StS After -Sibling Knot- Sister's High


































雨は好きではない


いい思い出が一つも無いからだ

























父さんと母さんが死んだ日


朝から雨が降っていた




兄さんが死んだ日


午後は雨が降っていた




兄さんのお葬式の日


あの人が兄さんを罵倒した直後、

雨が降りだした




そして今日、兄さんの、兄さんを友達だと言ってくれた人の告別式

























やはり今日も、朝から雨だった


































My Bloody Holiday


































事件が起こったのは局員二人が惨殺された日から3日後。彼は同じく惨たらしい死に様で発見された。

普段ならば海にいる私達に届く事はないその事件の詳細。

しかし、今は陸にいる私達、まして追っている事件との関連性を否定出来ないのだから必然、報告として私達の下へ届けられるその訃報。


聞きたくなどなかった。

知りたくなどなかった。


フェイトさんも私に報せるか迷ったようだった。

しかし、どのみち分かる事。報せない訳にはいかなかったのだろう。フェイトさんだってきっと私に言いたくなどなかったはずだ。

そんな事くらい、言われなくとも理解していた。




幸い、私は取り乱す事はなかった。(内心、激しく傾いだし、叫び出したい気持ちでいっぱいだったが)

ただの一度きりしか会っていない事が幸いしたのかもしれない。

そう、あれが最後などとは夢にも思わなかったから。

食事の約束も取り付けた、兄さんの話を聞かせてくれると言った、最後に見せた微笑が、どことなく兄さんに似ていた。



私はフェイトさんに1日だけお休みをもらった。

もう一緒に食事をする事は出来ないけど、せめてお葬式には出なければ。




同じ局員の一人として



彼の友の妹として


































外では雨が降っていた。が、中はそんな外界とは隔絶された空間が広がっていた。

ここにいる誰もが彼の死を悼み、嘆いていた。



神父が彼の名を紡ぐ。

私は今日、初めて彼の名前を知った。

どことなく高貴な感じのする、有り体に言えば、いい名前だった。

私は必死に過去の記憶を手繰り寄せ、その名を聞いた事がないかを思い出そうとした。

しかし、やはり初めて聞く名だった。

思えば、兄さんは家で仕事についての話をする事はほとんど無かった。せいぜい、私がせがんだ時くらいだ。

その時でさえ、あまりいい顔はしていなかったような気がする。(大抵は私が一方的に喋っているだけだったが)






