ヴォルケンリッターとの戦闘を終えた勇人達はリンディ家に呼び出されていた。

部屋中に重苦しい空気が漂う。

部屋にはなのは達が居て、そこには勇人や神楽の姿も有った。

勇人は全身に重苦しい空気を身に纏い、口を開こうとしない。

自分の無力さが腹立たしい。

無意識の内に両拳を強く握り締め、唇を噛締める。

そんな勇人を見詰めるリンディと神楽。


「彼どうしたの?」

「別に。単に己の無力さを再確認しただけだ」

「それは……」

「だが、こればかりは変に慰めても逆効果だ。特にアイツにとってはな」


神楽は小さくため息を零す。

優しさや情けは時には相手の心を傷付ける時もある。

そもそも自分ではそれを行う術を分からない。

優しくするのも情けを掛けるのも苦手なのだ。

だからこそ、勇人に手を差し伸べる事は出来ない。


「でも、それでも必要な時には本当に必要なものよ」

「なら、他の奴に任せるさ。俺には一生縁のないものだからな」


リンディはヤレヤレといった表情でため息を吐く。

圧倒的な実力を持つにも関わらず、性格面では不器用な男。

それがリンディの持つ神楽の印象だった。


「それに必要なら俺が出なくても色んな奴から差し出されるかもしれんな」


神楽は視線をなのはとフェイトの方へと向ける。

未だカードリッジシステムの説明を二人は聞いている。

勇人を手を差し伸べる事が出来る存在。

今は二人に任せる神楽だった。


「なあ……」


すると、今まで閉口していた勇人がようやく口を開いた。

周囲の視線が勇人に注がれる。


「今まで聞いてなかったんだけど、守護騎士は何の目的で闇の書を復活させようとしてんだよ」

「問題はそこよね」

「ええ、どうも腑に落ちません。自分の意思で集めてるように感じますし」


クロノの表情が僅かに曇る。

その言葉に窓際に立っていたアルフの眉が僅かに動く。


「ん? それっておかしいの? 闇の書ってのもジュエルジードみたくすっごい力が欲しい人が集めるモンなんでしょ。だったら、力の欲しい人の為にあの子等が頑張るのもおかしくないと思うんだけど」


