四十七話 オボンノヒ 姉妹喧嘩

 

 

「そうよ、拳を打つときの体の動きは上半身のバネのみで繰り出すように、魔力は腕に集中して、イメージしなさい。・・どんな相手でも吹き飛ばし、倒せる竜巻のような強力な渦と風を・・・・」

ギンガ達はクイントの訓練を連日受けていたが、クイント自身はずっとギンガ達だけに付き合っていたわけではない。

ちゃんと他の娘たちにも接している。

チンクには料理やお菓子の作り方を教えるのと同時に、今回のメインの一つでもある孫の桜花の世話を一緒にした。

流石、二児の子育て経験があるクイントはギンガよりもより細かく赤ちゃんの行動や心理を心得ており、その都度ギンガとチンクに教えてくれる。そしてその時の対処の仕方も一緒に教えてくれた。

最も、ギンガとスバルの面倒を見たのは僅か二年だけだったが、この他にも当時まだ乳飲み子だったルーテシアの面倒を見たり、それ以前からゲンヤとの間に出来ると期待していた子供のため、クイントは生前仕事の傍ら熱心に子育ての勉強をしていた。

結局それを生かす前にクイントは故人となり、ゲンヤとの間にも子供は出来なかったが、クイントの経験や知識を娘のギンガに伝えることが出来、またこの先可能性のある他の娘達にも伝授したのだ。

また子育て意外にも料理とお菓子作りに関しては、クイントは自らの秘伝のレシピを伝え、ギンガもチンクも共に真剣な表情でメモをとっていた。

ウェンディとは一緒にお風呂に入ったり、髪の毛の手入れとかもしていた。

元々人懐っこい性格だったので、ウェンディはすぐにクイントに懐いた。

 

 

そんなお盆の期間の中頃に、クイントは久しぶりにクラナガンの街中をアリサとデェイチの二人を連れ、ショッピングに出かけた。

ノーヴェ同様最初はクイントとの関係の間にぎこちなさがあったデェイチも徐々にクントに懐いていき、仲の良い親子らしい光景となった。

「これなんて、デェイチに似合うんじゃない?」

「そ、そうかな・・・・?//////

クイントに服をコーディネートしてもらい、デェイチは頬を染めながら選んでもらった服を試着した。

「やっぱり似合うわ。素敵よ!デェイチ」

「あ、ありがとう・・・・か、母さん//////

その後もクイントに服やアクセサリーを選んでもらったデェイチであったが、後半の方はクイントの着せ替え人形化して、終始困惑気味のデェイチであった。

クイントはもちろんデェイチだけの服を買ったわけではなかった。

ちゃんと、喧嘩にならないように他の娘達の服やアクセサリーもちゃんと選んで購入していた。

娘達に合う色合いやサイズは既にクイントの頭の中でインプットされており、寸分違わず似合ったサイズと色合いの服を選んだことは流石ナカジマ家のお母さんと言うべきところだろう。

そんなクイントの様子をアリサは少し呆れながらも最終的には感心して見ていた。ちなみにナカジマ家の娘達の買い物が終わると次はアリサの番となり、アリサもクイントの着せ替え人形となった。

 

 

クイントがデェイチとアリサを着せ替え人形の如くショッピングを楽しんでいる頃、スバルは同じくお盆休暇中のティアナの下に来ていた。

お盆休暇と言っても彼氏も居なければ既に家族も居ないティアナにとっては暇な休暇期間だったので、スバルの訪問はティアナにとってはちょうどいい暇潰しになった。

「それにしてもギンガさんは先輩とよろしくやっているのに私達は花のない日常を送っているわね・・・・」

外に出かける事もなく、ティアナの住む管理局の寮に女二人で部屋に居ると、ティアナがボソッと愚痴る。

スバルを見ると、どうしても姉のギンガの方を強く意識してしまう。

それは自分の知る知り合いで一番早くに結婚したためである。 しかもスバルは訓練校からの腐れ縁で、ギンガはそのスバルの姉という関係のため、意識しやすいのだ。

「えぇ〜そうかな?別にそんな急がなくてもいいんじゃない?はやてさん達もまだ彼氏もいない独り身だし、なのはさんなんて、独身なのに既に子持ちだよ?」

「あんたは呑気ねぇ〜・・・・それと今のことは、はやてさんやなのはさんの前では言わないことね。命が惜しかったら・・・・」

ティアナは何でもズバズバ言うスバルの怖いもの知らずの神経に呆れながら忠告する。

確かにティアナの言うとおり、旧六課の隊長陣の前で結婚や彼氏の話は最大の禁句となっている。

それは、隊長陣が慕っていた良介が結婚してしまったことに深く関係している。

特に、海鳴で一つ屋根の下で寝食を共にしていた八神家の住人には効果が絶大である。

 

