柔らかく、触れれば潤いに満ちた心地よい弾力が感じられた。

「ンっ・・・・」

指先でツゥーッとウエストの上をくすぐると、押し殺した様な声を出す。

続いて良介は舌先でギンガのヘソに舌を差し入れて愛でる。

ちろちろと舌先でヘソをほじくると、途端にギンガが堪らず身をよじった。

「ふぁ・・・・お、おへそ・・・・だめぇ・・・・」

瞳を潤ませ、自分の腹の上で愛撫を続ける良介に彼女は懇願する。

しかし、口ではダメと言うが、体の方は正直でギンガの体は良介の寵愛を欲している。

いつぞや良介がギンガに言ったように彼女の体は良介一色に染まりつつある。

 

ギンガは両手をタオルで縛られたまま、良介に抱かれている。

貞淑で慎ましい理性の下に隠された被虐の淫心・・所謂マゾヒズムが、拘束と共に燃え上がる。

やがて、二人とも互いに満足がいくまで抱き合うと、今日の営みは終了した。

互いに息を荒く切らし、けだるい体をベッドに横たえていたが、

「良介さん、お水飲みます?」

ギンガが、互いに汗をかき、息が切れるほど、激しい運動をしたため、良介に水を薦める。

「あ、ああ・・・・頼む・・・・」

良介はギンガの行為に甘え、ギンガに水を取ってもらった。

ギンガがベッドの脇にあるテーブルから水の入ったペットボトルを取ろうと手を伸ばす。

それが――――今回の騒動の発端だった・・・・・・・。

両手を縛ったまま遠くの物を取ろうとしたせいで・・・・。

「ひゃっ・・・・・っ!!あ、わ、わ、・・・・」

ベッドの端に手を置いた時、ズルッとシーツが滑り、バランスを崩した。

両手が上手く使えないまま体を庇えないギンガの体は重力に引かれ、そのまま・・・・・。

 

ゴチン!!

 

「へぶっ!!」

頭から床に落下した。

「おあ!!ぎ、ギンガ!!大丈夫か!?」

ギンガが思いっきり頭から落下した事態に良介は慌てて身を乗り出し、ギンガの様子を心配する。

「・・・・っっいつつつ・・・・」

かなりしたたかに頭を打ったらしく、顔をしかめながらギンガは起き上がった。

落ちた拍子に両手を縛っていたタオルは取れ、自由になった手で後頭部をさすっている。

見た感じ、痛そうではあるが、特に大けがをしている様子は無いので、ホッと息をつきながら良介はギンガに問う。

「大丈夫か?ギンガ?血とか出ていないか?たんこぶとか大丈夫か?」

良介の問いにギンガが顔を向けると、

「・・・・・・?・・・・――――――は!?」

ギンガは良介の顔を見ると、ギョっとした表情をし、まるで良介から逃げる様に後ずさった。

「ん?ギンガ?ど、どうしたんだよ?」

ギンガの様子がおかしいので良介が首をかしげながら聞くと、

「・・・・・〜〜ここは・・・・一体・・・・?―――っ!?な、なんで私・・・・こんな恰好を・・・・それに貴方は誰です!?」

大きく目を見開き、ベッドの上の半裸状態の良介と辺りを見渡し、そして全裸状態の自分の姿を見て、慌てて胸と自分の秘部を手で隠す。

「ぎ、ギンガ、一体どうしたんだよ?」

あまりにも挙動不審な行動をとるギンガに良介が心配になり、手を伸ばす。

「・・・・――――っ!?」

だが、ギンガは、一瞬硬直はしたが、ギッと良介を睨みつけると、伸ばしてきた良介の手をつかみ取ると、

「このぉぉぉぉぉ・・・・・変態!!」

「は?・・・・・っ、あいだだだっ!!」

手を折るような物凄い力で良介の手の関節を捻り、床に叩き伏せた。

 

