StS After -Sibling Knot- Sister's High































──僕らの友達のショーは



45分から始まるのに



僕らはまだホールから



100マイルも離れた所にいる──






























Before 「45」 minute (85/1440)































そうして今日の残業は終わりを告げた。




早く帰って寝たい。ああ、その前にお風呂、いやご飯……




「ティアナ、大丈夫?」



「私は大丈夫ですからフェイトさんは少しは自分の心配をして下さい。」



「そうだね。早くn



「ストップです。もういいですから、ソレは。」



「アハハ……




ここら辺で止めておかないと、この人、むこう一ヶ月はコレばっかりになってしまう。

コレは六課を出てから知った事なのだが、フェイトさんは何かにハマるとしばらくはその事ばっかりなってしまうというちょっと……

その、なんというか子供っぽい一面があったりする。

この一年、フェイトさんと一緒に仕事をしていて学んだ事の一つだ。


…………や、勿論他に学んだ事はいっぱいあるけど……




「それにしてもお腹空いたー。何か食べて行きます?」



「うーん……でも、もうこの時間じゃあどこもやってないだろうし……




時計を確認すれば時刻は夜中の1時を回っていた。流石にこの時間じゃあ屋台すらやってないだろう。

仕方ない、家に帰って冷たい冷たいコンビニ飯でも……




「おや、お三方。今上がりですか?」




と思っていたら救世主が舞い降りた。




「あれ、ヒメガミさん?  どうしたんですか、こんな遅くに。」



「いえね、明日の仕込みと新作を作ってたらいつの間にかこんな時間になってて……皆さんは?」



「「「仕事です。」」」



「ですよね。その様子だとろくに食べてないみたいだけど……何か食べて行きますか?  軽い物で良ければ作りますよ?」




ああ、貴方が神か!




「「「いいんですか!?  是非、お願いします!」」」




一糸乱れぬハモり、素晴らしいシンクロニシティ。

どうやらフェイトさんもシャーリーさんも私と同じ気持ちだったようだ。

やはり常日頃一緒に仕事をこなしているとチームワークがダンチだと思う。



私達は今にも食いつかんばかりの勢いでヒメガミさんに詰め寄り、引き千切れんばかりの勢いで首を縦に振る振る。




──怪奇、妖怪首振り女──




そんなキャッチコピーが頭に浮かんだ。いや、むしろ等身大首振り人形だろうか?

……フェイトさんのなら一体、三万くらいでも普通に売れそうだ……主にファンクラブの連中に。


その……信じられない事ではあるが、フェイトさんには公式、非公式、色々なファンクラブがあり、日々熾烈な争いを繰り広げているとかいないとか。(フェイトさんは別に公認している訳では無いのでどういう公式なのかは不明だが。)


いや、そんなことより今はご飯だ。7日ぶりに温かいご飯が食べられる。

疲れきった身体を癒すには温かくて美味しいご飯とお風呂と適度な睡眠がなくてはならないのだ。

この内の二つは既にここしばらくご無沙汰だっただけに余計に嬉しい。




「ありがとうございます、ヒメガミさん。出来ればお腹に貯まって、」



「それでいてヘルシーで、」



「さらに疲れきった肌に優しい物をお願いします。」





「ハハハ、了解です。」




私達の流れるような言葉のパス回しにここの食堂の料理長のヒメガミさんはそう言いながら(多少苦笑の入り交じった)笑顔で対応してくれた。

ああ、温かいご飯が食べられる……
















ちなみに注文はシャーリーさん、私、フェイトさんの順番だったりする。

















(25/45)

















