「――――良し。」

 

 

シックは自分に与えられた貯金通帳を見てみる。

―――翠屋にバイトとして入り、今では立派な店員となって数ヶ月。

なのはとの関係も良い、そして『家族』も受け入れてくれた。

……全てが順風満帆であり、シックも――毎日が楽しく、新鮮だった。

 

そして――こんな毎日をくれたなのはにお礼をしようとシックは考えていた。

 

新聞の折込に挟まれていた宝石店のチラシを見て――ある指輪に目をつけた。

シンプルだが、優しい光を放つプラチナの指輪……。

値段が6桁にも達しているが、しかし――質素な生活を送って来た為、十分に残高はある。

だから、シックは決心した。

通帳の残高が一気に軽くなってしまうが――なのはの笑顔が見れるなら、安い買い物だ。

彼は通帳を手に立ち上がり、彼の戦場へと向かう。

 

 

 

 

 

問題の宝石店へと………。

 

 

 

 

 

 

問題の宝石店へと来て、シックは直ぐに店員を呼び止めて――問題の指輪を出して貰う事にした。

にこやかに微笑みながら『かしこまりました』と一言だけ告げ、そして頭を下げて店員は指輪を持ってくる。

青い上等な布地の小さな箱に収められた――淡く優しげな光を放つプラチナの指輪……。

装飾や宝石等、一切何も無い、飾り気が無いシンプルな指輪であり、シックは何か物足りない――と思い、他の指輪を

見てみるが……やはり、宝石の付いた指輪は値段も数倍に跳ね上がっており、シックの予算では到底買えない物ばかり。

なのはには申し訳ないし、プレゼントとして送るには少々飾り気の無い指輪だが……店員が持ってきた指輪で我慢しよう。

 

そしていつか――白く輝くダイヤモンドの付いた指輪をプレゼントしよう。

 

そう心に誓った所で……。

 

 

「大切な人へのプレゼント――ですか?」

 

「――え……えぇ、そんな所です。」

 

「左様でございますか。失礼ですが、お客様の御予算等は?」

 

「まぁ、15万しか無くて……その、他の指輪とか凄く高くて、この広告にある指輪しか手が届かないから……。

 本当はこのダイヤモンドの指輪を買ってあげたいんですけど……。」

 

「そうですか――申し訳ございません、お客様。当店もお客様のご要望にお応えしたいとは思いますが――。」

 

「ええ。そちらも商売ですからね。こちらの我侭を一方的に通す訳には行きませんし。」

 

「ご理解頂き、ありがとうございます。」

 

 

ぺこり、と頭を下げる店員に対し、シックも頭を下げて――購入の手続きを続けていく。

……一通りの手続きを終えて、店員に対して封筒に入れられた今までの貯金・15万を手渡す。

一枚一枚丁寧に数え、そして二度目の確認が終わった所で……店員はにこやかに微笑みながら顔を上げる。

 

 

「はい、こちら15万円確かに頂戴致しました。」

 

「あ、どうも。お手数をおかけしました。」

 

「いえ、こちらこそ有難うございま―――あ、お客様、少々お待ち頂いて宜しいですか?」

 

「え……ええ、構いませんけど?」

 

 

そう言って店員はパタパタと奥の方へとひっこんでしまい――数分後にその手に指輪を収める箱よりも小さな箱。

恐らくサイズからして、イヤリングかピアスか……のどちらかが収められているのだろう、箱を差し出された。

『これ以上予算は無い』と言う感じの驚愕の表情で店員を見るが、店員は驚愕しているシックを見て微笑み―――。

 

 

「これはサービスです……ばれない様にして下さいね?」

 

「い、いや……貰う訳には行きませ――むぐ」

 

「あまり大きな声を出さないで下さい。……支店長にバレると色々と危険なので……。」

 

 

シックの口を瞬時に手で押さえ、先程の凛とした態度はドコに行ったのだろうか…と思える程、態度が丸くなった。

だが、丸くなったとは言え――それを馴れ馴れしく感じないのはこの店員の人格による物なのだろう、シックは思う。

 

 

「――でも、良いんですか?」

 

「大事な女の子へのプレゼントなのでしょう?……さ、私は何も見ていません。早く持って行って下さい。」

 

