なのはのやつ、訓練場(フィールド内)に呼び出しなんて何なんだ?
…はっ、まさか訓練にかこつけて砲撃でボコるきじゃ。


「お兄様これをどうぞ」

ん?
来たのか…って『お兄様』?!
いつもは「兄さん」なのにどうしたんだお前?
って何だ?大剣だな、鍔が無い…けどぉっ?!

ズドン!!

うわっ重っ、地面にめり込んでるぞ…。

「駄目じゃないですかお兄様、少しでも良いですから魔力(存在の力)を籠めて持たないと」

…魔力か?
ミアとの融合で幾分か一人でも出来るようにはなったからな。
一人では魔法は使えないけどな。
…お?

「ほら、出来るじゃないですかお兄様。 お似合いですよ」

そ、そうか?
まあ、形も悪くは無いし中々かな?
名前とか有るのか?

「『吸血鬼(ブルートザオガー)』です」

……は?

呆けてると目の前にカジェットドローン(カプセル型)が現れた。
いつもの訓練の時のアレか。

「お兄様、魔力を込めながらそれに斬りかかってみてください」

試し切りか。
まあ、良い。

おりゃーーー!!

ザクッ

……ブシャーーー。

おおう。
斬りつけた所じゃなく、いたる所からオイルが噴出しやがったぞ。
何なんだ?
……あ、やべえ。
魔力が…。

バタッ

「やっぱり、お兄様では少し無理があったかしら。…では、ごきげんよう、お兄様」

そう言うと、なのはから半透明な金髪幼女が出てきて『吸血鬼(ブルートザオガー)』を手にするとどこかに消えてしまった。
ソレを見た後俺は意識を失った。

「はれ?ここは…え?兄さん?! しっかりしてください兄さん!!フェイトちゃん!はやてちゃん!誰かーー!!」

こんなんばっかだな…。
次ぎ有るなまともなの…無理だ…ろう…な……。







「ダメダメなご主人様の為に用意してあげたんだから感謝しなさいよ!」

 ってな事を言われ現在管理局の演習場に来ている…
 しかもアリサのヤツは白いゴスロリの服着てる…

「しかも良介の希望通りちゃんと『剣』よ!!」

 さらに手にはミヤがどうやったのか解らないが本の姿になってるし…

「さぁこの紙に書いててある台詞を読むのよ!!」

 なんか大威張りで紙を渡してきた…
 しかも何か凄い期待してる目してる…
 さらに言えば読まなかったらポルターガイストアタックかますって目してるし…
 しかたねぇかぁ…

「えっと…
 なになに…

 『憎悪の空より来たりて

     正しき怒りに応え

        我等は魔を断つ剣を執る!




        汝、無垢なる刃デモン”ぺ”イン!!』


 ってアレか!!!
 『剣』は『剣』が違うだろ!!
 しかも本物じゃなくて昔、月村のヤツが作ったパチものかよ!!」

 その後は使用してみたが本物と変わらなかった…
 流石夜の一族の科学技術って所か…
 ただ何を張り合ったのか…

「コレが私が開発したスーパースカリエッティ無敵ガジェット28號スペシャルだよ!!
 さぁ来たまえローゼン君!!」

 ってなどう見てもパクリなドラム缶に手足が付いただけの巨大ガジェットをナルシーが出してきやがった…
 結局戦闘に突入…
 止めは

「光射す世界に、汝ら闇黒、棲まう場所無し―― 

    渇かず、飢えず、無に還れっ! 

     レムリア・インパクトッッッ!!」 



       「昇華ぁっー!!」 

ってな感じに刺してやった…
ただその後、何故かギンガのヤツが執事の服で駆けつけボクシングスタイルで俺をボコボコにした…
その後はお約束の説教・留置所のコンボだった…
ちなみにデモンペインは「似合う・似合わない・それ以外」では無く、技術力と言うか、最後に使った技により危険物扱いで没収された…






レヴァンティンが直ったシグナムに何発も殴られた。
何でも二度も壊されたレヴァンティンの痛みを思い知れと言うことらしい。
全身の火傷に加えて、既にギンガによって加えられた全身の打撲が広がった。
おまけに変な刀の所為で魔力、体力共に衰弱し、貧血気味だった。


「良介、良介、面白いもん持ってきたんよ。」

またはやてが来た。とてもよい笑顔を浮かべて。
一瞬の判断だった。逃げろ。そう本能が俺を突き動かしたのだ。
さすがに、これ以上体にダメージを与えたら三途の川を渡りきってしまう。
ただでさえ、棺桶に両足突っ込んでいるような状況でそれは自殺行為だった。

「ああ、待った待った。わかっとるよ、今回はただの珍しいもんやから。」

だが、本来なら動けないほどのダメージを負った俺の体では、
たとえ相手が毎日デスクワーク三昧の運動不足で発育不足な乳揉み豆狸でも事も容易く追いつかれてしまった。
そして、俺の命もここまでかと思った時、はやてが何も武器を持っていないのに気付く。

「あれ?」
「だから言うとるやん。ただの珍しいものやって。」

そういってはやてが取り出したのはただの針。
首を傾げ、目をこすり再び見る。
やはりただの針。意匠が凝らしてあるわけでもなくシンプルな針であった。
はやてに手渡されて良く見てみるが感想は変わらない。
ただ、見かけの割には何十年いや、もしかしたらもっと時を経て此処にある様な独特の存在感がそこにはあった。
だからこそ俺は解らない。一体これは何なのだ?
俺は再び首を傾げてはやてを見る。
するとはやてはにっこりと笑って答えを言った。

