この話は、名無しASさんの『スバルエンド〜甘い一時』 『スバル追加エンド〜ゆめがさめたら〜』 を読んでからの方がよりわかる内容かもしれません。

 

 

では、本編をどうぞ・・・・。

 

 

五十八話 ミチトノソウグウヲシタヒ 眠り姫

 

 

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「・・・・」

ステラの誕生の切っ掛けが、異世界の自分(スバル)が良介を誘惑し、半ば強引に関係を持ったことを知ったスバルは顔を赤くし、ギンガも自身に思うところがあり、スバルに声をかけ辛かった。

「やっぱりお前も悩んだか・・・・」

そんな姉妹の気心を知る由も無く、異世界の良介の話が一区切りしたところで、良介が呟く。

「『も』 ってことはやっぱりお前もか?」

「ああ、俺の場合はギンガだったが、あの時は仕事の時も家に居る時もギンガの事ばかり考えていた・・・・」

「それで良介、仕事でヘマして殺されそうになったもんね」

「うるせぇ」

アリサが茶化すと良介は気まずかったのか、プイッと視線を逸らす。

「それにしてもナカジマ家の女性たちは逞しいというか恋愛に関しては凄まじいわね・・・・・」

アリサが自分の知っている良介とギンガの関係と異世界の良介とスバルの関係を比較し、どちらも男性からではなく、女性の方から関係を求めてきたことに感心するかのように言った。

「それでその先、どうなったんだ?」

「それからな・・・・・」

良介がその先の事を尋ねると、異世界の良介がまた思い出話を話し始めた。

 

 

当初、一ヶ月以内で終わる筈だったミミズ退治はこの年の天候の影響のせいか、数が去年よりも多く、期間が延長する事になった。

当然延長分の依頼料は支払われるので、アリサは文句を言わなかったし、良介自身も未だ答えが見つからない状態で、ミッドには帰りたくなかったので、アリサ同様不満は無かった。

一応、スバルにはミミズ退治が延長する旨は伝えた。

そのスバルはここ最近、体の調子に変調があった。

食べたいものと言えば、普通の食事よりも酸味のある果実か脂っこくないさっぱりした薄味のものばかりで、その他にも体が妙に熱っぽかったり、昼夜問わずに眠気が襲ったり、胃がムカムカし、時々食べたモノを戻してしまう事も多々あった。

その他にもほんの些細な事に対してもイライラを感じる事が増えた。

相棒のノーヴェはスバルの体調を心配し、よくスバルに声をかけてくれたが、その都度、声をかけられたスバル本人は「大丈夫だよ」と言って仕事を休む事はしなかったし、自分達の体をメンテナンスしてくれているマリエル・アテンザ技術官にも相談はしなかった。

 

そんなある日、港湾工業地帯で大規模な火災事故が起こり、スバルとノーヴェをはじめとする特別救助隊の隊員は作業員の救助活動と火災現場の消火活動に向かった。

火災現場では、逃げ惑う作業員達の避難誘導に負傷した作業員の救命処置、逃げ遅れた作業員の搜索・救助など、二人は火災現場を走り回った。

「もう、逃げ遅れた奴や怪我人はいないな・・・・」

「う、うん、多分・・・・」

顔を煤と汗で汚したノーヴェが辺りを見回しながら言う。

スバルもノーヴェ同様に顔を煤で汚し、救助活動が粗方終わった事を確信した。

「一時後退だ、スバル。火災と爆発で建物の構造が脆くなり始めてきている。これ以上此処に居たらこっちが危ねぇ」

「うん。そうだね・・・・」

スバルがノーヴェと共に後退しようとしたとき、

「うっ・・・・」

スバルの体を猛烈な吐き気が襲った。

(こんな時に・・・・)

突然の吐き気にスバルは口元を手で覆い、その場に膝をついてしまう。

「スバル!!上から瓦礫が!!すぐに逃げろ!!」

その直後、ノーヴェが声をあげる。

轟音を上げて建物の一部が倒壊し始めたのだ。

ノーヴェの声に反応してスバルが真上を見上げると、スバルの目に映ったのは自分めがけて降り注いでくる瓦礫の雨だった。

「スバル!!」

ノーヴェの絶叫とも言える声がスバルの聞いた最後の声で、その直後スバルの意識はテレビの電源を消すようにブラックアウトした。

 

 

一ヶ月延長されたが、無事にミミズ退治を終えた良介達がミッドに戻る途中、次元航行船のテレビニュースで、港湾工業地帯で起こった災害がピックアップされていた。

幸い作業員に死者は出なかったものの救助活動を行なっていた救助隊の隊員一名が重傷を負ったと報じていた。

そして、その隊員の名前が報じられた時、良介は凍りついた。

負傷した隊員はスバルだった・・・・。

 

何かの間違いじゃないか?

