女難・・・・それは男が女に関することで災いを受ける事・・・・

女難・・・・・・それは女性関係による自身の財産や権力の弱体化・・・・・

権力や財産の弱体化など、良介には無縁であったが、海鳴の町に偶然流れ着き、そこで一癖も二癖もある女性たちと関わり始めたときから良介の女難は始まっていたのかもしれない・・・・・。

そしてそれはこの異世界『ミッドチルダ』に来てもそれは変わらなかった。

 

 

十九話 ジョナンノヒ さらば男の日よ

 

 

魔法が当たり前のように存在し、当たり前のように使われている世界、ミッドチルダ。

そんな魔法が存在する一見平和そうな世界にも人が存在する限り、多くの犯罪者が存在し、多くの犯罪が多発している。

この日の早朝、良介は義父であるゲンヤから依頼を受け、とある犯罪者の身柄確保のため、ある研究所へと向かっていた。

良介の他にもゲンヤから応援を受けたはやてとフェイトも一緒に行動をしている。

お目当ての研究所に入ると、そこは何年も前に廃棄された研究所で、中に入ると埃くさく篭った空気が鼻につく。

歩くたびに舞い上がるハウスダスト。

(こりゃ帰ったら風呂に入らないとな・・・・)

廃研究所を歩きながら良介はそう思った。

廃研究所とはいえ、機材や使用されていたであろう薬品は廃棄されずにそのまま残っており、不気味な雰囲気を醸し出している。

「ふと、思ったんやけど・・・・」

歩きながらはやてが口を開く。

「ん?」

「何?」

「こういう薬品が並ぶ所と言えば、お約束の事故が起きたり、不可思議体験が起こるのが定番やな」

「定番? ・・・・ああ、薬を飲むか浴びるかして子供になったり性別が変化したり、誰かと体が入れ替わったりとか?」

「合成獣みたいな未知の生物が襲いかかって来たり・・・・とか?」

「せや、特に今回のターゲットDrタッカーは生物学研究を専門にしておったらしいからな。油断したらあかんで」

三人は研究所を警戒しつつ、上の階から順にくまなく探したが、今回のターゲットであるタッカーの姿は未だに発見できていない。

搜索をしている内、良介達は一階まで戻って来てしまった。

フェイトが外を包囲している武装隊に通信を送り、ターゲットが外へ出ていないかを確認するが、外部に逃亡した人物は今のところいないとの返答を貰った。

つまりターゲットはまだこの建物内に居ると言うことになる。

「なぁ、この研究所、地下室とかねぇの?」

良介はこの廃研究所をくまなく探したにも関わらず未だに発見できないターゲットに対し、地下室の存在を指摘する。

「う〜ん、地図やとこの研究所には地下室はあらへんはずなんやけど・・・・」

良介の指摘を受け、事前に貰ったこの研究所の地図をはやては何度も確認しながら見る。

「地図に記載されていない秘密の隠し部屋があるとか、ターゲットが新たに作ったとか?」

フェイトが新たな仮説を立てる。

「その可能性は否定できへんな・・・・」

フェイトの仮説を聞き、はやてが外を包囲している武装隊に連絡をとり、武装隊から一個小隊を内部探査に当ててもらい、隠し部屋の調査に当たって貰い、良介たち三人も一階の探査を行い、地下室ないし隠し部屋の搜索にあたった。

 

搜索を開始してから三十分程経った頃、

「ちょっと!全員集まってや!!」

はやての叫び声が聞こえた。

はやての声を聞きつけ、一階を搜索していた武装隊員達と良介、フェイトが集まった。

「八神二佐、何かあったんですか!?」

搜索をしていた隊員の一人がはやてに問う。

「これや」

はやてが指差した先には、表面を床板にカモフラージュさせた小さな扉があり、そこから地下へと続く梯子が伸びていた。

「やっぱり地下があったか・・・・」

良介が地下に続く穴を覗きながら言う。

「せや、ここから逃げたか、若しくは地下に潜伏しとるか・・・・とにかく、地下も搜索する必要があるようやで。何人かはここに残って監視を続けといてや」

「「「「「了解」」」」」

武装隊員をその場に残し、良介たちは地下へと降りた。

 

 

