三十六話 センニュウシタヒ バラとお嬢様の学校
第二管理世界、そこの森の奥にある全寮制のお嬢様学校。
ヒルデガルト魔法女学院。
選ばれた良家の女子のみが入学資格を持つ男子禁制のまさに乙女の園。
そんなお嬢様学校の通路をオレンシ色の髪の女生徒と金髪の女生徒が歩いている。
「お嬢様学校って聞いたけどまさかこれほどとはねぇ・・・・」
オレンジ色の髪の女生徒こと、ティアナは学校を見渡しながら呟く。
流石名門お嬢様学校なだけに、敷地は広大で校舎などの建物も殆どがレンガ等で構築された、地球で言うロココ建築やバロック建築といったシックな作りになっている。そして当たりには数多くのバラの花が咲き乱れている。
第二管理世界独特の気候によりここでは一年中バラが見ることが出来るらしい。
二人は学院に着いた当初はもっと驚いていた。
どこまでも続く赤レンガの壁と最新式の警備システムが組み込まれた門、その上に二本のバラがクロスしてバラの上には蝶、下には蜘蛛が描かれた校章が描かれていた。
二人は編入の挨拶のため、職員室へと入った。
「「ご機嫌よう」」
「ご機嫌よう。貴女達ですね?今度編入してくる生徒とゆうのは?」
「はい、セレナ・ランカスターです」
「アリス・バニングスと申します」
二人は教師に名を名乗ったが、今回は潜入と言うことで偽名を使って編入した。学院側もこの二人が管理局から送られた捜査関係者だと知るのは理事長や校長等の学院のトップだけであり、一般の教職員には編入性という事で通している。
「書類を確認しました。お二方は編入試験でも優秀な成績を残しているようですね?この調子で頑張ってください。当学院は貴女達二人を歓迎します」
「はい、ありがとうございます」
「今後も宜しくお願いします」
編入挨拶を済ませた二人は用意された寮へと向かうが、その途中で声を掛けられた。
「あれ?もしかしてアリサさんじゃありませんか?」
本名を言われ、アリサは思わず振り返ると、そこには先の事件で一緒に巻き込まれたラピスが居た。
「奇遇ですねぇ〜私もこの学校に編入して来たんですよぉ〜」
事件時気絶していたため、兄と共に突入したティアナには気がつかないラピス。ここで大っぴらに本名を言われ続ければ後々面倒なのでアリサは、
「ああ、あの時名乗った名前は偽名よ」
と、本名を偽名と言った。
「ぎ、偽名!?」
あの時、名乗られた名前が偽名だと言われ、驚くラピス。
「当たり前じゃない。素性のわからない人に本名を簡単に名乗れるわけがないじゃない」
「ひ、酷い!?」
「まぁ、貴方の素性が同じ学友ということで改めて名乗るわね。アリス・バニングスよ。よろしくね、ラピス」
「あ、こちらこそよろしくお願いします」
微笑みを浮かべ、握手をするアリサではあったが、心の中ではまたも目の前の彼女を騙しているのだという罪悪感を抱いていた。
ティアナも同じようなモノを抱きつつも任務のためだと割り切り彼女に偽名の名を名乗った。
翌朝、朝食を摂るためアリサ、ティアナ、ラピスの三人は寮の大食堂へとやって来た。
「あれ?朝食の時間なのに、食堂に来る人が少ないわね?」
ティアナは食堂に入ったとき、食堂に居る生徒の数に疑問を持つ。
「ああ、それはですね・・・・」
ティアナの疑問に答えたのはラピスだった。
ラピス曰く、
ここの食事の時間は特に決まっている訳ではなく、朝食も朝練の部活動がある生徒は朝早くに起きて朝食を食べ部活に行くし、食事も食堂でなく自分の部屋で摂る事も出来るので、部屋で食べる生徒もいるのだという。