「……ありがとうございます!」

 

 

シックは店員の心遣いに感謝し、指輪の入った箱、そしてもう一つ小さな小箱を手に取り、何度も何度も頭を下げて宝石店を後にする。

その様子を見ながら店員は『ん〜』と軽く伸び、シックの書いた書類とはもう一枚――シックにあげた小さな小箱……。

小さなダイアモンドの付いた可愛いイヤリングの書類を書き、近くに居た別の店員に手渡す。

 

 

「『支店長』……良いんですか?また、旦那様に怒られますよ?」

 

「いーじゃない。本気で恋する男の子の背中を少し押してあげる位。

 ……はぁ、懐かしいわねぇ――思い出すわぁ、私と旦那の出会いを……そう、あれは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――シックは帰り道でどうやって話を切り出すか、そしてどうやってなのはに手にした『これ等』を手渡そうかと考えていた。

出来る事なら……何時もドコか情けない様な、相手(この場合、なのはに)にリードして貰っている感じを自分でも理解している。

だから、だからこそ今回くらいは自分から、そして格好良く指輪と……この小さなイヤリングを渡そうかと悩んでいた。

 

 

「―――っと、もう6時か……早いなぁ、時間が経つのは……。」

 

 

商店街のアーケードを眺めながら、道行く学生、仕事帰りのサラリーマン、買い物帰りの家族等………。

三者三様の表情を浮かべる人達とすれ違いながら、そしてシックも同様に自分の家に、高町家に帰ろうと脚を進める。

町の街灯に光が灯り始め、空が宵闇に包まれ始めて暗くなり始めた頃……シックは横断歩道の前で脚を止めた。

右、左、右……。

今時の子供はまず守らないだろう、交通安全ルールを守って車が来てないかどうかを確認した後に歩き出す。

……指輪を渡した時、なのはは何て言うだろうか?はしゃぐのか、それとも涙を浮かべて喜んでくれるのか?

そんな想像をするだけで表情が綻び、心が温かくなってくる。

早くなのはに会いたい、早くなのはにこれ等を渡したい、そして――なのはにもう一度、もう一度『好きだ』と伝えたい。

覚悟完了、当方に迎撃の用意有り――と、既に心の準備は決まっており、後は家に帰って思いを伝え、手の中の物を渡すだけ――。

 

―――だが

 

 

 

突如として響き渡る、とても不愉快なブレーキ音。

 

 

 

シックは何事かと思って顔を向けてみると……そこには、猛スピードで『自分に』向かってくる車の姿。

 

 

 

信号は青だった――なのに何故?

 

 

 

そう思った時―――

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

 

不思議と痛みは感じなかった。

 

地面に叩きつけられた時も、腕と脚が動かなくなったと感じた時も、地面を転がっている時も……。

 

聞こえてくる悲鳴、救急車を呼べと叫ぶ声、自分に駆け寄って『大丈夫か』と声をかけてくれる人々……。

 

そんな事よりもまず、なのはの顔が思い浮かんだ。

 

また泣かせてしまうんだろうな、なんて俺は駄目なんだろうか、そして――やっぱり俺は不幸を呼ぶんだなと思った。

でも――今回は幸いだった、何たって呼び寄せてしまった不幸が自分に降りかかっただけだから……。

 

 

俺を暖かく迎え入れてくれた――士郎父さん。

 

俺を支えてくれた――桃子母さん。

 

俺を立ち直らせてくれた――美由希姉さん。

 

俺の思いを受け入れてくれた――なのは。

 

 

大事な家族に不幸が及ぶ位なら――この身に宿した不幸を背負って俺が死のう。

優しくて、暖かくて、大事で……愛しい家族になってくれた皆に何か起こる位なら、この運命と不幸と共に地獄に堕ちよう。

 

ただ――唯一、心残りなのが大好きな女の子の顔が見れなかった事……。

 

 

「――ごめんね、なのは……。」

 

 

そう呟いて――シック=クローツェルは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――あれから、知らせを受けた高町家は急いでシックが運ばれた海鳴病院へとやってきた。

凄く危険な状態だと言う事を聞かされ、そして最善を尽くすと手術室の中に入った医師を見送り、皆は手術室の前で待つ……。

 

 

「……何で……何でシック君ばかりこんな目に遭わなきゃ行けないの!!あの子が何をしたのよ!!」

 

 

美由希は叫んだ。

今までドコへ行っても疎まれ、蔑まれて来て――此処、海鳴に来て立ち直った、笑顔が戻った。

そしてなのはと想いが通じた――その矢先、シックは事故に遭って生死の境を彷徨っている。

何者かがシックの運命を操っているのか?何者かがシックを地獄へと引きずり落とそうとしているのか?

