To a you side 番外編

――良介の試練――

 

 

 

 

「どうしたんだい、ミヤモト・リョウスケくん。“くそ不死身の剣士”の名は伊達かい?」

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・・・誰だよそんなアダ名つけた奴は!」

緑が広がる雄大な大地。そこには一組の男女が存在していた。

(まったくです。死んでも死なないくらいに丈夫なのは確かですけど)

「黙ってろ!」

相棒ミヤの呟きを突っ込むが、宮本良介には余裕は全く無かった。相手は数メートル挟んでこちらを見ているブルーグレー色の髪を靡かせる美女が一人。

ルビー色のバリアジャケットを装着し、ハルバートタイプの巨大なデバイスを肩に担ぎ、えらく涼しい顔を浮かべている。その姿は天から遣わされた戦乙女と言ったところだ。

「ま、ここまで持ちこたえたのは意外だったね。周りの部隊は君のことをFランク以下の最弱野郎と言ってたけれど・・・どうやらそうでもないらしいね」

「貴方様にお誉めいただけるとは、極悦至極に存じますよ。第118航空武装隊『メビウス隊』隊長――“グランド・エース”こと、ジェニー・アウディス少将?」

余裕もないのにわざとらしく恭しく頭を下げる良介。

「おやおや。詳しいね」

「前にどっかの教導官様がアンタのことを言ってたのさ。かなりシゴかれたってな」

「はっはっは。そうだねぇ。たしか高町なのは一等空尉とは何年か前に手合わせをしたね」

不敵な笑みを浮かべるジェニー。これが航空武装隊――いや、時空管理局最強と言わしめられている『メビウス』隊隊長の貫録と言うものだろうか。

そもそも何故こんな先の見えた演習の約束をしてしまったのか。“アレ”に釣られてしまった自分が今更ながら情けなくなってきた。

「さて、そろそろ切り上げるかな・・・・スカイ・アイ、モードチェンジ」

Yes, Mom. Mode change, ready

ジェニーは自身のデバイスに命令を下す。彼女が使用しているのはタダのデバイスではない。

型式でいえば十年以上前のインテリジェントデバイスで、元々ロングレンジ対応のデバイスであったが、全距離対応にすべくカスタムチューンを施し、その結果、彼女にしか扱えないほどのピーキーな武器と化している。

それがスカイ・アイである。

「チェンジ――メガリスモード」

Form: Megalith. Set up

スカイ・アイはリンカーコアを中心とした十字の杖へと変えた。八神はやてが使用しているデバイスである“シュベルトクロイツ”と似ている感はある、とミヤは思った。

変形が終わると、ジェニーは杖を良介に向ける。彼女の足元にはミッドチルダ式の魔方陣が浮かび上がっていた。

そして最強の魔導師が、裂帛の気合を生み出しつつ魔術の言葉を紡いでいく。

神の小羊、世の罪を除きたもう主よ、彼らに安息を与えたまえ、世の罪を除きたもう主よ

良介はジェニーの全身からから溢れんばかりの魔力が発せられている事に気付いた。八神はやてが広域魔法を使う際に感じたそれとは格が違う。

この尋常ではない超高濃度の魔力から察するに、その範囲は広域ではない。

――更に上をゆく、超超広域。それも、超絶という言葉を遙かに超える威力の魔法だ。

永遠の光が彼らを照らしますように、主よ、あなたの聖人たちと共に永遠あれ、神の小羊、彼らに安息を与えたまえ

良介は詠唱を止めようと足を動かそうとしたが、どういうわけか、足がすくんで動けなかった。

・・・恐怖している。間違いない。彼女から放たれる、魔力を孕んだプレッシャーに押し潰されているのだ。

動きたい。せめて逃げ出したいのに、指先一つ動かす事すら叶わない。絶対的な脅威を前に、剣士は震え上がっていた。

神の小羊、世の罪を除きたもう主よ、永遠を彼らに与えたまえ主よ、絶えざる光が彼らを照らしますように

魔方陣を中心に目に見えぬ膨大な量の魔素が集う。魔素はすぐさま役目を果たすべく、術者の求めるものへと変換されていく。

窮極なる魔術は顕現し、肉の一片たりとも残さず、消滅させるのだ。

主よ、憐れみたまえ――アグヌス・デイ

Agunus Dei Firing

――そして世界は、窮極なる光の爆発に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八神はやては恋人である宮本良介を探していた。家を出、宿舎まで着くまで一緒ではあったが、それ以降の消息は不明。まるでどこかへと消え去ってしまったかのように。

ギンガには連絡を入れ居場所が判明次第報告してほしいと言ってはおいたが、一向に連絡は来ず、仕方なく自分の足を使って捜索に乗り出したのだ。

仕事はある程度片づいているので残りはグリフィスに任してあるので安心だ。少々可哀想かもしれないが。

(どこ行ったんやろ・・・ホント)

はやては大きくため息をつく。なのはやヴィータにも連絡は入れたが、全く知らないと言われてしまった。彼女らも全力で捜索に加わっているが、今のところ進展はない。

要するにドン詰まり状態である。

「はぁ・・・・・」

恋人と言う立場になって数年。といっても何か変わったかというと別に変わったことはなく、唯一変わったことといえば、ミッドチルダに居を構え、同棲していることであろうか。

プライベートにおける態度、言葉遣いも全く変わってはいない。変わったのは身長と階級。

勿論恋人として夜の営みも欠かしてはいない。先週は腰が痛くなるほど――。

(――てちゃん。はやてちゃん!)

「・・・えっ、あっ、えっ?」

思い出に耽っていると、突然なのはから念話がかかってきた。急いで余計な思考を中断すると、平常心で念話に集中した。

(ど、どないしたん、なのは?)

(今さっき、ギンガさんが全部隊の演習記録を調べたんだけど、ある航空武装隊の演習相手に兄さんの名前があったんだって!)

(ほんまか!?)

(うん。場所は第二十三管理世界。そこに兄さんがいる!)

ようやく居場所を突き止めた。あとはその場所へ向かうのみ。

(了解したわ。ほんまありがとう、なのは)

(どういたしまして。・・・・・あ、それとね、演習の航空武装隊についてなんだけど・・・・)

急になのはの声音が暗くなる。

(? なんか問題でもあるんか?)

(問題はないけど、さ・・・・。・・・えーとね、相手部隊は・・・・その・・・・第118航空部隊――メビウス隊なんだって・・・)

(・・・・・えええええっ!)

はやてにはそんな話は信じられなかった。何故彼が――。

そう思った時には、意識とは別に体が疾風のごとく駆けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――体が重い。

意識が戻った瞬間、思ったのはそれだった。それに体中がズキズキと痛み、まったくもって動きたくない気分だ。

それでも周りを確認すべく、良介は目を開けた。

「・・・ここ・・・・は・・・・」

まず目に入ったのは見覚えのある清潔感溢れる白い天井だった。どこであっただろうか。微妙に思い出せない。

次は耳を澄ませた。誰かハイヒールでも履いているのか、コツコツという音が耳に入った。

最後に体を起こす。どうやら全身がガタガタのようだ。機械で言えば油が足りないようなものだ。

頭を振って、良介は今一度意識を取り戻す。霞のかかっていた脳がクリアになり、視界も安定し始めている。

「ここって・・・・医務室・・・・?」

記憶を辿り、なぜここに来ることになったかを整理することにした。

「えっと・・・・確か・・・・・・」

「宮本良介四等陸士は無謀にも管理局最強と詠われる第118航空武装隊――メビウス隊隊長、そして執務官でもあるジェニー・アウディス少将からの演習依頼を快く受けた――ですよね、良介さん?」

「・・・・シャマルか」

ここは医務室。医務官であるシャマルがいるのは当たり前である。

「で、良介さん。報酬の謝礼は何を貰う予定だったんですか? あなたがタダで他の部隊から依頼を受けるだなんて有り得ないですものねー」

「うっ・・・・何の事やら。僕わかんないやー」

妙に明るい笑顔で詰め寄るシャマルから必死で目をそらす良介。額からは脂汗が滝のように流れ、引きつった笑みがますます怪しさを増している。

と、その時――。

「謝礼はメロン三個。ミッドチルダに輸入される最高級の代物をあげると約束したのさ。そうだろう、スカイ・アイ?」

Sure, master

何処からともなく現れたのは、噂の女性ジェニー・アウディスその人であった。バリアジャケットは解除され、時空管理局の制服を着こんでいる。

歳は良介よりも5、6上。成熟した女性のプロポーションが制服越しに分かる。まるでどこかのグラマーなモデルでも見ているかのような素晴らしいプロポーションだ。

顔立ちも才色兼備と最高の美しさを具現化したと言ってもいい絶世の美女である。

そして相棒である『スカイ・アイ』も今はペンダントとして持ち主の胸に存在していた。

「そうだね? ミヤモト・リョウスケ君?」

「そうなんですか?」

まずい状況になってしまった。急いでこの場を去りたいが、全身が鉛と化したこの体ではまともに走るのは困難だろう。

一瞬、ミヤを囮に逃げようと画策したが、肝心のミヤがいないのですぐに却下。他の案へと移行するしかあるまい。

(・・・・どうすっかなぁ。逃げ場がないぜ、ちくしょう)

困惑した面持ちで目を泳がした、その時だった。

 

「良介!」

 

医務室のドアが開いた瞬間、必死の形相の女性が良介目がけ飛び込んできた。まともに受け止めることができなかった良介は、そのままベッドへと背中から叩きつけることとなった。

「あづづづ・・・・・」

痛みに呻きながら顔を上げ、眼前に写ったのは――。

「うぅ・・・ぐすっ・・・うぅ、うえええええ・・・・」

「・・・・はやて・・・・・?」

そこには、目を真っ赤にさせて大泣きしているはやてがいた。突然の出来事に三人は怪訝そうに顔を見合せる。

「うぅぅ・・・・・良介のアホぉ!」

「うぼぁ!」

開口一番と共に必殺のアッパーカットが飛び出す。格闘家顔負けの勢いの乗った鋭い攻撃に一瞬意識が飛びかけた。

遠距離魔法ではなく近接戦闘でも十分やっていけるのではないかと思ったのは内緒である。

「いってぇ・・・・・。おいはやて、何でいきなり殴るんだよ」

「・・・・・っ!」

こちらを見つめるはやてから、涙がポロポロと落ちる。

・・・・どうもこのテの空気は苦手だ。それ以前に殴られる理由が分からない。なにか怒らせる事でもしただろうか。

家にミッドチルダ製成人男性向け漫画を隠していることがバレた線はないだろう。絶対にわからない場所に置いたのだから。だがそんな理由で怒って号泣するはずがない。

考えているうちにワケがわからなくなってきた。やはり自分は下手に考え事をしない方が吉だと思う。

ここはやはり無難に、微笑を浮かべて頭を撫でてやるのが得策だろう。

「あー・・・・ワケは分からんがすまん。頼むから、な? 泣かないでくれよ」

「・・・・怪我がなくて安心したわ」

「へ?」

はやては涙を拭い、赤く腫れた目で良介を見る。

「良介が医務室に担ぎこまれたって聞いて・・・・それで・・・重傷なんじゃないかって・・・・」

「あ・・・あはは・・・」

はやてにここまで心配されるには少々理由がある。良介は滅多な傷では医務室には行かずそのまま放置するのみで、演習や訓練などで耐えきれないほどの傷を食らった場合のみ立ち寄るのだ。

今回は意識を失い、ジェニーに運ばれた。そして良介の事を知っているはやては医務室へと駆けこんできた。こういう事である。

「・・・ところで、はやて」

「ん? なんや?」

きょとんと小首を傾げる愛しの二等陸佐。どうやら彼女は状況をよく理解していない様子である。

良介は前方にいるジェニーを指差し、顎で促した。それに倣い、はやても背後に居るジェニーに目を向ける。その瞬間、彼女の顔が一気に蒼白の色へと変わった。

例えて言うなブルーチーズのカビの部分だ。

「アウディス少将! 気付かずにも、もももも申し訳――!」

「いいよいいよ、気にせずに。私は邪魔者のようだしね、名物カップルには」

敬礼するはやてに対し、ジェニーはラフに答える。一部の上層部から煙たがられている八神はやて二等陸佐ではあるが、どうやらジェニー・アウディス少将は彼女に対しては好意的のようだ。

「あ、あの・・・」

「ジェニーで構わないよ。――っと、リョウスケ君の事かい? 私の技を食らって気絶しちゃったみたいでね。魔力はセーブしたし、大きな怪我はしていないから安心していいよ」