そうして、式も終わりが近づいてきた。




棺桶が運び出され──




──ばたん




る前に、扉の開く音がした。

その場にいた人々が音がした方向を見やる。




──そして、一斉に立ち上がり敬礼をした。




そこにいたのは、紛れもなく、間違えようもない




「マクシミリアン・デューゼンバーグ……中将…………




現在の地上本部のトップが、そこにいた。






彼は片手でその場を制し、真っ直ぐに壇上へと向かった。


そして一言、




「彼の働きに敬意を表する。」




と言って静かに手を合わせた。




私はと言えば、それを複雑な心境で眺めていた。



安堵と嫉妬



怒りと喜び



困惑と理解




それらが合わさったような、しかし、混ざったが故に元の''''が何なのか分からなくなって、



それでも、その中で私が懐いた確かな想いは──




──ああ、''今回''''違う''んだな──




ただ、それだけだった。


































式は恙無く終了した。



しかし、私はと言えば、彼の墓の前で手持ちぶさたにただ立ち尽くしていた。

実際、感傷に浸っている暇は無いし、1日お休みをもらったとはいえ、要件が終わったなら今すぐにでも戻って仕事をすべきなのだが、

足はまるで地面と同化したかのように、そこから一歩も動く事が出来なかった。



雨は式が終わる頃には小降りになっていたが、私の傘は誰かが持って帰ってしまったのか、式場の傘立てから姿を消していた。

それ故、私は傘も差さずに、夏と言うには些か寒すぎる空の下、ただただ、立ち尽くしていた。



雨粒が静かに私の身体を打つ。




涙は、ついぞ流れなかった。我ながら自分の冷血さにほとほと呆れ返る思いだった。

だからなのだろうか、私がここにこうして立ち尽くしているその最たる理由は。あるいは贖罪……と言うほど大袈裟なモノではないだろうが、

涙の一滴すら流れない罪悪感から、せめて雨に打たれる事でその不浄を洗い流そうとしているのかもしれない。

頬に当たる雨粒が流れ落ちれば、それは確かに涙に見えない事もないだろう。それが、喪服を着て、墓の前にいるならば尚の事。



自嘲気味に、吐息が溢れる。




──卑しいな




別の意味で泣きたくなってきた。

そんな姿など今まで一度だって見られたいと思ったことなどないというのに。

いや、今だって見られたい訳じゃない。しかし私がココでこうしている現実。

心で否定しても躯は着いては来なかった。

一度定着した負の概念を拭い去る事は、今の私には難しかった。

つまるところ、私は今の私を誰かに見つけてもらいたいのだろう。

証が欲しいのだ。彼が死んで私が悲しんでいるという確かな証拠が。

しかし、今の私からは涙は流れない。ならばどうするか。


他者の存在によって確立させるのが最も簡単かつ確実な方法だろう。

ここにこうして突っ立ってる事で私という個体が悲観に暮れているという錯覚を第三者に求めているのだ。

冷静に分析出来る辺り、いよいよ真実味を帯びてきた。ホント、私は何しに来たんだろう…………



