ギンガ・ナカジマの良介捕獲日記より抜粋
某月某日
 今日もアノ人の捕獲を制限時間内で成功しました。
 でも今日はかなりてこずりましたけど……
 まさかあんな逃走方法を使うとは……
 ですが長年の経験と感、そして母から受け継いだ『宮本良介観察日記』を駆使すれば捕獲は簡単なのです!
 ただ他の人たちはあの人の逃走術はかなりのモノと思われています……
 確かに一般の人よりは逃走術に長けていますが、管理局を単独で逃げ切るほどではないのです!
 この母から受け継いだ『宮本良介観察日記』を読み、研究した結果ある事実にたどり着きました!
 もちろんその事実に母も気が付いていたみたいですが……
 そしてその事実は良介さんのあるスキルによるもの!
 それは
         『災害特異点』
 です!!
 良介さんが逃走し、ある一定時間を過ぎる、又は本気で逃走した場合、何処かの組織と仲良くなり、果はその組織の重要人物になってしまうのです!!
 つまり!
良介さんが逃走術に長けているのではなく、持ち前のはた迷惑なスキルにより、管理局がてこずる組織に匿われるからこそ捕まえるのが困難になるのです!
 最近ではJ・S事件が新しいでしょうか?
 なんせ主犯格の犯人と仲良くなるだけではなく、その組織のメンバーにまで気に入られてしまい、捕獲に大変な労力を必要としましたから……
 そして私と母はある結論にたどり着きました!
 宮本良介がどっかの組織に接触する前に捕縛する!
 それが一番被害を出さない方法だと!
 そして今日も謎の組織と接触寸前で捕獲……
 今度はもっと早く捕獲できるよう心がけたいと思う……
 

■宮本良介のとある日記より抜粋

某月某日
毎度のごとくギンガに追われる俺はひたすらにクラナガンの裏路地を走っていた。
しかし、どうして毎回毎回、親子そろって俺をほっといてくれないのだろうか?
あれだぞ?俺は極めて一般的な一市民に過ぎないんだぞ?
こうやって追われて、気が付くと周りに変な連中がいて面倒な出来事に巻き込まれているんだ。
最近だと変態ドクターの一件だな。
…………これって俺のせいじゃなくてあいつ等が追いかけてくるからじゃないのか?
そう結論付けていざ文句の一言でも言ってやろうとギンガを探していたが見つからん。
仕方ない、今日は出直そうか。そう考えて路地を曲がろうとした所で
「あっ!」
「げっ!?」
回れ右、そして全力ダァアアアアアアッシュ!!!
……はっ!? 何で俺逃げてんだ!? 今日はあいつを探してたんだろうが!?
振り返るととっつぁんモードのギンガ。ダメだ、止まったら今夜も留置所だ。
クッソ〜〜〜ッ!!
こうなればヤツの度肝を抜く手を使ってやる!!
クックック……見てやがれ!!
ア〜ッハッハッハッハ!!
 

■ギンガ・ナカジマの良介捕獲日記より抜粋

某月某日
 良介さんの後姿を見た瞬間捕縛行動に移ってしまった。
 すでに良介さん捕縛は私の癖になりつつある……
某月某日
 今日母のある技能を受け継いだ……
 その名も『良介さんセンサー』!
 良介さんがセンサー範囲内に入ると察知する事が出来ると言う技能である!
 これで検挙率は右肩上がり間違いなしだと思う!
某月某日
 何故だろう?
 良介さんを追いかける事を楽しんでいる私が居る。
 仕事に私情を挟むなんて……
某月某日
 今日良介さんが他の人に捕縛されていた。
 何故だかモヤモヤした気分になった……
某月某日
 また良介さんが他の人に捕縛されていた。
 謎の組織と接触する本当に寸前で捕縛でき、良かったはずなのに……
 私以外の人が良介さんを捕縛する事に不快感を感じる。
 何故だろう……
某月某日
 また私以外の人が良介さんを捕まえた……捕まえてしまった。
 胸のモヤモヤが増した……
某月某日
 私は一代決心をした。書類等の準備は万全。
 コレを提出すれば私の望みがかなう。
某月某日
 今日やっと受理された…
 結果管理局に『宮本良介対策課』が設立された。
 隊員は私だけ……
 コレで名実共に良介さんを捕縛する権利を手に入れた。
 とても喜んでる私が居る……
 

■宮本良介のとある日記より抜粋
某月某日
街中でギンガの姿が視界に入った瞬間、俺の意思とは関係無く身体が逃走行動に移ってしまった。
既に無意識レベルでの行動になりつつある。
逃げながら後ろを振り返るとギンガの奴もしっかり追いかけて来ていた。
何故かアイツは自分の行動に驚いている様子だったけど。
某月某日
最近妙なスキルを会得してしまった。
その名も『ギンガセンサー』という。
……まぁ名前から解る通りギンガを感知する第六感みたいなもんだな。
ある一定範囲内にギンガが入ると、こう「キュピーン!」って感じでギンガがいる大体の方角と距離が解るんだ。
アリサに相談したら「それってニ○ータイプじゃない?」と言われた。
俺は重力に魂を引かれた人々で満足してるんだが……まぁせっかくの技能だし、ありがたく活用させてもらおう。
某月某日
最近俺を追いかけて来るギンガが妙に楽しそうだ。
そんなに俺に説教するのが楽しいってのか!?
こっちは恐怖以外の何者でもないってぇの!
某月某日
今日はギンガ以外の管理局員に捕まっちまった。
例の『ギンガセンサー』の弊害だと思われる。
コイツはギンガの気配や距離、方角は解るんだが、ギンガ以外の追跡者(チェイサー)には全く反応を示さないのだ。
そのせいで追い掛けられている最中はギンガの行動ばかり意識して他の追跡者の事が意識に上らないのだ。
しかも俺が捕まったのにギンガの奴は喜ぶどころか難しい顔をしてた。
Why?
 

某月某日

またギンガ以外の奴に捕まっちまった。
この『ギンガセンサー』も役に立つのか立たないのか微妙だな。
管理局に連れて行かれる最中にギンガとすれ違ったが今回も微妙な顔をしてた。
俺が捕まったのに嬉しくないんだろうか?
あの表情は昔どっかで見た気がするが……思い出せん。
 

某月某日

またしてもギンガ以外の奴に捕まってしまった。
今回もギンガにばかり意識がいって他の連中の気配を察知するのが疎かになっていたらしい。
管理局に輸送される車(防弾仕様)に乗せられる前にギンガの姿が見えたがやっぱり微妙な表情だった。
車に揺られながら考えていたらあの表情を何処で見たのか思い出した。
ありゃあ昔俺がアリサに構ってばかりいてなのはの相手をしなかった時の寂しそうな顔にソックリだったんだ。
しかしギンガの奴が何でそんな表情をするんだ?
 

某月某日

最近ギンガの奴が何か企んでいるらしい。
リンディやレティが何か根回しをしたり、ギンガの奴が膨大な量の書類を書いているのを時々見かける。
ありゃあはやての奴が六課を設立した時の書類量と同じくらいの量だ。
う〜む、嫌な予感がする。
某月某日

先日管理局に新たな部署というか課が設立されたらしい。
なのはやフェイト、はやての連中でさえ詳しい事はまだ知らないという事だ。
なんでもギンガの奴がその課に関わっているらしい。
最近アイツも元気無さそうだったし、今度様子を見に行ってみようと思う。
しかし最近の日記を見直してみると見事にギンガの事ばかりだなぁ。
 

某月某日

ギンガの所属する新部署に冷やかしに行く前にコンビニに寄ってジ○ンプを立ち読みする。
次元を越えて愛される漫画雑誌というのは良い物だ、うむうむ。
最近死神を題材にした漫画の主人公が噛ませ犬っぽくなってるのが気になる。
あと涅マ○リを見てるとクアットロやスカリエッティなんてマッドサイエンティストとしてまだまだなんじゃないかと思い始めた。
まぁ比較するキャラが間違ってる気もするが……
一通り立ち読みを行い、さて行くかと思っていると一冊の雑誌が目に止まる。
手に取って読んでみるとどうやら管理局の作ってる雑誌らしい。
その雑誌の目次にこんな項目があった。

『女性管理局員必見!  管理局男性物件』

「こんなのがあんのかよ。完全に女向け雑誌じゃねえか」

まあ気にせす読んでみた。
とりあえずいろんな感じで分類別がされていてランキングみたいになっていた
俺的に印象に残るのが2つあった

          超絶波瀾万丈人気No1物件  宮本良介

「ちょとまてやコラァ!」
俺は民間人だぞ!? そりゃ確かに管理局には知り合いが多いが……
しかも補足を読むと
 


「白い悪魔」「死神」「夜天」など管理局きっての美女たちが狙う中未だに落ちない物件。
落すのはかなり必死の物件ではあるが一緒にいられれば間違いなく退屈しない非日常の生活が約束される事間違いなし!
退屈しているあなたにお勧めの物件DEATH!
 


おい、たしかにあいつらは美人の分類に入るだろう。だが俺にとってはただの死亡フラグだぞ!?
貴様らも本性知ってるんだろ!? ……あっ!知ってるからこそこれ以上のことを書けんのか……
「悪魔」とか書いた時点で死んでるだろうけど……
あと非日常って……俺はのんびりしたいのに……

しかし次のヤツにもかなり驚いた
 

       超優良物件  無限書庫司書長ユーノ・スクライア
 

いたなぁ、こんなやつ!! 本当に忘れてた……
しかしたしかにこいつはいい物件なのかもしれんな……
提督並の権力者でしかも給料も高い。顔も女顔だが美形ではあったと思う。
内容を読んでみると……

現在フリーで「白い悪魔」「死神」「夜天」の幼なじみ。
しかもまったく相手にされていないため命の危機は全く無い!
落とせば将来安定した結婚生活が約束される物件!
 

 

たしかにあいつらこいつのこと相手にしていない……つうか覚えてんのか?
タダの便利屋扱いみたいな感じだよな……
……あまりにかわいそうなので差し入れをもって無限書庫にいった。
そしたらあいつはいた。しかしここでの激務のせいかものすごくやつれていた……話してみたら

「いや〜、差し入れありがとうございます。それにしても久し振りですね。」
「ああ、ところでお前体大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。徹夜が4日続いてるだけですから」
「4日!?」

おいおい、いくらなんでも忙しすぎだろ……
とりあえずそのまま雑誌の話をしてみたら
 

「うれしいなぁ、ちゃんと僕のこと覚えてる人いたんだ……でも誰も告白なんてしてくれないんだよね」

ものすごく悲しそうに言った。

「そういえばなのは達は元気ですか?」
「ん? 仕事で会わないのか?」
「会ってますけど画面越しだけです。仕事の依頼を受けたらそれで話終わりですから」

流石に俺も同情した……
同時にこいつの静かな生活に羨ましく思った。
しばらくここに通って俺も静かに生活しよう。休息もたまにはいいだろう。

無限書庫生活 一日目
「(肩でも)揉んでやろうか?」
「え? 急にどうしたんですか?」
「気にするな。うお、お前滅茶苦茶固いな!? こんなに(身体は)細いのに」
「ああ、気持ちいいです。こういうの(肩もみ)、久しぶりなんで嬉しいです」
この後、アルフに妙な視線で迎えられた。
はて、なんでアイツはあんなに顔を真っ赤にしていたのだろうか?
なんか「フェイト……アタシは一体どうしたら」とかなんとか呟いていやがったし。
 

無限書庫生活 二日目

折角なので読書をしようと一冊手にとって見る。
『ツンデレな人の落とし方』
……貸し出し先の名簿がほとんど知り合いの女の名前ばかりだった。
 

無限書庫生活 三日目

クロノがユーノに通信を入れてきた。
どうやら資料の請求のようだ。
しかしアイツ、ユーノ後ろにいた俺には全く気がついていなかったな。
……ハッ!? まさか空気属性が伝染した!?
 

無限書庫生活 四日目

見知らぬ女司書に相談された。
なんでもこの女司書、ユーノのことが気になるらしい。
流石は優良物件、裏ではきっちりモテてるんだな、本人にはいわないけど。
とりあえず『フェレットの上手な飼い方』という本を渡しておいた。
うむうむ。
 

無限書庫生活 某日目

平和だ……実に平和だ。六課のやつにまったく会わないだけで、俺の生活はここまで穏やかになるものなのか。
そう思っていたらギンガが資料をくれとやってきた。しかし空気属性のせいなのかきずいていない センサーがここじゃ何かの力で働かないのか?
本の山で顔を隠しつつ逃げようとしたらそれがまづかったか手伝おうと近づいてきた。
そしてそれが俺のだと顔を見てやっと気づいた。

「なんであなたが……その本……まさか更生するために勉強を!?」

なにやら勘違いしたようだがここでうまく言わねば俺の安息が……

「まあそんなとこだ。ただ他のやつ等に言うなよ」
「あなたのことですから恥ずかしいんですね?わかりました。私も邪魔はしたくありませんから黙っておきましょう。」

そう言ってうれしそうに依頼をして出て行った。
それからよくギンガが来て勉強の差し入れだと弁当を作ってくるようになった。
まさか留置所以外で食えるとは……
弁当はカツ丼が出るかと思ったが高校生が彼女につくってもらってそうなうまそうなもので意外だった。

「どうです? 美味しいですか?」
「ああ、まさかカツ丼以外を作るとは思わなかった」
「それ以外だって作れますよ。勉強頑張るならリクエストくらい聞きますし」
「メロンで」
「うふふ、言うと思ってました。じゃあデザートで持ってきますね?」

まさかコイツとこんな会話までできるとはな……ここはいいところだ……
 

無限書庫生活 某日目

「良介さん、そこの資料の日付順にまとめてもらえませんか?」
「おお、そんくらいいいぞ」

ついに手伝いをするようにまでなってしまた。
しかしこいつすげえな……本を一気に十冊以上読んでやがる。
他の司書達も5冊くらい一気にやってるし……無限書庫の司書連中はバケモノか!?
おっ? 何やら速読魔法の質問に行きやがった。いい雰囲気作ってやがる。
ここには争いがないのか……っていうか俺の周りに争いが起こり過ぎなんじゃねぇのか? と思い始めた。
 

無限書庫生活 某日目
例の司書が真剣な面持ちでユーノと向き合っている。
おお、いよいよ告白か!?
告白シーンなんて生で見たことがない俺は本棚の後ろからこっそり覗き見だ。
あれ、そういえばギンガはどうしたんだ?
確かさっきまでそこに……ってうお!? 真っ赤じゃねえか。
湯気まで出してるし……純情なんだな、コイツ、新発見だ。
よし、弱みをゲットだぜ!
……おっと、それはそれとして続きを見なければ。

「ん? どうしたの?」
「ユーノさん、わたし……」

いけ、もう少しだ!
心の中でエールを送る俺。
だが次の瞬間、通信モニターが二人の間に現れた。
……おいおいクロノ、空気読めよ。
あーあ可哀想に、あの女司書逃げちゃったよ。
よし、とりあえずフェイトに匿名でクロノの悪行をリークするとしよう、無論でっちあげだけどな!
ちなみに、ギンガはこの行動を見逃してくれた。
流石に腹に据えかねたんだろうな……
 

無限書庫生活  某日目

ティアナが勉強しにやってきた。
やはり俺には気がつかない。
なんせ背後に回っても無反応だしな。
ガンマンの癖に緩慢な奴だ、俺の背後に立つなとか言って見せろ!

