二十話 ジョナンノヒ シャワー室に潜む魔物
時系列は少し時間を戻し、はやてが良介たちと合流する少し前。
(くっ・・・・体中が焼けるみてぇに熱い・・・・それに物凄く痛ぇ・・・・まるで骨が溶けてるみてぇだ・・・・くそ、俺は・・・・俺はここまでなのか?・・・・すまねぇ・・・・アリサ・・・・すまねぇ・・・・ギンガ・・・・俺が居なくても・・桜花を立派に育ててくれ・・・・)
良介の頭の中に浮かぶのは自分の大切な家族の顔。
「うわぁぁぁぁ」
あまりの激痛に叫び声をあげ、うずくまる良介。
しかし、暫くすると激痛は段々と治まっていった。
「りょ、リョウスケ?」
恐る恐る声をかけるフェイト。
「フェ、フェイトか?・・・・ハハ、どうやら助かったみてぇだ・・・・・・」
フェイトに声をかける良介。
そこで良介は何となく自分の体に違和感を覚えた。
・・・・・・あれ?俺の声、なんか高くねぇか?
それにフェイトの奴、なんか物凄い顔で俺を凝視していやがるし・・・・
あと、何か、肩が重い様な・・・・何か重い物が胸辺りにぶら下がっている様な・・・・・それにやたらと息苦しい・・・・。
何だ?
良介は胸にある違和感を確かめるために、胸に手をやる。
ムニュッ!
ん?なんだ?ムニュって?
男の体にはありえない感触な上に、触れた覚えのある柔らかい感触だったような・・・・
主にギンガの体で・・・・・・。
良介は恐る恐る自分の手が触れている箇所を見る。そこには今、自分が着ている
Yシャツを八切らさんとばかりに膨らんでいる・・・・胸・・・・。
またの名を・・おっぱい・・・・。
「な・・・・なんじゃこりゃ〜!!」
松
○優作もビックリするかのような声で叫ぶ良介。「も、もしかしてリョウスケ?・・・・本当にリョウスケなの?」
フェイトは唖然とした表情で目の前の女姓(良介)を見ている。
そこに、
「フェイトちゃん!良介!」
合成獣を片付けてきたはやてが合流した。
「なっ!」
はやてもフェイトの近くにいる女性(良介)を見て、驚愕する。
「えっと・・・・ホンマにあんたは良介なんやな?」
三人とも漸く冷静さを取り戻し、改めて自体を把握する。
そしてはやてが確かめるかのように黒髪の女性(良介)に尋ねる。
「あ、ああ・・・・」
「そ、それにしても・・・・」
フェイトが女性化した良介の姿を改めてマジマジと見る。
本来の良介よりも少し縮んだ身長。
腰の当たりまで伸びた黒い髪。
アルト調のハスキーボイス。
そして自分と同じ・・・・いや、ほんの僅かだが、自分の胸よりも大きな胸。
良介はどこからどう見ても女の姿に変わっていた。
良介自身もフェイトからコンパクトを受け取り、鏡の部分で自分の顔を確認したが、鏡に写っていたのは本来の男の自分の顔ではなかった。
「ど、どうなるんだ俺?・・・・」
良介は声も体も震わせている。そりゃあ、さっきまで男だったのに突然女に性別変換されては戸惑わない訳がない。
「と、とりあえず外に出よう?タッカーの護送もあるし・・・・」
フェイトが最もな意見を恐る恐る言う。
「そ、そうだな・・・・ここにいても仕方がないもんな・・・・」
良介はそう言って立ち上がったが、突然、身長と重心が変わったせいで上手く歩けず、その場に尻もちをついてしまった。
「くっ・・・・」
愛刀を杖代わりにして立ち上がるが、一人で杖をつきながらでは時間がかかってしまう。
そこで見かねたはやてが良介に声をかける。
「良介、私の肩につかまりぃ、担いでいったるわ」
「そうか?すまな・・・・」
良介ははやての顔を見たとたん、表情を強ばらせた。はやての行為は確かに他人から見たら親切心だと思うだろう。しかし、それははやての顔を見ればそうではないと確信を得られる。
なぜならば・・・・・・
はやての目つきが肉食獣に変わっていたからである。しかもそれはタッカーの作った合成獣顔負けの目つきだ。おまけに口元からは少量のヨダレをタレ流している。
はやては目の前にある極上の獲物(良介のおっぱい)に飛びかからんとするおっぱい魔獣になっていた。
「・・・・フェイト、肩貸してくれ・・・・・」
はやての申し出を拒否し、フェイトに頼む良介。
「そんな!なんで!?なんでなん良介!?なんで、私の親切を足蹴にするんや!?私ら家族やろう?」
「はやて・・・・お前、その顔で言われても全く説得力ないぞ・・・・」
「うん。私もリョウスケと同じ意見かな?今のはやて、獣みたいな目をしているよ。それに口からヨダレも出てるし・・・・」
良介もフェイトも互いに引きつった顔ではやてに言い放つ。
「それじゃあ、はやて、タッカーの護送はお願いね」
フェイトは良介に肩を貸し、良介と共に出口へと向かって歩いていく。
