Side 良介
ちくしょぉぉぉぉぉっ!!
なんでこんな事になるんだぁぁぁぁっ!?
事の起こりは、超有名店のトイレでクロノとユーノに鉢合わせした事だった。
お互いに何故ここにいるのか? その経緯を説明しあったのだが、それを終えた瞬間からクロノの表情が夜叉へと変わり始め、いきなりデュランダル持ち出して氷結魔法をぶちかましてきたからさぁ大変!
すぐ近くにいたユーノはもちろんのこと、アギトとフェイトまで店と一緒に氷漬けにされてしまったわけだ。あはははははっ!
・・・って、笑い事じゃねぇぇぇぇっ!!
状況はかなり最悪だった。
クラナガン大通りを抜けて湾岸部の方向へ。
クロノの氷結魔法をなんとか避けながら逃げていたが、頼みの綱のアギトもフェイトも今は氷漬け。
おっさんからもらったデバイスは、シグナムとの一戦で折れてしまったし・・・。つまるところ、クロノをどうにかするための手段がこちらには無いのだ。
くそっ。ここまできてやられるわけにはいかねぇんだよっ!!
「ミヤモトォォォォォッ!! 諦めて頭を冷やせぇぇぇぇっ!」
そんなことを叫びながら、ところ構わず氷結魔法をぶちかますクロノ。
頼むから、まずはお前の頭を冷やしてくれっ!!
「やいクロノ! お前こんなことしていいのか? 仮にも提督という立場にある人間だろっ!? いくらなんでもこれはまずいだろうがっ!!」
「うるさいっ!! 全て君のせいだっ!! 僕がどんな気持ちでナカジマ三佐達に協力を頼んだと思ってるんだ!
全て、今回の一件が面倒な事にならないようにするためだろうが!」
「それには本当に感謝してるよ!!
らしくもなく、お前にメロンを送ろうと思ったくらいにはな!」
「嘘をつけ! だったら、今の現状は一体なんだっ!?
地上本部を動かす所まで事態を肥大化させただけでは飽き足らず! う、うちの・・・、うちの義妹とあんな超有名店で仲良く子連れで食事だとっ!? しかもタダでっ!! あの店が予約するだけでもどれだけの料金がかかるか知っているのか!?
貴様、人を馬鹿にしてるにも程があるぞ!!」
よっぽど今日の間にストレスを溜め込んでいたのだろうか?
俺を追跡しながら、多少シスコン気味な私的見解を声を大にして叫ぶ黒の艦長さん。
・・・って、おい! お前が気にしてるのはそこなのか!?
もっと気にするべき所はないのかよっ!
「・・・許せん。この一件が君のせいでどこまで肥大化するかはもう知った事では無いが、君のような男に義妹を・・・、フェイトを好きにされるのは許せん!!
ミヤモト! 今日こそ引導を渡してくれる!! デュランダル!!」
『Yes Boss』
ー悠久なる凍土ー
おい・・・、まさかお前っ!?
今クロノが詠唱しているのは、エターナルコフィン。
クロノとそのデバイス・デュランダルが使用する氷結魔法の中では最大級の範囲と威力を持っている、まさに『切り札』というべき魔法である。
「おいっ!! 馬鹿! やめろ!! こんなとこでそんな魔法使うんじゃねぇっ!!」
いくら大通りを離れ、人の気配が少なくなっているとはいえ、ここが市街地の一区画であることは変わりない。
そんな場所でその魔法はまずいと思い、足を止めてクロノを止めようとしたが・・・クロノの詠唱が止まる事は無かった。
あぁもう! こいつ、完全にぶちぎれてやがるっ!!
ー凍てつく棺のうちにてー
そうこうしている間に、クロノを中心に魔力が高まっていく。
やばい! 今から全速力で走ってもこいつからは逃げられない!!
ー永遠の眠りを・・・−
もうだめだ。終わった。
そんな事を思い、覚悟を決めた瞬間・・・。
「フリード! ブラストフレア!!」
「「リボルバァァァッ! シュゥゥゥット!!」」
「クロスファイア! シュゥゥゥゥット!!」
詠唱を終えようとしていたクロノを中心に広がる爆発。
一瞬、何が起こったか分からず呆気に取られるが、すぐに事態を理解した!