俯く私を雨が濡らす。しとしとと髪を滴る水はぬかるんだ地面へと吸い込まれていく。


不意に、雨脚が弱く、いや、止んだ。

視線を上げると傘の内側が見えた。私の持ってきていた何の変哲もないビニール傘ではなく、シックな、葬式にはぴったりな黒い傘だった。




「傘も差さずにおられたのでは風邪を引いてしまいますよ。」




女性の声だった。柔らかな、それでいてどこか憂いを孕んだ声色。

私はそれに何故か険のある口調で答えた。




「ありがとうございます。ですがご心配には及びません。この程度で風邪を引くようなヤワな鍛え方はしていませんので。」




嘘だった。というか、風邪に鍛え方も何もあったもんじゃない。

先程の弁と相反する感情。涙(流してはいないが)に暮れる自分を見られたくないというプライドが私の躯を拘束し、言葉を垂れ流していく。

相克する感情は私をあらゆる方向から捕らえて縛り上げていた。



こんな無意味で見苦しい八つ当たりをするなんて……この人だって親切心から言ってくれてるだろうに、私ときたら……

それでも、やっぱり私のちっぽけな自尊心は自分の体裁を保つ事を選択していた。

振り向く事さえしない私をどう捉えたのか、すぐ後ろからため息が一つ。




「困りましたね……貴女が望まないのであれば無理強いは出来ませんし……かといってこのまま私が帰ってしまって貴女が風邪を引かれたのでは、

''兄の墓''を参ってくれた方に対して申し訳ないですし、''''にも会わす顔がありません……




その言葉に私は勢いよく振り返った。

彼女は驚いた様子で右手に持った傘を取り落としていた。

しかし私はそんな事はまるで意に介さず、半歩、彼女に詰め寄った。




「あのっ、失礼ですが、貴方のお兄さんって……



「今そこに眠っていますよ。''ティアナ・ランスター''さん。」




──私の、名前


































「すみません、シャワーまでお借りしちゃって。」



「いえいえ。私の方こそすみませんでした。お仕事もあるでしょうに、引き止めてしまって。」



「ああ、いえ、いいんです。今日は一応、お休みをもらっているので。」




火照った体にエアコンのそよ風が心地好い。



彼女と墓地で出会った後、私は彼女の家に招かれ、彼女の勧めでシャワーを借りていた。

そう、彼女はあの人の、兄さんの友達だと言ってくれた人の''''だった。




「そうですか。でしたらゆっくりしていらして下さい。お話したい事もありますし。」



「え、は、はぁ……



「今、お茶を煎れますから少し待ってて下さいね。」




そう言う彼女はとても穏やかな笑みを浮かべていた。それこそ、肉親が死んだ人のようには見えなかった。


彼女は立ち上がるとキッチンへと向かった。

私はその後ろ姿を手持ちぶさたに眺めながらぼんやりと考えを巡らせていた。



──どうして、あんな風に笑えるんだろう。



肉親が、たった一人の兄が死んだ、いや、殺されたのなら他人を気遣う余裕など無いのではないのか?

