VANDREAD The Third Stage

 

 

 

♯4 Don't Stop Me Now

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜〜〜・・・・疲れたぁ〜〜・・・・・・」

セイヴァーの足元で寝転んでいる男―クロウは、ため息混じりに呟く。

肉体を人工的に強化しても、ヴァンドレッドへの合体はさすがに堪える。

事実、先程の戦闘でのディータ、ジュラとの連続合体は体に悪い。

いや、悪すぎる。

あらためてヒビキの苦労が分かった気がした。

「ったく、ディータちゃんやジュラめぇ、何度も強要しやがって。こっちの身にもなってくれよ・・・」

愚痴っぽく呟いていると、人影がクロウを覆う。

「私と合体していたら、今頃どうなっているだろうな?」

腕を組みながら、メイアは微笑みながら言う。

「メイアか・・・・」

そう言うと、再び寝転がり始める。

「多分、過労でブッ倒れてるだろうな」

「お前が弱音を吐くなんて世も末だな」

「おいおい、俺だって人間だぜ?」

「ほぉ、初耳だ」

「・・・・押し倒すぞコノヤロー」

勿論、嘘である。今の状態では歩くだけで精一杯な状態である。

それに、腹も減っている。時間はまだ昼飯時ではないが、さっきの戦闘で朝飯が全て消化されたのだろうか。

「腹減った・・・・・」

意識した途端、急に腹の虫が豪快に鳴く。

「頼む、メイア。なんか・・・・なんか料理作ってくれ・・・」

普段の軽口はどこへやら。掠れたような声であった。

はあ、と呆れ顔で息を吐くと、メイアは

「わかった。リクエストは?」

「おにぎりでもサンドイッチでも何でもいい。とにかくくれ!」

あまりの情けなさに最早呆れるしかないメイアであった。

「・・・了解」

そうため息混じりに言うと、メイアは格納庫から去っていった。

出来るだけ早くしてくれと言うが如く、クロウの腹の虫がさらに豪快に鳴いた。

 

 

 

 

 

 

カフェ・トラペザにて、メイアはコンベアから流れる料理を見ながら、真剣にクロウの弁当の献立を考えていた。

その姿、まるで愛妻弁当を作ろうとしている妻そのもの。

「あの男がカロリーを気にする・・・・ワケないな。だとするなら肉中心で野菜も入れて・・・・そういえばフルーツが大好きだと言ってたな、あいつ・・・」

メイア自身、料理を作るのは下手ではない。しかし、人のために料理を作るのは初めてである。

「ん?」

ふと疑問が浮かぶ。

―なぜ、クロウのためにわざわざ・・・。

別にクロウは自分にとって仲間―しかもとても短い間の―でしかない。

それにしてはあまりも彼を想っている。

自分自身でもなぜこんな事をするのか分からなかった。

料理のことを忘れ、腕を組みながら考えていた、その時だった。

「リーダー、何してるの?」

ハッとして、声のした背後を向く。

そこには、エプロン姿のディータがいた。

おそらく自分と同じで、料理を作るのであろう。

違うのは作ってあげる相手か。

「ある奴に料理を作ろうとおもってな・・・」

「まさか・・・ヒビキに!」

ディータはメイアに一気に詰め寄る。

慌ててメイアは否定した。

「ち、違う! クロウにだ!」

「え? 軍人さんに?」

「・・・死にそうなほど腹が減った、と言ったからな」

「ふ〜ん・・・・あっ、もらいっと!」

すかさずディータは目の前に流れてきたスパゲッティとオムライスをかっさらった。

「・・・じゃあ、これに・・・・」

メイアが取ったのはボリュームのあるステーキにサラダ、それと韮のニンニク炒めであった。

あとは何かキッチンスタッフからもらえばいいか、と呟くと、メイアは皿を両手で支えながらカフェ・トラペザを後にした。

 

 

 

 

 

 

