十一話 アメノヒノナカノコウフク

 

 

「・・というわけで、ギンガは今、俺の所にいる・・・・」

頭にタオルを乗せ、雨で濡れた髪を拭きながらスバルに連絡を入れる良介。

スバルも必死にギンガを彼方此方探し周っていたからこれでようやく安心できただろう。

公園での告白後、良介とギンガの二人は良介(自分)の家に向かった。

雨で互いにグッショリと濡れた姿で帰ってきたときにはアリサとミヤが物凄く驚いていた。

「本当にありがとうございます。宮本さん。・・・・あの・・・・それで、ギン姉は今どうしていますか?」

「今、アリサが風呂にぶち込んでいる。長時間雨に濡れたせいで体中が冷えきっていたからな」

「そうなんですか・・・・ギン姉、精神的に相当参っていたんですね・・・・」

「ああ、見つけたとき本当に『これがあのギンガか?』と疑いたくなったぐらい弱っていた。・・・・まだ精神的に不安定だろうから、今日は俺の家に泊める」

「ええ、宮本さんの話を聞く限りじゃ、その方がいいかもしれません。お父さんには私の方から連絡しておきます。・・・・ギン姉のこと・・よろしくお願いします」

「ああ、任せとけ」

スバルは良介にギンガを託し、通信を切った。

「ふぅ〜」

良介は髪を拭く手を止め、窓の外を見る。

「ギンガ・・・・」

ムードもへったくれも無かったが、改めて自分が公園でギンガに告白したのだという実感を良介は今も降りしきる雨を見ながら思い出していた。

 

 

「ギンガ、着替えはここに置いておくわよ」

アリサがギンガのために用意した着替えを脱衣所に置き、浴室の中に居るギンガに声をかける。

すると浴室の中から、

「うっ・・うぅぅぅっぅ〜」

ギンガのうめき声が聞こえた。

「っ!?ギンガ!?」

アリサが慌てて浴室に入ると、ギンガは浴室の床に両膝をつき、口元を手で抑え必死に嘔吐を我慢していた。

「ギンガっ!?」

アリサは急いでバスタオルをギンガに羽織らせると隣の洗面所へと向かった。

洗面所でギンガはとうとう我慢できず、胃の中のモノを全て吐き出してしまった。

と、言ってもギンガは行方をくらましてから殆ど、食べ物を口にしていなかったようで、吐瀉物も水か胃液ぐらいな物だった。

「大丈夫ギンガ?」

それでもやはり、嘔吐をしたのだから、心配しない訳が無く、アリサはギンガの背中を摩りながら声をかける。

「は、はい・・・・この所、仕事とストレスで体の具合が・・・・」

「それ、大丈夫なの?マリーの所に行かなくて・・・・?」

ギンガの体調不良を聞き、より一層心配になるアリサ。

なにせ、彼女(ギンガ)は普通の人間ではない。

そのため、専門家に相談した方が良いのでは?と提案するが、

「大丈夫・・です・・・・精神的な・・・・ことですから・・・・」

弱弱しく、自分の体調不良とその原因と思われる事を伝え、其処までは(専門家に相談)しなくても良いと答えるギンガ。

「・・そう?それじゃあ後で私がカウンセリングしてあげるわ。他の人に話すことで少しは楽になるわよ」

それでも、何か自分に出来ることは無いかと思ったアリサはカウンセリングを提案し、

「はい、ありがとうございます」

彼女もアリサのカウンセリングを受ける事にした。

 

ギンガが風呂から上がった後、良介も風呂に入り、その後みんなで夕食を摂ったが、向かい合って座る良介とギンガの空気が気まずいというかぎこちない空気であった。

良介とギンガは相手の様子をチラチラと伺う。そのくせお互いに視線が合うと慌てて逸らす。

アリサは二人のその行動を見て、二人に何があったのか?二人の関係がどう変化したのかを何となくそれを察した。

ミヤの方は、良介とギンガの奇妙な行動に首を傾げていた。

 

 

食後、アリサはギンガを自分の部屋に呼びカウンセリングを開始した。

まず、仕事の悩みとストレスそれから原因不明の体調不良について。

一体いつからなのか?

どういう症状なのか?

