side良介


俺達は地下道を進んでいた。
水先案内人バルディッシュのおかげで迷うことなく順調に進んで行くことが出来た。

……暇だな。何か面白い話でもするか。
「フェイトは知ってるか?こういう所には必ず一つか二つ、付き物の話があるって事を」
「何があるの?」
「………怖〜〜い話、怪談だよ」
「かっ…怪談……!?」
"カイダン?何だそれ?゛

古今東西、必ず存在する怖い話。
常識では考えられない不可思議な現象はそれ襲われた人の心を無残にも引き裂いていく。

日本なら平家の怨霊やら化け猫やら。
化け狐なら知り合いがいるな。
西洋なら夢の中で襲い来る爪男やホッケーマスクの不死身の殺人鬼。
知ってるか、あれって第二段からなんだぞ、出てきたの。
「それって怪談じゃなくてホラー映画じゃない」
そんな事言われても、海外のホラーってうるさいからなぁ、いちいちギャーギャー叫ぶなよ。なぁ?
"話逸れてるぞ?"
「戻さないでよ!?」

道すがら日本の伝統、百物語をフェイトに聞かせながら進んで行く。
やがて一回り開けた所に着いた。
ちょうど十字路のように道が重なっている。

「大抵こういう所で曲がるとその背後から白い顔の女の悪霊が襲い掛かってきて――」
「アーッ!アーッ!!」
"そんでそんで!?"
二人とも興味心身で俺の話に耳を傾けていた。
「傾けてないよ!」
スルーして話を続けよう。

「助かるために抵抗するんだけど…いきなり目の前に鬼火が出てきて――」
"オニビってあれか?"
そうそう、あんな感じに赤々と……?

あれ。どなたですか?

十字路に差し掛かった時、右側の奥に何かが見えた。
そして次の瞬間、俺とフェイトは互いを突き飛ばした。
一瞬遅れて炎龍が襲い来る。
通路を薙ぎ払い、削り、破壊する。

激しい揺れと共に天井が崩れ落ちた。
クソ、フェイトは瓦礫の向こうか!?

「無事か、フェイト!?」
(こっちは何とか…リョウスケは?)
「こっちも大丈夫だ」
(良かった。でもいったい何が…?)

"さっきのってもしかして…?"
おそらく間違いないだろう。
そして確信は無くてもフェイトも感じているはずだ。

俺は暗闇に叫んだ。
「そこにいるんだろう…出て来い、シグナム!!」


少しして、ガチャ、ガチャ、という具足の音が近づいてきた。

やはりそうだった。
その手に炎の魔剣を携えた、ヴォルケンリッター烈火の将、シグナム。
剣を振るえば一騎当千の実力者。
魔力を炎に変えて敵対するものを焼き払う。
味方にして頼もしく、敵にしてこれ程恐ろしい相手はない。

「一撃、かわせたか…ミヤモト……」
「ふん、わざと外したんだろうが。でなけりゃ炎を見せて注意なんてさせないだろう?」
闇の向こうからの飛龍一閃。
あの時、炎に気が付かなければこちらは一撃で倒されていた。
それほどに完璧な不意打ちだった。

正々堂々を好むシグナムらしくない、な。

とすれば狙いは…
「俺とフェイトの分断か」
「その通りだ。
私が望むのはお前との一対一の戦い。
テスタロッサに邪魔をされたくなかったのでな」
「一対一!?そのボロボロの状態でか…?」
シグナムはなのはと5時間も戦い続けたせいで体力も魔力も底を尽き掛けている筈だ。
その状態で一騎打ち。何のために?
「私は…お前という人間が分からなくなったのだ、ミヤモト…」
ハイ、何ですか突然?
「あの時…お前が言った言葉を私は信じた…だが、今はどうだ?
主の想いを受け止めるどころか部隊の新人にギンガ、果てはナンバーズにまで…。
まさか…本当に十歳年下にしか興味がないのか…?」
「何の話をしてるんだお前はぁあぁぁ!!?」
だが、シグナムの中ではちゃんと繋がっているようで、俺の叫びは流された。

「だから、もう一度…お前と戦い、真意を見たい。
剣を抜け、ミヤモト…!」
理解できない内に話は終わったらしい。
よく分からんが何かを確かめるために俺と戦う、という事か?
はやてがどーの、てのが気になるが。

「一つ聞いておく…お前が勝ったら…俺をはやての所に連れて行くつもりか?」
「いや…これはあくまで私個人の話だ…これ以上話す事はない。
こちらもさっきの一撃でカートリッジを使い切った。
体力も魔力も残り少ない…ゆえに言っておく。
この勝負…一合でつけるぞ!!」
一合…一発勝負か…。
そういうのはキライじゃないぜ。

相手の真意が分からんのは怖いが。
「アギト…ユニゾン解除だ」
「――っ!」
"えぇ!またかよ!!"
「――頼む、一騎打ちを望んでる相手に二人がかりは卑怯だからな」
"それ、リョーが言う台詞じゃないぞ、絶対に"
うっせぇ!

