StS After -Sibling Knot- Sister's High





























──時は過ぎて真実は何故闇に染まる



いつか君の街の外れで気付いた



暮れる空の色は血のようだ──

































Banana To Butterfly




































あれから数日……襲撃犯はすっかりナリを潜めてしまった。

こちらの動きを警戒しての事なのかは定かではなかったが、事件が無いのはいい事…………と、素直には喜べないのがこの職業の困り所である。

確かに平和なのはいい事だ。その為に私達は働いているのだからこれ以上の職業上の喜びも無いだろう。

しかし、それが事件発生中なら話は別だ。こっちは時間の許す限り捜査を続けなければならないからどんどん疲弊していく。

それと反比例して相手は休息しているのだから当然疲れもないだろうし次への準備も進めていることだろう。

つまり、一度事件が発生してしまえば犯人が行動していようが休んでいようが私達は変わらず忙しいということだ。本当にタチが悪い。

狙ってやっているなら最早アクセル百連発どころの話ではない。那由多の彼方までドライブイグニッションだ。

や、誤解の無いように言っておけば決して事件が起きて欲しいわけではない。

ただし事件が起きてくれないと現時点より捜査が進まないのは悔しいが事実だ。

だから決して事件が起きて欲しいわけではないが起きなければ話にならない……酷いジレンマだ。まったくもって度し難い。

こちとらどんな小さな情報も逃さないように寝る間も惜しんで捜査捜査捜査だというのに、

奴さんときたらアジトでぷーすかぴーなんて寝息を立ててるかもしれないなんて想像したら腹が立つどころか腸煮えくり返ってボルケーノストライクだ。 チクショウ、私だって好きで肌に悪い事してるんじゃないんだよ。

それなのにフェイトさんと来たら私より多忙なはずなのに私より肌綺麗っていったいぜんたいどういう事なんだよ。

美の女神がいるなら万人に共通の肌繊維と色素と年齢を与えるべきだろう。

…………話が逸れたけど、結論としては現時点では前回戦闘で私の体を張って手に入れた情報以外は特には真新しい有益な情報は無いということだ。

忙しさに加えてモノも少ないんだからやってられないと日に30回以上思うのも仕方ないと思うんだ。

まぁ、忙しいには忙しいが犠牲者が出た直後に比べればまだマシな




「ティアナ、仕事だよ。」




決めた。野郎は次に逢ったら鳩尾にスバル直伝リボルバーブローをかましてやる。おもいっきり撃ち込んでやるから覚悟しとけ。


































>>>REST(YOU [CAN'T] SLEEP WELL)


































「やぁ、身体の調子はどうだい?」




「すこぶる良好だな。清々しい気分だ。」




「それは良かった。それじゃあ早速だけど仕事を頼まれてくれるかな?」




「また俺かよ……たまにはヴェサにやらせろよ。」




「彼じゃあ話にならないだろう?」




……オーライ、分かったよ。」




「それは何よりだ。」




「んで、今回のお仕事は?」




「なに、ただのお使いだよ。彼等に言ってきて欲しいんだ。そろそろ''''を出せ、ってね。」




「そのくらい通信で……




「まぁ待ちたまえ。ついでにこのプランを彼等に届けて欲しいんだよ。少々、厄介なのが嗅ぎ回っているようなんでね。」




「どれどれ……うわぁ……えげつねぇのな。まぁ、この兄妹じゃあ仕方ないけども。妹の方はどうすんだ?」




「君達に当たってもらうつもりだよ。そろそろ、一つ上のランクとやるのもいいだろう。まぁ、総出で当たれば負けることはないだろうけどね。」




「へぇ……そりゃあ、楽しみだ。」




「お使いが終わったら直ぐにでも。さ、行っておくれ。」




「了ー解でございます、閣下(マイグレイス)


