やがて、アリサはギンガの体調不良の症状を聞いている内に一つの可能性に辿り着いた。

「・・ギンガ・・・・もしかしたら貴女の体調不良は精神的なものじゃないかもしれないわよ」

「えっ!?」

「これからいくつか問診していくから正直に答えてね」

突然真剣な表情になったアリサにギンガはその雰囲気に飲まれた。

「は、はい」

アリサの問診は前半幾つか外れることがあっても後半はほぼ外さず全て当てはまった。

「・・・・はぁ〜」

問診後、アリサは左手で額を押さえながら、深い溜息をついた。

「えっ?アリサさん?私の体調不良の原因がわかったんですか?」

「ギンガ、ちょっと待ってて・・・・」

アリサはそう言い残し、一度部屋を退室して、24時間営業のドラッグストアへ向かい、そこである物を買ってきた後、再びギンガの待つ自分の部屋へと戻った。

アリサが戻ってくるまでギンガの方としては気が気じゃなく、ソワソワしながらアリサの帰りを待っていた。

そして、待ち人であるアリサが帰って来た。

部屋に戻ったアリサは手にドラッグストアの袋があった。

「ギンガ・・・・驚かず、落ち着いて聞きなさい」

「あ、アリサさん?」

アリサの真剣な表情にもしかしたら自分は知らぬまに重病になっていたのではと不安になるギンガ。

ようやく彼と恋仲になれたのに・・・・

そんな思いを抱くギンガを他所にアリサは問診の結果、辿り着いた可能性をギンガに伝える。

「私の問診の結果、貴女の体調不良の原因はおそらく・・・・・」

「お、おそらく・・・・?」

「これよ・・・・」

そう言ってアリサは先程ドラッグストアで買ってきた物を袋から出し、ギンガの前に置く。

ドラッグストアの袋から取り出され、ギンガの目の前に置かれた薬の箱には大きくこう書かれていた・・・・。

 

『妊娠検査薬』

 

「・・・・・」

目の前に置かれた箱を見たギンガは目を見開き硬直。

「・・・・ま、まぁ・・・・その・・・・おめでとう・・・・・」

固まるギンガにアリサは気まずいながらも一応祝福の言葉をかける。

「あ、あのアリサさん・・・・本当に・・・・私・・・・妊娠を・・・・?何かの間違いじゃあ・・・・」

震える声でギンガはアリサの問診結果が間違いないのか確認する。

「私の問診の結果ではそうなるわね。ただ完璧な確証がないからそれを買ってきたの」

「で、でも、私は人間ではなく・・・・その・・・・戦闘機人・・ですし・・・・」

ギンガはまだ自分が妊娠した事実を受け入れられなかった。それは自分がただの人間ではなく、戦闘機人という特殊な人種に当てはまる存在のためであった。

「ああ、それなら問題ないわ。以前、マリーに聞いたのだけど、あなたたち戦闘機人の機械部分の役割はリンカーコアの制御と肉体強化のためのものだから、それ以外は普通の人間と変わらないのよ。だから妊娠・出産機能については問題ないはずよ」

「でも・・・・」

やはり自分が妊娠したのだと煮え切らないギンガ。

「疑り深いわね・・・・まぁ、検査結果を見ればわかるでしょう?」

二人は化粧室(お手洗い)へと入り、早速検査を行う。

そして検査の結果・・・・・・

「反応は・・・・陽性ね・・・・ギンガ、やっぱりあなたは妊娠しているわね。詳しく知りたいなら明日にでも病院にいけばわかるわ」

妊娠検査薬を見たアリサが陽性である事を伝え、ギンガにその結果を見せる。

「・・・・・・」

ギンガの妊娠は確信から確証へと変わった。

妊娠が確定したギンガは検査薬をジッと見つめていた。

 

 

再び部屋へと戻ったアリサはまず、お腹の子の父親が誰なのかをギンガに聞いた。もっともアリサには何となく予想がついていたが・・・・・。

「それで、お腹の子の父親はやっぱり・・・・・」

「・・はい・・良介さんです・・・・・」

アリサの質問に俯きながら答えるギンガ。

夕食の時の空気から良介とギンガが恋仲になったのではないかと察していたアリサではあったが、事態はアリサの予想を上回っており、もはや呆れるしかなかった。

ギンガの方としても自分が知らぬ間に重病になっていたのではないかと、心配したが、アリサの話と目の前の事実を知る限り、重病ではなかった。

しかし、重病ではないものの、今回の結果はどうリアクションして良いのか分からない。

重病では無かったのだから、本来ならば喜ぶべきなのだが、その反面、突然自分は妊娠していたなんて言う事実をそう簡単には受け入れられなかった。

「あのバカ、あっちこっちでフラグを立てるけど、とうとう妊娠までさせたか・・・・」

ギンガの妊娠の事実を知り、アリサは呆れた様子で言う。

まぁ、確かに良介はこれまで様々な面倒事に巻き込まれたり、首を突っ込んだりしては、その事件に関わった女性に好感を抱かれてきたが、誰一人と肉体関係まで発展する事は無かった。

