三十四話 コイヲシタヒ 愛しのプリンスメロン様

 

 

「ええか?良介、男の甲斐性って言うんは、女を振るより振られる方やで、いかに未練を残させないか、嫌いにさせるかなんやで!!」

「女の子のハートは繊細なガラス細工と同じでちょっとの衝撃で簡単に粉々に砕けちゃうものなんだよ!!」

「だから男の汚い部分を『これでもか』ってくらいに見せつければバッチリだよ!!」

はやて、フェイト、なのはからウェンディを如何に傷つけないで、別れさせるかの案を聞き、あとはそれを実行するだけであった。

 

休日、約束通り、良介はウェンディとデートすることになり、駅前で待ち合わせした後、クラナガンの街中を二人並んで歩く。

その後ろから、はやて、なのは、フェイトが良介とウェンディの二人を尾行する。

DV(ドメスティック・バイオレンス)にギャンブルに酒乱・・・・男が女に嫌われる要素は多々あるが、一番即効性があるのはやっぱりアレやな!!」

はやてが押す、男が女に嫌われる要素それは・・・・。

「実は僕・・・この手の映画が大好きで・・・・」

良介もとい、メロラー13が押す映画それは、際どいシーンが入った。R15指定のアニメ映画だった。

「これはキツイ・・・・」

「普通に引くね・・・・」

映画の看板を見てなのはとフェイトもドン引きしている。

「女の子は重度のオタクが嫌いやからな」  (偏見が入っています・・多分)

「君が嫌なら、別にいいよ。僕一人で見に行くから」

「嫌っス」

ウェンディの口から出た否定の言葉。

この言葉を聞き、良介は「やっと終わった・・・・」という安心感があったが、この後発せられたウェンディの言葉に裏切られた。

「一人ではつまらないっス。それにアタシもアニメ大好きっスから」

「えっ?」

良介達の誤算。それはウェンディもアニメやゲームが大好きなことだった。

「えっ?ほ、ほんまかいな?」

「思いっきり外したね・・・・」

ウェンディの予想外の反応にはやては驚いた。

驚いているはやてにフェイトが冷静にツッコム。

「あっ、もうすぐ上映時間っスよ。早く入るっス」

ウェンディはメロラー13の腕を引っ張って映画館の中へと入っていった。

 

 

「期待通り際どいシーンだったっスね!!」

映画の後、ウェンディは満足気な顔をしている。

「なんで、喜んでんの?」

「不満だったっスか?ああ、やっぱりあのシーンは包み隠さずエロが入った方が良かったっスね」

「いや、そういう分けじゃないけど・・・・」

見たくもないアニメ映画を見て、良介もユニゾンをして感覚を共有しているミヤも若干お疲れ気味の様子。

「ウェンディ・・・・意外と強敵やな・・・・」

「そうだね・・・・でも負けないよ・・・・」

「な、なんで、はやてとなのは、ウェンディに対抗心を燃やしているの?」

なのはとはやてが何故かウェンディに対抗心を燃やし、フェイトはそれを疑問に思っていると、尾行している三人に前を歩いている良介が振り返り視線を送る。

「うわぁー良介めっちゃこっちを睨んどる・・・・」

「『この世の中、すべて嘘つきだ』みたいな眼だね・・・・」

良介の視線を見て、はやてとなのはが冷や汗を一筋流す。

「それじゃあ今度はあの手で行こうか?」

今度はフェイトが新たな案を提示する。

 

 

「ようよう、お熱いねぇ〜随分と魅せつけてくれるじゃないの?」

「女の前だからってカッコつけてんじゃねぇぞ!!」

「チャラチャラいちゃつきやがって、男が出来ないアタイらに対しての嫌味か!?ああんっ」

メロラー13とウェンディの前に立ちふさがったのはグラサンに特攻服を着た不良女達・・・・に変装したフェイト達であった。

(はやてちゃん、男が出来ないっていうのは余計だよ!!)