「いえ、わたしは・・・何で良す――宮本良介四等陸士と演習を行うということになったかをお聞きしたいのですが・・・」

「その事かい」

言われ、ジェニーは腕を組みながら、妖艶な微笑を浮かべて言った。

「そうだね・・・・。彼に興味があるから、かな」

「えっ・・・・?」

「おおっと。言っておくけど彼をモノにしたいだとか、そんな意味で言ったんじゃないよ。稀有な能力を持ちながらも落ち目な出世街道を辿っているという男と、一度でいいから戦ってみたかったのさ」

時空管理局最強と詠われるジェニー・アウディス。風の噂で「変人女」と聞いたことがあったが、どうやらガセネタではなかったらしい。

その変人は良介に興味がおありのようだ。

「まあなんて言うか・・・・。経験を積めばもっと伸びる逸材だとは思うんだけどねぇ」

「余計なお世話でごぜえますよーだ」

舌を出し、良介はとことんまで嫌だと言いたげに顔を歪める。どうやら超が付くほどの格上の上司でも彼の言葉遣いは変わらないようだ。

そんな彼を見て、ジェニーは何故か笑みを漏らした。

「・・・ふふっ。でもいいのかなぁ? 今の地位に甘んじてて」

「・・・何が言いたい」

やけに芝居口調の言葉にいらつきながら、良介は怪訝そうにジェニーを睨む。何が言いたいのかさっぱり分からない。

「君は将来、はやて君の夫となるんだろう? そしていずれは子供もできるだろう。一家の大黒柱が――日本男子が最低の階級で家族を養っていけるのかなぁ?」

「うっ」

「もしかしてはやて君に全て生活費や養育費を出してもらう気かい? 情けないねぇ。それでもいいのかい君は?」

「うぐっ」

「いくらはやて君が構わないとしても、それに甘んじてそのままでいるのは実にカッコ悪いね」

「うぐぐっ」

「管理局は別に階級うんぬんはあまり気にしないけど、いいのかなぁ。天下のミヤモト・リョウスケ君がド底辺にいて?」

「うぐぐぐっ」

「今の君は“法術”という稀有な能力があるからこそ管理局に居られるが、もしいつか法術を使える人間が来たらどうする? そんな事になったら間違いなく上層部は喜んで君を解雇するだろうね」

「うぐぐぐぐっ」

「珍しく反論しませんね、良介さん」

シャマルはあっけらかんと言う。

反論したい。だが、浮かんでくる言葉は全て只の言い訳にしか聞こえないモノばかりだ。普段ならこんな時こそ無駄に達者なホラが出るはずだが、正論を言われ続けられては反抗しようがない。

言いたい放題言われ、失意に項垂れる良介。

すると、ジェニーは急に逞しい笑みを浮かべ、良介を見下ろした。胸の奥が気持ち悪い。この感覚を『嫌な予感』というのか。

杞憂であることを願い互いが、どうやら神は良介に対していぢわるのようだった。

「――そこで、君にチャンスを与えたいと思う。ミヤモト・リョウスケ君、陸上警備隊『第108部隊』へ入隊してみないかい?」

「・・・は?」

「えっ?」

突然言い出された案に、良介とはやては口を開けて唖然とした。

陸上警備隊『第108隊部隊』と言えば、スバルとギンガの父であるゲンヤ・ナカジマ率いる、管理局でも歴史の古い部隊である。

メビウス隊や機動六課には及ばないが、優秀な人材と経歴を持っているが、何故その部隊に転属しなければいけないのか。

そもそもチャンスという言葉自体よくわからないでいるのが現状だ。

「君は陸戦魔導師だろ? 『第108部隊』は管理局でもレベルの高い部隊だから、名と腕を上げるにはちょうどいい所じゃないかな? 近々新人への試験あるとも聞くし。それに、ゲンヤさんからもぜひ来てほしいっていう要望もあったしね。根回しも私の名前を使えばどうにでもなるから」

過去何度かゲンヤ氏から何度か誘われたことはある。だが、いずれも全て良介は蹴っている。

理由は二つ。いくら強くなれるからといって、今の状態でも自分は十分に満足しているからだ。

二つ目は――少しでもはやてと共に居、可能な限りフォローしたいからだ。

どう考えても馬鹿な理屈だが、良介にとってはこれが最高のやり方だと思っている。自分は表に出るべき人間ではない。舞台に立つのは才能と努力を兼ね備えた主役。

脇役は大人しく引き下がるが必定なのだ。

「悪いけど、遠慮しとく」

「・・・・わたしは構わへんよ」

「なにぃ!?」

やけに真面目な面持ちのはやてが言った突然の言葉に、良介は目を引ん剥かせて驚いた。

お前は何を言ってるんだ睨みつけてと言ってやりたい。

「やっぱりジェニーさんの言う通りや。わたしらの今後の将来のために、良介。せめて二等陸士までには・・・・・」

「・・・・・・・お前だけは味方だと信じていたのに・・・・・・!」

信頼している人間に裏切られるのは腐るほどだが――むしろ裏切ることが多いだろうか。

いや、そんな事よりもあまりの絶望と現実の悲しさに涙がちょちょぎれそうでならない。現実と言うのはかくも辛いものなのか。

今まで唯我独尊の道を歩んできたが、どうやらここが潮時のようだ。このスタイルは自分に一番近い属性のティアナに受け継がせるとしよう。

「どうやら決まりのようだね。というわけで、リョウスケ君。来週から君はゲンヤさんの部隊に配属ということでよろしく」

「おいっ! 俺はイエスとは言ってねえぞ!」

「ほぉー。ということは、出世の道は諦めて地べたを這いつくばる人生を歩むという事かい・・・・・」

「ぬぅっ・・・・・! ぐぐぐ・・・・・」

どうにもならない事態が忌々しい。ああ、忌々しい忌々しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーわけで、明日をもって俺は『第108部隊』に異動になってしまうというわけだ。以上」

今までの経緯を告げた瞬間、隊舎のロビーに集合していた機動六課の面々の表情が凍り付いた。

ダブル最強魔法少女は口をあんぐりと開けて良介を見、ヴィータは手入れをしていたグラーフアイゼンを床に落とし、新入り四人組もほぼ同じの反応。

特にティアナはかなりの衝撃のようで、目尻に涙が垣間見える。

メンバーの中の例外として、シグナムは冷静な面持ちで当の良介を見つめているが。

「本当なんですか・・・・兄さん」

「嘘だよね・・・・そうなんだよね、リョウスケ?」

「・・・言っとくが俺だって行きたくて行くんじゃないんだぞ」

「じゃあ、何で行くんだよ!?」

予想はしていたが、まず始めに突っかかってきたのはヴィータであった。座っていたソファから立ち上がり、怒りを帯びた目でこちらを睨んでいる。

「お前、はやてをフォローするために六課にいるんだろ! 約束を破るんじゃねえよ!」

「・・・・確かにそうだ。だが、これは俺とはやての将来の為に関する行動なんだ」

言い終えると、良介は微笑を浮かべてヴィータを見据えた。頭に手を置き、あやす様に撫でる。

「それにな、居るのは三ヶ月くらいだ。ずっといるわけじゃ――」

次の瞬間、グラーフアイゼンの横薙ぎが良介の頬を直撃。人間大砲と化した彼はタンスに頭から突き刺さり、気絶した。

「ばっか野郎ぉぉぉぉ! お前みたいな子分なんかクビだー!」

涙を浮かべてヴィータは部屋を出ていく。どうしてこんなメにあわなくちゃいけないのだろう、と良介は消え去っていく意識の中、思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼、宮本良介は『第108部隊』本拠地に居た。緑に囲まれたこの本拠地はいつ来ても清々しい気分になる。常に澄んでいる心が、さらに磨きをかけていくようだ。

「宮本良介四等陸士、ただ今到着したしました。これでいいか?」

渋い顔で良介は吐くように言う。グラーフアイゼンの直撃を受けた頬は湿布が張られているが、目の前に居る『第108部隊』隊長ゲンヤ・ナカジマは特に気にもせず話す。

「ああ。ようこそ、『第108部隊』へ。歓迎するぞ」

「来たくて来たわけじゃねえよこんちくしょう――っと、余りもんだけど、これ持って来たぞ。ギンガと一緒に食ってくれ」

そう言って良介は手提げ袋からメロンを取り出す。勿論、先日演習の相手をしたジェニーが貰ったメロンの余り物である。

一つははやての渡し、もう一つは言わずもがな、現持ち主の胃袋の中である。

「おっ、あんがとよ。お前にしちゃ気がきくな。こりゃ明日は小惑星が落ちるな」

「冗談にしちゃ随分とスケールがでかいなこの野郎!」

一発ぶん殴りたい気分になったが、勤務初日から隊長を暴行してはさらに笑い者される。階級を上げる為に、給料を上げるためにも自重せねばなるまい。

「そうだそうだ。お前に言わなきゃいかんことがあるんだ」

「? 何だよ」

「お前は本当に何をしでかすか分らんからな。監視役を付けることにした」

――監視役。まさかギンガだろうか。それならば早急に辞職願を出す他あるまい。彼女に監視されるくらいなら辞めた方がマシだ。

深刻な顔で思索する良介を見て、ゲンヤは笑みを交えて言った。

「安心しろ。ギンガを付けるわけじゃねえ。先週入隊したばかりの新人を付ける。演習の時とかもツーマンセルで動いてもらうぞ」

「・・・安心した。で、新人ってのはどういう奴なんだ?」

「ああ、ちょっと待ってろ――おーい、ジェームス! 宮本が来たぞー!」

「うぃーすっ!」

ゲンヤの呼びかけにすぐさま答え、その“ジェームス”は上空から跳んでやって来た。あまりに突飛な登場に、良介は半ば驚き、身をすくめた。

「どうも、宮本良介四等陸士殿! 自分はパトリック・ジェームス・ベケット二等陸士であります! 噂の宮本さんに会えるなんて、俺、感激です!」

やたらと威勢の良い若い男は満面の笑みで敬礼をする。背筋に少々寒気がしてきた。

他人から疎まれることは多々あるが、尊敬の眼差しで見られるのは生まれて初めてである。

というより、何故この男は階級が上のくせに敬語を使ってくるのだろうか。

若者らしい溌剌とした目、年は自分よりも幾つか下だろう。まだ少年のような青臭さが残る顔立ちはそのテの女性には大ウケ間違いなしだ。

「今日からこいつと一緒に寝食を共にし、共に練習をしていくことだ。わかったか?」

「・・・勘弁してくれよ」

「そうしてくれ、とジェニーと八神に言われたんだよ。一人じゃ不安だとな」

それほどまで自分は信用の無い人間――だろう。だからこそ何かと目をつけられるのだ。

何故だか無性に自分が情けなく思えてきた良介だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、これよりベケット二等陸士と宮本四等陸士に特別訓練を実施いたします」

「了解です!」

ジェームスは満面の笑みで目の前の教官に敬礼した。一方の良介はというと。

「・・・・・けっ」

「どうしました? 宮本良介四等陸士」

「・・・べっつにー」

「そうは見えませんね。何か不満でもありそうな顔です」

「そりゃそうだろ――お前が教官ならな!」

良介は突き刺さんばかりに人差し指を教官――ギンガ・ナカジマへと向けた。

彼女が二人の専属教官と知ったのはつい先ほど。

訓練実施地に赴いてみれば、平然と彼女が迎えたのだ。良介にとってこれほど嫌味ったらしいことはない。

今すぐにでも出ていきたいが、そんな事をすればギンガの鉄拳制裁が見舞われ、しばらくは動けない体になることは必定だ。

恐らくゲンヤは万が一に備えて、良介が逃げないためにギンガをわざと教官に配属したのだろう。

(あンのクソジジイ! 謀りやがったなぁ!)