渋々アギトはユニゾンを解除する。
「いいのかそれで…?それとも、今の私にならユニゾンなど必要ないか?」
そうじゃない…真意が分からないなら分かる所に踏み込むだけだ。
そのために素の状態でないと意味がない。そんな気がした。

逃げるのは簡単だ。
シグナムは背後から切りつけるような奴じゃないからだ。
だが、それをすれば俺達の関係はゼロになる。
二度と変わらない、永遠のゼロに。
昔の俺ならきっと平気だったろう。が、今の俺はそうじゃないらしい。

「――行くぜ」
俺は剣をゆっくりと抜き放ち、正眼に構える。
「それは――レヴァンティンに似ている…?」
「コイツはレヴァンティンのデータを基に作られるカスタムデバイスの試作品だ。
言うなれば…レヴァンティンの子供だな?」
「フッ…レヴァンティンの子供か…。
なら、親として負けられんな……レヴァンティン!!」
シグナムもまた正眼に魔剣を構えた。


矮小な俺の魔力ではどれだけやっても勝ち目はない。
武器の差も、腕の差も、魔力の差も比べる必要もない。
だが、だからこそ踏み込む。
得るべきは勝利ではなく、もっと違う何か。

それを知るために、俺も一撃に全てを賭ける。
「頼むぞ…相棒!」

一瞬、誰かの声が聞こえた気がした。
とても頼もしい何かの声が…。



ぱらぱらと天井から小さな破片が降り続けている。
その中で、一つ大きな物が落ちようとしていた。

徐々にすべるようにずれて行き……ついに落下した。
カツーンという音が響いた瞬間、弾かれたように俺達は踏み込む!


「破ぁああああああ!!!」
「おりゃぁああああ!!」


気合と共に袈裟懸けに二つの刃は振り下ろされた。


キィイイイイイン……!
……カラァ…ン………


澄んだ金属音が響いた。
俺の剣は中程で消えていた。
消えた先は…最後に音のあった場所。

「クッ…」
やはり、どうしようもなかったか。
今の一撃は今までの中でも見事な一撃だった。
悔いはない。

「……見事だ」
俺は顔を上げた。
シグナムはレヴァンティンを見せた。
堅牢なアームドデバイス。その刃が微かに欠けていた。


「安心したぞ。あの時と変わっていない…いや、もっと強くなっている……」
何の事を言ってるんだ?
「昔…お前は私にこう言ったな…。
『主はやての為に戦う自分は、世界一強い』と。
そしてお前は公言し、証明して見せた…。
『夜天の主に愛される器である事』を……」

・・・・・・・・・は?
何ですか、その歯が浮く台詞は?
俺が言った……?そんなのを…?

記憶を掘り返していく……。


……
………あ。

言ってた。
あの一部じゃハーレム事件とか大規模騒乱未遂事件とか色々言われてるあの事件の時に!!

ま、まさか…あの時のてきとーブッこいたのを本気にしてたのかぁ!?

何、その壮大な前振り!!

「だが人は変わる…それはお前も例外ではない…。
だから確かめたかったのだ、お前の今の心を……」

冷や汗だらだらな俺を置いてけぼりにしてシグナムは語り続ける。

「だが、安心した。あの時とお前の想いは変わっていない。
剣がそれを証明している。
迷いのない一撃…私の負けだ……」
そら、変ってないさ。
うむ、間違ってはない。


……もしかしてはやても信じてんのか?
あの日の戯言を?


……うわぁあああああっっ!!
あの日の俺をぶん殴りてぇえええ!!!
迂闊過ぎるぞ俺!!
もっと言葉を選べぇーーーーーっ!!


「ではな。私は戻る。せいぜい逃げてみせるがいい」
「そ…そうか……」
心の中でもだえ苦しみながら俺は何とか自分を取り戻すことが出来た。
「でも、大丈夫なのか?はやての怒りを受けないか?」
「いつまで子供だと思っているのだ?主はやてももういい大人だぞ?
ものの分別ぐらい弁えているに決まっているだろう?」

そうか〜?まぁいい。
「じゃあな」
「あぁ……」

それだけを言い残しシグナムは去った。
これがアイツの最後の姿になる事をこの時の俺は知る由もなかった。
「不吉なナレーションいれるなよ!?」
「いや、意外と真実かもだぞ、アギト…」


俺は折れた剣を見つめた。
圧倒的な性能差のレヴァンティンに一矢報いた功労者。
いつか、その身に眠る魔剣の遺伝子が目覚める時、
いつか、めぐり合うべき主と出会う時、
お前はきっと名だたる名剣となる。
俺が保障しよう。
だからそれまでは…

名も無き剣よ、静かに眠れ。

なーんてな。


すいーとうぉーず りざると

現時刻 19:24

地下道移動中

取得アイテム

痺れ薬入りクッキー(7枚)
新しい服(着物風)
アギト
Aデバイス『無銘』→折れる
が、レヴァンティンに一矢報いる
未来の魔剣フラグ
が、今回には関係ない

シグナムVS宮本良介
戦闘終了
勝者 宮本良介
(変らない思い)

金色の死神
一旦分断されるものの再び合流
が、かつての事件で知らなかった事実を知り、怒りが静かに燃える

白の魔王
いきなり向こうで起きた崩落に驚く
何かを感じる

鉄槌の騎士
同様

夜天の王
同様

盾の守護獣
「始まったか…」
と、かっこつける
「何がや…?」
盾の守護獣包囲網完成
フラグ完全成立

剣の騎士
意気揚々と帰還→目の前で閃光
光の中に盾の守護獣
恐怖を覚える

地上部隊
いきなりの事にフリーズ

ストライカーズチーム+鋼の追跡者
彼方の閃光に驚く
ティアナ、トラウマ発動

最強のメイドさん
食後の一服
(チャージ10%までダウン)

2/14終了まで



―4時間36分―






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