「全く、模擬戦してもらおうと思っていたのに、あの人は一体どこに……ブツブツ」

小さくて聞き取れんかったが何かブツブツ言ってやがる。
とりあえず何もしないのもなんなのでフッと耳に息を吹きかけてみた。

「ひゃあぁんっ……」

うわ、腰を抜かして座り込みやがった!?
なんかビクビクしてやがるし、ここは退避だ!
 

無限書庫生活  某日目

先日のティアナへの悪戯のせいか、無限書庫には幽霊がでるという噂が立ってしまった。
ユーノは別段気にしている様子はないが、何かギンガの様子がおかしい。
ひょっとしてコイツ、オカルト苦手なのか?
「女の子なら誰だって苦手だと思います」
「じゃあアリサとかどうなんだ?」
「あの人は別の意味で怖いです」

俺もそう思う。
 

無限書庫生活  某日目
 今日地震があった。
 頂点が見えないほど高い本棚(?)の上から本が落下してきやがったが、幸いにも負傷者は居ないとの事だった。
 てか落ちてきた本に埋まって行方不明者続出のため確認できない状況だがなぁ……
 アレだ、バスとかで「居ない人は返事をしてくださいね〜」ってヤツだ。
 あとユーノのヤツが

  『せっかく整理した所が……』

 って泣いてやがった。
 まぁあの女司書が慰めていたので大丈夫だろ……
 

無限書庫生活  某日目
 今日”も”地震があった。最近頻発してるなぁ。
 まぁ最初の教訓から本の落下防止用の対策や、途中で本の落下を受け止めるネットまで張ったので対策は万全だ!
 あとアノ一件以来女司書とユーノが一緒に居るのを見かけた。
 

無限書庫生活  某日目
 ふと家のメイドに現在の場所の連絡を入れていない事に気が付いた。
 だが今電話すると危険と俺の野生の感が警告を鳴らしている……
 そして電話しないならしないで、危険である事を俺の野生の感が警告を鳴らしている。
 う〜む、どうするべきか……

  「そっか! ギンガのヤツが差し入れに来た時に伝言を頼めば良いのか!」

 とりあえず間接的に連絡を頼む事にした。
 

Side・ギンガ

ついにあの人が改心してくれた
母の代から続いてきた私達親子の逮捕の戦いもついに終わったのだ
少しさびしくなったような気がした……
けれどもこれからはあの人の手助けをするという使命がある!
とりあえず勉強の助けと思いお弁当を作った。
最初は癖でカツ丼を作りかけたがここで不貞腐れてしまってもダメだと思い普通のお弁当にした。
それを持って行ってみたら

「うまいぞ。まさかカツ丼以外を作るとは思わなかった」

うふふ、そう言うと思って普通のにしたんですから。
リクエストを聞いたらメロンと言われた。
……私の手作りのものを言ってくれなかったのが残念だったけど、実にこの人らしい。
 

しばらく無限書庫に通うようになったら司書長に女性司書が告白しようとしていた
あまりにも突然に見てしまったためあの人に赤くなっている所を見られてしまった……うぅ、恥ずかしい。
逮捕しようかと思ったが何も悪いことはしていないのでできなかった……
告白の瞬間にクロノ提督が資料の依頼で邪魔をしてきた。
なにしてるんですか! 女性の一世一代の告白を邪魔するなんて!
あの人がフェイトさんに連絡していたが今回は見逃そう……
またしばらくしてから無限書庫にいくようになってから幽霊が出ると聞くようになった。
正直恐い……あの人が聞いてきたので正直にいってしまったが
「じゃあアリサとかどうなんだ?」
あの人は別の意味でいろいろと怖いですよ……
 

今日朝に差し入れのお弁当を作っていたらスバルにみつかった

「あれ? ギン姉お弁当なんか作ってどうしたの?」
「あっ! い、いやね最近自分で作った方が安いと思って作ってるのよ」
「でも足りなくない?」
「ダ、ダイエット中なのよ」
「ふ〜ん?」

なにやら納得していなかったがそのまま六課の仕事に向かった。
深く考えない子でよかった。もしバレたら今の状況がなくなってしまう……
あ、あれ? 今の時間が消えないでほしいと思ってる?
な、なんで……そ、そうよ今の状況がなくなったら今までの公正が泡になってしまうからよ! きっとそう!
さて今日もお弁当を届けよう。今日もおいしいって言ってくれるかな?
 

sideギンガ その2

不覚だった。あの人達を甘く見ていたとしか言いようがない。
きっかけはスバルの一言だったらしい。

「最近ギン姉がよくお弁当作ってるんですよねぇ〜。ダイエット中とかで」

たったこれだけ。
これだけであの人達は私をマークしていたのだ。
いつものようにお弁当を作って本局に直通している転送ポートに向かった私の前に現れたのだ。

「あれれぇ? どこに行くのかなぁ?108の隊舎はこっちじゃないよね…………?」
「それに、どうしてそんなにウキウキしてるのかな?」
「ちょ〜っと話さへんか?」

管理局の誇る若手三大巨頭がそろい踏みで。

「え……え〜っと今日は本局に用があって……時間もかかるからお弁当を持っていったほうがいいかなぁ〜、と……」
「最近よくお弁当作ってるんだって?」
「え……?」
「しかも前線組でカロリー消費しまくりのはずやのにダイエットしとるって?」
「ええ……??」
「それって不自然だよね……?」
「えぇっと……」

言葉が出ない。相手はスバルじゃない。下手に言葉を発すればそこから突き崩されかねない。
だがこのまま黙っている訳にも行かない。
そうこうしている内に決定打を打たれた。

「最近、兄さんと連絡が取れないんだよねぇ……」
(無理だ! 誤魔化し切れない!!)

そう確信した私はブリッツキャリバーを高速起動。一気に走り出す。
転送ポートまで距離はもう長くない。あそこまで行けば後は何とかできるだろう。あそこにはハラオウン提督を初めとした歴戦の勇がそ
っているのだから。
つまり勝負はそこまでの間! 勝機はある!!

「待ちなさーい! ギンガーっ!!」

その声に一瞬だけ視線を送る。
…………なんでリミッター外してるんですかぁ!?

「アクセルシュート!」
「プラズマランサー、ファイア!!」
「ブラッディダガーッ!」
「いやぁああああ!!」

飛び交う魔法をかわしながらブリッツキャリバーを走らせる。
あの人はいつもこんなのをかわして逃げ回っていたの!?
改めてあの人の凄さを思い知った。
……そんな事思ってる場合じゃない。
 


そして、ここでも私は自身の考えの浅さを思い知らされた。

「「「待ちなさーい(待ちーや)ギンガーっ!!」」」
「何てしつこいのーっ!!?」

本局が三大巨頭によって(物理的に)大きく揺れた。
 


Side・ギンガ その3

「「「待ちなさーい(待ちーや)ギンガーっ!!」」」

い、いや……あんな人たちに全力全壊なんてされたくない!
そう思って逃げ続けていたら目の前にユーノさんが―――そうだ!

「ユーノさんこれいつもの差し入れです!」
「えっ!?」
いきなりいろいろ省いてお弁当を差し出した。
ユーノさんは一瞬わけのわからないといった顔をしたがすぐにこやかになり

「わかった。いつものようにしとくよ?」
「はいできたら感想もおねがいします」
「うん、わかったよ。あっ! なのは達、久し振りだね! 元気だった?」

ユーノさんはそのまま三巨頭に笑いかけた。その三巨頭は驚き顔で
「えっ!? ユーノ君……それって……」
「うん? ギンガからの差し入れだよ?ところでどうしてギンガを追いかけてるの?」
「えっ!? い、いやなんでもないんや! ほ、ほなな!!」
「ギ、ギンガごめんね!!」

そういうと三巨頭は早足で去っていった。
本当に……本当に殺されるかと思ったわ……

「大丈夫だったかい?」
「ええ、ありがとうございます。助かりました……」
「まあ、なのは達の事だから良介さん絡みで怒ってたんだろ?」
「ええ、でも書庫にいることは秘密にって……」
「まあ、いつも平和だからね……存在は忘れられてるみたいだけど……」

自覚あったんですか……

「とにかく僕も協力はするよ。あの人がいる方が楽しいし」
「ええ、お願いします。」

こうしてなんとかバレずにすんだ。
命がけだけれどやっと公正してくれるんだからこれくらい頑張らなきゃ!
そう思ってた次の日

「ギンガさん……先輩、どうかしたんですか? この間からずっと、ずぅっと探してるんですけど……」
「ちょ、ちょっと待って! ティアナ落ち着いて」
「あれ? なに慌ててるんですか? もしかして知ってるのかな? かな?」

そ、そんなティアナまで壊れてくるなんて……
い、嫌……やめてそんな単色の目で見ないで……

「あはははははははははははははははははは!!!!!」
「いやぁぁぁぁぁ!?」

この日また本局が揺れたのだった。
そして局員たちから六課のメンバーになると破壊能力UPと壊れ度UPが半端ではないと再認識された……
 

Side・ユーノ

宮本さんが無限書庫に来てからどれくらいになるだろう。
すっかりここに一員のようになっている。
彼自身、ここをいたく気に入っているようだ。
彼がここに来てから地上の方はとても平和だと聞いた。
むしろ物足りないぐらいだと…………複雑な話だ。
今日はクロノに依頼された資料を再チェックして転送した。
お礼の通信を入れてきたクロノがどうしてそこかしこに包帯を巻いていたのか気になったが、触れないでおこう。
むしろ触れちゃいけない。
そういえばあの時、いつもよく働いてくれる部下の司書の子が何か僕に言おうとしていたっけ?
何だったんだろう? 休暇の申請かな?
ここ最近、働きづめだったからなぁ。
そんなことを考えていたらいきなり本局を地震が襲った。異空間に浮かぶ本局に地震なんて起こるはずがない。
ということは時空震か、それとも局内で何かがあったという事だ。
あ〜あ……何にせよせっかく整理したとこが滅茶苦茶だ。
気分転換にリラクゼーションスペースに向かう。
と、向こうから走ってくる人影。
あれって……ギンガじゃないか。どうしたんだろう、あんなに慌てて。
彼女は僕を見つけると

「ユーノさんこれいつもの差し入れです!」

そう言っていきなりお弁当を差し出してきた。
僕は一瞬訳が分からなかったがこれがいつもの彼への差し入れだと気が付いた。
分かった。いつものようにしとくよ。と言ったら

「はいできたら感想もおねがいします。」

と言って頭を下げた。やはり彼女は律儀だなぁ。うん。
と、そこへなのは達もやって来た。何だか僕を見て驚いているというか拍子抜けしたと言うかそんな顔をしている。
さっきの地震、昔、なのは達が訓練室を半壊させた時のそれに似ていたと感じたのは間違いじゃなかったみたいだ。
その後、話を聞いたらやっぱり彼絡みだった。
とりあえずギンガに協力すると約束すると彼女は嬉しそうに何度も頭を下げた。
これは命の危険から開放された事への感謝に見えたのは気のせいじゃないな、きっと……
次の日、またギンガは本局を走っていた。

「あはははははははははははははははははは!!!!!」
「いやぁぁぁぁぁ!?」

今日はなのはの教え子―――確かティアナって子だったかな?―――に追いかけられていた。
流石はなのはの教え子。将来有望だね…………いろんな意味で。
さて、今日も落ちた資料の整理から始めようかな。
 


無限書庫生活 某日目

何故か今日のギンガはボロボロだった。
何があったのか問い詰めてみるが頑として答えようとはしない。
しかし服とかはボロボロなのに弁当箱には傷一つついてない、中身も無事だ。
メロン様が無事なのは良いことだが、流石にギンガをほうっておくわけにもいくまい。
というわけで手当てをしてやるとしよう。

「いつもと立場が逆ですね」

確かに。
いつもは追いかけられている俺が怪我して、捕まえたお前が治療してくるもんな。
よしー、しみるから注意しろよー?

「あふっ…」

ちょ、ヘンな声を出すな!
あれ? あそこにいるのは例の女司書……ん?

『参 考 に な り ま す』

なんでモールス信号なのかはわからんが、参考になったなら何よりだ。
……で、何の参考になったんだ?
 

