アイテムが尽き、オマケに体力も先ほどの戦闘で消費しつくしてしまったハセヲはタウンへ……『マク・アヌ』へと帰った。

 悠久の古都は全ての人間を迎え入れる始まりの街。

 来訪する人間が何も知らない初心者であろうと、老練たる上級者であろうと、殺人者であろうと、狩人であろうと、大人であろうと、子供であろうと、わけ隔てなく迎え入れる母なる街。

 自然、街の入り口であるカオスゲートに数多くの人間が集まり、街に入ったときに知り合いと出くわすのもそう珍しいことではない。

 そう、珍しいことではないのだが……。


「ハセヲォ! 久しぶりだぞぉ!」

「やぁ、ハセヲ! 今戻ってきたとこ?」


 こうもタイミング良くこの二人――シラバスとガスパー――に出くわすのは何故か納得出来ない自分がいた。


「あぁ……今狩りから戻ったとこだよ」


 ハセヲは不機嫌そうに、といってもこの二人に対してはいつもこうした態度だが、穏やかとは言い難い口調でつっけんどんに答えた。元々、この二人に対して気を使うつもりなど毛頭ない。

 タイミングが良すぎる気もするが、この二人に会ったのは都合がいいと言えば良かった。


「ちょうどいい。お前ら、今暇だろ」

「え、もしかしてレベル上げかな?」

「そうだ。もうある程度はソロできるようになったけどな、効率的にはパーティでいったほうがいいからな」

「うーん……」


 シラバスは多少困ったような表情を浮かばせ、顎に手をあてて考え込む。


「ンだよ。暇じゃねえのか?」

「あ、いや。たしかに暇ってワケじゃないんだけど……」

「最近ね~、初心者さん二人のサポやってるんだぁ。それで、今日もその人たちと約束してるんだぞぉ~」


 ガスパーがのんびりとした独特の口調で説明する。


「うん。その人たちと一緒でもよければ、レベル上げに行けるんだけど」

「初心者と一緒にやって経験値稼げるワケねえだろが。それなら、ソロで狩ってた方がマシだってんだよ」


 申し訳しそうにしながらも、シラバスは続けて説明する。


「けど、その二人って凄いんだよ。まだ初めて三日なのにグングンレベル上げちゃってさ。呑み込みも早くて、プレイヤーとしてもかなり上達して――」

「初めて三日程度の初心者にと一緒でまともな狩りできるとは思えねえな。いいから行けよ、待たせてんだろ?」

「あ、うん。そうなんだけど……」


 シラバスは言葉を濁しつつ、どうにかハセヲと一緒にいけないかと思案した。しかし、当の本人であるハセヲに『初心者と一緒にレベル上げに行く』という選択肢が存在しない以上、どう説得しようとも無駄であった。