 

同姓同名なのかもしれない。

 

そうだ・・・・きっとそうだ・・・・そうにちがいない・・・・。

 

そんな思いもあったが、スバルの顔写真が掲載されると、良介の心の中を絶望が支配した。

「スバル・・・・」

良介は震えながらシートにもたれかかっていた。

「良介・・・・」

アリサとミヤはそんな良介の姿を心配そうに見ていた。

ミッドに着くと良介は発着場からタクシーを飛ばしてスバルが搬送された病院へと向かった。

病院にはゲンヤやギンガ、ノーヴェをはじめとするナカジマ家の皆となのはやティアナをはじめとする旧六課の皆がスバルを心配して来ていた。

幸いスバルはすぐ近くにノーヴェが居たため、ノーヴェの手によって直ぐに救出され、命は助かったが、瓦礫で頭を強く打ったためか、未だに意識は戻らない。

医者が言うには意識が戻るか戻らないか分からないと言う。

誰もが最悪の未来を想像する中、スバルの父親であるゲンヤは、

「なぁに、スバルの事だ。腹が減れば『お腹が空いた』って起きるかもしれねぇぞ。そんな暗い顔すんな、お前ら」

ゲンヤなりに皆を励ましたのだろうが、ゲンヤ本人も無理をしているのがどことなく分かる。だが、ここで暗くなってしまってはせっかくのゲンヤの行為が無駄になってしまう。

ギンガやティアナ、そしてノーヴェがゲンヤに賛同するかのように明るい話題に切り替え、「確かに何時も能天気なスバルならありえる」みたいな事を言って無理にでもその場を明るくした。

 

その後、スバルの見舞いを終えた皆が帰っていく中、良介とノーヴェは最後まで病院に残っていた。

そしてノーヴェは良介に真意を問うた。

「宮本、アンタ、スバルをどう思っているのさ」

「どうって?」

「スバルから聞いたんだ。・・病院で入院中のアンタとスバルがその・・・・あ、アレをしたって・・・・」

「・・・・・」

「スバルはずっと不安と戦っていたんだ。アンタが中々告白してくれないから自分は嫌われていたんじゃないかって・・・・人前じゃあ明るく振舞っていたけど、夜になると不安と恐怖で泣いていることだってあったんだ。 アタシよりもスバルとのつき合いが長いアンタならスバルがどんな子か知っている筈だ・・・・スバルは、表面は明るい子かもしれないけど、内面は寂しがりやで甘えん坊な奴なんだ」

ノーヴェからスバルの事を言われ、「あーそうだ・・・・スバルはそんな子だった・・・」と、改めてスバルの事を自覚した良介だった。

(ノーヴェの言うとおり、スバルは、表面上は明るくバカで能天気に見える子だけど、本当は寂しがり屋で人見知りをする、甘えん坊な子だった・・・・)

「もし、アンタがこれ以上スバルを傷つける事があればアタシはアンタを絶対に許さないからな・・・・」

ノーヴェはそう言い残し、帰っていった。

既に処置が終わり、体には包帯と点滴、治療用機器のコードやチューブが繋げられ、口には呼吸マスクが取り付けられ、ベッドに眠るスバルを良介は呆然と見ていた。

良介はゆっくりとスバルに近づき、スバルの手をとる。

無意識にスバルの手を握る自分の手に力が入る。

「スバル・・・・」

良介の声は独り寂しく病室に響いた。

 

 

スバルが意識を取り戻さず、眠り続けてから良介は惜しげもなくスバルの病室に通っては面会時間ギリギリまでスバルの傍らにいた。

そして手を握り、スバルの名前を何度も呼び続け、外であった事を語り続けた。

「スバル、今日はいい天気だぞ・・・・それと屋台通りにあるお前の大好きなあのアイス屋、今週は半額キャンペーンをやっているんだ・・・・・・・・なぁ、早く目を覚ませよ・・・・キャンペーン終わっちまうぞ・・・・なぁ・・スバル・・・・」

いつの間にか良介の目からは涙が流れ出ていた。

 

 

