聖王教会。
第12管理世界 ベルカ自治領を本拠地とする、伝説の人物【聖王】を崇める宗教組織。
その規模は間違い無く、管理世界一である。

さて、一大観光地でもある教会の敷地の周囲には、当然の如く町があり、観光に商売と、大勢の人で賑わっている。
中でも【教会中央通】と呼ばれるそこは、その名の通り、教会本部に向かって真っ直ぐに続く道。
当然、人の多さも一入である。

「はいはーい!!退いて退いて〜ッ!!」
その人込みを巧みに掻き分けて、腰程まである黒髪と眼鏡、教会のシスター服といった容貌の女性が駆け抜けた。
彼女は何故か、幼い少女を肩車している。
少女は迷子であった。一人で泣いていた所を、偶々通りかかった彼女が見つけ、その親探しの真っ最中である。
「どう、お母さんはいた?」
「ううん、いない……」
「よし、じゃあ今度はあっちよ!!」
「お〜い、シスターッ!」
中央から脇に行こうとした所に声が掛けられた。行きかけた足を止めると、土産物屋の主人が手を振っている。
「何ですか〜?今、手が離せないんだけど〜っ?」
「もしかして迷子の親、探してるのかい〜?」
「そ〜ですよ〜っ!!」
「さっきうちに、子供捜してるって親が来たぞ〜ッ!」
「っ!?本当ですか〜!?どっちに行きました〜ッ!?」
「噴水広場の方に行ったぞ〜!」
「ありがとうございま〜すッ!!」
店主に手を振って、シスターは噴水広場に向かった。







「シスター、本当にありがとうございました!!」
「いえ、見つかって良かったです」
少女の母親に何度も頭を下げられ、シスターは逆に恐縮する。
「お姉ちゃん、ありがとう!」
「どういたしまして。もう、はぐれたら駄目よ?」
「はーい」
元気に手を振る少女と何度も頭を下げる母親に背を向けて、シスターは走り出した。
「早く行かないと、またシスターシャッハの小言を聞く事になっちゃう〜ッ!!」
中央通まで戻り、真っ直ぐ教会に向かって走って行く。
「シスター!さっきのお嬢ちゃん、親御さんは見つかったかい?」
「えぇ!大丈夫よーっ!!」
土産物屋の主人に、走る足を止めぬまま、手を振って答える。

「あー、シスターだ!!一緒にあそぼーッ!!」
「ゴメンね〜!教会に戻らないといけないから、また今度ねーッ!!」
脇道で遊んでいる子供達に手を振って、更に走る。

「あら、シスター。また遅刻ですか?」
「何時も遅刻してるみたいに言わないで下さいっ!!」
「おや、違いましたか?」
「ぬぅ……違いますよーだッ!!」
ベンチに座る老夫婦に厳しいツッコミを入れられ、なんとも渋い顔をする。
しかし、彼女はそのまま捨て台詞を吐いて走っていった。


教会正門は観光客もいるので、専用門を通って教会に入る。


廊下をパタパタと走っていると、向こうから別のシスターがやって来た。
「あ、シスターリュネ!シスターシャッハは!?」
リュネは彼女を見つけると、いつもの事かと苦笑いした。
「先程来られたお客様を送られて、今は不在よ。良かったわね、怒られなくて」
「うぅ、何も言い返せない………」
彼女の遅刻は前科も重なり、最早教会内外に知れ渡っている。端から言い返せる要素など無いのだ。

リュネは軽く凹んでいる彼女の乱れた髪を手で梳いてやりながら、思い出したことを口にした。
「そうそう。騎士カリムが、あなたが戻ったら、自分の所に来るよう伝えてくれって」
「うわっ、シスターシャッハを飛び越えて、騎士カリムのお説教タイム!?」
「そうでない事を、聖王様に祈っておいてあげるわ。頑張ってね、アリス?」
リュネは笑いながら、行ってしまった。

「………薄情者」
既に姿の見えない友人に毒を吐きつつ、アリスは乱れた服装を整える。

シャッハが居ないとなれば、急ぐ事はない。乱れた息も整えつつ、ゆっくりと歩いていった。





   魔法少女リリカルなのはStrikerS ファントムアリス

         第一話  “亡霊”の修道女





丁度息も整った頃、アリスの前には立派な木製のドアが現れた。
手を持ち上げ、コンコン、コンコンとドアをノックする。少しして、中から声が返ってきた。
(はい、どうぞ?)
「失礼します」
部屋の主の許可を得て、ドアノブを回す。僅かに音を立てながらドアが開かれていった。

室内は高級そうなカーペットが敷き詰められ、その上に古めかしい本棚や、カップが置かれたままの、来客用のテーブルセットが置かれている。

ドアの正面には年季の入った、やはり高級感のある執務用の机と椅子。
そしてその椅子には、ブロンドのロングヘアーの女性が座っていた。
彼女は聖王教会の武装戦力【教会騎士団】の騎士、カリム・グラシアである。

「アリス・ノーランド、御呼びとあって参りました」
「来てくれましたか、シスターアリス」
「それで、私を呼ばれた理由は何でしょうか?」
アリスはドアを閉じると、カリムの前まで進み出た。カリムはデスクのスイッチを押し、背後の窓にカーテンを掛ける。

薄暗くなった部屋の中で、カリムは空間モニターを展開させた。
「これは、戦闘の映像……リアルタイムですか?」
「いえ、これはつい先程終わった戦闘の映像です……機動六課の初陣、のね」
「機動六課……例の“予言”に対する部隊……しかし、随分と危なっかしい……うわ、飛び降りた!?
……おっ?おぉ!?ドラゴンだ!!凄い!良いな〜、便利そうだな〜」
逐一変わる戦局にコロコロと表情を変えるアリス。それを見て、カリムも苦笑する。
その後、別部隊の戦闘の様子を見終え、カリムは再びカーテンを開けた。
「―――それで、貴女の目から見てどうかしら?率直な意見を聞かせて欲しいの」
「そうですね……流石に、危なっかしい所が多いですね」
カリムの問い掛けにアリスは、今迄とはうって変わって真剣な表情をする。
その瞳は、外見から推測される年齢よりも大人びて見える。
「今回、制空権確保に隊長陣が動きましたが……潜在能力はともかく、新人達だけで動かなければならないというのは、余り好ましくないですね」
アリスがそう答えると、カリムも頷く。

現状を鑑みれば仕方ないと言えるが、経験の無い隊員だけで戦闘行動をしなければならないというのは、やはり異状と言える。

こういった不安は、積み上げた時間が解決していくだろう事ではあるが。
「でも、問題はそれだけでは無い……と言ったら?」
「どういう事です?」
アリスが問うと、カリムは深く嘆息しつつ背凭れに寄り掛かった。ぎぃ、という音がやけに大きく響く。
「隊長陣は優秀、隊員達も潜在能力は高い。バックスも新人ばかりながら有能で、設備も充分」
「確か、地上本部との摩擦が出来る限り起こらないように、新人を中心に構成しているんでしたね?」
「えぇ……でも、それがまた、違う弊害を生んでいるとしたら?」
「……経験者不足による問題の発露ですね」
カリムは頷いて答えた。