聞けば彼女も両親を早くに亡くし、兄と二人で暮らしてきたのだという。

ならば、尚更自分の気持ちが先行するのではないのだろうか?




……未だに、実感が湧かないのかもしれません。」



「へっ?」



「頭では解ってるのに、心では否定してる。兄はまだ死んでないと、そう、思っているのかも、しれません……

おかしいですよね。もう、亡骸だって見たっていうのに…………その時は大泣きしたんですけどね。

それ以来、さっぱりで……一生分を使いきったなんて事もあるかもしれません。…………すみません、いきなりこんな話して……



…………




私は、バカだ。

平気な筈がないだろう。

笑える訳がないだろう。

それでも彼女は笑顔でいようとしているんじゃないか。

それを、私は…………




「さ、お茶が入りましたよ。」




彼女は、私が何事か口にする前にティーカップと茶菓子を私の前へと置くと、やはり先程のように柔らかな笑みを浮かべ、喋り出した。




「そんな顔をしないで下さい。確かに今は涙は流れないけど、この先ずっとこのままなんて保証は無いのですから。

……そうですね、このままでない保証もまた無いです…………でも、それなら私は希望のある方を選びます。

今はきっと兄が、私の涙を止めてくれているのだと、そう、思います。兄は私が泣くのが嫌いでしたから。

自分の為に泣かれるのも嫌だったのでしょう…………まったく……迷惑な話です。まるで呪いのようではありませんか。

その内化けて出るんじゃないかって、そう思ったりもするんですよ。」




決して茶化してなどいない。しかし、その言葉には彼女の暖かな感情が、彼女と兄との、あるいは絆のようなモノを感じ取れた。




「貴方は……貴方は、強いんですね。」




自然と口からこぼれていた。紛れもないその感情は、あるいは羨望だったのかもしれない。




「いいえ、私も貴方と同じですよ、ティアナさん。強いのではありません。強くならなければならないのです。強くならなければならなかったのです。

喪失の痛みに耐えうるには、私達は等しく強く在らねばならないのです。それに……私には、貴方の方がよほど強く見える。」




私が……




「私ももういい年です。子供ではありません。世間の渡り方も知っていれば、感情との折り合いの付け方も心得ています。

でも、貴方はそうではなかったはずです、ティアナさん。幼く、身寄りも無かった貴方が今や立派に管理局員、

引いてはあのハラオウン執務官の補佐をこなすまでになっています。

私からすれば、貴方の方があらゆる面において、強く映ります。貴方に比べれば、私など……




彼女はそう言って寂しげな笑みを浮かべた。




──ぎゅっ




「へっ!?  あ、あの……




彼女の驚いた声に自分が彼女を抱きしめている事に気づいた。




「あの……ティアナ、さん……?」



「ありがとう。」





自然と口がその言葉を紡いでいた。



認められる事がこんなにも嬉しく、こんなにも心の奥が暖かくなる物だと、私は今更ながらに実感した。



私が求めていた物はこの言葉だったのだ。貴方は強いのだと。そう、言って欲しかったんだ。

貴方の兄は強かったのだと。故に貴方も強いのだと、そう、言って欲しかったのだ、きっと。




彼女も何も言わずに抱き返してくれた。


































どれくらいの間抱きしめ合っていただろう。

あるいは5分、あるいは10分、もしかしたらそれ以上だったかもしれないし、秒単位だったかもしれない。

しかし、私達の間には既に、何年も連れ添った友達のような、独特の空気が流れるようになっていた。



色んな話をした。

互いの趣味、互いの趣向、互いの好き嫌い、互いの過去。そして、互いの兄についても。




ひとしきり話終えたところで彼女は何かを思いだしたように声をあげ、私にここで待つように言って、隣の部屋へと向かった。



再び手持ちぶさたになった私はぼんやりと考えを巡らせた。




雨の日、私が嫌いな日。




父さんと母さんが死んだ日


朝から雨が降っていた




兄さんが死んだ日


午後は雨が降っていた




兄さんのお葬式の日


あの人が兄さんを罵倒した直後、

雨が降りだした




そして今日、兄さんの、兄さんを友達だと言ってくれた人の告別式。




やはり今日も、朝から雨だった






でも、今日は雨のおかげで彼女に逢うことができた。

どうやら雨の日も悪いことばかりという訳ではないらしい。


窓の外を見れば雨脚は依然変わらず、傘が無ければ外に出ることはしないであろう勢いだ。

どんよりとした雲は、ついさっきまでの私の心情風景をそのまま切り取ったかのような、くすんだ灰色をしている。

しかし、私はもう沈んではいなかった。



私と同じような境遇に立ち、それでも尚、それをすら笑い飛ばそうとする。そんな素敵な人に出会えたのだから。



私はこんな性格だから、交友関係は決して広くはない。

特に自分から友達を作ろうとも、この人とは仲良くなっておきたいなどと思ったことはなかった。

しかし、彼女とは仲良くなりたかった。


今以上に、これ以上に。


スバルが聞いたら驚きつつも少し妬くであろう事を考えつつ、私は少し温くなったお茶を啜った。








しばらくして、彼女は隣の部屋から戻ってきた。




「すみません、お待たせしちゃって。」




そう言う彼女の腕の中には一冊のノートと、数冊のハードカバーが抱かれていた。




「それは……?」




私が訊くと、彼女は黙ってそれを私に差し出した。なんだか良く分からないが、読めということなのだろう。

私はそう納得し、薄いノートの方を開いた。


































・ホテルミッドチルダ内のレストラン×

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・ホテルアグスタ内のレストラン○(ただし遠い)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・「RED ZEPPELIN」○

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・「Nothing's Carved In Stone」◎