面会時間が終わり、良介が病院の通路を歩いていると、

「宮本さん、ちょっと・・・・」

良介は飲み友達であるこの病院の院長先生に呼び止められた。

「院長先生か。・・なんだ?」

「スバル・ナカジマさんの事でちょっとお話が・・・・」

スバルの事と聞いて良介は院長先生についていった。

院長室に入り、互いにソファーに向き合うように座る。

「それで先生。話って言うのは?」

「・・・・実は、検査して分かったんですが・・・・スバルさんは・・・・その・・・・」

妙に歯切れの悪く、言葉を詰まらせる院長先生。

「どうしたんだよ?先生。・・・・っ!?まさかスバルはこのまま目を覚まさないのか!?」

「いえ・・・・そうではなく・・・・」

「だったら何なんだよ?教えてくれ!!」

「大変申し上げにくいのですが・・・・その・・・・実は検査して分かったのですが、スバルさんは・・・・その・・・・妊娠しているんです・・・・」

「はっ?」

良介は一瞬院長先生が何を言っているのか分からなかった。

 

妊娠・・・・?

 

魚のニシンじゃなくて、妊娠だよな?

 

妊娠って言うとアレ・・・・だよな・・・・?

 

あの妊娠だよな・・・・。

 

お腹に子供を宿しているあの妊娠だよな?

 

スバルの妊娠について良介が思い当たるのは当然あの夜のことだった・・・・。

 

「せ、先生、この事を知っているのは?」

「今のところ、私を含めたこの病院の一部の関係者と貴方だけです」

「そ、そうか・・・・」

「それで、その・・・・お腹の中にいる子供の父親に心当たりはありますか?」

「・・・・何故、俺にこのことを?」

「いや、宮本さんは随分とナカジマさんと親しい仲の様でしたので心当たりがあるのかと・・・・流石に親御さんや他の家族の方々ではショックを受けてしまうかと思いまして・・・・」

「・・・・先生・・・・多分、俺なんだ・・・・スバルの腹の中の子の父親は・・・・」

「な、なんですと!?」

良介の言葉に驚く院長先生。

それから良介は院長先生にスバルと密かに契りを交わした事を言うと、院長先生は時期的に見て確かに良介の言うとおり、スバルのお腹の子の父親は良介で間違いないだろうと結論付けた。

「それで・・・・腹の中の子は・・・・大丈夫なんですか?」

「・・・・今のところ順調に育っています。ですが、今後スバルさんの意識が戻らなければお腹の子も危険な状態になるかもしれません」

「そう・・ですか・・・・」

院長先生からスバルの妊娠を聞き、複雑な思いを抱きながら重い足取りで自宅に帰る良介だった。

 

 

事故から半月(約十五日程)が過ぎたが、未だにスバルは目を覚まさない。

唯一回復したことと言えばなんとか自力呼吸が出来、口から呼吸器のマスクが取り外されたことだった。

お腹の子供については未だ家族には説明されていないが、状態はスバルの病室に通う良介には逐次説明されており、今の所何とか順調に育っている。

『失って初めてその価値が分かる』とはよく言ったものだ。

こうして毎日のようにスバルの見舞いをしていく内に良介の中でスバル・ナカジマという一人の少女がたまらなく愛しい存在になっていた。

 

「スバル、驚くなよ・・・・お前のお腹の中に俺とお前の子どこが居るんだってさ・・・・」

良介はスバルのお腹を優しく撫でながらスバルに話しかける。

「まだ男か女かは分からないけど、女だったら、きっとお前に似た明るい元気な子なんだろうな・・・・男だったら・・・・まぁ、俺に似るのかな?・・・・なぁ、スバル・・お前も会いたいだろう?・・・・早く目を覚ましてくれよ・・スバル・・・・俺はお前に言わなければならないことがあるんだ・・・・なぁ、スバル・・・・」

