十六話 コソダテノヒ おっぱいを巡るチンクの疑問
「こんにちは」
ある日、チンクは宮本家を訪れた。
目的は将来のために、今から子育てを学び、この身で体験するためであった。
ギンガが赤ちゃんを出産してからチンクは暇さえあれば宮本家に赴き、ギンガ、アリサと共に赤ちゃんの世話をしている。
元々世話好きな性格で、ナンバーズ時代からよく妹達の世話をしていたチンクだからこそ、赤ちゃんの世話というものに興味を惹かれたのだ。
「いらっしゃいチンク」
ギンガが、まだ眠っている娘を抱きながら玄関先でチンクを出迎える。
(結婚して、母親になってからギンガ姉様は益々綺麗になられた・・・・)
容姿もさることながら母性愛に溢れているためか、チンクが思っている通り、ギンガは近所でも綺麗で有名な若奥様で、良介も愛妻家として有名になりつつある。
顔馴染み同士で酒を飲みに行くと、良介はよくギンガネタで絡まれる。
「良介テメェ!羨ましいぞコラァ!!」
「ギンガさんみたいな美人妻貰いやがって!!」
「このリア充野朗がぁ!!」
と、まぁこんな感じで、からかいと嫉妬を含まれているが、今の良介にとってはそれを言われるたびに今の幸せを実感している。
チンクが来てからすぐに赤ちゃんは目を覚まし、チンクに天使のような微笑みを返す。
その笑を見て、チンクも自然と微笑む。
「フフ・・今日も元気だな」
ギンガから赤ちゃんを手渡され、壊れ物を扱うかのように赤ちゃんを抱くチンク。
すると、赤ちゃんは嬉しそうに手を伸ばし、チンクの顔を触りまくる。
いまだにチンクの銀髪と眼帯が珍しいようだ。
「そういえば、今日ノーヴェやウェンディは?」
いつもチンクにべったりなノーヴェが今日は珍しく来ていない。
「ああ、今日はウェンディと一緒にジムへ行った」
「ジム?」
「うむ、最近ヴィヴィオがストライクアーツという格闘技を初めてな・・・・ノーヴェがそれを教えているのだ」
「へぇーあのヴィヴィオが格闘技を・・・・」
同じような格闘技をやるギンガにとってあのヴィヴィオが格闘技をやるというのが少し意外だった。
てっきり、母親であるなのはの様な魔砲少女になるものかと思っていたからだ。
「ノーヴェが言うには結構スジがいいらしいぞ」
「それじゃあ、私もスバルもうかうかしてられないわね。・・・・この子も将来やるのかしら?それとも良介さんのように剣士になるのかしら?」
「 ? 」
母親の言っていることがまだ理解できないのか、赤ちゃんは首を傾げるが、ギンガ本人は我が子の頭を撫でながら自分の子供の将来像を想像した。
自分やスバル、そしてノーヴェの様にローラーブーツを履いてリボルバーナックルを装備している娘。
はたまた、
父親の良介のように華麗に剣を振るう娘。
そのどちらもなかなか様になっていた。
「そろそろお昼ご飯にしましょう」
チンクにとって、赤ちゃんとの至福の時を過ごしていると、既に時間は昼時となっていた。
食堂に行くとテーブルの上には既に料理が並べられていた。
内、一つは大皿に山の様な量が盛られている。
これは誰のための料理かはもはや言うまでもないだろう。
「 ? 哺乳瓶が無いようだが、この子は今日の昼は、ミルクを飲まないのか?」
チンクはテーブルの上に哺乳瓶が無いことに疑問を持つ。
「ああ、そうか、今までチンクが来ていたときにはもっぱら哺乳瓶だったわね」
アリサが料理を運びながら思い出したように言った。
「今日の昼は母乳をあげようと思ってね・・・・」
ギンガが赤ちゃんを抱きながら食堂にある椅子に座る。
「母乳?」
聞いたことのない言葉を聞き、首をかしげるチンク。
「まぁ、見ればわかるわ」
アリサの言葉を聞き、チンクはギンガを見る。
チンクが視線をギンガに移すとギンガは突然、着ているシャツと下着をたくし上げて、乳房をさらけ出す。
「っ!?