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・「Abby Road」○

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・「Honky Tonk」△

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・「Buddy Holly」○

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・「Pulling Teath」△

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

・「American Idiot」△

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ヒメガミに訊く

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

現地調査

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

いっそ本人に希望を訊く

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

































ノートを開くと、最初の数ページは落書きや、メモだったが、しばらく捲っていると、そんな亊が書き込まれてたページにたどり着いた。




「これ、は……



「貴方とのデートプランですよ、ティアナさん。」




恐らく、◎や○が予約が取れそうだったり、雰囲気的にいい場所なのだろう。色々と調べ込んでいるようだった。




「年甲斐もなく張りきってたみたいでした。まぁ、貴方ほどの美人と食事ともなれば、兄でなくとも同じようなものでしょうけど。」




そう言って彼女は笑みを一つ。

そして、残りのハードカバーを私に手渡した。


重たい表紙を開くと、それが何であるのかが分かった。

でも、これは……



私は視線を''それ''から上げて、彼女を見る。

彼女は無言で頷くと同時にとても優しい表情を私に向けた。

答えは、それで十分だった。






中身は、彼の日記だった。



その日1日の出来事がかなり詳細に示されており、日記と呼ぶには些か細かいような気もしたが、そこは人それぞれだろう。

しかし、そのおかげで私は知ることが出来た。垣間見ることが出来た。




兄さんの、生きた証を。






この日記を見る限り兄さんと彼の仲はかなり良いのだと判断できるだろう。

ちょっとした失敗談から、事件解決の時の様子や、他にも、およそ私が知らない兄さんの姿が、そこにはあった。

そう、この日記は、彼があの日言っていたように、兄さん自体の交友関係の広さの裏付けでもある。



読み進めていくうちに、私の知らなかった色々な兄さんの側面を知る事が出来た。

中でも一番驚いたのが、兄さんにはなんと彼女がいた事、これに尽きる。

いや、妹の私から見ても兄さんは顔立ちもかなり整っていたし、彼女の一人くらいいても全然おかしくはないのだけど、

どうにもそんなイメージは沸いてこなかったし、そんな素振りも見せた事はなかった。

まぁ、兄さんにべったりだったあの頃の私が、そんな人を認めたかどうかは、微妙なとこではあるが……

兄さんもその辺を理解しての事だったのかもしれない。



そのお相手はというと。どうやら、管理局の技術者のようで、名前は「エイリアス」と記されていた。

私は、その名をどこかで聞いたような気がしたのだが、終ぞ思い出せず、そのまま日記を読む作業へと戻った。






そして、日記の日付は''あの日''に辿り着く。



しかし、私はそこに書いてある文字を読む事はなかった。いや、読めなかったのだ。

何故なら、そのページから、以降数ページに渡り、インクが滲んで、文字の判別が不可能になっていたからだ。



ぐちゃぐちゃに、ぐちゃぐちゃになっていた。紙面も、恐らくは彼も。



彼の日記を読んでいて分かったのだが、彼はその日、どんな事があろうとも日記をつける事を欠かさなかったようだった。

失敗談も一つや二つどころではない。



そして、それは''あの日''も例外ではなかった。

だから、読むことができなかった。


兄さんの死に際して、彼は、涙を流してくれていたのだ。



それ以降数日間に渡り滲んだインクが紙幅を埋めていて、遂に一週間から先のページは破り捨てられていた。


私がその日記を閉じると、彼女はもう一冊の日記を私に差し出した。

最初のページの日付を見ると、割と最近つけられた日記だということが見て取れる。


そうして私はまた日記を読み進める作業へと埋没していく。


さっき読んでいたのは、もう8年も前の物ではあったが、

こちらの日記も書き方はそう変わってはいなかったので、特に違和感を抱く事もなく読み続けていた。



その内、日記はとあるページにたどり着く。


そこには、今までの割と淡々としたモノではなく、どこか生き生きとした文体で書かれたある日の出来事が記されていた。



それは私と彼が最初にして最後の会話をした日の事だった。



よほど嬉しかったのか、なんだか読んでいるこっちが恥ずかしくなる様な内容だったが、不思議と悪い気はしてこなかった。

それどころか、嬉しさすら込み上げてきた。読めば読むほど、本気で私を案じていてくれた事が分かり──




自然と、涙が溢れていた。




さっきまではどうやっても流れ出してこなかったというのに、ここに至って、私は喪ってしまった人の大きさを実感する事になった。


もっと話したかった。

もっと、もっと……



しかし、それは叶わない。彼はもういないのだ。


兄さんと同じように、いってしまった。



忘れたはずの痛みが再び私を襲っていた。


──喪失の痛み



今更になって、私はそれを自覚したのだろう。

涙は止まらなかった。




──ぎゅっ




ふと、涙に濡れる体が暖かい感触に包まれる。


彼女が、私を抱きしめていた。



先程とは真逆の光景。しかし、感謝するのは、結局私の方で──




私は、先程の彼女に倣い、何も言わずに抱き返した。


































「すみません、フェイトさん。明日はきちんと出るので。」



「うん、分かってる。今日は気にしないで大丈夫だよ。色々話したいこともあるでしょう?」



「はい、ありがとうございます。」



「うん。それじゃあ、また明日。」



「はい。失礼します。」



……大丈夫でしたか?」



「うん。フェイトさんって、結構融通利かせてくれるの。」



「そうですか……すみません、お引き止めしちゃって。」



「いいのよ。その……私もまだ色々話したかったし……




私が若干照れながら言うと彼女はにっこりと微笑んだ。




あの後、そろそろ帰ろうと立ち上がった私の服の裾を遠慮がちにつまみ、彼女は私に泊まっていかないかと提案した。

最初は断ろうかとも思ったのだが、彼女は私の服を洗濯してしまったと言うので、仕方なくフェイトさんに連絡を入れる事にしたのだった。

(思えば、私が今着ているのは彼女に借りた物で、そのまま帰られても困るというのもあったのかもしれないが。)

