十二話 ケンリョクシャタチノラクジツ ラクジツノヒ

 

 

ギンガの妊娠が発覚してから数日後、アリサが三提督の一人、管理局法務顧問のレオーネ・フィルスと監査官のオーリス・ゲイズにカミンスキィー親子の不正を記した報告書を提出し、レオーネはカミンスキィー中将の下へ、そしてオーリスは息子のナギの下へ強制監査を行うため、108部隊隊舎へ来ていた。

良介はギンガを精神的、社会的に追い込んだナギをどうしても許す事が出来ないため、オーリスに頼んで今回の強制監査に参加させてもらった。

ちなみにギンガはあれからずっと宮本家で保護されている。

 

「ナギ・カミンスキィー一佐!!」

「やあオーリス君?突然どうしたんだい?そんなに怖い顔をして、せっかくの美人が台無しだよ?」

ナギは自分の執務室でこれから監査されるとも知らずに執務室に入ってきたオーリスに例のキメ顔をし、歯の浮くような言葉をかける。

「ナギ・カミンスキィー、貴方を逮捕します」

「なっ!?」

逮捕という言葉を聞き、ナギは驚きを露にする。

「じょ、冗談はやめたまえ。第一僕が何の罪を犯したと言うのだ?くだらない冗談を言うと君のためにもならないよ。知っているだろう?僕の父が本局の中将だということを」

こんな時にも親の権力をちらつかせるナギ。

しかし、冷静を保っているようだが、冷や汗と言葉使いから動揺が隠しきれていない。

「罪状は、脅迫、婦女暴行、公金横領及び違法賭博の容疑です!!」

逮捕状をナギに突き付け、ナギの罪状を述べるオーリス。

「しょ、証拠は!?証拠はどこにある?証拠も無しに人を勝手に罪人呼ばわりはやめてもらいたい!!」

「証拠ならここにあるぜ」

徹底的に悪あがきをするナギに良介はアリサが纏めた証拠映像を見せる。

そこには今まで、被害にあった女性たちのこと、社会的に潰してきた人達のこと、権力を盾に今まで行なってきた不正行為が全て映し出されていた。

被害者たちの名前や映像はプライバシー保護のため、名前は伏せられ、顔と声にはモザイクと変声がかけられている。

違法賭博の映像ではナギがノリノリの高テンションで違法賭博を興じている姿が映し出されている。

しかもその賭博に使っているのは管理局から支給された公金。すなわち、ミッドや他の管理世界の市民や住民から徴収した税金である。それをカミンスキィー親子は湯水の如く私的に使っていたのだ。

「で、出鱈目だ!!こんなもの全て合成に決まっている!!お、お前達、この無礼な連中をここからつまみ出せ!!」

ナギの取り巻きの部下が、オーリスと良介を部屋からつまみ出そうとしたが、ボンボンの取り巻き如きに遅れを取る良介ではなく、息つく間に取り巻き連中を全員峰打ちで倒す。

「ひっ!!」

「お前はこんなもんじゃあ済まさねぇ・・・・テメェ一人のために一体何人の人間が人生をメチャメチャにされたと思っている?あまつさえ、お前はギンガまでも食い物にしようとしやがって・・・・テメェのせいでギンガがどれ程傷ついたと思ってんだ?」

「う、うるさい!!僕は一佐なんだ!!エリートなんだ!!そのエリートの僕に抱かれたのだからあのバカ女連中はむしろ僕に感謝するべきなんだ!!それに、機械女の一人が壊れたくらいでギャアギャア騒ぐな!!」

