魔法少女リリカルなのはSTS「波乱を呼ぶ男(第三話)」







「うぅ………」


少年は泣いていた。

何故自分がこんな目に合わなくてはならないのか。

何故自分は一人なのだろうか。

考えても考えても少年は自分の悩みの解決方が解らない。

そんな自分が段々情けなくなり再び泣き始める。


「ひっく……うぅ……」


もう嫌だ………一人は嫌だ…。


「おい!」


少年は不意に聞こえた声に驚き振り向く。


「何泣いてるんだ?」


この出会いが少年にとっての転機だったのかもしれない……。










最終回(?)「サヨウナラ、スカイ…………え? マジ!?」








機動六課訓練用シミュレーター内



先程まで激しい訓練をしていた跡も今では聳えていたビルと共に何事もなかったかの様に消え

今はただ沢山の木々が生い茂っている森林地帯へとその姿を変えていた。

そこで訓練をしていた新人達の姿は既に無くそこには新たに二人の男女が居た。

女……シグナムは愛剣『レヴァンティン』を握りしめ何時でも起動出来る状態にしている。

そして男……スカイはというと……ダルさ全快の目で唯空を眺めていた。


「あ〜〜〜お空が綺麗だな〜〜〜まるでこの俺様の美しい瞳のようだ〜」

「いい加減変な現実逃避は止めろ」

「………へ〜い…」

「……すまん私が悪かった……」

「ふぇ〜い……」


スカイは何処かヤル気の無い返事をする。

シグナムはスカイの行動に思わずこめかみを引くつかせる。

確かに行き成りしかも無理に模擬戦をやらされれば誰だって不満の一つや二つは持つだろう。

しかしこうまで露骨に出されると逆に此方が不機嫌になってしまう。

だが自分が頼んだ手前何も言えない。

それが今の状態だ。


「取り合えず試合方法どうするんですか〜?お姉さま」

「お姉さま言うな……そうだな、片方が戦闘不能または降参したら終わりというのはどうだ?」

「じゃあ早速ですがギブ……「……殴るぞ貴様……」すいませんごめんなさい許して……」


シグナムも段々我慢出来なくなったのかジロリとスカイを睨む。

スカイもスカイでシグナムから滲み出てきた殺気に半分びびりながら謝る。


「(やべー超こえー!)」

「(………何で私はコイツと戦いたいと思ったんだ?)」


二人共お互いの考え等知る余地も無く別々の事を考えている。

やがてシグナムは心の中で疑問に思った思考を止める。

いけない今は模擬戦に来ているのだ、何時までもふざけた事はしていられない。

シグナムはそう思うと直ぐに『レヴァンティン』を起動させると同時に光に包まれる。

輝く光の中でシグナムは陸士の制服を解き素肌になった所に自分の髪の色と同じ騎士甲冑を纏う。

一方のスカイは騎士甲冑を着け終えたシグナムの騎士甲冑を見て驚愕の表情を浮かべていた。


「?……どうした早くお前も騎士甲冑にしないか」


不思議に思ったシグナムの問い掛けにも答えずスカイはシグナムの姿をジロジロと見ている。

流石にこうジロジロ見られると何か不具合でもあるのかとシグナムは自分の騎士甲冑を見回す。

然し何処をどう見回しても特に何も無い。

シグナムは段々この状態に耐えられなくなり先程より大きな声でスカイに話しかける。


「おい、何故私の騎士甲冑を見ているんだ?」


少し大きめの声で話しただけあってかスカイは直ぐに我に返りシグナムの問いに答える。


「いや〜綺麗な生足だな〜って」

「そうか何だ、唯の生足か………って! 何処を見てるんだ貴様!」


スカイのトンデモ発言にシグナムは赤面しながら一部の無駄も無い回し蹴り放つ


「あへん!」


鈍い音と共に直撃をマトモに喰らいまるでサッカーボールのように回転しながらスカイは木にぶつかる。

唯でさえ騎士として鍛えられたシグナムの蹴りは並の人間なら完全に痛いではすまされない。

だが、その並の部類に入らないスカイは頭から血を出しながら多少ヨロヨロとしながらも起き上がる。




「痛いっすよ! お姉さま!」

「黙れ! ジロジロ見ていた貴様が悪い!」

「だってあんな綺麗な生足出されたら思い切りロックオンして見きゃ男じゃないですよ!」

「何だその無茶苦茶な理屈は! だったら男何て止めてしまえ! というか人間止めてしまえ!」

「ひで〜俺様泣いちゃう!」


最早模擬戦も何もあった物ではない。

二人は完全に主旨を忘れ離れているなのは達にも聞こえる位の大声で言い争う。