Banana To Butterfly



































…………酷い……




現場に着いた私は思わず顔を背けたくなった。



そこにいた、いや''あった''のは既に男女の判別が出来ないほど顔を腫らし、腕を曲げられ、足を捻られ、胸を抉られ、腹を裂かれ、裸に剥かれた遺体が、

いや、遺体と呼べる程上等な物では最早なかった。



──肉塊



元は人であった''ソレ''は、今や正しく''モノ''へと変貌を遂げていた。

……前衛芸術のオブジェ、いや、シュールレアリムスの域へと手を伸ばす''ソレ''は実に計画的に破壊されていた。



そう、ここで行われた事は闘争ではない。陵辱でもない。


創作だ。


人体を破壊するという創造がこの場で行われていたのだ。

それだけ壊し方に迷いが無かったのが''コレ''を見るだけで私にすら手に取るように分かった。



芸術が、展開されていた。



少なくとも、コレを創り出した者にとっては。


殺そうとしたのではなく、結果的に死んだ。ただそれだけの事。コレがもう少し頑丈だったならば死ななかったかもしれない。

恐らくコレを創り上げた者認識はその程度なのだろう。

この手のやり口の奴は総じて他人の生に関心が無い。少なくとも一人、私はそういう奴を知っている。




「お待たせ、ティアナ、シャーリー。」



「フェイトさん。お疲れ様です。」




フェイトさんは朝から外回りで私達とは別行動だった。やはり本職は補佐官とは頭一つ分くらい忙しさが違う。

しかしそれを全く感じさせない態度で捜査官に告げた。




「それでは、全員揃ったので現在判明している事の詳細説明をお願いします。」




その声に若干緊張気味の捜査官が言葉を紡ぎ出した。




「は、はい。

被害者はジル・ケーニグセグ、27歳、男性。地上部隊の局員で現在は機動一課のバックヤードで指揮統制を担当していました。

以前の経歴は中将閣下の元で首都航空隊のオペレーター、非常勤で空戦魔導士も兼ねていたようです。」




何気なく気になったのだろう。フェイトさんがその言葉に反応した。




「中将って言うと……



「現在の地上部隊を統轄されているデューゼンバーグ中将閣下であります。」




その言葉に自分で自分の顔が険しくなるのを感じ取れた。


手のひらが熱い。




「ティアナ……




シャーリーさんのその声に私は我に返った。


──握り締めた右手からは一筋の血が滴っていた。




ふと前を見ると、フェイトさんがこちらを向いて両手を合わせていた。

場を弁えてか、口にこそ出さなかったが言外に謝っているのは明らかだった。

私は首を小さく横に振り、「気にしなくていい」という意思を表した。


そう、もう終わった事だ。



捜査官が報告を続ける




「もう一人、被害者がいます。」



「もう一人?」



「はい。」




しかし、被害者の姿はあのオブジェ以外にこの場には存在していない。なら生きていて病院に……




「こちらの判断で''遺体''は運び出しました。……その、あまりにも見るに堪えないモノだったので……すみません、自分の独断先行です。

しかし、あのままにしておくにはあまりにも酷でしたから…………後で始末書は幾らでも書きますので。映像記録と写真は用意してあります。どうぞ。」




捜査官から大きめの茶封筒を受け取り中身を















取り出した瞬間、戻してしまった。次に見たシャーリーさんも顔を背けた。

フェイトさんだけはたっぷり5秒ほど見てから封筒に戻し、捜査官に封筒を返した。




「これならば、仕方ありませんね。適切な処置に感謝します。」



「いえ……




そこに写っていた''モノ''は、いや、最早''モノ''と形容するのも躊躇われる程壊された''何か''があった。そこのオブジェなど比ではない。

マトモな神経であんなモノは創り出せない。それは、どこかブレーキを取り去った状態で疾走を続ける機械じみた精神ですらあるように思えた。



報告が続く




「報告を続けます。二人目の被害者。名前はナザ・トファシュ。32歳、女性。こちらも地上部隊の局員で所属は首都航空隊の空戦魔導士です。」



また、首都航空隊…………今日はあまりいい日ではないらしい。



「よく、判別出来ましたね。」



「身分証は持っていましたし、血液鑑定もしましたから。まぁ、身分証は有って無いような物でしたが。」



「と、言うと?」



「血で殆ど見えなかったんですよ。あの状態ではスキャナーにも通せませんしね。」




そこまで酷い状態だったのか……いや、さっきの写真を見ればそれも分かるというものだ。むしろ身分証が残っていた事の方が驚嘆に値する。

それほど酷い壊され方だった。




「被害者については今はこのくらいです。他の者に詳細の報告書を作らせていますので出来上がりしだいお届けします。」



「ありがとうございます。被害者について、という事は被疑者についても?」



「特定した訳ではありませんが……こちらを見て頂けますか?」



そう言って彼はさっきとは別の封筒を取り出した。


中身はまた写真だった。しかも先程の写真、そしてこの場にあるオブジェに酷似したモノが写っていた。




「これは…………



''8年前''の物になります。当時の被害者の写真です。」




──8年前



その言葉だけで私には彼が何を言いたいのかが分かった。いや、フェイトさんにもシャーリーさんにもきっと分かっただろう。

8年前にこんな猟奇殺人を犯した人物は私の知る限りで一人しか存在しない。



その男の名は……




「トライアンフ……バレクメーラー……
































──兄さんを殺した、魔導士


































>>>REST(THERE IS NOTHING WRONG)


