真剣な眼差しで耳を傾けるクロノやリンディや神楽。

そして、互いの顔を見合わせた。


「第一に闇の書はジュエルシードのように自由な制御が効くものじゃないんだ」

「完成前も完成後も破壊にしか使われないのよ。少なくとも其れ以外に使われた一度も記録が無いの」


クロノの言葉に静かに紡いでいくリンディ。

その表情と口調は険しい。

納得したようにアルフは頷く。


「闇の書の力はあくまでも先程のは一部だ。まだ完全ではない」

「完全じゃないのにあのレベルの力か」


アルフは険しい表情で呟く。

たった一度の魔法で捕獲型の結界を容易く砕く力。

もしも結界の無い状況で放たれたら……。

想像するだけで恐ろしいものだった。


「そして、騎士達」


クロノの言葉に周囲から視線が注がれる。


「彼らは人間でもなければ使い魔でもない」


なのは達はクロノの言葉を目を見開く。

人間や使い魔ですらない存在、ヴォルケンリッター。

勇人は自分の耳を疑うしか無かった。


「闇の書に合わせて魔法技術で作られた擬似人格。主の命令を受けて動く。唯それだけの為のプログラムに過ぎないんだ」


闇の書によって作られたプログラム。

それがヴォルケンズリッターの正体。

勇人にしてみれば理解の範疇を超えた存在だった。









魔法少女リリカルなのはA’S

刃煌く黄昏の魔道師『再出発』








そんな中、その事を聞き表情を曇らせる一人。


「あの、使い魔でも人間でも擬似生命というと私みたいな……」

「違うわ!」


直ぐにリンディが大声を上げて、反論する。

なのは達はリンディの顔を見る。

そこには今まで見られなかった真剣な雰囲気と表情をしていた。


「フェイトさんは生まれ方が違っていただけで、ちゃんと命を受けて生み出された人間でしょ」

「検査結果でもそう出てただろ。変な事を言うもんじゃない!」


クロノは厳しく、叱り付ける。

叱りを受け、フェイトの表情が暗くなる。


「はい……御免なさい」


勇人はため息を零し、フェイトを見詰める。


「それに今更人間じゃありませんって言われても信じられねえし、お前がフェイトである事に変わりねえだろ?」


勇人は口元に笑みを浮かべながら答える。

そもそも勇人にとって見たらフェイトが何者であろうと関係ない。

フェイト・テスタロッサという存在に変わりない。

その言葉を聞いたフェイトの表情が柔らかくなり微笑む。


「うん……ありがとう」

「気にすんな。思った事を言ったまでだよ」


面倒臭そうに手を小さく振る勇人。

フェイトはその喜びを噛締めた。

しかし、そんなフェイトを尻目に勇人は項垂れ始める。

エイミィは項垂れる勇人に気付き、怪訝な表情を見詰める。


「どうしたの?」

「いや、連中が擬似人格だって事は分かったんだけど、いったい何なんだそれ?」

「う〜ん……モニターで説明しようか?」


エイミィの言葉に勇人は小さく頷く。

先程の説明でもイマイチ理解出来てない。

直ぐに理解出来るほど、勇人は頭は良くなかった。

部屋中が暗くなり、空中にモニターが浮かぶ。


「守護者達は闇の書に内蔵されたプログラムが人の形を取ったもの。この四人はずっと闇の書と共に様々な主と共に渡り歩いている」

「意思疎通の為の対話能力は過去の事件でも確認されてるんだけど、感情を見せたって例は今までに無いの」


エイミィの説明に勇人はシャマルの脳裏に浮かべる。

そこには確かに泣いたり、怒った顔をしていた。

それがプログラムで作り出された感情とは思えなかった。

そう……まるで人の感情そのもの。


「闇の書の蒐集と主の護衛。彼らの役目はそれだけですものね」

「でも、あの帽子の子ヴィータちゃんは怒ったり、悲しんだりしてたり」

「シグナムからもはっきりと人格を感じました。為すべき事があるって、仲間と主の為にって」


フェイトの言葉にクロノの表情は僅かに沈む。


「主の為、か?」

(なんだ? 今の面……)


その僅かな表情の変化に勇人は見逃さなかった。

なんとも言えない表情に違和感を感じる。

だが、あまり問い質す気にはなれなかった。

すると、空中モニターが消え、部屋中が灯りを取り戻す。


「つまり連中の変化は今の主によって感情や人格が生み出された事になる」


今まで黙っていた神楽の口が開く。

守護騎士の感情や人格の誕生。

それは今の主によって生み出されたものと考えるのが自然だった。


「そう考えるのが妥当ですね」

「だが、仮に感情や人格が生まれた所で闇の書を完成させようとしている事に変わりないがな」


例え如何なる理由があろうとも闇の書を完成させようとしている変わりない。

完成された時、何が起こるか分からない。

その為にも完成を阻止する事が自分達の役目。


「転移頻度から見ても主はこの付近に居るのは確実ですし、案外主の方が先に捕まるかもしれません」

「ああ〜それは分かり易い」

「だね。闇の書の完成前なら持ち主も普通の魔導師だろうし」

「うん」


クロノ達は主の捕獲に目標を置く。

ようやく見えた僅かな希望。

しかし、神楽は一人別の事を考えていた。


(本当にそう思い通りに動くか?)


神楽の脳裏に仮面の男の姿が浮かぶ。

恐らくヴォルケンリッターの仲間だと思う。

だが、勇人やクロノの話を聞く限り、ヴォルケンリッターとの接点は無さそうだった。

思考の渦に嵌まりそうになりながらも小さくため息を零す。


(もう少し情報が欲しい所だな)