しかし、彼女の私を引き止める時の行動は、実に凄まじい破壊力を伴っていた。

私が女だから良かったようなものの、これが男だったなら貞操の喪失は免れなかっただろう。その辺、後でじっくり彼女に教えなければ……




「じゃあティアナさんが泊まっていってくれるので、今日は腕によりをかけて晩御飯作りますね。

期待してて下さ…………あ、材料全然無いんだった……待ってて下さい、直ぐに買ってくるんで。」



「いいわよ、そんな……買い物行くなら私も付き合うわよ?」



「ダメです。ティアナさんはお客さんなんですからここにいて下さい。」




彼女は私の鼻先10cmのとこまで顔を突き出して言った。

しかし、そういう訳にもいかないだろう。荷物持ちくらいはしなければ……




「手伝うわよ。今日は忙しくて疲れてるでしょ?」



「ダ・メ・で・す!」



「いや、でも……



「ダ・メ・で・す!」



「いや、あn「ダ・メ・で・す!」」




どうやらけっこう頑固者のようだ。こういう手合いには何を言っても無駄である。

…………自分もそうだし……




「分かったわよ……




私がため息混じりに呟くと、彼女は納得した様子で出かける準備を始めた。


ものの数分で準備は終わり、彼女は意気揚々と買い物に出た。











''じゃあ、お留守番お願いしますね''、じゃないわよ、まったく……




彼女にはどうやら一般的な危機感覚というモノが備わってない、もしくは機能していないようだった。その辺、帰ってきたらきっちり教えこまないと……



そこまで考えて、事件は今もって継続中だというのに我ながら暢気なもんだと若干呆れた。




しかし何の事はない。つまるところ、彼女もそうであるように、私も彼女のことが好きだった。




ただ、それだけのことだった。


































──こっち、こっち、こっち




時計の針の音だけが静寂に響く



あれから既に1時間が過ぎようとしていた。


彼女の話では、30分もあれば帰ってくるとのことだったが……

いくらなんでも遅すぎる。たとえ張り切って大量の食材を買い込んだとしても、倍以上かかるとは考え難い。




──ふと、厭な予感が頭を過る




そのイメージを、頭振って払拭し、立ち上がる。


もしかしたら、途中で荷物を落として困っているかもしれない。

野菜が坂道転がったりとか、そんな感じで。



我ながら突拍子もないとは思うが、その他の悪いヴィジョンは浮かべたくなかった。



椅子に掛けてあった上着と、テーブルの上に置いてあったクロスミラージュを取り玄関へ向かう。

鍵は預かってはいないので、そのまま出る事になるが致し方ない。後で謝ろう。

彼女の使っていた黒い傘を借り、外へ出る。




そうして私は、雨の中へと駆け出した


































Ghost In The Rain


































息を切らしながら雨の中をひた走る。



何をそんなに焦っているのかと自問したくもなるのだが、その答えを、想像を明確にはしたくなかった。



辺りは夜の帳が落ち始め、切れかけた街灯の明かりが不断続的にアスファルトを照らす。

水溜まりはそんな光を照り返し、飽和していく私の不安を煽る。



ぎりっ、と歯を食い縛り、水溜まりを踏み抜く私の表情は恐らくいいものではないだろう。




──また、''何か''を失う予感があった




最早悪い方向にしか向かない思考を閉じる。今は走れれば、彼女を視認出来ればそれでいい。




そうして5分ほど走り続けた辺りで、''それ''を見つけた。






──辺りに散乱する食材だったであろうモノ




──コンクリートのベッドに横たわるヒトガタ




──赤い、水溜まり




そして、




──街灯の下に立つ、亡霊






奇しくもそこは、私が''それ''が邂逅を果たした''あの''路地だった。



何もかもがあの日の再現のように思えた。



が、この降りしきる雨の他に一点、あの日とは違う事があった。




私の心は、感情はあの日と違い、メーターを軽く振り切って、




「──────!!」




声にならない叫びを上げ、私は警告も何もかも飛ばして、クロスミラージュの引き金を引いた


































──僕は雨に立つ亡霊





君は僕を見分けられない──


































終わったーーーー!!