しかし、今回のギンガとの関係は唯一の例外となった。

まぁ、夕食の二人の様子を見れば、恋仲になったのは確実なので、恋人たちの行きつく先の出来事が少し早まったものだとそう割り切ったアリサだった。

「あ、あの・・・・このことは良介さんには・・・・」

ギンガは気まずそうに言う。

「あら、どうして?」

意外そうにアリサはギンガに尋ねる。

「その・・・・なんだかアリサさんやなのはさん、はやてさん達に申し訳なくて・・・・明日にでもマリーさんに頼んで、お腹の子を堕ろして・・・・」

中絶をするというギンガに対してアリサは、

「ギンガ、貴女それ本気で言っているの?もし、本気で言っているなら良介はマジでキレるわよ」

と、声を少し低くし、脅すような感じでギンガに言う。

「でも、アリサさんやなのはさん達が良介さんのことを・・・・」

良介から告白されたとはいえ、未だにその実感がなく、アリサやなのは達に対し、ギンガは負い目を感じていた。

特にアリサに関しては、洗脳されていたとはいえ、自分が良介を殺したにも関わらず、アリサは決してギンガを攻めることはなかったからである。

事実、良介の葬儀の際、ギンガは、アリサ、はやて、なのは、フェイト、ヴォルケンリッターの面々に、涙を流しながら何度も頭を下げて謝った。

普通ならば謝って済まされる事ではない事、

謝ったぐらいで許される訳でない事を知りながらも、ギンガは何度も頭を下げ謝り続けた。

ギンガの謝罪にまずはやてが、「ギンガは何も悪くない。悪いのは、ギンガを預かりながらも敵の手中に落とす事にしてしまった私や・・・・私がナカジマ三佐に無理言ってギンガを六課に出向させたばかりに、ギンガには辛い思いをさせてもうた・・・・ギンガに一生消えへんトラウマを植え付けさせてしまったのは私の責任や。ホンマすまんかった」

と、はやての方が深々とギンガに頭を下げた。

次になのはが、あの時、もう少し自分が早く現場に辿り着いていれば、ギンガを救う事が出来たのに・・・・と、なのはの方もすまなそうな顔をし、ギンガに謝罪した。

アリサ、フェイト、ヴォルケンリッターの面々は、ギンガを救う事、それは良介自身が選択した事だ。

むしろ、お前を助けるために命までかけたのだ。

ギンガ貴女はそこまで思われていたのだ。

私たちからしてみれば、ギンガは幸せ者だったと思う。

だから、良介の死に関して貴女がそこまで、私たちに対し、深い罪悪感を抱かなくてもいい。

良介もそんな事はきっと望んではいない。

そういった事をギンガに言ったが、ギンガは知っていた。

誰も居なくなった葬儀会場で、アリサが良介の眠る棺にしがみつき泣いていた事を・・・・。

自分を含め、皆が深い悲しみに包まれた事を・・・・。

恐らく皆、自分(ギンガ)の前では強がってはいるが、夜はきっと、自分同様枕を濡らしているのだろう。

気にするな・・・・自分よりも良介と所縁の深い人たちにそんな事を言われ、「分かりました」と、言えたり、簡単に割り切ったりするほど、ギンガは図太い性格ではなかった。

それは良介が復活する日まで彼女の精神を傷つけ、引きずらせた。

そして良介が復活し、皆はその悲しみは無くなったのだが、皆が深い悲しみに包まれた事実は変わりない。

それを作った元凶の自分が妊娠して・・・・それも良介の子供を孕み、生むなど持ってのほか と、ギンガ本人はそう思っていた。

だが、アリサはそんなギンガの気持ちを知ってか知らずか、ギンガに自分と良介との関係を、良介がなのは達をどう思っているのかを伝える。

「私は良介を恩人として慕っているだけ、そして当の本人は私を助手、なのは達のことは妹ぐらいにしか思ってないわ。それに本気で良介をモノにしたいならちょっと強引な手段でも使わないとアイツは簡単には落とせないわよ」

まぁ、アリサの言う通り、なのは達は今まで曖昧な感じで良介にアプローチしてきたので、悪ふざけか冗談として見てもらえず、自分(良介)にとって妹的存在から抜け出る事が出来ず、

