六十話 ノロイノヒ 切り裂きギンガ

 

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」

良介は息を切らしながら、そして真剣な表情で眼前の人物を睨む。

そして、

(なんで・・・・なんで、こんなことになっちまったんだ・・・・くそっ)

愛刀を構えながら、何故こんな事態になってしまったのかを、後悔しながら悪態をつく。

事の起こりは、はやてから良介にかかってきた一本の電話からだった。

「はぁ!?ロストギアの処分!?」

「そうや」

はやてからのとんでもない依頼に思わず声をあげる良介。

「でも、ロストギアの収集に固執している管理局としては随分珍しいじゃねぇか。ロストギアを処分なんて」

確かに良介に言う通り、管理局は様々な世界からロストギアを回収し、管理局の保管庫に保管している。

そんな管理局が折角収集した筈のロストギアを処分だなんて、良介にしてみればあまりにも意外な依頼だった。

「それがな・・・・」

はやては、それを踏まえて良介に今回の依頼の詳細を話した。

 

J・S事件以降、管理局はロストギアの収集に関して一時、自粛をすることとなった。

その理由はやはり、J・S事件において、ガジェットの内部に、十年前、第九十七管理外世界、地球の海鳴でばら撒かれた筈のジュエルシ―ドが組み込まれていた件を始め、その後の調査で管理局の高官が度々保管庫からロストギアを持ち出し、それをマフィアやテロ組織等の反管理局勢力に高値で売りさばいていることが発覚したのだ。

当然、それらの行いをした局員らは逮捕された。

だが、そうした不祥事が明るみになり、管理局としては世間体を気にしてロストギアの収集に関して一時、自粛をすることにしたのだ。

そして今回はやてが良介に依頼した処分してほしいロストギアはとある世界の遺跡で見つかった刀型のロストギアだった。

そのロストギアを見つけ、回収したスクライアー族の人間によれば、どうやらこのロストギアはその昔、罪人を処刑するための斬首刀であったことが判明された。

さらに詳しく解析をしたところ、この刀自体に魔力の他に意思めいたものが宿っている事がわかった。

この件に関し、スクライアー族の研究者は、

「長い年月を経て古くなったり、長く生きた依り代(道具や生き物や自然の物)に、神や霊魂などが宿る事もあり、恐らくこの刀は長い間、罪人を処刑しても刃こぼれを起こす事無く、使い続けられてきた事から、刀自身に意思が宿ったのだろう」

と、述べている。

良介、はやて、なのはの故郷である日本でも間信仰における観念で、長い年月を経て古くなったり、長く生きた道具等に神や霊魂等が宿った付喪神と呼ばれる風習がある。

そして注意事項として、

「今は、鞘に納められており、眠っている状態だが、抜き身になったら、手にした者の体と意思を乗っ取り、その者を操るかもしれないので、くれぐれも鞘から抜かないように」

と、言われ、管理局としては闇の書程ではないが、危険物としてこのロストギアを処分することにした。

しかし、ここで問題が生じた。

処分にあたった魔導士の殺傷設定の攻撃魔法を受けても、この刀が処分できなかったのだ。

呪いの刀を眠らせる程の威力をもつ鞘の防御があまりにも強すぎたため、破壊出来なかったのだと推察された。

たかが、刀一本のロストギアのために、アルカンシェルを撃ちこむ訳にもいかず、管理局はほとほとこのロストギアの処分に困っていた。

そこではやてが、良介ならば法術でなんとか出来るかもしれないと、提案し、こうしてはやてが良介に依頼してきたという訳だった。

はやての依頼内容を聞き、良介はその依頼を受けた。

正直、良介本人としても「妖刀」と言う代物に少し興味があったからだ。

 

良介はアリサとギンガに仕事が入ったことを伝えると、そのロストギアが運ばれた108部隊の隊舎までやってきた。

ところが、いざ、108部隊の隊舎に来てみれば、そのロストギアはまだ届いていないと言う。

なんでも、輸送時間の伝達ミスで此処に到着するのは、午後になってからだと言う。

また出直すのも面倒なので、良介は処分するロストギアが到着するまで此処で待つことにしたのだが、ただ何もしないで待つというのも暇なので、隊舎にある鍛錬場で、ここの隊員相手に鍛錬をしていた。