童話や御伽話しじゃあ眠り続けるお姫様は王子様のキスで目覚めるなんてシュチュエーションがよくあるが、現実はそんな甘いものじゃない。

そんな事は分かっている・・・・。

分かっている筈だ・・・・。

だが、分かっている筈にも関わらず、良介はそんな陳腐のような奇跡を信じたいと思い静かに眠るスバルにキスをした。

スバルとは何度かキスを交わしてきたが、こうして良介からスバルにキスをするのはこれが初めてであった。

ゆっくりとスバルの唇から自分の唇を離し、スバルの頭を撫でる良介。

その直後、奇跡は起きた・・・・。

良介がスバルの頭を撫でていると、

「・・・・ん・・・・・んぅ・・・・」

スバルの目蓋が動いた。

「す、スバル・・・・」

「・・・・ん・・・良・・介・・さん?」

「スバル!!」

思わずスバルを抱きしめる良介。

「りょ、良介さん!?・・・・い、一体どうしちゃったんですか?それにアタシなんで・・・・?」

目を覚ましたスバルは何があったのか理解できなかった。

なぜ、自分はベッドの上にいるのか。

なぜ、突然名前を呼ばれたかと思いきや良介に力強く抱擁されたのか。

「今は何も考えないでいい・・・・今は・・・・こうしてお前と二人っきりの時間を過ごさせてくれ・・・・」

「良介さん・・・・わかりました・・・・」

スバルは現状が理解できない状態ではあったが、良介に抱きしめられてもらっているのだ。嫌な訳が無い・・・・。 スバルは良介の言葉に従い、自らの腕を良介の背中に回し、良介を抱きしめた。

長い抱擁の後、良介はスバルに面と向かって言った。

「スバル、聞いてくれ。・・俺は・・・・お前が好きだ・・・・スバル・・俺はお前を愛している」

「良介さん?」

「お前が事故に遭って初めて気がついたんだ・・・・その・・・・自分の気持ちに・・・・すまねぇ・・返事を出すのがこんなにも遅くなっちまって・・・・そのせいでお前を傷つけちまって・・・・こんな情けねぇ男だが・・・・これから先の人生をお前と共に歩む権利を俺にくれないか?」

告白と同時にさりげなくプロポーズをする良介。

その言葉を聞き、最初スバルは良介が何を言っているのか分からなかったが、段々と思考が働き、良介の言葉の意味を理解すると、目に涙を浮かべて返答する。

「あ、アタシこそ、宮本さんに相応しい女の人になれるか自信はないですけど、アタシも・・・・アタシも宮本さんと一緒にこれからの未来を歩きたい!!一緒に歩かせて下さい!!」

「スバル・・・・」

「良介さん・・・・」

二人は再び口づけを交わした。

それは永遠の愛への誓いのようだった。

 

 

おまけ

 

 

王子様のキス

 

 

「スバル!!」

ノーヴェの叫び声が聞こえ、私の目に映ったのは、降り注いでくる瓦礫。

体中に強烈な痛みが走ったと思ったら、やがて何も感じなくなった・・・・。

 

ここは何処かだろう・・・・?

 

周りは真っ暗で辺りには誰も見当たらない・・・・。

耳を澄ますと、やがて人の声が聞こえてきた・・・・。

それは聞き慣れた人の声・・・・。

それは・・・・。

ギン姉の声だった・・・・。

 

「良介さん・・・・っ、確りして、良介さんっ!!」

やがて私の視界に映ったのは、血まみれになった良介さんを抱えて涙を流しながら、必死に声をかけているギン姉の姿。

「良介さん・・・・っ、ごめんなさい、ごめんなさいっ、私が、私が・・・・っ」

ギン姉は何度も良介さんに謝っている。

良介さんはそんなギン姉の頬を撫で、

「・・・・・・やく・・・・・・そく・・・・果たし・・・・た・・・・ぜ・・・・・・クイント・・・・・・」

力弱くそう呟くと、頬を撫でた手が、力なく地に落ち、瞼を閉じて息を引き取った。

「りょう・・・・すけ・・・・さん・・・? うそ・・・・ですよね・・・・・・? いつもの、冗談ですよ・・・・ね・・・・? ねぇ、良介さん、りょうすけ、さん・・・・・―――― い・・・・―――いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

ギン姉の悲痛な叫び声と共が辺りに響いた。

 

アタシは目の前の光景が信じられなかった。

だって、良介さんはあの後、生き返った筈・・・・。

なのにどうして・・・・?

なんで・・・・?

そんな疑問を抱いていると、何時の間にか辺りは再び真っ暗な闇へと包まれていた。

そしてまた、どこからともなく声が聞こえてきた・・・・。

 

可哀そうなギン姉・・・・・。

 

可哀そうな良介さん・・・・・。

 

「っ!?」

聞こえてきたのは紛れも無くアタシの声だった・・・・。

 

スバル、これは貴女が弱かった所為で起こった悲劇なのよ・・・・・。

 

「アタシが弱かった・・・・アタシの・・・・所為・・・・?」

 

ええ、そうよ。 貴女が弱いせいでギン姉は悲しみ、良介さんは命を失ったのよ・・・・・皆、貴女の所為・・・・・弱い貴女の所為なのよ・・・・。

 

「ち、違う・・・・違う・・・・そんなこと・・・・・」

否定するスバルの口ぶりはとても弱々しかった。

 

あら?そうなの?でも、あの時、貴女がギン姉を助けていれば・・・・もっと早くギン姉と合流していればこんなことにはならなかったのよ?

