六話 モンモントシタヒビ

 

 

良介とのデート(?)から何日かが過ぎたある日、ギンガは父でもあり、所属する108部隊の部隊長でもある、ゲンヤ・ナカジマに呼び出された。

「ギンガ・ナカジマ陸曹参りました」

ゲンヤの居る部隊長室に入り、部屋に居るゲンヤに対し、敬礼し、入室を報告するギンガ。

「よく来てくれた。実はギンガ、お前さんに頼みたいことがある」

「なんでしょう?」

ゲンヤの話はJS事件の折、逮捕したスカリエッティ側の戦闘機人、通称「ナンバーズ」の処遇についてのことだった。

裁判の後、彼女達に管理局側が司法取引を持ちかけ、今後、管理局に協力をするのであれば、JS事件での罪を免罪にしても良いという取引内容で、ナンバーズの内、半数以上がその取引を受けて、海上の更生施設へ入り、更生教育を受けるという。

そしてその更生担当官を同じ戦闘機人であるギンガに頼みたいとのことだった。

「分かりました。その件、喜んでお引き受けいたします」

ギンガはゲンヤの話を聞き即座に了承し、更生担当官となった。

 

 

後日、海上更生施設で始まった更生プログラム。

講義場所は人口芝の上に黒板、机、椅子が置かれた青空教室風の教室で行われた。

ギンガはまず、自分が更生担当官であることを含めた自己紹介をすると、チンク、ノーヴェ、ウェンディは気まずそうな顔をした。

なにせ、彼女たちは地上本部襲撃の際、ギンガを拉致した実行犯たちで、良介が死んだ原因の引き金を引いた人物達と言っても過言ではなかったからである。

しかし、当のギンガはそんなことは気にしておらず、チンク達に優しく接した。

「皆さんも既にご存じの通り、私も妹のスバルも皆と同じ戦闘機人です」

スバルの写真を掲示しながら自分たち姉妹の正体を明かすギンガ。

「だけど、人間として生きるように育ててもらって人間として生きたいと願って、今、こうして一度は戦って命のやり取りをした皆とも落ち着いて話ができています」

スバルと共にクイント、ゲンヤに実の娘同然に育ててもらった思い出に浸りながらナンバーズに語りかけるギンガ。

「皆が此処を出た時にどんな風に生きたいか、戦うための道具や使命を果たすだけの戦機としてではなく、心を持った命として、強い力と生きる意志を持った人間として今からしっかり考えて、ゆっくりでいいから決めていってください。私達がちゃんと手伝うから」

ギンガの言葉を皆は様々な想いで聞いていた。

更生プログラムはまず、世間の一般常識からマナー、様々な学科教科、法律など、訓練校や一般の学校とほぼ変わらない感じで進められていった。

 

 

ギンガが海上更生施設で更生担当官をやっている頃、良介の下に毎年恒例となっているミミズ退治の依頼が舞い込んできた。

毎年、他の管理世界の農場に現れる巨大ミミズ(推定60m)の退治は危険度が高い分、報酬も結構な良い値段で、万年金欠の良介は毎年この依頼を受けている。

「良介、あんた今年もこの依頼受けるの?」

依頼メールを見ながら良介に確認を取るアリサ。

「・・・・・・」

「ねぇ!聞いているの?良介?」

「・・・・・」

「良介?」

「・・・・・・」

「良介!!」

「あっ、な、なんだ?」

返事を返さない良介に声をあげるアリサ。その声にようやく反応する良介。

「なにボォっとしているのよ?今年も来たわよ。ミミズ退治の依頼・・それで、この依頼受けるの?受けないの?」

「アリサ、万年金欠の俺が断れると思っているのか?」

毎年恒例のミミズ退治の依頼は危険が伴うが、その分依頼料が割の良い仕事なので、万年金欠の良介は毎年のこの依頼を受けていた。

「そう、それじゃあ『受諾』って先方には伝えるけど、アンタ自身は大丈夫なの?」

「ん?なにが?」

「ここ最近、ボォっとしていることが多いわよ。そんなんじゃミミズの餌になるのがオチよ」

アリサの言う通り、ここ最近良介は一人でボォっとしていたり、仕事でヘマをすることが目立だった。

先日もゲンヤからの依頼でとある犯罪組織に潜入調査していた際、最後の最後にヘマをやらかし、殺される寸前に突入してきたギンガ達、管理局の捜査官に助け出された。

その原因は・・・・。

良介の中でギンガ・ナカジマという少女の存在が知らず知らずの内に大きくなっていたのだ。

そしてその思いが知らず知らずの内、仕事に支障をきたす程、大きくなっていたのだ。

しかし、今までの人生、孤独を愛し、恋愛という感情とは一切無関係だった良介にとってはじめての恋愛は戸惑いだらけで、そもそもこれが恋という感情なのかどうなのかも分からず、奥歯に物が挟まったような日々を過ごしていた。

「・・大丈夫だ・・・・それで、出発はいつだ?」

「明日の午後よ」

「そうか・・・・悪い、アリサ。今日、俺ちょっと出かけてくる。準備は任すわ・・・・」

「えっ!?ちょっと、良介!!良介!!」

後でアリサが騒いでいるが、それを無視して良介は出かけた。

出かけた先は、第97管理外世界「地球」。

 

 

