そんなこんなで、俺に似合う剣についての騒動が続く中、ある事件が起こった。まったくどうしてこんな事に。


それはまたはやてが、
「今度こそ良介が似合う剣をみつけたで〜」
という連絡を受けて、無視しようとしたが「今回は特別にメロンを用意したる」という甘い誘惑をのみ、
六課の指定された部屋に行ったんだ。

このときにはやての誘いを無視すれば……、しかしこれもメロンの為、俺は誘いに乗った。

「うーす。はやて来たぞ」
部屋には呼び出した当人のはやてはいなく、巨大なテーブルの上に約2mくらいの片刃の大剣が置いてあっただけだったんだ。
このときに怪しんで引き返していれば……、しかしこれもメロンの為、俺は引き返さなかった。
「たくっ、いないのかよ。まあいいや、これが今回の剣か?」
まるで生き物のような材質の柄と樋、どんな鉱物にも当てはまらない巨大な刃。そしてどっかで見たような形の大剣。
このときに思い出していれば……、しかしこれもメロンの(以下省略)。
「とりあえずはやてが来るまで暇だし……、持ってみるか」
この剣に感じた魅力というか、魔力というか、呪いというか。はやてを待たずして、俺は持ってみることにした。
このと(以下略)。
とりあえず、重さは見た目ほど重くは無い。
けどずっしりと来るこの重さは、間違えなく両手剣最大級のクレイモアか、ツヴァイハンダーの類だな。
「んっ? ツヴァイハンダー?」
なんかその言葉に頭が引っかかった。しかもいやな方向に。
突然、剣が震えると剣身中間部から馬鹿でかい目玉が開いて俺を見た。
思わず剣を放しそうになるが、まだ両手で持ったままだ。目玉は心なしか邪笑みを浮かべている様に俺は見えた。
そこでやっとバラバラだったパーツが一つになって俺の記憶にある答えが浮かんだ。
生き物のような材質の柄と樋……。
魅力というか、魔力というか、呪い……。
剣身中間部から馬鹿でかい目玉……。
ツヴァイハンダー……。
そして、どっかで見たような形の大剣……。
これらから連想できる剣は……。
「これって『ソウルエッジ』じゃねーか!! なんでこんな場所にあるんだよ!?」

ソウルエッジ……『英雄の剣』『救国の剣』『不老不死の剣』など様々な噂を持つ伝説の剣だが、真の姿は『魂を喰らう邪剣』。
邪悪な意思を持ち、所有者を操るが、絶対的な力を持つが故に、
さまざまな戦士や権力者、戦争神アレスや魔界の支配者マルボルギアにダース・ベイダーなどが求め、
鍛冶ヘパイストスやハイラルの勇者リンク、ヨーダがそれを破壊しようと争ったある意味、SSS級のロストロギア。

なんでこんなものがあるんだよ!! はやてのヤツこんな危ないもんを俺に使わせようとしたのか!?
「チクショー!! とにかくはずさねーと……って、はずれねーし!?」
おまけに両手がなんか化け物――右手白天王ぽく、左手ガリューぽい――見たいな手になってどんどん身体が変わってきてるし!!
「ぐっ、ああああああああああああああああああああああ!?」
痛!! 体中がトリプルブレイカー並のを時間差でくらっているように、痛みが次から次へときやがって来る!!
【……くっくっくっ、ようやく我の望む新たな器が手に入ったわ……】
頭に響いてきた以下にも超悪者ぽい響きにセリフ。まさかソウルエッジの意思か!?
【この身体は我がありがたく使わせてもらう!! 貴様は我の内に眠るがよい!!】
冗談じゃね!!と、思ってたが段々意識が無くなってきた。くそっ!?
アリサ!!
なのは!!
フェイト!!
はやて!!
ヴィータ!!
シグナム!!
ミヤ!!
アギト!!
リン……!!
「我が闇に堕ちよ!! そして贄となれ!!」
最後に俺の声が聞こえたと共に、俺の意識は闇に堕ちていった。





『ククク…ついに…これで我は不滅の存在となる…』
邪剣に全てを取り込まれ、その邪悪な意思を口にする良介。
当初、八神という強大な魔力を持つ人間を乗っ取ったが、その記憶の中に邪剣が望む存在があった。