 

「・・・・」

暗闇の中から響いてくる自分自身の言葉に否定できないスバル。

あの時というのは、ナンバーズ達による地上本部襲撃事件の事を指しているのは直ぐに分かった。

 

いえ、そもそも何故、ギン姉を一人にしてしまったの?

 

「・・・・」

 

貴女、そもそも本当にギン姉を助ける気があったの?

 

「当たり前だ!!あの時だって、ギン姉と通信が出来なくてどれだけアタシがギン姉を心配したと思っているの!?それにギン姉が連れ去られてアタシがどれだけ心配したと思っているの?」

 

ふぅ〜ん・・そう・・・・でも、本当は心のどこかでギン姉を憎んでいたんじゃないの?

 

「っ!? そんな事は無い!!ギン姉は大切な家族なんだ!!アタシがギン姉を憎む筈が無い!!」

 

本当にそうなの?

 

「どういう意味さ!!それ!?」

 

宮本良介・・・・

 

「っ!?」

 

ギン姉も良介さんの事が好きだったのよ・・・・。

 

確かにギン姉が良介さんにどこか恋心めいたモノを持っていたのは知っている。

良介さんの話をする時のギン姉は良介さんの愚痴ばかりだったが、話している時のギン姉はとても楽しそうで明るい表情をしていたからだ。

 

好きな男を取るため、貴女はギン姉を見殺しにしたんじゃないの?

 

あの時、良介さんが一緒についてこなければギン姉を殺していたんじゃないの?

 

そして、傷ついた自分自身を良介さんが構ってくれると思ったんじゃない?それとも逆かしら?

 

「逆?」

 

だって、良介さん、貴女よりもむしろ、ギン姉の方が好きだったんじゃない? だからギン姉を失い傷ついた良介さんを慰めて、自分がギン姉にとって代わって良介さんの寵愛を受けようと思ったんじゃないの?

 

「っ!?そ、そんなことない!!」

もう一人の自分の言葉に衝撃を受けるスバル。

確かに自分よりも女らしいギン姉・・・・。

魔力もシューティング・アーツも自分よりも実力は上のギン姉・・・・。

そしてそんなギン姉を助けるため、命をかけた良介さん・・・・・。

ギン姉が連れ去られた事実を知ったあの時の良介さんはかなり落ち込んでいた・・・・・。

「また守れなかったのか・・・・」と、悔しそうに呟いたのを今でも覚えている。

それらの要素が、良介が自分よりもギンガに好意を寄せていたのではないかと思わせる。

 

弱い貴女は・・・・ギン姉を助けられず、まして殺そうとした醜い貴女は良介さんには相応しくないのよ!!

 

良介さんから愛してもらえる資格なんて無いのよ!!

 

「違う・・・違う!!アタシは・・・・アタシは・・・・!!」

スバルは耳を塞ぎ、その場に蹲る。

それからどのくらいそうしていただろうか?