無限書庫生活  某日目

今日はキャロとエリオが二人で調べ物に来ていた。
例によって俺の存在は気づかれていないようだったのでこっそり二人の小指に赤い糸を結んでやった。
お、気がついたようだな。
二人とも顔を真っ赤にしていやがる、初々しい奴らよ。
うむうむ。
 

無限書庫生活  某日目

何故かフラフラなスバルが現れた。
余程意識が朦朧としているのだろう、ぶつかったにも関わらず俺を認識できていないようだ。

「ギン姉……アイス……食べ……」
 

視点の定まらない目でブツブツ何か言ってやがる。
耳をすませてみると、どうやらギンガにアイス禁止令を出されたらしい。
はて、姉思いなコイツがギンガを怒らせるとは一体何やらかしたんだ?
とりあえず、あまりにもスバルが哀れなので俺の手作りアイスを部屋に送っておいた。
バレたらまずいのでユーノをパシリにつかったけどな!
 

無限書庫生活  某日目

今日はユーノがフラフラしていた。
まあコイツの場合は普通に睡眠不足と疲労によるものだから珍しくもなんともないんだが。
とりあえず日本の様式美にしたがって後ろから首筋にチョップ!
……おお! 気絶した、俺ってすげえ!

「ありがとうございます! 司書長、私たちがいくら言っても休んでくれなくて……」

例の司書がユーノを膝枕しながら頭を下げてくる。
ていうかいつの間にそんな体勢に…気にしたら負けか。
まあ、ユーノにも休息は必要だし、これでいいのだ。
うむうむ。
 

Side・スバル
 

その日、あたしはギン姉がお弁当を作ってるところを見た。
なんでもその方が安く済むかららしい。
それにダイエット中で量も減らしているとか。
そんな必要ないと思うんだけどなぁ〜。
下手にダイエット何かしたら減っちゃうじゃない。
主に胸部から。
と、そんな話を夕食時になのはさん達にしたら途端にう顔色が変わった。
何て言うか、いわゆる魔王モード? 何で!?
翌日、ギン姉がこう『ズビシッ!』って感じな効果音を付けた人差し指を突きつけてきて

「スバル! あなたは良いと言うまでアイス禁止っっ!!」

と宣告された。
えぇ〜っ!? なんで〜っ!!?

「自分の胸に聞いてみなさい!」

と取り付く島もない。
そんな〜。酷いよギン姉〜っ!
 

禁アイス宣告を受けてどれくらい経ったんだろう。
もうアイスが何だったのかも分からなくなってきた。
もうダメ……ギン姉……アイス……食べたいよぉ……
ふらふらと何かにぶつかった気がしたけどそれどころじゃない。
食べたいよぉ……宮本さんの手作りアイス…………。
もうダメだ。もう何も出来ない。体がアイス分を欲しがって全ての機能を放棄。絶賛ストライキ中だ。

「うわ〜、大丈夫かい?」

不意に掛けられた声に顔だけ動かすとクーラーボックスを肩にかけたスクライア博士がいた。
何かご用ですか?
ここはあたしの部屋なのだから用がある以外ないけど。

「これ、良介さんからの差し入れ。預かってきたんだ。はい」

そう言ってクーラーボックスから半透明の、バケツ程の大きさの容器を取り出した。
…………ぁあ!! コレハ!!?
一見して分かる。これは宮本さんの手作りアイス!!
あたしはボロボロと涙を零しながらそれを受け取り蓋を開けた。
あぁ……やっぱりだ。

「じゃ、僕はこれで」

スクライア博士が何か言っているけどそんなの聞こえない。それどころじゃないから。
キラキラと光る表面がダイアモンドのように見えた。
…………ぱく。
 

  号   泣   し   ま   し   た。
 

うぅ〜っ! どうして送ってくれたのか分からないけどとりあえず感謝感激!! 好感度急上昇です〜っ!
パクパクとアイスを食べているとティアが帰ってきた。
おかえり〜。

「スバル……あんた何食べて――――――ねぇ?」

ん〜? なぁ〜に〜??
パクパク。きたー「キ〜ン」ってキター! あうぅぅぅ。でも止められない止まらない〜!

「それって先輩の手作りアイス……?」

そうだよ〜♪ 幸せ〜〜♪

「……そっか」

あれ、何でクロスミラージュを起動させてるの?
何で、単色の目であたしを見てるのかな?

「スバル……先輩がどこにいるのか知ってるのね?」

え、知らないよ?

「嘘だっ!!」

えぇ〜っ!?

「待ちなさーい!! スバルぅうううう!!」

だから知らないってばー!!

「だったら何であんたが先輩のアイス食ってんのよーっ!」

隊舎を駆け回るあたし達。

「ふぅ〜ん。そうなんだぁ〜」
「リョウスケの手作りアイスねぇ……」
「それは聞き捨てならんなぁ……」

気が付くと追いかけてる人数が増えてた。
…………何でリミッター外してるんですかぁ〜っ!!

「アクセルシュート!」
「プラズマランサー、ファイア!!」
「ブラッディダガーッ!」
「ヴァリアブルシュート!!」
「うわぁああああああああっ!!?」

機動六課は今、正に戦場と化した。
 

グリフィスの呟き

「仕事、してくださいよぉ…………」

その呟きは当然の如く無視された。
 

無限書庫生活 某日目

おかしい……最近本当に地震がよく起きる。
これは何かの前触れに似ている気が……はっ!? まさかあいつ等俺様の姿を見なくなって探し始めたのか!?
まずいここにいることがばれたらこの憩いの場が……
いや待て。ここじゃ存在がないかのように空気になれる。
ならここでしばらく落ちつくまでいればいいんだ!
けどさすがにアリサには言ったほうがいいだろう、ということで連絡してみたら

「はぁ〜、見ないと思ったらそんなとこにいたのね」
「おう、ここは平和でな。正直楽だ」
「本当に誰も気づかないの?」
「ギンガが気づいただけであとのやつ等はいたずらしても気づかんかったぞ」
「とりあえずそこのもの壊さないようにね。さすがに貴重なものまではどうしようもないんだから」
「わかってる」

という風に何事もなく話もまとまった。
ふふふ……今回こそは何も起きんだろう。
 


無限書庫生活が始まってかなりたったな……たまには外に行くか。

「おい、ユーノたまには飲みにいかないか?」
「いいですね。行きましょうか」

そういい酒屋に行こうとした瞬間

「ユーノ司書長、資料の請求だ」

おいコラ、なにこのタイミングで現われてんだ。しかもこの前もしただろ!?

「僕、もう上がったんだけど……」
「緊急なんだ。頼んだぞ」

そういいサッサと通信を切りやがった。流石の俺もカチンと来たね。何様だお前!?

「おい、無視していこうぜ」
「そうですよ。私達でやっておきますからたまには羽をのばしてきてください」

いつのまにか女司書がいてそう言いやがった。

「ううん……僕がしないとクロノの奴怒りそうだし僕も手伝うよ。さっさと終わらそう」

そう言って仕事にかかりやがった
ほっとくわけにもいかず俺も手伝ってやった。
意外にも今回は請求も少なくすぐに整理したところから見つかったので1日で終わった。
仮眠をとってから今度こそ飲み屋に行った。

「たっく……お前はまじめ過ぎなんだよ……無視しときゃいいのに」
「あはは、そうかもしれませんね」
「でも最近は宮本さんのおかげで書庫が賑やかですよ? このまま司書になりませんか?」
「冗談言うな。俺なんかがそんなんできるか。」
「じゃあたまにでいいんで手伝いでもきてくれますか? もちろん司書長権限でお給料も出しますよ?」
「まぁ考えとくよ」

最初のうちはいつもの調子でのんでいたしかし飲む量が増え始めると……

「ちきしょー! あのシスコン提督! いつもいつも狙ったかのように仕事もってきやがって!」
「ちょ、落ち着けって!」

鬱憤が相当溜まっていたのだろう。ものすごい勢いでキレ始めた。

「それにいつもいつもみんな僕のことなんて忘れてるし……僕って何なんですか?ただのパシリなんですかね……」

たしかにそういうことを言っていた奴もいたな……普段は気にしてないように見せてたが気にしていたのか……
そのまま取り合えず愚痴を聞いてやり書庫に帰って行った。
その途中で

「ちくしょー! 提督が何だ〜! 次に無茶な請求来たらストライキ起こしてやる!」

などと普段のユーノからは想像も出来ない過激な発言が飛び出していた。

「おお! その粋だ!」

つい励ましのつもりでそんなことを言ってしまった。
そして書庫に帰り着くと……

「第81番世界の過去の事件の資料どこだー!」
「未確認ロストロギアの詳細はどうなった!?」
「救護班! そこの奴ら運んでくれ!!」
「大変だ! また整理した棚が雪崩を起こしやがった!! 救護班! 今すぐ来てくれ!!」

なんて言うかそこはもう地獄絵図だった。なんなんだたしかに今までも忙しかったが比にならんぞ、これは。

「あっ! 司書長! 大変です! 奴が……奴が過去最多の資料請求をしてきましたッ!!」
「はあ!? ついさっき送っただろう!?」
「それが欲しいとか言って無理やり押し付けてきたんですよ!?」
「はあ……しょうがないするか……」

そういい酔いが冷めてきてたのか仕事にかかろうとしたユーノだった。
しかし気に入らん。文句を言ってやろうと通信をつなげたら……

「うん? コーヒーの豆変えたのか?」
「はい…………あのお口に合わなかったでしょうか?」
「いや、君の入れてくれるコーヒーはいつも美味しいよ」

……おい。なに仕事場で若い女子局員とラブコメしてんだコイツ……エイミィにばらしてやる。
? なんか後ろが静かだな……そう思い見てみると

…………………………………………ビキッ!!

「あのシスコンなにやってんだ!?」
「ざけんなゴルァ!! あぁ!? 俺らが死にかけてる時に若いやつとイチャついてるだ!?」
「あの野郎! 奥さんいるんだろ!? 浮気してんじゃねーよ!! このダボがぁ!!」

もうすごい怒りの嵐だった……あの大人しそうな司書たちが武装隊でも出せそうにない殺気を出してやがる!
特に……

「あの男…………私の恋の邪魔ばっかりして自分は浮気?……殺す……殺してやる……絶対に殺してやる……」

恐っぇぇぇぇぇぇ!!! なんだこの殺気は!? 六課の奴らと互角だぞ!?
まずい、このままじゃ拙い! 特に俺の精神が! 早くユーノに止めてもらわねば!!

「おい、ユーノ」
「えぇ、わかっています」

おお! さすがユーノ!! この状況を納めるべきだとわかっている!

「現時刻をもって無限書庫は完全閉鎖!! 今の依頼もこれからの依頼もすべてつき返す!! ストライキを起こすぞ!!」

なにぃぃぃ!? ちょ、ちょっとまて!! 俺は止めて欲しかったんだぞ!!

「宮本さん……手伝ってもらえますか?」
「おお!! そうだ! この人がいれば確実に勝てる!!」
「お願いします! 助けて下さい!!」

司書たちが俺に懇願してきやがった!! ふざけんな! そんなん俺は知らん!! と言おうとしたが

「手伝ってくれますよね?あの男を殺すの……私の恋の邪魔者を……」
「もちろんだ! 任せとけ!」

俺のバカバカ!! けど仕方ねえ……あのまま本音言ったら俺まで殺されていた。

「よし!! 今から徹底抗戦だ!! みんな覚悟はいい!?」
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」

ちきしょう!! 俺の平穏カムバーーーーーック!!!
 

無限書庫ストライキ生活  初日

マジでこいつらストライキ始めやがった……
しかし閉じこもって仕事しないのはいいんだが、メシとかどうするんだ?
と、思ったら目の前には大量の食料が。
徹夜がデフォのここは備蓄食料が大量にあるらしい。
しかも書庫の一角には徹夜続きの司書達の食事がインスタントに偏るという事態を憂いた一人の司書の成果で
野菜畑までありやがるし……まぁ折角なのでこっそりメロン畑を作っておいた。
成長促進の魔法フィールドが張られているらしいのですぐに実がなるそうだ、楽しみだぜ。
 

無限書庫ストライキ生活  二日日

早速メロン畑に芽が出た、何かを育てるというのもいいものだ。
恭也が盆栽やってる気持ちが少しわかった。
初日は書庫の扉が説得部隊にたたかれてうるさかったが、今は静かなものだ。
どうやら司書たちが防音魔法を使ったらしい。
他にもユーノを筆頭として防御系の魔法を施された入り口は正に鉄壁。
嘘か本当かスターライトブレイカーすらも防ぐんだとか。
今度俺の服にもかけてもらいたいものだ。
 

無限書庫ストライキ生活  三日目

最近の書庫通いで特別に通されたギンガが説得要員としてやってきた。
だがここによく通っていたということは現状を知っているということだ。
口ではストライキを止めるようにはいってはいたが、本気が感じられない。
あと、弁当は相変わらず美味かった。
 

無限書庫ストライキ生活  四日目

何故かギンガまでストライキに加わっていた。
本人いわくこっちのほうが説得がしやすいとのことだが、説得力がない。
司書たちは料理スキルのあるギンガの参入は大歓迎のようだ。
そういえばギンガから受け取ったスバルからのアイスの礼の手紙だが……
なんで字がかすれてるんだ?
しかも紙はボロボロでところどころに血がついてるし……
ギンガに聞いたらニコニコと底知れない笑みを浮かべて答えてくれなかった。
はてな?
 