本来、部隊とは新人とベテランとのバランスで構成されるべきものだ。
それは突発的に起こる事態に際し、経験からの対応が必要とする事が多いからだ。

だが、この機動六課はそれが無い。トップはどれほど優秀でも、二十歳に満たない少女達。
新人と接する機会が一番多く、イコール問題にぶつかる事が多い場所に、新人隊長ばかりでは話にならない。

「その辺りは、副隊長達が付いてくれていますが……」
「どちらも八神部隊長の個人戦力。問題に対して、平等に対処出来るかどうかが不安だと?」
「余り言いたくはないですが……どちらも、やはり情に厚いですから」
副隊長を務める騎士達は、部隊長の家族であり、隊長達との付き合いも長い。その辺り、本当に公平に判断を下せるかを疑問視しているようだ。
「……それで、その事と私が呼ばれた事と、どういう関係が?」
カリムの懸念は理解できる。“予言”に対する為に創られた精鋭部隊。その運営は、滞り無く行われなければならない。

だが、それとこれとがどう繋がるのか、アリスには解らなかった。
カリムは凭れていた体を起こすと、引き出しから一枚の紙を取り出した。
「シスターアリス。貴女には、機動六課へと出向してもらいたいです」
「私が機動六課に!?」
アリスが思わず聞き返すと、カリムは頷いて返した。
「貴女には、私に変わって六課の運営をサポートして欲しいのです。それに六課に行く事は、貴女の目的にも合致すると思うのだけれど……?」
「まぁ、確かにそうですけど……でも、大丈夫なんですか?唯でさえ地上本部に睨まれているのに……」
「それでも、それだけの価値があると思うわ。地上本部……レジアス中将に睨まれているのは今更ですもの。
それに、あくまでも『聖王教会』から『新人の修道女』を派遣するだけの話です」
カリムはそう言って微笑む。どうやら、それで押し切る腹積もりらしい。

アリスの手中の紙が、フワリと浮かんでクルクルと丸まっていく。そしてリボンで縛られた。
「了解しました。アリス・ノーランド、機動六課へと行って参ります」
そう言って恭しく頭を下げると、アリスは部屋を後にした。


「あの子達をお願いします………《アリス・ザ・ファントム》」
アリスの消えたドアを見つめ、カリムが呟いた。













翌日の午前。駅のホールにアリスは降り立った。
「う〜ん……体が、こった〜っ!!」
人目も憚らず、思いっきり背伸びをする。シスター服の、ましてや胸部がとても豊かな女性がそんな事をすれば、否応無く視線を惹いてしまう。

だが、アリスはそんな事を気にもせず、腕を下ろす。脇に置いたバッグを改めて持ち上げた。

都市レールウェイに乗り、首都中央部に向かう。
「首都クラナガン、か……久しぶりだな〜」
流れる町並みにそう言いつつ、アリスの表情は何処か寂しさを孕んでいた。

駅に着き、降り立つと、人の流れの多い道を進んでいく。
「えっと、機動六課は湾岸地区に隊舎があるんだったっけ……?」
地図を見ながら、道順を確認する。
首都クラナガンは地上本部の在る中央区画、そこから東西南北の区画に分けられている。
機動六課の隊舎は南区画にある。現在地からするとかなり遠い場所のようだ。
だが、今日中に到着すれば良いのだから、急ぐ事はない。と、アリスは再び歩き出した。

道すがらで買ったアイスを食べつつ、久しぶりの町を眺めていく。
「キャアアアアアアアッ!!」
と、突然の悲鳴が鼓膜を叩いた。
何事かと思っていると、更に今度は道の向こうで爆発が起きた。

「魔力反応!?ちょっとちょっと、何が起きてるの!?キャアッ!!」
矢継ぎ早に起こる事態にアリスが面食らっていると、逃げ惑う人並みの中で何かに引き込まれた。

「動くなッ!!」
気が付けばアリスの首に野太い腕が回され、目の前には何人もの武装局員。

(あ〜、人質かぁ……油断したなぁ〜)
アリスは自分の間抜けさに呆れてしまった。

そうこうしている間に周囲は局員に囲まれ、逃げ場は完全に断たれた。
「もう逃げ場はありませんっ!人質を解放して投降しなさいっ!!」
包囲から一歩踏み出すのは、バリアジャケットを身に纏い、左腕にホイールの付いたナックルを装備した少女。
「うるせぇッ!!この女を殺されたくなかったら、全員退きやがれ!!」
「クッ……!」
「オラっ、退きやがれ!!」
手にした杖を振るい、局員を追いやろうとする犯人。それに包囲網は僅かばかり下がらされる。

「………はぁ」
アリスは深々と溜め息を吐き、頭を振った。急いでないとは言っても、こんな所で人質になっている気は更々無い。

「おら、退けってんだ―――がッ!?」
途端、犯人が顔を歪める。何が起こったのかと誰もがいぶかしんだ中、一人だけがそれに気付いていた。
(肘が……突き刺さってる!?)
大振りした際、がら空きとなった脇腹に、見事に肘が突き刺さっていた。
格闘術を使う彼女には、それがどれだけ見事な一撃かがすぐに分かった。

アリスは自分を押さえる腕を外すと、すぐさま前方に踏み込んだ。
「グランワンド、ウィップモード!!」
“Alright”
右手中指の指輪が光ると、その手の中に黒い鞭が出現した。振り向き様に振るってやると、唸りを上げて翻った。
「スタンヒット!!」
“Stun Hit”
鞭に電撃が走り、犯人に当たった瞬間にスパークした。
「グァアアアアッ……!?」
全身を走る電流に犯人がガクガクと震え、そして崩れ落ちた。

「全く、シスターを人質に取るなんて……神をも恐れない所業ね」
鞭は再び指輪へと戻り、アリスはスカートの埃を掃った。

その一瞬の出来事に、呆気に取られる局員達。
「あ……か、確保!!」
その一声で我に返った局員達が、慌てて犯人を押さえに掛かった。


「怪我はありませんか、シスター!?」
蜂の巣を突いたような騒ぎの中、一人の局員がアリスに向かってきた。BJを纏った局員だ。
「えぇ、大丈……っ!?」
その顔を間近で見たアリスは、驚いて目を見開いた。
「………どうしました?」
「え……っ?いえ、ちょっと知り合いに似ている気がしたの………あなたは?」
「自分はミッド地上本部陸士108隊所属、ギンガ・ナカジマ陸曹です。お見事な腕前でした、シスター」
そう言って局員――ギンガ・ナカジマがスッと敬礼する。
(ギンガ・ナカジマ……そう、この子が……)

アリスは納得したとばかりに、優しく微笑む。
「聖王教会シスター、アリス・ノーランドです。宜しく、ギンガ陸曹?」
「―――はい、シスターアリス!」
アリスが差し出した手をギンガはガッシリと握り返した。
「ッ……痛っ!?痛い痛い、痛い〜ッ!!」
その莫迦力に、アリスはすぐに悲鳴を上げたのだった。