「で、だ。アレを出せってウチの人がな。ま、そういう事だから、よろしく頼むわ。」




…………分かった。しかし、私の力だけではどうにもならんぞ。」




「別にアンタらに直接行ってもらおうって訳じゃねぇよ。許可っつーか、出すから了承しろって事。実務は俺がやるからよ。」




「彼処のセキュリティは並みではないぞ。それに今、姿を晒すのは……




「そこはほら、コレ。」




「コレは…………本気か?」




「なんだ?  何か不都合でも?」




「いや、しかしコレは……




「いいんじゃないんですか?  目障りなのが消えて。私がゆくゆくは覇権を握って貴方と手を結べば磐石でしょう?」




「だが、しかし……




「ま、他に良い案があるなら話は別だけどな。」




…………了解した。」




「んじゃま、そういう事で。よろしく~」




「では私もこれで。」




「ああ…………………………私は……いや、これでいい。これでいいのだ……


































Banana To Butterfly


































「ティアナ……



「大丈夫です。続けて下さい。」



とは言ったものの、あまり気分は良くない。

やはり今日は私にとっていい日ではないようだ。よりにもよってあの人とこの男の名前を聞く事になるとは……




トライアンフ・バレクメーラー…………アンダーグラウンドでは名の知れた魔導士。

世間では''壊し屋(デモリッシュ)''の異名が知れ渡っていたが、アングラでは専ら''何でも屋(ジャッカル)''の名で通っていた。

金さえ払えば人殺しから麻薬の密輸に栽培、果ては傭兵などをしつつも赤ん坊の世話までするという変人だ。

しかし一旦機嫌を損ねるとクライアントだろうが民間人だろうが

所構わず命という命を''壊して''回るので結局はヤバい仕事を依頼をする輩が固定客になっていった。

そしてこの男には仕事とは別に人殺しを好む性癖があった。

いや、人殺しと言うと語弊があるかもしれない。

トライアンフ・バレクメーラーは芸術を好む人間だった。ただしキャンバスは生物の身体で絵の具はその血液だったが。

トライアンフは決して殺しをしようとした訳ではなかった。結果として誰も生き残らなかっただけ。

しかし世間一般から見ればそんなものは人殺し以外の何物でもなく、

更にその芸術の対象になったモノはその尽くが本来のカタチから逸脱した壊され方をしていたので''壊し屋''などと呼ばれるようになった。




そして、忘れもしない8年前のあの日。

トライアンフは兄さんを殺した。




幸い……などとは決して言いたくはないが、兄さんは殺されただけに留まった。

腕や足は折れてはいたが、あくまで常識の範囲内……戦闘によってついた傷なら納得出来る程度の負傷だった。



しかし、あの事件に関してはそれこそ隅から隅まで調べたが、未だに二人の間でどのような戦闘が行われたのかは分からず仕舞いだった。

何故かと言えば、バレクメーラーは半ば狂人のようなもので、捜査には非協力どころか何を訊いても会話が成り立たなかったので、

どのような状況だったのかがまるで分からずというような記録しか残っていなかったからだ。

どのように闘って、どのように敗けたのかすら分からなかった。

兄さんは役立たずではないと証明する方法は最早一つしか無かった。故に私は兄さんの夢である執務官を目指した。

兄さんの教えてくれた魔法、ランスターの弾丸の価値を証明する為に。




……何か不都合な点が?」




捜査官が私達のやり取りを見て訊ねてきた。

今更隠すような事ではないので私は素直に言うことにした。




「いえ……ただ、私の兄がトライアンフ・バレクメーラーに殺されているので。」



「それは…………心中お察し致します……



「いえ、気になさらず。続きを。」



……はい…………あの……失礼ですが、もしかして貴方のお兄さんはティーダ・ランスターさんでは?」




唐突に兄の名が響いた。

私は仮面を被るのも忘れてただただマヌケ面を晒していた。鏡が目の前に無くてよかった。




「あ、は、はい……そうですが……



「ああ、やっぱり。その、自分は彼と友人でして。よく写真を見せられては延々と貴方の話を聞かされたモノです。

そうですか、貴方が…………どことなく面影がありますね。

彼は、いい奴でした。仕事もきっちりこなすし、強くて、何より優しい人でした。彼を嫌う人間なんて殆どいない程に…………

なんて、今更妹さんに言うような事でもないですね。貴方の方がきっとよく分かっていらっしゃるはずだ。」




暫く、呆けていた。

何故なら、嬉しかったからだ。

そう、ただただ、嬉しかった。

兄さんをそのように言ってくれる人なんて今までただの一人もいなかったのだから。

思えば、当たり前の事だろう。あの人が兄さんを役立たず呼ばわりしたところで誰も彼もが皆兄さんをそう思う訳じゃない。

こうやって死んでしまった後も兄さんを友人だと言ってくれる人もいるんだ。

いや、むしろそうさせてこなかったのは私、私の態度かもしれない。兄さんが死んでからがむしゃらにやり続けた。

間違っていたとは思わないが生前の兄さんを知る人達からすれば、近寄り難い感じだったのかも知れない。

これからは少し自重しよう。兄さんの仕事場での話なんか兄さん自身から数える程しか聞いてはいないのだから。

いや、でも私の話を延々とって……少し、恥ずかしい、かな。




「すみません、余計な事を言ってしまいましたね。」




私の暫しの沈黙をどうやら否定的に捉えてしまったらしい。彼は申し訳なさそうに丁寧に言葉を紡いだ。




「いえ、そんなことないです。ただ、兄の友人に会うのは初めてで…………よければ今度またお話を聞かせてもらえますか?」



「ええ、もちろん。彼の友人は地上には私を含め、結構いますからね。私の知る限りでよろしければ、紹介しますよ。」




私の言葉に彼はほっとしたような表情を見せた。




「願っても無いです、是非。」




私はそう答えて今、出来うる限りの笑みを浮かべてみせた。

ただ、上手い事笑えたかは、分からない。涙は流してはいないが、もしかしたら目尻には雫が溜まっていたかもしれない。



しかし今は泣いている場合ではない。今は──




「話が逸れましたね、すみません。本題に戻りましょう。」




彼も私の意図を汲み取ってくれたようだった。


そう、今は泣いている場合ではない。

もうこれ以上私のような想いを味わう人が現れないように、必ず''コレ''を行った者を捕まえなければならない。

たとえこの犯人と連続襲撃事件の犯人が違っても。いや、十中八九違う人物だろう。だがそれでも必ず捕まえなければ。




「そうだね。その為にも……情報が必要です。他にも分かっている事があれば、お願いします。」



フェイトさんは私の言葉に同意し、捜査官に向き直った。




「はい。先ず、バレクメーラーですが、脱獄した形跡はありません。」



「でしょうね。脱獄していたなら今頃もっと酷い騒ぎでしょうし。」




確かにその通りだった。バレクメーラー程の犯罪者が脱獄したとなれば管理局内は大騒ぎのはず。

と、いうことは……




「犯人はバレクメーラー本人では、ない……と、いうことですか?」



「そう考えるのが妥当でしょう。出てきていたならいたで私が引導を渡してやるんですが。」




さりげなく物騒な事を仰る。まぁ、私も同じような考えではあったが……しかし、本人でないとなると……




「どう思いますか、フェイトさん。」



「うーん……模倣犯、はちょっと違う気がするんだよね。あの当時はそれこそ粗悪な模倣犯もいたけど大抵は直ぐに捕まるかバレクメーラー自身の怒りを買って殺害されるかのどっちかだったんだけど、''コレ''…………




