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時刻は20:46
今日という悪夢の日が終わるまで、あと少しで三時間を切ろうとしていた。
シグナムとの勝負を終えた後は本当に大変だった。
合流したフェイトはバルディッシュ・ザンバーを片手に『どういうこと・・・?』と怒りを露にし俺に迫ってきたのだ。
昔の俺がてきとーにぶっこいたハッタリに対しての怒りだというのは、もはや疑いようも無かった。
危うく一触即発。という状態だったが、その場に居たアギトの仲裁と、シグナムやはやてに対してさすがに罪悪感が沸いていた俺の謝罪によって、フェイトも矛を納めてくれた。
しかし・・・。
『・・・リョウスケ』
『・・・はい』
『キャロとの約束もあるし、リョウスケも反省しているみたいだから、もうこの件に関しては何も言わないよ。
でも、今回みたいな騒動の原因の一つは、リョウスケがその場の勢いで言った言葉の積み重ねもあるってことは、忘れないでもらえる?
・・・皆の気持ちも、もう少しだけでいいから考えてくれると嬉しいかな?』
『あぁ、すまん。なんというか今回は本当に悪かったと思ってる。だから・・・、首筋にザンバーを突きつけるのはやめてもらえるとアリガタイデスフェイトサン』
・・・とまぁ、こんな感じでお説教はしっかり食らったわけである。
それだけで済んだのは、幸運と言う他無い。
そんな事も起こりつつ、やつらに遭遇することなく俺たちは地下道を抜け、首都クラナガンへとたどり着く事に成功していた。
そうして俺たちが今いるのは・・・。
「もぐもぐもぐもぐ・・・。おい、リョー。これすっげぇうめぇな!」
「あぁ! はぐはぐはぐかじかじかじかじ・・・って、こらアギト! それ俺のだろうがっ。勝手に取るんじゃねぇ!」
「へっへーん! 早いもの勝ちだー!」
「にゃろー! じゃあお前の分も取ってやるっ。ほれ、パク!」
「あーーー! リョー何すんだよ! それ最後に食べようと思ってたんだぞ!!」
「何言ってんだ? お前が『早い者勝ち』って言ったんだろうが!!」
「え、えっと・・・。二人ともほどほどにね? 食べ過ぎると動けなくなっちゃうよ?」
そう、俺たちは食事中である!
ここは、管理局のお偉いさん御用達の超人気店。
予約だけでも超が付くほど難しいと言われる名店中の名店。
そんな店に、なぜ俺達が入り込めたのか?
疑問に思うかもしれないが、これも一重に孤独の剣士たる俺様の人徳というやつだ。
俺にかかれば、こんな店でも顔パスは当然なのである
「よく言うぜ。人徳どころか悪名のおかげじゃねぇか」
グサッ!!
アギトの言葉が、刃となって俺の繊細な心に突き刺さった。
・・・そう、俺たちがこんな所で食事を堪能出来るのは、今まさにアギトの言ったとおりなのだ。
首都に到着したはいいが、時間も時間。昼から何も食べておらず、腹を空かしていた俺たちが声をかけられたのはこの店のオーナー。
賢明な方々はご存知だろうが、色んな意味で次元世界に顔が売れている俺。
最近だとJS事件に関わった事でそれに更なる拍車をかけることとなった。
そういう訳でオーナーも当然の如く俺を知っていた。
そして、今俺が置かれている状況も。
そんな俺たちにオーナーはこう言った
『実は私、飲食店のオーナーをしておりましてですね。もしよければ私どもの店に立ち寄ってはいただけませんか?
・・・いえいえ! お代は結構です! ただ、一つお願いがありまして。・・・宮本様が私どもの店で食事をした証拠のようなものをいただきたいのです。例えば、サインや手形などをお願いできませんでしょうか?
理由? 理由は至って簡単です!
宮本様は、今や次元世界では知らぬ者の居ないお方。
その自由な生き様に好感を覚える人間は数多く存在しております!
話は剃れますが、かく言う私も『宮本良介を慕う会』の会員でもあります。
そんな、次元世界をまたにかける有名人である宮本さまがご来店していただければ、私どもの店も一層の箔が付くというものです!