アリスは簡単な事情聴取を受ける為、ギンガに伴われて108部隊の隊舎へと向かう車中にいた。
「108部隊の隊舎って……結構、遠いのね?私、今日中に行かなければならない場所があるんだけど……」
「すみません。お時間は取らせませんし、終わり次第、送って貰えるように手配しますから。
ちなみに、どちらに行かれる予定だったのですか?やはり、聖王教会の支部ですか?」
「いいえ。湾岸地区にある、機動六課という部隊の隊舎です。教会本部から派遣されて来たんです」
「機動六課!?でも、どうして六課……いえ、本局の地上部隊にシスターが……?」
「お恥ずかしい話、私はシスターとしてはまだまだ半人前。ですから教会を出て、多くの人と触れ合う事で修行とする。
そう騎士カリムより命ぜられ、私は新設部隊でお世話になる事となったんです」
アリスは、事前にカリムによって用意されていた理由を述べた。
彼女が聖王教会に入ったのは二年前の事。事実、新米シスターなのだ。調べられても真実なのだから探りようも無い。
「なるほど。シスターも中々に大変なものなんですね……」
ギンガは説明に納得したのか、感心して、しきりに頷いている。


108部隊の隊舎に到着すると、アリスは小会議室だろう個室へと通された。
「では、私は報告書の作成がありますので、これで。事情聴取はこちらのラントが担当します」
ギンガは先に個室にいた人物を紹介した。それを受けて、ラントは静かに頭を下げた。

ギンガがいなくなり、アリスは向かいの椅子に座る。
「ではシスター、まずはお名前から窺っていきます。宜しいですか?」
「3サイズと体重以外なら、お答えしますわ?」
アリスが冗談めかして言うと、ラントが渋い表情をした。どうやら、こういった冗談は好みではないらしい。
「っ……では、お名前を」
「アリス・ノーランド。教会の修道女として、聖王に御仕えする身です」

そこから幾つかの質問が続き、滞りなく事情聴取は終了した。






時刻が昼に差し掛かった頃、108部隊に来客があった。
ギンガはその《来客》の一人と共に、ノック代わりのブザーを鳴らし、隊長室のドアを開けた。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「ギンガ、久しぶりやなぁ……!」
「お久しぶりです、八神二佐」
ギンガは来客―――機動六課部隊長 八神はやてに笑顔を返した。


かつてはやては、108部隊で研修を行った事があり、108部隊長ゲンヤ・ナカジマを師匠と呼んでいる。
そして、ギンガとはその際に知り合った仲―――少し歳の離れた友人、と言える関係である。

再会の挨拶もそこそこに、ギンガは部隊長室を後にした。それに伴って、もう一人の来客もギンガに着いて行った。




ギンガは自分のデスクに着くと、事件の報告書の纏めに入りながら、“デスクに立つ”人物と話をしていた。
「そうですか、フェイトさんが……」
「ハイです。うちの方はフェイトさんが捜査主任ですから、一緒に捜査してもらう事もあるかも、ですよ?」
彼女はリインフォースU。八神家の末っ子にして、祝福の風の名を受け継ぐ新たなる融合騎。
管理局での地位は空曹長。部隊でも後方支援分隊、ロングアーチスタッフとして現場に出ている。
生まれて間もないながらも、優秀な人材である。

今回、はやてとリインがここに来たのは、自分達が追っている古代遺失物《ロストロギア》レリックに関する捜査協力を得る為である。

108部隊は、はやてが研修先として訪れ、また責任者であるゲンヤもの事も、個人的に信頼もしている。

彼女にとって、協力を得るにはこれ以上無いという選択肢であった。


「これは、凄く頑張らないと行けませんね?」
ギンガは何処か嬉しそうに言う。
彼女にとって、現役執務官のフェイトは、過去の出来事もあって、憧れに近い存在である。
力が入ってしまうのも、仕方ない事と言えた。

「はい、頑張りましょう!あ、そうだ……!」
「……何ですか?」
「実は捜査協力に当たって、六課からギンガにデバイスを一機、プレゼントするですよ」
「デバイスを、ですか……?」
ギンガには、リボルバーナックル、インラインスケートタイプの魔導式ローラーがある。
そんな自分に何をくれると言うのか、ギンガは小首を傾げた。

「スバル用に作ったのと同型機で、ちゃんとギンガ用に調整するですよ?」
「……ッ!?それって、まさか《インテリジェントデバイス》って事ですか!?」
「はい。名前は《ブリッツキャリバー》です」
「あ、ありがとうございます……でも、インテリジェントデバイスなんて高価な物……良いんでしょうか?」
ギンガは、その申し出を素直に受け取る事が出来なかった。
何故なら、インテリジェントデバイスは他の簡易デバイス、ストレージデバイスに比べてもずっと高価な代物だ。
それは、インテリジェントデバイスの殆どが、ワン・オフの機体であるからだ。

幾らスバル―――自分の妹とスキルや能力が似ていて、既に完成データがあるとはいえ、やはりその辺は変わらない。

「大丈夫です!フェイトさんと一緒に走り回れるように、立派な機体にするですよ?」
そんな内心の戸惑いに気付いていないのか、それともそれを吹き飛ばそうとしているのか、リインは元気良く言い切って見せた。

「―――ありがとうございます、リイン曹長」
そこまで言ってくれるなら、ギンガに断る理由は無い。好意を素直に受け取る事にした。

「……あ、そうだ。リイン曹長、一つ宜しいですか?」
「何ですか?」
「実は今、うちの方で教会のシスターを預かっていまして……話を聞くと、軌道六課に派遣されて来た、と言うんですが……」
「教会から、ですか……?」
リインは顎に指を当て、空色の髪を揺らす。
そしてポン、と手を打った。
「そういえば今朝、そういった話が来ていたと、はやてちゃんが言ってたですね。どんな人だったですか?」
「どんな、と言われると……不思議な人、としか」
「不思議、ですか……?」
リインが聞き返すと、ギンガは頷いた。
「えぇ。何と言うか……そこに居るのに居ないような……まるで、幻の様な、そんな雰囲気を持った人です」
「そうなんですか?何か怪しいですね……」
「―――それはちょっと、酷い言われ様ね?」

「「――――ッ!?」」
突然の声に二人がビクッとする。弾かれたように振り返れば、そこにはいつの間にか、シスター服の女性が微笑みを湛えて立っていた。
「だ、誰ですかッ!?」
「し、シスターアリスッ!?何時の間に……!?というか、どうやって!?」
「聴取も終わりましたので。ま、そんな事はともかく」
「ともかくじゃなくて!ここは、関係者以外の立ち入りは禁止です!!」
「人の心に垣根を作る事は出来ないように、私は私の行きたい場所に行く……ただそれだけよ?」
「言ってる意味が分かりませんよ!?」
ギンガはいきなりペースを握られ、戸惑いを隠せない。
「あなたが、六課に派遣されて来たシスターですか?」
リインは驚きもそこそこに、フワリとアリスの前に浮き上がった。
「えぇ……初めまして、リインフォースU曹長。アリス・ノーランドです」
「よろしくお願いしますです、アリスさん」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
差し出された手の指先を、リインはしっかりと両手で握った。