良介が地団太を踏む中、ジェームスは敬礼したまま緊張の面持ちでギンガに言った。

「ナ、ナカジマ陸曹殿!」

「はい?」

「自分は・・・・その・・・・あなた――ナカジマ陸曹殿に憧れてこの道に入って・・・・! ええと、その・・・・・自分は! ナカジマ陸曹殿にご教授を承ることができて! 非常に光栄であります!」

「・・・ふふっ、そうですか」

まるで聖母のような、慈愛満ちた笑みを浮かべるギンガ。初めてみた彼女の笑顔に、良介はひどく感心した。

彼女に鉄の堅物女というイメージを持っていた良介であったが、こんな顔もできるのかと思った。

その笑顔を保ったまま、ギンガは訓練内容を伝えた。

「・・・さて、それでは訓練を開始します。内容は至極簡単。四時間以内にミッドチルダ西区を十周です♪

「ぶっ! 複雑じゃないけどスッゲェ難しいじゃねえか!」

「了解であります! 自分、頑張りま――ぶぼっ!」

余計な一言に、エルボーを叩きこんだ良介だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽がちょうど天辺へと上昇した時刻、二人は汗にまみれながらミッドチルダ西区を走っていた。計算が正しければ現在二時間で四周半ほどのはずである。

このままだとギリギリで間に合うか否かという状態だ。

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・スカした美少女もういらない・・・・・おれの彼女はM14・・・・」

「先輩・・・・何スかその歌・・・・?」

「昔知り合いの家で見た映画の歌だ・・・・・。今の状況とちょっとデジャヴった・・・・」

必死に思い出しているが、なかなか発掘できていない。たしか戦争は地獄だとかフゥッハッハーなど言っていた映画だったような気がする。

「ひぃ・・・ひぃ・・・。あの野郎、初っ端からこんな訓練ありかよ・・・。なあ、ジェームス?」

「はぁ・・・はぁ・・・。俺は、あの人の訓練なら耐えてみせますっ! ああそれと、俺の事はPJって呼んでください、宮本さん」

「PJ?」

Patrick(パトリック) James(ジェームス)。 だからPJなんですよ」

「・・・そうかい、わかったPJ。じゃあ俺の事は良介って呼んでくれ。お前みたいな狙ったような若造にああ呼ばれるとなぜか寒気がしてな」

「はあ・・・。わかりました、良介さん」

PJが首を傾げて納得した直後、良介はふと背後から視線を感じた。

言いようの無い寒気というか、気配というべきか。どちらにせよ自分を見ているのは間違いない。

嫌な予感を胸に抱えながら、良介は振り向いた。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・あわわっ」

良介は確かに見た。一瞬、柱の陰に真紅の髪の男児が高速で隠れるのを。

(・・・・・・はあ・・・・・・)

その男児が誰で、どこのどいつからの差し金からかはおおよそ見当はついている。

大きなため息を吐くと、良介はだんまりのまま、柱の陰へと向かっていった。

「おい、もうバレてるぞ」

それでも柱の陰の男児は逃げようともしない。覚悟でも決めているのか?

ここは少し苛立った口調で話してみることにした。

「――おい、エリオ」

「・・・・・はい」

その男児――エリオ・モンディヤルは申し訳なさそうな顔を浮かべて柱から出てくる。良介は屈み、エリオの目線に合わせると、率直に言いたい事を質問した。

「・・・大体分かるが、誰からの差し金だ?」

「・・・なのはさんとフェイトさんです。心配だから偵察してほしいって言われて・・・それで・・・・」

良介はさらに大きな溜息を吐く。加えて眩暈もしてきた。

ブラコンと愛情もここまで来ると気持ち悪いものがある。あの二人は職権乱用という言葉を知らないのだろうか。こんなことの為にダシに使われる彼に同情してしまう。

頭を振って呆れると、良介は気を取り直し、微笑を浮かべてエリオに話しかけた。

「・・・わかったエリオ。あいつ等にはこう伝えてくれ。“特に問題は無し。元気で訓練に励んでいる”ってな」

「わ、わかりました!」

パッと眩しいほどの笑顔を浮かべると、エリオは駆け足で去っていく。ちなみに教官がギンガであることは伝えなかったのは、いらぬ誤解を招く要因にしたくはなかったからだ。

すっくと立ち上がると、なぜか気持ちの悪い笑みを浮かべているPJの元へと戻って行った。とりあえず監視がこれで終わることを祈るしかない。

「何だよ、気持ち悪い笑い顔で見てんじゃねえ」

「いや、本当にモテモテですね」

「は?」

「知らないんですか? 良介さん、管理局の間じゃ男女問わずモテてるほうなんですよ。特に、俺が訓練校にいたころから良介さん、既に噂の人でしたから」

「そこまで人気者なのか、俺は」

「ええ。命令違反はなんのその。上官侮辱に暴行まがい。挙句の果てにはデバイスを個人販売したっていう伝説が広がっていましたよ」

確かに命令違反はしょっちゅうやっている。上官侮辱と暴行まがいは、はやてを庇う為であり、故意ではない。デバイスの個人販売は小金を稼ぐためと恵まれない訓練生に愛の手を差し伸べるために行ったものだ。

勿論、この行為は犯罪レベルであるため、はやてがいち早く流通を差し止め、デバイスの個人販売はデマであると流布させた。

とにかく、良介の噂は広範囲にわたっているということになる。

「そういえばこの前は自転車で時空を超えたとか聞いたんですが・・・ホントですか?

「ンなわけねえだろ」

「ですよねー」

無邪気に笑うPJだが、良介の顔は冷や汗が玉のごとく噴き出していた。

――いったいどこから情報が漏れたのか。あの事は関係者以外知らないはず。

正確には自転車で戦艦に乗り込んだのだが、間違って伝わったようだ。

だが、自転車で時空を超えたなぞ信じられては孫の世代どころか末代までの語られる伝説――勿論悪い意味で――である。口外しないよう口止めはしたはず。なのに何故?

単細胞の脳をフル活用して考えるが、結論にはたどり着かない。関係者はどれもこれも口の堅い連中だ。約束を破るわけがない。

「クロノの野郎が破るわけないし、聖王の奴らが言うわけねえしなぁ・・・・」

ぶつぶつと呟く良介にPJは怪訝な顔でにじり寄る

「・・・どうしたんですか?」

「いや・・・なんでもねえ。それよりも早く走らねえと、ギンガから説教されちまうな。行くぞ」

頭を振ると、良介は再び走り始める。PJを置いて。

「あ、ちょ、ちょっと! 良介さぁん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、早速西部を十周ですか。いやはや、彼女も初日から酷なトレーニングを課しますねぇ。さすがあなたのご息女のことだけはある」

「そうか? 俺はそんなにハードなことはやってない気がするがなぁ」

良介らがひいこら走っている頃、ジェニー・アウディスは第108部隊隊舎のゲンヤの自室にいた。

ゲンヤはジェニーが若かりし頃の恩師であり、今でこそ立場も階級もすっかり逆転してしまったが、それでもジェニーは上司のように思っているのだ。

「しましたよ。あの時を思い出すと、今でも悪夢を見ます」

「はっはっは。そりゃ良かったじゃねえか、ジェニー」

悪戯な笑みを浮かべ、ゲンヤはジェニーに目を向けた。

「そういや、お前が管理局に入りたての頃は・・・お前も宮本みたいな捻くれた性格だったよな?」

「・・・あの頃の私は若かったですからね。気に入らないことがあるとすぐ手を出したものですよ」

「しょっちゅう破壊行為をしていたクソガキが、今や最高の淑女にして管理局最強と言われるくらいの御身分になっちまったからな。俺も鼻が高いもんだ」

今でこそ誰もが尊敬し注目の目を浴びるジェニーであるが、管理局に入りたての頃は、それは酷い勤務態度であった。

彼女がゲンヤに出会ったのは二〇年程前――当時十四歳である。

ジェニー・アウディスはある次元世界で保護された孤児で、生まれながらにして絶大な魔力と魔導師としての類い稀な才能を持ち合わせた少女だった。

戦争の最中に育ち、幼少の頃から自身の力を見出していた彼女はまさに戦乙女と言える。保護された後、その才能を見いだされたジェニーは訓練学校に入学したのだが、入学直後から問題児として名を馳せたのだった。この時、まだ十二歳の頃だ。

気に入らないことがあればすぐに暴力行為。教官にイタズラは当たり前。それでも試験は全て完璧という言葉以上に合格するという様々な意味でトンデモない人間であった。

試験合格後、ジェニーは腕前を見込まれ武装隊へと入隊――しかも本局直属のトップクラス航空武装隊・『スカーフェイス隊』である。だがしかし、それで彼女が変わったわけでもなかった。

「スカーフェイス隊だったけか? あの部隊に所属してた時が一番酷かったって聞いたぜ」

「言わないで下さいよ。私にとっては消し去りたいくらいの嫌な記憶なんですから・・・」

彼女がスカーフェイス隊に入隊した頃、とある次元世界でロストロギアを巡る大規模な戦争が起き、スカーフェイス隊も駆り出される事となった。

懐かしき戦争に心躍ったジェニー。

そこで彼女は多大な戦果を上げたが、敵味方を無差別に攻撃するという無茶苦茶なやり方は同時に内部と外部から批判を呼び、ジェニー・アウディスは除隊処分となり、地方の基地へと飛ばされることとなった。

一等空士であった階級は三等空士と格下げ。一気に墜ちてしまった若きエースの性格は、それでも改善する様子はなかった。

そして二年後、彼女の人生の転機が訪れた――ゲンヤ・ナカジマとの出会いである。

「最初にお前に会ったときは・・・お前、かなり戸惑った顔してたよなぁ?」

「ええ。私にタメ口をした上官はあなただけでしたからね」

ゲンヤが彼女に出会ったのは偶然であった。

たまたまジェニーが居る地方の基地へと出かけることになり、そこでの帰路の途中に、期せずして一人で訓練を行っている彼女を見たのだ。

当時のジェニーは孤独で、誰とも接点を持とうとしなかった。誰も信じず、唯一人で己の腕を磨いていた。

ジェニーの悪評はゲンヤも知っていた。だが、同時に彼女の腕前も知っていた。一対多数でも余裕で劣勢をひっくり返すほどの強さと、戦争で培った戦況を見極める目。戦いにおいて天賦の才をもつ少女。

もし性格が今より丸くなれば、この素材は最高の逸材へと昇華すると確信があった。

ゲンヤは彼女を自分の部隊に来るように入隊を進めた。その支部からお荷物と言われていたジェニーにとって、それは『今よりかは良い場所』としか考えていなかった。

OKを出したジェニーは、陸上警備隊『第108部隊』へと入隊することとなるのだった。

「訓練で嘔吐、骨折、意識不明数知れず・・・・。今生きているのが不思議ですよ」

「まぁ、性格は良くなったから俺にとっては最高の三年間だったな。

入隊当日から第108部隊直々によるハードな訓練は始まった。経験したことのない過酷な内容に何度も体を壊し、血反吐も吐いたことすらある。

だが、そんな訓練でも彼女は決して逃げなかった。それは何故か。

――初めてありのままの彼女を見てくれたからだ。

自業自得とはいえ、今までは『戦うしか能がない問題児』としか見られていなかった。それが彼女の負い目となり、孤独を生んでいたのかもしれない。

だが、部隊の人間は彼女のレッテルを気にせず、真っ直ぐにジェニー・アウディスを見てくれている。

この頃から彼女の尖った性格は徐々に氷解をし始めていた。

「知ってました? ゲンヤさん達が私を純粋に見てくれたから、初めて人を信じてみようと思ったんですよ? ・・・・本当にありがとうございます」

「気にすんなよ。あぁ、でも執務官になるって言ったときはびっくらこいたぜ」

三年後の十七歳の春。突然ジェニーは執務官になると言って猛勉強を始めた。戦うだけでなく、人を救う事がしたいという、今までの彼女からは想像もできない理由からだった。

試験には五度落ちたが、晴れて執務官試験を合格した時のジェニーの顔を、今でもゲンヤはよく覚えている。

満面の笑みを浮かべたかとおもうと、一緒に付いてきた自分に抱きつき涙を流していた。その時はまるで娘を持った気分だった。

その祝いとしてゲンヤから貰ったのが、当時の新型高性能デバイス――後に彼女の無二の相棒にして親友となるインテリジェント・デバイス、スカイ・アイだ。

「――で、その二年後がお前の伝説の始まりだよな? “リボンの悪魔”さんよ?」

「もぉ、その呼び名は嫌いなんです。せめてリボン付きと言ってください」

二十一歳の頃、ジェニー・アウディス一等空士は第108部隊を離れ、中堅クラスの航空武装隊――第118航空武装隊『メビウス隊』に所属していた。

この年はあらゆる次元世界でロストロギアを巡る戦争が多発した時期で、多くの武装隊が戦線へと投入された。 『メビウス隊』も例外ではない。

彼女の部隊が投入されたのは、最も戦火の激しい次元世界で、敵側がロストロギアを使用した兵器により、大部分の兵力が消耗していた。

『メビウス隊』も半分以上の隊員を失ってしまったが、生き残りの一人のジェニーはたった一人で最前線にて味方の救出、敵兵器の破壊、ロストロギア奪取、加えて敵の精鋭部隊を打ち破るという常人では考えられない戦果を残したのだ。

この功績は未だに破られたことはなく、新人空士はまず彼女の功績を見、尊敬の念を抱くというほどだ。

この後彼女は双方の勢力から畏怖的存在と見られ、味方からは、当時彼女が付けていたリボンからあやかって『リボン付き』と呼ばれ、敵側からは『リボンの悪魔』として恐れられるようになった。

そして戦争終結までの一年間、彼女を中心とした『メビウス隊』は多大な戦果を挙げ、この戦争の勝利を牽引したといっても過言ではない。

この功績が認められ、『メビウス隊』は本局直属の部隊となり、管理局にその名を轟かせた。特に最も活躍したジェニーは一気に一等空尉へと特進し、若くして『メビウス隊』隊長となったのだった。