/////」いきなり胸をさらけ出したギンガに驚くチンク。
そしてその顔は若干赤い。
そんなチンクを余所にギンガは抱き上げた我が子に授乳をさせる。
赤ちゃんはギンガの乳房に口を付け、チュウチュウとギンガのおっぱいをしゃぶる。
「ぎ、ギンガ姉様?
/////」「ん?どうしたの?チンク?」
「いいい、一体何を?
/////」「 ? おっぱいをあげているんだけど・・・・・?」
(お、おっぱい!?・・・・そういえば、八神はやてもよくおっぱい、おっぱいと言っていたが、これのことだったのか?)
チンクが赤ちゃんをよく見ると、赤ちゃんの口元には乳白色の液体らしきものがちらほら見えた。
(これが、母乳か・・・・そして授乳・・・・)
チンクは授乳という初めて見た行為を顔を赤くしながらも興味深く見ていた。
夕方、家に帰ったチンクは姉妹の中でも胸が大きいウェンディの胸をジッと見ていた。
「な、なんスか?チンク姉?」
「いや、何でもない。それよりもどうだ?ウェンディ、久しぶりに一緒に風呂に入らないか?」
「いいっスよ」
こうしてチンクはウェンディと共に風呂に入った。
その様子をノーヴェが羨ましそうに見ていた。
「あたしも一緒に入りたい」
と、声をかければいいのに、こういう時ノーヴェは奥手になりやすくせっかくの機会を逃してしまうことがある。
服の上からでも分かるように、チンクの目の前で体を洗っているウェンディの胸はやはり大きい。
(もしかしたらウェンディも母乳とやらが出るのではないだろうか?)
胸が大きければ母乳が出る。
そう思ったチンクは大胆にも体を洗い終わり、湯船に入ったウェンディの乳房に口を付けた。
「ち、チンク姉!い、いきなり、な、何をするんスか!?
/////」「んっ・・・・ちゅうぅぅぅぅぅ・・・・・出んな・・・・・」
だが、いくら吸ってもウェンディの胸からは母乳が出なかった。
「な、何がっスか?
/////」胸を両手で庇うようにおさえ、顔を赤くし、チンクを見るウェンディ。
「実は今日な・・・・」
チンクは宮本家で見たギンガの授乳行為をウェンディに教えた。
「マジっスか!?ギン姉のおっぱいから!?」
「ああ、それでと思ってな・・・・・」
「びっくりしたっスよ。チンク姉がはやてみたいなおっぱい趣味に目覚めたのかと思ったス」
「はやてか・・・・確かにおっぱいに関してはやては詳しいから何か分かるかもな・・・・」
チンクは顎に手を置き考える仕草をとる。
後日、チンクは早速はやてに会い、おっぱいについて聞いた。
「はやて、おっぱいについて聞きたいことがあるのだが・・・・」
「なんや!チンクもおっぱいの素早しさに気づいたんか!?いやー嬉しいわ!!おっぱい星人の理解者はえらい少なくてな、仲間が欲しかったんよ!!」
「は、はぁ〜」
(なにか違うような気が・・・・)
その後、はやてはチンクにおっぱいの素晴らしさについて延々と語り、チンクは本来の目的を聞くことが出来なかった。
「でな、特にシグナムとシャマルのおっぱいがな・・・・」
(ふむ、シグナムとシャマルか・・・・)
確かに両名とも胸が大きかった。
次にチンクはシグナムとシャマルに接触し、おっぱいについて聞いた。
「シグナム、シャマル、おっぱいについて聞きたいのだが・・・・二人は今でもはやてにおっぱいをあげているのか?」
「なっ!?