「それより今日のお昼はどうする?どこか外に食べに行く?それとも何かデリバリー(出前)でもとる?」

時刻はもうすぐで昼時、

ティアナは今日の昼ご飯の事をスバルに尋ねる。

「あ、それなら家で食べない?」

「スバルの家で?」

「そう!今、家にお母さんが居るの。ティアのことも紹介したいし」

「お母さん!?ナカジマ三佐いつ再婚したの?」

スバルの「お母さん」発言に驚くティアナ。

スバルの母親、クイント・ナカジマが殉職していることは訓練校時代にスバルから聞いており、スバルには今、母親が居ない筈・・・・。

それにも関わらず、家にお母さんが居るということはスバルの父親ゲンヤ・ナカジマが再婚をして新しい奥さんを貰ったのだとティアナはそう思った。

「ううん、違うよ。正真正銘、アタシたちのお母さん、クイント・ナカジマだよ!!」

「はぁ!?」

ティアナにはスバルの言っていることが理解できなかった。

「スバル、あんたここ最近の暑さで頭イカレちゃったの?クイントさんはもう亡くなっているんでしょう?」

「うん、そうだよ」

「死んだ人が生き返るわけ・・・・いや、例外があったわね・・・・それでも、普通は死んだ人は生き返ならいのよ」

「それが、お盆の間だけ宮本さんがお母さんを生き返らしてくれたの!!」

「先輩が!?」

「うん!!」

満面の笑を浮かべているスバルに対し、ティアナは驚きの表情をする。

「詳しいことはわからないけど、宮本さんの不思議な力・・・・えっと・・・・なんて言ったけ?」

「法術?」

「そう!ソレ!そのホウジュツで、お盆の間だけお母さんを生き返らしてくれたの!!」

「へ、へぇー」

嬉しそうにクイント復活の理由を話すスバル。

それを聞きティアナは、

(来年のお盆には先輩に頼んで兄さんを生き返らしてもらおうかしら?)

ティアナが来年のお盆の事を考えているとスバルが、

「来年も宮本さんに頼んでお母さんと一緒に過ごすんだ〜」

と、既に来年のことも視野に入れており、それを聞いたティアナは

「そ、そう」

顔を引き攣らせながら曖昧な返事をする。

しかし、心の中では、

(スバル、あなたには悪いけど、来年はあなたよりも先に私が先輩に頼んで兄さんを生き返らせて貰うわよ)

と、来年のお盆にはナカジマ家とランスター家との間に良介の争奪戦が行われそうな予感がした。

 

 

スバルに誘われ、ナカジマ家に向かったティアナ。

スバルはご飯ということで、テンションが高い。

「たっだいまー!」

スバルが勢いよく玄関を開けるが、家の中は妙に静かである。

普段ならば、姉のギンガが出迎えてくれる筈なのにそのギンガが玄関になかなか姿を現さない。 

と、言うか、他の姉妹達も出迎えに出てこない・・・・。

「・・・・あ、あれ?誰も居ないのかな?」

誰も出迎えに出てこない事に皆出かけているのかと、首を傾げるスバル。

「それはないんじゃない?玄関は開いていたんだし・・・・」

二人が玄関先で立ち止まっていると、ようやく家の奥からギンガが姿を現した。

「・・・・・」

「あっ、ギン姉」

「ギンガさん?」

姿をみせたギンガに二人は声をかけるが、ギンガの様子は何かおかしかった。

「えっ!?ギン姉!?」

ギンガは無口無表情で二人を見ている。しかも瞳の色は普段のエメラルドグリーンではなく、金色になっている。

スバルには今のギンガの姿を以前見たことがある。

それは忘れもしない。

JS事件のとき、スカリエッティーによって洗脳されたギンガと今のギンガの状態はとてもよく似ていた。

ただし、あの時と違い、襲いかかってこないだけマシではあるが・・・・。

「スバルか?お帰り。ティアナも一緒だったか」

二人が変わり果てたギンガの姿を見ていると、桜花を抱っこしたチンクが姿を現した。

桜花は普段と様子の違う母親の姿に怯えているのか、涙ぐんで、必死にチンクにしがみついている。

「た、ただいまチンク姉・・・・ギン姉は一体どうしたの?」

「ギンガ姉様か?実はな・・・・」

「・・・・・」

 