反対にヴィータやシャマルはアプローチが過激すぎて、本人たちが知らぬ間に自然と距離を置かれていた・・・・。

「良介争奪戦の勝負に貴女は勝って、なのは達は負けた。ただ・・それだけよ。それにあの事は皆ちゃんと割り切っているわ。今更グチグチ言う事はないわ。もし、そんな事を言う人が居れば、それは必ず良介の逆鱗に触れるわね」

アリサが言うあの事とは、良介がギンガの手にかかって命を落としたことを指す。

しかし、その事を本人の前で堂々と言う程、アリサは性根が悪くはない。

だからこそ、「あの事」とぼかして言ったのだ。

その事はちゃんとギンガ自身もちゃんと理解している。

それにあの事は良介とギンガの二人の問題なのだ。

ギンガの妊娠を知って、悔しさや嫉妬であの事に横やりを入れようものならば、「部外者が口出しするんじゃねぇ!!」と、良介はそう言うだろう。

「随分・・辛辣に言いますね・・・・」

「現実主義と言って欲しいわ。それでどうするの?もし、言うのが辛いのであれば私から良介にさりげなく言うけど?」

「いえ、私がちゃんと伝えます。これは・・私と・・良介さんの問題・・ですから・・・・」

「そう・・・・頑張ってね・・・・ギンガ」

アリサの声援を受け、ギンガは良介の部屋へと向かった。

良介の部屋へと向かうギンガをアリサは微笑みながら見送った。

(アイツはバカだけど、大切なモノを守るためならば、それこそ命をかける男だもの。それはギンガ、貴女自身がよく理解している筈よ。だから、きっとギンガ。貴女と自分との間に出来た子供だって認知する筈よ。まぁ、もし認知しなければ、良介。アンタを社会的に抹殺するけどね・・・・)

アリサは万が一、良介が自分とギンガとの間に出来た子供を認知しなければ、良介を世間的に抹殺する算段を考えた。

彼女が考えを巡らせ、ニヤッと笑みをこぼした時、自分の部屋に居た良介は一瞬とんでもない悪寒に襲われた。

 

 

夕食後、良介は自分の部屋でまったりと夜の一時を過ごしていた。

ギンガもだいぶ落ち着いてきた様だし良介も一安心だった。

先程、物凄い悪寒に襲われたが、気のせいだと思う事にした。

そう思っていた時、

 

コン、コン

 

と、良介の部屋のドアをノックする音がした。

「あの・・・良介さん・・・・」

「ギンガ?」

「は、はい・・今、よろしいでしょうか?」

「ああ、構わないぞ」

「失礼・・・・します・・・・」

どこかよそよそしい様子で良介の部屋へと入るギンガ。

「どうしたギンガ?」

そんな様子に気づかず、ギンガを招き入れる良介。

「あの・・良介さん・・その・・大切な・・お話がありまして・・・・」

「ん?なんだ?」

「あの・・・・その・・・・実は・・・・//////

ギンガは俯き、頬朱に染めながら、自らのお腹・・下腹部に両手をソッと当てて・・・・

「その・・実は・・・・私のお腹に赤ちゃんが・・・・私と良介さんの子供が・・・・います・・・・//////

先程出た妊娠検査薬の結果を良介に伝える。

一方、ギンガからの衝撃的な言葉を聞き、妊娠を知ったときのギンガ同様良介も固まる。

 

妊娠?

 

ギンガが?

 

良介の頭の中で思い当たるのは当然あの夜の出来事・・・・。

 

まさか、たった一回で!?

 

いや、しかしそれ以外考えられない・・・・。

 

あの時抱いたギンガは確かに処女だった・・・・。

 

あの後、身持ちが堅いギンガが自分と関係を持った後、直ぐに他の男と関係を持つとも考えられない。

 

それに真面目なギンガのことだから嘘を言っている様にも見えない。

 

そもそもギンガがそんな嘘をつく理由もない。

 

その根拠は自分とギンガは既に恋仲となった訳だし、他の女を寄せ付けないために子供が出来たなんて嘘をつくような卑怯なマネをギンガは決してとらない。

ギンガの妊娠と言う衝撃的な言葉と事実を知り、固まる良介を余所にギンガは話を続ける。

「あの・・・・良介さん・・・・もし・・・・もし、良介さんがその・・・・迷惑だと言うのであれば・・・・明日にでもマリーさんに頼んで中絶してもらいます。・・でも・・・・でも、その後も良介さんには変わらなくお付きあいをして欲しいと・・・・思いまして・・・・・・・」