深夜、ナカジマ家にて、ゲンヤは突然自分の携帯端末に掛かってきた着信音で起こされた。

「はい・・・・ナカジマです・・・・」

眠い、目をこすりながら携帯端末に出ると、

「お、お父さん!!」

通話口からギンガの切羽詰まった声がしてきた。

しかも、涙声である。

「ギンガ?どうした?こんな夜遅くに?」

「お、お父さん・・グスッ・・私・・・・私・・グスッ・・誘拐されて・・グスッ・・汚されちゃった・・・・グスッ・・・・変な男の人に・・・・」

「な、何ィ〜!!」

ギンガのか細く震えた涙声とその内容を聞き、ゲンヤの眠気は一瞬で消えた。

「そ、それでお前・・・・今どこに居る!?犯人は!?」

「場所は・・・・分からないけど、犯人は確保しました・・・・」

「よし、少し待っていろ!!すぐに場所を特定させるからな!!デバイスは持っているか?」

「は、はい・・・・」

ゲンヤは寝室から飛び起き、すぐに固定電話の下へ行き、自らが隊長を務める108部隊に連絡を入れ、ギンガのデバイスの機能から今、ギンガがいる場所を探させた。

ギンガの場所が特定されるまで、ゲンヤは、

(良介の奴、ギンガが誘拐されたって言うのに何もしなかったのか?)

と、自分の娘の婿に怒りを抱いていた。

やがて、当直で居残っていたオペレーターからギンガの居場所が特定されたと報告があり、場所を聞くと、意外な返答があった。

「それが・・・・その・・・・・」

「早く言え!!ギンガは・・・・ギンガは今どこに居る!?」

「それが・・・・ナカジマ・・・・いえ、宮本陸曹の居場所は・・・・自宅なんです・・・・」

「はぁ?」

「ですから、部隊長のお嬢さんは自宅・・・・宮本邸に居るんです!!」

なんと、オペレーターの報告では、ギンガは今、自分が嫁いだ家である宮本家に居るのだと言う。

「それは間違いないんだな?」

「は、はい。間違いありません・・・・デバイスの信号は確かに宮本邸から発信されています」

「?」

(ギンガは確かにデバイスを持っていると言っていた。それならばギンガは今、良介の家に居る・・・・どういうことだ?もしかして強盗にでも襲われたのか?いや、良介の家に入っても返り討ちにされるだけだろう。それじゃあ一体何があったんだ?)

事態が全く掴めず、ゲンヤはとりあえず、着替えてギンガが居るであろう宮本家へと向かった。

 

宮本家に着き、玄関の扉を開けると、ギンガが泣きながらゲンヤに飛びついた。

ギンガは当然服は着ている。

「お父さん・・・・私・・・・私・・・・」

「と、とりあえず、落ちつけ、一体何があった?」

「わ、分かんない・・・・・気がついたらこの家に居て、裸で・・・・知らない男の人が居て・・・・・」

「良介とアリサ嬢ちゃんはどうした?」

ゲンヤはもしかして、宮本家に侵入者が出てそいつにギンガが強姦されたのかと思い、宮本家へ入った。

ゲンヤが家の中に入ると、

「よぉ、とっつぁん・・・・」

全身青痣だらけで、半裸状態のままバインドをかけられた良介と寝間着姿のままバインドをかけられたアリサとミヤの姿があった。

良介は流石に全裸で家族以外の人に見られたくないので、バインドをされた状態から器用にパンツだけは履いている。

「・・・・なにやってんだ?お前ら?」

ゲンヤが呆れながら良介に何故こうなったのかを聞く。

良介がギンガに床へ叩き伏せられた後、良介の大声を聞きつけたアリサとミヤが良介の寝室に行くと、アリサ達は婦女暴行犯の仲間だと言われ、ギンガにバインドをかけられたのだと言う。

「お父さん!!何、悠長に犯人と会話なんかしているんですか!?この人たちは私を誘拐して暴行を働いたんですよ?それにこの赤ちゃんもきっとどこからか誘拐してきたに違いありません!!」