是非、私の店に来ていただけないでしょうか!!
・・・え? ひょっとしたら店が壊れるかもしれない?
あぁ、問題ありません! ちょうどリニューアルの計画を立てておりましたし、今後の店の厄払いとでも思えば問題はないでしょう!
どうでしょうか? お願い出来ませんでしょうか・・・?』
・・・と言った具合である。
あいつらのうちの誰かの罠、という可能性も考えたが、腹が減っては戦などできぬ。
結局、フェイトとアギトも居る事だし、よっぽどの事が起きないかぎり問題は無かろうと判断。
ここはオーナーの好意に甘えることにした。というわけである。
一応、出された料理は全てアギトがチェックが入れたが、メガ姉さんの痺れ薬の時のようなことはなかったことを付け加えておく。
しかし・・・、『宮本良介を慕う会』ってなんだ? 何時の間にそんなもんが出来上がったんだ!?
・・・面倒ごとの火種にならなければいいんだが。
「うー、食った食ったー! ごちそうさまでした!」
「ふへー、もう食べられねぇ・・・」
「もう、アギト食べ過ぎだよ? でも、本当に美味しかったね。あ、そういえば料理のお持ち帰りとかって頼めるのかな? ちょっと聞いてくるね」
そう言って立ち上がるフェイトを、俺は制した。
「あぁ、なら俺が聞いてくるからフェイトはアギトの事見ててくれ。ついでに、ちょっとトイレ行って来るわ」
「・・・リョウスケ、食べた後すぐにトイレに行くのは、マナー違反だよ?」
「気にするな。顔を洗いに行くだけだ」
「そっか、じゃあいってらっしゃい。アギトの事はちゃんと見てるから安心して」
そう言って、『うー、食いすぎたー!』などと言い寝転びながら腹をさするアギトを『アギト、お行儀悪いよ?』とたしなめているフェイトに見送られて部屋を出る。
(・・・まぁ、確かに食べた後すぐトイレってのは綺麗な印象はないよなぁ)
そんな事を思いながらまずは、食事したことで緩んだ気をまた引き締めるために、顔を洗おうとトイレへ入る俺。
が、入った瞬間に硬直する。
場の空気が凍りつくような感覚。
・・・どうやら、顔を洗わなくても気は引き締まったようである。
そう、俺がトイレに入って見たものとは・・・。
Side ユーノ
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19:47
「・・・宮本さんは、まだ捕まらないって?」
「あぁ。ヴェロッサの報告だと、どうもフェイトや機動六課のフォワードの子達が逃走に力を貸してるようだ。
廃棄都市部の地下道へ逃げ込んだのは間違いないそうだが、その後の行方が掴めないらしい。
・・・ひょっとしたら、今日中には捕まらないかもしれないな」
そんな会話をしている僕達が居るのは、クロノが予約してくれた管理局のお偉いさん御用達の超人気店。
予約だけでも超が付くほど難しいと言われる名店中の名店。
宮本さんが捕まった後に残念会でもやろうという僕の一言でここに来たのだが、なかなか捕まらない状況にしびれを切らして、僕達は先に食事を始めていた。
僕は、名店の名を裏切らないとても素晴らしい料理の数々。クロノはそれと一緒にお酒も楽しんでいた。
そんな楽しいひと時を過ごしつつも、僕達は宮本さんの捕縛劇の動向をアコース査察官に逐一報告してもらっていたのだ。
「ははは・・・。ひょっとしたら、残念会じゃなくて宮本さんの祝勝会になっちゃうかもしれないね。これ。」
「そうなったらそうなったで面白いとは思うが・・・、明日から大変だな」
確かに、無限書庫で勤務している僕は今回の件で忙しさが変わることはないだろう。
でも、クロノは違う。
提督であるクロノは間違いなく大変なことになる。去年も宮本さんやなのは達の後始末を引き受けたことで、一ヶ月休み無し。それだけじゃなく、自分も始末書を書く羽目になっていたのだから。
「そんな顔しないでクロノ。明日の事は明日でいいじゃないか。ほらっ、こんなに美味しい食事に舌鼓をうてるんだからさ。それを楽しもうよ」
「ユーノ・・・。そうだな。今日は楽しもう! 明日のことなんて考えたら、せっかくの料理と酒がまずくなる」
「そうだよ。 さぁ、改めて乾杯しよう! ・・・僕達をここへ導いてくれた宮本さんへ乾杯!」
「・・・なぜ宮本に乾杯なんだ?」
僕の乾杯の音頭に首をかしげるクロノ
「だって、宮本さんが居なかったら僕達二人でここに来ようって考えがまず出なかっただろ?」
「なるほどな。それならば問題あるまい。・・・宮本へ乾杯!!」
「乾杯!!」
そんなノリで、僕達の楽しい時間は過ぎ去っていった・・・。
20:57
「うぅー、飲みすぎたー!」
「ちょっ! 大丈夫クロノ?」
「あぁ、大丈夫だ! 問題ない! いつでも戦えるぞー!」
「戦う必要は無いから! ほら、しっかりして・・・」
やはり、今日のためにかなりのストレスが溜まっていたのだろうか?