「フェイトちゃん・・・・今日ほどフェイトちゃんを怨んだ日はないわ・・・・フェイトちゃんは柔らかく大きなおっぱいやのに、私はこんな中年のオッサンやなんて・・・・」
肩を貸しているフェイトの体には良介の胸が歩くたびに当たる事がある。反対にはやては良介の一撃で意識を失っているタッカーを背っている。
加齢臭のする中年男性の体に密着しなければならないこの状況は、はやてにとっては地獄だった。
フェイトからタッカーの身柄を無事確保したとの報告を聞き、ゲンヤは研究所の玄関口で地下に突入した良介たちを待っていた。
やがて一階の奥からは黒く長い髪をした女の人を肩に担いでいるフェイトと意識を失っているタッカーを担いだはやての姿が見えた。
「ごくろうさ・・・・ん?」
労いの言葉をかけようとしたゲンヤであったが、そこに義息子の良介の姿がない。しかもフェイトが見知らぬ女に肩を貸している。
「良介の奴はどうした?途中ではぐれたのか?それとも道草でもくっているのか?それにその女は誰だ?拘束されていないところを見ると、タッカーの仲間とも思えねぇし、タッカーの奴に拉致でもされていた被害者か?」
そう言ってゲンヤは黒髪の女を見る。
気の強そうな、つり上がった切れ長の目に長いまつ毛
墨のように真っ黒な長い黒髪
そして、
Yシャツの第三ボタンまで外さなければ着られないほどの大きく膨らんだ立派な胸
「なぁにジロジロ見てんだよ?」
女の人がゲンヤを睨む。
「あ、いや、そういうつもりは・・・・と、ところであなたのお名前を聞いても?」
ゲンヤは取り敢えず、目の前の女の身元を調べるために女の名前を聞く。
「おいおい、俺の名前忘れちまったのか?嫌という程顔を合わせている仲じゃねぇか。しかもとっつぁんとは身内だし」
「えっ!?」
女からそう言われ、ゲンヤは狼狽する。それは目の前の女性とは一切面識がないからである。捜査官を務めているため、記憶力には自信のあるゲンヤであったが、過去の記憶に遡ってもやはり目の前の女とは面識した記憶はない。まして身内など・・・・
「リョウスケ、無理もないよ。今のリョウスケの姿は全然違うでしょう?」
「あっ!そういえばそうだったな」
フェイトと黒髪の女がそんな会話をしている中、ゲンヤの耳に聞き覚えのある名前が聞こえた。
「えっ!?・・・・今なんて?・・・・リョウスケって聞こえたが・・・・」
ゲンヤが恐る恐る黒髪の女に尋ねる。
「だから、俺が良介なんだってば!!そもそもこの格好と刀を見ればわかるだろう!!」
確かに女の服装は今日、良介が着ていたスーツだし、手には良介の愛刀を握っている。
「ええええええっ!!」
しかし、いきなり「俺が良介」だと言われてもにわかに信じられず、ゲンヤは驚きの声をあげた。
「つまり、タッカーの作った変な薬液を浴びて女になっちまった・・・・そういうことか?」
「ああ」
ようやく、混乱を鎮めたゲンヤが108部隊の隊舎にて、改めて良介の現状を確認する。
「でも、暫くすれば元に戻るさ。案外お湯でもかければ元にもどるかもしれねぇし」
「なんでそんな確証があるん?」
「あのイカレ科学者が『確実に死ぬ』なんて言ってたくせに俺はこうして生きているんだ。失敗作だったんだよ。あの薬。それに体全体だってきっと女になっているわけが・・・・」
「そんなら、確かめてくればええやん」
はやてに言われてトイレに入る良介。
しばらくして、トイレの前で待っているゲンヤ達の耳に良介の絶叫が聞こえた。
「
NOOOOOOOOO―!! (ノォォォォォォォー!!)」「な、何・・・・?」
フェイトは突然トイレからあがった叫び声を聞いてビックリし、
「ショックやったんやろうな・・・・」
はやてはトイレの中で何があったか大体想像が出来た。
やがて、トイレのドアが開き、中から目の焦点があっていなく呆然とした表情の良介が出てきた。
「リョ、リョウスケ・・・・大丈夫?」
フェイトが心配そうに声をかける。
「ぞうが・・・・」
「ぞう?」
「象さんが!俺の象さんが居なくなっちまったぁ!!」
オブラートに包んではいるが、良介の言う「象さん」が何なのかを察したフェイトとはやては即座に頬を赤く染める。
「って言うか、お前確かめるまで気がつかなかったのか?」
ゲンヤが混乱している良介に対し冷静にツッコミを入れる。
「この無駄にでかいおっぱいのせいで、違和感が皆おっぱいに行っちまって、まったく気がつかなかったんだよ!!」
良介は自分の大きく膨らんだ胸を指差しながら股間の違和感にまったく気づかなかったことを言う。
「はぁ〜もういいや・・・・とりあえず風呂に入りたい」
