今回から良介とギンガの娘の名前を明記します。

娘の名前は『宮本 桜花』(みやもと おうか)と命名します。

名前の由来は母親であるギンガの名前の由来が旧日本海軍の双発爆撃機『銀河』からなので、娘の名前も旧日本海軍の開発したロケット特攻機『桜花』からとりました。

いずれ、成長した桜花を主人公とした回を書くつもりですので、その際に詳しいステータス等を載せます。

 

 

二十四話 ジョナンノヒ さらば女の日よ

 

 

「良子ちゃん、こっちコーヒーのおかわり!!」

「こっちも!」

「は〜い、ただいま〜」

「ね、姉さん・・・・凄いなぁ・・・・」

全品半額dayということで、翠屋は朝から大繁盛であった。

更に、今日は綺麗なメイドさんが給仕をしているとの情報が口コミから広がり、店の外にも行列が出来ている。

一日メイドとなった良介は、流石に良介と名乗るわけにもいかず、安直だが、良子と名を名のり、給仕をしている。

今までの人生の中で、翠屋のバイトをはじめ、様々な仕事を経験してきた良介は営業スマイルもお手の物。

さらにメイド服と女になった良介の容姿が拍車をかけ、同じくバイトの筈のなのはよりも人気がある。

そしてなのはは完全にメイドに徹している良介に感心している。

「あ、あのしゃ、写真撮影、いいですか?」

「なのはなら、シュークリームを一個、私の場合は十個、お買い上げになられればいいですよ〜

ニコッと笑み(営業スマイル)を浮けべながら、接客対応していく良介。しかし、既に写真はへの28号によって撮られていることをこの時の良介はまだ知らない。

「こんにちは、良介君。うふふ、まさか本当に女になっているとはね・・・・」

「桃子から聞いたのか?・・・・あなたのような高貴な方の舌を満足できるか、わかりませんよ?さくら様」

皮肉を込めながらさくらに言い放つ良介。

「美味しさに貧富の差や国境は関係ないわ。それに私はこの店の常連よ。ずっとミッドとやらに居たせいで知らなかったのであろうけど。それはそうと、せっかくメイド服を着ているのだからエスコート、お願いできるかしら?」

「くっ・・・・こ、こちらへどうぞ・・・・お嬢様」

さくらにはなるべく逆らわないほうがイイ。それは海鳴で学んだ良介の暗黙のルールだったため、良介はさくらをエスコートした。

 

「こんにちは・・・・あはははは・・・・本当に侍君が侍ちゃんになってる!?」

指をさしながらメイド服の良介を笑い飛ばす忍。

さくらからの連絡を受け、わざわざ確かめに来たのだ。

「やかましいぞ、忍。・・・・くそ、さくらの奴、面倒な奴に連絡を入れやがって」

「それにしても本当にそのメイド服似合ってるね。ねぇ、どうせならこのまま家でメイドとして働かない?」

「断る!!」

 

さくらと忍が教えたのか、その後も海鳴で知り合った顔馴染みたちが次々と翠屋に来ては良介の姿を見て、驚き、笑い、茶化してお茶やスイーツに舌鼓をうち、帰っていった。

ようやく客の入りが一段落した頃、

「こんにちは」

「こんにちは桃子さん!」

桜花を連れたギンガと学校を終えたヴィヴィオが翠屋に来た。

「いらっしゃいギンガちゃん、ヴィヴィオちゃん♪」

桃子とギンガは結構顔を合わせている仲である。

ギンガもやはり、良介同様、桃子によく相談を持ちかけていた。

出産と子育てにおいては、桃子は先輩であり、大ベテランだったためである。

初めての出産と子育てをするギンガには多くの不安があった。

妊娠中はちゃんと生まれてくるのだろうか?それに例え子供が無事に生まれても、自分が戦闘機人という普通の人とは違う特殊な存在であることが、今後自分の子供に何らかの影響を与えるのではないかという。不安がギンガに纏わり付いた。

そんな不安の中、良介に桃子を紹介されて以来、ギンガはよく桃子と連絡を取り、出産に関するカウンセリングをはじめとし、子育ての相談や料理やお菓子の作り方などを聞いていた。

「こんにちは桜花ちゃん」

「もぉ・・・もぉ・・・・」

桃子が桜花に挨拶をすると、桜花も桃子に笑顔と共に手を伸ばしてくる。

桃子にとって、ギンガは自分にとって娘同然の存在で、桜花もヴィヴィオ同様、孫同然の存在であった。

 