その後も『メビウス隊』、そしてジェニー・アウディスは様々な事件において優秀な功績を残し、管理局にその名を知らぬ者はいないほどになった。

「お前が宮本をここに寄こしたのも、俺の真似か?」

「ええ。ほんの僅かな才能でも潰すわけにはいきませんからね。もっとも、彼は自分に才能なんて無いと思っていますが」

「バカな奴さ。魔力資質のない俺だってここまでいけたんだ。アイツならけっこうなトコロまで行けそうな気がするんだがな」

「だからこそ、あなたに頼んだんですよ」

「へっ。ありがとうよ――っと、ほら。王手」

「・・・・やっぱり私はこのテのゲームは苦手です」

王手をかまされた状況を見て、ジェニーは失笑しながらため息をついた。だがその笑顔は一瞬にして消え、打って変って、至極真面目な面持ちとなった。

「そうだゲンヤさん。あの件ですが・・・・」

「どうだ?」

チェス盤を端に置き、ゲンヤの面持ちも険しいものとなる。

「情報を一つ掴みました。“プロジェクトF”という言葉に聞き覚えはありませんか?」

「いや・・・知らねえな」

「そうですか・・・・」

腕を組み、ジェニーは悶々としながら呟く。何人かの部下と同僚とともに極秘の調査を進めているが、殆ど進展は見られない。

必死に見つけたものが先ほどのプロジェクトFという言葉のみだ。

「計画・・・・F・・・・・・・何の頭文字だ?」

『プロジェクトF』

彼女がその言葉の真意に気づいたのは、数カ月後に起きたとある事件が発端となる。

 

 

 

 

 

「・・・・ふぅ」

すっかり夜が更けた頃、はやてはようやく仕事を終え、自室のベッドへと転がるように横になった。

普段なら良介におやすみの一言をかけて眠りに就くのだが、今はそういうわけにもいかない。彼は今ごろ、ギンガの特別訓練を受けて、死んだように眠っているはずだ。

今は吹っ切るべきだと言わんばかりにため息を着くと、シャワーを浴びるべくその場を後にした、その時だった。

「――ん?」

突然、背後で受信通知の電子音が鳴った。誰かが通信を入れている。ギンガからの報告か、はたまた空気を読まない上層部からの新たな仕事か。

そう思いながら、はやてはこちらからも通信を入れた。その相手は――。

『よう、まだ寝てなかったか』

相手は意外にも、良介だった。はやては目を剥いて驚き、体を少し仰け反らせた。

「・・・そっちも。訓練がキツくて寝とると思ったわ」

『へへっ、訓練はキツかったさ。ミッドチルダ西部を十周だぜ? おかげで全身筋肉痛だ』

「お疲れ様。今日はもう寝たほうがええんとちゃう?」

『かもな。でも、寝る前にお前に一声かけたくてな。・・・こんなところ、ギンガに見つかりゃ大目玉だがな――って、おいPJ。デバイスの点検は明日やれって』

通信越しに何やら横からカチャカチャと音がした。そして、男性の声が僅かに聞こえてくる。

「? 誰かいるん?」

はやての問いに、良介は肩をすくめて言った。

『ああ。ちょっと変わり者の後輩がな』

そう言った途端、良介の横から一人の青年が敬礼をしながら割り込んできた。脇には汎用型デバイスが抱えられている。

まだ年若い、自分と同じほどの年齢の男性だろうか。女顔でかわいい青年だ。

『どうも。お初にお目にかかります、八神二等陸佐殿。自分はパトリック・ジェームス・ベケット二等陸士であります。趣味はポロ。あの、馬に乗ってやるやつ――おわわっ』

自己紹介は急遽中止され、青年は横に突き飛ばされた。

『とまぁ、こんな奴と一緒に訓練するわけさ。さて、もう時間だな。明日も暇があったら通信するからな』

「うん、いつでも待っとるからな」

笑顔ではやては応える。良介も笑みを浮かべると、寝る前に言うべき台詞を言った。

『おやすみ』

「おやすみ」

直後、通信が切れ、あたりに静寂が満たされる。しかし、はやてはまるでその静寂を楽しむかのように目を閉じ、少しの間、ベッドの片隅で座っていた。

「・・・・よし、明日もがんばらなあかんな」

勇ましく立つと、決意を固めるように握り拳を作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――二ヶ月後――

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか・・・・げふっ・・・・やるじゃねぇか・・・・PJ・・・・・・・!」

「良介さんこそ・・・・・ふぅ、ふぅ・・・刀一振りで・・・・よく持ち堪えられますね・・・・・・!」

燦々と日差しが降り注ぐ朝。気温、湿度共に高し。そのせいで滝の如く汗は流れ、脱水症状一歩手前だ。

「・・・・・負けたほうがジュースおごりだぞ?」

「いいですねぇ。昼飯も込みにしましょうか?」

訓練も滞りなく行われ、二か月がたった今、二人はデバイスを使った訓練――要するに一対一(タイマン)勝負を行っている。

ミヤと一体化(ユニゾン)している良介と、得物である槍型デバイスで攻め入っているPJ。勝負は均衡状態。二時間ほど前からこのような状態である。

「お前・・・・最初はヘタレかと思ったけど、なかなかガッツのある奴じゃねえか。見直したぜ・・・・・」

「それは・・・・・恐れ入ります!」

言葉の間を縫ってPJの突きが入るが、良介は寸でのところで避け、カウンターの左ストレートパンチを後輩の顔面に食らわした。PJはそのまま後ろに倒れるかとおもいきや――。

「っ! なんの!」

痛みを堪えて良介の左手を掴むと、PJは渾身の頭突きを顔面にぶちかました。良介の鼻血が辺りに飛び散る。

「やりやがったなこの青二才!」

「先輩に負けるつもりはありませんからね!」

鍔迫り合いになり、勝負はまたもや均衡状態となった。

そんな中、十数メートル離れたところで、ギンガは二人を監視していた。休憩がはいるまであと三十分。それまで彼らの体力が持つかどうか。内心、ギンガは良介が最後まで立っていると自分に賭けていた。

と、

「や、ギンガちゃん」

ふと肩を掴まれ振り返ると、そこには制服姿のジェニーがいた。すかさずギンガは敬礼をする。

「アウディス少将。何か御用ですか?」

「あ、うん。ちょっと暇だから観察にね。それと、他人(ひと)が見ていないときは昔のようにジェニー姉さんと呼んでもいいんだよ?」

「・・・いえ。職務に就いている際はこのように呼ばせていただきます」

ジェニーとナカジマ姉妹は彼女らが保護された時から仲である。ギンガには勉強の師として、スバルには人生の師として

公私にわたって長い仲であるこの三人は、もはや家族同然である。

「堅いねえ、君は。ゲンヤさんやリョウスケ君を見習ったらどうだい?」

「父はともかく、宮本四等陸士はむしろ反面教師です」

「はっはっは、釣れないなぁ」

声をあげて笑うと、ジェニーは口端を釣り上げ、未だに決着のつかない男二人を見やった。

「どうだい? 二人の様子は」

「宮本四等陸士はここ最近で随分と成長しましたね。魔術的素質はほぼ皆無ですが、身体的素質は十二分にあります。このまま続ければ、並み以上の陸戦魔導師としてやっていけるでしょうね」

「そうか・・・・。ベケット君は?」

「さすが訓練校を首席で卒業しただけのことはあります。素質と才能はかなり高いですから上手くいけばAAAランクにもいけるほど成長できる逸材かもしれませんね。新型のデバイスを与えましたが、うまく使いこなしています。父の目は確か、ですね」

「リョウスケ君にデバイスはあげないのかい?」

「あー・・・・そうしようとしたのですが、ミヤ空曹長がどうしてもダメだと言って・・・・。仕方なく条件をある程度対等にする為、融合させているんです」

「なーる。モテモテだねえ、リョウスケ君は」

ジェニーとギンガが見つめる中、良介とPJの戦いも佳境を迎えていた。

「隙ありです!」

「のわっ!」

一気に間合いを詰められた良介はとっさに刀で受け止めるが、そこで足を崩してしまい、上から押さえ込まれている形となってしまった。

今は自慢の筋肉でなんとかこの状態をキープできるが、そう長くは保てない。だが、相手が力を抜かない限り、この状態を切り崩すことも不可能だ。

まして相手はデバイス、こちらは唯の刀。耐久性は火を見るより明らかだ。

「さぁ良介さん。前々回のように降参しますか?」

「んぎぎっ・・・・! 降参なんてするもんかよ!」

(ちょ、ちょっと! 火に油注いでどうするんですかぁ!)

「さいですか。ならっ!」

PJは腕に万力をこめて良介を押し込みにいく。この素晴らしく不利な状況を打開すべく、良介の脳は最も有効な手だてを実行させた。

――自慢のホラである。

「おぉっ!? 見てみろPJ、ここからだとギンガのパンツが見えるぜ!」

「それは二十戦目の時に言いましたよ!?」

迫真の演技でなんとか気を逸らさせようとするが、PJは引っかかる素振りも見せない。

「えぇと・・・・・あっ! ギンガがお前のこと手を振って応援してるぞ!」

「それは前回言いました!」

「くそぅ!」

PJとギンガを交互に見合わせるが、何かネタになるようなホラは思いついてこない。神はとうとう孤独の剣士を見捨てたのか。

「ぬぐぐぐぐっ・・・・・・んっ?」

だが、勝利の女神だけは彼を見捨てなかった。それは、暑い日だからこそ目の当たりにできる光景だった。

男なら誰もが見てしまう誘惑の光景。

「おいPJ! いつの間にか居るアウディス少将のワイシャツからブラが汗で透けて見えるぞ!」

「マジですか!?」

嬉々としてジェニーを見たPJ。一瞬だけ力が抜かれたのを、良介は見逃さなかった。

「まだまだ甘いぜ青二才!」

デバイスを押し返すと、脇腹にエルボーを叩き込み、間髪入れずに首根っこを掴み、今度はこちらが押し倒した。

刀の切っ先がPJの眼前で止まる。目を剥いて、PJは悔しそうに言った。

「降参・・・・です」

「よぅし。これで通算八十四勝九敗二引き分けだな。今日の飯はお前のおごりだ」

小さくガッツポーズをする良介を見るジェニーとギンガ。彼の勝利の要因を作ったジェニーは軽く拍手をし、ギンガは呆れた様子で彼女を見ている。

「おぉ、予想通りリョウスケ君の勝ちか」

「・・・・少将。ブラジャーが見えていますよ」

「おぉっと、これは失礼」

満足げな面持ちで上着を着るが、汗に濡れるその姿が艶やかであることを知らないのは自身のみだ。

「よし。それじゃ、私は仕事に行ってくるよ」

「演習ですか?」

「ああ。ちょっとしたガチンコタイマン勝負で、ね」

その言葉に、ギンガは怪訝な顔で首をかしげる。どこのバカが管理局最強の人間と一人で張り合おうというのか。

「午後に始まるから、あの二人を連れて見に来るといいよ。それじゃ」

爽やかな笑顔を浮かべて、ジェニーは去っていく。未だに理解できないと言いたげなな顔をしているギンガを置いて。

 

 

 

 

 

 

 

ジェニーは広大な荒野のど真ん中に立っていた。手には稼働状態の『スカイ・アイ』が握られている。

静けさが漂うのを楽しんているかのように、ジェニーは目を閉じ、微笑を浮かべながら口笛を口ずさんでいた。

「・・・・来たね」

口笛を止め、ジェニーは目を開ける。同時に一陣の風が彼女の髪を撫でたかとおもうと、次の瞬間には、数メートル先に純白のバリアジャケットを装着している一人の女性が立っていた。

「君とこの姿で向かい合うのは・・・・訓練校以来かな?」

「そうですね。非常勤で来たあなたに弱点を指摘されて、その数年後に事故を起こしてしまって・・・・」

「身をもって自分の弱さを知った、か。・・・・さて、与太話はこのくらいにしようか」

「ええ。言っておきますが、手加減なしでいきます」

「構わないよ。エースオブエースの君が私の二つ名を受け継ぐに足る存在になれるかどうか、見極めてあげるよ――高町なのは君!」

「っ!」

ジェニーがスカイ・アイを構えた瞬間、なのははそれより一歩早く、アクセルシューターを放った。魔力の光線がジェニーへと襲いかかろうとしている

「っとぉ!」

難なく全弾を避けるとジェニーは再びスカイ・アイを構えるが、既になのはは居なかった。見つけるべく目を泳がすと、上空からただならぬ魔力を彼女は感じた。殺意をはらんだ裂帛の気合とともに。

そこには、シューティングモードのレイジングハートを構えるなのはがいた。桜色の魔力が先端へと収束し、そして――。

「ディバインバスター、シュート!」

Divine Buster. Extension

なのはが最も得意とする砲撃魔法がジェニーに向かって放たれた。だが彼女は大質量の光を見据えたまま、動こうとはしない。まるで一つ一つを観察しているかのように、目を光らせている。