もしも現れる可能性があるとすればヴォルケンリッターや主の危機の可能性が高い。

ならば、そこを叩くしかなかった。


「神楽、どうかしたの?」


直ぐに意識を戻す神楽。

どうやら考え事に集中し過ぎていたようだ。

呼びかけにも答えられない程に。


「いや、なんでもない」

「そう……それと勇人君の事で話があるんだけど」

「分かった」


直ぐに神楽は勇人に視線を送る。


「今日は帰るのが遅くなる。飯は自分で作って食べてろ」

「……分かったよ」


勇人はため息を付き、リンディ達の方へ身体を向ける。


「それじゃ帰ります」

「分かったわ。また手伝ってね」


リンディの言葉に僅かに表情が暗くなる勇人。

そのまま小さく頷き、身を翻す。

その背中にリンディは心配そうな視線を送る

すると、なのはもリンディの前に移動し、一礼する。


「あ、私も帰ります。あまり遅いと心配されるから」

「ええ……勇人君の事、お願いね」

「はい」


なのはは身を翻し、帰ろうとする。

フェイトやエイミィ、アルフが見送りに移動する

部屋には神楽、リンディ、クロノの三人だけとなった。

リンディの顔付きが真剣になり、神楽の方へ向く。


「……彼が最後に放った魔法、貴方はどう思う?」


リンディの問い掛け。

それは勇人がシャマルに向けて放った最後の魔法。

神楽や勇人が使う通常のブレードスラッシュと違い、威力も大きさも倍ほどだった。


「俺は魔力の暴発と考えてる。刃の形となったのはブレードスラッシュの結合状態だったからだろ」

「でも、もし上手く完成すれば強力な魔法になると思うんだけど」


リンディの言葉は正論でもある。

元々魔力の暴発によって生み出された偶然の産物。

しかし、それを上手くコントロール出来る様になれば勇人にとって強力な魔法となる。

だが、神楽の表情へ険しいままだった。


「確かに理論上では可能だ。だが、所詮は理論だがな」

「まるで実行は不可能って言い方だね」

「実際その通りだからな」


神楽は小さくため息を零し、腕を組む。

理論を組み立てるのは可能だが、実質勇人では不可能だった。


「アイツにはそれを可能にする魔力と身体が成り立っていない」

「それだけで反対するの?」

「元々カードリッジシステムは魔力を増幅させる力だ。だが、分相応の力を超えれば……」

「デバイスにも負荷が掛かり、魔力で身体が蝕まれる可能性もある」


クロノの言葉に神楽は小さく頷く。

カードリッジシステムの魔力を注ぎ込めば威力なども高まる。

逆に注ぎ込み過ぎればデバイスを壊れる可能性も高くなるうえ、人体にも悪影響を与えかねない。


「そこで未発達な身体での大技を打てばどうなるか、考えるのも容易い」


身体が蝕まれる状態で大技を打てば身体やデバイスにも負荷が掛かる。

もし多用し続ければ、二度と魔導師に使い物にならない可能性も有り得る。


「まあ……あなたが其処まで言うなら口出ししないけど」


リンディは渋々引き下がる。

手に入れた魔導師を壊す程、リンディも馬鹿ではない。

しかし、一つだけ懸念がある。


(だが、問題はアイツだ。例え言い聞かせても使いかねん)


神楽の眉間の皺が深くなる。

勇人は例え言い聞かせても絶対に使う。

魔導師として、人として誰よりも力に渇望をしてる為に……。


「まったく面倒事ばかり増える一方だな」

「そうね」


重々しく吐き捨てる神楽。

面倒事だけが溜まっていく光景に嫌気が挿す。

リンディも同意をするようにため息を吐く。

何一つ解決の糸口の無い状況だった。























勇人となのは、そして肩に乗ってるユーノと共に夜の街中を歩いていた。

街中は光で灯され、大勢の人たちが交差していく。

しかし、当の二人は気まずい雰囲気を醸し出している。

何故なら……。


(ヤバイな。なのはの奴に俺様が魔導師になった事を教えてなかった)

(どうして勇人君があの場に居たの?)