無限書庫ストライキ生活  某日目

ついにメロンの実がなった。
まだ小さいが時期に食える大きさになるだろう。
ストライキは相変わらず徹底抗戦の構えだが、知ったことではない。
しかし世話になっているだけなのもなんなので、とりあえず一つだけ手伝いをしておいた。
具体的に言うとクロノの悪行レポート第二段(勿論捏造)の暴露だ。
向こうの陣頭指揮をとってやがるのは奴なのでこれで向こうは足並みが崩れることだろう。
 

無限書庫ストライキ  某日目

ついに本局武装隊のやつらが強硬手段に出やがった。
だが入口のシールドを武装隊員が全員で打ち込んだがまったく効いていなかった
スターライトブレーカーでも壊れないというのは本当かもしれん。

「いい加減諦めてここを開けろ!! 完全に包囲されているんだぞ!!」

無理と知ってか今度は脅迫じみたことを言ってきやがった。しかし……

「諦める? 何言ってるんですか? 僕たちは自分たちの命のためにしてるんですよ? それとも死ねとおっしゃるんですか?」
「ふざけるな!! 司書風情が!! 貴様らは黙って資料をサッサと我々に出せばいいんだ!! たかが資料漁りで何を言うか!!」

この野郎……司書の仕事なめてるな。こっちの方が過労死で命が危ねえんだぞ?
この言葉にキレたユーノが

「あんたじゃ話にもならないよ……上層部連れて来い!!」

おお! キャラにないこと言いやがった。こいつも相当壊れてきてるんだな!
そう言って書庫の方に戻ってきた。

「ユーノさんすごかったです! カッコ良かったですよ!」
「あはは、自分でも似合わないことしちゃったよ」

う〜む……またいい感じになってきたなあの二人は。

「ホントお似合いの2人ですね」
「ん? ギンガもそう思うか?」
「ええ。私もあんな素敵なパートナを見つけたいと思います」
「まあ、俺を追いかけてる暇があるなら探せ。お前なら引く手あまただろ」
「そういってまた悪行に走るんですか?」

そんなことを言ってはいるが顔はご機嫌だった。う〜ん……まさかギンガとこんな冗談を言い合える時が来るとは。
 


「なあ……司書長達はともかく、あっちの2人もなんか良い感じじゃないか?」
「いいよな〜俺もあんな感じになりたいよ……けど相手探す暇がねえよ! ドチクショウ!!」
「あきらめるな! これで勝てば俺たちにも希望はある!」
「そうだな!! 絶対勝って職場改善して彼女探すぞ!!」
「「「「「うおおおお!!!」」」

なんやらまた司書の士気が上がってるなぁ、まあ盛り下がるよりいいか……

しかし武装隊が動き出したとなると戦力的にきつい。どうするべきか……

「? 難しい顔をしてどうされたんですか?」
「なあギンガ。戦力強化としてあいつ等呼べるか?」

「あいつ等? 誰ですか?」
「いや、言い方が悪かった。戦力強化として呼んで良いか?」
「だから誰を呼ぶんですか?」
「ふっふっふ……ナンバーズだよ」
「なっナンバーズって……」
 

途端に苦い顔になるギンガ。
レリック事件の折り、あいつ等に捕まって洗脳されたんだから渋い顔をする気持ちも分かる。
だからこそ、あえてギンガに聞いた。

「ナンバーズなんて呼んだら、場が混乱して収集付かなくなるのでは?」
「ナンバーズたって全員呼ぶ訳じゃない。」
「……別に構いませんが……でも私達は包囲されているんですよ。どうやって援軍なんて?」

よし許可が出た。それに、この質問は予想していたこと、俺は不敵に笑い、こう答えた。

「問題ない。こうした状況下において力を発揮する心強い奴……」
「あ! まさか!?」

フフフ、流石はギンガ、よく解ってるじゃねえか……

「そう……モグラ(セイン)とメガ姉さん(クワットロ)よ!」
「クアットロとセインを呼ぶのはなんとなくわかりますけど、この場面ではウーノさんも呼んだ方がいいのでは?」
「ウーノは超後方で情報操作をしてもらう。クアットロと違って、戦闘になると逃げられないからな。」
「なるほど、でも気になるんですけどアリサさんに頼めば一瞬で終わるんじゃないですか?」
「ここんところユーノの奴の手伝いで家に帰ってないから、どれだけ不機嫌になってるか、わからん。
 ……最悪、ジェイル辺りを生贄にでも捧げてから様子を見るとする。」
「……憐れですね。スカリエッティ」

元敵に同情するな。気持ちは痛い程わかるが(自分でやっておいて)

「ですが、彼女達を此処に呼ぶのは最低でも一日はかかりますよ。」
「大丈夫だ。既に一人は確保してるからな……ほいっと」

そういって良介はかなり高位置の本棚を整理していた司書の一人に本を投げつけた。

「はぐっ!!」

ボグッ!! グシャッ!
かなりヤバイ打撃音と落下音を醸し出し地味な司書が落ちてきたが、その正体は……

「あいたたたたたっ」
「ドゥーエ!?」
「オラ、立てストーカー。お前は今から猟犬だ。」
「え!? 犬……このわたくしが!?」

屈辱に震えてるのかと思いきや……

「あぁ、ご主人様!! どうぞ、わたくしめの鎖をぉ」

Mっぷりを発揮し、わざわざ自分で自分に首輪を掛け、ハァハァ言いながら鎖を良介に手渡そうとしたが

「いいか、外の連中の内部に紛れ込んで、殺さない程度に組織を撹乱して来い。できるな?」
「いや、リョウスケさん。可哀想だから突っ込んであげなよ。」

あまりにもぞんざいなドゥーエへの扱いに同情し、良介に意見を言うが……

「五月蝿いですわよ地味男。せっかくご主人様がわたくしに放置プレイをしてくださっているのですから引っ込んでいてください、この地味男!」

ドゥーエ本人からキャラに外れた事を言われた。どうやら無視されることすら快感だったらしい。
ユーノの顔が引き攣る。その顔は「なんで僕に対してはSなの!?」とか「地味男って言われた……しかも二回も」とかなり落ち込んでいた。

「行け!」
「ワン!」

まさに忠犬の様に飛び去り、ドゥーエは消えていった。
ギンガはドゥーエの能力に対しての心配はしてない。彼女は優秀な諜報員だ。
だが、そんな彼女と良介が絡んだ時点で……なんか、こう多次元宇宙的に収拾付かない事態に
発展してしまうんじゃないかと、ギンガは不安の中でこう言った。

「……大丈夫なんでしょうか?」

ユーノさんに想いを寄せる女性司書が不安そうに呟くが、大丈夫じゃないと私は思う……
 

無限書庫ストライキ  某日目

ギンガに頼んでナンバーズに連絡を取ってもらっている。
通信を傍受されるかも知れんがあの2人なら簡単にここまで来れるだろうから関係ない。

「―――というワケで、出来れば我々と一緒にストライキを手伝ってくれませんか?」
「え〜……なんで私がそんなことしないとだめなの?」
「そうですね〜、あたくし達には一切無い関係ですもの〜」

う〜ん……やはり一筋縄ではいかんか。

「おいモグラにメガ姉」
「えっ!? 良介いたの?」
「全然気づきませんでしたわ……」

こいつらまで……どこまで空気属性になっちまってんだよ俺は。

「俺も参加してんだ手伝ってくれねえか?」
(良介が無限書庫でストライキ中→暗い所→密室→六課の奴らもいない→チャ〜ンス!)
「いく!! 今すぐ行く! 待ってて!!」
「お、おう……」
「リョウスケちゃ〜ん、あたくしも今すぐまいりますわ〜ん」
「た、頼むな……」

そう言って通信は切れた。

「えっと……あの2人で大丈夫なんですか?」
「あいつ等の能力に不安はないが他で不安になってきた……まともなのはいないのか?」
 

Side・ギンガ

 「さて、諸君! コレで篭城は完璧になった! 篭城は基本的に時間制限がある!
  確かに自給自足(畑完備)できる現状であるが、それでも外部より手に入れる必要が無いわけではない!
  その辺はモグラが搬送してくれる! このお陰で篭城でありながら時間制限の不安が無くなった!
  そして防御力の面は問題無い! 知識もある! だがソレを運用し、活用し、戦術とする面に関しては問題がある!
  そのための要員として戦術担当としてメガ姉さんを! 交渉担当及び情報操作要員としてウーノに協力してもらった!!
  さらにどちらか一方と連絡を取れなくなった際にはどちらか一方が両方を担える!
  さらに駄目押しとして猟犬も放った! 我々の勝利が一歩近づいたのだ!! この戦い、絶対に勝つぞ!!」
 『うおぉぉぉぉぉぉ!!』

 良介さんが演説をし、他の司書の方々の闘士を奮い立たせている。
 基本となる理由である、『待遇改善』との目的は賛同できるのに……なぜこんなに不安になるんだろう?
 

Side・六課
「なんでや……なんで良助がいないのにこんなに平和なんや!」
「おかしいよ……いつもいつもいなくなったら何か起こるのに」
「どの次元世界を調べても何も起きてない……」

3人は今回も良介が異世界へ逃げていると思い捜索していたが逃げる際の犯罪事件が
どこにも起きていなくて見つけられないでいた。

「やっぱりスバルが知っているんじゃないですか?」

その場に同席しているティアナが言うが

「ううん……アクセル100発にバスターの嵐で拷もnゲフンゲフン! お話を聞いたけど知らないって……」

ちなみにスバルはそのせいで本局に言って治療中である。
いつもはなんともなかっただろうがその前のギンガからのお仕置きも効いたのだろう。

「どこなんや、どこかで異変が起きてるはずや……」
「異変て言うとギンガがユーノにお弁当渡してた位だけど……」
「そんなんええねん! ライバル減って楽になるんやで?」
「あの〜、部隊長……ちょっといいですか?」

遠慮がちにグリフィスが入ってくる。

「なんや? 今忙しいんやけど」
「いや、本局から無限書庫のストライキを止めろと命令が……」
「そんなの武装隊でできるの! そうしろって言ってなの!」
「それが入り口にとても固いシールドを張っていて突入できないとか……しかも武装隊も内輪揉めやら
 何かをしようとすると読まれたかの如く先手をうたれるらしいんです」
「………………」
「どうしたの?ティアナ」

手を顎に添え考え事をしているティアナにフェイトは尋ねた。

「そういえば最近無限書庫の話題って多いですよね?」
「えっ? そうなの?」
「知らなかったんですか? ユーノさんの部署なのに」
「えーっと、あははは……」

思いっきり考えもしていない人だったと言えず苦笑する3人。

「け、けどそれがどうかしたんか?」

誤魔化すように話を変えるはやて

「……まさか先輩が関わっているとか……」
「でも姿を前に行ったティアナもエリオもキャロも見なかったんでしょ?」
「そうなんですが……」

そう言ってるとグリフィスが

「ギンガ捜査官が説得に向かったらしいんですが、失敗してむしろ相手側に参加してますね。
 あと何故か元ナンバーズの何名かがストライキに参加しているそうです。」

それを聞いた六課の面々は椅子を押し倒して立ち上がる。

「そうか……そういうことか。ユーノ君、ギンガ……許さへん、許さへんで!」
「ちょ、はやて! どういうこと?」
「ギンガは良介に弁当渡してたんや! ほんでユーノ君はそれを知ってて嘘ついたんや!」
「そっか、そうだったんだ……ギンガ……ユーノ君。お話の必要があるね」
「ふ〜ん、じゃああの幽霊も先輩のいたずらだったって事ですね……」
「「「「ふふふ…………ふふふふふふ!!!!」」」」
「ひぃぃぃぃぃ!!?」

ここに4人の化け物が生まれそのまま無限書庫へとその妖気を漂わせつつ向かっていった。
「何処からか聞こえてくるBGMはダースベイダーのテーマだった」とその場に居合わせたG・L准陸尉は
顔を真っ青にしながら語ったという。
 

Side・ストライキ現場
ゾワゾワッ!
「おぉう!?」
「り、良介さん!? どうしたんですか!?」
「いや、なんか未だかつて無い悪寒が背筋を過ぎった……」
「風邪でしょうか?」
「いや、身体は至極健康なんだが……何故だろう?
 巻き添えになるから今すぐこの場を離れろと俺の本能が叫んでいる気がする」
 

side・???

「そう、報告ご苦労様」
「いえ、思ったより事態は深刻化しそうですから早急な対処が必要と考えただけですわ」
「確かに無限書庫の労働環境に関しては問題になっていましたからねぇ………
 ユーノ司書長が入ってくれて効率が上がってからは尚更」
「それでは……?」
「えぇ。元々事案として上がっていたことですし、何とかまとめておきましょう。あそこが機能しないのは痛手ですしねぇ」
「では、よろしくお願いいたします」

仮想ディスプレイに映った翠色の髪の女性が頭を下げた。

「しかし、あの子が関わると本当に問題がどこまでも肥大化して……困ったものだわねぇ〜」

そう言いながら、長い髪をリボンでまとめた老女はとても楽しそうに微笑んだ。
まるで、遊びに来た孫を見るかのように無限書庫内の映像に映った一人の青年を見ていた。
不意に別の仮想ディスプレイが展開される。そこには悪鬼のごとき形相の若い女性が7人。
六課の部隊長、小隊長、副隊長に隊員一名、そして医務官。対処はさらに素早いモノが要求される事になる。

「さてさて、ラルゴとレオーネにも連絡しておかないとね……」

と、本当に楽しそうにミゼット・クローベルは通信を送った。
 

Side・良介

この本能の逃げろという叫びはおそらく六課の奴らがついに気づいたのだろう。
にしても今頃気づくって……とにかくメロンを持てるだけ持って逃げよう。
そう思い荷物をまとめていると……

「何してるんですか? 私の復讐を手伝ってくれるんじゃないんですか?」

その声の方を見るとあの女司書が幽鬼のように立っていた。
馬鹿な!? こいつユーノとさっきイチャついていたはず!

「逃げるんですか?」
「ば、ばか言うな。ただメロンを食べようとしていただけだよ」
「ならいいんです。私は司書長のお手伝いにいってきますね」

そういい機嫌よくユーノの方にいった。
あれはヤンデレの素質があるな……ある意味六課のやつらより危険だな……
しかしこれで退路は断たれた……勝つしか生き残る道はないかおもしろい! たまには返り討ちにしてやる!