そう、''コレ''は違う。



確かにフェイトさんの言う通り、トライアンフが捕まる前は模倣犯も存在していた。が、''コレ''は違った。



──完璧過ぎる



そう、模倣が完璧過ぎるのだ。


当時の模倣犯はどれもこれも無秩序に人体を弄んでいるに過ぎなかった。

そこに一切の芸術性は無く、故に不完全な模倣を行った者はトライアンフの怒りを買い、管理局が逮捕した者以外は例外無く惨殺されていた。


対して今回の''コレ''はトライアンフ本人と見紛うばかりの''壊し方''だった。


マトモな感性ならこんな壊し方は不可能だ。それこそ、トライアンフのような思想でも持ち合わせていない限りは……




「そうですね、恐らくは模倣犯の可能性は無いかと。ご存知のように、トライアンフ・バレクメーラーは模倣犯を嫌っていましたから。」



「なら第二の可能性としては……



「その事ですが……これは確証がある訳ではないのですが、バレクメーラーの仲間、という可能性があります。」



「仲間……ですか?」



「正確に言うなら、''部下''といったところでしょうか。バレクメーラーは自身の仕事柄、十数名の部下を抱えていました。

その内の幾人かはまだ捕まっていません。その部下達なら、或いはあのような模倣も完璧にこなせるかもしれません。」




なるほど確かに。

そのような人間がまだ捕まっていないのならばこの惨状もあり得ない話ではない。

しかし……




「そうだとして、何故、今更このような事をしたのでしょうか? 

管理局に対する挑発行為だとしても、今、このタイミングでする意図が分からないです。」



「確かに……あの当時ならともかくトライアンフ・バレクメーラーが捕まったのは既に8年も前…………指向性が無いモノならともかく、

コレはただの思い付きではないだろうし…………別人と仮定して、今の連続襲撃事件に便乗しているのだとしても疑問は残るね……




フェイトさんの意見には全員が頷いていた。


暫し頭を捻っていたが、ここで捜査官が口を開いた。




「状況証拠では判断材料が少な過ぎますね。」



「そうですね。それはこれから捜査していくとして……



「いえ、それには及びません。恐らくハラオウン執務官が追っている事件の犯人とは別人物でしょうから、後々の捜査はこちらが担当致します。

もしかしたらまたお力をお借りする事もあるかもしれませんが……その時は、よろしくお願いします。」



……そうですね、分かりました。しかしまだ繋がりが無いと確定した訳ではありません。

詳しい事が分かったら情報を頂けますか? 上の方には私が話を通しておきますので。」



「了解しました。詳しい事が分かり次第、またご連絡させていただきます。」



「はい、よろしくお願いします。」




そこまで言ったところでフェイトさんは私に向き直った。




………………



………………




私は無言で頷いた。


そうだ、コレは私達の領分ではない。

ミッドで起きた事件は、地上部隊が解決するのが通常。私達が此処にいる事自体が既に異常な事態なのだ。

勿論、そこには海と陸との関係改善が成されてきているという事実もある。

が、上でふんぞり返っているお偉いさん方からすればこれ以上私達に頼る事は断固拒否したいところだろう。

しかし、実際、海と陸の関係は実働隊、現場の人間で言えば実はそう悪くはない。

確かに、海の一部のエリートは陸の人間を見下す事はあるし、陸の一部の反骨精神丸出しの人間は海の人間を毛嫌いしたりはするが、

いちいちそんな事を気にしてる暇は無いという人が大多数を占めている。

そういう海だの陸だの下らない体裁を気にするのは大抵権力に肥えた上の人間なのだ。

そんな連中の顔色を伺うのも甚だ馬鹿らしいとは思うのだけれど、そんな連中の一存で私達の捜査自体が打ち切られる可能性は大いにある。

そんな事でまた海と陸の関係が悪化などしてしまったら、笑い話にもならない。



だから……だからこそ、たとえ、この事件が、兄さんを殺した男と関係があるものだとしても、

私達が、''''追っている事件と関連性が認められないのであれば、私は諦め……いや、自分のやるべき事に専念しなければならない。



私怨や私情で動くなど、あってはならない。

それは、人間としては正しく''正しい''行為なのかもしれない。

人が死ねば悲しむ。それが親しい人間なら尚更だ。そしてそれが''死んだ''ではなく''殺された''ならその殺した相手、その仲間を恨み、憎む事は当然。

報復もあり得る手段の一つだ。私はといえば、今その岐路に立っているのだろう。

正直、私を病院送りにしたあの怪人より兄さんを殺した男の仲間をどうにかしたい気持ちの方が強い。だが、それはしてはならないのだ。

先の通り、私の感情は人間として至極正しいモノなのだろう。

だがしかし、それは組織にとっては必要性の無い''モノ''だ。組織に属する者として、私怨や私情で動くなど人間などただのクズだ。

組織はそんな人間など、ましてや私のような末端を切って捨てたところで痛くも痒くもない。

いや、そもそもそんな最低限のルールすら守れないのなら人を護る組織に属する事すら烏滸がましい。

もっと言うならルールを守れない人間に人を護る資格もまた、ありはしないだろう。




私には、私のやるべき事がある。


それを履き違えてはいけない。




ただただ相手を追い回す事など猿にも出来る。私は違う。私は、私のこの理性こそが私を私たらしめている絶対的要因の一つ。

つまり、ここでワガママ言うほど私はガキじゃないってことだ。



2つの事件を一片になど、一端の執務官になってから言いやがれって話だろう。



まぁ、何を圧してでも我を通さなければならない時も人生の内で一回くらいはあるかもしれないが、確実に今ではない。

そんな機会は訪れない事を切に願うところではあるが。




それに、だ。私は局の仲間をなんだかんだで信頼している。

きっと私の代わりに解決してくれると、まぁ、信じている訳だ。


今日に至っては、兄さんの友達だと、この捜査官はそう言ってくれた。

ならば私と志は同じはず。多少物騒な事は言っていたが、まぁそれは気にしない方向で、一つ。




「では自分はこれで……ああ、ご連絡の際には陸士112部隊まで。」



「はい、ありがとうございました。」



「いえ、それでは。」




言い終わり、踵を返した彼が立ち止って、再びこちらへ向き直った。



「このヤマが終わったら食事でも。ティーダさんの話、お聞かせしますよ。」



「ええ、是非。」




私は今度こそ、可能な限りの微笑みを湛えた。


































彼の遺体が見つかったのは、3日後の事だった


































REST(IN THE KITCHEN)


