珍しく悪酔いしたクロノを抱えつつ僕はトイレに向かっていた。
「ユーノ! ・・・ストライキの時はすまなかったっ!! 許してくれ!」
「く、クロノ。それはもう13回は聞いたよ・・・。無限書庫の勤務状況も本当によくなったし、もう僕は気にしてないから。ね?」
「いやっ、僕はお前のそういう弱気でウジウジした性格に甘えてたっ! 劣悪だった無限書庫の状況を放置し続けた! もう僕はダメだ! 絶望した! 提督辞めるわっ!!」
・・・殴っていいのかな?
とりあえず、提督を辞める前に通路に土下座するのを止めて欲しいよ。他のお客さんの視線が痛いんだからさ。
そんな感じで何とかクロノをトイレまで引っ張っていく。
「ほら、クロノ。トイレ着いたよ?」
「おぉっ、すまんなユーノ! あとは大丈夫だ! 一人で出来るぞー!」
いや、今までの状況を見るに間違いなくそれは無理だから。
僕が呆れていると、トイレのドアが開いた。
なんとなしにそっちを見ると・・・、え?
それは僕とクロノのよく知っている顔だった。
まるで時間が凍りついたかのような感覚。
それはクロノも同じだったようで、僕に対して絡んでた時のテンションはどこへやら。酔いも冷めてきているようだった。
そして今入ってきた彼も、自分の目の前の状況が信じられないようだった。
次の瞬間、僕達が発していた言葉はほぼ同じだった。
「ユーノにクロノ・・・?」
「宮本さん・・・?」
「宮本・・・?」
「なんでこんな所にいるん(ですかっ!?)(だっ!?)」
すいーとうぉーず りざると
現時刻 20:58
地下道→首都クラナガン:超有名飲食店
クロノ+ユーノとばったり遭遇
波乱の予感
取得アイテム
痺れ薬入りクッキー(7枚)
新しい服(着物風)
アギト(寝転びながらお腹をさする)
折れた『無銘』
美味しい料理の数々→ご馳走様でした♪
金色の死神
行儀の悪いアギトをたしなめる。お母さん属性ドライブイグニッション。
「今度、エリオとキャロと一緒に来てみようかな・・・?」
白の魔王
放置されていた湖の騎士をバインドで捕獲
湖の騎士の治療魔法により、回復中
夜天の王+鉄槌の騎士
盾の守護獣と剣の騎士に対してのお仕置き完了後、首都クラナガンへ移動。孤独の剣士の捜索中
盾の守護獣
廃棄都市部にて気絶中
剣の騎士
同様
地上部隊
廃棄都市部で待機。
今後の捜索範囲を検討中
ストライカーズチーム+鋼の追跡者
ティアナ、トラウマから復帰
首都クラナガンへと移動中
黒の艦長+緑の司書長
孤独の剣士との予期せぬ遭遇に動揺
黒の艦長の酔い→完全に冷める
今後の争奪戦への巻き込まれフラグ成立
最強のメイドさん
のんびりお風呂タイム
(チャージ5%までダウン)
2/14終了まで
―3時間02分―
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