 やがてシラバスも諦め、申し訳なさそうにしながらもカオスゲートを起動させた。


「それじゃ、今回はゴメンね。次こそはサポするからさ!」

「ハセヲも頑張ってだぞぉ~!」


 何が嬉しいのか、ガスパーはニコニコしながら手を体一杯に振る。シラバスがカオスゲートを起動させ、二人は光に包まれて広場から消えた。


「ハセヲ」

「――今度はアンタか。何のようだ」


 この数日で耳に馴染んだ声が届いた。静かで深いその声の持ち主――パイへと振り返る。


「これから憑神の開眼に挑みにいくわよ」

「……どういうことだ? クーンからは中止だって聞いたはずだけどな」

「事情が変わったのよ。で、どうするの。行くの? 行かないの?」

「――フン、決まってんだろうが」


 言いつつ、パーティメンバーにパイを加える。次いでカオスゲートのキーワード入力を起動させた。


「『比類なき 灯篭の 神隠し』を選択しなさい」

「……エリアはどこでもいいんじゃねえのか?」

「今回は別よ」


 あくまで素っ気無くパイは答えを寄越す。今回はいつにも増して冷たさを感じさせる口調だった。


「俺は何処でもいいけどな……転送すんぜ」


 カオスゲートが一際強く光を零し、二人の姿の光へと分解されていく。

 視界もまた光に満たされ、その全てが漂白される。

 その寸前――見知った顔の女が口を開いたのが見えた。

 聞こえるわけがないというのに、読み取れるわけがないというのに、ハセヲは女が何を言っているのかはっきりと理解できてしまった。

 その女――昔どこかで見たはずの女は儚げにこう呟いた。


『覚悟を決めなさい――貴方の物語は、ここで一つの結末を選択する』











      *****










「うーん、なんかハセヲ大変そうだったね」

「だぞぉ~……。一緒にパーティ組めたらよかったんだけどねぇ」


 草原のエリアに飛ばされた二人は残念そうに呟いた。

 周囲を見渡すと、遠くの方に数体のモンスターが見えるのみだった。まだ待ち合わせをしていた二人は着いてないらしい。


「まだ来てないみたいだね、あの二人」

「ど、どうしよう~、もう少しで約束の時間だぞぉ~?」


 ガスパーは小さなずん胴の体を精一杯に動かして焦ったような仕草を見せる。

 それを見てシラバスはクスリと微笑を浮かべた。

 ガスパーとは一年近くの付き合いになるけれど、こういったどこか愛嬌のある仕草は全然変わっていない。いつだって、それこそ目一杯に『The World』を楽しんでいるのだ。それを見ていると、自分もどこか楽しい気分になる。


「落ちついてガスパー。まだもうちょっと時間あるよ、待ってみよう」

「うん~。けど、今日は来ないかも知れないぞぉ? 昨日はずっとやってて疲れちゃっただろうしぃ……」

「あー、そうかもね……。たしかに、昨日はちょっとやり過ぎたかな」


 思い出しつつ、シラバスはたらりと汗を流した。

 昨日はサポをしている二人の余りの上達ぶりに調子にのってしまい、つい長時間レベル上げをさせてしまったのだ。

 いや、させてしまったというのは多少正しくないかもしれない。

 あの二人は自分たちが連れて行かずとも、あの勢いならば自ら長時間のレベル上げをしてたとは思う。けれどそれを止めなかったのは自分の責任だ。初心者支援ギルドとしての立場上、リアルに影響を及ぼさないようにたしなめる事も自分の義務なのだ。


(けど、あれだけ上達早いと、ついこっちとしても力が入っちゃうんだよなぁ……。反省しないと)


 彼らは三日前に出会った時は完全に初心者だった。

 どうやら操作方法もろくに知らなかったようで、カオスゲートの広場で右往左往していた。そこへたまたま通りかかったシラバスとガスパーは、初心者支援ギルドとしてその様子を見過ごせるはずも無く、彼らに『The World』を一から説明していったのだ。

 聞くところによると、二人ともゲーム自体が初めてという非常に珍しい人間だった。ゲームをやったことのある人間なら、なんとなく感覚である程度の操作方法はわかるものだが、完全にゲーム初心者な二人は走ることすらままならない有様。その日の内は『The World』の仕組みと、基本的な操作方法を教えただけで終わってしまった。

 二日目はこのゲームをやる上で重要なこと、戦闘を教えることにした。初心者用のエリアを選んだものの、満足な操作が出来ない二人はあっさりと、それこそシラバスたちのサポートも間に合わず、ゴブリン達にやられてしまった。

 すぐさま『蘇生の秘薬』で戦闘不能状態から回復させて再挑戦したものの、どうにもうまくいかない。

 無論ガスパーと協力してサポをしていたが、自分たちだけで倒させて欲しいと二人の強い要望で回復だけに専念しておいた。

 そうしてしばらくは何度も挑みかかっては返り討ちにあう繰り返しだった。それから何時間経っただろうか、たっぷり買い込んだはずの回復アイテムが尽きてきた頃に、ようやく3匹のゴブリンのうち1匹を倒すことが出来た。


『やった! その調子だよ!』

『頑張ってだぞぉ~!』


 応援しつつ、大急ぎで回復アイテムを二人へと使う。

 それから1匹目を倒してから10分後に2匹目を、最後の『蘇生の秘薬』を使って復活した直後に3匹目を倒すことが出来た。


『初戦闘、それと初勝利おめでとう。頑張ったね!』

『おめでとうだぞぉ~!』


 二人は戦闘の緊張から開放されたのか、ぐったりとしていた。

 しかしそれでも、その顔には満足そうな表情が見え隠れしていた。


『あ、けど回復アイテムなくなっちゃったや……』

『オイラもなくなちゃったぞぉ。明日までに買い足しておくから、また明日待ってておくれぇ』


 二人のうちの、大柄な格好をした撃剣士の男が身を起こす。すると、アイテムは買わなければいけないものなのか、と聞いてきた。そういえばアイテムの説明をしていなかったなと苦笑いしながら、『The World』における通貨――GPで買わなければいけないものであることを説明した。