はやてとシャマルも立会人として108部隊に来ていたのだが、肝心のロストギアの処分が午後に延期されたということで、部隊長室でゲンヤと共にロストギアの到着を待っていた。

そして昼時になり、ようやくそのロストギアが到着した。

はやてとシャマル、ゲンヤは、箱を開け、中身を確認した後、昼時と言う事で、ロストギアの処分を昼食後にする事にして、ゲンヤと共に隊舎の食堂へと向かった。

その時、もう一度、箱に戻し、蓋をしていればこの後の惨事は防げたのかもしれない・・・・。

はやて達は今回処分予定のロストギアを箱から出し、部隊長室の机の上に置きっぱなしの状態で食堂へと向かってしまった・・・・。

 

鍛錬場にいた良介も昼時と言う事で、隊舎の食堂へと移動し、そこではやて達と合流した。

そんな108部隊の隊舎に来訪者が居た。

その来訪者とは・・・・

「よいしょっ、と・・・・」

その人物は、車の助手席から荷物を降ろすと、

「良介さん喜んでくれるかしら?」

と、笑みを浮かべながら隊舎の中へと入って言った。

そう、108部隊に来た来訪者は良介に昼食を届けに来たギンガだった。

昼時になっても良介の帰りが遅いので、ロストギアの処分の後、隊舎の局員相手に訓練でもしているのだろうと思い、ギンガは此処に来たのだった。

当然、今来たばかりのギンガはロストギアの処分が午後に延期された事実を知らないし、良介もギンガにその件を知らせていない・・・・。

 

「良介さん、父さん」

ギンガは良介とゲンヤは部隊長室にいると思い、部隊長室へと向かった。

大抵良介が108部隊に用が有る時は此処(部隊長室)に居ることが多かったからだ。

しかし、部隊長室に良介の姿も父、ゲンヤの姿も見当たらなかった。

「食堂の方かしら・・・・」

昼時なので、ギンガは良介とゲンヤは食堂の方に居るのだろうと思い、食堂へと向かおうとした時、

「あら?」

ギンガの目に、机の上に置いてある一本の刀が映った。

「良介さんったら、刀を置いて行っちゃったのかしら?」

ギンガは机の上に置いてある刀が良介の刀だと思い、折角だから昼食と共に持っていこうと思い、昼食が入ったバスケットを一度床に置き、机の上に置いてある刀に手をかけた。

ギンガが刀を手にしたその瞬間、

 

バキッ

 

バラバラバラ・・・・・

 

鞘が砕けた。

元々、古いものであったし、此処に来る前に高ランクの魔導士による殺傷設定の攻撃魔法をくらっていたため、今になって鞘にガタが来て、ギンガが触ったほんの僅かな力で砕けたのだ。

その直後、刀から黒い靄のようなモノが溢れ出し、ギンガの体を覆った・・・・。

 

 

「ふぅー食った、食った。それで、その処分するロストギアはもう届いたのか?」

食堂で昼食を終えた良介、はやて、ゲンヤが隊舎の通路を歩き、良介がはやてに依頼していた、処分する品が届いているのかを問うと、

「来とるで。今、ここの部隊長室に置いてある」

「そうか、それじゃさっさとへし折るとするか」

指をポキポキと鳴らし、意気込む良介。

「しかし、本当に始末出来るのか?良介」

そんな良介にゲンヤは殺傷設定の攻撃魔法をくらっても壊れなかったロストギアを本当に処分できるのかを問う。

「ま、物事はやってみないと分からないけど、刀の扱いなら俺に任せてくれよ」

自信有り気にそう言う良介。

やがて部隊長室に入り、早速品を見せてもらおうとしたが、

「あれ?変やな?確か此処に置いといた筈やったんやけど・・・・」

昼食前に置いてあったあの刀(ロストギア)が何処にも見当たらない。

「本当に此処に置いたのか?」

「ああ、それは間違いねぇ、俺も確認したからな」

「ん?これは・・・・」

三人が届いた筈のロストギアを探し回っている中、良介は床に見慣れたバスケットを見つけた。

「コレ、家のバスケットだ・・・・なんで此処に?」

良介が床に置いてあったバスケットを持ち上げる。

「ギンガの奴が持って来たんじゃないか?」

バスケットを持ち上げながら首を傾げる良介にゲンヤが指摘する。

「そうか・・・・ギンガにわりぃ事しちまったな・・・・」

折角ギンガが自分のために昼食を作って持って来てくれたのにであろうが、自分はソレに気がつかずに昼食を摂ってしまったことに良介は罪悪感を感じた。

恐らくギンガはここにバスケットを置いた後帰ってしまったのだろうと、良介はそう思っていた。

(この昼食は家に帰る前に完食しなければならないな)