「一寸法師の針や。」

俺の思考は一瞬停止する。
もちろん知らないと言うわけではない。日本文化の体現者であるこの俺が有名な勇者の話を知らない訳は無い。
より大きいものを倒した英雄。稀代の巨人殺し。人にも足りぬその一寸の背丈で人よりも大きな怪異を倒した巨人殺しの粋。
だが、だからこそ思考が停止した。かの有名な日本の勇者の武器がこんな場所にあるわけない。

「あっ!?」

俺は馬鹿馬鹿しいとはやての持って来た贋物っぽい一寸法師の針を投げ捨てた。


さくっと音がして丁度後ろでうっとりと光る刀身を見ていたシグナムのレヴァンティンに一寸法師の針が突き刺さった。




何度も何度も壊されたレヴァンティン。直されてからも直ぐに戦いに使われたレヴァンティン。
もう彼は限界だった。彼は戦って、戦って戦い抜いたのだ。
例え木刀に叩き折られ誇りをずたずたに引き裂かれようと、
メンテナンス明けの整備士に適当な扱いをされようと、
修理されたばかりの彼を休む間も無く戦いに駆り出されようと、
挙句の果てに豆腐の様に真っ二つに切り裂かれ、整備士に瞬間接着剤でフレームを固定されようと。

そう、彼は戦い抜いた。限界まで、いや限界を超えて。
でも、限界などとうに超えた体は、例え表面上直されていても至極杜撰なメンテナンスで癒されることなど有り得なかった。
体の内部にはいくつもの見えない傷が刻まれており、彼の体は金属疲労で悲鳴を上げる。
本来ならフレームの全交換を行わなければならないほどの重症だった。
だが、彼は耐えたのだ。
主に涙を流させないために、直った刀身に頬擦りする主の頭を疑いながら。
それでも、忠信を是とする彼の魂は鞘から加わる衝撃も耐えて見せたのだ。
これも全ては主のためと。

だが、気を抜いた瞬間だった。
その体に針と言う名の終焉をもたらすものが突き刺さったのは。
ただ慰めるならば、本来なら魔力の微かに篭っていたはずの彼に刺さることなど無いはずのそれは、正しく英雄の聖遺物だったのだろう。
歴戦の勇士は伝説の勇士の手によって武器と武器の戦いに勇ましくも敗れたのだ――――――。




びき、びきびきびきと不吉な音が良介の背後から響き渡った。
それはまるで断末魔のような金属の悲鳴。

「あ、ああ、あああ・・・・・・」

それに追随するように響くのはシグナムの声。
まるで世界が終わるかのような悲鳴。まるで死に行く相棒を助けられない無力感。
そこには絶対なる悲しみがあった。

『・・・・・・主、不甲斐ない我が身を許してくれ。』

最後に、そうレヴァンティンは言った。ただ、自分の不甲斐なさを悔やむように。
そして、次の瞬間、柄と接着剤でくっ付いた尖端を残して無残に砕け散った。
刀身の破片とその尖端が硬質な音を立てて床に散らばる。

「レヴァンティン・・・・・・」

シグナムは唖然とした。
彼女は誓ったはずだった。そう、彼女は誓ったのだ。
三度目はもうないと、もう二度と彼を壊させないと。
だが、その誓いは彼女の相棒が帰ってきて数日もせず破られた。
しかも、全力ではないとは言え微かに魔力が灯ったその刀身を。
しかし、レヴァンティンは主の未熟を責めるのではなく、ただ自分自身の不甲斐なさを謝って逝った。




凄まじい音がして、振り返るとそこには前にも増して呆然としたシグナムが柄だけになったレヴァンティンをもって自失していた。
床に広がる破片に混じって、何か別の細長い光るものがあり、それが何なのか理解した瞬間、体から音速を超えて血の気が引いた。
一度目は、抜き身で追いかけられ、二度目は全身火傷の上に打撲を食らわされた。
三度目は、きっと、殺される。
忍び足をするのも忘れ全力で残りの生命力を集中して逃げようとした。
だが、後ろから全く反応が無いことに気が付くと振り向いた。
シグナムがプルプル震えたかと思うと破片の散らばる床に縋り付いた。

「う、うわぁあああああ!!ああああああ!!レヴァンティン、レヴァンティン、レヴァンティン!」

凄まじいほどにシグナムは泣いていた。
さすがに、すばらしく罪悪感が沸きました、まる。




それから数日間、レヴァンティンが治るまでシグナムはずっと自分の部屋に篭って、天井を見上げてぶつぶつと独り言を繰り返していた。
レヴァンティン自体は接着剤でくっ付けたシャーリーに直るまで徹夜態勢で急ピッチ作業を進めさせたのだが、帰ってきた後もすごかった。
帰ってきたレヴァンティンを抱えて一週間自分の部屋から出てこなかったのだ。
その上誰か近づくと、獣のような威嚇音を口から発し、下手に刺激すると噛み付きかねない様子だった。
まるで子供を守る獣さながらのその姿に局員は怯え、騎士たちは唖然とした。
最終的には、睡眠不足と栄養失調でシグナムは倒れ、錯乱していた間の記憶は全て吹っ飛んでしまったが。


そういえば、あの一寸法師の針がどうなったのか。
どうやら、レヴァンティンの破片に紛れ込んで彼の一部となってしまった様だ。
その所為か出来上がった新生レヴァンティンの外見は一切変わっていないのに、何故か前より凄みを感じるようになった。
魔力伝導率も心なしか良くなったようで記憶のぶっ飛んだシグナムは首を傾げていた。


ちなみにお仕置きはシスターシャッハとヴィータ、そしてついでにギンガによってしっかり行われた。
終わったあとは人間というのはここまでやっても死なないものなのかと感動すると同時にもういっそ殺してくれと思った。
それからはさすがに暫く病院のベットの上で身動き一つ取れず悶える日々を迎えました、まる。






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