勇人自身が魔導師になった事を知らせてなかったのが原因だった。

話すタイミングが無く、今まで言いそびれてしまった。

その所為で今の状況が気まずい。


「なあ、怒ってるか?」

「え、どうして?」


勇人は気まずい空気に耐え切れず呟く。

なのはは怪訝な顔付きで見詰める。


「俺様が魔導師になった事を黙ってた事だよ」

「ううん。ただ驚いたかな」

「まあ、そりゃ驚くわな。行き成り魔導師になったって言われてたらな」

「……うん」


なのはの顔が暗く沈んでいく。

それを見た勇人は焦り始める。


「お、おい! そんな面すんなって! 隠してた事は謝るからよ」

「……違うの」

「ん?」

「怖いの、勇人君やフェイトちゃんが傷付く事が」


なのはは今にも泣きそうな表情で呟く。

彼女は誰よりも他人が傷付く事を恐れる。

逆に自分の事は顧みない性格。

勇人はそんななのはの性格を知っている。

思わず口からため息が零れた。


「……傷付かない為に特訓してんじゃねえか」

「でも! 危険なんだよ!」

「それはお前等も同じだろうが! そもそも俺様がお前等を戦場を立たせる事を良しって思ってんのか?」

「それは……」

「お前等だって危険な目に会うだろ。なのに、何で手伝わせてくれねえんだよ」


自分の無力さや弱さは嫌というほど身に染みてる。

だが、それでもなのは達と共に戦いたい。


「だから、俺様はお前等が何と言おうと止めねえぜ」

「……うん」


なのはは暗い表情をしたまま渋々頷く。

未だ納得出来ていないのだろう。

表情を見る限り、どう思ってるか直ぐに分かる。

しかし、此れだけはどんなに反対されても譲れなかった。


「まあ流石に危険になったら逃げるかもな」

「ほんと?」

「ああ、マジだよ」


なのはも内心ホッとしたのか笑顔を見せる。

勇人もその笑顔に釣られて笑顔を見せた。

重い空気が少しだけ取り払えたように感じた。

それと同時に自分の中に有った黒い感情が少しだけ消えた。


「……ありがとよ」

「え?」

「何でもねえよ、それじゃ早く家に帰ろうぜ。あまり遅いと兄貴が怒ってくるぜ」

「にゃはは……」


なのはは苦笑いを浮かべる。

なのはの兄、恭也は端から見ても妹想いの良い兄で、兄弟の居ない勇人にとって恭也の存在は大きかった。

何度もなのはと一緒に遊んでもらった記憶がある。


「……久し振りに恭也さんに会いてえな」

「なら、また家に遊びに来てね!」

「ん〜……この事件が少し落ち着いたらな」


その言葉になのはの表情が一気に明るくなる。

昔のように皆で一緒にご飯を食べれる事に嬉しさが込み上げて来る。

自然と笑顔になっていく。

そんななのはを尻目に勇人は怪訝な顔付きをしていた。


「何をそんなに喜んでんだ?」

「ううん。なんでもない! 早く帰ろ!」

「お、おう!」


なのはは笑顔で駆足で移動していく。

勇人も口元を緩めながら、なのはの後を追っていく。

先程とは違い、足取りは軽くなっていた。

何時の間にか心の中にあった黒い感情が消えさっていた

























なのはと別れ、一人自宅へと帰宅した勇人。

既に晩飯は食べ終え、皿などが置かれた状態の机の前で一人考え込んでいた。

考えている内容は魔法の開発だった。

真先に浮かんだのはシャマルとの一戦で発動した魔法。

既に公式は完成している為、特に手を加える必要性は無い。

しかし、それを発動するには自分の許容限界までカードリッジをロードしなくてはならない。

脳裏に魔力が身体中を逆流する感覚と痛み始める身体に身震いを起こす勇人。


「……やっぱ危険な魔法だよな」

『公式は出来てても今のレベルじゃ難しいぜ、兄弟』

「それ以前に神楽が反対するだろ。あの人、ああいう無茶な事を嫌ってる感じがあるしよ」

『確かにな。で、何か思いついたのか?』

「ん〜……」


真先に浮かぶのは威力のある強い魔法。

だが、威力の強い魔法を放つには魔力の消費も激しくなる。

魔力値の平均的な勇人にとっては一発を撃つだけでも危険なもの。

代わりに消費を抑えた魔法ではヴォルケンリッターに届かない。

それが勇人の悩まし続ける問題だった。


「威力が高ければ消費も激しいし、逆に消費を抑えれば威力の無い魔法になっちまうしな」

『そもそもお前、複合式の特徴をまだ使いこなせてねえぞ』

「あ? そりゃどういう意味だよ」

『俺の特性はミッド式とベルカ式を合わさった形態なんだぜ』


その言葉に理解したのか目を見開く勇人。

ベルカ式の特徴でもある接近戦が残されていた。


「って、飛行が出来ねえから無理じゃねえか!」

『其処は神楽に教えて貰うんだな』

「はぁ……こういうのは魔力とか関係ないんだな」

『おう。必要のは素質と勘だ』

「それなら安心だな」


ならば、当分は出来る限り、魔法の開発と飛行魔法の会得する事に時間を増やそうと思う。