「これはっ!!」

「短時間でよくもまぁ、これだけのモンを・・・・」

フェイトは驚きの声をあげ、はやては感心したように声をあげる。

上の廃墟とは違い地下は現役で使用されている研究施設そのものだった。

「まだいるのか?そのタッカーって奴は?」

「それはわからへんけど、ここは別の出入口がないことを祈るしかないわな」

警戒しながら良介たちは地下研究所の通路を進んだ。

そんな良介たちの様子をモニター越しに伺っている一人の中年の男がいた。

今回のターゲット、ネルソン・タッカーその人である。

「くそっ、管理局の狗どもめ!!もう嗅ぎつけて来やがったか・・・・・ふん、だが、まぁいい君たちには私の作品の成果を試す実験台になってもらうよ・・・・フフフフ」

そう言ってタッカーはモニターから視線をずらし、キーボードを操作し始めた。

 

 

「う〜ん・・・・やっぱり別の出口から逃げ出してしまったんやろうか?」

通路を歩いているはやてが呟く。未だにタッカー本人の姿も自分たちを妨害する何らかの攻撃手段も罠もなく良介たちは地下研究所を進んでいる。

はやてとフェイトの緊張が若干緩んだその時、先頭を歩いていた良介の鼻が獣の様な生臭いを探知した。

「・・・・はやて、フェイト・・・・どうやらお出迎えがきたようだぞ・・・・」

「「えっ?」」

はやてとフェイトが良介の言葉に反応して前方を見ると、

 

グルルルル

 

ガルルルル

 

シャァァァァ

 

前方からはおとぎ話やファンタジー小説に登場しそうな奇抜な姿をした生き物達がゾロゾロと良介達に近づいてきた。

「あ、あれは!?」

「合成獣!?」

「やれやれ、ここはファンタジー動物園か?」

三人が各々の武器を構えると合成獣達は一斉に襲いかかってきた。

 

 

「くッ!!数が多い!!」

フェイトはバルディッシュで合成獣を薙ぎ払いながら言う。

「確かにこのままじゃ、じり貧だな・・・・」

良介も愛刀を振り、合成獣の首をはねとばす。

「良介!フェイトちゃん!ここは私が食い止めるやさかい、二人はタッカーの確保に行ってや!!」

「でも、はやて一人じゃ危険だよ!!」

フェイトははやて一人をここに残すのに反対する。

「私の魔法は元々広域型や、むしろフェイトちゃんたちが傍におったら魔法を思いっきり使うことが出来へん!!」

「わかった。はやて、ここは任せたぞ」

「了解や!!」

「行くぞ、フェイト!!」

「えっ!?ちょっと、リョウスケ・・・・」

良介はフェイトの手をとり、合成獣たちの包囲網を突破した。

 

 

合成獣の包囲網を突破した良介とフェイトはようやくタッカーのいる部屋に辿り着き、タッカーを追い詰めた。

「ネルソン・タッカー!!魔法生物の違法製造・研究の容疑であなたを逮捕します!!」

フェイトがバルディッシュをタッカーに突きつけながらタッカーの罪状を述べる。

「ふん、随分と人間らしい言葉を吐くじゃないか、人形風情が!」

「なっ!?」

人形と言われ、フェイトの表情が硬直する。

「知っているぞ、『プロジェクトFATE』。君はそのプロジェクトの数少ない成功例だそうじゃないか?」

ニヤついた笑を浮かべるタッカーに対し、フェイトは明らかに動揺している。

バルディッシュを持つ手はカタカタと小さく震え、顔色は悪い。

「ここで巡り合えたのはまさに奇跡だ!!『プロジェクトFATE』の成功体と私の合成獣技術が合わさったとき、まさに最強の魔法合成獣が誕生する!!その時、私はあのジェイル・スカリエッティーを越える科学者となるのだ!!ハハハッ」

タッカーがスカリエッティーのような高笑いをしている。

(研究者って言うのはなんでこうも高笑いするのが好きなんだ?)

スカリエッティーとタッカーの行動が被り、良介がそんな事を思っていると、タッカーは笑いながらコンソールを操作し始める。

すると、部屋の壁の一部が壊れ、そこから大型肉食獣と食虫植物を合わせたような大型合成獣が現れた。

「フェイト!!」

「っ!?」

合成獣は動揺しているフェイトを触手であっという間に捕まえ身動きを封じた。

不意をつかれたフェイトは不覚にもバルディッシュを落としてしまった。

「くっ・・・」

「フェイト!!」

「よそ見をしていていいのか?」

「っ!?」

捕まったフェイトを見た一瞬の隙を突き、合成獣の本体が素早く良介の間合いに入り、良介をそのまま一呑みにしてしまった。

「リョウスケ!!・・い、いやぁぁぁぁ」

フェイトの悲鳴がタッカーの部屋に木霊した。

「ハハハハハ・・・・さぁ、これで邪魔者は片付いた。残る局員も私の合成獣の餌にしてやる。その後はタップリ君を可愛がってあげよう。君は私の最高傑作になれるのだよ。光栄に思いたまえ!ハハハハハ・・・」