宮本良介。

彼こそ己の器に相応しい存在だった。
八神を使い邪魔者を排除し、彼ををおびき寄せ、そしてついに手に入れたのだ。
最早、邪剣に恐れる物などなかった。
『ククク…ハーッハッハッハ!!!』
「何がそんなに面白いのかな?」
『ッ!?』
声にハッとしてソウルエッジが振り返る。

そこには一人の男が立っていた。
引き締まった無駄のない体躯。
全身は黒を基調としたコーディネートでその背と腰に二振りの刀を差していた。

『キサマ…何者だ…?気配がまるでしなかった…?』
「別に大した者じゃない。ただ、所用を片付けにきただけだ」
『何…?』
良介の手がソウルエッジを強く握り締める。
「邪剣ソウルエッジ。その体から出て行ってくれ。そしてここで滅びてもらいたい」
『何を戯言を…』
「戯言ではなく本気、なのだがな…!」
男の言葉が終わる前に良介の体が男の前に現れた。
目にも止まらぬ踏み込み。巨剣が唸りを上げて振り下ろされる。
だが、軽いステップでその一撃を男は難なくかわす。
「ふん、不意打ちとはやってくれるな」
『だまれ、我は永きに渡って求めてきた器をようやく得たのだ。それを手放す事などできぬ話だ…』
「彼の力、《法術》を使って自分の願いを叶えるつもりか?」
『――!?』
「彼の力は他人の願いを叶える力。だが普段はその魔力の低さで使うことは出来ない。
だが、邪剣の魔力があれば使用可能になる。
そしてソウルエッジが彼を支配しても彼と自分は別の存在、つまり他人。願いを叶える事は出来る、という算段なのだろう?」
男の言葉に邪剣は沈黙する。
彼の言葉、その全てが正解である事を示していた。
『キサマ…!』
「だが、その野望にも時間が必要のはずだ。彼の精神を完全に抑えるために。
そうはさせない。ここでその邪心ごと消し去る!」
男の手が双刀に伸びる。
『フフフ…我を消し去る…?そのような事、出来よう筈もない』
「さて、どうかな?お前は知っているはずだ、邪剣在る所…」
剣がゆっくりと鞘から――
「霊剣、在り…と!」
抜き放たれた。
途端、凄まじい魔力が男から放たれる。邪剣とは正反対の聖なる力。
邪剣に動揺と恐怖が走る。
『バ…バカな!その剣は人間の手にはけして届かぬ地へと消えた筈…!何故ここに…!?』
「だが、現にここに在る。お前を滅ぼすために、な」
『グッ…ならばここでその忌々しい剣を滅ぼしてくれようぞ!!』
「ふ…遅いな」
『何…?』
「もう遅い、と言った」

ピシッ!

『――っ!!?』
刀身に亀裂が走った。
「さっき抜いた時に四撃、打ち込ませてもらった。もう壊れるのを待つばかりだ」
『そんなバカなっ!?…キサマァ!!何者だ!!』
「そうだな…冥土の土産だ。流派と技名ぐらいは教えておこう。
我が剣…永全不動八門一派、御神不破流…御神の剣士だ。そして奥義薙旋だ。よく憶えておくといい」
『御神の剣士…高町恭也…高町美由紀…この器の中にその名はあるがキサマはいない!』
「それはそうだろう。彼とは会ったことがないからね…というより会えないさ…」
『…!?キサマ…まさか!!』
「死者は黙して語らぬものだ…」

ビシィ!!

さらに亀裂は大きくなる。それは良介の変異した腕にも及んでいた。
「これで終わりだな」
『ク…クックック……マダダ…』
「…?」
『我が欠片が飛び散り、この世界を覆う。そして再び集い蘇る!さらに強大になって!必ずだ!!』
邪剣の刃は今にも砕け散りそうだ。
『ハーッハッハッハ!御神の剣士、キサマの血筋…必ず我が根絶やしにしてやろう!!』
邪剣が砕けた。破片が凄まじい勢いで室内に飛び散っていく。
「それは無理だな」


いま、世界は静寂の中にあった。
全ての色を失った、モノクロの世界。
その世界に邪剣の欠片は未だ刀身近くに存在した。
宙に浮いて止まったまま、動く気配はない。

男はゆっくりと霊剣を抜き、破片に次々に打ち込んでいく。

―奥義神速―

知覚する時間を早める事で相手よりもすばやく動く奥義。
時間そのものを変えると言う恐るべき技。
が、その力ゆえに負担は凄まじく消耗も激しい。
生身では数秒を数度、変えるだけで限界になる。