 すると、もう一人の女の子に申し訳なさそうな顔をされ、『貴重なアイテムを使わせてゴメンなさい』と謝られてしまった。

 慌てて首を振って『そんなのはいいよ』と説明したものの、どこか責任を感じさせてしまったようだった。

 結局その日は戦闘を続けることが出来ず、そのままお開きとなった。少し街をうろついてみたい、と言う二人を残してガスパート一緒にログアウトしたのだが、その翌日――つまり昨日に会って仰天した。

 なんと、二人は持てるぎりぎりの量まで回復アイテムを買い込んで待っていたのだ。一体このアイテムをどうしたのか聞くと、あれから一晩かけてお金を掻き集めて買ったらしい。


『蘇生の秘薬、癒しの水、解毒ソーダ、妖精のオーブ、導きの羽……うわ、装備品まで!?』


 戦闘をしてお金を稼ぐこのゲームで、戦闘が出来ないというのにどうやってこれだけのアイテムを集めたのだろうか。不思議に思って聞くと、片割れの撃剣士の子が提案した転売――安く店などから買った商品を他所へ高く売る商法――を行なった結果らしい。

 手持ちのお金は初期値のまま、つまり2000GPほどしかなかったはずだ。その少ない所持金から転売のみで、アイテムを満杯に買い込んでその上装備品まで買い揃えるというのは並大抵のことではないはずなのに……。

 聞くと、あの後二人は街の売り物、需要の高いアイテムや装備品、出回っている商品の市場価格を徹底的に調査したらしい。その上で、女の子は街を駆けずり回って厳選した商品を買出し、それを並々ならぬ商才を発揮させた撃剣士の子が一番利益の出る方法で売りさばいた、ということだった。


『もしかして……二人とも、あれから寝てないの?』


 二人はやや気まずそうにしながらも頷いた。

 呆気に取られながら、シラバスはすぐに眠るように説得した。『The World』を楽しんでくれているのは嬉しいけれど、リアルに影響が出るほどプレイしてはいけない、現実あってのゲームなのだから、と言ってはみたものの、二人は頑として聞かなかった。

 仕方が無く『今日一日プレイしたらたっぷり眠る』という条件で昨日の続き――戦闘の練習に出かけた。シラバスたちの方でもアイテムは用意していたのだが、練習が終わる頃にはまたも全てを使い果たしていた。

 ――ただし、二日目とは全く違うパターンで、である。

 二日目はゴブリン三匹を倒すのが精一杯だった。しかし昨日は……三日目は違った。まるで別人ではないかと思えるほどの戦闘センスを発揮した二人は文字通り怒涛の勢いでモンスターをなぎ払っていったのだ。

 そのままエリアを渡り歩き、アイテムが尽きるまで狩り続けた結果、二人のレベルはあっという間に上がっていった。あまりの変貌ぶりに聞いてみたところ、あの後はアイテム収集だけでなく戦闘のおさらいもしていたとの事。

 よほどの集中力なのか、教えられたことは決して忘れず、また自分たちで反省点を一つ一つ洗い出して克服していっている。元々のプレイヤースキルが低いことを考慮しても驚くべき成長速度だと思う。


『す……すごいぞぉ……』


 隣ではガスパーが呆れたような褒めているのか判らないような表情をしていた。恐らく後者だろう。

 結局、アイテムが尽きるまで狩りは続けられ、終わる頃には日が暮れていた。


(今日は来ないかも……)


 とぼんやり考え始めた頃に、ゲートから二つの光が生み出された。


「あ~、来た来たぁ~!」


 光はまだ形を得てはいない。転送中のようで、これではどんな人が転送されてくるのかは分からない。だと言うのに、ガスパーは早々とあの二人だと判断したらしかった。


(余程待ち遠しかったんだな……ガスパーらしいや)