(『達』ってなによ。『達』って、私だってちょっと色気を出せば男の一人や二人くらい・・・・)

先程のはやてのセリフに不満があったのか、なのはとフェイトは心の中ではやてに文句を言った。

「め、メロラー様・・・・」

ウェンディが心配そうに声をかける。

メロラー13はウェンディから離れ、不良たちの前に立ちふさがる。

そして・・・・

「すいませ〜ん」

突然地面に頭、両手、膝を付き土下座をする。

「えっ?」

「お気に障ったのなら、いくらでも誤りますから!!お金がいいのであれば財布ごと置いていきますから、どうかご勘弁下さい!!」

懐から財布を取り出すメロラー13。

「なかなか、素直な坊やないか、だがな、ウチらは今物凄く機嫌がわるいんじゃぁ!!靴の裏を舐めるぐらいの心意気を見せてもらおうやないかい!!」

そう言ってメロラー13の頭に靴を押し付ける不良その1(はやて)。

「何だこいつ?シケてんなこれポッチしかねぇのかよ?」

メロラー13から奪った財布をあさる不良その2(フェイト)。

「舐めるななの!!」

そう言ってメロラー13を蹴りはじめる不良その3(なのは)。それに連動して不良その1(はやて)不良その2(フェイト)もメロラー13を蹴り始める。

フェイトの作戦は女の前で、弱く格好悪い場面を見せれば女は幻滅して別れるという作戦だった。

三人は普段から良介に対する鬱憤が溜まっていたのか、それとも夫婦生活を謳歌している良介に対し嫉妬しているのか、口々に文句を言いながら蹴りを止めない。

すると、蹴られ続けていたメロラー13は・・・・。

「てめぇら!!いい加減にしろ!!」

瞬時に抜刀術を放ち三人を峰打ちで倒した。

突然の反撃に、デバイスを機動させる暇もなく、なのは達(不良達)は倒された。

フェイトの作戦は良介の予想外の反撃の前にあえなく失敗した。

 

 

「メロラー様、さっきはアタシのために命をかけて守ってくれたっスね?」

夕方、町外れの小高い丘に二人はいた。

「えっ?あ・・・いや・・・・」

まさか、「演技です」とも言えず、口ごもるメロラー13。

「照れるなんて、意外とお茶目なところがあるんっスね。あっ、あたしったら何て恥ずかしいことを・・・・」

顔に手を当ててイヤンイヤンと悶えるウェンディ。

そんな中、メロラー13が脇の茂みを見ると、そこにはなのは達がいた。

そぉっとその場から離れなのは達の下に向かうメロラー13。

ウェンディは未だ妄想の世界にダイブしており、少しの間ならばこの場から消えても問題は無かった。

 

「もう嫌だ、どうなってもいい。俺はこのまま逃げるぞ」

とうとうこの件からの逃亡を決意する良介。

「逃げるって良介・・・・」

「そして義妹であるウェンディの心に一生ものの傷を残す気ですか?」

ユニゾンにしているミヤが怒気を含んだ声で良介に問う。

「そうやな。乙女の純情は万金以上の価値があるんやで、良介」

「くそっ・・・・なんでこんな厄介なことになったんだ・・・・」

今更ながらこの件を引き受けたことに後悔する良介。

「しょうがない・・・・ここは私の番かな?」

最後はなのはが案を掲示した。

 

 

「メロラー様!!どこにいったんっスか!?」

突然いなくなったメロラー13を探すウェンディ。

「振り向かずに聞いてくれ」

突如、ウェンディ背後からメロラー13の声がした。

声を聞き振り向こうとしたウェンディを・・・・

「振り向くんじゃねぇ」

と、振り向くのを止めるメロラー13。

「今の今までお前にいっていなかったことがある・・・・」

「な、なんすっか?」

「実は・・・・俺は・・・・メロン星の王子だったのだメロ」

「お、王子・・っスか?」

王子と聞き、驚愕の声をあげるウェンディ。

「振り向いても良いメロ」

ウェンディが振り向くとそこにはメロンの着ぐるみを着たメロラー13がいた。

「・・・・・」

「・・・・・」

二人は互いに無言・・・・。

「はぁ・・・・」

そして、ウェンディはため息を付く。

(やっぱりダメか・・・・今どきこんな子供騙しの手じゃあ、ヴィヴィオすら騙せねぇだろう)