勿論その争いを聞く者達はある者は苦笑し又ある者は呆れ顔で聞く。

そしてその中の一人ヴィータは自分の将の不甲斐なさに我慢出来なくなり二人を注意するため空中パネルを出し抗議を始める。


「おい! てめえら! 何下らない事してるんだよ!」

「ヴィータ!?」

「あ! 可愛いオチビちゃん」

「んな!? てめ! 誰がオチビちゃんだ! 誰が! アタシは大人だ!」

「落ち着け、そう熱くなるな此れでは本当の事みたいではないか」

「うるせぇ! おっぱい魔人!」

「なっ!? 私はおっぱい魔人などではない!」

「あ、其処見忘れてた……」

「見るな!」


悲しいかな

正にミイラ取りがミイラになってしまったかの如くヴィータまでもが二人の喧嘩に参加してしまっていた。

まあ、ヴィータは元々こういう事には向いてないという事もあったが………。


「なのはさん、此れ収集つくでしょうか?」

「にゃはは………無理だと思う……」

「ティア……」

「言わないで……多分私も考えてる事同じだと思うわ……」

「ねえ止めなくて大丈夫かな?」

「多分……大丈夫だと思うよ……全然自信ないけど……」


すっかり蚊帳の外と化した他のメンバーは如何かこの言い争いが一秒でも早く終わる事を願いつつもこの争いを見守った。

だが皆の不安等知るよしも無く三人は下らない言い争いを続けていたが……。


「ハァ……ハァ……止めようこれ以上の言い合いはあまりに幼稚すぎる……」

「ゼェ…ゼェ…そうだな…ってか早く模擬戦始めやがれ……」

「まったく〜何でこんな事に〜」

「「お前の所為だ!!」」


ヴィータは最後のツッコミを入れ終えると邪魔に成らないようすぐさま空中パネルを消す。

シグナムも荒い息を整え落ち着きを取り戻すと直ぐに真剣な表情に戻る。

一方、スカイもやる気になったのか自分の胸元にあったペンダントのような白銀色のデバイスを出す。


「其れがお前のデバイスか」

「ええ、綺麗でしょ〜」

「ああ、正に「豚に真珠」だな」

「え〜〜〜! 俺様豚!?」


流石に傷付いたのかかなり凹むスカイ。

先程の事に恨みがあったのだろう、シグナムは其れを見て少し満足気である。


「さあ、いい加減準備しろ」

「へ〜い」


スカイはデバイスを首から外し握りしめると大きく息を吸い込む。


「行くぜ! 俺様の『ヴィーナス』!」


スカイの発言と共に『ヴィーナス』が起動し辺りを光で包む。

やがて光が止むと其処には騎士甲冑を纏ったスカイがたっていた。

白いTシャツにその上にまっ黒なジャケットをはおい、下も同じ色の黒いジーパン。

自慢の金髪は邪魔に成らないようリング状のアクセサリーで縛り手にはダークブルー色のグローブを嵌めている。

最早、戦いに赴く甲冑というより何時でも街に遊びに行ける完全な私服のようなバリアジャケットである。

そして『ヴィーナス』もペンダント状態から真ん中に本体のコアが付いた白銀の長剣へと変わっていた。


「準備は出来たか?」

「は〜い、な?『ヴィーナス』」

『はい、私は何時でも動けます』


スカイの返事に『ヴィーナス』透き通るような高い声の女性の声で答える


「よし……では始めるぞ」


その言葉と共にシグナムが駆け出し一気にスカイとの距離を縮めた。


「ぬな!?」


スカイは自分が予想していたより遥かに早い攻撃に驚きつつも慌てて『ヴィーナス』で受け止める。


「ハァ!」

「うわっと!?」


シグナムは一旦距離をとったかと思うと直ぐさま体をひねりスカイの横腹目掛けて切りかかる。

スカイは防ごうと試みるが更に威力と速さを増したシグナムの攻撃が其れを許さず……。


「ぎゃーー!」


余りの衝撃にスカイは思い切り吹き飛ばされ更には木に激突する。

打ち所が悪かった所為かスカイは咳き込み苦しそうにしている。


「ごほ! ごほ! あ〜〜〜〜いて〜〜〜〜〜!」

『大丈夫ですか? スカイ様』

「いや! 全然! 可愛い子ちゃんのチュー無いと俺様死んじゃう!」

『その様な発言が出来るのなら特に問題ないと思われます』

「………普通の反応をど〜も……ゲホッ…ゲホッ…」


『ヴィーナス』のまともな発言に少しだけでも気分が紛れたのかスカイは何回も咳き込みながらも起き上がる。

その光景を見ていたシグナムは関心したような目でスカイを見つめた。


「やるな、大抵の奴は此処で終わってしまうのに」