「「「「「「「良介(兄さん)(先輩)今すぐ出て来い(きなさい)!!!」

 ついに来たか! しかし今回はよくもったなぁ……
 俺が単独行動してアイツらとのバトルに発展するまでに最長記録を更新したんじゃないだろうか?
 そして俺は平穏に過ごせない宿命なのか?
 しかし今回は謎の犯罪組織に巻き込まれてないし、悪い事はして無いはずだ!
 ただ連絡をしてないだけだぞ!!
 携帯だってココの利用規定に基いてOFFにしてただけだ!
 図書館で携帯を切るのは基本だろ!
 とくにプチたぬき!お前も元図書館の住人ならわかるだろ!!
 だがまぁこのままでは命にかかわる。
 逃走が既に不可能って事で取れる方法は
 1.お題目である『待遇改善』を語り、味方に引き込む
 2.猟犬を使い内輪もめを起こさせる
 3.ウーノに作戦を立案してもらう
 くらいしかない……
 
 ちなみにメガ姉さんに聞かないのは絶対ろくでもない事を言い出すと確信してるからだ!!
 しかしどうするべきか……

「ウーノ! なんとかならいのか!?」
「六課の目的はあなたですから……ドゥーエ、良介さんに化けて引き付けて」
「了解よ ああ! 卑しい私如きがご主人様に化けられるなんてなんて幸せなのかしら!!」

変なことで喜ぶな! しかしこれは効果的かもしれん今度からこの手でいくか?

(偽)「おい! はやて! 何でこんなことすんだよ!!」
「えっ!? すんなり出てきた!?」

おいおい何でそんなにびびってんだよ。すんなり出てきたのがそんなに意外か? 偽者だけど。

「はやてちゃん、騙されないで! あれは良介さんじゃないわ!! 私の良介さんLOVEセンサーに反応しない!!」

変なモンもつなシャマル!! つうかまずい六課全員が持ってそうだ……

「確かに兄さんじゃないね……」
「ええ、先輩がこんな堂々と現れるわけないです」
「宮本、影武者とは……見損なったぞ!」

くそ! 好き勝手言いやがって!

「ドゥーエ!! とりあえず引け!!」

そう言って外に通信パネルを繋げるが

「ご主人―――――」

最後まで言わせてもらえないまま、三大巨頭のトリプルブレーカーと各自の必殺技で消えていった。
しかもピンクの光でクアットロがトラウマで震えだしがった。もう戦えないっぽい。ちくしょう! 戦力が半減しちまった!!

「リョウスケ……次はリョウスケの番だよ?」
「覚悟しとけよ? 親分を怒らせたんだかんな」

いやいやいやいや!! フェイトにヴィータ待てよ! 待ってくださいホント!! 今回俺は何もしてないだろ!?
とにかく体制を整えなければ……

「ウーノ!! 何か手はないのか!?」
「残念ながら……あっ! セイン、クアットロと戻りなさい。」
「りょうか〜い!!!」
「マテやコラァ!!」

しかし見事にモグラに逃げられた……チキショー!! 俺も連れて行ってくれー!

「とりあえず援軍をセインに送らせますので持ちこたえてください」
「本当か!? 頼むぞ!!」
「ええ、ところで司書長。ここまでするんですからこちらの要求守ってくださいね」
「ええ、自由に書庫の資料を探してくださって構いません」
「では」

そう言って通信を切りやがった。しかしただでは動かないと思ってたがそんな取引をしていたか……

「良介さん、ここまできたらもうあきらめるしかないんじゃ……」
「馬鹿いうなギンガ!! 何もしてないのに全力全壊されていいのか!?」
「何もしてないから話せば分ってくれますよ!!……………………………………たぶん」

自信なさげに言うな……俺まで悲しくなる。
そう話していると

「あ〜ギンガもそこにいるんだったよね? 今回はギンガも覚悟してね?」
「兄さんにお弁当渡してたんだよね? 嘘ついたユーノ君も同罪だから」
「先輩の居場所知ってたのに騙しましたよね? 覚悟はいいかな? かな?」

そう言って一方的に通信は切られた……

「いやああああああ!!! なんで私まで!!!!!」
「おおおおおおお、落ち着け!! とにかく生き残るには勝つしかないんだ!! 逃げようなんて考えるな!」
「あなたはいつもこんなのから逃げてたんですか!? 私はもう持ちませんよ!!」

う〜ん、もう慣れてきているからそこまで感じんが……こいつみたいな真面目な奴をもここまで壊すとは……恐るべし機動六課。
よし、このピンチから逃れる為に取り合えず現状を整理してみよう。
決して現実逃避とかでは無い!
場所は時空管理局本局の無限書庫。うむ、これ別にいいな。
目的は司書職待遇の改善(そして俺は平和な日々と栽培したメロンのゲット)
戦力はこちらは俺にギンガ、ユーノとし司書長に惚れている女とヤル気満々の司書達。
そして援軍としてナンバーズからウーノとエス姉さんにメガ姉にモグラが来ていたが、
ドゥーエとクアットロが離脱してセインが一時離脱。
セインが援軍を連れて来てくれるらしい。他にも援軍を呼ぶべきか。
向こうの主力はヤル気MAXの機動六課の連中。
今回こそ死ぬかもしれん。
生き残るには勝つしかない!! 逃げようとすればあの女司書にヤられる!
前門に虎、後門に狼のこの状況。
現状を明確に認識したらさらに絶望した!!

「ふう……やっぱりここは僕の出番みたいだね?」
「ユーノ?」

眼鏡をキラリと光らせて、自信満々に言い放つユーノ。

「何か策があるとでも言うのか?」

俺の言葉にユーノは不敵な笑みを浮かべる。

「勿論だよ。なのは達がどれだけ恐ろしい相手でも正面からぶつかるだけが戦いじゃないのさ……」
「どうするつもりだ?」

ユーノは報告書用の紙を一枚取り、ペンを滑らせる。
数分もたたない内に何かをざっと書き上げた。

「良介さん、これと同じ文章を至急7枚書き上げて。それだけであいつの……クロノの喉元に刃が突き立てられるから」

何だって!? そいつはスゲェ! 不利な状況を覆す一手、そういうのを思いつくのは大抵は俺なのに。
ヤバイ。ユーノがかっこよく見える。 
実際、ほかの司書たちもユーノの宣言に感動と尊敬のまなざしを向けている。
例の女司書なんて瞳が正にハートマークだ。
そして俺はユーノのお手本どおりの文章を紙に書いた。ざっと見直してみるが……うむ、間違いはないな。
だが、こんなんで本当に何とかなるのか?

「大丈夫×2。乙女ころすにゃ刃物はいらぬ。手紙一枚あれば良いってね」

なんだそりゃ。

「まぁ、すぐに分かるよ。後はこれを……ん?」
「ん……? ってうぉおお!?」

気が付けば俺の後ろには紫色の髪のちびっ子が立っていた。

「何でお前がここにいるんだ!?」
「…………援軍」

そう言ってルーテシアは小さくVサイン。
あのなぁ、幾らなんでもこれは役にたたんだろう?
俺がそう言うと悲しそうに上目遣い。うぐ!? そんな目で俺を見るな!!

「なーにルールーいじめてんだよ、良介!!」

ルーテシアの後ろから飛び出してきたのはアギトだった。
こいつまで来たのか。ここは基本的に火気厳禁なんだが。

「うっせぇな! せっかく援軍してやってんだから喜べよ!」

そう言われてもこいつとユニゾンしてもあの魔王の軍団を超えることは不可能だしなぁ〜。

「へっへっへ〜。今日こそは決着をつけてやるぜバッテンチビ!!」

……しかもやる気満々だよ、こいつ。
そんな俺達を見ていたユーノが口を開いた。

「えっと、ルーテシア」
「…………何?」

ルーテシアに声を掛け、何事か相談している。
こくり、と小さく頷く。そしてルーテシアはいつもの小虫を召喚した。

「それじゃコレがその手紙だ、よろしく頼んだよ」
「…………分かった」

俺の書いた手紙を掴んで小虫は飛んでいった。

「ちなみに、あの元になった手紙にはなんて書いてあったんです?」

とギンガが聞いてきたので俺はユーノの書いた手本を見せた。
 

『今、こんな状況になってしまった事を謝りたい。
 黙ってここにいたこと、それを伝えなかった事にきっと怒っているんだろうと思う。
 俺は今、ここでいろんなことを勉強している。それは、これからのためだ。
 今のままじゃいけない。そう思い、ここに来た。
 教えなかったのはこれが俺の我侭であり、そんなことでお前に要らない心配を掛けたくなかったからだ。
 だが、結果として皆に迷惑をかけてしまったことはすまないと思っている。
 この事で怒りをぶつけたいというなら喜んで受けよう。
 だから、お前にだけは俺も本当の気持ちを今の内に伝えておく。
 俺はどんな時でもお前のことを考えている。

 宮本良介より』
 

「こ、これって…………!?」
「う〜ん、こんなんで大丈夫なのか不安ではあるな……」
「って言うか何ですか、ここの『俺はどんな時でもお前のことを考えている。』って文は!」
「いや、考えてるぞ? どうやってあいつらから逃げよう、とか……」
「………………そうですか。そうですね。あなたにとってはそういう解釈ですよね……ハァ〜」

『P・S
 このストライキの原因はクロノが全ての元凶だ』

「ユーノさん、きっちり矛先を向けてますね」
「敵にするとここまで恐ろしい相手だったとはな……」
 


Side・クロノ

まったくユーノの奴、ストライキなんて起こして、一体どういうつもりなんだ?
そりゃいつも狙って資料大量に請求してたが、そもそも最近僕より存在感が濃いじゃないか! そこが気に入らない。
仮にも僕は一期やA'sでは準レギュラー並みの活躍だったんだぞ?
そんなこと考えつつ無限書庫に向かうと六課のメンバーの7人がいた。
何やら紙を読んでいるがまあこれならすぐに事態も納まるだろう、お得意の魔砲の嵐で。

「やあ、はやて。どうした? 制圧しないのかい?」

とりあえず声をかけてみたが何故だ? 全員顔がすごく幸せそうだ。
しかし僕にだけその顔が恐ろしく感じるのは何故だ?

「むふふ、良介ったら……これからのためにやなんて、水臭いやないか……」
「ホントだよ。兄さんてば……照れ屋なんだから」
「うふふ……これからか〜」
「先輩……」
「けっ! そんな事くらい親分のアタシに言えばいいんだよ、まったく仕方のねぇ子分だぜ!」
「良介さん ああ式場はどこにしましょう」
「ふっ……見損なったといったが前言撤回だな いや見上げた奴だ……」

なにやらまた宮本がなにかで誤魔化してきたようだ。
しかし一体何を言えばここまで……ん!? シャマルの分が落ちてきたので拾って中身を読む。

『今、こんな状況になってしまった事を謝りたい。
 黙ってここにいたこと、それを伝えなかった事にきっと怒っているんだろうと思う。
 俺は今、ここでいろんなことを勉強している。それは、これからのためだ。
 今のままじゃいけない。そう思い、ここに来た。
 教えなかったのはこれが俺の我侭であり、そんなことでお前に要らない心配を掛けたくなかったからだ。
 だが、結果として皆に迷惑をかけてしまったことはすまないと思っている。
 この事で怒りをぶつけたいというなら喜んで受けよう。
 だから、お前にだけは俺も本当の気持ちを今の内に伝えておく。
 俺はどんな時でもお前のことを考えている。

 宮本良介より。

 P・S
 このストライキの原因はクロノが全ての元凶だ』
 

なにぃぃぃ!? これが僕に向けられた殺気の原因か!? 早く! 早く何とかしないと!!
そう思い弁解しようとするが書いて原因は確かに僕自身という事は事実なだけに思いつかない……

「あっ……クロノ提督……」
「なんだと!? おい! クロノ、テメー!! 子分の勉強の邪魔したみたいだな!!?」
「他者の成長を邪魔するとはな……」
「臓物ぶちまけますか?」

待て! ティアナにヴォルケンズ! 話を、話を聞いてくれ!

「「「問答無用!! 全力全壊!!」」」
「スターライト!」
「プラズマザンバー!」
「ラグナロク!」

「「「ブレイカァァァァァァ!!!!!!」」」
「ギャアァァァァァァァァ!!!!!!!!」

そんな……これを僕が食らう日が来るなんて……
最後の追伸、あれは間違いなくユーノの台詞だ……最後に一矢報いる程度は言ってやる、提督の名に掛けて!!