なのはの作戦は以前絵本で読んだ、他の星の王子様が別の星の女の人に恋をするも、最後は別れなければならなかった、ちょっと悲しいお話を模した作戦だった。

「やっぱりそうだったんっスね?なんここう普通の人とは違うオーラをアタシも感じていたっス」

(通じちゃったよ。この着ぐるみと語尾が「メロ」だけで通じちゃったよ!?)

子供騙しの手が通じたことに驚くメロラー13。しかし、信じたのならこのまま演技を続けなければならない。

「俺はこれ以上この世界では生きていけないメロ。そろそろ自分の故郷に帰らなければならないメロ」

「行ってしまうんっスか?」

「ああ、そろそろお迎えが来るころメロ」

「アタシも連れていってくださいっス!!お願い・・・・」

涙声で抱きつくウェンディ。

(なんか、余計に不味い方向に行ってない?)

抱きつくウェンディ態度に狼狽するメロラー13だが、長年多くの修羅場を潜ってきた経験は伊達ではない。

良介はすぐに体勢を整える。

「ば、バカなことを言うんじゃないメロ。メロン星はとても青臭く、雨はメロン果汁で普通の人間じゃあとても生活出来ない辺境世界メロ。君はこの世界で家族と一緒に生きていくのが一番メロ。俺はいつでも君のことを見守っているメロ」

「いつでもっスか?」

「ああメロ」

メロラー13が頷くと、ウェンディは顔を伏せる。

「どうしたメロ?」

メロラー13がウェンディに聞くと、突如、ウェンディは顔を上げ、メロラー13の頬にキスをする。

「アタシは別れだからって、絶対に泣かないっスよ」

泣かないと言っているが、目尻に涙を浮かべながらもぎこちない笑で語りかけるウェンディ。

そこへ車体に沢山のメロンのシールを貼ったフェイトの車が到着する。

「王子様そろそろお時間メロ。お早くメロ・・」

良介と同じ、メロンの着ぐるみを着たフェイトが運転席から降り、良介に車に乗るように言う。

「君も幸せに暮らすメロ」

良介が車に乗り、窓から手を振り、

車は発進する。

「メロラー様!!さようならっス!!」

丘から離れていく車を見ながら手を降るウェンディ。

「さよならメロ〜さよならメロ〜」

「メロラー・・様・・・・きっといつか・・・・きっといつかまた会えるっス」

ウェンディは手を振りながら小さく呟いた。

この日、一人の少女が一歩大人に近づいた・・・・・・。

 

 

「あぁ〜疲れた・・・・」

「ですぅ・・・・」

「ふふ、お疲れ様リョウスケ、ミヤちゃん」

フェイトの車の中で、ぐったりとシートにもたれる良介とユニゾンを解除し後部シートに横たわるミヤ。

その様子をゲンヤはスコープ越しに見ていた。

狙撃銃型のデバイスを持つ手はカタカタ震えていたが、ゲンヤは良介を撃つに撃てなかった。

もし、今ここで良介を撃てば、ギンガから何をされるのか恐ろしくて出来ないし、第一そうなれば自分の命さえ危険かもしれないからだ。

その夜、報告に来た良介をゲンヤは不機嫌全開で迎える。

「・・・・ってことだメロ」

いまだメロンの着ぐるみ姿でゲンヤに報告する良介。

「すげぇムカツクメェロォ〜」

良介の報告を聞き、ゲンヤの言い放った言葉はこの一言だけだった。

 

 

おまけ

 

時系列は良介とギンガが喧嘩をしてはやてとスバルの仲直り計画が失敗に終わり、フェイトからの依頼が来る少し前・・・・。

良介も本当はギンガに謝り、仲直りをしたいのだが、言葉も見つからず、また変な意地を張って会おうとはせず、落ち込むようなイライラしているような気まずいどんよりとした空気を纏っている。