「へぇ〜お嬢様学校のイメージから食事も食堂に全員集合っていうイメージがあったから意外だわ」
その後、三人はそれぞれ食べたい料理を注文して食べた。料理の味はこれが学校に出す料理か?というくらい美味しかった。
食事の時間は自由だが、朝の礼拝の時間は決まっており、その時には病欠等や部活の遠征等の理由がない限り礼拝堂に集合しなければならない。
そしてこの時に初めて学院の生徒全員が集まる事になる。
席は学年ごとに決まっており、三人はそれぞれの学年の席についた。
二年の席にはアリサとティアナ。
一年の席にはラピスがそれぞれ着席した。
席について礼拝時間を待っていると、礼拝堂にある生徒の一団が入ってきた。その生徒たちはアリサ達を含め、全校生徒とは違う色の制服を着ていた。
アリサ達の制服は黒いブレザーに赤と黒のチェック柄のスカートだが、その生徒たちはブレザーもスカートも全て白だった。
「ご機嫌よう。皆さん」
先頭を歩いていた女生徒が礼拝堂にいる生徒たちに挨拶をする。
「アンネさまだわ」
「ルリさまとリンさまもご一緒よ」
白い制服の生徒たちを見て、他の生徒たちは黄色い声をあげる。
「ご機嫌よう。アンネさま」
「ごきげんよう」
「ご機嫌よう。ルリさま」
「ご機嫌よう」
「ご機嫌よう。リンさま」
「ご機嫌よう」
「さあ、皆さん朝の礼拝をいたしましょう」
アンネと言われる生徒が礼拝を促すと他の生徒はまるで女王に従う臣下の様に礼拝の準備をする。
(あの人、凄い人気ぶりね・・・・でも制服が違うけど・・・・一体なんなのかしら?)
アリサはあの白い制服の一団が気になり、隣の生徒に聞いてみる。
「ねぇ、あの白い制服の人達は一体何?」
「ああ、貴女は編入してきたから知らないのだろうけど、あの方達は『ホワイトローズ』・・この学院の生徒会の方達ですわ」
「へぇ〜」
アリサが改めてその生徒会の生徒達を見ると、あのアンネと言う生徒には一種のカリスマ性を感じた。
礼拝が終わり、生徒たちは各々自分達のクラスへと向かう。
アリサとティアナは同じクラスとなり、朝礼の際、自己紹介をした。
授業ではアリサは遺憾無くその天才っぷりを披露し、同級生から尊敬の眼差しを受け、授業後アリサはクラスメイトに分からなかった問題を優しく丁寧に教えていた。
アリサ自身、最初の学生生活では考えられない光景と行動であった。
彼女はその容姿とその天才的な頭脳から、周りから差別され、また彼女自身も、自分よりも学力で劣る同級生達を見下し、結果、彼女は学校内でも次第に孤立して行った。
登下校は当然、一緒に同行する者などなく、その結果、アリサは下校途中に誘拐され、誘拐犯に性的暴行をされた後、命を落とした。
しかし、良介の法術によってもう一度、人生をやり直す事になった彼女は前世での反省を生かし、協調性を取る様になった。
その結果が今の教室内の光景である。
そしてアリサと一緒に試験勉強をしたティアナは「試験勉強の時はまさに勉学の鬼だったのに何故こうも差があるのか」と、心の中で思いつつ、負けず嫌いな性格が、出たのか、ティアナ自身もアリサの開く勉強会に参加した。
お嬢様学校でも授業の中に、ちゃんと体育の時間はある。
そして今日の内容は水泳の授業だった。
(懐かしい・・・スクール水着なんて何年ぶりだろう?)
(スク水なんて訓練校以来ね)
と、アリサとティアナの二人は久しぶりに着たスクール水着に懐かしさを感じていた。
プールに目をやると、やはりお嬢様。全員が泳ぎきれるわけでなく途中で足を着いてしまう生徒がちらほら目立った。
(ここはやっぱり、目立たない様に適当に手を抜いた方がいいかしら?)
