Side 機動六課

「・・・シャマル先生、姐さんと旦那の具合はどうっすか？」
「もう問題ないわ。大丈夫。
ただ、ダメージがダメージだから、すぐに本調子というわけには行かないけど」
「・・・お前のドジのお陰で、余計にダメージが増えたしな」
「あぅ、ごめんなさい・・・」
「ザフィーラ、そのくらいにしておけ。
シャマル、すまなかったな。手間をかけた」
「あぁ。
シャマル、さっきはああ言ったが正直助かった。
これだけ回復出来れば問題無い。すぐに出るぞ」
「ちょっと待って！
・・・もう！　あの二人はすぐに無茶するんだから！！」
「あ、あはは・・・」

まぁ、それでなんとか戻ってこれるんだからすごいっすよねぇ・・・。
医務室で繰り広げられたやり取りを見て俺、ヴァイス・グランセニックはそんな事を思っていた。

今日は２／１４
八神部隊長達の出身世界で「バレンタインデー」と呼ばれている日。
なんでも、女の子が好きな男の子や、お世話になっている人達にたいしてチョコレートを送る日だそうだ。

まぁ、かく言う俺も、朝一番にキャロから貰い、その後スバル達からもちゃっかり受け取ってたりする。
俺のことはこのくらいにしておくとして、男の立場からするとドキドキ混じりな楽しいこのイベントも、あの人にかかるとあっという間に悪夢の日に早代わりなのだから、人生ってのは不思議だと思う。

そう、宮本の旦那だ。

機動六課の隊長陣は、宮本の旦那に対して強い愛情を抱いている。そして、それに応えて欲しくてかなり強烈なアプローチに走る事もある。
それ故に、事ある毎に旦那を中心にかなり激しい争奪戦が繰り広げられることは、旦那を知っている人間なら常識と言える。
最近だとＪＳ事件で俺たちがやりあったナンバーズの穣ちゃん達に加えて、うちのひよっこフォワード共も、この争奪戦に加わるようになった。
それによって宮本の旦那がどれだけえらい目にあっているか。
・・・その辺りは推して知るべしだろう。

で、当然「好きな人にチョコを送る」というこの日も旦那にとっては厄日となった。

とは言うものの、旦那には悪いが部隊長達が追っかけまわしてるだけなら俺たちにとってはいつものこと。

俺やシャーリー辺りは慣れたもので、「旦那が逃げきれるかどうか」なんていうトトカルチョを部隊員相手にし出す始末である。
ちなみに、全体的な掛け率の方は『逃げられない』が９割と言った具合に圧倒的だった。
あ、俺は『逃げられる』に賭けたぜ？　あぁ見えて、旦那はかなりしぶといからなぁ〜。

俺たちがそんな具合に遊んでいるのに対し、グリフィス部隊長補佐は恨みの篭った視線を送りつつ、各所からの問い合わせの対応に四苦八苦していた。
旦那絡みでのトラブルが起きた時の機動六課メンバーとしては、かなりお約束的なことをしつつ、俺たちは今日と言う日を過ごしていた。平和といえば平和と言えてしまうのが恐ろしい。

だが、その雲行きがこの数時間で怪しくなってきた。

それは、時空管理局・陸上警備隊『第１０８部隊』の隊長。
ゲンヤ・ナカジマ三佐から部隊長補佐への連絡がきっかけだった。

『・・・レプリカガジェット？』
『あぁ、お前さん方にも通達はしてあったと思うが、うちの１０８部隊はＪＳ事件の後処理の一つとして、スカリエッティの技術が他の悪党連中に流用されないための処置を色々とやってたんだがな。
その中で出てきたのがそいつだ』
『その名の通り、ガジェットのレプリカ。という訳ですね？
ですが、なぜこのタイミングでその話が出てくるんですか？』
『・・・どうも、良介のやつがこの件に関わっちまったらしい』

ナカジマ三佐の話はこうだ。

旦那が昼間に逃げ込んだ廃棄都市部で、突如出現し、地上部隊と交戦したガジェットは、どうもそのモドキらしいということ。
そいつらが地上部隊と交戦する前に、旦那たちと接触した形跡があるということ。
ガジェットを生み出した張本人であるスカリエッティはそんな状況を良しとせず、独自にそれらを所有する連中を追っていたということ。
そして、ナカジマ三佐達『１０８部隊』もこの問題を放置する訳が無く、同じように少し前から連中を追っていて、そいつらが現在首都の一角に潜伏していることを突き止めたのだが、その近くに何故か宮本の旦那やうちのひよっこ共が向かっているらしいということ。