「生憎こういう系は何処かの部隊長様に何回も何回も何回もしごかれて慣れてるんですよ」

「成程な」


シグナムはスカイの発言から余程の事があったのだろうと思いその部隊長に会ってみたいとも思った。

何せこの男の上司だった人だ、どうやってこの男の暴走を沈めていたか物凄く気になる。


「シグナムお姉さま〜変な事考えてませんよね?」

「いや……まったく……」

「…………」


シグナムのあからさまに嘘と解る言葉使いにスカイは眉を顰める。


「……そ、そんな事より続きを始めるぞ!」

「へ〜い」


明らかに誤魔化された事にスカイは不満を覚えつつ今は目の前の敵であるシグナムと戦うべく相棒を握りしめ駆けた。










※          ※          ※










「凄い………」


その言葉を漏らしたのはシャーリーだ。

先程から空中パネルで両者の模擬戦を皆と一緒に見ていたがその模擬戦の戦いを見て正直驚きを隠す事が出来なかった。

スカイがあのシグナムと粗互角といっても良い戦いを繰り広げていたからだ。

これで驚くのは当然だろう、シグナムは管理局内ではその名の知られたベルカ式の剣術の使い手でありその力で数々の事故や事件を防いでいたからだ。

模擬戦にしてもその剣捌きに此処の隊長陣や優秀な魔道師を除く殆どの局員達がなす術も無くやられていった。

今回の模擬戦にしても六課設立時と同時についたリミッターのお陰で魔力こそ落ちてはいる物の鍛えられた剣術や力まで落ちる訳ではない。

故にスカイの剣術がシグナムの剣術に勝るとも劣らない戦いぶりを見せている事にシャーリーは驚いていた。


「驚いてるみてーだな」

「え?」


行き成りの会話に驚くシャーリーを見てヴィータ少し苦笑しながらも語リ出す。


「まあ、別に不思議じゃねーだろ? 幾ら強くったってシグナムは最強でも無敵でもねーからな」

「でも……」

「それに此処は管理局、色んな世界の色んな奴らが集まってる場所だどんな奴が出てきても不思議じゃねーよ」

「……」

「つっても完全に互角って訳でもねーけどな」

「?」


シャーリーはヴィータが言った言葉に首を傾げる。


「まあ見てろって時期に解るって」


そう言うとヴィータはまた空中パネルに視線を戻す。

シャーリーは疑問に思いながらも再び二人の戦いを見届ける。










※           ※            ※










「ハア!」

「うわ!?」


先程から幾度も剣と剣のぶつかり合いが続いていたがスカイにとってそれの殆どが奇跡の様に感じられた。


「(早ぇー……振りも返しも俺様より数段…)」


そう、シグナムの剣筋はスカイのより明らかに早いのだ。

もしスカイが僅かでも油断して少しでもガードが遅くらせたらシグナムの容赦ない一撃で確実にやられていただろう

それほどまでにスカイとシグナムの差は違っていた。

唯一勝る点があるとすれば男女に生まれる力の差位な物だ。

しかしそれで勝てる程単純ではないのが戦いという物だ。


「しかし、これ程の剣術何処で学んだんだ?」

「俺様が時空管理局に入る前にとある人から教わったんですよ」

「ほお」

「厳しかったっすけどその分強くなれたんで感謝してるんですよ〜オマケに綺麗だったし〜言う事無いッス♪」

「……」

「止めて! そんな凄い冷めた目で見ないでー!」


シグナムはスカイのコロコロ変わる態度を見てため息を吐いた。

どうもこの手の相手は自分向きでは無い

まあシグナムが好む相手は、大抵自分の腕に自信を持つ正々堂々派である為こうして不満を思うのはある意味我侭なのかもしれないが……。


「さてと……ヴィーナス、俺様達が勝てる可能性は?」

『粗限りなく低いですが、スカイ様お得意の回りくどい攻め方ならまだ可能性はあります』

「それ個人的にすんごくキツイ言い方なんだけど……よし、それで行くか」

『解りました。スカイ様、カードリッジロード』


『ヴィーナス』のロードにより魔力を高めるスカイ。

どうやらスカイと『ヴィーナス』の作戦(?)が決まった様だ。

だがそれを易々とやらせる程シグナムも甘くない

この男はなのはやフェイトやヴィータ程の魔力や力は無いが油断したら負けてしまう。

シグナムが戦いの中で培った感がそう告げていた。

そうと決まれば行動を起すのは簡単だ。

シグナムはスカイ目掛けて駆け出す、それにスカイは受けてたつとも言わんばかりに同じようにシグナム目掛けて駆け出す。


