握れば折れてしまいそうな細く、白い首。

 その数ミリ手前で、唸りをあげる双剣は停止していた。

 女は突きつけられた双剣には目もくれず、決死の表情でハセヲの瞳を見つめる。


「――何のつもりだ」


 ハセヲは怒りを押し殺し、低い声で問いただす。

 ハセヲとスケアたちの間に割って入った乱入者は既知の人間だった。

 かつて失った、生還を願って止まない女性と瓜二つの姿をした女――。

 『月の樹』のアトリ。


「PKなんていけません!」


 いつもにはない強い口調でアトリは声を張った。

 ハセヲは動じず、双剣を突きつけたままアトリを睨む。何故邪魔をしたのかと、火を吹かんばかりの形相で睨み見ていた。その瞳から、その表情から、怒りが零れだしている。


「人と人が争いあうなんて……いけません!」


 スケアとメイプルは顔を見合わせていた。突然の乱入者に対し、困惑しているのだろう。二人の姿が視界の片隅に映ってはいたが、ハセヲはそれを認識することは出来なかった。今のハセヲの思考は、眼前の女に対する怒りで埋め尽くされている。


「テメェ、そんな理由で割り込んできやがったのかよ……! 人の勝負に割り込んでおいて、何ふざけたこと言ってやがる!!」

「……勝負に勝つのは楽しいですか?」

「何が言いたい……!」

「私は……嫌いです。何もかもを戦いで決めるのは……間違いだと思うんです。ましてや、決め事に必ず勝負を持ち込まないといけないなんて……そんなのはダメだと思うんです」


 心情を吐露するように、アトリは続ける。


「それじゃ武器とか、レベルとか……そういう強さだけで全てが決まっちゃうことになると思うんです。力を誇示して、暴力を振るって、それで物事が決められちゃうのは……いけないことだと思うんです」


 双剣を突きつけたまま、ハセヲは冷めた眼でアトリの言を聞いた。

 その一言一言が、ささくれだったハセヲの神経を逆撫でしていく。


(間違いだと思うんです、ダメだと思うんです、いけないことだと思うんです、だと……!?)


 ――何だそれは。ふざけているのか。何もかも『思うんです』で終わってしまうようなモノなのか。

 それら全ては他人から与えられた価値観に過ぎない。アトリにそう『思わせた』人間の言葉を借りて、悟ったフリをして、他者を哀れむことに満足感を得ているだけだ。

 それは身勝手そのもの。他人に自分の都合を押し付け、他人が自分と共通の価値観を持っていなければ気が済まないような自己中心的な人間の行動だ。

 そんな女に戦いを中断させられたかと思うと――自分が剣を止めてしまったのかと思うと、どうしようもなく自分自身に腹が立った。こんな奴に躊躇ってしまった自分が許せなかった。


「戦いばかりしないで……少し立ち止まってみるべきだと思うんです。さっきのだって、話し合いで決められたんじゃないですか? なのに、勝負でどっちかを決めるなんて――」

「立ちどまる、だと……? クッ、クハハッ……!」


 もうダメだ。耐え切れない。今の一言で決壊した。

 これ以上、聞いていられない。


「――え?」

「話し合い? 手と手を取り合って馴れ合いで決めろって言うのかよ……!」

「わ、私は、そんなつもりじゃ……」

「そう言ってんだよ、テメェは!! 自分の都合押し付けるだけじゃ飽き足らず、今度は俺のやることにまでケチつけようってのかよ!!」

「そ、そんな……」

「『The World』では戦いが認められている、殺し合いが許されている、戦う事を前提に作られている!! それをテメェは否定するって言うのかよ!? 奇麗事もいい加減にしやがれ!!!」


 感情が口から勝手に吐き出されていく。溜め込んできたソレは留まることを知らず、怒涛の如くアトリに浴びせ掛けられた。


「ここは――『The World』は他人と争い合い、踏み台にしてのし上がり、頂点にたどり着くことが至上目的のネットゲーム世界だ! 判るか!? ここは“そういう場所”なんだよ!!!」