「それで、進展は特に無し、と。」



…………ええ、まぁ。」



「むしろ厄介事が増えたというか…………



「厄介事しかないというか…………



…………お疲れさま。ハイ、これ。マロンタルトなんて作ってみました。サービスしてあげるから、どうぞ召し上がれ。」



「「「いただきます。」」」






とりあえず本日の業務も終わり、(私達に限っては残業という名のユージュアルな仕事が待っているのだが。)

今現在目下休憩というか残業までのインターバルを兼ねた食事を刊行中である。

あんな物を見た後だというのに我ながらよくもまぁ食事を受け付ける物だとは思うが、そこはそれ、食わなければやっていけないのが現状だ。

食べられる時に食べておかなければ、いつ出動になるか分からない。

とはいえ……




「アレは勘弁だよねー、アハハ……



「まぁ、見てて気持ちの良いものじゃないのは確かだけどね。」




アハハ、なんて言いつつシャーリーさんは私達が話している間にきっちり現場検証はしていた。私ももっとしっかりしないと。




「そりゃあなんつーか……御愁傷様…………しっかし、トライアンフ・バレクメーラーねぇ……また随分と懐かしい名前だ。」




そう言うヒメガミさんの声色には若干の怒気と鋭利な冷たさが介在しているように思えた。




「まぁ、彼自身はとっくの昔に逮捕されてますけどね。」



「もう8年だっけか。管理局も甘いよなぁ。どう考えたってあんなクズが改心する訳ないでしょうに。

さっさっと首チョンパなり絞首刑なりにすればいいのに。」



「ハハハ……流石にそれは…………




フェイトさんも思わず苦笑いをしていた。今日はなんだか物騒会話をよく聞く日だなぁ……

そう思いつつマロンタルトを口に運ぶ…………お、美味しい……上品な甘味にサクサクの生地……そしてこの栗の歯ごたえが…………

なんて言うかもう、ここまで料理上手いと……




「コレ……凄く美味しい…………ヒメガミさん、ウチに嫁に来ませんか?  

捜査手腕もよくてルックスも髪型とか整えてその顎とかの無精髭を剃れば実は結構イケメンな部類に入ると思うし、さらに料理上手ときたら…………

執務官補佐って結構お給料良いですよ?  ねぇ、フェイトさん。」



「ふぉーだふぇ。わふぁひもひめふぁみさんのふぉはんははればしふぉふぉふぁんれるひはふるふぉ。」




シャーリーさん、正解です。

そしてフェイトさん、口に物入れたまま喋らないで下さい。何言ってるかさっぱりです。




「ハハハ、シャーリーにプロポーズされちゃったなら吝かじゃあないですねぇ…………

んー……どうかな今日、このあと。丁度この前料理酒にするにはちょっと勿体ないくらいのモノが手に入ったんだけど……

こう、愛を語らいつつグラスを傾けるとか。」



「ふぉっ!!  ふぁふぇふぇふほ、ひめふぁみさん!!」




うえっ、マジですかヒメガミさん!

そしてフェイトさん、マジで何言ってるか分からないですから。



私とフェイトさんはそりゃもう勢いよく、擬音をつけるなら「バッ」とか「ビュッ」とかついちゃうくらいの勢いでシャーリーさんを見やった。

若干頬が紅潮してるように見えるのは気のせいデスヨネ?




「うーん……まぁ、ヒメガミさんならいいかなーなんて思いますけど……



「ふぉっ!  ふぁーひーまふぇ!!」




マジですか、マジなんですかシャーリーさん!!

そしてフェイトさんもうそれはいいですから。




「おおっ、そうかい。それじゃあ今日は……



「ええ、たまには人と愛を語らうのもいいかも知れないです…………けど、その前に後ろの恐ーいお姉さんをなんとかしないと無理そうですね。」



「ふぇ?」「へ?」「は?」




その言葉に私とフェイトさんはまたもや動きを綺麗に揃えて首を再びヒメガミさんの方へと向ける……

……と、そこにはサウナでも入っているのかってくらい大粒の汗をかき始めているヒメガミさんとそのバックに……

……その、なんというか……角を生やした、般若のような女性が…………




「あの……えーと…………怒って、いらっしゃいます、か?」




開口一番、ヒメガミさんは恐る恐る後ろの女性に訊ねた。




「いいえ、ちっとも怒ってなどいませんよ?」




絶対嘘だ。アレは怒っている。




「その割に、声色が低く、かつドスが効いてませんか?」



「気のせいでしょう。」



「いやいや、絶対怒ってるでしょう。」



「だから怒ってませんって…………ただ……



「た、ただ……?」



''私が''せっせと洗い物してる最中に仲良く女の子達と語らって、''私に''作ってくれたはずのマロンタルトもあげちゃって、

さらに、''私が''、仕入れてきたはずのワインをダシに女の子を口説いたりしてるのは、ちょっと面白くないですけど。」




不満タラタラであった。




「あ、あの……ゆ、許して…………



「許すも何も、最初から怒ってなどいませんよ、ええ。ただちょーっと、何かをおもいっきり引っ張りたいだけですから。」




その言葉にヒメガミさんは電光石火の速度で対応した。

即座に両手を耳に押し当て




──ぎゅ




られなかった。



ヒメガミさんが電光石火、例えるならソニックムーブの速度だとして、彼女のソレは真・ソニックの速度。

勝負になる訳がなかった。




Did you finish piss? and prayer? Are you OK that is ready make your teeth chatter at nook?

(小便はすませたか?  神様にお祈りは?  部屋のスミでガタガタ震えて命乞いする準備はOK?)