やっと、終わった……




はい、どうも。光速ベスパです。


お待たせしました、StS After -Sibling Knot- Sister's High 第7話、「Ghost In The Rain」完成です。




…………待ってねー、とか言わないで……


いや、まぁ実際待ってねぇよ、お前のなんかみたいな人の方が多いでしょうけども。

これを機に次を心待ちにしてくれると嬉しかったりします。



今回の話は激しく難産でした。

時間もかなりかかっちゃいましたしね。


次もまた時間かかるかもしれませんが、また読んでいただけると嬉しいです。




それではまた、次の更新で。


































コメント返信








私は帰ってきたーーーーッ!!!!(←挨拶)


とまあ、こんな感じのテンションの双月です。

更新分を読ませて頂きました。


今回は、ティアナ達が追っている事件とはまた別の事件のお話という事でして、 

新しいキャラの名前が挙ったようなのですが、そのキャラはこの小説のオリジナルキャラなのでしょうか?

いや、実は本編に出ていて私の勉強不足ってだけかもしれませんが・・・・・・

この二つの事件はどうやら、何か関連性みたいなのがありそうですね・・・・・ 

この後の展開が楽しみです。


それとティアナは残念でしたね・・・・・・・

折角、お兄さんの友達と出会えたのにその三日後には・・・・・・だなんて。



そしてフェイトさん。

—————————————私なら、貴方を幸せにs(桃色の閃光の中に消し飛びました)






お帰りなさいませ、ご主人様。



毎回、感想どうもありがとうございます。




えーと、はい。デューゼンバーグ閣下もトライアンフの兄貴もフラタニティ姐さんもジルもナザもヴェサも、完璧にオリキャラでございます。

本編にはきっと欠片も出ていないはずです。更に、たぶんというか確実にまだオリキャラ出ます。



ついでに原作キャラで今後少しでも登場の''予定''がある人物は




「提督」

「司書長」

「査察官」

「博士」

「数の子」

「銀河」

「ラッド」

「パパリン」

「疾風」

「スナイパー」

「メガネ」

「■■■■」



ってとこですかね。



二つの事件に関連性があるかどうかは、今後にご期待下さいってことで、一つ。


お友達については、コレ書いてる時点まだ生きておられました。…………まぁ、今回はお葬式から始まってますがね……




……さて、いくら非殺傷設定とはいえ、バリアジャケットも着てない人にそれはマズくないですかね?




???「わ、私じゃないの!  というか、私とフェイトちゃんはそういう関係ではないの!」




だ、そうです。










あれ……ヒメガミ、さん……






「ほら、こんな反応が来てるじゃないか!!  どうしてくれる!!」



よかったじゃないか。モテモテだよ?



「絶対違うだろ!?」



仕方ないなぁ……ではヒメガミくんの為にフォローをば。


怪しい会話が目立つ彼ですが、一応は善人です。ええ、世間一般の善人の概念が当てはまるかは、まぁ分かりませんが。



「そのフォローになってないフォローを毎回するの止めてイタダケマセン!?」










作者さんへ

楽しく読ませていただいています。

はやく続編が見たいです!楽しみにしています!






感想、ありがとうございます。お待たせいたしました。

更新スピードはさほど速くはないでしょうが、これからも読んでいただけると嬉しいです。

さしあたっては次回、よろしくお願いします。





ヒメガミ「速さが足りない!」


うっさいわ!

















拍手は、リョウさんの手によって区分されています。

感想を頂く身でありながら大変恐縮ですが宛名を書いていただけると幸いです。

リョウさんのためにも是非とも私宛に限らず拍手には宛名をお書きになるようお願いします。









作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ-ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。