ギンガはベビーベッドにいる桜花を指さす。

「さっきからこの調子で私たちが『違う』と言ってもまったく信用してくれないのよ・・・・」

アリサが呆れながら言う。

「・・・・ギンガ」

「はい・・・・」

ゲンヤも呆れた表情でギンガに向き合うと、

「お前、また良介と喧嘩でもしたのか?」

「えっ?」

「ったく、手の込んだことして、深夜に叩き起こしやがって・・・・・それで今回の喧嘩の原因はなんだ?」

深夜に娘のピンチだと思い急いで駆け付けてみれば拍子抜けするようなことばかり、茶番に付き合わされたのかと思い、少し不機嫌なゲンヤ。

「えっ?・・・・・ち、ちが・・・・・私、そんなこと・・・・・」

父親が真剣に取り合ってくれないことに動揺するギンガ。

「良介、お前、ギンガが機嫌を悪くするような事でもしたのか?」

ゲンヤは、良介に事情を聞く。とりあえず、良介とアリサのバインドは解かれているが、ギンガは良介とアリサの傍には近寄っていない状況で、ゲンヤが二人の仲介役をしている。

「いや、知らねぇよ!!突然ギンガが豹変しちまって、俺だって戸惑っているんだから!!それに今回は思い当たる節は全く無ねぇよ・・・・」

「ホントか?嫌がるギンガに無理矢理、マニアックなプレイでも要求したんじゃねぇだろうな?」

良介の恰好とギンガの証言からゲンヤはある程度の事は推察できたが、その詳しい内容にギンガが機嫌を損ねたのではないかと思った。

「俺はギンガが嫌うようなプレイはやらねぇよ!!それに互いに同意したことしかしねぇってぇの!!」

「じゃあ、なんでギンガはここまでお前に敵意をむき出しにしている?」

「だから知らねぇよ!!突然怒り出したかと思ったら、床に叩き伏せられてバインドをかけられたんだよ!!」

良介本人もまったく身に覚えのない事で、突然のギンガの豹変に戸惑っている。

「あっ!そう言えば・・・・」

そんな中、良介が何かを思い出したように声をあげた。

「なんだ?」

「何か思い出したの?」

「いや、ギンガの奴、様子がおかしくなる前に思いっきり床に頭をぶつけたんだ・・・・その後、突然様子がおかしくなったんだ・・・・」

「頭を・・・・」

「ぶつけた・・・・」

ギンガが頭をぶつけたという事を聞いて、アリサとゲンヤは真っ先にお盆の時にあった出来事を思い出した。

「な、何?何だよ?」

お盆の時、クイントに体を貸していた良介とその時、ミッドに居なかったミヤはお盆の時、ギンガが床に頭をぶつけて戦闘機人化した事を知らない。

後日、マリエルの下へ行きメンテナンスを行ったので、特に話題になる事はなかったのだが、今回は恐らく戦闘機人化ではなく、記憶を一部喪失してしまったのだろう。と、アリサとゲンヤはそう推測した。

「「はぁ〜・・・・」」

アリサとゲンヤは深いため息をついた。

「「?」」

アリサとゲンヤの様子を良介とミヤは首を傾げながら見た。

 

 

「「記憶喪失!?」」

ギンガの突然の豹変の原因を聞き、良介とギンガの声が重なった。

「ええ、良介の話から察するに、頭をぶつけたことによって、記憶の一部が欠如したみたいね。・・・・現に私達のことは忘れているのに、ゲンヤさんの事は覚えているみたいだし・・・・」

その頃、ゲンヤはギンガの現状を理解し、記憶を無くす前のギンガの事を今のギンガに教えていたが、ギンガはいまいち信用していない様子。

「父さん、これ本当に事実なの?私を驚かせるドッキリじゃないの?・・・・父さんよく、私に『男っ気が無い』って言ってたし・・・・」

「事実だ。いくら俺でもいきなりお前を抱かせるようなセッティングはしねぇよ」

「そ、そんな・・・・それじゃあこの赤ちゃんは・・・・・」

ギンガがベビーベッドにいる桜花に視線を向けると、ゲンヤは神妙な面持ちで言った。

「お前と良介の間に出来た子供だ。お前達は結婚して、子供もいたんだよ」

「そ、そんな・・・・」

父(ゲンヤ)から記憶喪失だと言われ、更に結婚していて子供も出産していたなんて言われてもピンと来る訳も無く、ギンガは戸惑うばかりであった。

 

