「今回持って来たのは、ヴォルケンリッターのひとり、鉄槌の騎士ヴィータからグラーフアイゼンやで!」
「なあ、はやて。 最近気づいたんだけどよ」

 前回の傷も癒えぬまま、もう次の武器の御登場。
 まったく、よくもまあこんなに暇な時間があるもんだな、部隊長さんよ。

「最近“俺に似合う武器”じゃなくて、“俺が求める剣”になってないか?」

 第1回のころはいきなり木刀から入ったが、それから今までよくこれだけいろいろな武具に巡り会ったと思うよ、ほんと。

「んー、そうかいな? まぁ、ええやん。 ほら、今回は世にも珍しいハンマー型やで、もえる?」

 随分と、いいかげんだな、おい。
 あとその紹介の仕方だと、まるでヴィータが珍しい生き物みたいだぞ。
 燃えるかどうかについては・・・、ハンマーねぇ、やっぱり“珍しい”、か?

「もうすっかり見慣れちまったけど、ヴィータって凄いアクのある武器使ってたんだな」
「なに言うてんの、良介。 小さい子がこういうアンバランスな武器を使うのが萌えるんやん」

 あぁ、“もえ”ってそっちのほうね。
 アンバランスが大切なら、俺が持っても意味無くない?

「何事も挑戦やで、良介」

 あの優しかったころのお前はどこにいったんだ? はやて。

「ご希望通り、取りあえずは持ってみたぜ。 どうだ?」
「うん、恐いくらいに似合ってるよ、良介」

 そうかい。 褒められてるのに嬉しくないのは何でだろね。

「まるで、目つきの悪い大工の兄ちゃんみたいやわ、ほんま」

 前言撤回。 ぜんぜん褒め言葉じゃなかった。
 後で、大工関係者に謝っとけよ。

「まぁま、似合ってることは似合ってんねんから、あとは実用性やね」

 実用性ねぇ。
 ハンマーを武器として使うとしたら、どうなるんだ?

「やっぱ、振りかぶって、ゴンッちゃうか?」

 身も蓋もない戦い方だな。 でもまぁ、そうなるか。

「あとは、ヴィータみたく、何か物を打ち飛ばすとか」
「俺にゲートボールをしろってか? バットを使った方がまだマシだぜ」

 使いこなせば強力なんだろうか、やっぱり素人がどうこうできる代物じゃ、ねぇな。

「あはは、ヴィータ。 振られてもうたね」

 どうしてそういう結論になるんですか!? はやてさん!!?

「リョウスケェェェーーーーーーーーーーーーー!!!」

 げ! もう来やがった!?

 ちくしょう、今回は絶対無傷で帰ってやる。

「今日は良介の好きな料理やで、遅おまで遊ばんと、早よ帰ってきいや」

「覚えてろよ、はやてぇぇぇ!!」
「あたしの武器が使えないって、どういうことだよ、リョウスケ!!!」

 グラーフアイゼンを、“似合う”のコーナーに置きながら、
  のほほんと笑うはやてを横目に、これでもかっていうくらい逃げ回りました、はい。







ついさっき、二本の連絡があった。
なんでもなのは達機動六課やナンバーズ達が、全員重傷をおったらしかった。
そんな有り得ない事を嘘と決め付けたら、(六課の方は)ニュースで報道され、
(ナンバーズ達は)ジェイルとゼストの旦那が包帯巻いてボロボロな姿で連絡をくれた。
完全にパニックに陥ったが、アリサのポルターガイストアタックで正気に戻った俺は、最初に六課が入院している病院に向かった。

まあ今ナンバーズ達は全員眠っているから、後で行けば問題ないな。

とりあえず、なのは達隊長陣はベットから起き上がれないが元気そうで、フォワード陣は意識は回復していなく、
シャマルは俺に抱きつこうとして状態悪化。いま緊急治療の最中だ。
落ち着いたところで、一緒に見舞いにきていたギンガやカリムにシャッハ、
仕事を放り出して無理やりやってきたユーノとクロノを交えて、はやてから事情を聞いた。