「ギンガ陸曹、合同捜査の打ち合わせをするから会議室に来てくれ」
「あ、はい。すみませんシスター、リイン曹長。私はこれで」
「ハイです。じゃあ、先に隊舎に戻ると、はやてちゃんに伝えて下さい」
「了解しました。では、車の方の用意をするよう伝えておきます」
ギンガは席を立つと一礼し、上官に当たるカルタスと共に会議室へと向かった。



アリスとリインは、ギンガの手配した車で機動六課へと向かっていた。
その車中、アリスはリインに部隊の事を色々聞いてみることにした。

「リイン曹長、部隊の雰囲気はどう感じますか?」
「そうですねぇ〜……初出動を終えて、皆一層の気合が入ってるって感じですかね〜。
今日は早速、個別スキルの特訓を開始していたですから、今頃は大変な事になっているでしょうねぇ〜」
「初めての実戦で課題は山積……更なるレベルアップが要求されている訳ですね?」
「時間は有るようで無いですからね〜。もっと強くなってもらわないと……」
腕組みして、うんうんと頷くリイン。
「『得難くして、失い易きは時なり』ていうヤツですね?」
アリスが言うと、リインは彼女の方を向いて目をパチクリとする。
「………」
「………?」
しばし見つめ合っていると、リインの額に徐々に汗が滲んできた。
「あ〜……えっと〜…………そ、そうですね!?柄が高くて、牛がいないのは朱鷺ですよね!!」
汗をダラダラと流しながら、それをひた隠しにしてアリスに続くリイン。

「………リイン曹長」
「な、何ですか……?」
名前を呼ばれドキリとするリインに、アリスはとても優しい視線を送った。
「流石ですね。『巧言令色 鮮なし仁』とは、リイン曹長の事かも知れませんね?」
「そ、そうです!!高原冷食 千な詩人というです!!
「あ、でも『故きを温めて新しきを知る 以て師と為るべし』かも知れませんね」「え!?あ、そうかも知れないです……古着をあっためて新しい木を切る 持って獅子唐がなるです!!」

(………面白い)
澄ました顔をしようとしているが、その眉はピクピクと痙攣している。
その様子がまた面白い。

六課の隊舎に到着するまで、退屈しなくて済みそうだとアリスは思った。




なお、それぞれの意味は
『時間は大切に使うものである』
『外面の良い人間に、誠意のある人間は少ない』
『古い事を調べ、そこから新しい発見があれば、それは必ず人に学ばせる事ができる』
といったものである。








108の車両が六課の隊舎前に到着すると、アリスは早速、降車して荷物を下ろす。その後からフラフラとしながら、リインが降車した。
「――では、これで失礼します」
「はい、ありがとうございましたです〜……」
ヘロヘロの状態ながらも敬礼を返すリイン。車両が走り去ったのを見届けて、深々と溜め息を吐く。
「ハフゥ〜……疲れたですぅ……」
「大丈夫ですか、リイン曹長?」
「誰のせいですか〜っ!!うぅ……頭が要領オーバーですぅ……」
「…………う〜ん、遊び過ぎたわね。今後は、もうちょっと要領を考えないと……」
プシューと頭から煙でも出しそうな状態のリインに、ちょっと反省するアリス。
弄んだ事に関しては反省していないらしい。


ともあれ、機動六課に無事辿り着けたので、ここからは多少心を入れ替えるべく、パチンと自分の頬を叩く。


「とりあえず荷物を置きたいのですが……確か敷地内に隊員寮が在りましたよね?」
「はいです。寮母のアイナさんがお部屋を用意してくれている筈ですよ……ところで、荷物はそれだけなのですか?」
リインはアリスの担いだバッグを見て、首を傾げた。
「いえ。後日少しだけ届く筈です。と言っても、私物の類は元々少ないですけど……」
そう言ってバッグを開けて見せると、中には着替え等、必要な物だけが収められていた。
「……ん?これは何ですか?」
リインはその中に板状の、何か奇妙な物を見つけた。
「え……あぁ、これは…………はい!」
「うわッ!?」
アリスはそれを取り出して見せると、赤いスイッチのような場所を押した。
すると、バンッ!と跳ね上がり、あっという間に何かの形になった。

「これ………何ですか?教会の、ミニチュア……??」
「はい!これこそ、携帯用聖王教会ッ!何時でも何処でも聖王様にお祈りを捧げられる優れ物っ!ちなみに、モデルは本部の中央教堂です」
「………もしかして、手作りですか?」
「分かりますかっ!?」
「…………分からない方がおかしいです」
こんなアホな物、公式で作っていたら世も末である。
「リイン曹長も何か、お祈りや懺悔がある時は遠慮無く言って下さいね。すぐにご用意しますから」
「そ、その時はお願いするですよ………はぁ」
リインは頭が本格的に痛くなってきたのか、頭をグッタリと下げた。






「ではリインは仕事があるですから、ここで失礼するですが………案内は誰か呼んだ方が良いですか?」
寮に荷物を置き、入り口でリインにそう尋ねられると、アリスは首を振った。
「いいえ、それには及びません。何時までかは分かりませんが、自分の暮らす場所ですから、自分の目と足で覚えます。
迷ったりしたら誰かに聞けば良いだけですし、通信という手もありますから」
「そうですか。じゃあ、何かあったら連絡を下さいです」
リインはそう言って何処かへと行ってしまった。
「―――さて、何処から見て回りましょうかしら?」
一人になったアリスは、空間モニターを立ち上げる。そこには機動六課の詳細な地図が映し出されていた。
「やっぱりここ……訓練スペースかしら?」
沿岸部に突き出すように設けられた場所。そこを指で叩いてモニターを閉じる。
「グランワンド、案内をお願いね」
“Alright”






デバイス――グランワンドの案内でやって来たアリス。その視線の先には何故か森があった。
「あれが、そうなのかしら?海の上に森なんて……普通は無いもの」
よくよく見れば、森の下が僅かに揺らいでいる。そして森からは何度と無く白煙が上がっている。

もっと近付いて見ようかと思っていると、陸士隊の制服に身を包んだ二人組がそれを見ているのに気が付いた。





「うわぁ、今日も派手にやってるねぇ〜」
「皆、良く持つな〜って……本気で思う」
小柄な少女二人は、ファイルらしき物を抱えて、呆れにも似た溜め息を吐いている。
そう言っている間にも、派手に爆煙が上がった。
「―――もしもし?」
「……はい?」
不意に掛けられた声に振り返ると、そこには修道服姿の女性――アリスが立っていた。

二人は余りに似つかわしくない女性の登場に、訝しい顔をした。
「あの……どちら様ですか?ここは関係者以外、立ち入りを禁止されているんですが……?」
「えぇっ!?あなた達、私の事を知らないの!?それ、本気で言っているの!?」
一人がそう言うと、アリスはショックだとばかりに、大仰な声を上げた。
「「え……えぇっ!?」」
それに驚きの声を上げる二人。その間にも、アリスは手で顔を覆い、ショックとばかりに頭を振った。

そんな様子に二人は顔を見合わせ、指を差したり顔を横に振ったり。

互いに、彼女の事を知っているか確認し合っているようだ。

それを見て、アリスはますます失望したと、大きく肩を落とした。
「えっと、あの……すみません」
「それで……どちら様でしょうか?」
申し訳無さそうに二人が尋ねると、アリスは顔を上げた。
「私はアリス・ノーランド。今日、この機動六課に派遣されて来たの。宜しくね」