ティアナは飛び込み台の上に立つと、変に本気を出して怪しまれたりするのは得策ではないと考え手を抜くことにした。
元々局員であるティアナは訓練校・機動六課で厳しい訓練を積んできたのだから、足をつけずに泳ぎきれる自信は十分にあった。
すると、ティアナの隣の台に一人の生徒が立つと、プールサイドから他の生徒達が声援を送り始める。
「リンさまの番ですわ!!」
「リンさまー!!」
「リンさま、頑張って下さい!!」
「リンさまファイト!!」
ティアナの横にいるのは今朝、礼拝堂で見た白い制服の生徒の一人だった。
(へぇーあのアンネっていう人と同じくこの人も人気があるんだ)
ティアナが横目で隣に立つリンと呼ばれた生徒を見ると、その生徒もティアナの視線に気づいたのか、ティアナの方に視線を向ける。
そして・・・・
「フン」と、小さく鼻で笑った。
(ムカっ・・・・感じわるーっ)
元々負けず嫌いの性格故か、ティアナは自分がバカにされたのだと思い、先程まで手を抜いてやろうとしたが、前言撤回し、少し本気になってやろうと決めた。
この鼻持ちならないお嬢様には絶対に負けないと決めた。
「位置に着いてヨーイ・・・・スタート」
スタートの合図と共に皆が一斉にプールへと飛び込む。
泳ぎ出した生徒達の中で、先頭に出たのはあのリンと呼ばれていた生徒だった。
「きゃー!!リンさまステキー!!」
「がんばってリンさま!!」
「リンさまー!!」
プールサイドからは生徒たちが泳いでいるリンに向かって声援を送っている。
「流石リンさまですわ」
「ええ、相変わらずお速いですわ」
「間もなく折り返しですわね」
(へぇーお嬢様のわりになかなかやるわね・・・・)
リンの後ろを泳いでいたティアナは前を泳ぐお嬢様(リン)に感心しつつ「そろそろ本気を出しますか・・・・」と思い、スピードを速めた。
リンが折り返そうとした時、ティアナはリンを抜き、既に折り返しのため、プールの壁を蹴っていた。
「っ!?」
いつの間にか、自分を抜き去り、折り返していくティアナを見たリンは驚きが隠せなかった。
この学校に入ってから今まで水泳で自分を抜いたのはただ一人だけ・・生徒会長のアンネただ一人だけだった。
それ程、リンは水泳に対し、自信を持っていたのだ。それを隣のコースの生徒はいとも簡単に実行してしまった。
リン自身も急ぎ折り返し、自分の前を泳ぐ生徒を追いかけたが、結果を覆すことはかなわず、この日、リンは入学以来二度目の二位という結果に終わった。
「まさか、リンさまが負けるなんて・・・・」
「信じられませんわ・・・・」
プールサイドからはリンがティアナに負けた事に驚きが隠せないといった状況だった。
プールサイドに上がったリンは、無言で水泳キャップとゴーグルを外し、プールサイドチェアーの上に座ると膝を抱え込んでしまった。
「リン!」
そこに一人の生徒がバスタオルを片手にリンに近づき、顔を見られないようにバスタオルをリンの頭部に被せた。
バスタオルが被せられる少し前、ティアナはリンが悔し泣きをしているのをチラッとだけだが、見えてしまった。
(ちょっとやりすぎたわね・・・・)
悔し泣きをしているリンの姿を見たティアナはお嬢様相手に本気を出してしまった事に反省した。
そんなティアナとリンとの対決を校舎から見ている人物がいた。
「・・・・」
水泳でただ一人以外負けなしと言われたリンをいとも簡単に破ったティアナの姿を見たその人物は満足そうに口元を緩ませた。
授業が終わり、更衣室へと戻って行く生徒の中で、水泳に負け、落ち込んでいるリンに真っ先に駆け寄った女生徒が去り際にティアナを一瞬鋭い目つきで睨んだ。
しかし、ティアナはその時、アリサと話し込んでいて、その女生徒の視線には気がつかなかった。
放課後、ティアナとアリサは本来の仕事・・失踪した生徒たちの行方について探っていた。
ティアナはまず、この学院の警備システムについて調べた。
学校を取り囲む外壁は高く、飛行魔法で飛ぶか、穴でも掘るしか外壁を越えるぐらいしか方法はない。しかし、外壁には監視カメラがついており、外に出ればすぐにわかる仕組みになっている。だが、この監視カメラは全て外側に向けて取り付けられており、外に出れば一目でわかるのだが、内部のことは分からない仕組みになっている。
これはこの学院の生徒がお嬢様という事から、保護者からプライベート問題を指摘され、学院内には監視カメラというものが存在せず、教師や寮監が夜間、寮内や校舎の巡回を行なっている。
しかし、校内には監視カメラではないが、不用意な魔法の使用を防ぐため、高性能のサーチャーが設置されており、それを誤魔化すほどの転移魔法など今の所確認されていないため、失踪した生徒は今もこの学院の中にいる可能性が高い。
警備システムを確認した後、ティアナはまず、校舎内を一応調べた。
ティアナが校舎の中を調べている時、アリサは校舎の外を調べていた。
外に出た形跡がないのであればやはり学院内にいる可能性が高いのだが、校舎内に監禁していれば生徒ないし教師にバレる可能性が高い。
ならば、学院内に秘密の通路ないし、隠し部屋が存在するのでないか?