と、思いつつ良介はバスケットを見ていた。

そしてバスケットを見ている時に有る事に気がついた。

良介はその事をゲンヤに告げた。

「それにしてもよぉ、とっつあん、少し掃除した方が良いんじゃねぇか?」

「ん?どういう意味だ?良介?」

「床にゴミが落ちまくっているぞ。ホラ・・・・」

良介が床に落ちているゴミから大きめのかけらを拾いゲンヤに見せつける。

「・・・・そ、それって・・・・・・」

良介が拾い上げゲンヤに見せつけたゴミのかけらを見てはやてが声を震わせる。

「ん?コレがどうかしたのか?」

「それ・・・・例の刀(ロストギア)の鞘や・・・・」

はやてが恐る恐るゴミのかけらの正体を良介に告げる。

「えっ?」

はやての言葉に良介もそしてゲンヤも固まった。

処分予定のロストギアの事ははやてから聞いている。

確か、鞘の特殊な力によって件のロストギアは力を抑えられている。

その鞘が今では原形を留めていないゴミと化している・・・・。

この事実に三人の顔色が青くなったのは、言うまでもなかった。

 

 

三人が部隊長室で顔を青くしている頃・・・・

「そう言わずに良いじゃないか〜」

「こ、困ります・・・・」

108隊舎の通路の一角で、女性局員が男性局員に絡まれていた。

彼女は所謂ナンパと言うものに引っ掛かっていた・・・・。

それも職場で・・・・。

しかも相手は自分(女性局員)よりも階級が上・・・・。

そう、これは所謂セクハラと言うヤツだった。

女性局員は抵抗することもできず、困っていると、

「ナニヲシテイル・・・・?」

その場にもう一人の別の人物の声がした。

「あん?誰だ?僕と彼女の時間を邪魔するのは?」

男性局員が振り向いた瞬間、

 

ドガガガガガガガガガガ・・・・

 

「ぎゃばあああああああああああっっっー!!」

悲惨な事態が起きた。

突如、声をかけた人物が、一瞬で九連撃の斬撃を男性局員に叩きこんだのだ。

「あ、あの・・・・その・・・・あ、ありがとう・・・・ございます・・・・・でも・・・・その・・・・やりすぎでは?」

絡まれていた女性局員はその人物にお礼を言うが、過剰防衛なのでは?と指摘するが、

「・・・・・」

その人物は無言のまま、その場から去っていった。

 

 

通路での惨劇から少し経った後・・・・。

隊舎の一角で、二人の男性局員がコソコソと妙な行動をしていた。

「しかし、良いんですか?」

「何がだ?」

「隊舎内では、指定場所以外での喫煙を禁止しているのに・・・・」

「しょうがねぇじゃねぇか、喫煙室があんな小さい小部屋じゃ、すぐ一杯になっちまうんだから」

二人の男性局員は隊内での喫煙規則を破り、こっそりと隊舎の一角で、優雅に喫煙タイムを満喫していたのだ。

如何やら、部隊敷地内にある喫煙室は既に満員の様で、この二人は入り損ねた様だ。

男性局員たちが今、煙草を吸っているのは当然、禁煙区域である。

「ったく、近頃じゃ、どこもかしこも禁煙、禁煙で、俺達愛煙家も肩身が狭いよな〜」

「ですよねぇ〜」

一人が昨今の喫煙規制に愚痴をこぼし、もう一人がその意見に賛同した時、

二人の背後から近づいて来る人物が居た。

二人が背後から迫る人物の影で覆われた時、二人は後ろを振り返った。

「タイノシキチナイハキンエンダ!!」

その直後・・・・。

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっっっ!!!!」」

隊の敷地内に男性局員達の断末魔が木霊した・・・・。

 

 