「しっかしまぁ、今回のヤマはまた随分と大変そうですね。顔色が日に日に悪くなってきてますよ。」



「基本的に危険が伴いそうな捜査はほぼ私達だけでしますからね……



「そうそう、どこも人手が足りないとかで貸してくれないんですよ。

言うに事欠いて『元六課の方達なら三人で十分でしょう。』なんて言いやがる人もいるんですよ。

地上部隊のお偉いさんは相変わらず縄張り意識が強すぎて困ってますよ。」




シャーリーさんの言う通り、本当に頭の固い連中だ。そんな事言ってる場合では無いだろうに。何しろ明日は我が身なのかも知れないのだからから。

まったく、縄張り意識は異常に強いくせにこの件に関しては私達に丸投げだなんてタチが悪い。

まぁ、魔導士もやられてるから人手不足な陸がこれ以上優秀な人材を失いたくない気持ちも分からないでもないけど。……む、このパスタ、おいしい。



今現在、時刻夜中の一時過ぎ。

パスタとサラダ、フォッカチオを頬張る管理局の誇るエースにデバイスマスター、そして私。

ちなみに私以外の二人は追加で海老ピラフと骨付きソーセージを喰らっている。何故太らないのか個人的に小一時間ほど問い詰めたい。




「ナカジマ三佐は人員を割いてくれたりもしたんですけど他はほとんどさっぱりで。

ギンガは別件の捜査が忙しいみたいで手は借りられないし……はやても今、色々と動いてくれてるみたいなんですけど……

かと言って普通の捜査官だと危険度が高すぎるし……



「はぁ、それでこんな時間までお仕事を……ご苦労様です。

コレ、サービスです。疲れた時には甘い物が良いですから。」




そう言ってヒメガミさんは私達の前にチョコレートケーキを出してくれた。

その……とてもとても嬉しいのだけどこんな時間に食べてしまうと……その、なんと言うかウエイト的な意味合いのモノがこう……

って、フェイトさんとシャーリーさん普通に食べてるし!  ええい、ままよ!




「うーん、美味しい!  ヒメガミさんも帰り道は気をつけて下さいよ?  こんな美味しいケーキが食べられなくなるなんて私達嫌ですからね。」




シャーリーさん、その「私達」には私も含まれているのですか?

いや、まぁ確かにコレが食べられなくなるのは嫌だけど……その理由はどうなんだろう……

ていうかシャーリーさんそんな腹ペコキャラでしたっけ?