そしてその入口は校舎内ではなく、校舎外にあるのではないかとアリサはそう読んだ。
何せ、この学院の敷地面積は途方もなく大きくて広い。それこそ六課の所有していた敷地が何個も入る位の面積だ。
アリサは当てもなく校舎外の建物を調べながら学院内を歩き回った。
そこで、アリサは学院の一角に古びてはいるが、頑丈な扉で閉ざされた奇妙な場所に行き当る。
「裏口かしら?」
ドアノブを弄っても当然ドアが開くことはなく、ジャンプしても壁が高いので、壁の向こうがどうなっているのか分からない。
そこでアリサは近くで園芸をしている園芸部員に声をかけた。
「ねぇ、あの扉の向こうって何があるか知っている?」
「ああ、あそこは白バラ園ですわ」
「白バラ園?」
「はい。生徒会の方々・・・・ホワイトローズの方々がお茶会を楽しんだ園ですわ」
「中は美しい白いバラで覆い尽くされた園とお聞きしました」
アリサはこの学院に来てから妙な違和感を感じていたのだが、園芸部員の話を聞き、ようやくその違和感の正体に気が付いた。
(そう言えば学院内には沢山のバラが咲いているのに白いバラは一輪も咲いていなにわね・・・・)
「ねぇ、ここって沢山のバラが咲いているけど、なんで白いバラは一輪も咲いていないの?」
「それは白いバラはこの学院では神聖な花ですから・・・・白いバラは清き乙女の印」
「故に清き乙女は完璧な乙女でなければならないということで、多くの乙女を導く存在ということで成績上位者の方のみホワイトローズの称号が贈られ、あの白バラ園が下賜されるのです」
「最もその制度は廃止されてしまいましたが・・・・」
制度が廃止されたということで園芸部員は残念そうに呟く。
アリサはなぜその制度が廃止になったのかを聞く。
「廃止?どうして?」
「ええ、数年前に白バラ園で当時の生徒会長様が亡くなられて・・それ以来白バラ園は封鎖されてしまって中がどうなっているかは私達も・・・・」
「ここ数年は手入れがされていませんから、恐らく白バラは枯れて、中もきっと荒れほうだいでしょうね・・・・」
「その白バラ園の入口ってあの扉だけなの?」
「多分そうだと思いますけど・・・・」
「ふぅ〜ん・・そう、ありがとう」
「いえ・・・・」
アリサは園芸部員から事情を聞いた後、封鎖された白バラ園の扉をジッと見ていた。
その日の夜。
「あらアリスさんは?」
巡回に来た寮監がアリサの事をティアナに尋ねる。
アリサとティアナは共に転入生ということでルームメイトという形で寮に入った。もちろんこれは「共に同じ部屋に居たほうが安全であり尚且つ捜査しやすいだろう」と、管理局側と学院側が口裏を合せ行なった行為である。
「お疲れになったみたいで、先にお休みになられています」
「そうですか・・・・それではお休みなさい」
「お休みなさい。寮監様・・・・」
ティアナは寮監に挨拶を済ませ、扉を閉めた。
「ふぅ〜どうやらバレなかったようね・・・・」
ティアナはアリサのベッドの掛け布団をめくる。そこにはアリサの姿は無く、丸めた毛布とクッションが置かれていた。
「アリサさん大丈夫かしら・・・・」
と、部屋を抜け出たアリサを心配するかのように呟いた。
その頃、部屋を抜け出したアリサはというと・・・・
放課後に来た白バラ園の扉の前にいた。
アリサはこの封鎖された白バラ園がどうも気になっていた。
封鎖されたということは一般生徒や教師は入っていない筈・・・・。
それならば生徒を監禁するにはもってこいの場所と言うわけであった。
暫く近くの茂みで息を殺し潜んでいたが、誰も近寄る気配は無かった。
(今日はハズレかしら)
アリサは当てが外れたのだと思い今日は引き上げることにした。
しかし、寮に帰る途中礼拝堂で小さな明かりが揺れ動いているのを見つけた。
(何かしら?)