結局その日はゲンヤがギンガを引き取り、次の日、ギンガをマリエルの下へと連れて行く事となった。

ギンガの記憶喪失騒動から一夜明けた宮本家。

「おはよう良介起きてる?」

アリサが良介の寝室を見ると、そこに良介の姿は無かった。

「もう、起きているのかしら?」

そう思ったアリサがリビングへと降りると、そこには、リビングのソファの上で頭を抱えたり、考え込む仕草をしながら「うーん」と唸る良介の姿があった。

「良介?」

「ん?アリサか」

声をかけた事で良介はアリサの存在に気づいた。

「アンタもしかしてあれからずっとそこで起きていたの?」

「・・・・」

良介の目の下には隈があり、その様子から恐らくあの後、ゲンヤがギンガを連れて帰った後、パジャマに着替えた後、彼はずっとソファに座って一睡もしていなかったのだろう。

「大丈夫なの?そんな状態で?」

完徹したままの状態で病院に付き添う事にアリサは心配するが、

「大丈夫だ・・問題ない」

とても大丈夫そうには見えなかったが、アリサが止めても今の良介は、自分の言う事を聞いてくれないだろうと確信したアリサは、これ以上は何も言わなかった。

朝食の席でも特に会話もなく、ミヤはこの気まずい空気に顔を引き攣らせていた。

 

そして病院のロビーにて、ゲンヤとギンガの二人に合流した良介であったが、ギンガからは睨まれ、良介は気まずさのため、ギンガから視線を逸らした。

「記憶喪失!?」

ゲンヤから事情を聞いたマリエルは昨夜の良介達同様思わず声をあげた。

「そうなんだ・・・・なんとかなりませんか?」

「と、とりあず、まずは診察しましょう」

マリエルはギンガの体をさまざまな機械で調べたが、特に異常は認められなかった。

「うーん・・特に異常はありませんねぇ〜」

検査結果を見て、難しい顔をするマリエル。

「なんとかギンガ記憶を元に戻す方法はないんですか?」

良介もギンガの事を心配してマリエルの下に来ていたのだが、

「勝手に呼び捨てにするのは止めてください。馴れ馴れしいです」

記憶を無くして時に良介と出会った状況が最悪だったため、ギンガは良介に物凄い警戒感を露わにしてくる。

「言っておきますけど、私は貴方のことを全て信用しているわけではありませんからね・・・・貴方と結婚して・・・・まして子供なんて・・・・」

「・・・・」

ギロッと睨みつけるギンガに良介は何も言えない。

「でも、ギンガ。貴女達が結婚して子供が居るのは事実よ・・・・ホラ」

そう言ってマリエルは一冊のアルバムを見せた。

戦闘機人初の妊婦と言う事でマリエルは妊娠当時から何かとギンガの体調管理に携わっていた。

「・・・・」

マリエルから渡され、開かれたアルバムにはギンガと良介の結婚式から始まっていた。

薄水色のウェディングドレスを着て、イスに座るギンガ。その隣に白いタキシードを着て、ギンガの隣に立つ良介の写真。

式を挙げた教会をバックに新郎新婦姿(タキシードとウェディングドレス姿)で撮った写真に式に参加した全員で撮った集合写真。

そして妊娠日時が進み、お腹が大きくなったギンガの写真。

出産直前に病院で撮った写真に、出産後生まれえたばかりの桜花を抱き上げるギンガの写真。

アルバムの中にある写真に写っているギンガはどれも幸せそうで、満面の笑みを浮かべており、その隣には常に良介の姿があった。

「ま、まぁ父さんやマリーさんが言っている事が事実だとしても今の私には関係ありません。宮本さんにはまったく興味ありませんし、私の中では宮本さんはただの変態という印象しかありませんから//////

ギンガは僅かに頬を染めてプイッとそっぽを向く。

一方、良介はと言うと、記憶を無くしているとはいえ、愛妻から興味無いだの変態などと、そんな言葉を言われた衝撃は、まさに筆舌に尽くせないものであった。

ある意味、自分の存在を全否定されたような言葉に、良介は床にorzの姿勢となり真っ白になって燃え尽き、半屍状態。

「で、でもギンガもこのままっていうのもマズイでしょう?桜花ちゃんもいるわけだし、まさか記憶を無くしたなんて言う理由だけで宮本さんと離婚して桜花ちゃんを捨てるようなマネはしないわよね?」

