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ついにこの日が来た。

時刻は5:00。

すでに悪夢の一日は始まっている。
去年、日にちが変わった瞬間、シャマルの奴が夜討ちを仕掛けてきて、ヴィータがそれに遅れること数十秒。
フェイトがそれに遅れること数秒。
あっという間にパワフル戦闘開始。

開始三分、SLB炸裂→なのは登場。
一分後、終焉の笛が鳴り響く→はやて登場。
はやてになのはが
「いきなりラグナロクなんて撃つ〜!?」
と突っかかり
「オメーだってSLBぶっ放してきたじゃねぇか!」
とヴィータに突っ込まれた。

その後、最強のメイドさんに全員しこたま怒られ、提督たちにも怒られ…
そしてなぜか俺は留置所に入れられた。

その時、アリサに全員約束させられたのだ。

-今後一切、夜討ち朝駆けをしない-

と。
つまり、朝と一般的に言われるまでの時間は安全なのだ。
大体9時ごろまでが安全圏。

俺は残り4時間で誰にも見つからない場所へと逃げなければならない。
特にシャマルだ。あれに見つかると魔力サーチであっという間に居場所が掴まれてまう。
ヤツの索敵能力は飛び抜けているからな。


やはりここはクロノの船にでも潜り込むか。確か今、本局に戻っているはずだ。
あそこならそう易々と来ることはできまい。

そうと決まれば早速……。

ワシッ!

ん?何だ、このワイヤーみたいなのは?俺の体にグルグル巻きついてやがる!?
上を見やる。

ガジェットU型にT型の触手がくっついたヤツが浮いていました。
そのままがジェットはすい〜っと浮上。
俺は宙ぶらりんのまま運ばれていきました。


そういや、数の子にはしてなかったな…約束。
ドナドナが聞こえるのは何でだろう…?




「わざわざご足労頂感謝します」
ほう、お前はガジェット使って人をさらってくる事をご足労と呼ぶのか。
「それは失礼しました」
そう言ってウーノは頭を下げた。

ここはDr,スカのアジト。その中にあるウーノの私室だ。
室内を見回してみるがなかなかどうして性格が見える。
女性らしいアイテムの定番、ぬいぐるみなんて置いておらず、
あるのは様々なファイルや書籍の詰められた本棚と事務作業を行うためにデスク。
部屋の端には俺の座っているソファーと目の前には少し背の低いガラスのテーブルがある。
反対側には皺一つない白いシーツが掛けられたベッド。

一言で言えば簡素。だが、味気無い訳ではない。
どれもシンプルながら機能美とインテリアとしての美も兼ね備えた一品ばかり。

出来る女の部屋。とでも言えば分かりやすいだろうか。

「で、俺を何で連れてきたんだ?」
「実は宮本様に一つお願いがあります」
う、嫌な予感がする。
何せ今日はあの日だ。何が起きても不思議じゃない。

俺はいつでも逃げられるよう構える。

「これを食べてみて欲しいのです」
そう言って出したのはチョコレート…ではなくクッキー?
「実はあなたが菓子作りの名人と聞いて…一つアドバイスが欲しいのです」
名人って…俺が作れるのはアイスぐらいなもんだぞ?
「それでも私よりは詳しいでしょう?生憎本を頼りにするのも限界があって…」
う〜む、このクッキー所々に焦げがついてる。
それに形も少し歪だ。

でも何でいきなりクッキー作りなんか?
「市販されているものばかりではルーお嬢様も飽きられてしまいますから」
つまり、ルーテシアのために手作りクッキーを焼こうとしたわけか。
確かにコイツはルーテシアに対しては結構甘いからな。


俺はボリボリと頭をかいた。
馬鹿らしい。よく考えれば目の前にいるのはウーノだぞ?
メガ姉さんでもなけりゃモグラでもない。
それにバレンタインは地球の風習、チョコ云々は日本限定の話だ。
ウーノがわざわざそんなの調べるだろうか?
そいつは流石に自意識過剰ってもんだ。
それはウーノが俺にそういう感情を持ってるなんていってるのと一緒だ。
それはないな、絶対に。
面白半分で首突っ込むタイプでもないし。