…そんな者が居るならば、その存在を『全てをかけて否定してやる』、と言わんばかりに美由希は叫ぶ。

 

 

「……美由希、気持ちは解るけど今は落ち着きなさい。」

 

「……母さん……!」

 

「私も同じ気持ちよ。……でも、今は落ち着いて……信じなさい、あの子が帰ってくる事を……。」

 

 

桃子は沈痛な面持ちで赤い、手術室のランプを――じっと見つめていた。

帰ってきて欲しいから、優しい笑顔が見たいから、一緒に翠屋で働きたいから、家族だから……。

誰一人欠けても高町家は成り立たなくなる、自分がお腹を痛めて生んだ子では無いが……シックは間違いなく

自分の子であり、同じく大切な……大切な高町家の『家族』だから……。

 

 

「―――大丈夫だ。」

 

「貴方……。」

 

「シックは……私達が思っている以上に強い。……必ず、必ず帰ってくる。」

 

 

桃子の手を握り、そして彼女同様にじっと手術中のランプを見つめる士郎。

……まだ教える事が沢山あるし、シックには帰ってくる場所があるんだ――と思いながら何かに耐える様に

ひたすらじっと赤いランプを、早く消えて欲しい――と思いながら見続けた。

 

 

「シック君…………。」

 

 

なのはは――祈っていた。

 

シックが助かるなら魔力なんて要らない、魔力を捨てる事でシックが助かるなら喜んで魔力なんか捨てよう。

……だから、だから帰って来て欲しい、自分の名前を呼んで欲しい、前よりも優しくなった笑顔を見せて欲しい。

それ以外何も要らない、綺麗な洋服も、お金も何もかも――だから、シックは返して欲しい、となのはは願う。

 

 

そして――手術室のランプが消えた。

 

 

中から運び出される――痛々しい姿のシックに……シックの血で少し赤く染まったグリーンの手術着の医師達が出てくる。

ベッドに寝かされたシックは直ぐに集中治療室へと運ばれ、美由希となのははそれに付いて行き――士郎と桃子は医師に……。

手術は成功したのか、と聞いてみた。

 

 

「先生、息子は――私達の子供は……!」

 

「手術は成功しました、彼の命も別状はありません――ただ……。」

 

「ただ……何か……あるのでしょうか?」

 

「……非常に申し上げ難いのですが、意識が戻るかどうかは――解りません。」

 

 

医師の告げた言葉を聞いた二人は――絶望した。

何でも、車に撥ねられた時に頭を強く打ってしまったらしく、その時の衝撃で頭の中に血の塊が出来てしまっていた。

外科手術によって何とか血の塊を取り出す事に成功し、同時に体の方の手術も不幸中の幸いか、完璧に終わった。

……が、脳と言うデリケートもデリケートな場所にダメージを受けてしまったかもしれないと言われ、今後――シックが

意識を取り戻すのは難しく、最悪――植物人間と化してしまう事も十分考えうる、とも言われた。

 

 

「………何であの子が……何であの子ばかりこんな目に遭わなきゃいけないの……!」

 

「……………」

 

 

何とか気丈に振る舞い、必死に冷静さを保ってきた桃子もとうとう士郎に抱きつき、声をあげて泣いた。

……士郎は妻の体を抱きとめ、ただ――ただ抱きしめ、何と声をかけるべきかを思考する。

でも――その掛けるべき声が見つかる事は無かった……。

 

 

 

 

 

あの日――シックが意識不明となってから……何度季節が変わっただろうか?