「「―――そんなの知ってる訳無いじゃないですか!?」」
綺麗にハモったツッコミが炸裂した。
「うんうん。思った通りに良いツッコミ。私の目に狂いは無かったわ」
アリスは二人の、キレのあるツッコミに満足気に頷く。

「ところで、二人の名前を窺っても良いかしら?」
アリスがそう促すと、二人は名前と階級を言っていなかった事を思い出して、ピシッと背を正した。
「私は機動六課ロングアーチ所属、アルト・クラエッタ二等陸士です」
まずはブラウンの髪の子が名乗る。
「同じくロングアーチの、ルキノ・リリエ二等陸士です」
そして、ライトパープルの髪の子が名乗った。
「アルトちゃんと、ルキノちゃんね。ところで、あれが噂の空間シミュレーターなのかしら?」
アリスは海上の森を指差すと、二人もそっちを向いた。
「はい。あれが機動六課自慢の空間シミュレーターです。高町空尉監修、シャーリーさん自慢の逸品ですよ?」
「シャーリーさんって言うのは、ロングアーチのスタッフで、六課のデバイスマイスターも勤めている技術士官さんの事です」
「なるほどね……」
「あそこは基本的に魔道師以外の立ち入りは禁止です。流れ弾とか危険もありますから、シスターも気を付けて下さいね………あれ?」
アルトが振り返るとそこには人影は無く、ただ海風が吹くばかりであった。









空間シミュレーターが作り出した森は、生き物がいない以外は本物と遜色ない。

そんな森の中の拓けた場所に、人が集まっている。
本局の制服に身を包んでいるサイドポニーテールの女性が高町なのは。訓練着を来た三つ編みの少女がヴィータ。
二人は機動六課スターズ分隊の隊長、副隊長をそれぞれ務めている。

そして二人の前には、泥だらけの訓練着の四人がヘタり込んでいる。
「とりあえず、息を整えるのも兼ねて、反省会をします」
「オメーら、ちゃんと聞いとけよ?」
「「「はい……!」」」」
なのはとヴィータの言葉に息も切れ切れのまま、四人が返事を返す。

「じゃあ早速……スバルから」
「ハイ………あれ?」
スバルと呼ばれた、青髪とハチマキ姿の少女が立ち上がった。
「おい、スバル!ちゃんと聞けッ!」
「えっ!?でも、ヴィータ副隊長………あれ」
「うん?」
スバルが指差す方に、ヴィータが振り返る。他の面々も、それに釣られて顔を向けた。

視線の先には修道服に身を包んだ女性が森を珍しそうに見ながら、こちらに向かって歩いてきている。
「「「「「「……………………」」」」」」
まるで森林浴でも堪能しているかのような姿に、誰も何も言う事が出来ないでいた。
「あら、こんにちは」
「あ、はい……こんにちは」
彼女に頭を下げられ、なのは達も反射的に挨拶を返す。
アリスはそのまま、六人の脇を通り抜けていった。

「このシミュレーターって……ガジェットだけじゃなくて、人も作り出せるんだね……」
「……ハッ!?んな訳ないでしょ!?」
スバルがアホな事を言うと、隣のツインテールの少女がその頭を叩いた。
それにヴィータがハッとして動いた。
「オイ、ちょっと待て!!」
ヴィータは慌ててアリスに駆け寄ると、その腕をガシリと掴んだ。
「警備部は何してやがんだ!お前、何処から入って来やがった!?」
「あらあら駄目よ?女の子が、そんな乱暴な言葉遣いをしたら」
アリスはそう言って、ヴィータの頭をよしよしと撫でる。
「ダァッ!頭を撫でんじゃねぇ!!」
ヴィータはすぐさま、アリスの手を振り払って数歩下がった。そして手に持っていたハンマーの先端をアリスに突きつける。
「このヤロォ、舐めやがって……!」
「ちょっと、ヴィータちゃん……!?」
一触即発。と言うには一方的過ぎる状況に、今度はなのはが動こうとした。

その時だった。アリスが手をゆっくりと持ち上げ、ヴィータのデバイスグラーフアイゼンの先端に触れたのだ。
「騎士の誇りは、容易く向けて良い物ではないわ……仕舞いなさい」
“Ja”
「―――なッ!?」
主であるヴィータの意に反し、グラーフアイゼンが突如として待機形態になってしまった。
いきなりの出来事に、ヴィータを始めとして全員が唖然とする。

「お、おいっ!アイゼンッ……!?お前、何しやがった!?」
ヴィータが再起動させようとするが、グラーフアイゼンは何の反応も示さない。
「何したって……ただ、この子が良い子だって事よ?」
アリスがパチン、と指を鳴らしてやると、グラーフアイゼンが再び軌道形態に戻った。
「ほら、とっても素直で良い子でしょう?」
「なっ……何だとぉ……!?」
自分の相棒の予期せぬ反抗に、ヴィータは何が何だか解らず、混乱してしまった。

「その服、聖王教会の修道服ですよね?あなたは……?」
なのはが内心の警戒を見せないようにと、アリスに話し掛ける。
「申し遅れました。私は聖王教会のシスター、アリス・ノーランドです。本日この機動六課に派遣されてまいりました。
どうぞ宜しくお願いします、高町なのは一等空尉」
「あ、はい……宜しくお願いしま………え、派遣?」
アリスが深々と頭を下げると、なのはも慌てて頭を下げかけて、その言葉に疑問を抱いた。
「八神二佐が戻られたら、説明があると思いますので……その時にまた。訓練の方、頑張ってください」
アリスはなのはに微笑を返すと、クルリと背を向けた。そしてそのまま、森の向こうへと消えていった。

「………ヴィータちゃん、何か聞いてる?」
「そういえば、はやてが今朝そんな事を言ってたような………てか、なんなんだよ、アイツはっ!!」
ヴィータが突如として吠えた。
「おい、アイゼン!何であんなヤツの言う事を聞いたんだよ!?どういうつもりだ!?」
“理解不能です”
「理解不能なのはこっちだ!!クソッ、後でメンテしてもらうか……?」
ぶつぶつと言うヴィータを、なのはは取り敢えずそっとしておく事にした。
下手に何か言えば、自分に矛先が向いてしまうかも知れない。

「……じゃあ気を取り直して、反省会をしようか」
なのははパン、と手を叩いて仕切り直すと、フォワード陣に向き直った。












その後も、アリスは六課の施設内をフラフラと見て周った。

時には、隊長補佐グリフィス・ロウランのメガネを鼻眼鏡に取り替えてみたり。
駐機場に置かれていた赤いバイクを見つけると、おもむろに油性マジックで『クラナガンの赤い嵐』と書いてみたり。
そんな事をしながら歩いていると、何時の間にやら、日がすっかりと傾いていた。

「あ、シスターアリス。何をしているですか?」
「こんばんは、リイン曹長。いえ、もう夕暮れだなぁと思いまして……リイン曹長は?」
「リインはこれから食堂に行くところです。シスターアリスも、まだなら一緒にどうですか?」
「お誘い、お受けします。食堂の方にはまだ行っていませんでしたし、丁度良かったです」
リインはアリスの肩に座り、共に食堂へと向かった。