転送ゲートで地球にきた良介はそのままの足で、海鳴にあるなのはの実家、喫茶店「翠屋」に向かった。

「それで話って言うのは?」

良介はなのはの母親、高町桃子に相談を持ちかけた。

桃子自身も出産、子育て、旦那の死、喫茶店の経営など、波乱の人生を送っており、良介にとって人生相談をするにはうってつけの人物だった。

良介は最近ギンガに対する想いを桃子に打ち明けた。

もちろん、プライバシー保護のため、固有名詞は出さず、また一度死んで生き返ったことも抜いて話をした。

 

大けがをして入院した際、病院で告白されたこと。

 

その返事が今日まで出来ずにいること。

 

そもそも、自分がギンガの事をどう思っているか分からないこと。

 

そのせいで最近、仕事に身が入らず、ヘマをして死にそうになったこと。

 

などetc・・・・・。

 

「・・・・って、感じなんだが・・・・」

「そう・・・・良介君にもようやく春が来たのね・・・・・」

「?」

良介の話を聞き、桃子は嬉しそうに言う。

「それで良介君、その子とはどこまでいったの?」

「・・・・何度かキスをして・・一度・・・・抱いた・・・・・・」

「えっ?」

あの時のことを思い出したのか、良介が頬を染め、桃子から気まずそうに視線をそらし衝撃な一言を言う。

その言葉を聞いて、桃子は固まった。

「ま、まさかその子って・・・・」

「あ、勘違いすんなよ桃子!!その子はなのはじゃないからな!!」

娘を傷物にされたと思いこんだ桃子に対し、良介は「まずい!」と思い、桃子に相手がなのはじゃないことを告げる。

「あら、そうなの・・・・」

しかし、良介の思惑に反し、桃子は残念そうだった。

(なんで残念そうな顔をしてんだ?)

(なのはだったらそれを理由に婿入りしてもらうつもりだったのになぁ・・・・残念)

「それでその時はどんな状況だったの?」

良介は恥ずかしながらも桃子にあの夜のことを話した。

 

告白の後、自分のことを妹ではなく、一人の女として見てくれとギンガに言われたこと。

 

そしてその後、理性をとばしてギンガを抱いたこと。

 

その後は、普段と変わらない生活で、追いかけられる者と追いかける者の関係で、その関係が良介に疑問を生じさせていること。

 

「なるほど・・・・」

「で、桃子には分かるか?俺の悩みの原因が?」

「そうねぇ・・・・少なくとも分かっていることはその子も良介君も互いに愛し合っているってことかしら?」

「はぁ!?」

桃子の言葉に素っ頓狂な声をあげる良介。

「なんでそうなるんだよ?」

「だって、その子を妹とは見ずに、一人の女の人と見たからその子を抱いたのでしょう?それに話を聞く限り、良介君の心の中でその子はいつの間にか良介君の中で一番大きな存在になっていた・・・・告白されて、その子を抱いて、もうその子のことしか考えられなくなっていた。でもそれが自分の中で恋なのかわからないから第三者である私に相談をしに来んでしょう?」

「うっ・・・・」

確信をつかれ何も言えない良介。

確かにあの時、ギンガを妹として見ていれば「バカ言ってんじゃねぇ」の一言で終わっていたはずだ。

だが、良介はそれを言わず、理性と意識をとばす程に激しくギンガを抱いた。

その事実がある時点で、少なくとも良介はギンガを妹とは見ず、一人の女として見ていることになるのは明白。

やはりあの世でクイントと再会し、互いに話したことで変にギンガのことを意識しすぎていたのが一番の原因だろう。

「でも、あいつ今までと変わらず、俺のことを追いかけてくるんだぜ!?・・それに年の差だってあるし・・・・・」

「愛さえあれば年の差なんて関係ないわ。それよりその子ってどんな感じの子なの?」

「どんなって・・・・真面目が服を着て歩いているような性格。俺とは180度違う性格だよ」

「・・・・それはたぶん公私を完璧にわけているんじゃないかしら?」

「公私?」

「そう。仕事をしているときは仕事に集中しているけど、きっと仕事以外だと今の良介君みたいにその子も良介君のことばかり考えているんじゃないかしら?」

「そんなもんかね・・・・」

「まぁ、年柄年中自由に生きている良介君には分からないと思うけど」

「うるせぇ」

 

その後も良介は桃子に相談を続け、色々なアドバイスを受け、翠屋を後にした。

店を出る際、桃子から最後、「良介君、自分に素直になりなさい」と言われた。

「自分に素直・・か・・・・」

相談して気分が軽くなったのか、良介は空を見上げつつ、そう呟いた。

その時の良介の顔はどこか吹っ切れたような表情をしていた。

 

 

その後、ミッドの自宅に帰った良介を待っていたのは般若の顔をしたアリサとミヤであったが、桃子から土産として渡されたケーキやシュークリーム等のスイーツのおかげでお仕置きは免れた。

しかし、良介の分のケーキは無く、すべてアリサとミヤのお腹に消えた。

 

 

あとがき

悩む良介君に救いの手を差しのべるのはやはり、桃子さんしか居ないと思い、今回高町桃子さんを登場させました。

Kanonの水瀬秋子さん同様、桃子さんも結構頼りになる存在と共に謎に満ちている存在だと思います。

特にあの若さとか・・・・。

年と言えば、リョウさんの原作の始めを読んで、良介となのはの年齢差は8歳差、ギンガとはなんと10歳差があるんですよね・・・・。

良介君がロリコンかどうかは読者の皆様の判断に任せます。

それでは次回またお会いしましょう。




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