 其処で『ハセヲ』は生きてきた。『ハセヲ』は常に戦いの中を生きてきた。

 志乃を助ける為に三爪痕を追って、PKと闘い続けて、ハセヲはこの世界を生き抜いてきたのだ。

 俺には――『ハセヲ』にはソレしかなかった。志乃を救うためには闘い続けるしかなかった。戦いの中を生きるしかなかった。

 だからこそ、アトリの言葉が許せなかった。


「オマエがそれを――戦いを否定すると言うのなら」


 この世界における戦いを、『ハセヲ』の歩んできた道を否定するというのならば――


「俺は――オマエを認めない」


 『ハセヲ』は『アトリ』という存在そのものを、否定する。


「ハ……セヲ、さん」


 アトリの唇から零れた声は震えていた。

 誰しもが同情してしまいそうなアトリの姿を無視し、その後ろの二人へと声を放る。


「スケア、メイプル、勝負は俺の負けでいい。後で連絡する」


 最小限の言葉で意志を伝えた。今は感情が制御できていない。口を開けば何を言い出すのか判らない。それ故の、簡潔な言葉だった。

 二人は困惑の仕草を見せながらも、とりあえずはこちらの言葉を読み取ったようだった。返事を待たずに言葉を吐く。


「今日は落ちる」

「あ、ハセヲォ!」

「ちょっと待――」


 シラバスたちの叫びを無視して、エリアから離脱した。タウンに戻るなりログアウトを行なう。

 閉じていた瞳を開く。薄く透き通るガラス――M2Dのモニター越しに映るのは見慣れた自分の部屋だ。『The World』から戻ったことを認め、BCIを毟り取る。最後に残ったM2Dを掴み取り、床に叩きつけた。


「立ち止まれなんて……志乃の姿で、そんなこと言うんじゃねえよ……!!」


 声は響かず、静かに消える。

 夜はただ、黙して亮を抱いていた。










      *****










「どうして……」


 何度目の問いだろうか。月の木漏れ日が落ちる湖畔を瞳に映し、アトリはポツリと呟いた。

 ハセヲがエリアから離脱した直後、アトリもまたそれを追ってカオスゲートへと戻った。しばらくの間マク・アヌを探し回ったものの、ハセヲの姿を見つけることは出来なかった。

 悲嘆に暮れてぼんやりとカオスゲートまで戻り、気がついたらここにいた。どうやら転送してきたらしい。よく覚えていない。

 ここは以前、ハセヲと一緒に来たエリアだった。月の綺麗な、自分のお気に入りのエリア。それを見てもらいたいと、無理に連れ出してしまったのを鮮明に覚えている。

 少しは落ち着いたらしい頭でそういえば、と思い出す。呼び出されて行ったエリアではハセヲと誰かが戦っていた。他にも誰かが居たのがチラリと目に入ったものの、その誰にも挨拶をせずにエリアから出て行ってしまった。失礼なことをしたな、と反省する。

 それきり思考は何も生まなかった。月がおぼろげに映った湖をただ見つめる。時間だけがただ緩やかに、そして無為に過ぎていった。


「あら、アトリ?」


 それからどれほどの時間が過ぎたろうか、虫の声と風の音しか聞いていなかった耳に新たな音が届いた。

 誰だろうと思うと同時に、ハセヲの後姿が脳裏に浮かんだ。映像はかつてこのエリアで自分の前を悠然と歩いていた姿、そしてつい先程の、拒むように自分に背を向けた姿の二つだった。

 胸が痛い。ダメだとは解っていても思い出してしまう。


「アナタも月見かしら?」


 思考が新たに一つの姿を投影する。慌てるだけだった自分とは大違いで、ハセヲの力となっていた女性。月夜の下に響く声は、彼が背中を任せていた女性のものだった。


「ヴェラ……さん?」


 燃えあがるような紅い髪は、月夜の中にあっても鮮明だった。どうして彼女が。


「ヴェラさん……なんで、ここに?」


 ハセヲさんもいないのに、と思考が後付をする。思って馬鹿みたいだなと自嘲した。あの時、自分達が彼女と出会ったのは偶然に過ぎない。彼女はハセヲを目的にこのエリアにいた訳ではない。