つづいての惨劇は隊舎内にある休憩ルームでそれは起きた。

休憩ルームには休憩用の机やイスの他に飲み物の自販機も設置されていた。

そこで、一人の局員が休憩スペースにて、休憩を終え、オフィスに戻ろうとして、手にした空き缶をゴミ箱へと投げた。

しかし、投げられた空き缶はゴミ箱には入らず、ゴミ箱の縁にあたり、そのまま床へと転がり落ちた。

空き缶がゴミ箱に入らなかったにも関わらず、局員はその空き缶を捨てずに、そのままの状態で休憩スペースを後にした。

この局員の不幸はこの行動を背後で見ている者が居た事だった。

オフィスに向かう途中、この局員は突如、何者の手により背後から襲われた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁー!!」

「ゴミハチャントゴミバコニステロ・・・・!!」

そして謎の襲撃者の魔の手は・・・・

 

「あら?今何か悲鳴みたいな声が聞こえた様な・・・・」

シャマルに延びようとしていた。

彼女が隊舎のどこからかともなく木霊してきた悲鳴に周囲を見回していると、

「シャマル・・・・サン・・・・」

「あら?」

シャマルが自分の名前を呼ばれ振り返った。

その直後、隊舎に甲高い彼女の声が木霊した。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「ん?なんだ?」

「あの声はシャマルや!!」

部隊長室で、処分予定のロストギアを探していた良介、ゲンヤ、はやての三人の耳に甲高い女性の悲鳴が聞こえてきた。

しかも、その悲鳴の主は身近な人物の悲鳴だった。

三人は部隊長室から急いで出ると、手分けをしてシャマルを探した。

 

シャマルを探していた良介は隊舎の通路でボロ雑巾の様にボコボコにされた局員を見つけた。

「い、一体何が・・・・おい!!どうした!?何があった!?」

良介が局員を抱き上げると、その局員は、

「あ・・・・が・・・・き、きり・・・・」

「きり?」

「切り裂き・・・・魔・・・・・」

そう言って局員はガクッと項垂れ意識を失った。

「切り裂き魔?」

意識を失った局員の言葉に首を傾げる良介だった。

 

同じ頃、ゲンヤもシャマルを探している中、部隊員の一人がゲンヤを呼び止める。

「ナカジマ三佐!!大変です!!」

「どうした?」

「隊の敷地内で隊員が何者かに襲われました!!」

「なに!?」

「犯人はまだ敷地内に潜伏している模様です!!すぐに非常警戒態勢を!!」

ゲンヤには心当たりがあったが、それでも部隊長として、あらゆる手段を講じなければならなかった。

「・・・・よし、隊内に非常警戒警報を出せ、出入り口は全て封鎖、不審者を見つけ次第直ちに身柄を拘束しろ!!」

「了解!!」

(くそっ、ただでさえ、処分予定のロストギアが行方不明だって言うのに、今度は侵入者だと!?何でこうも面倒が重なるんだ?)

ゲンヤは心の中で悪態をついた。

ゲンヤの命令一下、即座に108部隊全域に非常警戒警報が敷かれた。

 

「不審者?よりにもよってこんな時に・・・・」

はやてはシャマルを探しながら、隊内に響く非常警戒警報に苦虫を潰した様に顔を顰める。

ただでさえ、処分予定のロストギアが行方不明で大変な時に、追い打ちをかけるように侵入者だなんて・・・・。

ともかく、ここはシャマルを早く見つける事を優先にした。

そこへ、

「は、はやてちゃ〜ん〜!!」

探し人のシャマルが対面方向から逃げるように走ってきた。

「シャマル、探したでぇ。なんや?大声なんて上げて。どないしたん?」

「そ、そんなことよりも!!はやてちゃん!!た、助けて〜!!」

はやてがおっとりとした声でシャマルに話しかけるが、当のシャマルは何かに追われている様子で普段のおっとりした様子が微塵もない。

まさか、先程警報が出されている不審者に追われているのかと思った。

はやてはシャマルが逃げてきた方向に目をやると、足音が聞こえてきた。

やがて、シャマルを追ってきた人物の姿が露わになる。

はやては警戒しつつ、すぐにデバイスを起動できる体制をとった。

しかし、シャマルの後を追いかけてきたは不審者ではなく、はやてにとって顔馴染みの人物だった。

 