 

 

暖かい春も、太陽が輝く夏も、紅葉で染まった秋も、真っ白な雪で覆われる冬も……。

 

 

彼は真っ白な壁で覆われた病院のベッドの上で過ごしていた。

 

 

一ヶ月に何度か家族が様子を見に来るし、長くなって行く髪も桃子が切って揃えている。

 

 

……だが、シックが目を覚ます事が無かった。

 

 

そして、点滴による栄養の補給も限界が近い――と医師に告げられてしまう。

 

 

どんどん痩せ細って行くシックの体。

 

 

そんな――二年目の春の事だった。

 

 

 

 

 

 

「―――こんにちは、シック君。」

 

 

あどけなさと美しさを両立させた――女性。

二年と言う歳月が少女を女性へと変え、体も女性のそれへと成長した――なのはが来た。

彼女は窓を開け、春の柔らかい日差しと――暖かい空気を部屋の中に招き入れていく。

 

 

「あのね――私ね、はやてちゃんが作った部隊の隊長になったんだよ?」

 

 

寝たきりのシックに自分の事を報告する。

 

 

「スバルとティアナって言う子達と一緒に頑張って行こうって思ってるの。」

 

 

微笑みながら……色々な事を話した。

最近の自分の状況、はやてが設立したという部隊の事、フェイトが引き取ったと言う子供達の事。

大変だけど色々と楽しい事もあるし、自分達の所に来た――スバルとティアナと言う二人の才能のある子達を

一人前にするんだ、とシックに話しかける。

 

――でも、反応が帰ってくることは無かった。

 

 

「……もう……二年か……早いね。」

 

 

あの忌まわしい事故から二年経った。

――暫くは立ち直れず、管理局の方も学校の方もボロボロだったが……友達や家族達と一緒に乗り越えた。

そしてシックが目覚めたら皆で笑顔で迎えよう、もう一度皆でやり直そう、と家族で決めた。

 

 

「……こんなに痩せちゃって……今じゃ、私の方が力が強いんじゃないかな……?」

 

 

細くなってしまったシックの手を取り……そして握る。

 

 

「……シック君……私……もう……待てないよ……限界だよ……帰って……来てよ……!」

 

 

乗り越えた……だけど、もう限界だった。

痩せ細っていくシックを見ていられなかったし、桃子からも――聞いていた。

このままではシックが衰弱死してしまうかもしれない、と。

 

 

「私……何も要らないから!魔力も!お金も!洋服も……何も要らない!」

 

 

溜め込んだ感情が一気に爆発し、なのはは泣いた。

 

 

「シック君が居れば何も要らない!私……管理局やめるから!私と一緒に翠屋継ごう……?

 お菓子作りとか……難しいかもしれないけど、私が居るから!ずっと一緒に……居るから……ぁ!」

 

 

泣き叫び、純粋に帰ってきて欲しい、自分の傍に居て欲しいと願い――なのははシックの手を握る。

暖かさが失われつつある手、力を込めれば折れてしまいそうなほど細くなってしまった手……。

なのははそんなシックの手を握り続ける。

 

この暖かさが失われないように。

 

シックの命が消えないように。

 

 

 

 

 

その暗闇の中―――たった一つ、たった一つだけ生まれた物があった。

 

 

「―――え?」

 

 

それは……神様が少女の願いを適える為、少年を救う為に起こしてくれた『奇跡』

 

 

「―――シック君―――?」

 

 

泣き叫ぶ少女の手を――細い手が握り、閉じていた瞳が開いたのです。

 

 

「……た……だいま……なの……は。」

 

「――――ッ!!!」

 

 

震える手でなのはの手を握り、精一杯の笑顔を浮かべながら――彼は、シック=クローツェルは帰ってきた。

……なのははシックが、大好きな少年が帰ってきてくれた事、自分の名前を再び呼んでくれた事に感動してしまい、ただ涙を流すだけだった。

シックは半固定されたかの様に動かない体を無理やり動かして――襲い掛かる激痛を無視しながら上体を起こし、なのはの頭を撫でる。

 

 

「シック――くん……シック君……ッ!!」

 

「ごめんね……なのは。多分、俺さ……凄い時間、寝たまんまだったんだろ?」

 

「……そうだよ……二年間も寝たまんまだなんて……寝すぎ……だよ……!」

 

「うぁ、二年か……それだけ寝れば……体も痛くなるね……あだだだだ………。」

 

 

