To a you side To a you side 外伝M 魔法少女と孤独の剣士 続裏話



※この物語は魔法少女と孤独の剣士裏の続編です。
To a you side本編およびTo a you side 外伝M 魔法少女と孤独の剣士を先に読まれると、よりお楽しみ頂けます。










「止めに、行くで」

「はいです」

スクリーンに大きく写されているのは宮元良介と高町恭也

片方は杖で防御を、片方は剣を振り下ろそうと力をこめたまま状況は固まってしまっていた。

「そうですね、
あの男をここで殺してしまうわけには、いきませんから」

「愛しい人を護るためにピンチに駆けつける女騎士……あぁサーガのワンシーンのよう……」

「まぁ、子分を助けるのは親分の役目だよな」

「…………いっそ切られてしまえばいいのではないか?」


「「違うっ!」」


「「「「は?」」」」


「リョウスケはこの程度で死んだりせえへん!
それは皆ようわかっとるやろっ!?」

「そうです、ミヤというものがありながら他のデバイス使うなんてぇ〜!」

「なのはちゃんもなのはちゃんや、
兄妹みたいやゆうんなら、わたしかてリョウスケの家族やのに!
なのはちゃんだけ、あんな事しよって!」



「私だってリョウスケさんに抱きついたら振りほどかれるのに……」

「高町なのは、油断ならねえな……悪魔め……」



「止めに、行くでっ!」

「はいですっ!」

「はいっ!」

「おうっ!」



『リョウスケはどうなってるの?
この電話じゃ映像見えないのよ!?』

「あぁ、主たちは今出て行った……事態はすぐに収拾するだろう」

「いや、せんだろう」


『また事件に巻き込まれたの?』

「いや微妙に違う、今回は巻き起こしたほうのようだ」

「今回も、だろう」


『どうしよう……ここから海鳴まですぐに帰れないのに……』

「ふむ、それなら──」
































「ぬううぅぅ──!」

「落ち着いて高町君! 殺人はヤバイよ!」


「ぐううぅぅ──!」

「えへへー、おにーちゃんあったか〜い」


体力も腕力も恭也が上。
今は均衡しているが、いつまでもつかわからない。


「離れろなのはっ!
そのままではこいつを斬れん!」

「月村、そのまま離すな!
離した瞬間に斬られる!」





「……おにいちゃんうるさいよ、れいじんぐはーと」

″ま、待ってくださいマスター!″

「あくせるしゅーたー……」


恭也の背後。

空中に現れる光の玉。


とっさに月村を蹴り飛ばしなのはに覆いかぶさる。


「観念したか、宮元っ!」

今、俺の背には刃を振り下ろそうとしている恭也がいるのだろう。



「しゅーとぉ〜」



轟く爆音。

至近距離での爆風が俺の背中を打ち付ける。


よろよろと立ち上がり振り返ってみると、
もうもうとした一面の土煙。



″──直撃……ですね″

「や、やりすぎじゃねえか……?」

″いいんじゃないでしょうか……多分″


聞こえてくる杖の声はいささか自信なさげだ。

ちゃんと非殺傷に設定してあったんだよな……?
声に自信がないのは恭也が一般人だからなんだよな?

もしそうでも、きっと恭也ならこれくらいの爆発でも生き残ってくれるだろう。
うん、そうだろう。



そして誓う。

金輪際なのはには酒は飲ませねえ。



月村の姿を探すと、庭の花壇の上に倒れていた。

ここからあそこまで吹っ飛ばされたのか……


この惨状を作り出した少女は縁側に丸まってすやすや寝息を立てていた。


とりあえずこいつを、部屋に放り込んでおくか……

今のこいつをあまり刺激したくないが、
こんな所に放置していたと知られたら桃子に小言の一つでも喰らいそうだ。


レイジングハートを腰に差し
なのはを横抱きに持ち上げる。


ガキが多少育って重くなったとはいえ、こちらは鍛錬を欠かさない身。

なのは一人程度なら軽いものだ。


って言ってもこいつも大きくなったよな……
前は背負っても羽みたいなもんだったんだが。





「うわぁ……えらいことになっとるなぁ」

「魔力反応があるですー」


まだ昇っていた土煙の向こう側から聞きなれた声がする。

はやてとミヤ?