「ふむ・・・・・」

次の瞬間、ディバインバスターの光はジェニーへと直撃した。粉塵が巻き起こり、そこを中心として小規模のクレーターが出来上がっている。並の魔導師なら今の一撃でノックアウトだが、彼女にはバリアジャケットに傷一つか二つが関の山だろう。

煙が晴れ、なのははクレーターに目を凝らす。常時撃てるよう、杖は構えたままだ。

「牽制、及び攻撃へと転じるスピードはなかなかだね。合格」

「はっ――!」

その声はあり得ない場所から聞こえた。先ほどまで地上のグラウンド・ゼロにいたはずの魔導師は、いつの間にか自分の背後に移動していたのだ。

振りえると、傷一つないジェニー・アウディスがそこにいた。あの砲撃をくらって無傷。予想の範疇を超えている。

なのははすぐに距離を取るが、それ以上にジェニーのスピードは早かった。ゼロ距離へと移動したジェニーはなのはの先見を逸脱し、左の拳を彼女の腹に狙った。

牙をむけた拳は、内臓に押しつぶさんばかりに腹へとめりこんだ。

「っ! ゲホッ――!」

「単独戦闘の場合、いつゼロ距離での戦闘が起きるかわからない。その場合の対処を勉強しておくように。以上っ!」

言い終えたジェニーはなのはのバリアジャケットの襟を掴むと、豪快に地面へと投げつける。息苦しいなのははなんとか軌道を持ち直し、滞空すると、すぐに膨大な魔力の収束を感知した。

ジェニーの相棒スカイ・アイが先端にサファイア色の魔力を収束させ、今にも放たんとしている姿を、なのはは見たのだ。

「ディバイディングバスター、デッドエンドシュート!」

Dividing Buster, Fire

直後、超大質量の魔力の光が天地を駆け抜けた。間一髪それを避けたなのは。地面へと直撃した魔力はキノコ雲を発生させんばかりの衝撃波を起こし、地上にまるで巨大隕石でも直撃したかのような爪痕を残した。

その威力、まさに核爆発級。

「・・・・・・・・すごい」

なのはは改めて自分とのレベルの差を思い知った。今の砲撃魔法を食らっていたら、間違いなく体は粉微塵に吹き飛んでいただろう。相手――ジェニー・アウディスは殺す気で闘いにきている。

証拠に、なのはを見下げる彼女の眼は、さきほどまでの穏和な女性の目ではない。冷徹に徹する戦士の目だ。

このままではジリ貧。負けるのがオチだ。こうなったら切り札をだすしかない。

「・・・・レイジングハート」

How did do you, sir?

「一気に決着をつけよう。長期戦じゃまず勝ち目はないし、近距離戦じゃまともに戦えないから・・・・」

Right. Exceed mode ready』 <わかっています。エクシードモード、レディ」

エクシードモード――なのはとレイジングハートにとっては限定解除モードである。二人は限定解除を行い、短期決戦でケリをつけるつもりなのだ。

だが、その隙を見逃すほど、ジェニーは甘くない。

「いくよ・・・・限定解除!」

「遅いっ! ディバイディングバスター、デッドエンドシュート!」

一瞬遅れてディバイディングバスターがなのはへと直撃。オーバーSランクの砲撃をまともの受けてはさすがのエースオブエースもただではすまないだろう。

ジェニーはそうタカをくくっていた。だが、なのはもまた彼女の予想を超えていた。

「・・・・! ほぉ、さすがだね。そうでないと面白くない」

直撃をくらったはずの高町なのはは傷一つなく無事だった。エクシードモードとなったなのはに、生半可な魔法は通用しない。

「・・・・最初から全力全開でいきますっ! ブラスターモード!」

Bluster mode ready

掛け声とともにレイジングハートの形状が変わっていく。なのはの『最後の切り札』――ブラスターモード。彼女を倒すにはこのモードでキメるしかない。

体にはかなり負担をかけてしまうが、一撃で倒せるのなら安いものだ。

「なら私も・・・・・。スカイ・アイ、ストーンヘンジモード、レディ!」

Yes, Mom. Stone Henge mode ready----set up

次いでスカイ・アイも形状を変える。槍部分である先端が銃の砲身へと変わり、斧の部分も全く形をかえ、傘の如く展開した。

砲撃戦闘主体モード、ストーンヘンジモード。十数年前に彼女が戦争で活躍した際に彼女がもっとも多用し、放った閃光は敵大隊を容易く壊滅させたと伝えられているほど、強力な砲撃魔法がたたき込めるモードだ。

ジェニーはさながら曲芸の如く豪快に手で回し、派手に格好つけながらスカイ・アイを構える。対するなのはも豪快に振り回すと、レイジングハートを構えた。

二人は互いの発する気迫に臆することなく、目の前の相手を見据え、臨戦態勢をとる。距離にして数十メートル。この距離なら間違いなく当てられる自信が二人にはあった。

(この一撃で・・・・)

(・・・・倒す)

一瞬の間の後、閃光が青空を駆けた。

「エクセリオンバスター、フルパワァァァァァァァ!」

Excellion Buster

「インディグネイト・ブラスター、フルバーストオォォォォォォ!」

Indignant Bluster, Full Burst

二人のデバイスから放たれた超大質量の魔力がぶつかり合う。火花が散り、体が吹き飛ばされんばかりの衝撃波が天地を揺るがしていく。ほんの少しでも力を抜けば間違いなく相手の魔力に飲み込まれてしまうだろう。

今はまだ均衡を保っているが、いつそれが崩れるかは分からない状態だ。加えてデバイスの出力的にも限界が近い。このままでは決着の前にデバイスが崩壊しかねない。

「うっ・・・・くくっ・・・・・・!」

「ぬぐっ、うううううぅ!」

なんとか耐え抜いている二人の声は衝撃波にかき消され聞こえない。その中、なのはは呟くように、レイジングハートに話しかけた。

「くぅぅ・・・・・レイジングハート。かなり・・・・無茶しちゃうけど、いい?」

Don’t worry, sir. Go on』 <構いません。やってやりましょう>

「・・・うん、いくよ! ・・・・全力っ、全っっっっかぁぁぁぁぁぁぁい!

「――っ!」

ジェニーが目を剥いて驚いた直後、なのはの“全力全開”の一撃が均衡を崩し、なのはのエクセリオンバスターがインディグネイト・ブラスターを飲み込んだ。

魔力はそのままバランスを崩したジェニーもろとも地上へと一直線に向かい、さきほどよりも比べほどにもならない大爆発を起こした。

いくら天下のジェニー・アウディスでも、さすがに今の技を食らったのなら間違いなく気絶しているはずである。なのはは爆心地を注意深く見つめ、土煙が晴れるのを待った。

そして煙が晴れ、巨大なクレーターの中心に大の字で倒れている女性の姿があった。それは間違いなく、ジェニーである。

「・・・はぁ、はぁ・・・・・。やったね、レイジングハート」

Sir. Congratulation

ほぼ魔力を使いきったなのはは、疲れ果てたオーラを漂わせながらも、その面持ちは歓喜に満ちていた。自分はようやく――。

「え――?」

突然目に入った光景に、なのはは驚きの面持ちで声を上げた。

彼女が驚いたのも無理はない。先ほど完全に気絶させた相手が、これほどの時間で起き上ったのだから。

「痛たた・・・・・。さすがに直撃はキツかったなぁ・・・・」

バリアジャケットをボロボロにさせながらも、ジェニーはその場に立った。全力全開の一撃をもってしてもまだ立ち上がれるとはどういう体をしているのだろう。

一瞬、身体的に頑丈な義兄が頭に過った。

だが今の彼女は満身創痍のはず。あと一発、最後の一撃を加えれば――。

なのはは残りの魔力を振り絞り、レイジングハートをジェニーに合わせる。

「やるねえ、なのは君。予想以上の腕前だ」

狙われているにもかかわらず、ジェニーは至極余裕そうな笑みを浮かべている。この期に及んで何か仕掛けるつもりなのか。

「これならあと十年で私に追いつけられるね。今のレベルで私をここまで打ちのめす事が出来た時点で百二十点だよ」

「・・・・・っ」

「・・・・さて、ここからは特別試験だ。本気をだした私に傷一つつけることができたら、二百点満点だ」

次の瞬間、爆発的な魔力の流れがジェニーに集った。彼女はまだ奥の手を持っているのだ。

なのはの第六感――本能が危険を告げている。今ここで撃たなくばトンでもない事態になる。撃つべきなのに、体の芯が恐怖に震えて撃つことができないでいる。

魔力がジェニーへと完全に集った瞬間、彼女は奥の手の合言葉を言い放った。

「――限定、解除」

「デ、ディバインバスター!」

渾身の一撃がジェニーへと向かう。しかし、直撃する直前、なのははジェニーが一気に跳躍する姿を捉えたのだ。

なのはよりもはるか高空に、“本気を出した”ジェニーは存在していた。

フレスベルクモード(この格好)になるのも十数年ぶりだな、スカイ・アイ?」

Sir.

限定解除を行った彼女の姿は恐ろしいほど様変わりしていた。腕部と脚部には甲冑、そして外套の如く大きなマントが装着されている。

加えてバリアジャケットはより体に張り付くように形を変え、何よりも、ルビー色であったそのバリアジャケットは漆黒を基調としたものとなっていた。

その姿は騎士の姿に身を包んだ悪魔そのものである。

スカイ・アイもハルバートよりも、巨大な刃を持った槍と化し、貫けぬものなど無いと言っているかのような豪快な形状となっている。

これが彼女の限定解除を行った姿――フレスベルクモードである。

「・・・さぁ、いくよっ!!」

ジェニーがスカイ・アイを構えた瞬間、視界を埋めつくほどの巨大な“インディグネイト・ブラスター”がなのはへと向かった。

バリアジャケットの一部を犠牲にしてなんとかなのはは避けたが、もし今の技を食らっていたなら、間違いなく塵一つなく消滅することだっただろう。

証拠に、さきほどまで凛々しく存在していた山が一つ、跡形もなく消し飛んでいる。あの人はどこまで自分の予想を斜め上に行くのだろうか。

今の自分に、彼女――ジェニー・アウディスを倒すことは不可能なのだ。なのはは呆然として、空を見上げた。

「スカイ・アイ。久しぶりに、いくよ?」

ジェニーは悪戯な笑みを浮かべて言い、スカイ・アイも遊んでいるかのように言った。

Yes, Mom. Go on!』 <了解です。ぶちかましましょう!>

刃へと魔力が収束され、凝縮されていく。普通の魔導師なら制御不可能なほどの魔力をジェニーは平然と操っている。

狙いは高町なのはだ。

「粉塵滅砕! スターダスト・ブレイカァァァァァァ!

ルビー色の光が一閃、天から地へと光速で駆け抜ける。同時に地面が大きくひび割れ、まるで隕石でも墜落したかのような爪痕を残していった。

直撃を受けたなのはは悲鳴を上げることもできず、光とともに地上へと撃墜された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・ん・・・・?」

ゆさゆさと揺られる感覚になのはは濁った視界のまま目を覚ました。頭がズキズキと痛み、おまけに思考もまともに働かない。

意識の復活と同時に気絶する直前の悪夢が蘇る。スターダスト・ブレイカーをまともに食らい、一瞬三途の川が見えたような気がした。

“アレ”を食らって死ぬほうが当たり前で、気絶するほうがおかしいかもしれないと、なのはは思った。

「あわわわわ・・・・・」

歯を震わせ、涙を流すなのは。その姿はどう見てもエースオブエースと呼ばれる教導官とは思えない

「お、目が覚めた?」

「あれ・・・・・ジェニー・・・さん?」

「そうだよ。ふぅ、記憶が吹っ飛ばなくてよかったよかった」

「え?」

「いや、こっちの話さ」

肩越しにへらへらと笑うジェニー。そこでなのはは自分がどうなっているかを初めて知った。

いつのまにか演習場からどこかの通路におり、しかもかのグランド・エースに背負われているのだ。

「あ、あれ・・・? なんでわたし・・・・・」

「ああ。ちょっとハメ外し過ぎちゃったからね。責任とって私が医務室に連れて行ってあげるよ」

「い、いいですよ。一人で――」

「ちょっと威力はセーブしたけどさ、しばらくは手足が痺れてるはずだよ。そうじゃないかい、なのは君?」

言われてみれば、四肢に力を込めてもピクリとも動かない。間違いなくあの技の後遺症だろう。

大きく溜息を吐き、なのははジェニーに身を任せた。

それでも、どこか安心できる感覚だった。まるで母におんぶをされている、柔らかく大きな背中に包まれているようだ。

「さっすがだね、なのは君。君なら私の後を継げる人材だ」

「そんな・・・。やっぱりわたしはまだまだジェニーさんには敵わないです」

「でも、もし地上支部に何かがあった際に君がいれば、何とかなるよ。そんな気がする」

ジェニーは感慨深げに言う。メビウス隊は本局直属であるため、有事の際は何かと手続きをしなくば出撃できないのが現状である。

今は彼女が地上支部にいるのはある要件で滞在しているに過ぎない。

その為、メビウス隊だけでも特例としてスクランブルで出撃できるように上層部を説得していたりもするのだ。

「あ、そうだ。そういえばリョウスケ君について知っておいたほうがいい情報があるんだけど・・・・」

「? 何かあったんですか?」

「ああ。実はね、リョウスケ君――」

耳元でこそこそと言うジェニー。全容を聞いた途端、なのはの面持ちが一気に険しいものとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