タッカーが再び高笑いを始めると、突然フェイトを捕まえている合成獣が苦しみ出した。

「お、おい、どうした?」

 

グッ・・・・ガッ・・・・ギャァァァァァ

 

物凄い悲鳴を上げ、苦しみ出す合成獣。やがて合成獣の腹から虹色の魔力光が浮かび上がると、合成獣の腹を引き裂いて良介が飛び出てきた。

「なっ!?」

「リョウスケ!!」

「あ〜あ、俺みたいな不良品を食うからコイツ食あたり起して死んじまったぜ?」

肩に愛刀を担ぎ、ニッと不敵に笑を浮かべる良介。

「ワリィな、家じゃ女房と子供、ついでに口うるさいメイドと妖精が待っているんでな。・・結婚してすぐにアイツを未亡人にするわけにはいかねぇんだよ!!」

そしてその場から駆け出し一気にタッカーとの距離を詰める良介。

「くっ」

するとタッカーは懐から液体の入ったビンを取り出し、良介に向かって投げつける。

「しゃらくせぇ!!」

投げられたビンを良介は走りながら愛刀で真っ二つにした。

ビンを切ったことにより、中に入っていた液体が良介に被るが、良介はそれを気にすることなく、タッカーを追い詰めると喉元に刀を突きつける。

「チェックメイトだ!!・・フェイト!!」

「は、はい!!ネルソン・タッカー!!魔法生物の違法製造・研究の容疑であなたを逮捕します!!」

良介に一喝され、我に帰ったフェイトが再びタッカーの罪状を述べ、タッカーの身柄を拘束した。

「くっ・・・・くっくっくっくっ・・・・ははははは・・・・ハハハハハハ」

身柄を拘束されたタッカーは突然笑い出した。

「なんだ?コイツ?とうとうイカれたのか?」

良介が怪訝な顔でタッカーを見る。

「私はこれで終わりだ・・・・だが、ただでは終わらん!!私の邪魔をした貴様も道連れだ!!」

狂気に満ちた目でタッカーは良介を見る。

「はぁ?」

「貴様が先程浴びた薬液、あれは私が作った新型の毒液だ!!」

「「なっ!?」」

毒液と聞き、驚愕する良介とフェイト。

「まだ動物実験を行なっていない試作品だが、この私が作った薬液だ!!貴様は死ぬ!!確実に死ぬ!!新婚だったんだってな?ご愁傷さま・・・・」

「っ!だまれっ!!」

ニヤついた表情で言うタッカーに良介はタッカーの腹部に一撃を加え黙らせた。

タッカーを気絶させて黙らせると、二人の間に重たい空気が流れる。

「リョ・・「フェイト・・・・」」

フェイトが良介に言葉をかけようとしたら良介に先をこされた。

「フェイト・・・・ギンガとアリサには『すまない。・・許してくれ』と、伝えてくれ・・・・」

「そ、そんな・・・・い、嫌だよリョウスケ。死んじゃ嫌だよ!!」

フェイトが良介にしがみつこうとするが、良介は手でそれを制する。自分の体にしがみついてフェイトに毒液がかかるのを防ぐためである。

「頭の良い科学者様が言ったんだ。・・・・俺は多分、助からねぇ・・・・・・」

「そ、そんな・・・・そ、そうだ!良介一度死んでも蘇ったじゃん!!もう一度あれをやれば・・・・」

「無理だ・・・・奇跡はそう簡単には起こせねぇ・・・・」

「そ、そんな・・・・」

当たりに絶望と悲しみの空気が漂う。

そして、症状が出始めたのか、良介が突然膝をつき、両手で抱え込むように胸部をおえながら苦しみ出した。

「うっ・・・・くっ・・・・・がっ・・・あぁぁぁぁ」

「リョウスケ!・・リョウスケぇぇぇぇ!!」

フェイトの二回目の悲鳴が木霊した。

 

 

「フェイトちゃん!良介!」

ようやく合成獣を全て片付けたはやてがフェイトたちに合流した。

「なっ!?」

そこではやてが見たものは、身柄をバインドで拘束されて気絶しているタッカーと唖然としているフェイト・・・・。

そして見知らぬ、長い黒髪をした女の人だった・・・・。

 

 

あとがき

今回は二次小説の定番、性別変換を書いてみました。

次回からは性別変換してしまった良介君の苦難の日々を書こうと思っています。

補足として、前話で良介が偽名で使った「メロラー13」のメロラーですが、意味はメロンが大好きな事です。

一応ネット上にもそう言う意味で掲載されていました。

では、次回にまたお会いしましょう。




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