「前に言わなかったかしら。ここは気に入ってるエリアで、よく月を見に来るのよ」


 驚いたように顔を上げたアトリに対して、ヴェラは静かに答えた。一陣の夜風が二人を包み、髪が風に踊る。


「あ……そうでした、ね。私、そんな事も忘れちゃってて……あはは、ほんと……馬鹿、ですよね」


 綺麗な髪だと、ヴェラを見てアトリは思った。『The World』の姿とリアルの姿とは何の関係も無い。それでも、恐らくはリアルでも美しい髪をしているのだろう。だって、これほどまでにその紅い髪が似合っているのだから。

 自分とは――大違いだ。


「――アトリ?」

「何やっても昔からこうなんです……。肝心なときに、いつも相手を不快にさせてばかりで……」


 闇の中にあっても、はっきりと判るほどの影を表情に落とし、アトリはぽつりぽつりと胸の内の言葉を口にした。

 途中で甘えていると自覚し、口を噤む。こんなだから、彼にも不快な思いをさせてしまったのだ。

 再び湖畔に静寂が訪れる。聞こえるのは虫の鳴き声と、時たま起こる風の音だけ。

 しばらくの時をおいて、新たに音が生まれた。布が擦れる音だった。うつむいていた顔を上げると、隣にヴェラが腰を下ろしていた。

 並ぶように座り、ヴェラはアトリへと顔を向け、


「――何があったのか教えてもらえるかしら? 私でよければ、力になりたいのだけれど」










      *****










「成る程、ね……」


 アトリの話を黙って聞き終えた後、ヴェラはこっそりと溜息をついた。


「アトリはハセヲに自分と同じものを見せたかったのね? 例えば、このような月を」

「……戦いばかりじゃ、見えないものもあると思うんです。それを知ってもらいたくて……。完全におせっかいだったみたいで、怒られちゃったんですけどね」


 アハハ、と自嘲の笑いをアトリは零す。対するヴェラは表情に何も浮かべてはいない。嘲笑も、哀れみも、そこにはない。あるのはただ無機質な、仮面のような表情だった。


「アナタは、それを悔やんでいるの?」

「……判りません。けど、迷惑をかけちゃったのだけは、判ります」


 声には涙が滲んでいる。悔やみか、あるいは哀しみか。アトリは心で静かに泣いていた。

 それを見てヴェラは一つの感情を表情に浮かべる。作られた感情は二つだが、形となって表面に表れたのは一つだ。内側にもう一つの感情を抱き、ヴェラは揺るがぬ声でアトリに言った。


「あくまで私なりの考えでしかないのだけれど……いくつか、言わせて貰っても構わないかしら?」

「……え? あ、はい」

「アトリ、アナタがハセヲに対して自分と同じものを見て欲しいと願うのは決して悪いことではないわ。けど、願うだけでなく実際にそうしたいと思って行動するなら、配慮が必要かもしれないわね」


 配慮。その言葉を耳にしてアトリは身を震わせる。

 『月の樹』でも大事とされている言葉だった。相手を想い、気遣う心。人と人とが触れ合う中で、とても重要なものだ。それを自分は欠いていたらしい。改めてそれを他人から突きつけられると、判っていても体が震えた。震えを誤魔化すように口を開く。


「やっぱり、私が悪かったんですよね……。そうですよね、私、自分勝手なことばかり言って――」

「話は最後まで聞きなさい。まだ私は言い終えてはいないわ」

「……すいません」


 追い討ちのようなヴェラの言葉に、アトリは身を縮める。今にも消えてしまいそうな、そんな儚さを感じさせた。

 俯くアトリはそれに気づくことは無かったが、ヴェラの表情は言葉とは裏腹に穏やかなものだった。まるで子を見守るような、そんな表情。

 ふと、湖畔の淵に腰掛ける二人の背後でガサガサと草を分ける音がした。アトリが顔だけで振り向く。そこには愛らしい一匹の動物がいた。

 プレイヤー達に幸福を与える生物――ラッキーアニマルの『はっしば』だった。


「――蹴らないの? アトリ」


 触れ合えるような距離まで『はっしば』がノソノソと近づいてくる。

 ラッキーアニマルは蹴ることによってプレイヤーに何らかの良い影響を与えてくれる、幸運の動物達だ。その恩恵は大きい。しかし、アトリは近づいてくるラッキーアニマルを見ても立ち上がることすらしなかった。