俺が悩んでいるとウーノは紅茶を入れてくれていた。
いい香りが鼻腔をくすぐる。

早速俺はクッキーを一つ口に放り込む。
見た目はともかく、味はなかなかだ。
やはり焦げの味がするがこれは焼いた時の温度が高かったからだろう。
それ以外で問題はない気がした。

「これなら問題ないだろう」
「そうですか?」
「後は温度ぐらいじゃないか?」
「でも焦がさないよう気をつけると今度は生焼けになってしまいますし…」
「そこは生地を少し薄くしてみるとかで何とかなるんじゃねえか?」
「なるほど…」

そんなこんなで時間は過ぎて…
もう9:35となっている。
ここに来てからかなりの時間が経っていた。
余ったクッキーはウーノに包んでもらった

よし、そろそろ逃亡を開始しよう。
そう思った矢先…
「おろ…?」
どこかの流浪人みたいな台詞を吐いて俺はソファーにへたり込んでしまった。
くそっ、体が…痺れる!?

どういうことだ、ウーノ…て、ウーノも倒れてる!?

何だ、この状況は!!

「ほぉーっほっほっほ!!!」
こ…この馬鹿笑いは!!
「め…メガ姉さんか!!」
「クアットロ…?」
バーンとベッドをひっくり返して現れたクアットロ。
お前、いつからいたんだよ?
「や〜ん、そんな事はどうでもいいのよ」
良くないだろう。ウーノの目が真ん丸く見開かれてるじゃねえか。
「あ〜、幾ら愛おしい殿方を待つためとはいえここに隠れてるのは楽じゃなかったわ〜」
ん?何だその言い方?俺が来ることを知ってて隠れてたのか!?
「だから〜、ローゼンちゃんをここに連れ込むように仕向けたのはアタシなのよ〜?特製の痺れ薬をクッキーの材料に混ぜたのもアタシ。
一枚じゃ何にも起きないけど、三枚食べると効果を発揮するのよ〜。もう、計算が大変だったんだから〜」
一人ぺらぺらとしゃべるクアットロを睨みつけるウーノ。
「クアットロ…姉を利用したの…?」
お、流石に怒ったな。
「…成長したわね」
おい。
「ふふ〜、ありがとうお姉さま。さて、ここからはこのクアットロがお相手させていただくわぁ。勿論…ウフフフフ〜」
え〜い、よだれを拭け!!
何故かコイツとシャマルが被るな。
方向性が一緒だからか?
クソ、逃げなければ!!

「む・だ・よ。一度効果が発揮されたら一日は持続するんだから。さぁ、素敵でアダルトなバレンタインを過ごしましょ〜♪」
何?
コイツ…バレンタインの事知ってやがる!!
クッ…ダメだ、足に力が入らない。
クアットロはゆっくりとこっちに近づいてくる。
さながら自分の巣にかかった獲物を狙う蜘蛛のように。
うわ〜、ピッタリな表現だな。

「何か、すごく失礼なこと考えなかった?」
「いや…?」
そんな事よりどうやってこの状況を脱する!?
考えろ、宮本良介!


……
…………
……そうだ!

ここにはあいつがいる!
危険な賭けだが目の前の蜘蛛よかマシだ!
俺は出来るだけ息を吸い込み、叫んだ。

「セイーーーーーーーーン!!!」


その瞬間、天井を抜け、セインが現れた。
「ローゼーン!!」
「っ!?セインちゃん!!」
来たか、モグラ!
セインは俺を抱えてそのまま床にダイブする。
「させない!」
クアットロが飛びつこうとした時…

ガンッ!!

思いっきり顔面をテーブルに強打した。
ウーノの手がクアットロの足を掴んですっ転ばしたのだ。

やっぱ怒ってたのか、ウーノ。
その時、俺の手元に何かが飛んできた。

それはウーノが包んでくれた痺れ薬入りクッキーだった。
(これは使えそうだな)
それを懐にしまうと同時に俺達の姿は床に消えた。




すいーとうぉーず りざると

現時刻9:35
スカリエッティのアジト内

ウーノ、クアットロ脱落
(痺れ薬と顔面強打による気絶)


所持アイテム
痺れ薬入りクッキー(12枚)


2/14終了まで残り…


−14時間25分−







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