顔を俯かせ、か細い声で良介に今後も変わらぬお付き合いをお願いするギンガ。

ギンガ自身でも自分の言った事、思っている事は厚かましいことだと自覚はしている。

それでもようやく良介から直接、愛していると言われ、告白をしてもらったのだ。その幸せをギンガはどうしても逃したくはなかった・・・・・。

たとえお腹の中にいるまだ見ぬ自分の子供を犠牲にしてでも・・・・。

そんなギンガに対し、良介の方はというと、

(なっ!?中絶・・・・中絶だとぉ!?)

中絶という言葉を聞き我に帰った良介。

それと同時にギンガの妊娠を良介自身も認めた。

「ギンガ、お前は俺がそんなことを望むと思っているのか?自分の子供を殺すことをこの俺が望むと思っているのか!?・・見くびるなよ!!ギンガぁ!!」

命に関することには今までの経験で良介は過敏になっていた。

それにあの世の境目でクイントに会い、自分はギンガを託されたのだ。

ギンガが妊娠?

上等だ!!

子供が生まれるのが少し早くなっただけじゃないか。

何の問題もない。

そう思った良介はギンガに思いを伝える。

「むしろ勝手に中絶なんてバカな事をしたりしたら俺はお前を即座に捨てるぞ・・・・!!お前と子供の一人や二人ぐらい十分に養っていけるわ!!」

「そ、それじゃあ・・・・」

良介の言葉を聞き、バッと顔をあげるギンガ。

「ああ・・・・このまま産んでくれ・・・・俺の子を・・・・俺達の子供を・・」

良介は自分には似合わないが優しい顔でギンガに自分の子供を産んでくれるように頼む。

「・・ありがとうございます。良介さん」

ギンガは嬉しさのあまり良介に抱きつく。良介も反射的にギンガを抱きしめ、二人はしばしの抱擁に浸る。

 

 

長い抱擁の後、二人はベッドの上に腰掛け、良介はギンガのお腹に耳を当てて、優しくギンガのお腹を撫でる。

「こ、ここにいるんだよな?俺の子が・・・・俺とギンガの子供が・・・・?」

「はい・・・・//////

「早く会いてぇな。・・男かな?女かな?今から楽しみじゃないか?ギンガ・・・・」

「そうですね」

「女の子だったらお前にそっくりになるんだろうな・・・・」

ギンガとクイントの親子の容姿上、もし、ギンガのお腹の中の子が女の子ならば、その容姿はギンガそっくりになるだろう。

「男の子なら良介さんそっくりになるかもしれませんね」

ギンガが微笑みながら言う。

「早く生まれて来い。俺がお前の父親だぞ」

お腹の中にいる我が子に話しかける良介。

そんな良介を優しく見つめるギンガ。

その構図はまさに新婚の夫婦そのものだった。

 

ギンガのお腹を撫でていると、良介の脳裏にはやて達の顔が思い浮かんだ。

彼女たちにはすまないと思っているが、今はこの幸せな時間を感じさせてくれと良介は願った。

 

後日、ギンガと良介は病院へ行き、ちゃんとした検査を行なった所、やはりギンガは妊娠していた。

しかし、妊娠初期段階だったので、まだお腹に居るのが男か、女かは判断できないとの事だった。

だが、それでも良い。

ギンガのお腹の中には今、自分の子供が居る・・・・。

今はその事実だけで満足だった。

改めてギンガの妊娠を知ったとき、良介は周囲の視線も気にせず、高テンションでギンガを抱きしめ喜んでいた。一方、抱きしめられたギンガの方はというと、嬉しさと恥ずかしさで終始顔を赤くしていた。

 

 

あとがき

祝・ギンガ懐妊おめでとう。

色々辛いことがあったのだからこれぐらいの幸せがあってもいいよね?

ミッドの自転周期が24時間かどうなのかわかりませんが、地球と似たような分明なので、自転周期も24時間と設定しました。

妊娠検査薬を買ったアリサですが、作者の中では「こういう場合コソコソしていると恥ずかしいのよ!堂々としていれば何の問題も無いわ」とこんな感じで鋼の女の印象を持つアリサに買って来てもらいました。(それでもやっぱり乙女ちっくなところもあると思います。)

次回でギンガ救済編を終わらせます。

では次回またお会いしましょう。




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