「・・・・」

マリエルが桜花の事を指摘すると、ギンガは何とも言えない顔をする。

記憶が無くても家族愛については、ギンガは人一倍気にするタイプである。

その理由はやはり自分とスバルが本当の血縁関係でもないのに関わらず、自分たち姉妹を本当の家族同然に接してくれたナカジマ夫妻、そして幼少の頃に母親であるクイントが死んでしまった事に大きく関係している。

「そ、それは・・・・わ、わかりました。暇な時はちゃんと此処に来てマリーさんの診察をうけますから・・・・でも、いきなり夫婦や子供なんて言われても・・・・」

「わかっている。・・・・良介、しばらくギンガはウチで預かる。良いな?」

ゲンヤがギンガの事を伝えるが、良介はと言うと、

「変態・・・・俺が・・・・変態・・・・やっぱり俺ってロリコンなのか・・・・・」

床にorzの姿勢のままブツブツと何かを呟いている。

「あぁ〜こっちの方もある意味重症ですね・・・・」

マリエルが良介を見ながら呟いた。

「そういえば、お盆の時はどうやってギンガを治したんですか?」

マリエルはお盆での出来事を詳しくは聞いていなかったので、その事をゲンヤに尋ねた。

お盆の後、マリエルはギンガとゲンヤから何故戦闘機人モードになっていまったのかは聞いていたが、治した方法は聞いていなかった。

「あぁ〜確か、クイントの奴が拳骨一発で戻したらしい」

「げ、拳骨・・・・ですか・・・・?」

「ああ・・・・俺も現場に居て見た訳じゃないが、クイントの奴がギンガとスバルの間に割って入って、二人に拳骨をくらわしたらしい・・・・そんで気絶したギンガを起こしたときには元に戻っていたらしい」

「・・・・」

あまりにも無茶苦茶な治し方に沈黙するマリエル。

「あの時同様、ギンガの頭に一発拳骨をぶち込めば元に戻るか?」

「っ!?」

ゲンヤはギンガに視線を向けるが、ギンガは訳も分からない理由でゲンヤからの拳骨を受けなければならないのかと身構えるが、

「ちゃ、ちょっと待ってください!!そんな医学的根拠もない治療は認められません!!」

マリエルが必死になって止めた。

「とりあえず、脳や記憶のメカニズムに詳しい医師から資料を取り寄せ、そこからギンガの治療方針をたてましょう」

マリエルは早速様々な医師とコンタクトをとり、記憶喪失についての資料を集めだした。

マリエルが資料を集めている中、良介とゲンヤは男二人、自動販売機の近くの休憩所にいた。

ギンガの傍に居ても睨まれるだけだし、ギンガからの罵倒は良介の心を傷つけるだけだからだ。

ゲンヤの方は、ギンガの方も心配であったが、良介の方もある意味重症だったので、良介のメンタル面を心配して良介に付き合った。

まぁ、同性と言うのも理由の一つである。

「そういえば・・・・」

缶ジュース片手にボンヤリとしながら良介がゲンヤに尋ねた。

「とっつぁんの家に居る数の子連中には何て説明したんだ?」

良介の疑問通り、昨夜ナカジマ家に帰ったギンガはスバルではなく、自分の家に居たチンク達に「この人達は誰?」と、ゲンヤに尋ねてきた。

「ああ、チンク達にはギンガが記憶喪失のことを説明して、ギンガにはチンク達がJS事件の関係者ではなく、ギンガ達同様俺の部隊の連中がある研究所で保護して養子にしたって形で通している」

「そうか・・・・」

無用な混乱を避けるため、ゲンヤの処置は理にかなっていた。

良介は気になる事(数の子達の事)を尋ねると、マリエルから呼び出しがあるまで、両者は会話をする事は無く、重い空気が休憩所を覆い、他の職員はその場を利用することは無かった。

 

マリエルから呼び出され、再び診察室でマリエル、ゲンヤ、ギンガ、良介の四人が集まった。

そこで、まずマリエルから記憶喪失からの説明が始まった。

「では、まず記憶喪失について説明しますが、ある医師が創始した分析心理学の話しから始めます。 それによると、イメージの集合性による目的過程と見た心に生じるコンプレックス的な内向と外向の・・・・・」