 クスリと微笑んでいると、光は次第に一定の形に収まり出した。どうやら今回のガスパーの勘は当たっていたらしく、見知った姿へと光は形を変えた。


「ふぃ~、間に合った! ぎっりぎりだったな」

「スケアが寝過ごすからでしょ。何度も起こしに行ったのに」


 口を尖らせた女の子にたしなめられながら、体つきの良い撃剣士が手を振ってきた。


「あ、いたいた。おーい!」

「こんにちはシラバスさん、ガスパーくん」

「こんにちはだぞぉ~」

「うん、こんにちは」


 時計を見るとちょうど約束の時間になったところだった。


「遅れてゴメンなさい。スケアったらいつも愚鈍でだらしなくて時間にルーズでどうしようもない馬鹿なんですけど、許してあげてください」

「……おい、ちょっと待て。なんで俺がそこまで言われなきゃいけねーんだ……」

「遅れたのは事実でしょ?」

「それはそうだがどうしようもない馬鹿ってなぁどういうことだっての!?」

「うん、だからそれも事実でしょ?」


 ごく当たり前のように断言した。すごい。


「ったく……『こっちゲーム』でぐらいその毒舌どうにかならねえのかよ。そんなこっちゃすぐにアイツにもバレるぞ、あさ――」

「“憤怒の爆炎バクドーン”!」


 ――瞬間。力強く放たれた言霊に応じ、黒き精霊が文字通り怒りの炎となって襲い掛かる。

 あっという間に炎はスケアの全身を包み込み、盛大に燃え盛った。

 数秒後、呪紋の効力が切れるに従って炎も燻りを残して消え、後には黒焦げになったスケアだけが残った。



「私の名前はメイプルでしょ、間違えちゃ駄目。ね?」


 魔導士ウォーロック――メイプルは、黒焦げになったスケア……というか炭の前にかがみこみ、にっこりと微笑みつつ首を傾げる。子犬に言って聞かせるような柔らかい笑みだった。行動と表情が全く一致していないのがなおのこと恐怖を煽る。


「い……いきなり人を燃やしやがって……死んだらどうする!?」


 スケアは――というよりも炭は何事もなかったかのようにむくりと起き上がった。

 なんで生きているんだろう、とシラバスは本気で不思議に思った。


「殺したって死なない人は何度殺しても罪にならないでしょ?」

「ざけんな。いかに神さえも超越したウルトラヒーローな俺だって殺されたら死ぬっての」

「ホントに?」

「当たり前だろ……っておい、ちょっと待て。なんで魔典を構えてんだよ」

「え? ホントに殺したら死ぬのかどうか試してみようかなと思ってたんだけど……」

「試すなぁ! 死んだらどうする!?」

「お線香ぐらいなら上げてあげるね」

「色々と待てえぇぇぇぇぇぇ!?」


 限りなく本気の目をしてメイプルは魔典をかざした。慌ててシラバスとガスパーが止めに入る。彼女のほんわかとした笑顔が一瞬、愛憎劇にでも出てきそうな凄まじい笑みに見えたのは何故だろうか。