「・・テメェ・・・・今ナンつった?」

良介はナギの発言を聞き、怒りで顔を引きつらせながらナギにもう一度、聞き間違いが無いか確認のために言わせる。

「何度でも言ってやる。社会のクズが!!たかが、機械女の一人壊れたから何だって言うんだ?あんな女の代わりなんていくらでもいるじゃないか!!それを一々・・・・」

今の言葉で、良介の堪忍袋の緒は完全に切れた。

どうやら良介の聞き間違いではなかった様だ・・・・。

あのギンガを傷つけたクズ野郎が今、自分の目の前居に居る・・・・・・。

もう我慢をする必要は無い・・・・。

ギンガを始めとし、大勢の人々の人生を権力と言う名の盾と蓑で傷つけたクズを堂々と裁いて良い機会を得たのだ。

ならば何を遠慮する必要がある・・・・。

思いっきりやればいい・・・・。

「黙れよ・・・・クズ」

良介は冷たい殺気を内に秘め、静かに呟いた。

「ヒッ・・・・」

ナギも良介の尋常でない様子に気がつき、声を裏返させて、驚く。

「じゃ、殺すけど、今のが、遺言ってことでいいんだよなぁ?」

愛刀を鞘から抜きながら、ジリジリとナギに滲み寄る良介。

顔には狂気の笑みを薄らと浮かべている。

「ひっ・・・・ぼ、僕に手を出してみろ!!父さんがお前やお前の家族に黙っていないぞ!!」

「残念ですが、貴方の父、レイモンド・カミンスキィー中将はレオーネ法務顧問官に先程、貴方と同様の罪状の容疑で身柄を拘束されました」

「なっ!!」

オーリスの言葉を聞き、最大にして最後の砦である権力者の父を失い、ナギの顔は蒼白になる。

「・・・・だとさ、どうする?お前を守ってくれるパパはもう居ないそうだ」

滲み寄る良介に後退るナギ。

とうとう良介に壁際まで追い詰められると、ナギは突然自分のデバイスを床に捨て、土下座した。

「ぼ、僕が悪かった!!許してくれ!!」

ナギの突然の土下座に歩を止める良介。

それを見たナギはニヤリと口元を歪め、袖に仕込んであったナイフで切りつけてきたが、良介は恐れることなくそのナイフを素手で掴んだ。

ナイフを掴んだ良介の手からは血が流れ、赤い雫がポタポタと床へと落ちる。

「なっ!?」

ナイフを素手で掴んだ良介の行為にナギは驚いた。

その隙を良介は見逃さず、ナイフを持っていたナギの腕に膝蹴りをくらわし、ナギはその衝撃と痛みでナイフを手放してしまった

「っ!?」

ナギから奪ったナイフを良介は放り投げ、床に落ちているナギのデバイスを遠くに蹴り飛ばす。

権力も・・・・そして等々武器も失ったナギは完全に無防備となった。

「救えねぇクズだ・・・・さぁ、覚悟はいいな?クズ野郎!!ジャンクのお時間だぜ!!」

「た、助け・・・・」

「クタバレ!!」

良介の愛刀から放たれる強烈な一撃がナギの体に叩きつけられる。

「殺す」「クタバレ」と言ったが、実際良介はナギを殺しておらず、骨の二、三本をへし折っただけで止めた。

オーリスもこのことを予期しており、あえて止めはしなかったのだ。

もっともオーリス個人としてはこのナギと言う人物は生理的に受け付けないタイプであり、しかも女の敵という点で、このまま本当に殺してしまっても構わないと心のスミで思っていた。

「テメェの様なクズの血が着いたら俺の愛刀が腐るわ!!」

良介は納刀しながら気絶しているナギに捨て台詞を吐く。

倒されたナギと取り巻き連中は担架に乗せられたまま管理局の監査部へと護送されていった。

その様子を108部隊の隊員達が大勢見ていた。

その中には、

「ザマァ見ろ」

「能無しめ!!」

などと陰口を叩き、喜んでいる連中もいたが、そんな連中でさえ、今の良介には不快そのものだった。

「おい、テメェら、なに、『自分達は関係ありません』みたいな傍観者面してんだ? テメェらは追い詰められて傷ついているギンガに対し、何もしなかったじゃねぇか!!その時点でテメェらも同罪なんだよ!!あのクズ連中と同じクズってことなんだよ!!その辺を勘違いしてんじゃねぇぞタコ共!!」

良介の怒気と殺気交じりの声に皆、反論できずに黙り込んだ。

もし、この場で「局員でもないお前に何がわかる!?」などと反論すれば、即座に半殺しにされるのは今の良介の様子を見ればそれは火を見るよりも明らかであった。

「良介の言うとおりだ。父親の俺でさえ、最後はスバルやお前にギンガの事を任せっぱなしだったんだからな・・・・本当にすまねぇ」

ゲンヤは良介に深々と頭を下げる。

「ふん、今日はもう帰る。明日、とっつぁんとギンガと俺の三人で話したいことがある。時間・・開けとけや」

「あ、ああ」

「これでアポはとったからな・・・・忘れるなよ・・・・それとギンガは明日まで俺が預かる。じゃあな・・・・」

今の良介には逆らわない方がいいと本能的に察したゲンヤは明日の話し合いとやらに応じた。

 