だが、男にはそれはない。
負担を受ける肉体はとうに失われている。
そしてその手に握られた霊剣が男に更なる力を与えている。

一つ一つの破片を確実に、根こそぎ破壊していく。

そして―

『ハーッハッハッハ!!』

世界は戻る。
『――ッ!!?』
「言っただろう、ここで滅ぼすと。欠片の一片すら残しはしない」
『馬鹿な!こんな事が…ゥグゥ!!』
良介の口から苦悶の声がこぼれる。ガクリとひざを突き、苦しみ悶える。
「どうやら彼が目を覚ましてきたようだな…?」
『グゥゥゥゥ…!!ダマレェ!!』
「さて、ここで問題だ」
『…?マテ…キサマ何を……!?』
「この開放された良介君の手に…」
男の手に握られた霊剣の一振りが
『ヤメロォオオオオオオ!!!』
「これを握らせたらどうなるかな?」
良介に握られた。
その瞬間、虹色の魔力光がほど走り、その中で邪剣が断末魔の悲鳴を上げた。
『ギャァアアアアアアア……!!!』
「霊剣と私の願い、叶えられたようだね?」
『ァァァァァァァァァ……!!』
霊剣の願い、それは邪剣の消滅。
『ァ…ァ…ァ………!』
男の願い、それは大切な家族を守ること。
『………!!』
そして法術は願いを叶える。
それがどれほどの願いでも。
良介がそれを叶えようとする限り。

光が消え、そして邪剣はついに永き旅路に終わりを迎えた。
「ぅう……俺は…?」
うわ言のようにつぶやく良介に男はそっと声をかけた。
「大丈夫、全て終わった。安心して眠るといい…」
「そうか…」
良介の口元が微かにゆがむ。そして瞼がゆっくりと閉じられていく。
「君が私のことを覚えているか分からないが、覚えていたら子供達に伝えてくれ。
たまには墓参りに来い、てね」
「……?」
良介はそのまま床に倒れ、やがて静かな寝息を立て始めた。


「終わりましたか…?」
「えぇ…」
「かの剣は…?」
「邪剣は滅びました。霊剣もその役目を終えて消えました」
「安らかに眠るべき死者であるあなたにこのような役目…果たしてくれて大儀でした…」
「いえ、こちらこそ礼を言いたい」
「え…?」
「仮初とはいえ再びこの足で大地を踏み、そして美しくなった末娘の顔を見る事が出来ましたし……
もしかしたら義理の息子になるかもしれない青年を助けることが出来ましたから。
これでようやく父親としてなのはに残せてやったと思えます」
そう言って男は頭を下げた。
「そうですか…そう言ってもらえてこちらも少し心が軽くなりました」
「それに…」
「え?」
「妖退治は武道家の誉れですから」


―ソウルエッジ事件―
この事件は公式のデータには一切残されていない。
と言うよりも全ての情報が消滅していたからだ。
肝心の接触者である八神はやてら六課全員と宮本良介からもその時の記憶は失われていた。
あるのはただ、当時、法術と思われる魔力係数とそれに匹敵する魔力が検出されたという証言だけである。


二週間後、とある墓地に十人ばかりの集団があった。
「でも、兄さんがお父さんのお墓参りをやりたいなんて言い出すから驚いちゃった」
「ん〜、俺もなんでか分からんがそうしないといけない気がしてな…?」
「これはついになのはをもらってくれるって決めてくれたのね?あ〜、今から誰を式に呼ぶか考えとかなくっちゃ!」
「おい桃子暴走すんな!恭也!テメェ何でこんなとこにまで真剣持ってきてんだよ!!」
「決まっているだろう、お前を斬るためだ!」
「ちょっと恭ちゃん!だめだって!」
「良介!これ終わったら私んちの方も行くよ〜。お父さん達に紹介せな〜」
「ふぇ、はやてちゃん!?」
「はやて、それはダメ!」
「あぁ…何で私には紹介できる両親がいないの…?」
「ヴォルケンリッターだからだろ?」
相変わらずの高町家の面々。そして後に続くフェイト達。

晴れ渡った青空にいつもの賑やかしさが響く。

その向こう側で御神の剣士は優しく笑っていた。






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