「ま、待って待って! 友達同士なのにPKはよくないよ!」

「そ、そうだぞぉ~。どんな人でも殺されたら死んじゃうぞぉ!」

「けど、黒焦げになっても生きてるんですよ?」

「……えと、それは確かにおかしいんだけど」

「でしょ? だから、一度試しといた方がいいかなって……」

「「だ、駄目ー!」」


 二人がかりで必死に説得する。


「……判りました。確かにスケアに呪紋使うのも勿体無いし、やめておきますね」

「微妙に引っかかるが是非ともそうしろ。ったく、いきなりパーティメンバーに呪紋ぶっ放すなよな」


 不満げに――当然だが――スケアがぶつぶつと愚痴をこぼす。それをよそ目にメイプルは空を仰ぎつつ――


「仕方ないか。あとで試そっと」

「今なんか不穏なこと言わなかったか!?」

「気のせいだよ」


 やはりにっこりと断言する。小動物のような、愛着のある笑顔が一層、台詞の不穏さを際立たせていた。


「そ、それじゃ、レベル上げに行こうか!」


 気を取り直してシラバスは提案する。


「二人とも昨日で大分レベル上がったからさ、今日はダンジョンに行ってみようと思うんだけど」

「ダンジョン……えぇと、地下に潜っていくやつだったっけか?」

「そういうのもあるけどぉ、階層が分かれてるだけのダンジョンもあるんだぞぉ」

「ダンジョンの方がフィールドより難しいんですか?」

「うん。というよりも、仕掛けとかが多いんだ。罠とか、蒸気式の扉とかね」

「あー、レベルは上げられんの? ダンジョンでも」


 スケアがやや心配そうに訊ねてきた。どうやらレベル上げにこだわりがあるらしいな、と思いつつシラバスは説明を続けた。


「うん、モンスターもフィールドより多くいるからレベル上げも出来るよ」

「そっか。よし、んなら問題ねえや!」


 スケアは快活そのものの声で返事をする。聞いている側も元気が出るような、すっきりとした声だった。

 そこへガスパーが首を傾げる。


「ねぇねぇ、二人ともなんでレベル上げたいの~?」


 ガスパーも同じことを考えていたらしく、自分でも疑問に思っていたことを聞いてくれた。

 プレイする上で必要なレベルを上げたいというのは至って普通のことだ。レベルが高いのと低いのとでは、自然やれることの幅も違ってくる。このゲームの全てを体験したいと言うのならレベル上げは必須事項だ。

 しかし、『The World』はレベルだけが全てのゲームではない。

 この世界には現実に限りなく近く、それでいて現実では決して出せない美しさを秘めた場所がいくつもある。

 最初はそういった場所に連れて行こうと思ったのだが、二人はまずレベル上げがしたいと申し出たのだ。

 ゲームをやりなれている人間ならそれもわかるが、この二人は三日前に始めたばかりの初心者なのだ。初めて『The World』をプレイした人間は普通ならそのスケールの大きさに驚き、様々なものに興味を示す。だと言うのに、二人は最初からレベル上げを目的としていたらしかった。

 かといって、それ以外に興味が無いというわけでもないらしい。見たことの無いエリアに行ったり、変わった姿のモンスターに出会ったりすると大いに興味を示し、それら未経験のものを楽しんでいるように見える。

 だと言うのに何故、二人はレベル上げに執着するのか。シラバスはそれを知りたかった。


「ん~、なんでかっつったら説明すんの難しいんだけどな……う~む」

「そうだね……どう言ったらいいのかな」


 二人はその問いに対して考え込んでしまった。

 ガスパーは軽い気持ちで聞いたのだろうけれど、対する二人のその様子は真剣そのもので、どこか切羽詰った印象を受けた。


「……なんつーか、余裕がないってのかな」

「余裕~?」

「おぅ。レベル上げ以外のことをする余裕がねえんだ、俺ら」


 上手く言えないんだけどよ、と付け加えながら説明するスケアの後を継ぐように、メイプルが口を開く。


「やらなきゃいけないことがあるんだけど、その為には強くなくちゃいけなくて……。だから、まずはレベルを上げなきゃいけないの」

「――そっか」


 シラバスはコクリと頷き、それ以上聞くのをやめた。

 ここから先は詮索してはいけない領域だ。自分にはわからないけれど、きっと二人には『大事な何か』があるのだろう。

 横を見るとガスパーが首を傾げていたが、その肩をポンと叩いて微笑みかけた。それで、ガスパーもこちらの意図を汲んでくれたようだった。


「よし、それじゃ改めて行こっか。ちょっと強めのダンジョンの方が経験値を稼げるから、頑張ってみよう!」

「よーし、張り切っていくぞぉ~!」

「おっしゃ、行くか!」

「頑張ろうね」


 ゲートが起動し、四人が光に包まれる。

 光は細かく分かれた極最小の粒となって、空を飛翔し、カオスゲートへと向かっていく。

 その日のうちに二人――スケアクロウとメイプルはレベルを倍近くにまで上げた。

 ただ、彼らの宝のいる場所まで辿りつくべく。















To be Continue







感想を下さった読者様へ



>「三爪痕を知ってるか?」
>楽しませていただいています。
>これからも頑張ってください!


 楽しんでいただけているようで嬉しいです。頑張りも新たに、鋭意執筆させていただきますね!



>「三爪痕を知ってるか?」
>原作では裏ヒロインとも呼ばれている揺光が遂に登場ですね。
>個人的にも一番好きなので活躍してもらいたいです。


 揺光ですが、活躍の場は本編同様にありますので、どうぞご安心を~♪









作者の蒼乃黄昏あおのたそがれです。

小説を読んでいただきありがとうございました。

簡単な一言でいいので、ご感想を頂けると嬉しく思います。

ご感想をメールで下さった方には、お返しに

『第零話:終わり逝く世界』をお送りさせて頂いてます。




作者蒼乃黄昏さんへの感想、指摘等ありましたらメ-ル投稿小説感想板に下さると嬉しいです。






.hack//G.U.Chronicle

第二十六話 :ふたり













友よ


今も君は其処に在るのか