同じ頃、良介とPJはさきほどまで演習が中継されていた画面を見ながら呆然としていた。

まさに化け物対決。なのはとジェニーが管理局内で半ば恐れられている理由がわかった。血戦場は大災害が過ぎ去った後のようにボロボロで、大抵の演習でもここまで破壊されることはない。

絶対に――そう絶対に、彼女らを敵に回してはいけないと二人は自分に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけばいつの間にか一つ季節が過ぎていた。『第108部隊』に所属して、既に二ヵ月半が過ぎようとしている。それは同時に機動六課に戻る日が近いということだ。

ヴィータがお忍びで来て、見た途端にグラーフアイゼンで地面に埋まらされた事もあった。シグナムが特別に武術の稽古をつけてくれたこともあった。

何故かジェニーが来て「見切りの訓練」と言って、スターダスト・ブレイカーをぶちかまして死にかけたこともある。おかげで動体視力が以前よりも良くなった気がしないでもない。

ティアナとフェイトが職務と訓練をサボって訓練風景を覗いているのを見かけたこともあった。普段ならついてくるはずのなのはが来なかったのが解せないが。

その他様々なこともあり、良介とPJはジェニーの監督による『試験』を明日に控えていた。

「いよいよ明日ですね、良介先輩」

二人は個々のベッドの中で話し合っていた。こんな風に会話できるのも今日の夜で最後。

思い残すことないように、二人は夜更けまで話している。

「ああ。色々あったけど、ありがとうよPJ」

「いえ。俺も先輩と一緒に訓練できて楽しかったです」

「あ、そういえば結局戦績はどうなったんだっけか?」

「えーと・・・・九十九勝十三敗四引き分けで、先輩の勝ちですね」

「おぉ。んじゃ、明日の試験が終わったら酒を奢ってもらうぞ」

「構わないッスよ。覚悟はしてましたから」

PJは自嘲気味に笑う。実際のところは自分が勝つと踏んでいたが、予想以上に良介が強く、加えて成長を遂げてしまい、結局僅差で負けてしまった。

(また一人、越えなければいけない壁ができちゃったなぁ)

昔出会ったとある魔導師に憧れて管理局に入り、その魔導師に追いつくべく何年も努力をしたが、まだまだ自分は成長したりないらしい。

おそらく強さは魔力だけでは決まるものではないのだろう。

先輩(良介)にあって、自分に無いもの。それが何かはわからないが、いつか絶対に彼を超える人間になってみせる。

宣言するかのようにPJは握り拳を作った。

「先輩」

「あン?」

「・・・なんでもないッス。早く寝ましょ。明日に備えて、ね?」

「そうだな。おやすみPJ」

「ええ。おやすみッス」

そうして二人は安らかに目を閉じる。

この先に待ち受ける地獄を知らずに――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験当日。

その日はえらく快晴であった。まるで天が二人の成功を祈っているかのようである。

試験場はかつて機動六課内での演習で使用した、廃墟の立ち並ぶ街だ。

試験内容は極めて単純である。目の前に出てくる標的を撃破。もしどちらかがやられてしまった場合は、その人物は失格というものだった。

そうジェニーに言い渡されて十分ほどが経ち、二人は草原のど真ん中に突っ立っていた。

「・・・そろそろですね」

「ああ。小便ちびるなよ」

(下品です! ミヤは――)

「黙らっしゃい」

二人は上下左右に目を配らせる。どこから何が出てくるのかは全く聞いていない。ガジェットドローンか、はたまた違うものか。

監督が監督なので、まるで予想がつかない。

それぞれの獲物を構えて数分経った頃、突然PJが口火を切った。それも、はにかんだ様子で。

「良介先輩。俺、実は地上支部に恋人がいるんですよ」

「何だ急に」

「・・・この試験が終わったらプロポーズしようと思ってるんです」

突然の告白に良介はどう返事をしていいのか分からなかった。このような時は励ますべきなのか。

「・・・お前、ギンガが好きなんじゃないのか?」

「ナカジマさんはあくまでも先輩として憧れの人です。それに俺、花束も買ってあったりして――」

次の瞬間、轟音とともにPJの言葉はそこで途切れた。そして隣にいたはずの彼の姿も、瞬間移動いたかのように消えてなくなっていた。

良介は一瞬目をぱちくりとすると、その直後、酷く慌てた様子で辺りを見回した。

「な、何だぁ!? 何が――!」

前に目を向けた時、動揺の面持ちは消えた。そして顔は一瞬にして焦りへと変わった。

何故なら・・・・。

「久し振りですね――」

彼の目の前に、予想の斜め上を行く相手が空から推参してきた。これの相手をするとは一体監督は何を考えているのか。

勝てるわけがない。こんな相手に。良介は生唾を飲み、恐怖した。

「――兄さん」

現われたのは宮本良介四等陸士の相手にして、今先ほどPJを吹き飛ばした張本人。高町なのは一等空尉その人である。

しかもエクセリオンモードでのご登場だ。

(こ、こいつに勝てってか・・・?)

(・・・ど、どうしましょう!? 勝てるわけないですよぉ!)

しかもその面持ちはやけに冷ややかで、恐怖を感じる。例えるなら般若。いや、魔王かもしれない。はたまた冥王か。

どちらにしろこの顔は間違いなく怒っているものだと良介は思った。何か彼女を怒らせる事をしただろうか。

「な、なのは・・・・。何をそんなに怒ってるんだ?」

「あなたがそれを言いますか、兄さん。自分が行ったことを忘れましたか?」

「へ?」

行ったこと。ここ半年は特に何も悪行はしていないはずだ。ゲンヤやギンガの飯にちょっとしたいたずらをした以外は。

だがその程度でなのはがここまで怒るわけでもないし、機動六課に伝えられてもため息程度だろう。

ならば彼女は何に怒っているのだろうか。

「俺は・・・・何もしてないぞここ三ヶ月は」

「しらを切りますか・・・。見損ないましたよ」

そう言ってなのははレイジングハートを構える。

「ま、待て! 俺が何をしたっていうんだ!?」

「・・・・はやてちゃんの愛を裏切ったこと、断じて許せません」

「え?」

「・・・この写真を見てもわかりませんか」

なのはが手に持っていた十枚の写真を良介の足元に投げる。そこに写っていたのは――。

「なんじゃこりゃあ!?」

写真にはなんと抱きしめあっている良介とギンガの姿が写されていた。しかもほかの写真にはキスをしている場面、果てには交わりあっているあられもない姿が収められている。

断じてない。いくら酔っていても自分はこんなことはしない。常に隣に居たPJが証人だ。

「俺はこんなこと・・・・」

「わたしも初めは信じたくありませんでした。でもギンガさんに聞いて、それが本当だって言われて。この写真も記念に撮ったって・・・・!」

俯くなのはの握り拳がわなわなと震える。相乗して殺意のオーラが視認できるほどに発現している。

まずい。非常にまずい。このまま行けば本当に殺られてしまう。

「・・・・兄さん」

なのははゆっくりと顔を上げる。そこらのホラー映画より遥かに怖いワンシーン。あまりの恐怖に歯の根がガクガクと震える。

その顔に浮かべられていたのは、静かな怒りを纏った笑顔。

「頭・・・冷やしましょうか・・・・・」

なのはが砲撃魔法の構えに入った途端、良介はそこから猛スピードで逃げだした。

無実の罪で罰せられるなぞ御免である。なんとかして無実を証明しようとも、証人は砲撃魔法を食らって既にノびている。

本当に倒すしかないのか、彼女を。

「今日は人生最悪の日だああぁぁぁぁぁぁぁ!」

(まったくもってですーーーーーー!)

二人の悲鳴は、地面に直撃するディバインバスターの轟音でかき消されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らがやっとのことで逃げ込んだのは小さな家々が数十に並ぶ元住宅街らしき場所であった。その一つ家に息を潜んで二人は隠れている。

「ここに隠れりゃしばらくは見つからねえだろう」

「グスッ・・・なのはさん、怖かったですよぉ・・・・・」

「バカ野郎。俺だって泣きたくらい怖かったわ!」

融合を解いた二人は、膝を突き合わせて作戦会議を始める。

どうやってあの悪魔を倒すか。いや、それ以前に勝てるのかどうか不安である。距離をとれば砲撃魔法の餌食。近寄ろうとしても、圧倒的なスピードでかけ離され、これまた砲撃魔法。

本当に勝てるのだろうか?

「うーん、マウントポジションになれればなぁ・・・」

「出来るわけないですよぅ。ヴィータちゃんだってレンジ内に入るのが難しいですよ?」

「ん〜・・・・ん!?」

腕を組んで難しい顔をする良介に、轟音と地震でも起きたかのごとく震動が襲った。埃が舞い落ち、二人は盛大にせき込む。

「何だ何だぁ?」

良介とミヤは慌てて、ボロボロの窓から辺りを覗う。

「・・・おーまいがっ」

「はわわわ・・・・。もう終わりですぅ・・・・」

二人の目の前では、家々が次々と跡形もなく消し飛んでいく風景が見えていた。恐らくなのはが上空から砲撃魔法を使って一つ一つ潰しているのだろう。

これで逃げ場が無くなってしまった。本当にどうするべきか二人は頭をフル回転させた。

「うぅ〜む、あいつがスターライトブレイカーを使って、それで俺が避けて、その隙に俺がなのはをシメるってのは・・・・」

「そんな夢みたいな事、できるわけないじゃないですか!」

「あ〜、くそっ。俺そっくりの影武者がいれば――ん? 影武者?」

良介はふと影武者という単語に何か引っかかるものがあった。なぜ影武者が引っ掛かるのか。自分でもよくわからなかった。

だが、眠れる記憶を引っぱり出しているその間にも轟音と衝撃は徐々に近づいてきている。ミヤが早くしろと五月蠅いが、どうにもこうにも思い出せない。

諦めて他の案に移ろうとした、その時だった。

「いいかげんにしなさい!」

「へぶらほっ!」

どこから持ってきたのか、ミヤから金だらいをぶつけられ、良介の意識は一瞬あちら側の世界へと旅立った。が、脳を貫く痛みが気つけとなり、すぐに戻って来られた。めでたしめでたし。

頭を押さえながら良介は立ち上がった。すぐさまミヤに説教をした、これまたその時だった。

「――あ・・・・・思い出したぁぁぁぁぁぁぁぁ! ついでに思いついたぁあああああぁぁぁぁ!」

「な、なんですかぁ、急にぃ!?」

突然のことに怯える久遠を余所に、良介はニヤけた面持ちでその場に直立した。

精神を落ち着かせ、静かに瞳を閉じる。思い出したのは最高の手にして外道の手である。

「アクセス――久遠」

良介は紡ぐ。彼女(・・)と自分を繋がせる呪文(うた)を。確かな絆と信頼で結ばれている、彼女を。

虹色の風が世界を飾り、あれほど汚れていた部屋が一瞬にして清浄と化していく。

風は扉を創造し、そこから鈴の音が響き渡った。そして扉の向こう側から、待ち望んでいた彼女――久遠がやってきた。

相変わらずの巫女装束の久遠は、脇目も振らず、良介へと向かい、抱きついた。ミヤが恨めしそうに見ているのは放っておこう。

「ありがとうな。よく来てくれた、久遠」

「うん・・・いつでも呼んでいいんだよ・・・」

どんな男でもイチコロの眩しい笑顔が送られる。この笑顔を見ると、今思いついた作戦がやりづらくなる。

「早速だが久遠。お前に頼みがる」

「・・・・? なぁに?」

「実は・・・・・ごにょごにょごにょごにょごにょごにょ・・・・・・・・・・・・・。なあ、ダメか?」

良介は申し訳なさそうに久遠を見る。正直に言うと、この作戦は少々度が過ぎているかもしれない。

成功すればほぼ間違いなくなのはに勝てるが、こんなやり方でいいのだろうかと良心が苛む。

全容を伝えられた久遠は少々渋い顔をする。やはり無理があったか。

「・・・・・・・わかった。良介の為に、がんばる」

途端、良介の顔が一気に明るくなった。久遠万歳と心の底から叫んでも悔いはない気分だ。

「ありがとう、久遠! これが終わったらお前の好きなものたっくさん食わしてやるぞ!」

「えへへ・・・ありがとう・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、なのはは上空数十メートルから砲撃魔法による精密射撃を行っていた。義兄が隠れていると思われる家々はこれまで十数は駆逐したが、未だビンゴには至っていない。