 

翌日、ゲンヤの執務室にて、良介、ゲンヤ、ギンガの三人の姿があった。

昨日の怒りを纏っていた表情とはうってかわって良介は真剣な表情である。

「それで話ってい言うのはなんだ?」

早速、話の内容を聞くゲンヤであるが、この面子からゲンヤは何となく話の内容が見えていた。

(良介の奴、どうやらやっとギンガを貰う決心がついたようだな・・・・)

ニヤニヤしたい衝動を必死に我慢して普段と変わらないように振舞うゲンヤ。

「あ、あのね、父さん・・・・」

ギンガが話そうとしたとき、良介が手で止めた。

「良介さん?」

「ギンガ、俺が話す」

「・・・・わかりました」

「とっつぁん」

「なんだ?」

「単刀直入に言う。・・・・とっつぁん・・・・ギンガの腹の中に俺の子がいる」

「んなっ!?」

良介の言葉を聞きゲンヤは石化した。

てっきり定番の「お父さん、僕に娘さんを下さい」と言うのだと思っていたが、事態はその上を更にいっており、いきなりギンガの妊娠から始まったのだから無理もないだろう。

石化したゲンヤを無視して良介は淡々と話を進めていく。

「俺は当然この責任を取るつもりだ、もちろんギンガの腹の中の子供もこのまま産ませる。つまりは・・・・つまりは・・・・」

「・・・・」

ゴクッと良介は生唾を一呑みした後、覚悟を決めてゲンヤに対し言い放った。

「とっつぁん、ギンガを嫁に・・・・俺にくれ!!」

覚悟を決めて言い放ったはいいが言い方が娘を貰う言葉使いではないが、そこは良介らしい。

「そ、そうか・・・・責任をとる・・か・・・・」

良介の言葉を聞き、石化していたゲンヤがようやく元に戻り、重々しく口を開く。そして視線を良介からギンガに向ける。

「それでギンガ、良介はこう言っているが、お前さんはどうなんだ?」

「私は良介さんと・・・・そして、この子と共にこれからの人生を歩みます!」

お腹に手を当てながらゲンヤにはっきりと意志の宿った瞳で力強く言うギンガ。

「そうか・・・・ギンガ、お前さんがそう言うならこれ以上俺から言うことは何もねぇ・・・・」

吹っ切れた表情でゲンヤはギンガに呟くようにして言う。

「そ、それじゃあ・・・・」

「ああ・・・・幸せになれよ。・・・・ギンガ」

「ありがとう、父さん!!」

ギンガは嬉しさのあまり、ゲンヤの首に腕を回し、抱きつく。

「良介!!」

「おう!!」

「ギンガ・・・・娘をよろしく頼む」

ゲンヤは深々と良介に頭を下げる。

「任せとけ、とっつぁん。ギンガも・・・そしてこれから生まれてくる俺の子供も次元世界一幸せにしてみせるぜ!!」

ニッと笑いながらゲンヤに宣言する良介。

「ホントだな?その言葉忘れるなよ?ギンガを泣かしたり不幸にしたら承知しねぇからな」

その後は三人これからのことや生まれてくる子供について話に花を咲かせた。そんな中、ゲンヤは良介の妹分達の事が気になり良介に聞いた。

「それで高町の嬢ちゃんやチビ狸共にはこの事を話したのか?」

「いや、まだだ」

「どうするんだ?」

「・・・・俺から話をつけとく。きっとアイツらもわかってくれるはずだ・・・・」

「そうか・・・・子供が生まれる前、ましてギンガと結婚前に死ぬんじゃねぇぞ良介」

「ちょっ!不吉なことを言うなよ!!とっつぁん!!」

公園での一件を考えればあながち間違いでもないかもしれないが、良介は信じていた。

はやてたちは泣くかもしれないし、怒るかもしれない。それでも最終的には分かってくれる・・・・・。

きっと生まれてくる自分達の子供を祝福してくれると・・・・・・。

 

 

あとがき

ギンガ救済編はこれにて終了。

そしてゲンヤとの話し合いも終わり、婚約までこぎつけた良介君。

でも、まだ結婚式までには間を開けます。

まだ、はやて達とのOHANASHIが残っていますので・・・・

では、次回にまたお会いしましょう。

 




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