場所を玄関から居間に移し、チンクは何故ギンガがこのような状態になってしまったのか訳を話した。

それはクイントがアリサたちを連れてショッピングに出掛け、スバルがティアナの家に向かった後にソレは起こった。

「よいしょ、いい天気ね〜 今日は絶好の洗濯日和ね〜」

ギンガは普段通り、ナカジマ家の家事を行なっており、洗濯物を外に干そうと大量の洗濯物を抱えながら廊下を歩いていると床にジュースの空き缶が転がっていた。

大量の洗濯物を抱えていたため、床がよく見えなかったギンガはその空き缶を踏んでしまい、

「えっ?」

 

ゴチン!!

 

そのまま倒れ、頭を床に強打した。

ギンガが転んだ音を聞き、チンクがその場に来ると、そこに居たのは目の色を金色にし、無表情で立っているギンガだった。

「・・・という訳なんだ。頭を強く打ったせいか戦闘機人モードに・・・・ただ、あの時と違い何も命令を受けていない状態だからこうして大人しいのだが・・・・」

「・・・・・」

チンクはチラリとギンガを見る。ふとしたことで何時あの時の記憶が戻りスバルに襲いかかるか分からない。

「そ、そうなんだ・・・・」

スバルもティアナも恐る恐る終始無言のギンガを見る。

「ほんのさっきまで大変だったんだからな、桜花の奴、今のギンガの姿を見て大泣きしちゃって。・・・・それなのにギンガの奴は全然泣き止まそうとそうとしないでただ見ているだけだったし・・・・」

ノーヴェがウェンディの頭を持ち、ウェンディの体を引きずりながら二人に説明をする。

引きずられるウェンディはボロ雑巾のようにボロボロだった。

「えっ!?ギンガさんが!?」

ノーヴェの話を聞き、ティアナが驚いたように声をあげる。

ティアナにとってあの良妻とも言うべきギンガが娘の桜花の世話をしないという事実は物凄く意外だった。

それはチンク達にとっても同じで、てっきり戦闘機人モードになっても桜花の泣き声をきけば元に戻ると思っていたギンガであったが、泣きわめく桜花を前にしてもギンガはただ黙って冷ややかな視線で桜花を見ているだけだった。

そんなギンガの姿を見て、桜花は更に泣き声のボリュームを上げていった。

このままでは、最悪の場合、泣き叫ぶ桜花を黙らせるため、ギンガが桜花の口を封じてしまう(殺す)事も考えられた。

そうなれば、元に戻った時、ギンガはショックのあまり自殺してしまうか、良介がギンガを殺した後、自分も自殺してしまう一家心中の可能性もあり、そんな最悪の予想を回避したとしてもその後に待っているのは、家庭崩壊、そして離婚・・・・。