「……こんなかわいい子たちを蹴るなんて、そんなひどいことできません」

「ハセヲにも、ラッキーアニマルを蹴ってもらいたくない?」

「……ハセヲさんは怒るかもしれませんけど、そうです。だって、そんなことしちゃ可哀想じゃないですか……」

「そうね、そういう見方もあるわ。けど、それは一方で彼ら――ラッキーアニマルと向き合っていないということにもならないかしら?」


 え? と驚いたようにアトリが俯かせていた顔を上げる。


「たとえば『はっしば』。彼はプレイヤーと足の速さを競い、見事自分を蹴ることの出来た者には健闘を称えて自分の力を分け与える。『速きを称え、我が通力、一時汝に貸し与えん』ってね――知ってた?」


 アトリは弱々しく首を振る。

 今までアトリは一度もラッキーアニマルを蹴ったことが無い。そんなことは初耳だった。


「彼は、プレイヤーと速さを競い合うことを喜びとしている。そうでなければ、健闘を称えたりなどとしないでしょう? その彼と競うことを初めから放棄しているアナタは、彼の気持ちに応えていないということにならないかしら?」

「…………」


 アトリは答えない。

 そんなこと、考えてもみなかった。だって、あんなに可愛らしくて小さな『はっしば』がそんな言葉を言うなどと知らなかったのだから。いや、聞かされた今でも本当にそんなことを言うのだろうか、と半信半疑だった。

 しかし、彼女は嘘をつくような人間ではない。アトリはそれが事実だということを知った。顔から血の気が引き、青ざめていくのを感じる。

 彼女の言うとおりならば、自分はずっと『はっしば』を蔑ろにしてしまっていたのだろうか――。


「勿論、この考え方は物事に対する一つの側面的なものよ。蹴るという行為は力を行使する、いわば暴力の一種。それを忌避するアナタの気持ちもわかるわ。けど、この世界には彼の挑戦に応えて足を競い合い、蹴るプレイヤーもいるってだけの話」


 喋り始めてからずっと湖に向けられていたヴェラの視線が動く。ゆっくりと、彼女は空の月を見上げた。


「ラッキーアニマル一つでもそう。彼らに対して色々な考え方をもち、様々な捉え方をして、多種多様な接し方をする多くのプレイヤー達がこの世界に生きている。それぞれの、生き方で」


 ヴェラは届かぬ月に手を伸ばし、やがて諦めたように虚空を掴む。


「だから、ハセヲはアナタを拒んだんだと思うわ。この世界における彼の価値観をアナタは否定してしまったから……あ、故意じゃないことは判ってるわよ? アナタなりのやり方でハセヲに接しただけの話なのだから。けど、ハセヲにあなたの見ているものを解ってもらいたいのなら、まずアトリがハセヲを理解してあげる必要があるんじゃないかしら?」