「き、君達のこれからの為とは……だ、誰の事なのだろうな……ぐふッ!」

ボロ雑巾の様な姿で床に這い蹲ったまま、僕の意識は切れた……

Side・ユーノ

モニターの向こうに地獄絵図が広がっていた。
たった一枚の手紙によってクロノは沈んだ。正に計算どおりだ。
そしてクロノ、君が最後に残した言葉。それすらもこちらの策謀の範疇に過ぎないのさ。
むしろ、その言葉こそ望んだものなんだから。
普段だったらその言葉は良介さんに向けられて酷い目に合うだろう。
でも今の状況はそうはならない。
クロノの言葉にけん制し合う7人。

「そんなん、当然私や。なんて言うたかて家族やもん!」

口火を切ったのははやて。

「そんなのおかしいよ! だって兄さんはなのはの兄さんなんだから!」
「それなら なのは に はやて だっておかしいよ! 家族だって言うなら、その……こ、恋人とかじゃない訳だし!!」

顔を真っ赤にしてフェイトがつぶやく。

「んなっ!?」
「フェイトちゃん!?」

恋人。その言葉に周りの人間も過敏に反応する。

「そんな! 恋人よりも妻である私の方が!!」
「親分のアタシだろ!!」
「ゴホン。師匠である私にこそ向けられたのでは……ないかと」
「なっ……何言ってるんですか皆して! 別に先輩のこととかはどうでもいですけど、皆さんには
 立場ってものがあるんですからその辺を少し考えてください!!」

見事に食いつく4人。
そして睨み合い。
誰も手出しできない。そんな空気の中、愚か者が一人。

「あの〜、いい加減制圧作戦開始しませんか?」

見事に空気を読まない発言をしてきた。

「邪魔や」
「邪魔」
「邪魔です」
「邪魔だ」
「邪魔するな」
「邪魔しないで下さい」
「邪魔なの」

閃光、そして連続爆発。色とりどりの魔力光が渦巻いて、たった一人の武装局員を吹っ飛ばした。
彼は生きているだろうか?
誰もがその光景に戦慄を感じた。
静まり返った廊下に

「一度ね、ちゃぁんとお話しとかなきゃって……思ってたんだ」
「そうやね……私も思っとったよ」
「うん、そうだね……ちょうど良い機会だよ」
「主はやて、我が不義理をお許しください。これも全ては宮本の為なのです」
「いくぞ、アイゼン!」
「くっ!こんなところで諦められないのよ!」

デバイスを構え、臨戦態勢だ。
そして

「…………ぅう〜……一体何が?」

ようやく起き上がったドゥーエが見回すとまるで図ったみたいに彼女達の真ん中だった。

「…………え?」

恐怖に血の気が引いていくドゥーエ。

「いやぁあああああああ!!?」

断末魔の悲鳴とともにストライキの最終決戦の幕は切って落とされた。

Side・???
 ほんとに困った子ねぇ……こんな騒動を起こして。
 でもあの子は本当に色んな娘に慕われてるのね。あの子を手に入れようとあんなに頑張ってる。でも……

 「そろそろ介入すべきかしらね」

 私の後ろから彼らの気配がしたので問いかけてみた。

 「……」
 「ククク……」

 振り向けばやっぱり二人だった。
 長い年月を一緒に歩いた仲間であり、家族、ラルゴとレオーネの二人。
 レオーネは困ったような顔をし、ラルゴはアノ子の状況を見て楽しそうに笑っている。
 二人とも私同様アノ子の事を孫の様に思っている。

 「そろそろ介入しないと無限書庫がなくなっちゃうわ。それにストライキの目的も叶った事も教えてあげなくちゃ」

 それに今回はアノ子は悪い事はして無いみたいだしね。
 待ってなさい、おばあちゃんが助けてあげるわね。
 

一方その頃、第97管理外世界 通称 地球 海鳴市 月村邸では。

「う〜ん! このノエルが作った手作りクッキー、美味し〜い!」
「ありがとうございます」

そう言いつつカップに紅茶を注ぐ。
次元を越えた世界で一つの組織が数人の集団によって破滅に向かって邁進している中
自称、良介の恋人兼内縁の妻を名乗る月村忍とその専属メイドのノエルは優雅な午後のお茶を楽しんでいた。

「むむっ!?」

突然奇声を上げる主に驚くノエル。

「? どうかなさいましたか、御嬢様」
「あ、うん。なんかね、嫌な気配がしたの……」
「嫌な気配……ですか?」

そう言われて屋敷の中に侵入者が居ないかどうか確認するがそれらしき気配は無い。
そもそも屋敷の周りには凶悪とも呼べるトラップの嵐だ。
それは地雷原さえ生易しいといえるレベル。仮に屋敷まで到達出来たとしても
屋敷の内部に侵入したら自動人形であるノエルが感知出来ない筈は無い。

「特に何もありませんが……」
「そういうんじゃなくて、なんかこう……私の居ない処で別の女(ひと)が侍君の恋人を宣言する様な気配」
「そうなんですか?」
「そうなの! っていうかノエルは良いの? 侍君の恋人になれなくて。私はノエルが立候補しても別に気にしないよ?」
「いえ、確かに良介様を愛しておりますが私はメイドです。メイドとは仕える者。
 私は良介様のお傍でお仕えする事が出来ればそれ以上は望みません」

見る者全てを優しい気持ちにさせる様な柔らかな微笑を浮かべるノエルは本当に綺麗だった。

(この子も侍君と会ってから随分変わったなぁ)

無論良い意味でそう考える忍は苦笑するしかない。
彼と知り合う前は無表情で感情をどこかに置き忘れてきてしまったかのようだったノエルが
ここまで感情というモノを表すようになったのがあの滅茶苦茶な男のおかげとは。
今の彼女を見て一体誰が機械仕掛けの自動人形だと思うだろうか?
自分の家族の成長に嬉しくなる忍であった。

「う〜ん、欲が無いって言うかなんていうか……でも恋人とかに関係無く侍君と一緒にいられるっていうのは羨ましいかなぁ」
「そんなものでしょうか?」
「そんなものなのですよ。あー私もメイド服着て侍君に迫ってみようっかなー?」

忍ファン失神モノな提案を本人自らするが、それが叶うかどうかは神(作家)のみぞ知ると言った所だろうか。

「それにしても……今度侍君と会ったらキッチリ話を聞かせてもらわないと!」
「気配がしただけで、ですか?」
「そう! 私にはソレで十分!」

この発言には流石のノエルも唖然とする。

「それは……流石にどうかと……」
「そう? でも大丈夫! 私ってば侍君に関しての勘は大概外した事無いから! 何故なら……」
「何故なら?」
「それは侍君の恋人としての勘、つまり『恋人の勘』だからよ!」
「そうですね、忍御嬢様がそう仰られるならきっとそうなのでしょう」
「そうなのです! あ、ノエル、お茶のお代わり頂戴♪」
「かしこまりました、忍御嬢様」

こうして月村邸のお茶会は穏やか(?)に過ぎて行くのであった。
AHAHAHA!!
閑話休題。
 

Side・ストライキ現場

「おかわり、じゃねぇーーっ!!」
「きゃっ!? どうしたんですか、一体?」

俺の突然の叫びにギンガが軽く悲鳴を上げた。
いや、変な電波が突っ込みを入れろと。
しかも電波のクセに『AHAHAHA!!』なんて笑ってやがった。

「はぁ……?」

ギンガはよく分からないって顔をしている。
そりゃそうだ。俺だって分からん。
話を戻そう。現在、無限書庫前はアフガンと化していた。
俺の書いた(ユーノの写し)手紙を読んで、どういう訳か内輪もめ。
これこそユーノの戦略だったのだ。
二虎強食の計……いや七虎強食の計と言うべきか。
とりあえずクロノに天誅を与えられたので俺があの女司書に殺られる事はなくなった。
そして、六課の連中は周りの武装隊を巻き込みながら激闘を繰り広げていた。
こいつら、普段より戦闘力上がってねぇか?
その中でも一番の驚きはティアナの健闘だ。
一番に脱落しそうだったのに、かなり善戦している。

「――――――あれ?」

モニターを見ていたユーノが眉をひそめる。

「どうした?」
「一人足りない……?」

あんだって!?
俺も慌ててモニター越しに人数を確認する。
1・2・3・4・5・6…………6!?

「本当だ……一人足りねぇ……」

記憶プレイバック。

「邪魔や」
「邪魔」
「邪魔です」
「邪魔だ」
「邪魔するな」
「邪魔しないで下さい」
「邪魔なの」

ここは七人いるな。

「一度、ちゃんとお話しとかなきゃって……思ってたんだ」
「そうやね……私も思っとったよ」
「ちょうど良い機会かな?」
「主はやて。我が不義理をお許しください。これも全ては宮本のためなのです」
「いくぞ、アイゼン!」
「くっ!こんなところで諦められないのよ!」

……ここだ!! 誰だ! 誰がいないっ!?
その時だ。俺の体に何かが這いずってきた。
細い白魚のような指。ちらりと見えるきめ細やかな肌。
そして、緑色の袖。

「良介さん、見〜つけた♪」

ふぅ、と耳に吐息がかけられて思わず身震い。

「ひぃいいっ!!?」

振り返らなくても分かる。こいつは……

「シャマルか!」

ある意味、一番危険なヤツが乗り込んできやがった!!

「は〜い、あなたのお耳の恋人、シャマルで〜す♪」

妻から下がったか。

「耳は恋人でも、他はあなたの妻ですから」

変な区分分けするな!……て、そうじゃねぇ!

「良介さん、危なーい!!」

ギンガの叫び。そして目の前に迫るリボルバーナックル。
待て待て待て!! 何だ何だーっ!?
俺は横っ飛びでそれを回避する。
空を切ったリボルバー。
改めて状況を確認する。
ギンガのヤツがBJを展開していた。
以上。

「何で……何でシャマルさんを庇うんですかッ!?」

泣き叫ぶように吼えるギンガ。
はい……? 何言って……おい。
俺は後ろに張り付いているヤツを睨んだ。
シャマルは俺にぴったりと張り付いたままで、それに向かってギンガは攻撃したのだろう。
で、俺が横っ飛びしたら一緒に飛んでかわしたのか。

「…………シャマル」
「はい♪ 何ですか? 良介さん♪」
「何でクラールヴィントが俺に絡まってるんだ? て言うか、何で俺をお前を縛り付けてるんだぁ!!」

だから、こいつもギンガの攻撃をかわせたのか。

「それは勿論、ず〜っとこのままで居・た・い・か・ら♪ キャッ♪ やだ、もう! そんな事言わせないでくださいよ〜」

だぁあああ! そんなグリグリするなぁ!!
当たる! 豊満な二つのマシュマロが当たるーー!! 離せぇぇ!

「いい加減にしなさぁい!!」

ギンガが突進してくる。まっすぐ、最短コース。

「うぉおお!?」
「きゃぁ!?」
「くっ! どうして……どうしてシャマルさんを庇うんですか!!?」

アホかぁ! シャマルの前に俺に当たるだろぉがぁ!!

「良介さん……やっぱりあなたはこんなにも私の事を!!」

後ろが見えないが、こいつはきっと想像以上の顔をしているな。
軽くトラウマ……女性不信になっちまいそうなほど不気味な顔を。
シャマルの台詞にギンガは何でか物凄いショックを喰らったみたいな顔をしている。

「そんな、良介さん……あなたは……本当にシャマルさんの事を?」

いやいやと首を振るギンガ。その瞳は溢れる涙にぬれていた。

「そうよ。ギンガちゃん。あなたの入る余地はどこにもないの。二人は一億と二千年前から愛し合っているんだから!!」
「―――っ!!」

ざざ〜ん!
なんだ!? 一瞬、荒波の日本海が見えたぞ!?
つ〜か、俺を挟んで何やってるんだ、こいつらは。

「そうですか……」
「そうなのよ……だから」
「だからって―――」
「え……?」
「だからって簡単にあきらめる訳にはいかないんです!!」

凄まじい魔力がギンガから放たれる。それを左拳に集中させていく。

「これが私……ギンガ・ナカジマの全力全開です! 受け止めて下さい―――良介さん!!」

Why!? なんでそんな物騒な話になるんだよ!?

「良いわ、受け止めてあげる。こちらも全力で! 私達の愛の力で!!」

おいコラ! 何勝手に答えてんだよ、シャマル!! 愛って何だ! 躊躇わない事か!?

「ナカジマ家一子相伝!」

待て、そこからおかしくないか?

「私のこの手が光って唸って真っ赤に燃えます!!」

詰め込みすぎだボケェ!!

「くらえぇええ! 愛と怒りと悲しみと怒りと嫉妬とやるせない思いと怒りのぉおおお!!」

怒り多いなぁ!! コンチクショウ!!
……なんで、こんな細かく突っ込んでるんだ、俺。

「石破天(ピー)ぉ……リボルバー・シュート!!」

ウイングロードが足元をすくい、ブリッツキャリバーが白煙を上げて走り出す。
かつてない危険。こっちに突進する途中でリボルバーナックルはガンガンカートリッジを排夾していってる。
これは……死んだな。
そう覚悟を決めたその時。
無限書庫の入り口が爆発。
気休め程度に積み上げてあったバリケードと重厚な扉を勢いよく吹き飛ばした。

「え?」
「あら?」

飛んできた事務机がシャマルに直撃。
飛んできた扉がギンガに直撃。
シャマルはその場にばったりと倒れ、クラールヴィントも待機状態に戻った。
ギンガは……まるでコントみたいに扉に自身の型を取っていた。
シャマル、それにギンガよ。安らかに眠れ。
俺は心の中で冥福を祈った。
これで、事態は収まる。そう考えた俺の耳に幽鬼の声が届いた。

「…………ふふふ……にい……さん」

白のバリアジャケットを煤と焦げで黒く染めた白い魔王こと高町なのはがドアのあった場所に立っていた。
もう限界なんだろう、ふらふらとしながらそれでも俺に向かって歩を進めてくる。
その後ろには屍が転がっていた。
しかし、どうやってここのバリアを抜いたんだ!?
まるで俺のそんな疑問に答えるみたいに何かがなのはの後ろから飛んできた。
ブラスタービットォ!!?
こいつ、ブラスターシステム使いやがったのかぁ!!
誰か、誰かいないのか!? この状況を救うメシアは!?
ユーノは!?
ほかの司書たちは!!?
ルーテシアは!!!?
何でこの状況で黙っているんだ!!
………………………………全員さっきの爆発に巻き込まれてやがるぅううう!!!
つまり、ここには俺と……なのはだけ?
なのははもの凄く美しい、底冷えする笑みを浮かべる。

「やっと……やっと二人っきりだね兄さん。前の時はなのはだけ仲間はずれだったから……神様っているんだね。
 ちゃぁんとなのはにご褒美くれたんだから」

おそらく以前あった恋人騒動のことを言ってるんだろう。
あの時、なのははさざなみ寮にずっといて最後の時にもいなかった。
そういえば随分すねてたなぁ……こいつ。
…………いやいやいや! しみじみしてる場合じゃないって!

「さぁ……兄さん。なのはに、兄さんの本当の気持ちを教えて?」

そういう台詞は突き付けたレイハ姐さんを下ろしてから言えぇ!!
誰か、誰かヘルプミーっ!!
すると、その願いが届いたのか、突如俺達の間に仮想ディスプレイが展開された。

「はい、そこまで」

なぁ!?
映し出されたその顔に俺となのはは驚愕した。
そこに映された顔はミゼット・ラルゴ・レオーネの自称俺の祖父祖母の3提督だった。
まさかこいつらまで動くとは…………

「高町一等空尉、貴女は無限書庫という重要かつ貴重な部署で何をしようとしているんですか?」
「えっ!? あ、あのこれは……」

おお!! ムッチャ威厳のある顔でそんなこと言えたのか……あの魔王がビビってやがる!!