「ぷ、ぷりーず、へるぷみー……




ヒメガミさんは今にも泣きそうな声で懇願した。

彼女は溜め息を一つ吐くとニッコリと笑みを浮かべた。

その表情にヒメガミさんも安堵の溜め息を吐いた瞬間、




But I refuse.

    (だが断る)




彼女は急にシリアスな顔になり、死刑宣告をした。




「やっ、ちょ、まっ……あっ、アッーーーー!!」








その日、時空管理局地上本部の食堂に悲痛な叫び声が響き渡った。合掌。


































「どうもすみません。ウチの人がご迷惑を…………



「あ、いえ。別にこれといって被害()があった訳ではないので……




そうして数分後、無惨な死に体と化したヒメガミさんだったモノの頭を掴んでカウンターに擦り付ける蒼髪美女。

ぶっちゃけこの前病院で会った人であった。

そして、私達はと言えば、あの破壊力を目にした後では苦笑いを顔にペーストして当たり障りのない受け答えを並べるしかなかった。


だって、



「この泥棒猫!!」



みたいな展開は是非ともご勘弁願いたいところであるからだ。




「というか、シャーリーも悪ふざけが過ぎますよ。

だいたい貴方にはロウラン三尉がいr「あーあーあーあーあー、聞ーこーえーなーいー!  私には何も聞こえないー!」…………まぁ、いいですけど。」




(ティアナ)



(了解です、フェイトさん)




フェイトさんとコンマ3秒のアイコンタクト。

今の聞き捨てならないセリフは後々しっかりと追及しますよ、シャーリーさん。女の子はみんなその手の話題が大好物なのです。




「そういえば、シャーリー。知り合いだったの?  私、全然知らなかったよ。私にも紹介してくれるかな?」




確かに。シャーリーが食堂の人と知り合いだというのは少し意外かもしれない。ヒメガミさん経由での知り合いなんだろうか?




「へ?  何を言ってるんですか、フェイトさん。フェイトさんも知ってるでしょう?」



「え……  え、えーと………………



「ああ、この間はすみませんでした。久しぶりだというのにロクに挨拶も出来なくて…………

改めて、お久しぶりですね、テスタ。いえ、ハラオウン執務官の方がよろしいでしょうか?」



「あ、いえ。どちらでも…………あの、すみません。大変失礼かと思うんですが……どちら様でしたっけ?」




どうやらフェイトさんは目の前の女性に覚えが無いらしい。フェイトさんに限って忘れてるなんて事はないだろうけど……

フェイトさんの言葉に彼女は眉根を寄せた。




「私のこと、覚えていらっしゃらないのですか……?」



「え、あ、あの……その…………す、すみません。」




どうやら記憶には無いようだった。




「そうですよね……私なんて、所詮、そんなモンですよ……




フッ……なんて黄昏た表情を浮かべる蒼髪美女。それを見て慌てふためく敏腕執務官。うん、シュールだ。

しかし、ここでようやく復活してきたヒメガミさんの助けが出された。




「覚えていらっしゃらないも何もお前、その姿テスタに見せるの、今日が初めてだろう。そんなん、分かんないに決まってるでしょうが。」



「む、言われてみれば確かにそうでしたね。では、改めまして自己紹介を……




彼女はそう言うと姿勢を正し、コックコートの裾をつまみ上げ、まるでどこかのお嬢様がするようなお辞儀をし




「姓はヒメガミ、名はフラタニティ。そこの馬鹿の''デバイス''をしています。以後、お見知りおきを。」




そうのたまった。





…………って





「で、デバイス!?」




いや、どこからどう見たって人にしか……




「え、フラタニティ……  え、でもフラタニティは……えーと……




フェイトさんも驚いているようだ。あんまり見かけない感じの表情をしている。




「なーにをそんなに驚いてるのさ。六課にだってリインちゃんがいたでしょう?」



「あ、はい……確かに……ってことはフラタニティ……さんはユニゾンデバイスなんですか?」



「いや、インテリジェントデバイスだよ。」




あれー?  言ってることが限りなく矛盾してるんですけどー




「そ、そうですよね……最後に会った時はちゃんとデバイスの形してたし……




さらにわけがわからない。今はどう見ても人だし……




「今の私は、ホログラフィーです。まぁ、コレ以外にも一つ、素体を所有していますが。」



え、ええー…………どこから突っ込んだらいいのやら……




「それと、私に敬称は不要ですよ。気兼ね無く''フレイ''''フラッタ''とでもお呼び下さい。そこの駄目人間以外は大抵そう呼びます。」



…………どうでもいいけどさぁ……どんどん俺の扱い悪くなってません?」



「気にしたら負けですよ。」



「いやいや、勝ち負けなのかよ。」



「どのみちあなたは負け犬ですから、変わりませんがね、大して。」



……デスヨネー」




力関係はデバイスの方が上らしかった。

口答えすると耳を千切れんばかりに引っ張られる。

訳もなく馬鹿だ阿呆だと罵られる。



そんな光景を見て、私達は苦笑するしかなかった。


































「なんか、こうしてデバイスとか有ると、本当に捜査官みたいですね、ヒメガミさん。」



「それはアレか、今までは捜査官に見えなかった、と。」



「あ、いえ……そういう訳じゃ……



「いいんですよ、ランスター補佐官。どこからどう見たってただのコックですからね、この人。」



「君は少し黙っててくれませんかね!?」



「アハハ……




こう、力関係はアレだけど、見る限り良好な間柄らしい。

人形(ヒトガタ)を取っているという事も影響しているのだろうが、それを差し引いても確かな信頼関係があるように思えた。

だってそうでもなきゃデバイスにあんなボロクソ言われたら怒るだろうし、身体を作ってまで食堂でマスターの手伝いなんかしないだろう。

まぁ、こんな関係もだいぶ珍しいが、世の中に一つくらいはあってもいいと思った。




「それで、ハラオウン執務官」



「前みたいにテスタでいいよ、フレイ。」



「そうですか。それではテスタ、どうですか、捜査の進展具合は。」



「あー、えーと……その……………………



「もう結構です。すみませんね、たかが食堂の従業員が、出過ぎた真似でした。」



「あ、ううん。いいの、別に。進んでない訳じゃないから。ただ……速度としては決して速くないんだけどね。」




耳に痛い話だが、真実それは事実だった。




Ghostの出方が分からない事にはなんともって感じだから……




そうそう、ゴースt…………ゴースト?