だがこのどれかに制裁すべき義兄は潜んでいるはずなのだ。なのははまた一つ、廃墟の一つにデバイスを構えた。

「・・・・・・・・!?」

今すぐにでも発射しようとした時だった。狙っていた家から、義兄――良介が出てきたのだ。それも融合を解き、平然とした面持ちで。

「よぅ、なのは!」

ピンチの状況にもかかわらず、えらく能天気な声だった。間違いない。何か裏がある。

十年間共に過ごしたが故の直感である。劣勢に陥った時にこのようなスカした態度を取るのは大抵罠を仕掛けているか、何かしようとしている時だ。

なのはは険しい面持ちを崩さず、狙いを良介に構えた。

「十年間お前と一緒にやってきたが、まさかお前が敵になっちまうとは思いもしなかったぜ」

「・・・・・!」

「十年間・・・・長かったなぁ。色々あった」

良介は遠い目でしみじみと言う。だが、突如として良介の顔が喜々として明るくなった。

「覚えてるか? お前が最後におねしょをしたのは九年前の二月十四日! その日隣で寝ていた俺にとっちゃ最悪のバレンタインデーだったぜ!」

「え・・・?」

「さぁらに! ホラー映画を見て後恐くなって、俺と一緒に寝てほしいといった事数知れずぅ!」

「い、いや・・・。そ、それ以上言わないで兄さん!」

「まだある! 初潮の日、まっすぐに俺に伝えて、その日の夜に俺の部屋に来て“抱いてほしい”とかヌかしたよなぁ!」

「や、やめてー! それ以上言わないでくださぁぁぁい!」

彼らの話は全て監督と見学に来ているものすべてにモニターされている。つまり、高町なのはの暗黒歴史が良介の口から局員にバラされているのだ。

「色々あるが最後! 俺がはやてと付き合ったその日、俺に媚薬飲ませて襲った事ありやがるよなぁ! 既成事実を作ってしまえばこっちのものだって言ってよぉ!」

「やめてええええええええええええええええ!」

Star Light Breaker

次の瞬間、桃色の閃光が地へと光の速さで突っ込んで行った。衝撃は家々を巻き込み、次々と盛大な土煙を置き土産に次々と崩壊させていく。

なのはは息を切らして視界ゼロの土煙が晴れるのを待った。手ごたえは確かにあった。義兄のことだ。死んではいないだろう。

そうタカをくくっていた。だがその予想は大きく裏切られることとなる。

土煙が晴れ、ようやく視界がまともに利くようなって、なのはは義兄がいる真下に目を向けた。

「――そんなっ!?」

倒したはずの良介はそこに存在していなかった。倒れていたのは巫女装束を着た幼い少女――久遠。

義兄の親友である彼女が何故ここに居るのだろうか。

しかしその詮索こそが、良介の待ち望んでいた瞬間だった。

「隙ありぃ!」

「きゃっ!」

油断していたなのはの真横から、いつの間にか家から出ていた良介が彼女を押し倒したのだ。勿論、刀を喉元に突きつけるもの忘れない。

全てはこの為にあった。久遠を囮にし、なのはが確認しに来たところを襲う。

彼女がどの技を使うかは運任せであったが、都合よくスターライトブレイカーを使ってくれたおかげで成功したと言っても過言ではない。

何にせよ、これで勝負あり、である。

良介はニヤリと笑みを浮かべたまま、なのはを見つめる、

「さぁ、こういう時はなんて言うのかな? 高町なのは一等空尉」

「・・・・・負けました。降参・・・・・・・です」

その言葉を聞いた途端、良介の手――いや、体が震えた。あまりの喜びに、全細胞が歓喜している。

宣言できる。自分はあのエースオブエースの高町なのはに勝ったのだ!

「勝ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 

 

 

 

 

勝利の余韻がこれほど素晴らしいものとは思いもしなかった。

決闘を終えた良介は湧き上がる興奮を胸に、監督のジェニー・アウディスが居る場所へと向かっているのだ。

一歩一歩、その部屋へと向かう度に心の臓が感動に打ち震える。今死んでも悔いはなくらいかもしれない。

「・・・・・・宮本良介四等陸士です。失礼します」

部屋に入った途端、出迎えたのはジェニーではなく――。

「良介ぇ!」

「おっ」

入った途端、待ちかえていたはやてに飛びつかれ、その場でぐるぐると回った。まるで映画のようだ。

「良介・・・・良介・・・・・。うう・・・・よかった、無事で・・・・・・」

胸の中で泣きじゃくるはやてを良介は微笑んでそっと抱きしめた。すぐ目の前に知り合いの上司がいるせいで、かなり恥ずかしいが。

だがその上司も苦笑し、「気にしないで」と言いたげに視線を向けている。

「戦闘勝利、おめでとう。リョウスケ君」

「ああ、ありがとうよ――で、だ」

微笑みが急に消え、はやてを離して、良介はジェニーに詰め寄った。

「アンタだろ? なのはに変なコト吹き込んだのは」

「何の事かな?」

「惚けるな。わざわざギンガにまで芝居するように仕向けやがって。・・・・どこからあんたの計画の内だ?」

「・・・・なのは君め。バラしちゃったか」

ジェニーは何故か満足げな笑みを浮かべる。一体彼女は何がしたかったのか。

事の顛末を語り始めたジェニーは、二人に眼を向けた。

「うーん・・・・。君を『第108部隊』に入れた頃だね」

「何?」

「そこで十分なレベルに達するかを見極めようとしたんだよ。ちょうど新人君もいたしね。そして君は私の期待を裏切らず、予想通りの強さとなった」

「・・・なのはに見せたあの写真は何だ?」

「ああ、アレか。アレは知り合いが持っていたのをちょっとばかし合成したんだ。いわゆるアイコラってやつだね」

次いでギンガに行なった口裏合わせ。おそらく彼女が仕組んだ事だろう。そうしてなのはを怒らせ、良介とPJの試験に組みこむことで、楽しんだのだろうか。

「何でこんな事をしたんですか?」

問うたのははやてだった。自分の恋人を危険な目に合わせたのだから、問いたい気持ちは分からないでもない。

「・・・・んー。まあ、君達の未来のためにちょっと貢献したかった、と言えばいいかな?」

「貢献・・・ですか?」

「ああ。喧嘩売ってばっかの犬を飼っているご主人様も辛かろうと思ってねぇ。それなりに躾けられたとは思うけど・・・・・ま、この先は本人次第だね」

「ちょっと待て。誰が犬だ」

「・・・・せっかく良い戦績が残せたんだ。泥を塗らないように気をつけるんだね、リョウスケ君」

そう言ってジェニーは軽く手を振って出て行った。

「・・・・わけがわからん」

単細胞の頭脳ではどうも変人の思考は理解できない。天才と何かは紙一重というか、彼女の場合はかなり向こう側のように思えて仕方がない。

良介は怪訝そうに溜息を吐くと、はやては突然彼の腕をぐっと掴み、顔が向かい合うように眼前へと動かした。

今までの疲れが一気に吹っ飛ぶような柔らかな笑顔が、そこにはあった。

「とにかく、良介。・・・・お疲れ様」

「・・・ああ」

二人はどちらからでもなく唇を重ねた。それはようやく訪れた、至福の時間――。

 

 

 

 

 

 

その日の夜、機動六課隊舎では良介の勝利と帰還を祝したパーティーが催されていた。

しかもどこから聞きつけたのか、途中からゲンヤ率いる『第108部隊』が乱入し、パーティーはてんやわんやの大暴走祭り。

酔ったギンガが良介に抱きついてキスをして大騒動となったり、さらに酔ったシャマルがストリップを開始しかけたりなど、ハメを外し過ぎたパーティーであった。

そんなパーティーがようやく落ち着いた頃、良介は隊舎を抜け出して入口近くの壁に寄りかかりながら、夜風に涼んでいた。

空を見上げてみれば満天の星が夜空を彩っているのがはっきりとわかった。柄ではないが、鼻歌でも口ずさみたくなる気分だ。

「もう酔いつぶれそうかい、リョウスケ君」

「・・・・アンタか」

どこからともなく現れ声をかけたのは、グラスを傾けているジェニーだった。パーティーには呼んでいないはずなのに、どこから持ってきたのか。

だがそんなことを気にしていては今後彼女とは付き合えないだろう。良介は特に驚く様子もなく、自分と同じく壁に寄りかかるジェニーを見た。

「試験お疲れ様。私の方から君に休暇の命令を出す様にしといたから三ヶ月分、充分に休むといいよ」

「・・・・いや、そうもいかないみたいでな」

「?」

ジェニーは目だけをリョウスケに向ける。

「はやてから聞いたんだ。俺が居ない間にジェイルなんとかっつぅアホ野郎をとっ捕まえる事になってな。俺も作戦に加わることにしたのさ」

「フフッ、頑張るねえ。君のそういうところが私は好きだけどね、友人的な意味で」

そうは言うが、妖しく聞こえてしまうのは何故だろうか。良介は気にせず話を続ける。

「あんたは本局に戻るんだよな?」

「いや。もう少し地上支部にいようと思ってね」

「何かあるのか?」

「・・・ちょっとした捜査でね。生憎、機密事項なんだ」

ジェニーは人差し指を自身の唇に当てる。恐らく、執務官としての任務だろう。ならば首を突っ込むべきではないと良介は興味無さげに返す。

「あ、そ」

「・・・・もし私の捜査の内容が知りたくなったら、なんで機動六課が創設されたかを調べてみるといい。まぁ、今すぐに知る必要はないかもね」

そう言うと、ジェニーは夜の闇へと消えて行った。

彼女が去って妙な静けさの中、良介は小首を傾げると、再び隊舎へと戻った。

パーティーはある程度落ち着きを取り戻し、ようやく談笑し合えるようになっていたが、良介が戻った途端、急に全員が良介を見つめてきたのだ。

それも無言で。

「何だ、気持ち悪いな」

「良介先輩〜! こっち来てくださ〜い!」

所々包帯を巻いているPJが諸手をあげてこちらへ来るように促している。怪訝な面持ちで近づいてみれば、何故かそこにははやてが不気味というか、怪しい笑みを浮かべながら良介を待っていた。

こういう場合は大抵嫌な予感がするのだが、今は何故か不思議と何も感じなかった。

そしてはやての目の前に立つと、急に場が静まりかえり、誰もが良介を食い入るように見ていた。

「・・・・・宮本良介殿」

「はい」

何か業務連絡でもあるのかと思い、良介は仕事モードに切り替え、背筋を伸ばし、直立不動と化した。

「上層部からあなたに報告があります。本日一七〇〇時をもって、宮本良介四等陸士は一等陸士へと昇進したとの事です。以上」

「了か――へ?」

「聞こえませんでしたか。宮本一等陸士?」

「り・・・・了解であります!」

思いがけない吉報に良介は驚きを何とか隠して、敬礼をする。同時に、見計ったように周りの皆が盛大に拍手を送った。

人から拍手を送られるなぞ十何年振りだろうか。実にすがすがしい気分だ。

それにしても、試験でたった一度なのはに勝てただけで三階級特進とは一体どういうことだろうか。上層部に嫌われている身としてそこまで気前がいい事をする連中とは思えない。

――いや、一人例外が居る。

(あのオバサンしかいねぇよなぁ・・・)

これも彼女なりの『試験合格のご褒美』なのだろう。良介はそう受け取っておくことにした。

「先輩――あ、いや・・・・宮本一等陸士殿! おめでとうございます!」

「阿呆。ンな堅苦しく言わずに、お前は今まで通り先輩で良いんだよ」

「・・・わかりました! 先輩!」

敬礼するPJ。すると、次は新人組が割り込むように前に出てきた。

「宮本さん、おめでとうございます!」

「おめでとうございます! 僕、宮本さんのことを尊敬します!」

「あ、あの・・・・おめでとうございます」

スバル、エリオ、キャロが笑顔で祝辞に来るが、ただ一人ティアナは、無表情で話題の人を見ていた。

気になった良介はティアナに目を向け、話しかける。

「何だよ」

「いえ・・・・昇進、おめでとうございます」

「あ、ああ・・・」

珍しく良介に対して素直に感想を言うティアナ。失礼かもしれないが、いつも言われていることが言われていることなので気持ち悪く思えてしまう。

だが、褒められる事は嬉しい。良介はわすかに微笑んだ。

「その栄光がいつまで保てるか、楽しみですね。フッ」

前言撤回。やはりティアナだ。だが今は自分の方が階級は上。上司がいかに怖い存在かを教え込まなければいけないだろう。

「・・・・お前、今のは俺を馬鹿にしたことにいいんだなぁ?」

「あっ・・・・・」

自分のしたことに気づいたのか、ティアナは口をポカンと開けた。してやったりと言わんばかりに良介はほくそ笑む。

「よぅし、上官侮辱罪として・・・・」

「口が滑りました、宮本一等陸士殿! 申し訳ありませんでした!」

「・・・・ま、今日は大目に見て許してやろうか」

必死で謝るティアナ。まさかこのような姿を見れるとは思いもしなかった。上官とはこんなに気持ちのいいものだったとは。

「おい、良介!」

「ん?」

呼ばれて振り返ってみると、そこには満面の笑みを浮かべるヴィータが一人。

「・・・・あれ? 俺は子分クビなんじゃなかったか?」

「う・・・・! そ、そんなこと言っていないぞ! あたしも子分がこんなに昇進して鼻が高い高い」

「調子いいんだよ、お前は」

下品な笑みを浮かべながらヴィータの頭を撫でる。こちら方も問題解消と言ったところだろう。

「・・・良介」

ふとはやてが服の裾を掴み、こちらを向くようにと促す。

すると、頬を僅かに赤らめ、顔を近付けているではないか。これはもしやと思った良介ははやての耳元で囁く。

(なあ、マジですんのか?)