「んで? 何をやらかしたらこんな大惨事になったんだ、はやて?」
「いやな。良介の為にある剣士の剣を奪……もとい拝借しに行ったらな。逆に返り討ちにあったんや」

原因が俺にあるとわかったら周囲に殺気が――とくにギンガ、シャッハ、クロノから――漂い始めた。
ちょっとまてよ!? 俺は誰も武器を探してくれとは一言も頼んでないぞ!! 
あいつ等が勝手にやった事なのに、なんでこんな目にあわなきゃならん!!

「ちなみに誰の剣を狙ったんだ?」

俺はなるべく冷静にはやてに尋ねた。ちょっとばかし冷たい汗がでてたが、そんなのかんけいねぇ。

「ジュラキュール・ミホークの黒刀【夜】や」
まてい!? まさかあの【王下七武海】の一人で、『鷹の目』とか呼ばれているあのミホークか!?
「いやー。まさかなのはちゃんの全力全開のスターライトーブレイカーも真っ二つにするとは……。我ながら甘かったな」
その言葉に絶句する一同。まあ確かにあのオッサンけっこう強いし、ガレオン船を真っ二つにしたからな。
しかしあのなのはより強かったのか。ゾロはあいつに勝てるのか?
「しかしよく無事に帰ってこれたな」
「なんか突然『ひまつぶしにもならん』とかいって先に向こうが帰ったんや。あの時はほんま命の危機を感じたなぁ」

さらに話しによると、フォアードおよびシグナムとヴィータ相手に玩具のナイフ見たいな短刀で相手にして、デバイス破壊。
さらに隊長陣は黒刀を使ったが、六課襲撃以上の傷を負わされたらしかった。
当然またレヴァンテインを破壊されたシグナムと、
今回初めてグラーフアイゼンを破壊されたヴィータは落ち込んでいたし、
今回付き合ったロングアーチの面々も精神的に鷹の目がトラウマに残ったようだ。
ちなみにさりげなくナンバーズのことをこっそり聞いたら、あっていないらしく逆にナンバーズ達の重傷に驚いていた。

とまあシャマルの治療が終ったところで俺は病院を後にし、誰もついて来ていない事を確認しながらジェイルのアジトに向かった。
しかし六課がミホークにやられたなら、ナンバーズ達は誰にやられたんだろうか?







時間は少し遡る。事件はナンバーズのアジトで起こっていた。

「さーて、ローゼンの元にいくっすかね♪
きっと『やっぱり君(の武器)が一番だよ、ウェンディ』とか言って口説いてくれたりするっすよ!」

今日もどでかいサーフボードモドキを担ぎ、
意気揚々と一歩踏み出すとがくんとまるで足が縫い付けられたかのように止まった。
アジトをこっそりと抜け出そうとするウェンディを掴む手があった。

「うぇっ!?」

それは地面から生えていた。
それはもう地獄の亡者の腕と言われてもしょうがないようなビジュアルである。
幾らこんなこと出来る人物に心辺りがあるといっても一般人だったら卒倒ものだろう。
ただでさえ薄暗い穴倉の中だから余計にホラー度が上がっていること請け合いである。
まあ当然、彼女らに一般の常識や感性をもつ知人などできようはずも無いのだが。

「な、何の用っすか、セイン姉?」
「何処に行く気?」

問答無用な問いかけだった。
足を掴んでいるのは嘘をつけばそのまま地面に引きずり込むという意思表示だろうか?
そのくらい目がマジで、据わっていた。

「あ、あー、ローゼンのとこっす。ローゼンが最近自分に合った武器を探してるらしいっすから。」

ずぶずぶと足がミリ単位で沈み込んでいくと言う新感覚の脅迫をされたウェンディは泣く泣く話した。
それによって沈むのは止まったが、更に目が据わったような気がするから危険度は変わらないが。