アリサは気になり、礼拝堂へと向かった。
アリサがそっと礼拝堂のドアを開けると、そこには白ローブを来た人物と制服姿の生徒がいた。
白いローブの人物が礼拝堂の祭壇の所で何かを操作すると、祭壇が横にスライドし、生徒と共に祭壇の下へと消えていった。
「隠し通路!?・・・・やっぱり秘密の部屋があったのね」
アリサが祭壇に下に続く秘密の通路を見て、ゴクっと唾を飲むと、意を決しその通路を降り始めた。
明かりは持っていなかったが、前を歩く白いローブの人物がロウソクを持っていたのでその明かりを頼りに着かず離れずの距離を保ちながらアリサは白い人物の跡をつけた。
やがて通路を出ると、再び外へと出た。
外には沢山のバラが咲いていたが、そこに咲いているバラはみな白いバラだった。
「まさか、ここは封鎖された白バラ園?」
アリサが辺りを見回している間に白いローブの人物と生徒は白バラ園にある建物の中に入っていった。
アリサは流石に建物の中に入ればあの白いローブの仲間がいると判断し、窓越しから中の様子を伺った。
そしてある一室で、先程の白いローブを身に纏った人物と同じローブを来た人たちと連れられてきた生徒がロウソクの明かりが灯る部屋にいるのを突き止めた。
一人の白いローブの人物が聖杯を象った金属製のワイングラスに口を着け、中に入っている液体を口に含むと今度はそのままの状態で生徒にキスをし、口移しで生徒に謎の液体を飲ませている。
「な、何あれ・・・・何かの儀式?」
アリサは声を震わせながら目の前で行われている百合々しい儀式に目を奪われていた。
そのため、アリサは背後から近づいてきた気配に気がつかなかった。
そして背後から近づいてきた人物は儀式に目を奪われているアリサの肩に手を乗せた・・・・。
アリサの背後に立つ人物は一体?
アリサの運命は如何に・・・・?
おまけ
落し物
六課の隊舎をはやてとグリフィスが歩いていると、二人の視線の先に財布が落ちていた。
落し物ということではやては落ちていた財布を拾う。
「財布か?誰のモンやろう?」
「自分のではありませんね」
「私のものでもないわな・・・・しゃーない。心苦しいけど、持ち主が特定出来そうなものがないか、中身を調べさせて貰おうか」
「それがいいですね」
はやては財布を開けて中身を調べるが中にはお札と小銭だけで持ち主を特定するカードや免許証などは入っていなかった。
「う〜ん、持ち主を特定するものは入っておらんが、多分持ち主は女子やな」
「何でわかるんです?」
「ゴムが入ってないからや!」
キリッとした顔で持ち主が女子だと断定するはやて。
「それじゃあ自分も女になってしまいますよ」
グリフィスが呆れた表情ではやてにツッコンだ。
会議
この日、六課隊舎の会議室にて、各パートの班長や隊長陣での会議が行われていた。
グリフィスが司会を務め、会議は進んでいく。
「次に先日の件ですかが・・・・」
報告をしながらグリフィスが周囲を見渡すと、はやてが目を瞑ってコックリコックリと頭を揺らしていた。
「八神部隊長」
「ハッ」
グリフィスに声をかけられはやては慌てた様子で目を開けた。
「ちゃ、ちゃうねん!目を閉じながら考えて・・・・」
「また子供みたいな言い訳を・・・・」
咄嗟に弁解を図るはやてであったが、グリフィスは信用していない様子。そりゃあ、あれだけ堂々と舟を漕いでいれば当然である。
「うぅ〜グリフィス君が上官である私のことを信用してくれへん・・・・」
はやてはションボリとした様子で俯く。
「・・・・・」
「・・・・・」
暫しの沈黙の後、
「ごめん。寝とったー 堪忍やー」
「・・・・・」
はやては寝ていたことを認め、グリフィスは呆れたままだった。
あとがき
二次のお嬢様学校=百合って言う方程式が思いついてしまうのは何故だろう?
もう少し緊張感と陰謀が深く渦巻く形にしたかったのですが、作者の力量では今のところこれが限界です。
では、次回にまたお会いしましょう。