食堂は交替で夕食をとる部隊員で賑わっていた。
「さて、何処に座りましょうか……?」
どこか空いている席はと探していると、ふと、目に留まった席があった。
新しい物に着替えてはいるが、訓練着のままで席を囲む四人。
丁度良く、席が一つ空いている。
アリスは迷わず、そこに向かって歩いた。

「―――この席は空いていますか?」
「あっ、さっきのシスターさん!……と、リイン曹長」
「如何して此処なんですか?他にも空いている席があるのに……?」
アリスが声を掛けると、四人がこちらを向く。その内の二人――スバルとツインテールの少女が言を発した。
「確かに席は空いているけど、他の席には貴方違はいないでしょう?貴方達とお話出来ていないし……駄目かしら?」
ツインテールの少女の質問に、アリスは微笑み雑じりで答える。
話をしたいと言われて、彼女にアリスを拒む理由は無い。そもそも他人であるアリスを嫌う要素は何も無いのだ。
彼女は視線をテーブルの中央に置かれた、文字通りの山盛りチキンライスに戻した。
それを承諾と受け取り、スバルも「どうぞ」と言って少しだけ席をずらす。
リインはアリスの肩から飛ぶと、そのままテーブルに降り立った。
「リイン曹長はテーブルに座られるのですか?」
「フルサイズは燃費が悪くて、このサイズのままだと、流石に椅子には座れないですから」
「なるほど。じゃあ、取り皿とプレートを取ってきますね」
「行ってらっしゃいです〜」
アリスはリインに手を振られ、カウンターへと向かった。

アリスの姿が遠ざかったのを見計らい、スバルがリインに尋ねた。
「リイン曹長、ちょっと聞いても良いですか?」
「何ですか?」
「あの人、えっと……シスター……?」
「シスターアリス?」
「そうそう、アリスさん。アリスさんって一体、どんな人なんですか?」
「う〜ん、そうですねぇ〜………」
リインは上向きがちに少し首を捻って考え、頷いた。

「……多分、スバルが感じたまんまだと思うです」
「……変な人、ですか?」
「変な人ですね」
「変な人かぁ〜」
「変な人ですねぇ〜」
しみじみとした口調ながら、『変な人』を強調する二人。

その様子に困ったような笑みを浮かべるのは対面に座る幼い少年少女。
一人は見事に赤い髪、もう一人は桃色の髪をしており、隣にはリインを捉えたまま、何故か尾をユラユラと振る小さな白竜。

彼らもまた立派な、機動六課フォワードメンバーの一員である。


「……スバル、いい加減にしなさい。リイン曹長もです」
「どうしたのティア?」
「………後ろ」
スプーンでスバルの後ろを指し示す。それに釣られて顔を動かしてみると―――。

「―――!?」

果たしてそこには、何故かビニールの切れ目の銜える側だけを取ったストローを銜え、ニッコリと笑うアリスが立っていた。

スバルはその微笑に戦慄を覚え、そんな様子にリインも振り返った。
「―――へぶっ!?」
その瞬間、リインの顔にビニールが直撃した。
アリスが銜えていたストローに息を吹き込んだのだ。その結果、空気に押されたビニールが勢い良く発射され、それが見事に命中したのだった。

「シスター、早かったですね?」
「ムニエルとサラダと飲み物を取ってきただけだから。それで、人のいない所で何を言っていたのかしら?」
席に座ると、改めてスバルとリインに微笑む。二人が戦慄したのは言うまでもない。
その迫力にあっさりと負け、二人は頭を下げた。
「「ごめんなさい」」
「――別に良いわよ。教会でも良く言われていた事だし」
「言われてたんですかっ!?」
ツインテールの少女が見事にツッコミを入れた。




「じゃあ、改めて……私はアリス・ノーランド。見ての通り、聖王教会のシスターをしているわ」
六人でチキンライスの山を囲みつつ、簡単な自己紹介をする。
「ティアナ・ランスターです。階級は二等陸士、前線フォワード部隊『スターズ分隊』所属です」
ツインテールの少女が、まず名乗った。それに続いて、スバルが元気良く手を上げた。
「スバル・ナカジマです!階級と所属はティアと一緒です!!あ、ティアっていうのは、ティアの愛称です!!」
「スバル、あんたちょっと黙りなさい」
「えぇ〜っ!?」
スバルがショックだとばかりに声を上げたところで、ティアナは残る二人に視線を送る。

二人は顔を見合わせ、赤紙の少年が手を上げた。
「エリオ・モンディアル三等陸士です。所属はフォワード部隊『ライトニング分隊』です」
「えっと、キャロ・ル・ルシエです。階級と所属はエリオ君と一緒です。この子はフリードって言います」
「クキュー」
キャロが頭を下げると、フリードがバサッと翼を広げた。どうやら挨拶しているらしい。

「ティアナちゃんに、スバルちゃん、エリオ君にキャロちゃん、そしてフリードね?よし、ちゃんと覚えたわよ」
「ところで……どうしてシスターが派遣されてきたんですか?」
「むっ……良い質問をするわね、ティアナちゃん」
「シスターは、シスターとしての修行をする為に、ここに来たですよ」
「皆やこの部隊と同じ、まだまだ新人だからね〜」
そう言いつつ、アリスはチキンライスを小皿に取る。

「いえ、そうではなくて……どうして“管理局の部隊”に、“聖王教会の人”が派遣されたのか、という事を聞きたいんです」
「なるほど………そういう事ね」
アリスはティアナの質問の意図を理解した。

彼女が聞きたいのは、教会とこの部隊の関係性。
とはいえ、何処まで話す事が出来るのか。

アリスはしばし考える素振りを見せると、少しだけ身を前に屈めた。
「……というか、この部隊の後見人については知っているかしら?」
「はい、一応は。資料を渡されていますから……」
「なら話が早いわ。この部隊の後見人は、本局のクロノ・ハラオウン提督、リンディ・ハラオウン統括官、聖王教会騎士カリム・グラシアの三名。
騎士カリムは、ここの部隊長八神二佐とは旧知の仲。新人を預けるには都合が良かったのよ」
「そんな私的な理由って……良いんですか?」
アリスの言葉に、ティアナが若干呆れ気味に返す。
「騎士カリムは、局では少将クラスの扱いだし……大丈夫じゃないかしら?それに、この部隊って結構、関係者繋がりが多いのよ?」
「それ、隊長達の事ですよね?それは知っていますけど……」
「それもあるけど……メインのスタッフは、殆どがそうじゃないかしら?」
「そうなんですか!?」
「例えばそうね……ロングアーチスタッフのルキノちゃんは、元はアースラのスタッフだったのよ。
で、その艦長を務めていたのが……部隊の後見人でもあるクロノ・ハラオウン提督。
その母親で、同じく後見人を務めるリンディ統括官の親友、レティ・ロウラン提督の御子息がグリフィス・ロウラン准陸尉。
メカニックのシャリオ・フィニーノ陸士はその幼馴染で、テスタロッサ・ハラオウン執務官の補佐官でしょう。
ヘリパイロットのヴァイス・グランセニック陸曹は元首都航空隊。ライトニングのシグナム二尉とは知り合いでしょうし………あれ?」
そこまで言った所で、アリスは全員がポカンとしているのに気が付いた。
「……豪く詳しいですね、シスター………」
「あたし、そこまで知らなかったです……」
リインとスバルが言うと、キャロとエリオが頷く。
「……もしかして、あたし達の事も最初から知っていました?」
ティアナが目を細め、少し訝しんだ視線を送る。
「……一応はね」
「なら、どうして自己紹介なんてさせたんですか?」
「情報だけを知るなら、資料だけでも充分よ?でも、相手を理解したいと思うなら、それじゃ駄目。
ちゃんと自分の言葉で伝えて、相手の言葉を聞かないと……分かり合う事は絶対に出来ない。自己紹介はその第一歩なのよ」
アリスはティアナの瞳を真っ直ぐに見つめ、答える。