クロウ・ラウの腹はさっきから飯をよこせとデモを起こしていた。

かれこれ三十分待っているが、いっこうにメイアは戻ってこない。

だんだん意識が薄れ、目も霞んでいく。

「ああ・・・・俺眠いよ・・・・・えっと、犬の名前なんだっけ・・・」

栄養が足りないせいか、記憶も失いかけてきたようだ。

「苦節二十四年・・・・短かったなぁ・・・・・」

己に死を悟ったのか、クロウは目を閉じる。

「さようなら・・・火星の同志たち。今逝くよ、死んで行った同志た―」

最期の言葉を言いかけた、その時だった。

格納庫のドアが開き、メイアが姿を現す。

すると、さっきの気力の無さが嘘のように回復し、クロウは猛スピードでメイアの元へ走った。

「飯! 飯! 飯!」

「わかったから、待て」

クロウの顔を手で制止すると、犬のようにあっさりと命令に従った。

―あ。

それを見たメイアはちょっとした悪戯心が湧いた。

「さて、どうするかな?」

呟くと、中腰になり、彼の目の前にメイアは手を差し出した。

「お手」

「わん」

ポン、とクロウは手を置いた。

それどころか、犬座りまでする始末。

もはや彼は完全に人間を放棄していた。

「おかわり」

「わん」

右手をメイアに差し出した。

「待て」

メイアは犬と化したクロウの目の前に弁当を置いた。

クロウはまるで訴えかけるような眼差しでメイアを見つめる。

「待て」

「クゥ〜〜ン・・・」

「・・・・待て」

「・・・・・くうぅぅぅ〜ん」」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

もはや彼の限界は崩落寸前であった。

そして長い沈黙の後、

「・・・・よし」

メイアが言った途端、満面の笑みを浮かべ、クロウは弁当の蓋を開け、添え付けの箸で、豪快に食べ始めた。

 

 

 

 

 

「美味え美味え。メイア、お前料理を旨くアレンジ才能あるよ」

「そ、そうか?」

クロウの言葉に、メイアは頬を赤らめる。

肉厚のステーキはウェルダンで、キッチンスタッフから教えてもらった秘伝(?)のステーキソース―少々にんにく臭がキツいが―を使い、さらに美味に仕上げた。

そして弁当箱に入りきらなかった部分は、炒飯にうまく利用した。

サラダは焼いたカキやホタテなどを使い、見た目も味もよく、アレンジさせた。

韮の炒め物は、半熟の卵を上に乗せ、さらに煮たアサリを入れた。

品数は少ないが、どれも疲労、精力回復にはもってこいの料理であった。

炒飯を口の周りに散らばしているクロウは自信ありげに言った。

「よーし、今度は俺が作ってやるよ」

「お前が?」

「ナンだその目は。これでも自炊してたんだぞ」

「ホントか?」

「おいおい、俺はホラは吹くが嘘はつかねえぜ」

「フッ・・・期待しないで待っているぞ」

「ハハッ、絶対に美味いって言わせてやるよ」

格納庫にクロウとメイアの笑い声が広がる。

その光景は男と女のあるべき姿そのもであった。

 

 

 

 

 

「あの二人、アヤしいピョロ・・・・・」

ヒビキの蛮型の脚部に隠れながら見ているピョロは、ジト目で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、射撃訓練施設では、クロウが一人黙々と的を撃っていた。

だが、その射撃はまるでダンスを踊っているかのごとく美麗かつ無駄の無い動きだった。

似合う曲はクラシックであろう。

的が人間であったら、まさしく死のダンスである。

ガチン、と弾が切れたと同時にシュミレーションが終了した。

“ランク:A 命中率:100% タイム:一分三十五秒”

目の前のホログラフにはそう映っている。

ランクAはこの射撃訓練施設では最高レベルの難しさで、あのバーネットでも三分がやっとである。クロウはそれを簡単に約半分上回ったのだ。

まあ、遺伝子治療や人工筋肉のおかげで五感などが発達しているので、この程度のタイムは出せて当たり前だが。

しばらくして、軽い拍手が聞こえた。

バーネットだった。

おもいっきり口をへの字に曲げている。

「なかなかやるわね」

「まあな」

そう言って、クロウはレンジから降りた。

「俺は汗かいたからシャワーでも浴びてくるが・・・・・、お前、あんまり無茶するなよ?」

「・・・・・余計なお世話よ」

バーネットはレンジに立ち、愛用のCz75を構えた。

それを見送ると、クロウは射撃訓練施設から出て行った。

その後、バーネットが疲労で倒れ、医療室に運ばれたのはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ、今頃必死でやってるだろうなぁ」