翠屋がほんわかと平穏な空気の中、その頃、への28号はと言うと・・・・。

「そこの不審者!待ちなさいっ!」

「愛は自由なんだ!逮捕なんて出来るものか!!」

良介を盗撮もとい、監視をしていたところ、警邏中のリスティに見つかり職務質問をかけられたとたんその場から逃走をして、目下逃走中だった。

 

 

午後の開店時間前

「あ、あのぅ〜本当にコレを着なければいけませんか?」

「お願いギンガちゃん」

「は、はい・・・・」

午後の開店にギンガも翠屋を手伝うことになり、桃子から店員の衣装を渡され、困惑した。

ギンガが渡された衣装は良介のメイド服ではなく、まして翠屋の制服でもなく、大正時代の女学生風の着物と袴だった。

良介同様、桃子に押され、ギンガも手渡された衣装に袖を通した。

袴姿のギンガを見て、良介は翠屋がこのままコスプレ喫茶になるのではないか?と心配になりつつ袴姿のギンガに見とれていた。

そして何故、なのはに着せないのかとギンガが桃子に問うと、良介の時と同じく胸の事とギンガの方が清楚でお嬢様っぽいと言い放ち、その言葉を聞たなのはは開店直前まで、またもショックを受けていた。

 

 

「ギンガちゃん、ケーキおかわり」

「こっちはコーヒー」

「良子ちゃん、こっちもコーヒー」

「「はい、只今」」

午後の開店後も良介の人気は高く、更には午後からシフトに入った袴姿のギンガも人気があった。

そして微力ながらもヴィヴィオもフリルの付いた小さなエプロンを着けて手伝った。

 

 

その頃。への28号はというと、

「ようやく振り切ったぜ、まったくしつこい刑事(デカ)だったな・・・・」

何とかリスティからの追撃を振り切ったへの28号は再び良介の盗撮・・・・もとい監視任務に戻った。

そこで、袴姿で接客をしているギンガの姿を見た。

「げ、ゲンヤ、隊長!!」

「どうした!?への28号!!」

「た、た、大変です!ギンガの姐さんが、ギンガの姐さんが・・・・・!!」

「っ!?ギンガがどうした!?」

「ギンガの姐さんが袴姿で接客をしています!!こちらも物凄く萌ます!!」

「なにぃ!?」

ゲンヤはへの28号の報告を聞き、おもわずデスクから立ち上がった。

「への28号、わかっているな!?」

「了解っス!!俺のカメラは美しか追求しないっス!!」

ゲンヤに報告を終えた後、への28号は再びカメラで良介とギンガの姿をカメラに収め始めた。

 

 

「あー楽しかった♪」

最初は戸惑っていたギンガも時間が経つにつれて、段々と接客に慣れていき、後半はノリノリで接客に勤しんでいた。

「そうか、それはよかったな・・・・・」

反対に一日中メイド服を着て営業スマイルを繰り返していた良介はぐったりしている。

「おつかれさま。二人とも」

桃子はそんな二人に労いの為、ハーブティーを淹れ二人に差し出した。

「それにしても今日は本当に二人が手伝ってくれて助かったわ。これからもお願いしちゃおうかしら?」

「いいんですか?」

ギンガはやる気満々のようだが、良介の方はというと、

「メイド服なんてもう二度と着るか・・・・」

今日一日で一生分の忍耐を使い切ってしまったかのようだった。

「う〜私も頑張って手伝ったのに〜」

「ドンマイだよ、なのはママ」

良介と一緒に手伝いに来たなのはは、午後はもっぱら裏方に徹し、たいして目立っていなかった。

翠屋でのバイトを終えた良介たちはミッドへと帰り、それぞれの家に戻った。

夜中、ギンガの襲撃に備えていた良介だったが、昨日の一件で満足がいったのか、それとも翠屋の手伝いで疲れたのか、ともかくこの日はギンガの襲撃はなかった。

翌日、良介が目を覚ましたときには、体は元に戻っており、良介のテンションは高かった。

そんな良介をギンガは嬉しいような、残念なような複雑な表情で見ていた。

そしてもう一人、宮本家を監視していたへの28号は物凄く残念がっていた。

 

 