「(もらった!)」


スカイが同じ行動を取ったのには内心驚いたがシグナムにとっては逆に好都合だ。

シグナムは『レヴァンティン』を構えスカイを一閃の元切り捨てようとするが……。


『スライドムーブ』


それは『ヴィーナス』の声が聞こえると共にスカイが消えた事により無駄に終わった。


「(な、何処に……!)」


シグナムが消えた慌てて探そうとするも


『エアブレード』

「もらったぜ!」

「!?」


突然背後からの声に振り返るも遅くシグナムは『風』を纏った『ヴィーナス』の一撃をまともに受けてしまう。

全身に鋭い痛みが走るがそれに屈する事なくスカイに即座に反撃する。


「ヴィーナス!」

『フラッシュ』

「ぐっ!?」


突如『ヴィーナス』のコアから放たれた眩い閃光に目が眩み又も攻撃をしそこねてしまった。


「よし、逃げるぞ! 全力疾走!」

「まて!」


そう言いつつシグナムは目を開けるが既にスカイの姿は無く唯木々が風によってなびく音だけがしていた。


「(やるな……。)」


シグナムは内心悔しい思いと共にあの男に僅かながらの賞賛をおくった。

スカイは通常の接近戦ではシグナムとの差がありすぎて勝てない事がわかったのだ。

だからあえてシグナムの不意や隙を作り攻め危なく感じたら逃げる戦法をとったのであろう

普通に見れば卑怯で片付けられるだろうが戦いに卑怯も何も無い、負けたらそこで終わりなのが戦いだ。

そこでシグナムは感じた……。

スカイは全力で自分を倒す気だと、ならば此方も全力で倒さなければ騎士として恥ずべき事だ。

シグナムは一度深呼吸をして辺りを見回す。

近くにスカイの気配はない、恐らく遠距離で何か仕掛けてくるのだろう

案の定それは正解であった。

ガサガサと近くの木々から此方へと近付く音がした。


「! (やはり来た!)」


その時、シグナムの背後の木々の間から出てきた一人の人影。

この場で出てくる人物などシグナムを除けばスカイ以外考えられなかった。

スカイは片手には炎の塊があった、恐らく隠れている時に予め作っておいたのだろう。


「喰らえ、必殺!」

『ファイアーボール』


スカイが炎の塊を投げると塊がバラバラになりまるで火の雨のように小さな火球が舞い散る。


「ふっ!」


シグナムは特に動じず一つ一つの火球を確実に回避していく

スカイはそれを見つつ地面に着地すると同時に即座に『スライドムーブ』を使用

即座にシグナムの死角まで自分の姿が残像になるほどの高速移動し『炎』を『ヴィーナス』に纏わせ大きく振るう

これで決めるとはいかないまでもかなりのダメージは期待出来るとスカイは思った。


「レヴァンティン……私の甲冑を」

『パンツァーガイスト』

「!?」


しかしシグナムから発せられた全身を覆う魔力光型のバリアにより空しくも防がれてしまう。


「やるな……『風』の魔法を使うから魔力変換資質の持ち主かと思っていたが次は『炎』の魔法か? 変換資質は一つな筈だが?」

「まあ…ちょっとしたレアなスキルみたいなもんですよ…」

「そうか……兎も角お前は全力で私と戦ったのだ、私も全力で答えよう」

「(やべ! 避けられねぇ!)」


スカイは自分の敗北を確信した『ヴィーナス』が止められた以上此の侭で逃げる事が出来ない。

仮に『ヴィーナス』を手放して逃げたとしてもデバイス無しではどう足掻いてもシグナムには勝てない。

防御してもこの威力の攻撃は防ぐ自信もない

もう……駄目だ…手が無い……スカイは諦めるしかなかった。

でも此処まで出来たのだから別に悔いは感じない。

スカイは其の侭動くのを止め


『紫電一閃!』

「ぎゃああああああああああああ!」

『スカイさまーーーー!』


そして自分の『炎』より熱い熱い一撃と『ヴィーナス』の叫びを聞きながら意識を失った。










※          ※           ※










「うーん……」


何か体中のダルサを残しながらもスカイは僅かながらも意識を覚醒させる……。

だが不思議におもった事は幾つかあった。

バリアジャケットは解除されてる上に上着がない為少し肌寒い。

肌から感じるのは地面の感触ではなくまだ少し固めのベットと毛布の感触……。

匂いも木々の匂いではなく生活感の無い部屋匂いと消毒液の匂い……。

そして目に写るのはびじょ……美じょ? 美女!?