呟きながら、服の胸元を団扇代わりにパタパタと扇ぐ。

ブリッジクルーの話によると、太陽系まであと二週間ほどかかると小耳に挟んだ。

太陽系に入り、火星へと到着したら、ニル・ヴァーナのクルーとはもう二度と会えないかもしれない。

特に、メイアに。

自分自身でもはっきり気づいている。

自分はメイアが好きだ。いつのまにか、彼女を好きになっていた。

理由なんて無い。ただ、好きなのだ。

だが彼女はどう思っているのだろうか。

それが知りたかった。

「・・・・きっかけ、か」

はあ、と重いため息をついた。

あの時―格納庫でも言えた筈なのに、食欲が勝り、言うのを忘れてしまった。

とても自分が情けなかった。

同時にクロウはシャワールームへと到着した。

シュン、と音をたて、ドアが開いた。

「あ・・・・・・・」

「・・・・・お前か」

メイアだ。

なんという漫画的なご都合主義な展開であろうか。

神がいるなら、地面にめり込むくらい土下座しても構わないほどの気分だ。

「ご、ごめん・・・」

そう言ってクロウは背を向ける。

なにせ目の前にはバスタオルしか着ていないメイアがいるのだ。

しかもほんのりと上気しているのが劣情をそそる。

「あー・・・・・弁当、ありがとうな」

第一声がそれだった。

“なんてバカなこと言っているんだろう”、と思った。

「フッ・・・・どういたしまして」

耳にはゴソゴソと服を着ている音がする。

今すぐにでも振り向きたいが、理性が必死に欲望をブロックしている。

それから程なくして、音が止む。

同時に、溜まっていた息を全て吐き、前を向いた。

そこにはいつものパイロットスーツを着ているメイアがいた。

「・・・・・・」

妙に気分が落ち着かなかった。

自分でもなぜこんな気分になるのか分からない。

そうこう考えていると、メイアが尋ねた。

「そういえば、怪我はもう大丈夫なのか?」

「ああ。もう大丈夫だ」

腹を軽く叩きながらクロウは答えた。

「・・・そうか。よかった」

フッと、メイアの表情が和らいだ。

それを見て、クロウは

「ナンだ? 心配してくれてんの?」

ニヤけた面持ちでクロウが言った。

「当たり前だ。仲間だからな」

「・・・・・仲間、ねえ・・・・」

「・・・どうかしたか?」

怪訝そうな面持ちでメイアが言った。

「“それ以上”は・・・・ダメか?」

いつになく真剣な面持ちでクロウが言う。

決めた。もう覚悟を決めよう。

そう心の中で呟いた。

はったかれようがリングガンで撃たれようが、別に構わない。

「それ以上?」

メイアは可愛らしく首を傾げる。

それを見かねたクロウは

「こういう事だよ」

いきなりメイアを掴み、ガッチリと抱きしめた。

メイアの顔がクロウの厚い胸板に当たった。

クロウの心音が直に伝わる。

早鐘のように動いているのがよく分かった。

「あっ・・・・・」

途端に頬が紅色に染まる。

動きたくても、体が金縛りにあったかのように動かない。

いや、もしかしたら動きたくないのだろうか。

「・・・・・メイア」

抱きしめるのを止め、メイアの肩を掴む。

そして、クロウの顔が徐々に近づいてくる。

それに合わせ、自然とメイアも目を閉じ、顔を近づける。

少し経って、二人の唇が重なった。

触れるだけの、軽いキス。

少し経って、唇を離し、互いを見つめあう。

そしてまたすぐに、唇を重ねた。

だが、次の瞬間、ドアが開いた。

そこには、

「!!!!!!? ピ、ピョロ〜〜〜!?」

大音量の声に驚き、クロウとメイアは唇を離す。

誰であろう、便器型のようなナビロボ、ピョロある。

「・・・・二人ともいつの間にそんな関係になっていたピョロね・・・」

ジト目でピョロは二人を見やる。

そしてカメラアイが何やら怪しく動くと

「これは大スクープだピョロ〜!」

大声を上げながら、ピョロは通路へと消えていってしまった。

「・・・・・・一番バレてしまいたくない奴にバレてしまったな」

腕を組みながら、しかめっ面で呟いた。

これでもうクルーの話題は一つに集中するであろう。

そんな光景を思うかべると、ため息が出る。

「クロウ・・・」

口を真一文字に結んだメイアが言った。

彼女も後々苦労するに違いない。

「・・・・まあ、開き直っていこうぜ」

「ああ・・・」

ふと、二人に笑みがこみ上げてきた。

恥ずかしさを紛らわしているのだろうか。

もしくは・・・・・。

「・・・じゃあな」

「・・・うん」

そう言ってクロウは走って去って行った。

「・・・・・・・」

メイアは放心状態のような面持ちで、今さっきキスをした唇を、なぞる様に触った。

 

 

 

 

 

 