「「宮本さん! 大丈夫ですか?」」
「全く・・・、あんまり手間かけさせないでくださいね。先輩?」
「良介さん、無事でよかったです!」
「フリード、ありがとうね。良介さん、遅くなりました!」
「リョウスケ、間に合ってよかった・・・。助けに来たよ」
そう、ギンガと機動六課のフォワード4人。それにルーテシアとガリューだった。
Side キャロ
なんとか間に合った・・・。
ギンガさんとティアさんが、女同士の友情を確かめ合った後、すぐに私達は移動を開始した。
ギンガさん先導の元、現場に急行してみればこのありさまだった。
クロノさんの氷結魔法のせいだろう。
良介さんが逃走してきたと思われるルートは所々凍りついており、そのせいでこの辺り一帯の気温がとても低くなっているみたいだ。
夜と言うこともあって、バリアジャケットの上からでも、少し肌寒い。
「お前ら、いいタイミングだ! よくここが分かったな?」
「・・・先輩、ここまで派手にやってくれたら、誰だって気付きますよ?」
全くもってその通りだと、私を含めた全員がティアさんに同意する。
「た、確かにな・・・。あぁ、そんな場合じゃねぇっ!
頼む、アギトとフェイト達も助けてやってくれ! あのブチ切れ艦長に氷漬けにされちまったんだよ!」
フェイトさん達が!?
いつものクロノさんならここまで大暴れはしないのに・・・。
一体何があったんですか? クロノさん?
「なら、私達が行く。ガリュー、お願い」
「キャロ、僕も行って来るよ。良介さん、フェイトさん達の場所を教えてください」
良介さんから詳しい場所を聞いて、ルーちゃんとエリオ君はフェイトさん達の所に行こうとした瞬間、その声は聞こえた。
「・・・盛り上がっている所悪いが、僕の事を忘れないでもらえるかな?」
その声に、全員の表情が険しくなった。
それは、クロノさんの声だった・・・。
クロノさんは、さっき私達が攻撃した場所からゆっくりと地上に降り立ち、歩いてきた。
咄嗟に防御魔法を発動したのだろうか?
装着しているバリアジャケットに傷などは見られなかった。
なんとも言いがたい覇気を漂わせ、クロノさんは私達にゆっくりと迫りながらこう言った。
「・・・君たち、悪いがどいてくれないか? 君たちがそこに居ると、ミヤモトの頭を冷やせないじゃないか」
いつものクロノさんからは想像できないような、低く、私達を脅すような声。
そこから感じられるのは、良介さんに対する明らかな敵意。
それを聞いた瞬間、私の中で何かが切れる音がした。
「・・・どきません」
そう答えたのは私。
ギンガさん達が制止するのも振り切って、クロノさんと同じように、ゆっくりとフリードから降り、一歩踏み出す。
「・・・すまない、今なんと言ったのかな? よく聞こえなかったんだが」
「どきません。そう言いました。
ギンガさんと約束しましたから。今日が終わるまで、良介さんの力になりますって。
エリオ君、ルーちゃんにアギトちゃんと一緒に決めて、フェイトさんと約束しましたから。
良介さんを、今みたいな命の危険に晒される状況から守ろうって。
だから・・・、どきません!」
私は、クロノさんを相手にそう言い切った。
それは実質的な宣戦布告に他ならなかった。
「そうか・・・。ならば君たちと戦わなければいけないな」
「いいえ、戦いません」
「・・・は?」
「ですから、私達はクロノさんとは戦わない。そう言ったんです」
私が発した「戦わない」という言葉に、クロノさんだけでなく、良介さん、ギンガさん達も驚いた表情を浮かべた。
それには構わず、私は言葉を続ける。
「今ここで私達が戦えば、その余波は良介さんが受けることになります。それじゃあ、良介さんを本当に守ることにはなりません!!
ですから、戦う以外の方法で・・・クロノさん、貴方を倒して見せます!!」
私は、クロノさんを指差しまたも言い切った。
(ちょっ、キャロっ!? いくらなんでも無茶だって!)
(大丈夫だよスバル。今のキャロなら何とかできるから)
(キャロ、信じてるからね 頑張って!)
(・・・キャロ、こうなったらあんたに任せるわよ。
なにか考えがあるみたいだしね。
あぁ、それと先輩、後で色々と話があります。いいですよね?)
(ティア、奇遇ね。私も宮本さんと少し話したいことがあったのよ。宮本さん、よろしいですね?)
(・・・俺に聞かれても、たいした事は答えられんぞ?
あぁ、誰だよ! あいつの妙なスイッチをオンにしちまったのはっ?)
・・・後ろで皆がなにやら話しているが、とりあえず今は気にしないことにした。
「ふふふ・・・、なるほど。では、やってもらおうか?
戦わないで僕を倒せるものなら倒してみるといい!」
「・・・そう言った事を、後悔しませんね?」
「何?」
「正直に言います。私、今クロノさんに対してすごく怒ってるんです。
アギトちゃんとフェイトさんを氷漬けにした上に、こんな市街地であんな魔法を撃とうとするなんて・・・。何があったのかは知りませんが、いくらなんでもやりすぎです。
ですから、加減はできませんよ? いいですね?」
「あぁ、構わないさ。君がミヤモトに何を吹き込まれたかは知らないが、少しばかりの浅知恵で、僕をどうにか出来るとは思わないほうがいいな?