「ニガシマセンヨ・・・・シャマルサン・・・・」

「ん?どないしたん?ギンガ?って言うか、まだ此処におったんか?」

そう、シャマルの後を追いかけてきたのはてっきり、宮本家へ帰ったと思ったギンガだった・・・・。

しかし、はやて達の目の前にいるギンガは、自分達が知っているギンガとは少し異なった。

彼女は、隊舎の中にも関わらず、左にリバルバーナックルを装備し、バリアジャケットを身に纏っている。

ここまでは普段のバリアジャケットとデバイスをセットアップした状態のギンガと変わらない。

しかし、普段と異なる点は、目を濁った金色にしており、

そして一番の異なる点は、身体全体に黒い瘴気の様なモノを纏い、右手には刀を握っていた。

「そ、その刀は・・・・!?」

はやてには、今ギンガが握っている刀に見覚えがあった。

今、ギンガが握っている刀は紛れもなく、今日、良介に処分してもらおうと思っていたロストギアに他ならなかった。

「ハヤテ・・サン・・・・シャマルサン・・・・アナタ達ハ・・・・悪だ!!」

ギンガは突然はやてにも切りかかってきた。

「「うひゃあー!!」」

はやてとシャマルは咄嗟に開いている窓から隊舎の庭へと逃げた。

 

「な、なんで・・・・なんで・・・・私達が悪なん?それになんでギンガ、あんなにキレとるの?」

はやては逃げながら何故、自分が悪人呼ばわりされなければならないのか、何故、ギンガがあそこまでキレているのかを考えた。

「そ、それが・・・・」

シャマルがはやてと共に逃げながら何故ギンガが自分達を「悪だ」と言うのかその理由を話した。

その理由は・・・・

「なんやて!?私らが良介を誑かす悪女やて!!」

「そ、そうなの〜」

「そんな無茶苦茶な・・・・」

確かに既婚した良介に対しても未だに諦めがつかないのか、今もさり気無くアプローチをしているシャマルは妻のギンガからしたら旦那を誘惑する女に見えたのかもしれない。

その点で言えば、なのはやフェイト、はやて達、地球出身組も同じ事が言えなくもない所があった。

故にシャマルもはやても同類とみなされたのだと、シャマルは結論着けた。

「それとさっき、ユーノ君から連絡があって、あのロストギアの更に詳しい事は分ったって」

「それでユーノ君はなんやて?」

「あのロストギアは・・・・」

ギンガ今、手に持っているロストギアは元々が処刑様の斬首刀だった故に多くの罪人を斬り、多くの血を浴びているためか、刀が自ら意思を持ち、手にした者を操るのだと言う。

そして切り捨てられる条件はただ一つ・・・・。

『悪人』であることだという・・・・。

「でも、それやとやっぱり私ら関係ないんとちゃう!?」

「ギンガちゃんは根が真面目だけど、良介さんの事になると結構独占欲をだすじゃない。ホラ、良介さんが子供になった時も・・・・それに良介さんが復活した時だって結構積極的だったし・・・・」

「あぁ〜確かにそうやな・・・・」

「そんなギンガちゃんの真面目な性格と、良介さんに関する独占欲や経験から、今のギンガちゃんの中では私達が良介さんに害をなす悪と認識されらんじゃないかしら?」

「めっちゃ!!私情を挟んどるやん!!」

あまりの理不尽さに声をあげるはやて。

「待テェエエエエエエエエエエエエッッッ!!」

その間もギンガは後ろから追いかけてくる。

「「イヤァァァァァァーッッー!!」」

シャマルとはやては絶叫し、ギンガから逃走する。

今のギンガの姿は戦闘機人を超えた、未来の殺戮マシーン、ターミネーターと化している。

はやての脳裏に昔、映画で見たターミネーターのT1000のBGM(ESCAPE FROM THE HOSPITAL)が聴こえた。

 

「どないすればええんや!!・・・・そや、シャマルここはやむを得ない!!ギンガの魔力を募集して・・・・」

「む、無理よ!!あの状態のギンガちゃんから募集なんかしたら、私の手がスパッと綺麗に切り落とされちゃうわ!!そ、それよりギンガちゃんの手からあの刀を弾き落とせば元に戻る筈よ!!」