クロウの予測どおり、ピョロが流した情報は三十分もかからず、ニル・ヴァーナのクルー全員に伝わった。

さすが女性。ネットワークが並ではない、と後日クロウは漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

「お姉さま!」

まるで魂が抜けたが如くボーッとしていたメイアをミスティは一喝した。

はっ、とメイアは我を取り戻した。

さっきからメイアはこの調子であった。

いつもキビキビしているはずのメイアが、さっきから“我、ここにあらず”な状態なのである。

「あ、ミスティ」

「あ、ミスティ、じゃありませんよお姉さま」

「・・・・すまない。ボーッとしてたようだな。それで、何か用か?」

「噂の真相を聞きに来たんです」

「噂?」

「お兄様とキスした事です。本当にしたんですか?」

お兄様とはクロウの事であろう。いつの間にそんな呼び方にしたのだろうか。

そんなミスティの問いに、メイアは

「・・・した」

とすこし頬を赤らめながら答えた。

次の瞬間、カフェ・トラペザにいたクルーが一瞬、ピクリと動いた。

そして、ゆっくりと体をミスティとメイアの方へ傾ける。

「へえ〜〜、じゃあ遂にお姉さまにも春が訪れたんですね」

「まあ・・・・そういうことになるな」

「じゃあ今日の夕食はお赤飯ですね」

「それは多分違う時に食べるものだと思うぞ、ミスティ」

シラッした面持ちで、メイアはツッコんだ。

だがミスティは気にせず質問する。

「じゃあちょっと聞きますが・・・・」

誰にも聞かれたくないのだろうか、メイアの耳に顔を近づけ、小さな声で言った。

「どんな感じでしたか? ファーストキスは?」

瞬間、メイアの顔が熟れたリンゴの如く、真っ赤に染まる。

「な・・・・・・!」

「二人だけの秘密ですから、お姉さま?」

ミスティの言葉に、未だ顔が真っ赤になったまま、メイアは目を泳がす。

そして、深呼吸をすると、ミスティ以上に小さな声で

「・・・・・・き、キスは甘いと聞いたが、け、結構、だ、だ、だえ・・・・・ミスティ、これ以上はもうやめてくれ・・・・」

さらに真っ赤になった顔を隠すように、両手で顔を覆うメイア。

するとミスティは

「お姉さま。私はお姉さまの味方です。だから・・・・・」

「だから・・・・」

メイアは怯えた子犬のようにミスティの言葉を待つ。

普段の彼女からは想像も出来ない仕草である。

「お兄様のいると思われる格納庫にレッツゴー!」

ミスティの人差し指は、カフェ・トラペザの出入り口を指差していた。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、ブリッジでも同じような話が話題となっていた。

ブリッジクルーの面々がヒソヒソと話をしているのを見て、話題を知らないブザムはひとり首を傾げていた。

「お前達。一体何をコソコソと話している」

怪訝そうにブザムが言った。

すると、クルーははしゃぎながら答える。

「副長、知らないんですか? メイアとクロウ・ラウの噂!」

「・・・・知らないが、どうかしたのか?」

「キスしたんですって。キス! キャー!」

頬を赤く染めてはしゃぎまくるクルーをよそに、呆然としながら

「あのメイアが・・・・?」

と呟く。

今ではすっかり軟化したメイアが、男とキス。

例えていうなら一歳を過ぎたカルーアが自分で文字を書いたという、それくらいインパクトのある大ニュースである。

「おやおや。随分と手の早い男だね」

自席に座ったままのマグノが肘を着きながら呟く。

「でも、あの男の好みがメイアとは・・・・同じエリート同士、気が合うのかねえ」

まるで孫を見るような目でマグノは言った。

 

 

 

 

 

 