このままでは八神家全体にその空気が充満し、こっちの気まで滅入ってしまうので、それを防ごうとはやてが一計を案じた。

「―――と、言うわけで、皆で歌って踊って楽しくなれるダンスを考えてみたんや」

「ダンス・・ですか・・・・」

はやてがダンスの歌詞と振付の絵を書き記した紙をリィンに見せる。

「そうや、午前中一杯かけて作成した私の苦心の作や!!なお、『結構恥ずかしいのでは?』ちゅう弱点もあるのでここで一回テストプレイをしてみようと思うとる」

「そんなに恥ずかしいのですか?主の考えたダンスは?」

「それは一度踊ってみないと分からへんから、踊ってみるんや」

「はぁ・・・・」

「ほら、リィンも一緒に踊るで」

「わ、私もですかっ!?」

はやてと一緒に恥ずかしいかもしれないダンスを一緒に踊れと言われ、リィンは困惑するが、はやてはサクサクと話を進める。

「決まっとるやないか。ほな、いくで・・・・」

「は、はい・・・・」

そして、なし崩しにリィンもはやてと踊ることになった。

二人はまず、姿勢を正し、直立不動の状態から踊りだした。

「「パ・パ・パ・パンプキン ラ・ラ・ラ・パンプキン シィザ・アァ―――ァ アァズ・・・・・しざ・あ―――ず!!あ、よいしょ!!恋もバトルも出だしが肝心。思い切りでダッシュ おどけた仕草で ハートをキャッチ キャッチ&リリース・・・・」」

二人は笑顔で歌いながら踊った。

そして踊り終わると同時に床に両手を着いた。

「よ、予想以上に恥ずかしい・・・・」

「え、ええ・・・・」

「これは永久封印や・・・・」

「そのほうがよろしいかと・・・・」

自分で作っておいて何だが、二人は余りの恥ずかしさに顔を赤く染め、羞恥と自己嫌悪に陥っていた。

すると、自分達の背後から視線を感じ、恐る恐る振り向いた。

「あ・・・・あ・・・・」

そして振り向いた先に居たのは、目を大きく見開き、「信じられないものを見た」って顔をしている良介だった。

良介は廊下を歩いていると、はやてとリィンの歌声が聴こえたので何をしているのか確かめようとドアを開けてみると、そこには奇妙な踊りをするはやてとリィンの姿があった。

それを見た良介は体が硬直し、二人が踊り終わるまで二人に声をかけることも出来ず、動くこともできなかった。

「あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・・りょ、良介これは違うんや!!」

はやては慌ててドアの近くにいる良介に詰め寄ると弁解を図る。

「これには訳が・・・・」

しかし、良介ははやての弁解を切り上げ、その場から立ち去ろうとドアを閉めようとする。

「良介、いやいや、そんな目で私を見ぃんといて、引かんといてぇ〜!!」

はやてが悲痛な声でドアを閉めようとする良介を引き止める。

「い、いや・・・・俺は・・・・そんな・・・・信仰は・・人それぞれだから・・・・・」

良介ははやてから視線を逸らすとドアを静かに閉めた。

「あ・・・あ・・・・あ・・・・・」

はやては涙目で閉まるドアを見ていた。

 

これが宮本夫妻の喧嘩の最中に裏側で起きていた悲劇の一つで、はやてとリィンのトラウマが一つ出来た瞬間でもあった。

 

 

あとがき

ウェンディいつか素敵な出会いがあるさ・・・・きっと・・・・

血の繋がらない兄に恋心を抱いてしまうギャルゲー的な要素と銀魂のミックスでしたが、いかがだったでしょうか?

失恋?を経験し、ウェンディはたくましく生きていくことでしょう。

おまけはパンプキンシザーズの「小さな戦力」(アニメでは18話 単行本では3巻)で同作品の登場キャラ、ステッキン曹長が踊ったパンプキン音頭ネタです。

曹長とはやての中の人が同じなので、声優つながりで書きました。




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