(わたしからもお祝いしたいんや。ダメ?)

(ダメってワケじゃないけどよ・・・人前ではちょっとなぁ)

(じゃあ、する)

直後、有無を言わさずはやては強引に良介と唇を重ねた。始めは驚いて離そうとした良介だったが、自棄になったのか、はたまた腹を据えたのか固く抱きしめてキスを続けた。

周りが冷やかすが、もはやどうでもよくなってきた。嗚呼、これでまた冷やかされながら働くのかと思うと泣けてくる。

 

 

 

この数ヶ月後、宮本良介一等空士が後にJS事件と呼ばれる一大事件に大きく関わっていくという事象は、また別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

やっちまったZE☆ 

どうも、ホウレイです。良介×はやて18禁小説を書いていたらいつの間にかエスコンのパロディとか詰め込んだ普通の小説になっていました。

正直廃棄しようかなと思いましたが、ネタ的に惜しいと思い、完成させました。

何もかもノストラダムスが原因です。間違いなく。

今回はエースコンバットをプレイしたことがある方ならニヤリとするシーンがいくつかあると思います。

ジェニー・アウディスは過去の話からお分かりでしょうが、04の『悪魔』さんとジ○ン・ル○の名前をくっ付けたようなキャラクターです。脳内ボイスは折笠愛さんです。

あとSts版良介はCV森川智之さんでございます。私はそう思っています。

異論は認める。なお、ジェニーの限定解除の姿はラーズグリーズを基にしてみました。

ラーズグリーズは女騎士なので、これはイイと思ったので。

なお、序盤で彼女が詠唱した言葉は「Megalithagunus dei」の歌詞を日本語訳、編集したものです。        

PJはエースコンバットでもネタキャラの一人ですから外すわけにもいきませんよ。特になのはにぶっ飛ばされたところ。アレはパロっていいのか悩みましたが、あれがないとPJらしくないと思い、追加しました。

そして魔王降臨シーン。分かる人には分かるあの場面。脳内BGMはアレが流れているはずですよね、相棒の皆様方?(笑)

あ、良介×はやての18禁小説はちゃんと作りますよ。ちょっと休んだら書きますので、それまでこれ読んでお待ちください。

 

 

そして今回はおまけ付き。やっちまったZE☆ネタ全開で行きます。深く考えずにお読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突であるが、時空管理局は、朝の八時から九時までラジオ番組を持っていたりしている。

その名も・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェニー良介

リリカルラジオStrikers!

 

 

 

 

ジェニー「ミッドチルダのみなさーん、おっはリリカール!」

良介「・・・おはリリカル」

ジェニー「朝の八時になりました。リリカルラジオの時間です。司会はお馴染みジェニー・アウディスと」

良介「宮本良介でお送りいたします」(肘をついてご機嫌斜めな顔)

ジェニー「おやおや、良介君。不機嫌な面持ちで。何かあったのかな?」

良介「眠いだけだ。ところで今日はえらくハイテンションだな、あんた」

ジェニー「そう? 私はいつもこうだよ? 元気モリモリあんぱ――!」

良介「ストップ。そこでやめ。それ以上言うとヤバイわ」

ジェニー「というわけでリリカルラジオ、始まるよー!」

 

 

 

この番組は時空管理局と聖王教会、翠屋の提供でお送りいたします。

 

 

ジェニー「改めましてジェニー・アウディスです。さて、今回はゲストの方々をお招きしております!」

良介「どうぞー」

なのは「ラジオをお聞きの皆さん、おはようございます。機動六課に所属しています、高町なのはです」

フェイト「おはようございます。同じく機動六課所属、フェイト・T・ハオラウンです」

シャマル「箱根のみなさ――ぎゃふっ!」( ‘д‘))Д´)

良介「何故お前が来る」

シャマル「ラジオといえばわたしの出番でしょう!? あ、機動六課所属のシャマルです。主任医務官をやっていまーす」

良介「・・・はやてはどうしたはやては」

なのは「あー・・・はやてちゃん、どうしてもやらなきゃいけない仕事が出来ちゃったからって、代わりにシャマル先生を呼んだんですけど・・・」

良介「帰らせろ」

シャマル「そんなこと言わないでくださいよ。実は私、ラジオ慣れしてるんですよ?」

ジェニー「別にいいじゃないか、良介君。面白そうなメンツだし」

良介「はあ・・・・。まあいいや。先進もう」

ジェニー「それではいつものコーナーいってみよう!」

 

良介のひねくれお悩み相談室

 

 

良介「さーて、今日も来ちゃいました。良介のひねくれお悩み相談室。悩みなら何でもこの宮本良介が解決しちゃいますよー」

フェイト(ジェニーさん、すごくやる気無さそうに言ってますけどいいんですか?)

ジェニー(それがねぇ、この口調が子どもとお母様方に妙に人気なんだよ。ファンレターも凄くてね)

シャマル(あー、わかります。ほら、良介さんって低音で美声の持ち主ですから。クる人にはホントメロメロになりますよ)

なのは(これからはロリコンじゃなくてマダムキラーになっちゃいますね、兄さん)

良介「えーっと、『電光石火の十歳』さんからいただきましたお手紙です。なになに・・・・『僕には好きな女の子が一人います。相手の女の子は僕のことをどう思っているか分からないのですが、僕は彼女に告白すべきなのでしょうか?』」

ジェニー「おお、少年の淡い恋ってやつか。良介君、この悩みはどうすべきだと思う?」

良介「決まってる。押し倒せ、そして犯れ

なのは「ちょっ! 兄さん、無垢な子供の相談にそんな外道な解決法言わないでくださいよ!」

良介「何を言っている。有無を言わずに押し倒して、その後は【ピー】や【ピー】とかやって体をメロメロにさせてしまえばいい」

フェイト「リョウスケ、それ犯罪じゃあ・・・・」

良介「好きにさせれば無問題

ジェニー「・・・・というわけで『電光石火の十歳』さん、良介君の解決法を実行するかしないかはあなた次第です。健闘を祈りまーす」

 

 

 

 

ジェニー「さて、次はゲストへの質問コーナーです。プライベート突き破っていきますよ、御参方」

良介「まずは・・・『メカ好きメガネ』さんからいただきましたお手紙。『フェイトさんに質問です』」

フェイト「はい」(少しワクワクしながら)

良介「『前々から気になっていたのですが、フェイトさんは、水着はワンピース派ですか? それともビキニ派ですか?』

フェイト「(顔を真っ赤にさせて)・・・・・・言わなきゃダメ?」

良介「だめ」

フェイト「・・・・・ビキニです」

ジェニー「色は?」

フェイト「黒ですけど・・・・って、ジェニーさん、今のはお手紙に書いてあること言ったんですか?」

ジェニー「うんにゃ。私が聞きたかっただけ。そうか、黒か。大人だねえ(ニヤニヤ)」

シャマル「たしか下着も黒ですよね。ガーターの」

フェイト「余計なこと言わないでーーー!」

 

 

 

 

 【しばらくお待ちください】

 

 

 

 

ジェニー「さて、ちょっと騒動がありましたがようやく次に進むことができました。あとでちょっとオシオキだな

良介「何か聞こえたような気が・・・・。・・・・はあ、次。なのは」

なのは「できればマトモな内容のお手紙にしてくださいね、兄さん」

良介「運が良ければな。えぇと・・・・・・・『二丁拳銃の乙女』さんからいただいたお手紙。『なのはさんに質問です。なのはさんはすごく強いと聞きますが、どれくらい強いんですか?』」

なのは「どれくらい強いって言われても、どう言えばいいんだろう・・・」

良介「とりあえずアホみたいに強いのは確かだよな。アニメ本編じゃほぼ負け知らず。限定解除でまさに般若――じゃなくて、魔王だよな」

ジェニー「そうそう。ナンバーズなんか屁でもなかったよね。いやー、クアットロ君の恐怖した顔も頷ける強さだ」

良介「それでもあんた以下だろ。魔王の上行く強さなんて聞いたことないぞ。アンタ鬼神だよ」

ジェニー「はっはっは。褒め言葉とし受け止めておくよ」

良介「・・・次いくぞ。『人参マイナスっと』さんからのお手紙ー。『なのはさんは好きな人はいるんですか』だと」

なのは「(顔を赤らめて)す、好きな人・・・・・。勿論兄さ――あいたっ」

良介((なのはの耳元で)ユーノと言うか、もしくは今は誰もいないと言え)

なのは(え、えぇ? 嫌ですよぉ)

良介(じゃあお前とは二度と口利かない)

なのは(・・・わかりました)

良介「さて、なのは。好きな奴はいるのか?」

なのは「(わざとらしく笑みを浮かべて)今はいないです」

良介「――だそうです。管理局のエースはどうやら恋愛関係には疎いようですな。――っと、時間か。次はシャマル」

シャマル「はいはーい♪」

ジェニー(良介君、どうして「兄さんが好き」だと言わせなかったんだい?)

良介(言ったらあいつのファンがうるせぇからさ。それに、ここでユーノのこと出しておいてやれば、なのはがユーノに傾いてくれる可能性だってあるかもしれない)

ジェニー(恋のキューピッドにでもなるつもりかい?)

良介(なのはが奴とくっ付けば俺の死亡フラグが一つ減る

ジェニー(あ、なるへそ)

シャマル「良介さん、何コソコソ話しているんですか? 早くしましょうよ」

良介「ああ、ちょっと打ち合わせしただけだ。いくぞ」

シャマル「どんな質問でもどんと来なさいっ」

良介「えっと・・・・・『釘の天才少女』さんからいただきました手紙です。『シャマルさんは小山〇也さんと宮本良介さん、どちらが好きなんですか?』」

シャマル「えっ!? それは・・・・・えっと・・・・・」

良介「どした? 俺にフォーリンラブじゃなかったっけ?(ニヤニヤ)」

シャマル「(冷や汗をダラダラと流して)え、えっと・・・・あはは、はは・・・・・・・! 勿論・・・・・・りき――良介さ・・・・・ん?」

良介「疑問形になるな。ハッキリさせろ(ふんぞり返り)」

シャマル「・・・・・・・・・・きゅう(目を回して気絶)」

ジェニー「あらら、考えすぎて気絶しちゃった。おーい、救護はーん」

 

 

 

 

【少々お待ちください】

 

 

 

 

ジェニー「で、結局なのは君しかいなくなったね」

良介「まぁゲスト一人でも大丈夫だろ」

なのは「兄さん、質問があるんですけど」

良介「あ?」

なのは「このラジオって、いつもこんな感じなんですか?」

良介「そうだけど何?

なのは「い・・・いえ。何でもないです」

ジェニー「さーて、ここで一曲行きましょうか。クラナガン生まれの大人気歌手、セブン・キズミさんで【運命と神の子】」

 

 

 

〜省略〜

 

 

 

ジェニー「さて、お別れの時間がやって参りました」

良介「というわけでなのは、最後に何か言う事はあるか?」

なのは「私のこと、冥王とか魔王とか言わないでください! けっこう気にしてるんです!」

ジェニー「・・・うぅむ、切実な叫びだね。それじゃ皆、また来週まで――!」

ジェニー・良介・なのは「リリカルマジック、セットアップ!(一人やけくそ)」

 

 

 

 

 

 

―続かない―

 

 

 

 







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