/////」「あらぁ・・・・」
チンクのおっぱい発言にシグナムは顔を赤らめ、シャマルは頬に手を当てる。
「実は・・・・」
チンクははやてに聞けなかった母乳について聞いた。
「そ、そういうことだったのか・・・・・」
シグナムはなぜかホッとした様子。
「チンクちゃん、残念ながら、私たちの胸からは母乳は出ないわ。母乳は子供のいる母親から出るものなのよ」
シャマルの言っていることはあながち間違いではないが、説明があまりにも大雑把過ぎた。
(子供のいる母親か・・・・)
チンクがすぐに思いついたのはヴィヴィオの母親である高町なのはとフェイト・テスタロッサであった。
運良くチンクはなのはとフェイトが二人一緒にいるとき出会えた。
チンクは二人を見比べ、なのはの胸を少々残念そうに見た。
「チ〜ン〜ク〜ちゃぁ〜ん〜何か失礼なこと、考えてない?」
こういうことには鋭いなのはが黒いオーラを出しつつチンクに微笑む。
ただし、その笑はとてつもなく怖い。
笑みなのに怖い。
無垢な子供ならば、泣いていたかもしれない。
「そ、そんな事無いぞ」
微笑むだけで戦闘機人であるチンクに冷や汗をかかせるあたり、「エースオブエース」「管理局の白い魔王」の名は伊達ではないということだろう。
「それで話って何かな?」
ようやくなのはの機嫌が治り話すことが再開できた。
「うむ、・・・・なのは、フェイト、二人はヴィヴィオにおっぱいをやったことがあるか?」
「ふぇ!?
//////」「はわっ!?
//////」突然「ヴィヴィオにおっぱい」なんてことを言われ、二人は顔を赤くし、狼狽する。
「ど、どうしたのチンクちゃん?突然そんなことを言うなんて?
//////」「実は・・・・」
チンクは宮本家で見たギンガの授乳行為とシャマルから聞いた情報をなのはとフェイトに話した。
「そうなんだ・・・・」
「シャマルさんとは後でお話しないと・・・・」
フェイトは納得した様子だが、なのはは納得できない様子。
それでもなのはは自分の経験からチンクに授乳行為について教えた。
「そうなのか!?おっぱいが出るのは一時的なものなのか!?」
初めて知った事実に驚愕するチンク。
「そうだよ。赤ちゃんがある程度大きくなるまでの一定期間で、それ以降は出ないんだよ」
「そうなのか・・・・」
真実を知り、少々ガッカリした様子のチンク。
「チンクちゃんも将来、子供が出来たら出るように・・・・なるから・・・・多分・・・・・」
今度はなのはがチンクの胸を見て、微妙な顔つきになる。
「 ? 何だ?高町なのは?何か言いたいようだな?」
チンクが目を細め、なのはを睨む。
「な、なんでもないよ・・・・」
今度はなのはが動揺し、目は泳いでいた。
家に帰り、風呂に入ったチンクは自分の胸を見ながら溜め息をついた。
オットーほどではないが(オットーに対し失礼)、チンクの胸は姉妹の中では小さい方の分類に入る。
「くっ・・・ウェンディやセッテ、ディードとまでは言わぬが、せめて私にもノーヴェ程あれば・・・・」
将来、子供が出来たとき、自分の胸は大きくなっているだろうか?母乳を与えることが出来るのだろうか?と、不安に思った。
後日、チンクがはやてに次ぐおっぱい星人2号になったという噂が管理局内で立ち、噂の出どころを調べたところ、それは、はやてへと行き着いた。
「は〜や〜てぇ〜!! きぃ〜さぁ〜まぁ〜!!」
チンクは鬼のような形相と体の至るとこにスティンガーを装備し、手にはダガーナイフを持って、はやての下に駆け込み、はやてとオハナシをして話をつけた。
後日、はやての部屋で一体何があったのかを両者は今も語っていない。
ただ、チンクがおっぱい星人2号となったという噂はまたたく間に沈静化した。
その影で必死に動き回るシグナム達の働きがあったのはごく一部の人しか知らない。
あとがき
良介君とギンガが結婚後も書き続けようと思い、書いた第一話目、今回はチンクに視点を当ててみました。
今後は様々な人物の視点を描いていきながらドタバタな日常を描いていきたいと思っています。
お付き合いの程、よろしくお願いします。