と、専門用語が入ったマリエルの説明が始まり、

「・・・・ですから・・・・・と、いうことになりまして・・・・」

「あ、あのマリエルさん、その説明いつまで続くの?バルジ大作戦みたいにトイレ休憩挟むの?」

専門用語をグダグダ並べられ、まったくその用語を理解出来ない良介、ゲンヤ、そして今回の患者であるギンガも理解できずに首を傾げるか、眠そうな顔をしていたため、良介がマリエルにその説明が何時まで続き、肝心の記憶障害とその治療について早く聞きたいため、マリエルに質問する。

「もっと分かりやすく説明した方がいいですか?」

「出来るなら・・・・」

「そうですか・・それでは・・・・・」

そう言ってマリエルが再び説明するが、今度は専門用語一つ一つに細かい説明を加え、余計に分からなくなっていき、

「だからそうじゃなくて!!必要な部分のみ、簡潔にお願いします!!」

思わず声をあげる良介だった。

「わかりました。ようするにギンガの頭の中は今ちょっと混乱しているんです」

今度の説明は超簡単な説明だった・・・・・・。

「戦闘機人とはいえ、脳の部分には機械等は埋め込まれていないので、人間となんら変わりません。前回同様、強いショックが原因でしょう」

「強いショック?」

「ええ、宮本さんの話ではベッドから落ちて頭を強く打ったそうですが、恐らくその前に脳に強いショックのようなものが・・・・興奮するような事があったのでしょう・・・・そして頭を打った衝撃が運悪く重なったことで一時的に健忘に陥ったと考えられますね」

「そ、それで治療は・・・・?」

記憶喪失の原因を聞き、その治療方法を恐る恐る聞く良介。

「治療は簡単です。頭を打ったのとは違うショックをもう一度ギンガに与えれば連鎖的に頭が正常になり、記憶が戻る筈です」

(昔のテレビかよ!?)

マリエルの言う治療法に心の中でツッコム良介。

「だからと言って無暗に拳骨や攻撃魔法をぶつける方法はお勧めできません。記憶を取り戻すために、できれば、記憶をなくす前の状況を詳しく、精密に再現をした方が、効果が覿面かもしれません」

「状況を・・・・//////

「再現・・・・//////

記憶を失った時、自分達が何をしていたのかなんて、あの時の二人の恰好から察することが出来るが、記憶を失ったギンガにとって記憶を取り戻すためでも、そう簡単に体を許すことに躊躇いがあった。

「あ、あの・・・・その他に治療方法は無いんですか?」

ギンガが他の治療方法を聞くと、

「その他だと・・・・」

「他だと・・・・」

「自然に思い出すのを待つしかありませんね」

さらりと残酷な事を言うマリエルだった。

「はぁ〜」

治療方法を聞き、良介はため息をつきながらチラッとギンガを見る。

ギンガの方も顔を赤くしながら怪訝そうな目で良介を見つめ返してきた。

JS事件の時とは違う感じであるが、鋭い眼で良介を見るギンガ。

いや、この場合睨んでいると言った方が、表現が正しいかもしれない。

いっそのこと、JS事件の時同様スバルにディバインバスターをギンガに撃ち込んでもらった方が早いかもしれない。と、思ったが、流石にそんな乱暴な治し方をして別の問題を引き起こしたらやばいのでそれは最終手段にしておこうと思った良介。

しかし、マリエルから無暗に攻撃魔法をぶつけるのはお勧め出来ないと言われ、やはり、あの日の晩の事を再現するしかないかと思い、意を決してギンガに話しかける。

「・・・・あ、あのさ、ギンガ」

「馴れ馴れしく呼び捨てしないで下さい」

「でも、記憶をなくす前、俺とお前がどんなことをしていたかなんて今のお前は知らないだろう」

「そ、それはそうですけど・・・・」

良介を拒絶するギンガだったが、記憶を無くす前、ギンガと自分がどんな事をしていたのかを詳しく教えるため、ゲンヤとマリエルに聞こえないようにギンガの耳元に口を寄せたが、顔を寄せるだけで、迷惑そうに顔をしかめる事に切なさを感じる。