「なら、私が行く。ローゼンを最初に此処まで連れて来たのは私だもん。」

だが、そう言ったセインにウェンディは頭上に?マークを浮かべる。

「いや、でもセイン姉は武装一切無いじゃ?」
「うっ・・・・・・・」

そう、セインには武装が一切無かったのだ。
幾らこそこそ隠れたり、覗き見したり、ストーキングするのが得意でも、
今回の題目が武器である以上セインは一切関係なかった。

「なら私が。ローゼンは私のツインブレイズを気に入っていたはずです。」
「う、ディードいつの間に・・・・・・。」

そういってウェンディが振り向くとそこにはナンバーズの主だった面々が勢ぞろいしていた。
ウェンディは思わず絶句する。

「ローゼンちゃんは私のシルバーケープと相性がいいと思うなぁ〜。私と性格似てるもの。
基本戦術が戦わずして勝つ、なんてとこもそっくりじゃない?」
「ふん、あの男の能力なら私のインパルスブレードも使えるのではないか、まあ興味は無いが。」
「やはりご主人様程の爪技使いなら私のピアッシングネイルが一番ですわ。」
「今度こそ私が正確な使い方を。」
「いや、やはりここは私にやらせてもらいたい。いい加減あいつの印象を覆さなければ。」
「ローゼンは私の武器を一番気に入るはず。」

ディードを皮切りにして一斉に誰の武器が一番に合うか、誰のが一番気に入るかの口論に発展する。
誰もが自分の武器が一番だと思い、思い思いの主張をする。

「結局さー。」

アギトが傍から見ていてふと声を出す。
ナンバーズの面々は何故かその一声でぴたりと喧騒がやんだ。
何か、予感があったのかもしれない。
この一言がこの議論に決着とつける糸口になるだろうという予感が。

「誰が一番強いんだ?」

『・・・・・・』

今度こそ、喧騒は絶無になった。
互いが互いを牽制し合い裂帛した空気が流れる。

「それなら、私だろう。私が一番戦闘をこなしてきたという自負がある。」
「だが、私だって負けてはいないはずだ。単体でSランクを落とした実績もある。」
「私の爪、舐めないでくださいね。私の爪をなめなめしていいのは私とご主人様だけ。」
「遠距離なら私が勝てる。」
「二人の恋のため、負けないっす!」
「情報握られてお姉さんに勝てる〜?」
「オットーとのコンビで負けることなどありえません。」
「後発型の私は基本能力ではお姉さまたちより上なはずです。」
「いくら姉さんたちでも負けるつもりはねぇ。」

殺気が漂い始める。
それぞれ違いはあれど自負と、プライドと、ある男への思慕が爆発していた。

「ありゃ、地雷、踏んじまったかなぁ?」

その濃度の極端に濃い殺意にアギトは顔を引きつらせて少しずつ後ずさる。
正直、ディバイスでなくただの武装であるなら彼女がむきになる必要は無いのだ。
そして、機を見るとその場から全速力で離脱した。

『・・・・・・』

一通り主張が終わった後には沈黙。今度は牽制し合いの沈黙ではなく、機を窺う沈黙。
誰もが相手の隙を探っている。全てのナンバーズたちは自分の獲物に手を伸ばす。

「いざ。」
「尋常に。」
『勝負!』



この騒動でドクターやゼクトはその騒動に巻き込まれ重症、ほとんどのナンバーズも戦闘不可まで追い込まれていた。
被害を逃れたのはその場に居なかったウーノと事前に避難していたアギト、
自分に武装が一切無いことをいじけたセインだけだった。
ルーテシアはそもそも留守で戻ってきてもアジトがボロボロになっていることに、
少し首を傾げただけで気にしなかったそうな。

当然、アジトに向かった良介を出迎えられたのはその面々のみで後はポッド、もしくはベットの上で身悶えることになったのだ。







作者さんへの感想、指摘等ありましたら投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。