「びじょーーー!?」

「キャ!?」


先程までのスカイの弱りきった表情は何処へやら今は本能に忠実な男と化し美女一点を見つめていた。

肝心の美女……シャマルは完全に驚いて何も言えない状態だったが。


「此処何処? 天国? じゃあ貴方天使!?」

「え? 天使? 私が……いやだ天使だなんて……うふふふふ♪」

『スカイ様、此処は現実世界の医務室です。』

「あら、そお?」


スカイは起きて早々気絶する前と何ら変わりのないノリノリのテンションで答える。

ある意味スカイの特効薬は「美女」なのかもしれない……。


「でも何で俺様此処に?」

『スカイ様がお敗れになった後、シグナム様が此処まで運んでくださったのです』

「成程ね」


スカイは『ヴィーナス』の説明で納得した後自分の体を見る。

特に目立つ傷はないが彼方此方に時々痛みが走る。

非殺傷設定で戦ったといえど大怪我を負わないだけで痛みは受けてしまう、ましてや相手はあのシグナムだ。

意識を刈り取られる程の一撃を喰らい、今この程度の痛みですんだのは今目の前でイヤンイヤンと動いてるシャマルの治癒魔法のお陰だろう


「(うし、痛みが消えたら早速デートに……)」


スカイはまた碌でもない思考を巡らせた後デートの申し込みをしようと起き上がるが……。


『スカイ様、デートのお約束も良いですけど報告しなくても良いのですか? 時間は等に過ぎていますよ』


『ヴィーナス』の言葉で自分の本来の目的を思い出す。

そして慌てて窓から外の景色を見ると見事な満月が二つ浮かんで辺りを照らしていた。

不味い…完璧に遅れた……スカイの顔に焦りと脂汗と絶望感が出てきた。

こうしては居られないとスカイはベットから慌てて出て掛けてあった自分の上着を取り素早く着る。


「じゃあ失礼します! えーっと……俺様の天使!」

『スカイ様、あの方はシャマル様です』

「あ、そっか……じゃあ失礼します! シャマルせんせー!」


そう言い残すとスカイは全力疾走で駆け出した。

そして当のシャマルはと言うと……。


「天使か〜癒しの天使って良いかも、うふふふふ♪」


未だに満面の笑みで別の世界にいっていた。










※          ※           ※










「すんませーん、退いてくれると助かるッス」

「あ〜っと失礼〜……此処ら辺なら大丈夫だよな?」

『ええ此処でしたら人目につき辛いです』


今スカイ達が居るのは隊舎の裏より少し離れた場所

何故此処に来たのかというと、もちろん自分達本来の目的である報告である。

しかし予定の時間は当に過ぎてしまっている。

あの部隊長は時間や仕事には他の部隊長より人一倍厳しい、もし過ぎる様な事があれば減給やら仕事倍増等粗地獄だ。


『スカイ様は部隊長様の雷の避雷針でしたからね』

「お気に入りって言ってくれよ〜良い意味で」

『スカイ様おふざけをする前に連絡をしましょう』

「………だな」

『あ、モニターは出しませんよ誰かに見られたら大変ですので』


それを聞いたスカイは内心ホッとする。

唯でさえ部隊長の怒鳴り声が怖いのに画像付きで怒鳴られたら寿命が又10年位縮むかもしれない。

それならふざけた行為等止めてしまえば良いのだがスカイの思考にそんな物がある筈もない。