「テスタ、なに、そのゴーストって?」



「へ?  あの、いつまでもUnknownじゃアレかなって思って……その、呼称を、考えて、みた……んですけど……




えーと、それはつまり、アレですか?  あの怪人の事ですか?




「つかぬことをお伺いしますが……フェイトさん、どうしてその呼称に……?」



「えっ、だってティアナが、その、向かい合った時に生き物の感じがしなかったって、言ってたから……ここは、Ghost(幽霊)、かな、と……






…………………………







一瞬の静寂。それをヒメガミさんの言葉が破った。




「プッ、ククク……ま、マジかテスタ……生きてる感じがしないからGhost(幽霊)って…………小学生かよー、アハハハハ!」



「なっ……だっ、だって……!!」




フェイトさんは割と自信があったのか、ヒメガミさんの言葉に顔を真っ赤に染め上げていた。

いや、まぁ正直ちょっと……とは思う。いや、分かりやすいけども。




「む~……ふん、ヒメガミさんだって人の事言えないじゃないですか。」



「はい?  何の事ですか、テスタ。」



「ヒメガミさんの異名……




フェイトさんがその言葉を口にした瞬間、ヒメガミさんの顔から血の気が引いた。擬音にすれば「サァー」って感じだろう。


ふむ、聞いてみたい。




「いやいや、止めておこうぜ、ティア。聞いた時のダメージが甚大だから。主に、俺の。」



「なら問題無いですね。テスタ、言っちゃって下さい。」



「ちょ、おま!」



「なんですか?」



「ナンデモナイデス」




鋭い眼光に小さくなるヒメガミさん……なんだろう、ちょっと可愛く見えてきた。




「お許しが出たから教えてあげる。ヒメガミさんは腕利きの捜査官だったって話はしたよね。」



「はい。」




それは聞いた。執務官でも教導官でもやっていけるくらいだった、とも。




「特にヒメガミさんは組織規模の相手とか人質を取られた時とかに強くてね。交渉とかなんか神がかった手腕だったり……

ありとあらゆる手段を用いて事件を解決しちゃうんだ。そこから、どんな異名が付いたか分かる?」




なんだろう……うーん、キーワードは「ありとあらゆる手段」かな……  そこから連想される事は……あ、頭がいい……とか?



「ブレーン(頭脳)とかですかね?」




ヒメガミさんが顔をしかめた。え、当たり?




「うーん、惜しい、かな。  シンプルな異名って辺りは的を射てるんだけど……




違ったか。じゃあ




「何なんですか?  ヒメガミさんの異名って。」



「うん。敵を追いつめたり、人質を救出する為に100も200も作戦を考え出して、

更に実行に移す際にはその場の局員をまるで自分の手足のように器用に扱う……その様相から付いたのが……



「付いたのが……?」




何故か微妙に緊迫した空気が流れる…………クイズ番組みたい。












「付いた渾名が、百足(センチピード)






…………………………






再び場を静寂が包む。

そしてまたもやその沈黙を破ったのはヒメガミさんだった。




「まったく……もうちょいましな異名は無かったのかね。百足って……俺も、こう、なんかカッコいいのが欲しいわけよ!

''漆黒の死神''ーとか、''極光の騎士''ーとか、''エターナルなんちゃらー''とか、''臓腑スクム''ーとか。」




…………えーと……いや、ヒメガミさん、漆黒って感じじゃないよなぁ……コックコート姿ばっかり見てるからかも知れないけど。

ついでに言うと騎士っぽくもないなぁ……っていうか




……最後のはどうなんですか……?」



「へっ?  ダメ?  じゃあ柩抉騎(きゅうけつき)とかは?」



「いや、あの……その年でそういうルビの振り方は……痛くありません?」



「う、うるせーうるせー!  男の子はいつまでもそういうちょっと痛い事に憧れるもんなんですー!

…………どうせこんな事になるだろうから言いたくなかったんだよ……ハァ……もっとこう、カッコいいのないかなぁ……




そう言うなりヒメガミさんはガックリと項垂れてしまった。




「あ、あの……ごめんなさい……



…………じゃあなんか代わりの渾名考えてくれ。それで俺の古傷を抉った事はチャラにしようじゃないか……




私が抉った事になっていた。いやまぁ確かに私が面白がって訊いたのは事実だけど……




「私よりフェイトさんの方が……



「ティア、冗談にしては笑えない。相手はGhost(幽霊)だぞ?」



「そうでしたね、すみません。私が間違ってました。」



「ちょっと二人共!?」



「テスタ、諦めなさい。この件に関しては貴方ではどうしようもありません。」



「フレイまで!?」



「まぁ、しょうがないんじゃないですか、フェイトさん。」



「ああ、シャーリーまで……




フェイトさん、四面楚歌の巻。まぁ、仕方がないでしょう、コレばっかりは。




「で、なんかある?」




ヒメガミさんの期待の籠った熱い眼差しが私を射抜く。



うーん……正直こんなの考えた事も無いからどんなのがいいのか……

や、ヒメガミさんの希望を加味するなら、なんかちょっと痛いのなんだろうけど……ソレ、私が嫌だなぁ……うーん、うーん……あっ




「お喋り(トーカティブ)とか、どう……ですか?」






…………………………






三度静寂に包まれる食堂。

そして、やはり沈黙を破ったのはヒメガミさんだった。




…………ティア」




押し殺したような声。

やばっ、しくったか?