「でも、あの状態のギンガ相手に近接戦闘を挑むのはあまりにも無謀や!!」

「あぁ〜こんな事になるならシグナムを連れてくればよかったわ」

自分達の将であり、剣士でもある戦友を連れてこなかった事を悔やむシャマル。

そんな中、シャマルは逃げる途中でコケてしまった。

「あっ、イタッ・・・・」

起き上がり、膝をさするシャマル。

しかし、この行動が大きな時間のロスとなり、

「シャマル!!後ろや!!」

「えっ?」

はやての言葉を聞いて、シャマルが後ろを振り向くと、そこには刀を振り上げているギンガが立っていた。

「あ、あわわわわわわわ・・・・・」

あまりの恐怖にシャマルは声を震わす。

「シャマルサン・・・・裁く・・・・」

動く間もなく、妖刀がシャマルの脳天目がけて振り下ろされた。

しかし・・・・

 

ガキン!!

 

振り下ろされた妖刀がシャマルの脳天を傷つけることはなかった。

その訳は・・・・。

「どうやら間にあったな様だな・・・・」

シャマル目がけて振り下ろされた妖刀を防いだのは、見慣れた太刀とシャマルが想いを寄せる男の姿だった。

そう、良介がギンガの振り下ろした刀を防いでいたのである。

鍔迫り合いの恰好のまま力を良介は手にグッと力を入れ、ギンガを薙ぎ払う。

薙ぎ払われたギンガは体勢を崩すことなく、バックステップして良介から距離をとる。

「りょ、良介さぁ〜ん〜怖かったですぅ〜」

襲撃の危機から脱したシャマルは良介に飛びつく。

その姿を見て、無表情だったギンガの表情は少し崩れた。

ギンガは良介に抱きついているシャマルを睨んでいる。

「いきなりくっつくな!!・・・・それで、何で、ギンガがシャマルに襲いかかっていたんだ?お前、ギンガに何かしたのか?っていうか、ギンガ、居たのか・・・・それにその刀は何だ?」

体にくっついていたシャマルを剥がそうとしながら、事情を聞く良介。

一方のシャマルはシャマルで、之はチャンスと言わんばかり、良介の体に引っ付き、自らの胸を良介の体に押し当てる。

しかし、残念ながら、良介は目の前にいる普段と様子が違うギンガに意識が集中しているため、シャマルのさりげないアプローチには気が付いていない。

「そ、それが、処分予定だったロストギアをギンガちゃんが何故か持っていて・・・・」

「あの刀(ロストギア)に操られているみたいなんよ・・・・」

「なにぃ!?」

良介が驚いてギンガの姿を見ると、確かにギンガの右手には見慣れない刀が握られている。

「それで、どうすればギンガは元に戻る?」

「あの刀を手放す事が出来れば・・・・」

「そうか・・・・」

良介は自分の体に引っ付いているシャマルを引っぺがし、刀を逆刃にすると、ギンガに向き合った。

「リョウスケさん・・・・何故、邪魔ヲスルノデスか?・・・・ソンナニ・・・・ソンナニそのオンナ達が大事ナンデスカ!?私ヨリモ!!」

ギンガは良介が自分よりもシャマルとはやてが大事なんだと思い込み、高速スピードで斬りかかってきた。

しかし、普段から刀を振り慣れていないギンガ相手に良介は遅れをとることは無かった。

再び鍔迫り合いが行われると、自分が不利だと悟ったギンガは左のリボルバーナックルで良介の腹部を殴りつけた。

「ガハッ!!」

「「りょ、良介(さん!!)」」

殴られた良介を見て、シャマルとはやてが声を上げる。

殴られた腹を抑えながら、

「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」

良介は息を切らしながら、そして真剣な表情で眼前の人物を睨む。

(なんで・・・・なんで、こんなことになっちまったんだ・・・・くそっ)

愛刀を構えながら、何故こんな事態になってしまったのか、後悔しながら悪態をつく。

 

(刀で操られているから下手に傷つけられねェ・・・・)