というかその思考があったならこの男の暴走はとうに終わっていただろう。


「(大体可愛い子ちゃんが目の前にいてナンパしない男の方がどうかしてるつーの)」


としょうもない言い訳を考えつつも『ヴィーナス』に付けた通信機能を作動させる。

勿論誰にも盗聴されないよう秘密の回線を使用している。

そうして暫くすると通じたのか誰かの声が聞こえた。


『お待ちしておりました』

「すいませんでした……ってアレ? 部隊長じゃない?」

『はい、私は部隊長様は多忙でお忙しい為、私が代理を担当する事になりましたドゥーエと言います』

「そうなんですか〜俺様スカイ宜しく!(しかも良い美女の声こりゃ儲けもんだぜ)」


先程の暗い雰囲気も美女の声一つで消えてしまうとは本当に単純な男である。

そのノリの良いスカイの声を聞き苦笑した声を漏らしつつ本題に入る。

『それでは本日の報告をお願いします』

「了解です!」


スカイはふざけた口調を一度改めるとドゥーエと名乗った女性に全て話した。

六課の部隊長や人員は勿論の事、施設の設備や予算等事細かに説明した。

しかし初日程度では余り内部の事までは知る事が出来る訳もなく数十分にも満たない内に報告は終了した。


『成程……報告ありがとうございました、以後もこの調子で宜しくお願いします』

「いや〜こんな事楽勝ですよ〜まぁそんな事より今度デー『通信が切れました』あ…そ…じゃあ帰るか……」


通信が切れた事を残念に思いつつもスカイは『ヴィーナス』と共に隊舎へと戻る。

そんなこんなで一日が終了した主人公スカイ。

明日はどんな悲劇と絶望と喜びと悲しみが繰り広げられるのだろうか!

次回を待て!













おまけ1

「いや〜凄かったねティア!」

「なにがよ?」

「シグナム副隊長とスカイさんの模擬戦だよ」

「そう? あの男が勝手に逃げて勝手にやられただけでしょ?」

「そうかな〜良い勝負だと思ったんだけどな〜」

「何処がよ……いいあんた達二人もあんなの見本にしちゃ駄目よ、コイツの能天気思考もね」

「「あ、はい解りました」」

「えぇーーー!?」



おまけ2

「うふふふふ♪」

「シャマル……等々プログラムに異常がきたか……」

「くっ……すまねぇシャマルあたしらがもっとお前を見てやれば……」

「シャマル……お前の犠牲は忘れんぞ」

「うぅ……シャマル、逝っちゃやですーー!」

「皆、泣いたらアカン……最後に精一杯の笑顔で見送るんや……」

「………シクシク……私って何時からこんな扱いに………」










あとがき

どうもKaiです。

最初に予想通りグダグダな戦闘になってすいません此れが作者の限界です。

小説って本当に大変ですね……私も書く側になり思い知らされました。

後、スカイの魔法についてですが彼は基本接近戦主体ですけど遠距離系も使えるオールラウンダーキャラという事で。(えー

まあ、そこ等辺の細かい魔法や『ヴィーナス』の説明等は次回で書く予定です。

次回は原作第四話中心に進めていきますがスカイの存在で無茶苦茶になるでしょう……何だこの駄目主人公(ぁ


それではこの小説を読んでくださった方々に心からの感謝を……。







作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。