そうか、魔力を結界も張らずに使ったら管理局が出てくるのは当たり前か。
ちょっと早すぎる気がしないでもないが、仕事が速いのはいいことだ。

ついでに後始末を押し付けてしまおう。


「おーい、はやて、ミヤ」

「リョウスケさん、怪我はありませんか!? 
今そっちに行きますね!」


シャマルも来てるのか。


「こっちは無事だ。
それより恭也がその辺にいたら拾って手当てしてやれ」


「はいっ」


ふぅ、これでひと段落、か。

まったく、今日は厄日だった。



「疲れた……さっさとなのはをベットに運んで、俺も寝るか……」



「リョウスケ……なんで……」

ヴィータも来てたのか。

赤い甲冑に帽子、いつものぬいぐるみとグラーフアイゼンも完全装備だ。

ったく、戦闘するつもりだったんなら、何でもっと早くこねえんだ。



「ヴィータ、もう終わってんだからさっさと騎士甲冑を……」

「グラーフアイゼン!」

″ヤ、ヤヴォール″



そんなに意気込んで騎士甲冑脱ぐことも無いだろうに。

グラーフアイゼンだって、そんなに叫ばなくても理解できるだろう。

ほら、カートリッジと変形だってあんなにスムーズに──


「まてぇいっ!」


「ラケーテン──ハンマァー!!」


強烈な回転をによる突風を起こしながらこちらに向かってくるヴィータ。


「レ、レイジングハートっ!」

″オ、オールライト! ラウンドシールド!″


とっさに呼びかけたが、レイジングハートはしっかり応えてくれた。

って、俺シールド張れてる?

そもそも、何でヴィータに襲われなきゃならないんだ!?



「あー! リョウスケ何で他のデバイスなんか使ってるですかー!?
ってリョウスケが魔法使ってる!?」

「あー! ヴィータ何しとるん!?
ってなのはちゃんにお姫様抱っこ!?」


お姫様抱っこ……
今の格好……確かにお姫様抱っこだ。

まさかその程度でヴィータのやつ!?