「お前の記憶を取り戻す方法なんだけど・・・・・たぶんな・・・・」

「なっ!?//////

「それと状況を鮮明にする場合・・・・・」

「〜〜〜〜・・・・・っ!!//////

記憶を失う前自分が目の前にいるこの男と、この男が言うそんな事をしていた何て自分でも信じられず、羞恥心がこみ上げてくる。

そして最後まで良介の話を聞く前にギンガは良介から離れ、顔を真っ赤にして口をパクパクとさせ、言葉も拳も出すことなく、踵を返し、勢いよく部屋から飛び出して行った。

「あっ、ちょっ・・ギンガ!!」

良介は呼びとめようとしたが、その声は拒絶するかのようにバンっと閉まる扉の音にかき消された。

閉められた扉を見た後、良介はギンガの後を追うことなく、その場で立ち尽くした。

 

 

おまけ

 

 

背丈

 

ある日、良介とヴィータは管理局の訓練校に非常勤講師として来ていた。

訓練校の敷地内を歩いているヴィータは少し不機嫌な表情をしていた。

その理由は・・・・

(まったく、どいつこもいつも背が低いと言う事で子供扱いしやがって・・・・背が低いと良い事なんてちっともねぇじゃねぇか)

訓練生からは「どうして子供がこんな所に?」なんて顔をされたり、ボソッと言われ続け、機嫌が悪いのだ。

そんな中、校庭でサッカーをしていた訓練生のミスショットで、校庭の傍を歩いていた二人に向かってサッカーボールが飛んできた。

飛んできたサッカーボールはヴィータの頭上をフライパスし、隣を歩いていた良介の頭部に直撃、ボールをくらった良介はその場に蹲る。

「う・・・・ぐぐぐぐ・・・・」

「あぁ〜別に背が低くて助かったなんて思っていないからな」

先程の不機嫌さらかうってかわって冷静な様子で良介に言い放つヴィータ。

「よ、よくわからんが、俺を労れ・・・・」

痛みに耐えながら良介はヴィータに向かって言い放った。

 

 

コンキ

 

「うぅ〜・・・・アカン・・・・昨日は接待とかのつき合いで飲み過ぎてもうた・・・・・」

部隊の隊舎の通路を二日酔い気味のはやてが歩いていた。

二日酔いの為、はやての足取りは悪く、顔も少し青白い。

(アカン・・・・これじゃあ士官としての威厳に関わる・・・・)

「おっしゃ!!根気や!!根気!!私はまだまだ若いんやから、めげないでぇ!!」

はやては頬を両手でピシャっと叩き、気合いを入れなおす。

そんなはやての行動を通路の影ろからシャマルが見ていた。

そして、シャマルはそれを見た後、自分達のリーダーであるシグナムに相談を持ち込んだ。

「さっき、はやてちゃんが通路で若いだの、めげないだの言って更に婚期って言葉を連呼していたんだけど・・・・」

「察してやれ、シャマル。宮本がギンガと結婚してしまい主も羨ましくなったのだろう」

と、シャマルとシグナムはコンキの言葉の意味を勘違いしていた。

 

 

雪かき

 

冬のある日の夜、ミッドチルダに大雪が降り、翌朝には一面銀世界となった。

六課の隊員は総員で隊舎の雪かきに精を出していた。

そして門に続く道をシグナムとヴァイスがシャベルを使って雪かきをしていた。

「う――――さむっ」

時折吹く冬の冷たい風に体を震わせるヴァイス。

「こう寒いと・・・・あったかい物が飲みたい・・・・」

「トイレが近くなるな・・・・」

同じタイミングでヴァイスとシグナムの言葉が重なる。

「ふむ、利害が一致したようだな?」

「えっ!?してない!!全然してないっスよ!!シグナム姐さん!!俺、スカトロ属性なんか持ち合わせていませんからね!!」

と、ヴァイスは必死にシグナムの言葉を否定した。

 

 

あとがき

またも頭を強打してしまったギンガさん。

しかも今度は良介の記憶部分のみをうしなってしまった。

頼みのクイントを呼び出したくても呼び出せない状況・・・・。

良介はギンガの記憶を取り戻せるのだろうか?

では、次回にまたお会いしましょう。

 




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