適応力が強いのか、それとも時間がたてば元に戻ると信じているのか良介はこの件をあっさりと片付けた。そして埃と合成獣のヨダレまみれになった体を不快に思ったのか、風呂に入りたいと言う。
「それならここのシャワー室を使うといい。洗面具も着替えもこっちで用意しよう」
「すまねぇな、とっつぁん。ありがたく使わせてもらうわ」
ゲンヤから洗面具を借り良介は早速
108部隊のシャワー室に向かう。そこで良介はいつものように男性用シャワー室に入ろうとすると、フェイトに呼び止められる。
「リョウスケ、入る場所が違うよ。女性用はこっちだよ」
フェイトは女性用のシャワー室を指差す。しかもその手には良介と同じく
108部隊から借りた洗面具を持っている。「はぁ?何言ってんだよ、フェイト。俺は男だぞ!!お・と・こ!」
男の部分を強調する良介。
「でも、体は女だよね?」
「ふざけんな!そんなことしたら男としての何かが壊れるわ!!しかもお前も一緒に入る気満々じゃねぇか!!余計に入れるか!!」
フェイトが手に持っている洗面具を指差しながら声をあげる良介。
「大丈夫だよ。リョウスケには目隠しして、私がリョウスケの体を洗ってあげるから」
微笑みながら言うフェイト。
そこに、
「ちょっと待った!フェイトちゃん!!その役目はこのはやてさんに任せてもらおうやないかい!!」
はやてが駆け込んできた。
「・・・・」
「・・・・」
そんなはやてに対し、良介とフェイトは無言でしかもジト目ではやてを見つめる。
「な、なんや?二人ともその目は・・・・?」
「だって・・・・なぁ・・・・」
「うん・・・・はやてに任せるとリョウスケの貞操が危なそうだもの・・・・」
「そ、そんな・・・・良介もフェイトちゃんも私を今までそんな目で見ていたんか?」
「「うん」」
二人が同時に頷くとはやてはガーンとショックを受け、その場に
orzの姿勢をとる。その後、フェイトは粘り強く交渉をして、はやく風呂に入りたかった良介は「はやてが入らないなら
OK」を出し、目隠しをした状態で女子シャワー室に入った。はやてはその場で悔し涙を流していた。
「それにしても綺麗な体だね〜」
シャワー室にてフェイトは良介の体を洗いながらまじまじと良介の体をみる。
白い陶器のような肌、筋肉質ではないが、引き締まった理想的なプロポーション、そして見事に実った胸の乳房。
はやてではないが、女になった良介の体は同姓の自分でも羨むくらい綺麗だった。
「うひゃっ!」
フェイトは思わず良介のその熟れた果実を手で揉みしだき、良介は突然胸を揉まれ、悲鳴の様な声を出す。
「はやてが狙うのも分かる気がする・・・・この感触・・・・クセになりそう・・・・」
耳元で囁きながら妙に慣れた手つきで良介の胸を揉むフェイト。
「やっ・・・・やめ・・・・ふぇ・・・・フェイト・・・・や、止めろ・・・・」
妙に艶っぽい声でフェイトに止めるように言う良介。突然胸を揉まれ力が入らないのか、足が少し震えている。
「うふふふ、リョウスケ、いい声で鳴くねぇ・・・・ねぇ、もっと聞かせて・・・・リョウスケの声・・・・」
変なスイッチが入ってしまったのか、フェイトは低く甘い声を出し、良介に迫る。
「や、やめ・・・・やめんか!」
ゴン!!
目隠ししているにもかかわらず、声のした方向と気配からフェイトの位置を読み取り、フェイトの頭に拳骨をくらわす良介。
「痛ったぁ!!」
殴られて正気に戻るフェイト。
目隠しをされており、良介には見えないが、フェイトは涙目になって頭を抑えている。
「もう出る!!」
とうとう良介はシャワー室から出ると言い出す。はやてでは言うまでもなくハズレだったが、まさかフェイトの方もハズレだったのは良介としては予想外だったのだ。
これ以上此処に居れば自分の貞操が危ないし、何か変なモノに目覚めてしまいそうな気がしたのだ。
「え〜もう少しいいでしょう?」
もう少し良介の体を弄りたかったフェイトは不満な様子。
「体も頭も洗ったし、もういいだろう?そんなに触りたけりゃ、なのはの体でも思う存分触って、同衾してろ!!」
「なのはの体もはやての体も触り飽きちゃったし・・・・」
未練がましくフェイトは言うが、良介はそんなフェイトを無視して手探りでシャワー室を出ていった。
しかも何気にフェイトが言った危ない一言をスルーして・・・・。
しかし、良介の災難はまだ始まったばかりであった。
あとがき
女性に性別変換してしまった良介君。
女性化した良介の容姿イメージはマジ恋のヒロインの一人、川神百代をイメージして書きました。
しかし、これはあくまで作者のイメージですので、女性化した良介君の容姿は読者の皆様それぞれのご想像にお任せします。