シックは――『あれ』が無いかどうか……自分が寝かされていたベッドの周辺を見回し……そして、発見するが苦笑する。

自分の血で赤黒く染まってしまった青い(?)箱を見て、渡すべきかどうか悩んだ後……意を決して二つの箱を掴んだ。

そして未だに涙ぐみ『良かった……良かったよぉ……』と言葉を繰り返すなのはに向き直ると……。

 

 

「なのは……その、さ……聞いて欲しい事があるんだ……。」

 

「う――ん、何かな………?」

 

「……これ、二年前に渡そうと思ってたけど……渡せなかったし、俺の血で汚れちゃったけど……受け取って欲しい。」

 

 

ぎゅ、となのはに二つの箱を握らせる。

 

 

「――――これ……そんな……でも……!」

 

「あ……その、俺の貯金で買ったんだ……俺がもっとお金持ってたら……宝石つきの奴、買えたんだけど……。」

 

 

なのはが空けた箱の中には――プラチナの指輪と、綺麗な銀細工に小さなダイヤモンドのついたイヤリング。

それぞれが優しく輝き、凄惨な事件の爪痕をかき消さんばかりに強く、そして淡い光を放っていた。

 

 

「……これ……私が貰っても良いんだよね……?」

 

「うん。……なのはの為に……買って来たんだ。」

 

 

指輪を――左手の薬指に、そしてイヤリングを耳につける。

 

 

「……あと、ね……なのは。」

 

「……うん。」

 

「……俺さ……なのはの事、泣かしてばっかりだろ?……これからも泣かしちゃうかもしれない、オマケに弱い。

 それでもさ、なのはを思う事だけなら、誰にも負けないと思ってる。」

 

「…………。」

 

「だからさ―――。」

 

 

シックは真っ直ぐになのはの目を見つめ、少し時間を置いて、深呼吸して、覚悟完了して――言った。

『これから』を一緒に大好きな女の子と創って行くために、なのはと一緒に歩いていくために……。

 

 

「俺と――結婚して欲しい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから―――1年後。

シックは驚異的なスピードで快復して行き、今では杖さえあれば普通に歩ける位にまで良くなっていた。

そして、そんなシックは今―――。

 

 

「―――これで……最後……だね。」

 

 

白いタキシードに身を包んだシックは――隣に居る女性に話しかける

 

 

「そうだね。……あ、はやてちゃん……ブーケ取る気、満々だ……。」

 

 

真っ白いドレスに身を包んだ――なのははその手に握ったブーケを取ろうとスタンバっている友人を見て苦笑した。

青い空の下で……この日、シックとなのはは色々な苦難と悲劇を乗り越えて、晴れて夫婦となったのだ。

誓いと契りを済ませ、指輪も交換し、披露宴も終わった後――最後の仕上げとも言える……作業。

次の人が幸せになれるように、と思いを込めたブーケを渡す為……なのはは構えた。

 

 

「シック君。」

 

「なんだい、なのは。」

 

「―――幸せになろうね。」

 

 

 

 

 

ここで一先ず、少年と少女のお話は終わりを告げます。

 

 

けれど、彼等は『これから』と言う物語が待っているのです。

 

 

彼等二人、どちらかが躓いたらどちらかが手を差し伸べ――生きていくのでしょう。

 

 

暖かい日差しの中――次の幸せを運ぶブーケが舞う。

 

 

そして二人の――強くて優しい絆の物語が始まります。

 

 

 

この暖かい春風と共に……。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのはA‘s外伝

春風と共に

〜Fin〜

 

 

 

 

 

〜あとがき〜

 まず――感想を下さった皆様、くだらないアンケートに付き合ってくれた皆様、そして管理人のリョウ様。

有難うございました、皆様のご協力とSS掲載の場を与えてくださったリョウ様のご配慮のお陰で私は一本のSS

を完遂させる事が出来ました。(※出来栄えはともかくとして……orz

思えば、皆様の暖かいお言葉があってこそ、私はこのSSを終えることが出来たと思っています。

 

それと、シック=クローツェルを受け入れてくださって有難うございます。

ヘタレな主人公ではございますが、気に入ってくれて、受け入れてくださった事を非常に嬉しく思います。

……次は春風の『フェイト編』を打ちたいと考えておりますので、その時は宜しくお願いします。

 

 




作者ユウさんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。