「ハアアアアアァァァァァ―――――ッッ!!」

「うおおおおおぉぉぉぉぉ―――――ッッ!!」

二人の間で数十という斬撃音が鳴り響き、一進一退の攻防が繰り広げられる。

しかし、刀に操られている事も、操られている人物が自分の妻である事、それらの要因から、良介の方が、明らかに分が悪い。

一方、ギンガの方はお構いなしに刀とリボルバーナックルを併用した攻撃を繰り出してくるが、良介の方は下手にギンガを傷つける事が出来ないので、攻撃が躊躇しがちである。

そして再び、良介の腹部にギンガの拳が打ち込まれる。

「グハッ!!」

「「良介(さん!!)」」

拳を打ち込まれ、吹っ飛ばされる良介を見て、シャマルとはやてが叫ぶ。

「くっ、もう、戸惑っている暇は無いわね・・・・」

シャマルは腕を斬られるのを承知で、ギンガの魔力を募集しようと準備をするが、

「て、手を出すんじゃねぇ・・・・シャマル・・・・」

ボロボロの体で起き上がった良介がシャマルを止める。

「でも、良介さん・・・・」

「この依頼は俺が受けた依頼だ・・・・それにギンガは俺の女房だ・・・・俺がギンガを・・・・助けなきゃならねぇんだよ・・・・」

ギンガに殴られながらも良介の目は死んでおらず、使命感に燃えている。

それはあのJ・S事件の時、ギンガを助ける時と同じ顔をしていた。

そして、刃を返し、真剣状態にする。

「刃を返した?」

「まさか、良介、ギンガの事を切るつもりか?」

刃を返した良介は、

「行くぞ!!ギンガぁぁぁぁ!!」

声を上げ、ダッとギンガに向かって駆けて行く。

ギンガも良介を迎え撃つかのように良介に向かって駆けて行く。

良介はタイミングを見計らってギンガの間合いに入る前に止まると、両手で刀の柄を握り、野球のバットの様に刀をフルスイングする。

すると、

 

バキン!!

 

良介の刀はギンガの持っている刀の刃をヘシ折った。

しかし、ギンガはまだ刀の柄を握っている・・・・。

完全に刀を手放さなければ、呪いが消える事が無い。

刃を折られてしまい、刀で攻撃する事の出来なくなったギンガは左腕のリボルバーナックルで良介を攻撃しようとするが、そこで、良介は驚きの行動をとる。

なんと、自らが持っている刀を捨て、ギンガのリボルバーナックルを右手でいなすと、ギンガの間合いの奥深くへと入る。

間合いに深く入られたため、リボルバーナックルの攻撃はもう間に合わない。

良介と距離をとろうとするギンガ。

しかし、ギンガが距離をとる前に良介は左手でギンガの後頭部を持ち、顔を寄せると、突然ギンガの唇を奪った。

「「んっ・・・・」」

「「なっ!?//////

良介のこの行動にシャマルとはやては顔を赤くし、唖然とする。

そんなシャマルとはやてにお構いなしに良介は自分の舌をギンガの舌に絡ませる。

「んっ・・・・・リョウスケ・・・・さん・・・・・・」

ギンガの方も、妖刀に操られている筈にも関わらず、良介との口付けに酔いしれ、遂には刀の柄を無意識の内に手放した。

良介とギンガの愛の力?が呪いに勝ったのである。

 

呪いから解き放たれたギンガはそのまま意識を失った。

気絶したギンガは良介の手によって医務室へと運ばれた。

いわゆるお姫様抱っこである。

その様子をみたはやてとシャマルは羨ましそうな顔で見ていた。

医務室に到着した良介自身もギンガとの戦いで負傷したので、ついでにシャマルに診察してもらった。

ベッドに眠るギンガを診察したシャマルは結構弱腰だった。

切り裂き魔状態のギンガが相当怖かった様である。

 

 

その後、柄の部分だけとなったこのロストギアは良介の法術により、無効化され、予定通り処分された。

ギンガが行った傷害行為は、された方も隊内規定に違反した行動をとったため、ギンガが一方的に裁かれる事は無かった。

 

 

あとがき

原作でもJS事件後にギンガが特にお咎めを受けた様な場面は無かったので、今回も同様に特にお咎めは無かったと言う設定にしました。

切り裂き魔化したギンガですが、刃は潰されている設定ですので、死者はでていません。

題名の由来は19世紀末、イギリスに実在した切り裂き魔、切り裂きジャックからとりました。

では、次回にまたお会い致しましょう。




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