「そういうもの……ですか?」
「そういうものよ」
「っ………」
アリスがそう言うと、ティアナはそれ以上続けず、視線を外してサラダを口に放り込んだ。

怒らせてしまったのだろうかと、アリスがチラリとスバルに視線を送ると、彼女は苦笑しつつ肩を竦めた。
付き合いもそれなりにあるスバルには、ティアナのそんな様子が何を意味するのか分かっていた。

不機嫌そうに見えるのは、単純な照れ隠しであると。


山盛りのチキンライスの大半が、スバルの胃袋に収まったところで、アリスは再び口を開いた。
「皆はこの後、夜間訓練だっけ?大変ね〜、朝から晩まで……」
「いつもなら早朝と午前、もしくは早朝と午後、それと夜間です。一日中訓練は特別ですから」
「昨日は初出撃で、色々と問題が出て来たから……個人スキルを徹底するから、デスクワークは無し、という事らしいです」
エリオとキャロが答えると、アリスはなるほどと思った。
「昨日の戦闘映像は見たけど……結構、危うかったものね……個人スキルは確かに必須ね。
かくいう私も、教会では朝から晩までお祈りやら何やらで、修行ばっかり…………あぁーッ!?」
いきなり大声を上げられ、五人がビクッと体を震わせる。食堂に居る他の局員も、何事かとざわめきながら、六人を注視した。
「ど、どうしたですか……!?」
「到着した事、騎士カリムに報告するのをすっかり忘れてた!!ごめんなさい、これで失礼するわッ!!」
アリスは慌てて立ち上がると、自分のプレートを持ち上げた。そのまま急ぎ足で返却口に持って行き、小走りに食堂を後にした。

「何というか………変な人、ですね」
「でしょう?」
ティアナの呟きに、リインは何故か胸を張って答えたのだった。








隊舎を出て少し離れた所にある街灯の下、アリスは通信端末を起動させた。
空間モニターが開き、そこから聖王教会本部、カリム・グラシアへの直通回線を繋げる。

『―――随分と、報告が遅かったですね?何事か……トラブルがありましたか?』
モニターに映ったカリムは一見、穏やかそうな表情を浮かべているが、それが飛んだ間違いであるとアリスは知っている。
「ごめんなさい。トラブルはありましたが……無事に到着しました」
『……それなら良いのです。それで、機動六課はどうですか?』
「まだ何とも言えませんけど……火種は燻っていそうな気はしますね」
目を細め、幾つかの事を思い出しながら答える。
『あなたが言うのなら、間違いはないでしょう。どうかあの子達をお願いします、アリスさん……いえ、シスターアリス』
「了解です、騎士カリム。では、これで失礼します…………ふぅ」
通信を終え、アリスは深く一息吐くとベンチに腰を下ろした。一日中掛けっぱなしだった眼鏡を外し、目頭を揉んでやる。

そして再び端末を起動させる。今度は映像の無い音声通信である。
数秒間の間を置き、通信が繋がった。
「こんばんは、シルフィ?ご機嫌は如何かしら?」
『―――その人を食った口調……やはりお前か』
アリスの発した言葉に、シルフィと呼ばれた女性は、若干の呆れを含んだ言葉を返す。
「こっちは今日、機動六課に移動になったわ。そっちに何か進展は?」
『幾つかの観測指定世界を回った……が、やはり古代遺跡の幾つかが荒らされていた』
「………奴の仕業かしら?」
シルフィの言葉に、アリスは腕組みして思考する。

ガジェットドローンによるレリック強奪に関わるように起こる、観測指定世界の遺跡盗掘事件。
それが“奴”の仕業であるなら、その目的は何なのか。
少なくとも、予言に無関係であるとは考え難い。
『こちらは別の世界の遺跡を探ってみる。もしかすればその先で……奴を討つ事も出来るやもしれん』
「無理はしないでよ?奴は―――」
『案ずるな、こちらには主もいる。お前の方こそ気を付けろ?正体がバレれば厄介な事になるのは、分かり切っているのだからな?』
「それこそ心配ないわ。堂々としていれば、結構分からないものよ?」
そう言ってアリスは笑った。それに釣られるように、シルフィの声にも笑いが混じる。
『なら、お互いに気を付けるとしよう。主に何か伝える事はあるか?』
「私のシスター服を見られなくて残念ね、って伝えといて?」
『分かった、伝えておこう………ではな』


通信が切れると、アリスは端末を仕舞った。
「――さて、もうちょっと回ってみますか」
すっくと立ち上がって大きく背伸びをすると、外していた眼鏡を掛け直した。



そんな彼女を見ている影があったとも知らずに。











しばし歩いていると、駐機場の前を通りかかった。
随分と明るいので、まだ整備をしているのだろうかと覗いてみると、中には二つの人影があった。

「クッソ〜ッ!!全然落ちねぇーッ!!」
「ヴァイス陸曹〜、いい加減諦めたらどうですか〜?」
「うっせぇ!!塗装ごと落としたら、色むらになっちまうだろうが!!」
「……アルトちゃん、今晩は。何してるの?」
「えっ……あぁ、シスター。何か、ヴァイス陸曹のバイクに落書きがされてあって……で、こんな感じ」
「ウォオオオオオオッ!!」
「あ〜……なるほど」
文字通り、阿修羅さえ凌駕しそうな形相でバイクを磨くヴァイスの姿に、ちょっとだけ罪悪感を覚えるアリス。

とはいえ、そこは面の皮の厚さには自信のある彼女。表情に一切それを見せる事はない。
という事でヴァイスに声を掛けるべく、近付いていく。

「あの……グランセニック陸曹?」
「クォオオオオオオッ!!落ちろ堕ちろオチロォオオオオオオオオオッッ!!」
「………グランセニック陸曹?」
「何だよっ!?こっちはそれどころじゃ―――」
肩を叩かれ、鬼の形相で振り返ったヴァイスだったが、突如としてその動きを止めた。
「……どうかされましたか?」
「………へ!?あ、いやいや!!何でもないです!!」
呆けていたヴァイスが正気に返り、何を慌てたのかワタワタと立ち上がった。

「ところで、えっと……どちらさんで?」
「今日からこちらに来た、シスターアリスですよ」
アリスに代わってアルトが、何故か不機嫌そうな面持ちで答える。

「初めまして。アリス・ノーランドです」
「ヴァイス・グランセニックです。あ、ヴァイスで良いです………っと、すみません」
握手をしようと手を差し出し掛けたところで、ヴァイスは油に汚れた自分の手袋に気付いた。