「だから何をしとるかを聞いとるんじゃよ」
「無限書庫には代わりのきかない貴重な文献があるという事位、お主ならよく知っとるじゃろ? そんなところで砲撃かの?」

さらに追い打ちをかけるかのように問い詰めてやがる。
ていうかこんくらいプレッシャー出せるなら普段からもっと出して前の事件とか止めとけよ。
とにかくこれでこの話を誤魔化すチャンスができたな。

「そ、その兄さんがいなくなって心配で……」
「いや、お前俺を心配どころかヤキ入れに来たって宣言してたからな」
「それは兄さんが黙っていなくなってギンガとイチャつくからです!」
「だから勉強とユーノの手伝いしかしてねえよ!」
「じゃあなんでストライキなんて起こすんですか!?」

いかんどんどん話がずれてきやがる。このままじゃまた暴走しそうだなコイツ。
その証拠にレイハ姐さんをどんどん構えの形にもってきてやがる
そう思い話をもどしてもらおうとミゼットにアイコンタクトを送る

(おい! なんとかしてくれ)
(もう助け船は出してあげただろ? まったく。サッサと結婚相手を決めてくっつかないからこうなるんだよ?)
(知るか! 俺は独りがいいんだよ! 大体今回は俺は何も悪くねえよ!)
(まあ確かに今回はね。しょうがないね……あと一回だけだよ)

(すまん! 今回ばかりは礼を言う!)
(その代り早く孫の顔みさせておくれよ)

ハァ!? おい待て! おいってば!……クソ! 最後に余計なこと言ってコンタクトを一方的に切りやがった。
とりあえずこれで今回は助かりそうだ。

「高町一等空尉 今回のストライキは管理局全体の責任です」
「でも……」
「だから儂等の責任じゃと言うたじゃろ。良介は書庫の現状に嘆いて手伝ってたら巻き込まれただけじゃ」
「そもそも書庫をないがしろにする連中が多いからこうなったんじゃぞ?お主も心当たりあるじゃろ?」
「それは……えっと……その……」

心当たりありすぎるのか反論できてないな、なのはの奴……哀れユーノ。
幼なじみにここまで忘れられるとは。
確かに、そういえば此処にきたのってそれが理由だったな。居心地良くて居座ってただけになってたぜ。

「とにかく私らは無限書庫の要求を飲むことにしたんだから隊舎に戻りなさい」

そう言って通信を切って行った。
ふう、今回はこれで終わったな、今回は俺の勝ちだ! イヤッホゥ!!

「あ、あの兄さんごめんなさい。兄さんは何も悪い事していなかったのに……」
「気にするな。とりあえずユーノとギンガにも謝っとけよ?」
「……なんでギンガにもなの? ギンガは嘘ついて兄さんにお弁当渡してたんだよ? ねえ何で?」

もしかしてまずった!? ギンガも被害者なんだぞ!? おい!!
とにかくそこら辺をはっきりさせねば!

「だからそれはだな――――」
「宮本さーーーん!! わたし退院したんでお祝いにあたしのためにアイス作ってくださーい!!」

馬鹿スバルーーー!! 今の状況で「私にため」は禁句だ!!

「ってアレ!? なんで部隊長やギン姉が気絶してるんですか!?ってなのはさん?
 なんでこっちにレイジングハート向けてるんですか!?」
「スバル……ちょっと頭ひやそっか?」
「え!? なんで!? 嫌! 退院したばっかなのに!!」

そんままスバルはピンクの光の中に消えて行くスバル。絶対に作ってやらんからな!! 覚えとけよ!!

「さあ兄さん……余計な邪魔が入っちゃったけどお話を聞かせてなの」

のおおおおお!!! ふりだしに戻った!?

「良介……ウチにあるんやよな?」
「リョウスケ。私に……だよね?」
「先輩? 私ですよね? よね?」
「子分の話を聞くのは親分の仕事だよな?」
「妻であるわたしに遠慮なく話して下さいね?」
「宮本……剣以外の事でも話くらい聞くぞ?」

ぎゃああああ!!! 屍共も復活しやがった!! こっちに来るな!!
もう助けはないのか!? このままじゃいつもどおりじゃんねえか!?
ウーノ! 援軍はまだかよ!?
 

たまたま一方その頃、さざなみ女子寮 ダイニングルーム

「ぷっはぁ〜! いや〜、この一杯の為に生きてるって言っても過言じゃ無いね!」

そう言って一気に飲み干し、空になったビール缶を置き、ビーフジャーキーをつまみながらすぐさま次を手に取りプルトップに指をかける。
お昼の洗い物も終わり、膝の上で気持ち良さそうに眠る久遠の毛繕いをしながら無駄とは理解しつつ一応の注意をする。

「もう! リスティさん、少し飲みすぎですよ! お風呂上りなんですから少しは抑えてください」

そんな那美のお小言なんてどこ吹く風で「はいはい」と生返事をするのはリスティ 槙原。
さざなみ寮に住む銀の悪魔にして、宮本 良介の天敵の一人である。
ちなみに那美が言った様に彼女は朝方に仕事が終わったばかりで、さっきまで遅めの朝風呂を浴びていた。
ショーツ一枚にYシャツを羽織っただけ、寮に住む唯一の男性が見たら鼻血確定な実にキワドイ格好である。

「―――む?」

楽しそうに飲んでいると思ったらいきなり不機嫌そうな顔をするリスティを那美は不思議そうに見つめる。
リスティはお酒を飲んでいる時は大抵機嫌が良い。同じさざなみ寮の魔王こと、真雪と一緒に飲んでいる時もだ。
真雪と一緒に飲みながら良介を弄る算段をしている時などは、それはそれは実にイイ笑顔を浮かべている。
そう、『イイ笑顔』だ。間違っても『良い笑顔』ではない事に念を押しておく。
今日はリスティ一人だけでの昼酌だが、それでも機嫌が悪くなるというのは珍しかった。

「リスティさん? どうかしたんですか?」
「いやなに、ボクの知らない所で何か良介が面白い事になってそうな気がしてね」

少々不機嫌そうな声でそう答えるリスティ。

「そうなんですか?」
「あぁ、間違いない……クッ! 良介が慌てふためく姿を肴に出来ないなんて……お、一句浮かんだ。
 『残念だ・あぁ残念だ・残念だ』ふむ、中々いい出来だ」

とうとう俳句まで詠い出したリスティに頬を引きつらせながら質問をする。

「あ、あの……本当にそんな状況になってるんですか?」

リスティの本気な悔しがり方を見て那美は少々不安になってくる。

「ああ、おそらくね。と言っても良介に関しては那美の方が詳しく判るんじゃないのかい?
 なにしろ君達は比喩じゃなく本当に『?がっている』んだからね」
「あ、あうぅぅ……た、確かに最初の頃はその……そういう状態でしたけど、今は訓練して症状も殆ど無い状態ですから……」

ニヤニヤと笑っているリスティの冷やかしに俯きながら耳まで真っ赤にして答える那美。
おそらくはその時の状況を思い出しているのだろう。

(いやいや、良介の慌てふためく様子を見れないのは残念だが、那美も十分肴になるなぁ)

自分の気に入っている友人をからかう事が至上の喜びなのがリスティ 槙原という女性だ。
その性格、まさに外道!

「りょうすけ、こまってる?」

良介という単語に反応したのか、いつの間にか起きた久遠が人型になって不安そうにリスティに問いかけてくる。

「あぁ、けれど心配は無いさ久遠。アイツが並大抵の事じゃへこたれないのは良介を一番理解している久遠も知ってるだろう?」

そう言って優しく優しく久遠の頭を撫でると、久遠も嬉しそうに頬を緩め不安を一掃する。

「うん! りょうすけ、まけない」

向日葵のような笑顔を浮かべる久遠を微笑ましそうに見つめながらビールで喉を潤す。

「でも、なんでそんなに良介さんを困らせたいんですか?」

多少は落ち着いたのか那美も会話に参加してくると、彼女の中でもっとな疑問を口にする。
性格は穏やか、老若男女問わず優しく接し、品行方正。
まさに現代の聖母マリアとも言える那美にはリスティの行動があまり理解出来なかった。
ましてや自分から進んで他人を―――良介を困らせるという感情は翻訳コ○ニャクを使っても理解出来ない。

「ふむ……なぜボクが良介を困らせるのか……か」
「ええ、何か特別な理由があるんですか?」

那美はリスティの良介に対する淡い感情を多少感じ取ってはいたが、それを正直に言うリスティではないと理解していたし、
またリスティが素直にそれを告げる可能性が限りなく低い事も感じ取っていた。

「ボクが良介を困らせる理由―――それはっ!」
「それは?」
「わくわく♪ わくわく♪」

久遠などは眼をキラキラさせながら妙に楽しそうにリスティの話に聞き入っている。
今の子供の形態を取ると精神年齢も身体に引っ張られる為にちょっとした事でも大喜びで楽しんでしまう傾向があるのだ。
そしてリスティはおもむろに立ち上がり、缶ビールを握り締めながらテーブルの上に「ダンッ!」と片足を乗せる。
那美からは下着が丸見えなのだが今はリスティの迫力に圧倒され、何も言えずにいる。

「それは―――その方がボクが楽しいからだッ!!!!!」
「…………………はい?」
「わー! ぱちぱちぱちぱち」

その素晴らしくも奇天烈な理論に那美は唖然とし、久遠は意味が解ってないにも関わらず拍手をしている。

「あの、えっと……つまり……リスティさんが楽しいから良介さんを弄っている、と?」
「ああ、そうだよ。ボクの計画に面白いように嵌って慌てふためく良介。
 勿論ボク以外の策略で慌てる良介も面白いけどね。ふふ、これ以上の娯楽があるかい? あぁしかし残念だ。
 きっと今頃は良介がいつものメンバーに囲まれて滝の様な冷や汗を流しているのにその姿を笑い者に出来ないなんて……無念だ」

しみじみと、心から勿体無いという風に呟くリスティを見て那美はこう告げることしか出来なかった。

「え、えっと…………ほどほどにしてあげてくださいね?」
「ふっ、甘いな那美。白玉クリーム餡蜜チョコ饅頭並みに甘い。
 ボクの辞書にそんな中途半端な言葉は存在しないよ。『やるからには徹底的に』がボクの矜持だ!」

そう言って妖しく、艶やかな笑みを浮かべるリスティを見た那美は良介の救済を断念するしかなかった。
ここでリスティを嗜めれば被害は自分や久遠にまで及ぶと、退魔師としての本能が告げているのだ。

(良介さん……強く、逞しく生きてくださいね!)

早々に良介の援護を諦めた那美は心の中で涙を拭い、死んでもいない良介の冥福を祈った。
久遠はリスティに貰ったビーフジャーキーを美味しそうに食べ、リスティはそれを楽しそうに眺めつつ心の中で良介を貶める算段を付けていた。
あぁ、今日もさざなみ寮は実に平穏無事である。
頑張れ良介! 負けるな良介! 命ある限り!!
え? オチ? いやだなぁそんなの無いって言ってるじゃないですか〜!
いい加減に学習しないとダ・メ・だ・ぞ♪
閑話休題。
 


Side・良介
だぁあああ!!
まただ、また電波が〜っ!!
このクソ電波め! そっちこそ学習しやがれ!!
何で最悪の状況で最悪なヤツの最悪な宣言を聞かされなきゃならんのだ!!
那美、久遠…………俺はダメかもしれん。
今、俺の前には復活した屍達と魔王がいる。
この面子に囲まれることは何度もあったが、今回は筆舌にしがたいものがある。
さっきの爺さん婆さんの言葉によって砲撃を喰らうことはない。
だが、それはあくまでここの中だけだ。
ここを出た瞬間、俺は光になるだろう。
強制的に。
けしてダメージは低くないというのに隙は全く無い。
どうする!? ここまで来たんだ! こんなところで転んで全てを台無しにしていいのか!?
否! 断じて否!!
考えろ、宮本良介!
お前の灰色の脳細胞はこの状況を覆すためにある!!
今回は、ユーノの活躍が多かったから、ここで一発決めて見せろ!!
…………。
……………………。
……………………………………。
ポクポクポク、チーン!
駄目だぁぁぁぁ!!!! 何も出てこねぇーっ!

「さぁ、兄さん……」
「リョウスケ……」

だんだんと狭まる包囲網。ここまでか……。
脳裏に走馬灯がよぎる。
…………。
……………………。
……………………………………。
ろくな事がねぇえええ!!

「良介さん!!」
『Wing Road !』

吹き抜ける一陣の風。
俺の脇を抱えてギンガが包囲網を突破する!
こいつ、無事だったのか!?
一息に距離を離し、7人の悪m……もとい魔導士に対峙する。

「大丈夫ですか、良介さん!?」
「あぁ、俺は大丈――――」

その言葉は最後まで言えなかった。
え〜と、何て言うかギンガさん?

「何ですか?」

お前の方が大丈夫かと。

「少しフラフラしますが大丈夫です!」

そう言ってガッツポーズ。
そりゃフラフラするだろうさ。
お前の顔、某外人レスラーばりに鮮血に染まってるぞ?