流石に自分の姉に子殺しや心中、離婚をさせるわけにもいかず、見るに見かねたチンクが桜花をあやして泣き止ませたのだ。

スバル達が来たのはまさにその時だったのだ。

「だからあれ程、片付けをしろと言っただろうが!!」

ノーヴェがウェンディの頭に置かれている手に力を込める。

「イテテ、申し訳ないっス」

どうやらギンガが転んだ原因の空き缶はウェンディがその辺に放置した物のようだ。

「そんな〜それじゃあ今日のお昼ご飯は?」

スバルは戦闘機人モードになってしまったギンガとお仕置きを受けているウェンディよりも楽しみにしていた昼ご飯の方を心配している。

すると、居間にあるテーブルの上にいつ買ってきたのか?固形上の健康食品とゼリー状の健康食品が大量に置かれる。

「カロリーイト?」

「ウィinゼリー?」

ナカジマ家でも大食いのスバルとノーヴェがテーブルの上の健康食品を見て唖然とする。

「必要なエネルギーはソレでまかなってください」

「ヒッ!?」

今まで沈黙を通してきたギンガがここでようやく口をきいたが、その口調はあまりにも無機質で機械的だった。

母親のあまりにも無機質なその声を聞き桜花は更に怯え、チンクにしがみついている手に力を入れる。

「・・・・・」

「・・・・・」

そして唖然としてテーブルの上の健康食品を見ているスバルとノーヴェの二人と怯えている桜花を尻目にギンガは固形上の健康食品を一人、黙々と食べている。

今、このメンバーの中でギンガの他に唯一料理のできるチンクは桜花の世話を優先し、皆の料理を作る余裕はない。・・・・というか、僅かでもチンクから離そうとすると桜花がぐずるため、チンクの両手は現在使えない状況。さらにクイントとアリサはまだショッピングから帰ってきていない。

楽しみにしていた今日の昼ご飯がこんな味気ない健康食品になったのだと知ったスバルはワナワナと震え、

「こんなのご飯じゃない!!」

即座にバリアージャケットを展開し、腕にはリボルバーナックルを装備して、テーブルの上の健康食品を手で跳ね除ける。

スバルの手によって床に散らばる健康食品達。

「ちょっとスバル!!」

ティアナが慌ててスバルを止めようとするが、スバルは聞く耳を持たず、

「返せ!!今日のお昼ご飯を返せっ!!」

地上本部でギンガがやられた時と同じような覇気を纏っているスバル。よほど空腹なのだろう。しかし、あの時と違い目の色は変わっていない。

半暴走状態のスバルはギンガに掴みかかろうとした。

スバルが何故、バリアージャケットにリボルバーナックルを装備し、ギンガに掴みかかろうとした理由は、あの時同様魔法による強烈な一撃を与えればギンガは元に戻るだろうと思ったからだ。

そう考えると、今のスバルは姉の身よりも自身の食欲を満たすために動いている食欲の化身と言っても良い。

「・・・・では、こちらも力づくで、分からせるしかありませんね」

一方、ギンガの方は健康食品とはいえ、食べ物を粗末に扱うスバルの行為が気に入らなかったのか、同じくバリアージャケットを展開し腕にリボルバーナックルを装備し、スバルと対峙する。

「い、いかん!ノーヴェ、ウェンディ、ティアナ!あの二人を止めろ!!」

チンクが慌ててティアナ達にギンガとスバルを止めるように言うが時すでに遅し、

ナックルに魔力を纏わせた二人は激しくぶつかりあった。

 

 

「あらあら・・・・」

「い、一体・・・・」

「な、何が・・・・?」

買い物から帰ってきたクイント達が見たのは半壊したナカジマ家(実家)と庭で互いにバリアージャケット姿で対峙しているギンガとスバル。

しかも纏っている覇気と魔力は模擬戦というレベルではない。

完全なガチバトル・・・・。

「えっと・・・・姉妹喧嘩っていうわけじゃないよね?」

デェイチが対峙しているギンガ、スバルとクイントを交互に見ながら恐る恐る言う。

そこへ、

「か、母様!」

「お母さん!」

「ママりん!」

対峙するギンガたちを見ていたクイント達に家にいたチンク達が駆け寄る。チンクは無事桜花を守り通したが、激しい轟音に桜花はすっかり怯え、声をあげて泣いている。

しかし、ギンガは桜花の泣き声を聴いても元に戻る気配は無く、スバルと対峙したまま・・・・。

「一体何があったのよ?」

アリサがチンクに事の次第を聞くと、チンクは全てを語った。

「成程、頭を打って戦闘機人モードに・・・・・」

クイントは納得しつつ呆れたように、

「あの事件の後、マリーの所に行ってちゃんと調整されていたと思ったのに・・・・まだ後遺症みたいなのが潜在的に残っていたのかしら?」

そしてアリサはギンガを見ながら意外そうに言う。

しかし、これまでの生活の中でその兆候は見られた。

本来、我を忘れるほどの怒りや興奮状態でないと、ギンガやスバルは目の色を金色に変えることは無かった。

事実スバルはナンバーズ達による地上本部襲撃以外に目の色を変えた事はなかったが、ギンガの方は度々興奮したり怒ったりすると目の色を変えていた。 しかし、どれも本来は我を忘れる程の事ではなかった筈・・・・。

「まぁ、ウェンディのお仕置きは後にするとして、まずはあの二人からね〜

「「「えっ?」」」

「・・・・やっぱりっスか?」

クイントは笑顔を浮かべているが、こめかみは引き攣っており、黒いオーラを出している。

そしてウェンディはクイントから逃げ切れないと既に諦めモード。

クイントは荷物をその場に置き、両手をポキポキと鳴らしながら対峙している二人へと近づいていく。

「ちょっ!?クイントさん!?」

「危ないよ。母さん」

アリサとデェイチの言葉を無視してクイントは接近を止めない。

対峙する二人はクイントの接近を気がつかず、再び二人がぶつかり合うその瞬間、二人の間にクイントが割り込み、

「フン!!」

 

ゴン×2!!