外そうとするヴァイスを制し、その手を握る。
「宜しく、ヴァイス陸曹。少し見せて頂いても?」
「え、えぇ!どうぞッ!!」
ヴァイスが横に退き、アリスはバイクの脇にしゃがみ込むと、そのボディに触れた。
「良く手入れされていますね。余程、大事にされているんでしょうね」
「えっ?いやいや、そんな事ぁないですよ。ちょっとした趣味みたいなもんですから」
照れ臭そうに頭を掻くヴァイスの姿に、アルトが冷ややかな視線を送る。
「……何だよアルト、その何か言いたそうな顔はよ?」
「べっつに何でもないですよ〜、ヴァイス陸曹がデレデレと情けなく、鼻の下を伸ばしてるのなんて気になりませんから〜」
「あっそ。しかし俺とした事が、あんな良い女を見逃していたたぁ……不覚だった」
「……美人だったら、この隊にもいっぱい居るじゃないですか」
アルトはやはり、冷ややかな視線のままでヴァイスに言ってやる。

この部隊には実力もありながら、見目麗しい者もいる。

なのはやフェイト、はやてはまだ年若く、幼さが抜け切っていないが、美人かどうかといえば、紛れもなく美人である。

そして凛とした美貌の持ち主であるシグナム、穏やかで安らぎを与える印象のシャマル。

寮母を務めるアイナという女性も、妙齢の美人である。

そういった人物を差して言ったアルトに、しかしヴァイスは「チッチッ、分かってないな」と人差し指を振った。

「修道女という禁欲に満ちた立場。しかし、その修道服の下には隠し切れない我侭ボディ!!
色気と清純さ。アンバランスな二つを併せ持つ、この奇跡の産物を!!」
「バカですか?」
「俺の熱弁をバカ呼ばわりかよ!?」

などと二人がやっている内に、アリスは立ち上がった。
「ありがとうございました、ヴァイス陸曹」
「いつでも見に着てください。歓迎しますぜ?」
「では、また近いうちに」

アリスは軽く会釈すると、駐機場を後にした。その後姿に、酷くヘラヘラとしたヴァイスが手を振り続けていた。
「……フンッ!」
「アギャーーッ!!?」


「……?」
直後、アリスの背中に怪鳥の首を絞めた様な声が届いた。




「………あれ?」
ヒョコヒョコとした足取りでバイクの前まで来て、ヴァイスはある異変に気付いた。
「どうしたんです?」
「バイクの落書きが………消えてる?」
「えっ!?」
アルトが驚いて見てみると、確かに数分前まで書かれていた文字が、しかし今は跡形も無く消え去っていた。
「こりゃあ一体………?」
突然起こった不可思議な出来事に、二人はただ呆然とするしかなかった。










「―――さん?フェイトさん!?何処まで行くんですかっ!?」
「――――えっ?」
ブロンドのロングヘアーの女性が、呼び止める声に足を止めた。
振り返ると眼鏡を掛けた少女が、少し離れた場所でこちらを見ていた。
「あ、ゴメン……ちょっと考え事してたんだ………」
「―――ジェイル・スカリエッティの事ですか?いくら、ずっと追い駆けていたって言っても……とりあえず今は会議ですよ?」
ジェイル・スカリエッティ。今日の調査でガジェットドローンによるレリック強奪事件の容疑者として上がった、一級犯罪者。
【ドクター】という通り名の通り、生命操作等といった非人道的な研究を行っている人物である。
「うん……そうだね。ゴメン、シャーリー」
フェイトは踵を返して、会議室前に戻る。

ドアが開き、フェイトは誰もいない会議室の席に着く。
「………」
そしてまた、表情を曇らせた。

六課まで戻ってきたフェイトは、駐車場に車を入れ、隊舎への道を歩いていた。

その時、街灯の下のベンチに座る人影に気付いた。
それを見て、フェイトは思考を停止させてしまった。















「騎士カリム、彼女で大丈夫なのでしょうか?」
聖王教会、カリムの執務室。部屋の主たるカリムに話し掛けるのは、カリムの護衛でもある修道女シャッハ・ヌエラ。
アリスにとっては天敵のような存在といえる彼女は、アリスの機動六課行きに不安を感じている様子であった。
「大丈夫よシャッハ。彼女はきっと、はやて達の助けになってくれるわ」
カリムは窓から見える、見事な双子の月を見上げた。
「問題起こる所に現れる……“神出鬼没のアリス”ですか?」
「そう。『アリス・ザ・ファントム』の呼び名は伊達では無いわ」
「………そうですね。今更言っても仕方ない事。私達は信じる事しか出来ないんですね……彼女を」
シャッハは多少無理やり気味に自分を納得させた。














会議も漸く始まろうかという矢先、フェイトの思考は一つの事で支配されつつあった。

ベンチで見かけた人影。それはフェイトにとって、どれ程の時を重ねようと決して記憶から消える事はない人物であった。

(あれは……間違いなく私の……ううん、『アリシア姉さんの記憶』の中にある、母さんの姿だった………)














ファントム。
それは彼女の、神出鬼没ぶりに付けられたあだ名である。


しかし、ファントムにはもっと相応しい意味があった。







この世には存在しない者―――すなわち【亡霊】のアリス。











では拍手レスです。
いつもありがとうございます。






※犬吉さんへ。
シリアスな場面が続くかと思ったらいい意味で空気ブレイカーなゆうひ登場。
彼女はとらハ2でもお気に入りキャラなのでオリジナルな展開はすごくうれしいです。
それにしても、ここの耕介はゆうひendの彼なのでしょうか?
ゆうひが耕ちゃん(耕介くんだった気がしたのですが?)と言っていたので気になりました。まあ、二次創作なのでオリ展開はグッジョブですけど(笑)。
次話もワクワクしながら待たせてもらいます。 虚和


>一部、改行を加えさせて頂きました。感想ありがとうございます。
展開がシリアスばかりなので、彼女に登場していただきました。(OVAにも出ているんですよね、本当にちょっとだけw)
日常と非日常、その温度差が話にアクセントを加えてくれたと思っています。如何だったでしょうか?

耕介は確かに、ゆうひからは「耕介くん」と呼ばれています。
耕ちゃんにしたのは、歌のリズムがこの方が良かったのと、その辺りを「おや?」と、思わせたかったからです。

その辺りを想像して是非、ニヨニヨして下さいww


※犬吉さんへ 
「聖歌の守護者達」編お疲れ様でした。次は短編らしいですが自分はラブコメを希望します。もちろん獲物は恭也と連音でw


感想ありがとうございま……獲物っ!?
それは恭也と連音が巻き込まれるのか、それとも二人で(以下略)

本編はシリアスの上に長いので、一話完結でそういった話もやってみたいですね。





拍手の方、ありがとうございました。

引き続きまして、この作品に限らず、拍手を送っていただく際は何方宛かをお書き加え下さるようお願いします。

皆様の感想が無事、作者様に届きますように、どうかご協力下さい。











作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。