「ティア…………お前、天才だな!!」



「へ?」



「いや、素晴らしい!  お喋り(トーカティブ)か!  ハハッ、素晴らしい!  聞いたかフラタニティ!  トーカティブだってよ!!」




どうやら気に入ってくれたらしい。万々歳である。




「うむ、Ghostとはえらい違いだ。よし、今日から俺の異名はトーカt……




急にヒメガミさんが言葉を切った。




その後も何回か言いかけては途中で言葉を切っていた。




「どうしたんですか?」



「いや、なんだろう……なんかこう、トーカティブって名乗ろうとしたら言葉が途切れるっていうか……

おかしいな……なんか脳裏に変な黒ローブが浮かぶ……




なんだそりゃ




「ま、あなたには勿体ない渾名って事でしょう。だいたいタダのコックに異名なんて必要無いですよ。

どうしても欲しいなら私が付けてあげます。『戦うコックさん』これでいいでしょう。

気が済んだならそろそろ片付け手伝って下さい。ほら、行きますよ。」



「ちょっ、だから耳はヤメテーー!!」




アッー、なんて悲鳴を上げながら引きずられていく戦うコックさん。強く生きて下さい。




…………さて、私達もそろそろお仕事に戻りますか。」



「「…………はい」」




こちらも現実へ回帰する時間になったようだ。残業達が餌を待つ雛鳥のように私達の帰還を今か今かと待っている。

それじゃあ市民の安全と局員の不安を除く為にもう一頑張りしますかね。















一時の夢の時間は終わりを告げ、口を開ける夜の闇へと進んで行く。



日の光が差すのはまだまだ先のような、そんな気がした。


































ちなみに、マロンタルトの残りは、仕事場に持ち帰って三人で美味しくいただきました。


































Banana To Butterfly

































「まだ痛いんですけど……



「知りません。それより、2番から伝言を預かってます。」



…………聞こうか。」



''予想より早く事が動くかもしれない。このままだと色々と前倒しが必要、もしくは大幅な遅れが出るかも'' だ、そうです。」



「ふむ…………



「どうなさるんですか?」



「どのみち今は静観するしかないな。薮蛇は勘弁だ。」



「大幅に遅れる事になっても、ですか?」



「仕方ないだろう。まぁ、誰、もしくは何処がスケープゴートになるかにもよるけど……



「あまり好ましくない状況ですけどね、それは。」



「まぁねぇ…………ま、そうならないように願っておくさ。」



「そうですね…………今後は、どうなさいますか?」



「さっき言った通り様子見だ。後手に回るのはやりきれないが…………まぁ、仕方がないだろう。2番には引き続きお願いしといてくれ。」



「了解しました。陛下(ユアマジェスティ)
































──時は過ぎて真実は何故闇に染まる



勘違いと空虚に揺れる



耳に甦る──

































あとがき





どうも、光速ベスパです。



やっと、ようやっと完成しました。いや、長かった。ただの繋ぎのつもりの話だったのに、プロットに無い話まで入れちゃったりしてもう……

うん、週一投稿なんて言ってた頃が懐かしいです……

……言い訳をさせていただくと、自分のサイトを作ってたんで遅くなってしまったんですがね……

ついでに上でも言ってる通りプロットに無い話とかかいてたら過去最大ボリュームになったりして………………はい、言い訳言い訳。



まぁ、これからも、週一とはいかないでしょうが頑張るので次も読んでいただけると嬉しいです。










それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


























コメント返信










更新待ってましたよーーー!!



いやー、ティアナが何ともなくて良かった!

ほんとに・・・・・ほんとに・・・・・よかった・・・・・・(泣)



でも、ティアナ。

夢でのフェイトさんがそんな感じになるってことは・・・・・・多少なりともフェイトさんのイメージがそうなってるってことですよね?

もし、これをフェイトさんが知ったとしたら・・・・・・・どんな反応をするんでしょうね?

今回はなんとか誤摩化しきれましたけどね。


それと、残念ながら私にはネタ全部は分かりませんでしたね。


・・・・・・ヒメガミさんが何やら意味深な台詞を言いましたけど・・・・・

ここからどのような展開になるのか楽しみです。


次の更新も待っています!!










感想ありがとうございます。いや、お待たせしてしまってすみません。で、ティアナさん?




ティアナ「えと……泣かれるとちょっと困ってしまいますね……1日ほど入院はしていましたが、今は仕事も出来ているので……もう大丈夫です。

イメージ云々に関しては在らぬ噂が流れるフェイトさんにも責任があると思います。あとなのはさんにも。」




ちなみにフェイトさんが知った場合は部屋の隅っこで床に「の」を書きつつ




「フフッ……いいんだよ……所詮私はいつまでたってもなのは離れが出来ないガチレズのレッテルを貼られた将来の行き遅れ予備軍だよ……




的な反応になります。めんどくさいことこの上無いです。



ネタに関してはもみじおろしが分かっていただければいいんですけどね。に○ょりなんかあり得ない程に極地的なネタなんで。




ヒメガミくんは……まぁ、ね。本当はあのシーンは露骨過ぎるんでカットしようか直前まで迷ったんですが……

まぁ彼には頑張っていただきましょう色々と。ただ、一応言っとくと、彼は善人面した善人ですよ、ええ。


まぁ、世間一般の善人に当てはまるかは定かではありませんが。





そんな感じで次回も読んでいただければ嬉しいです。





















拍手は、リョウさんの手によって区分されています。

感想を頂く身でありながら大変恐縮ですが宛名を書いていただけると幸いです。

リョウさんのためにも是非とも私宛に限らず拍手には宛名をお書きになるようお願いします。














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