もう一人の自分の声は聞こえなくなったが、スバルの心は未だにもう一人の自分に言われた言葉が脳内で何度も繰り返され、スバルの精神を追い込んで行く。

「アタシは・・・・良介さんに相応しくない・・・・だから良介さんは・・・・・アタシに・・・・アタシに・・・・」

良介が自分になかなか告白をしてくれなかったのは、やはり、良介自身が自分よりも姉のギンガの方に好意を寄せているからだと思った。

「弱いアタシなんて・・・・・居ない方がいいよね・・・・・弱いアタシなんて必要ないよね・・・・・良介さんにはギン姉が居るもんね・・・・」

スバルがもう、このままこの暗闇の中で眠ってしまおうかと思った時、どこからともなくまた声が聞こえてきた。

その時はまた、もう一人の自分が罵倒を浴びせに来たのかと思ったが、それは違った。

その声は男の人の声だった・・・・。

「す・・・・ル・・・・く・・・・して・・・・よ・・・・・・早く・・・・目を・・・・・くれよ・・・・・スバ・・・・ル・・・・」

「良介さん?」

聞こえてくる声は紛れも無く、良介の声だった。

良介は、自分に何か頼んでいる様な口ぶりだった。

スバル自身も良介に会いたいと思う反面、自分よりもギン姉の方がお似合いだ。

弱い自分には存在価値も、良介の傍にいる資格も無い。

だから、もう、放っておいてほしい。

そんな思いが働き、スバルはまた耳を塞いだ。

しかし、良介の声はあれから毎日のように聞こえてきた。

会話の内容は完全には聞き取れないが、良介は毎日、自分に何かを頼み込んでくる。

「止めて!!もう、アタシに構わないでよ!!良介さんにはギン姉がいるじゃない!!」

毎日のように聞かされる良介の声にスバルはもう、どう反応して良いのか分からず、ただ蹲るだけ・・・・。

そんな中、また別の声が聞こえてきた・・・・。

「本当にそれでいいの?スバル?」

「えっ!?」

それは良介の声でもなく、またもう一人の自分の声でもない声・・・・。

しかし、スバルにはその声に聞き覚えがあった・・・・。

まだ自分が幼少の頃に、聞いた声・・・・・。

そして懐かしい声・・・・。

聞いているだけで、暖かく、不安が取り除かれる様な声・・・・。

その声の正体は・・・・。

「お、お母さん・・・・」

そう、もう一人の声の主は自分とギンガの母、クイントの声だった・・・・。

そしてクイントはスバルの目の前に立って居た。

「スバル、貴女は本当にそれでいいの?」

クイントはもう一度、スバルに同じ質問をした。

「それって?」

「良介君が、何度も貴女を呼んでいるのに、貴女はそれに答えなくていいの?」

「・・・・だって・・・・アタシは・・・・弱いもん・・・・弱いアタシに・・・・・良介さんの傍に居る資格なんて・・・・良介さんにはアタシよりもギン姉の方が・・・・・」

「スバル・・・・人はね、誰しも弱い生き物なのよ。私だってそうだったもの」

「お母さんも?」

「ええ、だから私の傍にはゲンヤさんが・・・・ギンガが・・・・そしてスバルが居てくれたのよ・・・・人は一人では生きていけない・・・・それは良介君だって同じことなのよ」

「・・・・・」

「そして良介君は、傷つき、悩んでいる・・・・貴女はそんな良介君を放っておくの?良介君は貴女を必要としているのよ」

「良介さんが・・・・アタシを・・・・必要・・・・?」

「ええ・・・・さぁ、良介君が待っているわ。早く行ってあげなさい。そして良介君を助けてあげなさい。 スバル・・・・貴女は確かに自分の言うとおり、弱いかもしれない・・・・でも、とても強い子でもあるわ。なんたって私の娘ですもの」

クイントはスバルに微笑みながら言って、スバルの頭を優しく撫でる。

母の言葉を聞き、頭を撫でてもらうと、不思議にもスバルの心の不安、恐怖等のマイナスな気持ちが晴れて行くような気がした。

「ありがとうお母さん!!アタシ、行ってくるね・・・・行って良介さんを助けてくるよ!!」

「ええ、頑張ってね・・・・スバル・・・・・私は何時でも貴方達の傍で貴方達を見守っているわ・・・・」

スバルもクイントに微笑み返すと、真っ暗だった暗闇に光が満ち溢れ、辺りが真っ白となる。

 

 

頭に何か心地よい感触を受け、スバルは重い瞼を動かす。

「・・・・ん・・・・・んぅ・・・・」

「す、スバル・・・・」

「・・・・ん・・・良・・介・・さん?」

スバルの眼前には良介の姿があった。

「スバル!!」

突然良介に抱きしめられるスバル。

良介に抱きしめられる事もそうだが、此処が何処なのか検討がつかない。自分は確か火災現場に居た筈・・・・。それが何故、ベッドの上に居り、良介に抱きしめられているのだろう・・・・。

でも、今はそんな事よりもこうして愛しい人との温もりを感じたいと思い、スバルも自らの腕を良介の背中に回し、良介を抱きしめた。

 

 

あとがき

書いておいて、おまけと本編がなんとなくかみ合わない様な気がしてきましたが、軽く無視して下さい。

ギンガ編でもそうでしたが、一応彼女達、戦闘機人は存在が秘密になっているような存在でしたが、JS事件でその存在が公になった事で機密みたいなものが解禁されたと思って下さい。

でないと、病院に入院できませんから・・・・。

 

では、次回にまたお会いいたしましょう。




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