ここから導き出される答えは一つ。

宮本の旦那は、どういうわけか一度関わった事に対しては旦那の意思は無視でとことん関わってしまうという非常にやっかいなレアスキルを持っている。
つまり、『宮本良介が今居る場所・・・湾岸部を中心に、レプリカガジェット絡みでとんでもない騒動が巻き起こる可能性がある』
それがナカジマ三佐とグリフィス部隊長補佐が導き出した結論だった。

そういう訳で、六課隊舎に居たスタッフは全員臨戦体勢に突入。
同時に八神部隊長達にも連絡。
事態が事態なので、部隊長達も泣く泣くお仕事モードに切り替える事となった。

・・・スターズとライトニングのスタッフへの通信は、なぜか繋がらなかったが。
まぁ、フォワード４人とハラウオン分隊長が音信不通なのは分かる。
ナカジマ三佐経由の情報だが、連中は旦那の逃走に力を貸しているそうだ。
地上本部が旦那を本腰入れて追っかけてる状況で、六課と連絡を取ろうとはさすがに思わないだろう。
高町分隊長の方は・・・、ノーコメントとさせてもらおう。

そんなこんなで、姐さん達の様子が気になって部隊長補佐に許可をもらい、廃棄都市部にヘリを飛ばしてた俺も召集。
急ぎ姐さん達を連れて隊舎へと戻った。
で、隊舎に戻るなり治療を受けつつ事情を知った姐さんと旦那は、すぐに湾岸部へ向かうと言い出して、今に至る。てな訳だ。

「アルト、すまないが湾岸部まで頼む」
「宮本達を助けてやらねばならんからな」
「それはいいんですが・・・、お二人とも大丈夫なんですか？」

アルトが心配するのも無理は無い。
姐さんと旦那は治療が終わったとはいえ本調子じゃない。
所々包帯が見えるし、魔力だってこの短時間で完全に回復出来るわけがないのだから。

「主達やミヤモトを追っていた地上部隊もそこに向かっているのだろう？　戦力的には充分すぎるほどだ。問題無い」

アルトの心配に、どっか勘違いしてる答えを返す姐さん。
はは・・・。そういう事じゃないと思うんすけどねぇ。
まぁ、戦力的に充分ってのは分かりますよ。
ひよっこ共に分隊長達も、旦那の近くに居るはずっすから。

「そういう事じゃないわよっ。
もう！！　ホントに止めても聞かないんだから！
・・・仕方ないわね、私も一緒に行きます。
二人の怪我が悪化したり、良介さん達に何かあったら、私が治します。
湖の騎士、シャマル。癒しと補助が本領ですから」
「あぁ、頼むぞシャマル。
お前に心配をかけるのは心苦しいが、今の我らには成すべきことがある。ならば・・・」
「後はそれをやるだけだ。・・・ですよね？　ザフィーラの旦那？
俺も行きますぜ。宮本の旦那には、なんだかんだで色々世話になりやしたから」
「ふっ・・・、そうだな。ヴァイス。すまんが力を貸してくれ」
「お安い御用ですぜ。旦那。
・・・行くぞ、ストームレイダー」
『了解しました。マスター』

そうして、俺たちを乗せたヘリは湾岸部へと全速力で向かい始めた。

今日はバレンタインデー。
宮本の旦那にとっては命を賭けたイベント目白押しの悪夢の日。
だがその悪夢の日も・・・、あと少しで終わりを告げようとしていた。

すいーとうぉーず　りざると

Side 機動六課
現時刻　２３：００

機動六課隊舎医療室→隊舎ヘリポート

嵐の狙撃手
剣の騎士・盾の守護獣・湖の騎士と共に、孤独の剣士の一団の救援に向かう。

剣の騎士＋盾の守護獣
湖の騎士の手により治療完了（ただし、本調子にあらず）

湖の騎士
剣の騎士＋盾の守護獣の無茶っぷりに呆れる
二人に付き添う形でヘリに搭乗

第１０８部隊
部隊人員を総動員
湾岸部へ急行中

超有名店店内
緑の司書長
超有名店のオーナーに発見される
オーナーの手により救助作業中
「あ、ありがとうございます。
・・・もう頭来た。クロノのやつ、絶対ぶん殴ってやる！！」
緑の司書長の手による黒の艦長フルボッコフラグ成立

２／１４終了まで

―１時間００分―