「ねぇギンガ、兄さんにお弁当をずっと届けていたんだよね?」
「……えぇ、その通りです。なのはさん」
「そして、リョウスケがここにいることを知っていて黙っていたんだよね?」
「その通りです、フェイトさん」
「何でや? 何で、そないな事するんや?」
「そんなの……決まってるじゃないですか……」

一転して水を打ったような静かさ。
誰もがギンガの次の言葉を待つ。

「私が……『宮本良介対策課隊長』だからです!!」

ざっぱ〜ん!
あ、また日本海の荒波が。
ついでにギンガの頭から赤い噴水もでた。
何だよ、その『宮本良介対策課』ってのは。

「何やて!? 『宮本良介対策課』!?」
「そんな部隊が新設されていたの!?」

一気に走る戦慄。
俺も初めて知ったよ。

「ちなみに部隊は超々少数精鋭で私のみです」
「何やてぇ!!?」
「そんなオイシイ部隊が!!?」

何だよおいしいって。うわぁ〜、いやな笑顔だぜ、シャマル。

「この部隊は良介さんの起こすトラブルに社会的公正を含めた全てを活動範囲としています。
 これでお分かりになったでしょう?
 私だけが!
 良介さんの!
 相手をすればいいんです!!」

うん、ぜひ部隊を解散してくれ。
可及的速やかに。

「そんなの変だよっ!!」

お? なのはがまたおかしくなったか。

「だって……それならわたしの方が適任だよ!」
「そうだよ!私の方がリョウスケの事、よく知ってるもの!」
「これは……これは良介さんとナカジマ家の戦いなんです! そこあるのは使命感のみ! 個人的感情なんて一切ありません!!」

そう言いきり、胸を張るギンガ。とりあえず止血しろ。

「……その使命に、どうしたら毎回の手作り弁当が入るのか、詳しく聞きたいなぁ?」
「そうだね……」
「うん、そこは詳しく聞きたいよ」
「兄さんとお弁当わたしだってあのお花見の時以来……」
「リョウスケに手作りのお弁当……あぅ」
「良介さんにあ〜ん、なんて……ぅう……」
「先輩と二人きりでお弁当……手作りで……」

はやての言葉にヤル気上昇中の七人。
何だか雲行きが変だぞ!?

「皆さん、私が良介さんの事を黙っていた事とお弁当作っていた事とどっちに怒ってるんですか!!」

「「「「「「「両方! でも今はとりあえずお弁当!!」」」」」」」

声が見事にハモッた。
その時だ。
ついに待ち望んだ声が聞こえた。

『お待たせしました』
「遅い! だが待ちわびたぞウーノ! 今はお前が女神に見えるぜ!」
『先行してルーお嬢様とアギトが向かったはずですが?』
「あっちで夢の世界だ。強制的にな。で、誰を呼んだんだ!?
 ディエチか? オットーか? ノーヴェか? いやここはトーレだな!?」
「あたしよ」
 


はっ!? 今、気を失ってた!?
はっはっは、まさかそんな、あのお方がこんな所まで御出でになられる筈がないじゃないか。
いやだねぇ、俺も若くないか?

「何ゴチャゴチャ言ってのよ、この万年トラブル男は!」

ドアのあった所、そこにはと〜っても可愛らしいお人形みたいな女の子が立っていた。
軽いウェーブのかかった髪とフリルの付いたワンピース。
彼女がこの間買ったやつだ。

「………………ナンデコチラニイラッシャルンデショウカ、アリササン」
「何でだと思う?」

俺はモニターのウーノを見る。
あ、顔背けやがった。

『現状、姉妹を投入しても勝算はほとんどありませんでしたので。
 彼女達に対抗できる存在はこちらの知りうる限り彼女だけでしたから、連絡を取り、協力を要請しました』

そうか。
それだったら何でこっち見て言わないんだよ!!

「ところでご主人様?」
「ひぃぃぃっ!?」

こいつが俺をこう呼ぶ時は……
恐る恐る振り返る。

「一体これはどういった事なのかしらぁ〜?」

本気で怒ってる時だ。
外面は如来、でも内面は夜叉だ。
改めて周囲を見回す。
飛び散った破片。倒れまくってる本局隊員たち。廊下はひび割れて、壁にはクモの巣ができまくっている。
所々からブスブスと焦げ臭い匂いも漂っている。
はっきりいって悲惨な光景だった。

「あたしとの約束覚えてる?」
「約束ぅ〜?」

ハテ、何かあったかな?

「思い出せないなら思い出させるわよ?」

まてまて、今思い出すから。
記憶プレイバック。

「はあ〜、見ないと思ったらそんなとこにいたのね」
「おう、ここは平和でな。正直楽だ」
「誰も気づかないの?」
「ギンガが気づいただけであとのやつ等はいたずらしても気づかんかったぞ」
「とりあえずそこのもの壊さないようにね。さすがに貴重なものまではどうしようもないんだから」
「わかってる」
 

「あ」
「さて、思い出したところでこの状態……どういう事かしらぁ?」

最早、問答無用!
そう言っている。

「さぁ、帰るわよ!今日という今日は徹底的にやるからね!!」
「何をやる気だぁあああああっ!!」

俺は首根っこを掴まれて強制的に無限書庫から連れていかれてしまった。
 


某月某日

 まぁ後日談になるのだが、あのあとアリサに徹底的に教育指導を受けた。
 アリサのヤツめ! フルパワーでポルターガイストアタックかましやがって!!
 数日ベットの上の住人になったじゃないか!!
 しかもその間の記憶もねぇ……
 その寝込んでる間に無限書庫にはなんとナルシー作『司書ドローン』なんって書庫整理用の機械を導入したらしい。
 なんでもカメラで表紙と内容を記録、『司書長ドローン』(赤+角)に記録され、各『司書ドローン』に指示し、整理するらしい。
 まぁ整理整頓し、検索できるようにするだけで研究や書見などはユーノ達がやらなきゃならが、資料請求に割く時間の短縮に一役買ってるらしい。
 まぁ良い事だろ。
 ちなみに製作・運用資金は今回のストライキの原因というか発端のクロノのボーナス及び給料のカット分が当てられるらしい。
 まぁ自業自得だがな!
 あと俺は出入り禁止にはならなかったが長期滞在禁止を言い渡された。
 しかも俺のみ書庫内での携帯の使用も許可された……
 何故かミゼットばーさんの影がちらついたが気にしない方向で行こう。
 
 でもウーノのヤツ、ストライキを手伝ってまでいったい何を調べてたんだか。
 気になるが、知ったら知ったで薔薇色の首輪が巻かれる電波を受信したので気にしない事にした!!
 で、今回”も”暴れたアイツらはどうしたかと言えば……

「うぇ〜ん、もういや〜だ!!」
「いやや!! もうこれ以上頭はたらかへん!!」
「も、もうだめ……」
「勘弁してくれよ〜」
「私は古い騎士だからな……このような仕事は向かん!」
「さ、流石の私も……」
「私は凡人だから……」

7人とも無限書庫の修繕費を給料から引かれさらにしばらく書庫勤めにされた。

「あと72番と83番それとこのロストロギアの資料お願いしますね」

さらにあのヤンデレ女司書が追加にきた。

「「「「「「「……もういや〜〜〜!!!」」」」」」」
「あはは…………頑張ってね」

めずらしくそんなセリフを吐いていやがった。流石にユーノも無視と書庫破壊を許す気はないのだろう。助けなしだった。
とりあえず今回は引き分けだな
その頃俺はと言えば

「よう、生きてるか?」
「安心してください。あなたを更生させるまでは死にません」

え〜い、重傷人のくせに減らず口を!
あのあとギンガは貧血と全身打撲で気絶。悪魔たちの攻撃を喰らわずにすんだ。そして今は入院して俺が見舞いに来ている。
書庫のストライキ参加者にはお咎めなしという要求も通っていたため俺たちは無罪放免だったのだった。

「なんだせっかく見舞いにきてやったってのに」
「だったら本当に更生してください。アリサさんから聞きましたよ? 本当は静かだからいただけらしいですね?」
「ぐっ!」

そう、お仕置き後アリサはギンガに書庫にいた理由を話したのだった。

「とにかくわたしの部隊はこれからもあなたを更生させるために活動しますので」
「とっとと解散しろそんな部隊。たっく、そんなんじゃいつまでたっても相手見つからんぞ」
「いいんです。今の優先事項はあなたですので」

笑顔でそんなこというな。俺じゃなければ勘違い起こすぞ。

「宮本さん……アイス……」
「却下。絶対作らん」
「スバル、いいて言うまでダメって言ったわよね?まだしばらくはダメよ」

スバルのやつもあのあと入院した。病室もギンガと一緒で意識を戻してすぐまたアイス禁止を言い渡されたらしい。
どのみち作ってやらんがな

「ギン姉も宮本さんも鬼〜〜」
「知らん、自業自得だ」
「そうよ。それに悪魔に死神、夜天よりはマシでしょ」
「それは……うん」

今回はナカジマ姉妹にも深い傷を残して逝ったか……
まあこれでまたしばらくはいつも通りか。
どっとはらい。
 

おまけ
side・ユーノ

ストライキ以降、無限書庫の待遇はかなり変わった。
徹夜連チャンが当たり前だったのが嘘みたいだ。
司書ドローンによって人手不足もとりあえず解消され、現在、スクライアの検索魔法を基にした魔法プログラムの開発も進められているらしい。
これが完成すればもっと楽になるし、人員を増やすことも容易になるはずだ。
何でこういう事をもっと早くやってくれなかったんだろうか?
やっぱり自分の意見はちゃんと伝えないといけないね、ウン。

「うぇ〜ん、もういやだ〜!!」
「イヤや!!もうこれ以上頭働かへん!!」
「も、もうだめ……」
「勘弁してくれよ〜」
「私は古い騎士だからな……このような仕事は向かん!」
「さ、流石の私も……」
「私は凡人だから……」

そんな事を考えていると何とも情けない声が七つ。
無限書庫に対する破壊行動未遂(実際、備品や扉は壊されたけど)による奉仕活動中のなのは達。
しかし彼女達は何でこんなに元気なんだろう?
突然の爆発に気を失った僕が意識を取り戻した時、良介さんの姿なく、代わりにばったりと倒れたなのは達だった。
かなりのダメージだったはずなのに今こうして元気に働いている。
ギンガはいまだ入院中なのに。
良介さんがよくお見舞いに行っているという話をポソッとしたら

「「「「「「「すみません、今すぐ入院の手続きをしてください!!」」」」」」」

と言い出した。無論却下したけど。
ま、自業自得だと思って頑張ってね。
ちなみに良介さんの書いた手紙は処分済み。
あれの元を書いたのが僕だと知られる訳にはいかないからね。
疲れ果てたなのは達の前に更なる悲劇が。

「あと72番と83番それとこのロストロギアの資料お願いしますね」
「「「「「「「……もういや〜〜〜!!!」」」」」」」

あはは……頑張ってね。
とりあえず無限書庫は今日も平和です。

side???
人間関係におけるパワーバランスは一度決まると覆すのは容易ではない。
それは他の動物のようにそれを決める明確な要素がないためだ。
たとえば群れで生活する動物の場合、トップであるボスになるにはそのボスを倒せば良い訳だ。
だが、人間はそんな事をしてもボスにはなれない。
それが大きな組織であるならばなおさらである。

「それでは、申請のあった資料の方転送いたしますので、確認しましたらサインをお願いします」
「……了解した」

そう言ってクロノはリストに目を通す。
通信先は無限書庫。
あの一件以来、クロノはこの時間がイヤで仕方なかった。
今まではヒョイヒョイと面倒な資料検索を押し付けていたがユーノに完敗を喫したことで苦手意識が生まれたのだ。

(くそっ! この世の中はこんな筈じゃなかった事ばかりだ!!)

心の中で悪態を付きながらクロノは受け取りのサインを転送する。

(見ていろ、ユーノ!この借りは必ず返すからな!!)

心の中で激しくリベンジを誓うクロノ。

「ハラオウン提督?」
「ぬっ!? な、何だ!?」

まだ切られていなかった通信に思わず動揺する。
ディスプレイには無限書庫の女性司書。
レティに似た知性的風貌とリンディに似た優しげな外見の、間違いなく美人。
こんな娘が無限書庫なんて所に勤めている事にクロノは疑問を持った。
彼女には司書よりも秘書が似合いそうだ。
明らかに余計なお世話でしかない考えを少し巡らせ、そのまま消し去る。
これは彼女の問題(問題でもないが)なのだ。

「……………………」
「……な、何かな?」

少しの沈黙。そして彼女は口を開いた。

「いえ、奥様によろしく」

それだけを言って通信を切ってしまった。

「?…………何だったんだ、今のは?」

クロノがこの言葉の意味を知るのは実に数日後である。
 

 
 

「アレは君の仕業かぁあああ!!?」
「何の事です?」
「とぼけるな!! あんな映像をうちに送りつけるなんて何考えてるんだ!!」
「あぁ、もしかしてこれの事ですか?」

しれっと言い放つ彼女はディスプレイを展開させる。

「うん?コーヒーの豆変えたのか?」
「ええ…………あのお口に合わなかったでしょうか?」
「いや、君の入れてくれるコーヒーはいつも美味しいよ。」
 

「あれ、もしかしてシャンプーを変えたかい?」
「えっ!? わ、分かりますか?」
「まぁね。いつもと違う香りだから」
 


「大丈夫かい? 最近、根を詰めすぎだぞ?」
「いえ、平気です。もうすぐ試験ですから」
「そうか? だがそれで倒れたら元も子もないだろう? 僕も君が倒れて心配で仕事にならないからね」
「て、提督……」
「今日はもう休みなさい。まだ、日はあるんだから」
 

「うわぁああああああ!!!?」
「映像資料を作成していたらたまたまこういった物が見つかって、邪魔のなので一つにまとめておいたら
 たまたま焼いてしまって、それがたまたま手違いでそちらに行ってしまったみたいですね?」
「絶対に意図してやってるだろう!? それのせいでどんだけ酷い目にあったと思っているんだ!!?」
「なんでしたら第二段もお送りしますが?」
「確信犯じゃないか!!」

ここにクロノ・ハラオウン最大の天敵が誕生した。
後悔してももう遅い。
生み出したのは他でもない、彼自身なのだから。

side・ウーノ

「ふむふむ……成程」

ウーノの手に収まってるのは無限書庫から複写してきた資料だった。
資料名は
『ツンデレのおとし方 バレンタインデー編』
であった。

それが新たな戦いの幕開けになるのかどうかは……神(作家)のみぞ知ると言った処だろう。
 

 

作者様一覧
D, 様
犬吉 様
三成 様
ケイ 様
吹風 様
名無しAS 様
JUDO 様
ラウディスト 様
 

1、誤字ではありませんが、「・・・」と「……」が混在していましたので、「……」に統一させていただきました。
 

2、誤表記の部分を一部訂正させて頂きました。
 

 




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