「あたしの子分を──返せええぇぇぇ!」


「子供の嫉妬にしちゃ度が過ぎて……っ!」

や、やば……シールドがもたな……





「鉄槌の騎士といえど楯の守護獣は簡単には抜かせん!」

「ザフィーラ!?」


ひび割れたシールドとヴィータの間に滑り込んできたのは守護の獣。



「どけ! ザフィーっ──!」


「少々やりすぎだ、ヴィータ」


ヴィータの後ろに回りこんだシグナムが鞘を一閃。

首筋を打たれたヴィータはシグナムの胸に糸が切れたように倒れこんだ。




なのはを抱え込んだまま尻餅をつく格好で腰を落とす。




地面に落ちた2発の薬莢。


1発はヴィータだろう。

もう1発は……レイジングハートのものか。


あのシールドにつぎ込んだ魔力はこのカートリッジのものだったのか……




「まったく、あたしの居ない間にまた騒ぎ起こして……」

「好きで騒いでるんじゃねえ……」

「自分は心配ないから、自分の好きにしろって見送ってくれた所は嬉しかったのに、
こんなご主人だと目が離せないじゃない。」


ったく相変わらず小言の多い……


「って何でアリサがいるんだ!
外国の図書館に行ってたんじゃなかったのか!?」

「それならば、私たちが連れてきた。
管理局を経由した転移魔法でなら、さほどの時間もかからんからな。」

……シグナムめ余計なことを






「リョウスケはいつもいつも──っ」

アリサは突然、俺の背後に視線を向けたまま固まってしまった


そして背筋にビシビシ来る様な剣気、いや殺気。



「きょ、恭也か……!?」

振り向いた先にはメガネに髪を三編みにした高町家の次女。

「本がね読めると思っていたの……それを切り上げて戻ってきてみれば……」

ひたすら下を向いてブツブツ呟く姿は先ほどの恭也を彷彿とさせる。

「ねぇ……誰があんなことしたの……?」

指差す先には月村が突っ込んだためにぼろぼろになった花壇。


「ねぇ……誰がやったの……?」

軽くうつむいてメガネのせいで目線がわからない。



なのは、もしくは月村、そういってしまうことは簡単だ。

だが俺の第六勘が恭也以上の何かを感じ取って、そうしてはならないと告げている。

ほぼ間違いなく、彼女達の中の大事な何かが崩れ去ってしまう。

苦肉の策として、俺の指はある人物を指し示した。


「そう…………ありがとう」


指差した先はシャマルの治療を受けている恭也。

こちらに目線を向けたシャマルが、
ひっ、と小さな悲鳴を上げ、一言二言会話をした後、恭也を差し出す。

どうやらシャマルは今の事を無かったことにして月村の治療に移ったようだ。


許せ……恭也、お前は強い剣士だった……なのはにはそう伝えるから……

手早く武装を解除され、道場に引きずられていく恭也に胸の中で手を合わせる。











「「「リョウスケ」」」


そんな俺を現実に引き戻す三つの声。

「何があったのよ?」

「何があったんや?」

「何があったんですか?」


打ち合わせたわけでもないだろうに、出てくるのはおなじ言葉。

そして目線は俺ではなく、何故か腕の中に眠るなのはに釘付けだった。


「恭也のやつが襲ってきたんだよ、それを寝ぼけて酔っ払ったなのはが撃退した、と」


「なんで、そないなことになったんや?」


そして、この短時間で非常に疲労していた俺は深く考えずに言ってしまった。


「いや、月村のヤツに、なのはに告白したって電話を……」



「「「なぁ!」」」



「なのはに告白ってどう言うこと!」

「私ではダメなんか? やっぱり、なのはちゃんと一緒に住んでるから!?」

「それでそのデバイスも一緒に誑しこんだんですか!?」

「誑し込むて──私のほうがきっとなのはちゃんより成長すると思うんよ!?」

「あ、あたしはこれからだもん!」



説明の中でわめきだすガキんちょども──

「うるっせぇええ! 説明は最後まで聞きやがれ!
なのはに告白したってのは月村に対する仕返しの悪戯で言ったんだ!
恭也が襲ってきたのは月村が恭也にそれを伝えちまったから!
この杖はこれしか武器が無かったから仕方なくだ!
以上!」


これ以上厄介なことに付き合いきれるかと、一息に言い切って。


「ったく……てめえら。
一緒に住んで無くても、他のヤツに世話になろうと、お前らはその────家族に、相棒に、俺のメイドだろう」

「あ──そうやね、そうなんよね!」

「う──そうですよねっ、リョウスケはミヤがいないと何にも出来ないんですからっ!」

「あ──あたしは、そ、そう信じてたわよ!」


「……おにーちゃん私も大好きだよ……むにゃ……」


「「「私も……?」」」


ゆらりと空気が揺れる


「いたた……」

「目が覚めたかヴィータ、自分が何をやったかわかっているのか?」


向こうではシグナムがヴィータを起こして質問していた。
なんかこっちは空気が重い、
ヴィータが襲ってきた理由も気になるし、あっちに………


「確か……リョウスケのヤツが高町をベットに運んで一緒に寝るって言って……」


言ってねえ!





「わ、わたしもこれから一緒に住むんで――」


「ミ、ミヤは別にどうでもいいです! ほ、本当です!」


「リョウスケあんた本当になのはに手を出したんじゃないでしょうね!?」



お前ら一体何を言って────




















結論から言うと俺は逃げ出した。




あいつらから逃げ出してふと見上げた先には見たことのある建物。

確かここはフェイトの住むマンション……
………あいつは、口止めすれば大丈夫だよな?


「……厄病神が満載なので、しばらく寝床貸してくれ」

「あ、あはは……了解」


だが、犬耳の女性から情報漏れがあったことを彼は知らない。














そして逃亡の最中、かっぱらったままだった某魔法の杖が、あるゴミ収集員の手に渡ったのを──
















<END>

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あとがき
総登場人物15人、ちょっと風呂敷広げすぎました。
このプロットなら、もっと案を練っていれば連載でも書けたかな……?
出来る限り原作が進んでも違う場所が出ないようにしたつもりなので、
コレで終わりとさせていただきます。

付け足そうと思ったことがたくさんあったのですが、収集つかないのでかなり削りました。
恭也の行動とか……

次の物を書くにしても、コレには続かないと思います。たぶん……

本文中のセリフの一部はある所から引用しました。
一部の人たちは気づいているでしょう。
というかコレがやりたかった(ぉ

そしてマイフェィバリットキャラ、ゴミ収集員(ぉ
彼は自分の心の師匠、フ●メタルパ●ックふ●っふに出てくる某用務員と同じ香りがする。
出す予定はなかったのに出さずにいられなかったんです……

今回はリョウスケが織り成す『日常』でのお話、いかがだったでしょうか?

ちなみにこれはパラレル世界でのお話、本編が進むと差異が出て来ると思います。
そのあたりご了承ください。











(リョウ様用の強制)特別小話or感想コーナー(どちらを選ぶかはリョウ様次第、作者もわかりません)


主人公「全く、少しは静かに出来ないのか。周りの連中は」

アリサ「何もかもあんたの責任じゃない」

主人公「俺は悪戯をした忍に、ほんのささやかな報復を行っただけだぞ。
後はなのはが酔っ払って、恭也が暴れただけじゃねえか」

アリサ「ゆっくりと事の真相を紐解くと、原因はアンタに結び付くの!
あたしの留守中くらい静かにしてなさい!」

主人公「高町家に二度と近寄らないと言うのはどうだろう?」

アリサ「……殴っていい?」

主人公「……すいません」















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