「ねえヒビキ。知ってる? 軍人さんとリーダーの噂!」

「ナンだそりゃ?」

格納庫でクロウが自機を整備している横で、SP蛮型の目の前でヒビキはディータの作ったおにぎりを食べながら、ディータの話を聞いていた。

「軍人さんとメイア、シャワー室でキスしたんだって!」

「ぶふっ!!」

ヒビキはおもわず口内に含んでいたおにぎりを吹き出してしまった。

吐いたおにぎりは床へと大いに散らばる。

「・・・・・・!」

至極驚いた面持ちでクロウを見やる。

そこには平然と円形型フロータに座り、コックピットに繋いでいるディスプレイにデータを打ち込んでいる話題の人がいた。

ヒビキの視線に気づいたクロウは

「・・・・・ナンだよ? 気持ち悪いな」

と、鬱陶しげに言った。

その時だった。

格納庫のドアが開き、メイアが文字通り転がるように入ってきた。

その後ろには、何か裏のある笑顔を浮かべたミスティがいた。

「お兄様。お姉さまが・・・言いたい事があるんですって!」

嫌がるメイアを無理矢理押しながらミスティはクロウの前へと向かう。

実際、この十数分間メイアは共に格納庫に行くことを了承したが、直前になって顔を赤くしながら嫌だと言い出したので強行手段としてTVクルーに噂の真相を話す、と脅迫めいたやり方でどうにかココまで来たのだった。

「へえ、ナンだ?」

ディスプレイから目を離したクロウが言った。

クロウはすぐ目の前にいた。

当のメイアは今にも爆発しそうなほど赤面していた。

普段の彼女なら絶対にお目にかかれないであろう。

「え、えぇと、そ・・・・その・・・・・」

とてもしどろもどろな口調だった。

「・・・・・・何で、私と・・・・キ、キスしようと思ったんだ?」

意を決したメイアの一声。

キョトンをしたクロウ。

呆然としているヒビキとディータ。

そんな言葉が出るかを楽しみにしながら笑みを浮かべているミスティ。

反応はそれぞれ違っていた。

クロウはキョトンとした面持ちのまま、髪を掻きながら言う。

「何でって・・・そりゃあ・・・・」

「・・・・それは・・・・?」

まるで怯えている子猫の如く、メイアはクロウの言葉を待っていた。

そして、出た言葉は

「お前がす―」

ヴィーヴィーヴィーヴィー!

言おうとした言葉はけたたましい音量の警報に遮られてしまった。

途端にクロウは苦虫を噛み潰したような面持ちで呟く。

「なんつーバッドタイミングだよ・・・・」

心の底から殺意が湧いてきた。

こうなったら徹底的にやってやろう。

そのままジャンプし、クロウは自機のコックピットへと乗り込んだ。

「ま、待ってくれ!」

コックピットから半身を出し、自分に向かって走って来るメイアを見た。

「なんて言おうとしたんだ!?」

「・・・知りたい?」

「・・・・ああ」

クロウはコックピットから降り、メイアの目の前に立つ。

当のメイアは不安げな面持ちであった。

フッ、とクロウは悪戯っぽく微笑むと、メイアの頬にそっと口付ける。

「んなっ!?」

「わっ・・・・!」

それを見ていたヒビキとディータは頬を赤くする。

「帰ってきたら、教えてやるよ」

「・・・約束だぞ」

「まかせとけ。俺はホラは吹くが嘘はつかない男だ」

「自慢できないぞ」

優しげな笑みを浮かべると、メイアも自機へと走っていった。

続いて、呆然としていたヒビキとディータも遅れて自機へと乗り込む。

それを見送り、クロウはコックピットのハッチを閉じ、機体を稼動させた。

 

 

 

 

 

 

カタパルトから颯爽とドレッド隊と蛮型、セイヴァーが出撃した。

途端に、ジュラ機がセイヴァーに擦り寄るように接近した。

「ねえねえ! 早く合体しましょ!」

意気揚々した口調でジュラは言った。

「悪い! また今度!」

「あ、ちょっと!」

そう言って、機体のスピードを上げ、メイア機に並んだ。

「メイア、一気にキメるぞ!」

「ああ!」

二人の機体が光に包まれる。

そして次の瞬間には白亜の怪鳥、ヴァンドレッド・メイアが姿を現した。

少し遅れてヴァンドレッド・ディータが後ろに並んだ。

「ヒビキ、ディータちゃん。遅れるなよ!」

“ヘッ、テメエには負けねえ!”

「その意気だ。行くぞおおおおぉぉぉぉ!」

そんなクロウたちを見て、マグノは笑みを浮かべた。

彼らなら、素晴らしい未来が切り開く事が出来る。

マグノには、そんな考えが浮かんだ。

 

 

 

 

 

あとがき  今回は戦闘シーンは無し。変わってラブラブ(死語)な展開を・・・。

      キスシーンも入れましたがどうでしょか? 個人的にはその続きも書きたいけど載せることが出来ないのが現実

      次回はヒビキとディータに視点を当てようとおもいます。

      PS:やっぱ学生って忙しいなぁ、と思う2005年秋・・・・

 

 

 

 

 

 



作者ホウレイさんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板に下さると嬉しいです。