後日、良介は108部隊に借りていた制服を返しに来た時、何かの用があったのか、別の部隊に所属しているヴァイスの姿を見つけた。

「よぉ、ヴァイス」

「あ、宮本さん」

「どうした?元気ないなぁ」

「えっ?ええ・・・・まぁ・・・・」

ヴァイスはどこか元気がなかった。

「それより、どうしたんだ?別部隊所属のお前が108に居るなんて?」

「あっ、ちょっと所用があって」

「へー相変わらず、宮仕えは大変だな?」

「まぁ、これも仕事ですから?・・・・ん?前もこんなことがあったような・・・・?」

「?」

「それより宮本さんは顔が広いほうですか?」

「ん?まぁ、広いっちゃ広いかな?」

「それじゃあ是非とも探して欲しい人が居るんですが・・・・・」

「ん?人探しか?」

ヴァイスが上着のポケットをゴソゴソと探ると定期入れ位の大きさの写真入れを取り出す。

「お、俺この人を探しているんですが、宮本さん心当たりないですか?/////

「どれどれ?・・・・なっ!?」

良介が写真入れの中の写真を見ると、声を失った。

そこにはメイド服姿の良介(女バージョン)の写真があった。

「こ、コレどうしたんだ?」

震えながら、この写真の出所を聞く。

「 ? ゲンヤさんからさっき貰ったんですけど・・・・・あっ!!ダメっスよ!!浮気は!!」

ヴァイスは良介が女の時の良介に惚れたと思い、浮気はダメだと釘をさす。そんなヴァイスを尻目に、

「これ・・・・ゲンヤのとっつぁんから貰ったんだな?」

良介からは突如黒いオーラが出始める。

「は、はい・・・・」

良介のダークオーラを浴び、ヴァイスは声が震えている。

「とっつぁぁぁぁぁぁぁん!!」

ヴァイスから確認をとった良介はゲンヤのいる部隊長室へと物凄い勢いで走っていた。

「こ、怖かった・・・・」

その場に取り残されたヴァイスは怯えながら一言呟いた。

 

 

「とっつぁん!!」

部隊長室のドアを蹴破り、部屋に居たゲンヤに掴みかかる良介。

「な、なんだ!?良介!?」

「とっつぁん〜・・・・女の時の俺の写真をネガごと出せ、全部だ!!画像データも全部消去しろ!!」

「なっ!そ、それをどこで!?」

良介が写真の存在を知っていることに驚くゲンヤ。

「ヴァイスの奴が俺の写真を持っていたぜ・・・・それもこの前、翠屋でバイトしたときのをな・・・・」

「っ!?」

「さぁ・・・・全部出せ!!」

良介の黒いオーラに当てられ、ゲンヤはおとなしく画像データと写真をすべて差し出した。

差し出された写真は翠屋のバイトの時以外にも管理局の制服を着ていた時のもの、寝起きでYシャツ一枚姿で、眠そうな顔をして歯を磨いている時のもの、など明らかに隠し撮りしたものが殆どで、その中には同じく翠屋でバイトをしていた袴姿をしたギンガの写真もあった。

写真を手にした良介がワナワナと震えている。

その様子から良介がとてつもなく怒っていることが窺える。

「・・・・・」

「こ、これはお前の事が心配でな・・・・義息子を思う父の心使いで・・・・」

ゲンヤは怯えながら、弁明をするが、今の良介にそんな弁解の言葉は通用しなかった。

「・・・・とっつぁん・・・・少し・・『OHANASHI』・・しようか・・・・?」

良介がポツリと静かに呟いた。

その直後、部隊長室からゲンヤの絶叫が聞こえた。

良介は押収した写真の内、自分の写真は全て消去し、ギンガの写真だけはこっそりお持ち帰りした。

そしてヴァイスにはあの女は知らないと伝えた。

ヴァイスはかなりしょげており、彼に新たな春が来ることを祈りながら良介は108部隊隊舎を後にした。

 

ヴァイスに春がくるのはいつになることやら・・・・。

 

 

あとがき

 

今回と言いつつ、20話でフライングしてしまいました。申し訳ありません。

これにて性別変換編は終了です。

への28号に迫っていた人影は警官のリスティでした。盗撮行為をしていれば通報されるのは当たり前だと思い、登場させました。

ゲンヤのとっつぁんはまぁ、自業自得ですね。親子とは言え、親しき仲にも礼儀ありです。

では次回にまたお会いしましょう。




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