さっきも言ったが、もう一度言おう。
戦わないで倒せるのならば、倒してみるといい」
クロノさんのその言葉に私はため息を吐いた。
・・・正直、こんな手は使いたくなかったんだけど、仕方ない。
ここでクロノさんを止めるためには、おそらくこれが一番いい方法だと思うし。
「分かりました。それでは、本気でやらせてもらいます」
そう言うと私は通信パネルを開いて、『ある人物』に連絡を取った。
『・・・はい、お久しぶりです! ・・・えぇ、元気です! 私もエリオ君も。あと、ルーちゃんとアギトちゃんとも仲良くしています!
・・・はい、少しお願いがあって。・・・いえ、そのことではないんです。
実は今、(かくかくしかじか・・・)という状況になっていて、すっごく困っているんです。説得しようにも、私達の話を全く聞いてくれなくて・・・。それで、少しお話してもらえないかと思って連絡しました。お願いできますか?
・・・ありがとうございます! 助かります!!』
「・・・君は誰と話しているんだ? この状況で」
クロノさんが疑問に思うのは当然だと思う。
それは、他のみんなも同じらしい。
「大丈夫です。すぐに分かりますから。・・・じゃあ、今変わりますから」
そう言うと、私はクロノさんを手招きした。
「クロノさん、通信を変わってください」
「はぁ? 一体なんだんだ・・・?」
「いいから変わってください!!」
「分かった分かった・・・。あー、はいもしもし。今、変わりました。クロノ・ハラオウンですが、一体貴方様はどこのどちら様でしょうか?」
『あら〜。ひどいわクロノ。あなた、私が誰か分からないの?』
クロノさんの表情が一瞬で変わった。
驚きと、何かを恐れているような表情に。
・・・私は警告はちゃんとしました。
その上で選んだのはクロノさんです。同情はしません!
『ま、まさか・・・。母さんっ!?』
『そう、そのまさかよ。クロノ?
さっきキャロから少しだけ聞いたけど、また随分と暴れてくれたみたいね?
貴方、自分の立場をちゃんと分かっているの?
しかも、フェイト達を氷漬けにして、キャロ達とルーテシアちゃんにまで手を出そうとしたそうね?
いくら良介さん絡みだとしても、これはさすがに見過ごせません』
『ま、待ってくれ母さん! これには・・・』
『ハラウオン総務統括官、と呼びなさい。クロノ・ハラウオン提督。
・・・少し、頭冷やしましょうか?』
これで、詰みです。
良介さんが生まれた国、日本の伝統戦術。
その中でも特に卑劣な部類にあるとされている戦術『親に告げ口』
正直、卑怯な手段だと思ったから、使うのには少し躊躇いがあったけどこれで上手く収まるんだからよしとしよう。
私は、さっきまでの気迫はどこへやら。
リンディさんと話すたびにどんどんと萎縮していくクロノさんを見ながら、そう思った。
「いや、だめだろ! 主に俺的に!!」
すいーとうぉーず りざると
現時刻 21:59
クラナガン大通り→湾岸部港付近
ストライカーズチーム+鋼の追跡者と合流
キャロ・ル・ルシエVSクロノ・ハラオウン
戦闘発生
勝者:キャロ・ル・ルシエ
(勝因・リンディ召喚)
取得アイテム
新しい服(着物風)
有名店店内
炎の剣精
氷漬けから脱出成功。
金色の死神の救出作業中
金色の死神
氷漬け継続中 上半身だけは解凍完了
緑の司書長
氷漬け
「ひょっとして、僕って忘れられてる・・・?」
地上部隊
首都へ到着
捜索開始
白の魔王
首都へ到着
黒の艦長の暴走の結果に驚愕を覚える
夜天の王(ユニゾン)
鉄槌の騎士
六課隊舎から緊急連絡
仕方なくお仕事モード発動
湾岸部へと向かう
ストライカーズチーム+鋼の追跡者
孤独の剣士と合流
桃色の召喚師の今後に、全員が不安を覚える
事件終了後、孤独の剣士の詰問フラグ成立
黒の提督
翡翠の髪の提督から説教中
首都の一角
気温がまだまだ下がる
そのお陰でバレンタインを二人で過ごすカップルの温度が急上昇中
ナンバー5
首都の惨状に驚きつつも、極秘任務遂行のため移動中
剣の騎士
盾の守護獣
心配になって見に来た嵐の狙撃手により救出
機動六課隊舎へ搬送開始
最強のメイドさん
お風呂上りのスキンケア中に伝説の三提督から連絡
最新情報を確認 怒りのボルテージが急上昇
(チャージ80%まで急上昇)
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