多少の無茶をする嵌めになるかもしれないが、今後の為にも必要な力。


「よし! 明日から飛行の訓練も行うぞ!」

『それは神楽の許可を取っとけよ、兄弟』

「分かってるよ!」


すると、ガチャっと玄関のドアが開く音がした。

思わず視線を送ると其処には神楽が居た。

直ぐにリビングのドアを開き、神楽の元へ移動する勇人。

そのまま駆け出して……土下座した。

行き成りの出来事に神楽は目を丸くする。


「頼む! 俺様に飛行魔法を教えてくれ!」

「突然だな。だが、一朝一夕で覚えれるものじゃないぞ」

「それでも! 複合式の力を100%まで引き上げるにはどうしても飛行魔法を覚える必要があるんだよ!」


神楽は勇人の目を静かに見詰める。

そこには無力さに嘆く事を止め、新たな力を求めようと決意した目。

思わず小さく口元を緩める。


「良いだろう。但し、飛行魔法は難しい、かなり時間を割く割く事になるから覚悟しておけ」

「おう!」


神楽は靴を脱ぎ捨て、勇人の横を通り過ぎ、そのままリビングへ移動する。

勇人も直ぐに立ち上がり、神楽の後を追う。

神楽と勇人はソファーへとゆっくりと腰掛ける。


「なあ、威力もあって魔力の消費の少ない魔法ってないか?」


子供気味た質問に神楽はため息を零す。


「ある訳無いだろ。威力や能力の強化するには当然その分の魔力を組み込まなければならん。それに発動出来てもコントロールが出来なければ意味は無い」

「だよな〜」


勇人はガクリと頭を落とし、項垂れ始める。

そんな勇人の思惑を見通すように目を細める神楽。


「そもそもお前の強い魔法イコール威力がある魔法だと思ってるだろ」

「……うん」

「それは間違いだ、そもそも強い魔法が威力がある魔法だけだったら大きな間違いだ」


その言葉に項垂れていた勇人が顔を上げる。

驚いた眼差しで神楽を見詰める。


「威力がある魔法は強い反面、チャージに時間は掛かったり魔力の消費も激しい。大型魔法にはそういったデメリットを含んでいる」


大型魔法の特徴に勇人は小さく頷く

仮に放った所で必ずしも当たる保障は無い。

逆に回避された場合、損をするのは自分の方だ。


「だから、大型魔法は放つ時はバインドで動きを止めたり、隙を作って其処を狙うのがセオリーだ」

「……ならよ、アンタが言う強い魔法って何だよ?」


あまりにも唐突な問いかけ。

神楽は腕に組み、思案し始める。

数十秒後、今まで黙っていた重い口を開いた。


「状況に応じて最も適した魔法が俺は強いと考える」

「状況に応じて……」

「そうだ。行き成り大技を撃った所で確実に直撃する結果になる訳にはない。ならば、威力は少なくても高い確率で当たる魔法をイメージしろ」

「イメージ?」


神楽は小さく頷く。


「自分の魔力で作れる魔法をイメージし続けろ。そして魔力に組み換えて公式に当て嵌めろ」

「……簡単に言うなよ」

「心配するな、その為のデバイスだ」


勇人は視線を落とし、イケロスを見詰める。

より自分の力を引き出すことが出来るパートナーがこれほど頼もしい物だとは思っても見なかった。

改めて自分のパートナーに感謝したかった。


「ありがとよ」

『別にいいぜ。まあ頼りたかったら幾らでも頼れよ兄弟』

「調子に乗んな」


注意しつつも口元は笑みを浮かべる勇人。

だが、直ぐに表情を引き締め、背筋を伸ばす


「……強くならなくちゃいけねえ。今は思ってたり嘆いてたりする時間もねえんだ。だから、俺様は強くなってやる」


今までは足手纏いにならないように強くなりたいと思うだけだった。

しかし、願望だけでは何も為し得ない。

それを今日の戦いで身を持って知った。

だから、願う事を止め、今は走り続ける事を決断する。


「その妨げになるって言うんなら、ヴォルケンリッターだろうが主だろうが容赦しねえ」


両手を強く握り締め、強い眼差しで神楽を見詰める。

もう弱さを無力さを嘆く気は無い。

今は力と強さを求め続ける事を誓う。

そんな目を見た神楽は思わず口元を緩めた。


「……ようやく覚悟が決まったな」

「え?」

「いや……やるからには立ち止まる事は許さんぞ」

「言われなくても分かってる」


自分の果たすべき目的のために勇人は歩き続ける。

その先に何が有ろうともただ突き進むだけ。

この時、ようやく赤宮勇人が魔導師としての精神を手に入れた瞬間だった。





























あとがき

どうも、シリウスです。

今回の話はこれからの赤宮勇人としての基盤となる大事な話です。

ここから赤宮勇人の強化が始まります。

どうなるかは未知数ですが……。

ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。

では、これにて失礼します。





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