 

「グッ」

「グハッ」

「「「「「なっ!?」」」」」

二人の頭に思いっきり勢いのある拳骨を落とし、二人は顔面から地面に激突した。

それを見たチンク達は自分の娘に対してクイントの一切の容赦ない行動に驚愕の声をあげる。

それもそのはず。クイントはバリアージャケットもリボルバーナックルも装備せず、普段着のままバリアージャケットとリボルバーナックルを装備(完全武装)している戦闘機人同士の殴り合いに割り込んだのだから。

そんなチンク達の驚きをクイントは構わずにまず地面に突っ伏しているギンガの頭を掴み上げ、再び優しげな笑み(ダークオーラ付き)をギンガに向ける。

「ギンガ。目は覚めた?それともまだ、お仕置きが足りないかしら?」

「ヒィッ!!止めて!!母さん!!!」

「「「「「っ!?」」」」」

普段着のままで戦闘機人同士の喧嘩の仲裁をしたのにも驚いたが、それ以上に拳骨一発でギンガを元に戻したクイントの行為に一同はさらに驚く。

皆の驚きを尻目にクイントはギンガに話しかけ続ける。

「どうやら元に戻ったようね?」

「 ? 元に?」

クイントの言っている意味と何故自分は、バリアージャケットにリボルバーナックルを装備して庭で倒れていたのか、現状がイマイチ理解できていないギンガは一体何があったのかと首を傾げる。

「あれよ」

クイントが半壊したナカジマ家(自分の家)を指さす。ギンガもそれにつられて視線を動かし、実家を見ると、そこには無残な姿を晒した実家の姿があった。

「な、何アレ!?どうして家が!?」

「アレは貴女がやったのよ」

「う、ウソっ!?アレ、私がやったの!?」

ギンガは漸く自分のしたことに驚愕する。

「ええ、そうよ。貴女とスバルの仕業よ。でも、ギンガ、貴女のしたことはこれだけじゃないわ・・・・」

「えっ?」

実家以外にまだ何か壊したのかと思い、ビクつくギンガ。

「ギンガ、貴女が戦闘機人モードになってしまってから桜花はその姿に怖がり泣いていたというのに貴女はそれをただ黙ってそれを見ているだけだったのよ」

「っ!?」

ギンガは思わずチンクに抱かれている桜花を見ると、桜花は目に涙を浮かべて母親である自分に怯えた視線を向けて見ている。

「今後、こんなことがないように後で必ずマリーの所に行きなさい。それと桜花にもちゃんと謝るのよ」

「は、はい・・・・」

家を半壊させたとこよりも桜花が泣いているのに何もしなかった自分自身、そして愛娘から怯えるような視線を投げられている自分自身にギンガは物凄くショックを受けていた。

 

 

後日、ギンガはちゃんとマリーの下に向かい完全に体をメンテナンスしてもらった。しかし、物凄く興奮したり怒ったりすると目の色が変わる癖は治らず、その原因はマリー本人にも分からなかった。

調べた処、特に体にもリンカーコアにも害は無いのでギンガ本人も周辺の皆も特に気にすることはなかった。

寧ろ、マリーに原因不明と診断されたギンガは半ば諦めモードだった。

 

 

 

 

あとがき

 

今までの話の中でギンガの目の事は何度か出してきましたので、この際目の事は新たに追加された設定見たいな感じになりました。

 

ギンガがあの時攫われなければこの設定は生まれなかったかもしれません。

 

戦闘機人モードの時のギンガは特に表情を崩すこともなく、無表情だったので、そんな表情でいられたら小さな子も怖がるかと思い桜花がビビりまくった設定となりました。

 

お盆の話は次回で完結です。既にお盆の時期を過ぎているので・・・・。

 

では、次回にまたお会いしましょう。




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