「ハハ……大丈夫ですよ。俺はただのコックさんですから。狙われる理由がありませんって。」




考えてみれば、それもそうだ。いくら犯人が管理局の人間には見境無しでも流石に食堂のコックさんを狙うほど暇でもないだろう。

や、こういう犯罪者に忙しさは余り関係無い気もするけど……




「でもヒメガミさん、元捜査官じゃないですか、腕利きの。」




そうそう、なによりヒメガミさんは腕利きの元捜査官だから…………って




「フェイトさん、今なんて言いました?」



「腕利きの元捜査官って。あれ?  ティアナ知らなかった?」



「初耳です。」



「ヒメガミさんは元々魔導士でね。

魔法戦は教導官、捜査手腕とか法務技能とかは執務官でもやっていけるくらい凄腕だったんだよ。

私達もたまに一緒に仕事したことがあってね。」




知らなかった、全然そんなの知らなかった。

執務官を志す者としてはそんな凄い人が近くにいたのを知らなかったっていうのは若干どうかと思うが……

まぁ、実際執務官をやっていた訳ではないようなのでセーフということにしておこう。

しかしフェイトさんと一緒に仕事もしていたとは……成る程、フェイトさんとなんか仲がいい理由はソレか。

一緒に食堂に来る時には二人とも結構話し込んでたからなぁ……




「よして下さいよ、二人とも。もう昔の話ですから。大体、それは買いかぶりすぎですよ。」



「昔って……ほんの数年前の話じゃないですか。

それに全然買いかぶりなんかじゃないです。クロノだってぜひウチに欲しいって言ってたじゃないですか。」



「昔は昔ですよ。今はここの食堂のしがないコックですから。」




ヒメガミさんは謙遜しているがフェイトさんやクロノ提督が言うのだから買いかぶりということは無いと思う。



しかし何故だかそう言うヒメガミさんの表情がほんの少し寂しげだと感じた。



だからだろうか




「あの、なんで辞めちゃったんですか?」




などと訊いている自分がいた。まぁ、純粋に興味もあったのだが。

何せ執務官は私の夢であり、そんな出世の道を捨ててまでコックを、しかも管理局の食堂でやる理由が私には良く分からなかったからだ。

そんな、執務官でもやっていけるくらい能力が高いなら辞める理由も無いだろうし、辞めるにしても自分の店とかを持ってるわけでもない。

見たところ身体に異常があるわけでもなさそうだし。




「ちょっとばっかし仕事でヘマやらかしちゃってね。リンカーコアが殆ど使い物にならなくなっちゃって。」




再び哀愁漂う横顔……私は地雷原を突っ切ろうとして、それは見事に踏み抜いたっぽい。リンカーコアだったのか……




「あ、あの、すみません……



「ああ、気にしないで。しくった俺がアホだったってだけなんで。

それに、こっちもこっちでやりたかった事には変わり無いし。捜査官も続けようと思えば出来たんですよ。……ただ魔法が使えないってだけだしね。」




とりあえず平謝りしたものの……とっても気まずい……

フェイトさんもシャーリーさんも「あちゃー……失敗したー」って感じの表情だ。






場が沈黙に包まれる。

そんないたたまれない空気を変えようとしたのかヒメガミさんが口を開いた。




…………まぁ、俺みたいにならない様に気をつけて下さいってことで。皆さん大事なお客様ですからね。」




そう言って微笑を浮かべるヒメガミさんの表情に私は何故かほんの少しだけ、














──うすら寒い物を感じた──































BIRTHDAY (130/1440)
































そうして本日の遅すぎる夕食(あるいは早すぎる朝食)は終わりを告げた。




「じゃあティアナ、また後で。短いかもしれないけどきちんと休んでね。」



「はい。おやすみなさい、フェイトさん、シャーリーさんも。」



「うん。おやすみ、ティアナ。」




しばしの別れに際する挨拶もそこそこに私達はそれぞれの家路に着いた。もう数時間もすれば日の出が拝める時間帯だ。

あの後、食後の一服をして私達は食堂を後にし、現在に至る。(私に限っては気まずさ300%増しだったが)

フェイトさんはヒメガミさんに送っていこうかと提案していたが今日はもう泊まり掛けで新作の創作をする事にしたそうだ。


更にヒメガミさん曰く、




「大の男が年下の女の子に送ってもらってたらカッコつかないじゃないですか。」




とのことだったのでそのまま解散となった。……しかしなんだかフェイトさん、しきりに心配してたな、ヒメガミさんのこと。

ちょっと前までは一緒に仕事もしてたみたいだし……実はその気があったりするのだろうか?  いや、フェイトさんに限ってそれは無いか。

そんな事を考えながら家までの帰り道を歩いていて、














──瞬間、空気が凝固した──













──死臭


鼻の奥にこびりつく芳醇な血の匂い


理性を溶かす甘く濃厚な香り


「今すぐ逃げろ」と本能が叫ぶ





──静寂


無音の中、耳の奥を掻き乱す温い風


微かに視界の端に映る地面に横たわる“何か


「既に手遅れだ」と経験が告げる







そして、







自分を照らす街灯の光と臭いの先の闇














──そこに、'''' が鎌首をもたげて立っていた──































そうして私はとっておきの厄日が始まったばかりだということを理解した。
































──確かめ合う言葉で



傷つけ合う力で



いつか出会い別れて



昔から僕らはずっと



分かってたよ──
























あとがき




こんにちは、あるいはこんばんは。光速ベスパです。




第二話(あるいは第一話)、お楽しみいただけたでしょうか? まぁまだまだ楽しむ様な展開にはなっておりませんが。


さて、一話と二話を使いミスリードなどを少々やってみました。まぁ、某ナスでキノコな菌糸類さんの様に鮮やかにはいきませんでしたが……


そう、実は前回ご臨終になった方はティアナさんではないのです。ここまで読んでいただいた方には言うまでも無いことかもしれませんが。


きっと彼女の名前は日の目を見ることは無いでしょう。哀れなサクリファイスでした。


それと、今回オリキャラが登場しましたが、彼が主人公とかではないのであしからず。


捕捉しておくと、この小説はいわゆるオリ主物ではありません。オリキャラは現段階で10人前後登場予定ですがあくまで主人公は執務官チームです。


それを踏まえた上でお楽しみ頂ければ幸いです。





それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。











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