Sideアリサ
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遂にこの日が来た。
時刻は午前9時35分
我が家のご主人様にとっては、悪夢の一日である。
(全く・・・、とっとと相手を誰か一人に絞らないから毎度毎度こういう事になるよ)
そんな事を、少し遅い朝食の準備をしながら、私、アリサ・ローウェルは考えていた。
「まぁ、去年はさすがに見かねたから、しっかり釘を刺しておいたし、そんな酷いことにはならないと思ってたんだけど・・・」
どうも、家のご主人様は、とことんトラブル体質らしい。
朝、外から物音がして、目が覚めて外を見てみると、ガジェットらしき物体に捕獲され、どこかへと飛んでいくリョウスケがいた。
ガジェットと言うことは、JS事件で敵対し、今はリョウスケの良き友人であるジェイル・スカリエッティ、そしてナンバーズの子達が絡んでいるのは明らか。
「去年、なのは達と交わした「-今後一切、夜討ち朝駆けをしない-」という約束、ジェイルやナンバーズの子達にはしてなかったわね・・・。」
そう気づいたが、後の祭りである。
「まぁ、あの子達に迷惑かからなきゃいいけど。」
そんな事を考えてると、リアルタイム通信が届く。
調理の手を止め、通信を開くと、そこに映るのは、ご主人様の親友である、クロノ・ハラウオン提督であった。
「朝早くからすまない。アリサ。」
「別に構いませんよ。それで、どうしたんですか? まぁ、想像はつきますけど・・・。」
「いや、彼はどうしているかと思ってな。今日は・・・『あの日』だろ?」
少し困り気味に話すクロノ。まぁ、実際困っているのだが。
そう、彼も、ご主人様のバレンタインデーの被害者と言える。
それも当然。毎年毎年「彼女達」がリョウスケをめぐって起こすバトルの後始末をしているのだから。
去年に至っては、リンディ提督、レティ提督と共に、説教を担当し、
最後には「頼むから、もう少しだけでいい。自重してくれ・・・。」と泣きながらお願いしていたっけな・・・。
提督の威厳とか台無しである。
「リョウスケなら居ませんよ。またいつものレアスキルが発動したみたいで。」
「また・・・か?」
「えぇ、また。」
私は、朝に起きた事を説明する。
あ、頭抱えた。
「今年は・・・、どこまで行くと思う?」
「まぁ、JS事件の時よりは小規模じゃないでしょうか?」
「それでも充分大事な気がするんだが・・・。いや、もういい。それならそれで、こちらもやることがあるので、そろそろ失礼する。」
「はい、頑張ってくださいね。あんまり、エイミィに心配かけちゃダメですよ?」
「それは、今日の彼の行動次第になるだろうな・・・。」
私の言葉に苦笑しつつ、通信を切るクロノ。
通信が切れて、少し静かになったリビングで、私は少し考える。
こういう時、本当にリョウスケは友人に恵まれていると思う。
もし、そうでなければ、クロノのように、なんだかんだ言いながらも世話を焼いてくれる友人達は出来なかっただろう。
リョウスケ専属のメイドとして、彼らには感謝してもしきれないと常々思う。
(まぁ、本人は「俺は一人がいいんだっ」とか言ってたりするけどね。)
子どものような顔をして反論している孤独な剣士を想像して、つい、クスリと笑ってしまう。
「さて、とっととご飯食べて、私も準備しなきゃ・・・ね」
そう思い、中断していた朝ご飯の準備を再開する。
今日は、バレンタインデー。一人の信念を貫いた牧師の命と思いを代価に得られた素敵な日。
普段言葉出来ない『大好き』という気持ちを、それを伝えたいと思う人の背中を、少しだけ後押ししてくれる、とても素敵な日。
そしてそれは・・・、私にも言えることである。
すいーとうぉーず りざると
Sideアリサ
現時刻9:40
孤独な剣士の自宅(リビング内)
取得アイテム
美味しい朝食
(トーストにハムエッグ。サラダ)
クロノの神経性胃炎悪化フラグ。
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