「ハセヲさんを……理解?」


 そう、とヴェラは相槌を打つ。


「ラッキーアニマルを蹴る人と蹴らない人がいるように、戦うことを好む人や嫌う人もいる。つまりは、そういうことよ」


 話はこれでオシマイだと言うようにヴェラは立ち上がり、服についた草をパンパンと払う。


「ま、全部私なりの意見でしかないのだけれどね。けれど、私は皆がそれぞれ多種多様な生き方をしているからこそ『The World』は豊かでいられるのだと思っている」


 躊躇うように、しかし毅然とヴェラは言い切った。その様子は矛盾であるにもかかわらず、偽りは欠片も見られない。ヴェラの心からの本心だった。

 もっとも、と彼女は苦笑する。それはあくまで自分に心なるものが存在する場合の話だ。


「……ヴェラさん」


 アトリもまた静かに腰を上げる。ヴェラへと体ごと振り向き、勢いよく頭を下げた。


「ありがとうございました。私……頑張ってみます!」


 その言葉に、ヴェラは紅い眼を弓にして答えた。


「ん、頑張ってね」










      *****










「ハセヲにも困ったものね……。まだ逃げ続けているなんて」


 アトリを見送り、一人となった月の下に紅の髪が流れた。

 月を見上げていると、視界の脇に二つの影が入った。視線を向けると、そこには二匹のラッキーアニマルがいた。一匹は先程の『はっしば』、もう一匹は『おうりゅう』だった。


「悠久なる戦乙女よ! 母なる子の子なる母よ! 汝に訪れし不運と嘆きを存じているか!!」

「ええ、『はっしば』……気づいているわよ。招かれざるお客様のようね」


 ゴボリ、と。

 湖の中に何かが沸きだった。泥と憎悪を混ぜ捏ねたような、黒い泡が溢れ出す。


「我っ! 理解せりっ!! 其が地! 危険! 然るにっ! 告げるっ!! 逃げよっ!! 疾くとっ!!」


 『はっしば』の隣で『おうりゅう』が警告を叫ぶ。幸運を司る存在だからだろうか、不幸を体現するアレには一際敏感らしい。

 二匹がヴェラの瞳を見つめる。どうやら心配させてしまっているらしい。ヴェラは彼らを安心させる為にと、柔らかに微笑んだ。


「『おうりゅう』、『はっしば』、二人とも離れてて。大丈夫、すぐに終わるから」


 二匹は僅かな躊躇いを見せる。しかし、変わらず微笑みかけるヴェラの瞳を見ると、


「誉れの乙女よ! 我らが女神よ! 汝が幸運を我は祈ろう!」

「我っ! 認めりっ!! 汝っ! 我が母っ! 然るにっ! 信ずるっ!!」


 それぞれが幸運を祈り、彼女を信じ、持ち前の俊足で姿を消した。


「――ありがとう」


 その言葉を最後に微笑みはなりを潜め、苛烈な意志が瞳に宿る。


「さてと……待たせたわね」


 紅蓮の瞳が黒泥を睨む。

 湖に沸きだった黒泥は透き通った水を醜く濁らせ、その姿をあらわにした。月の光すら呑み込む闇を宿した黒泥――AIDA。

 沸き溢れるAIDAは単体ではない。湖そのものがAIDAであるかのように次々と黒泥が溢れては弾け、病原体が生み出されていく。その数、既に十二。


「来たるべき禍根の時はすぐそこまで来ているというのに……我慢のないことね」


 言って、ヴェラは虚空へと右腕を差し込む。肘まで差し込まれた虚空から一息に引き抜かれたのは一本の槍。きめ細かな装飾が施された銀槍。戦神の名をその身に受けた神槍。母の母が産み落とした大いなる神器だった。

 それを危険と認めたのか、一体のAIDAが澱んだ光を収束させ、黒光の射撃でヴェラを襲う。

 ヴェラは自分に襲い来る澱光に対し、神槍を薙いだ。その一振りで砲撃された光は欠け砕け、成果を得ずに微塵と死んだ。

 槍が月光を照らし返す。上下の月光に照らされたヴェラは不敵な笑みに口元を歪め、有象無象の泡へと告げた。


「――消えなさい。月夜の下に、アナタたちの姿は似つかわしくない」


 それからおよそ一分後。黒泥はその痕跡すら無くし、湖畔に再びの静寂がもたらされた。

















To be Continue












作者の蒼乃黄昏あおのたそがれです。

小説を読んでいただきありがとうございました。

簡単な一言でいいので、ご感想を頂けると嬉しく思います。

ご感想をメールで下さった方には、お返しに

『第零話:終わり逝く世界』をお送りさせて頂いてます。







作者蒼乃黄昏さんへの感想、指摘等ありましたらメ-ル投稿小説感想板に下さると嬉しいです。






.hack//G.U.Chronicle

第三十七話 : 齟齬










嘲り喚き


独りで吠える


螺旋で紡げば唄になるのかと