〜前回までのあらすじ〜
ハヤテはしゃっきんやろうになった!
ハヤテは『はんざいしゃのしょうごう(みすい)』をてにいれた!
ハヤテはふらぐをたてた!
ハヤテはふらぐをたてられた!
ハヤテはしんでしまった………
天の声(以下、T)「おお、ハヤテよ。しんでしまうとはなさけな「ちょっとぉぉぉぉぉおお!!!」
(借金野郎、乱入。)
T「おお、なんだゴミ虫野郎」
(天の声、姿は見えないながら、なんとなく肩をすくめたイメージ。サンタの声でも、コーチヴォイスでも、作者の声の想像でも、好きに脳内でアテレコすべし)
ハヤテ(以下、H)「いやいやいや、まず最初のあらすじ、いったいどこのレトロゲーですか!?しかも僕、死んでないですよねぇ!??
てか、いきなりなんなんですか、この全身に感じる殺意は!???」
(借金野郎、怒涛の突っ込み。どことなく、某ダメガネを彷彿とさせる感じで)
T「サンデー読者の総意だ。何なんだ、最近の原作での貴様のやり方は目に余る。何人落とせば気が済むんだ。
フラグ立てるだけ立てて回収無とか、どんな拷問?というか、ヒナギクさんがかわいすぎるぞこの野郎。畑先生あざーす!!」
H「……どこの電波ですかあなたは。というかこれ、明らかに楽屋ネタでしょう。そしてあなたは、怒っているのか萌えているのかどちらなんですか?」
T「貴様は殺したい。でももう死んでて殺せないのが悔しい。
ヒナギクさんは素敵過ぎるというか遅ればせながら人気投票V2おめでとうございます。愛しています。
そして畑先生はネ申」
H「……いろいろ突っ込みどころが多すぎて……って、え?死んだ?誰が??」
T「覚えていないのか?貴様はクリスマスイヴ、両親の1億5千万の借金を押し付けられ、人身売買の893から逃走。
現状打破のため、公園で見つけた手頃な少女相手に身代金目的の誘拐を試みるも、失敗。
その後、別のチンピラ誘拐犯から罪滅ぼしとまでに少女を助け出すも、追いついた勢いのまま乗用車にはねられた貴様は……」
(天の声、いったん区切って重苦しい空気。借金野郎、ゴクリ)
T「腕はもげるは足はちぎれるわ。右の腎臓と肝臓と膵臓と脾臓が破裂し、左目は飛び出るわ側頭部がえぐれるわ。
おまけにろっ骨が5本折れて、うち3本が両肺に突き刺さり。下手に生命力が高いせいで即死もできず、
血反吐を吐きながらたっぷり10分苦しみ抜いて―――」
H「……そ、そんなにひどい死に方を僕は……」
(とてもじゃないが映像にはできないイメージがバックに。借金野郎、ガクブル。と、ここであることに気づく)
H「……それでも、あの子は無事だったんですよね?」
T「……ぬ?まぁ、奇跡的にかすり傷一つないが。」
(天の声、意外なリアクションに間が空く。その返答を聞いて、借金野郎、さびしげに微笑)
H「だったら、もういいかな?……帰る家も、もうきっとないだろうし……どうせ、僕が死んだって、悲しんでくれる人なんて……」
(天の声、呆れたように溜息一つ。そして、反眼で睨みつける。)
T「誘拐犯の分際でいっぱしの悲劇の主人公気取りか?三途の川の渡し賃(六文銭)すら持ち合わせのない、借金まみれのマダオ野郎。」
H「ぐはぁっ!!」
T「たとえ未遂とはいえ、貴様のやったことは、十二分に犯罪に問える行為だということに気が付いているのか?借金まみれのマダオ野郎。
大事なことなので二回言ってみた。」
H「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………もう二度と、警察のが厄介になるようなまねはおたしませんから!どうか許してください………」
……俺、自重。
ハヤテのごとく!〜Hayate the lyrical butler〜
第三話『恐らく原作においては二周目以降に発生する選択肢とそこから派生するルートに関する考察』
「……めんなさいごめんなさいごめんなさ………あれ?ここ……どこ?
………そういえば、さっきまでなんかあの世っぽいところで神っぽい人と……ということはここは天国?」
そんないかれた夢(夢ったら夢)から目覚めたハヤテは、某人型汎用決戦兵器の初号機パイロットのような反応はせずに、純粋に疑問を口にした。
……流石に、目を開けて最初に視界に入ってきたのがシャンデリアでは、ネタに走る余裕はないだろう。
そんなわけで、戸惑いは収まらず、思考は迷走する。
(ていうか、このの豪華さ……ぶっちゃけありえねーだろ?てことはあれもこれも夢?
いや、むしろあの世とこの世をさまよう中で貧しかった俺の潜在意識が作り上げた仮想空間に違いない!)
いや、おまえのその思考こそが『ぶっちゃけありえな〜い!』だけど、という私のつっこみは届かない。
(ありがとう、天の声……満喫させてもらいます……)
……ああ、うん。もういいやそれで(←投げやり)
さて、主人公がそんなイベントフラグというか、死亡フラグっぽいものを立てている頃。
「ふむ、さして異常はないでしょう。2,3日で完治するでしょうな。普段からかなり体は鍛えていたのでしょう。
……頭はもとから悪そうですが。では、また何かありましたらお呼びください。」
などと、どことなく一話の回想で出てきたサンタっぽい医者(気のせい。つっこみは可)が、結構失礼なことを言いつつ帰って行き。
「……それで、忍お嬢様。あの男性とは、いったいどのようないきさつが?」
「ん?どういう事?」
帰宅し、魂の正装(メイドさんはジャスティス)に着替えたノエルは主に事情説明を求めていた。
「……あのスピードの乗用車に自転車で追いつき、そのまま轢かれても、起きた事態を考えればほぼ無傷。とても、並大抵の人物とは思えないのですが……」
至極当然の疑問である。ただでさえ彼女たちは、主従ともども厄介な出自を抱えている。ここにきて、こんなイレギュラーを抱えこむのは得策とは言えない。
それに対し、忍は非常にあっさりと言ってのけた。
「そりゃあ、私の執事になる男の子だもん。きっと体は新造細胞でできていたり、勇者王なエヴォ○ュダーだったりするんだよ。」
「……人間でなくてよろしいのですか?」
頬にギャグ汗を浮かべつつ、若干ひくノエル。なまじ、ありえないと断じることができない分ややこしい。
「まあ、お医者さんもなんか気にした感じじゃなかったし、大丈夫じゃない?
………本当にそっち関連なら、もっとましなコンタクトの取り方があったはずだし……どっちにしても、ね。」
「……はい。」
そう、もし同族ならば、何かしら感じ取れるはずだし、どこかの親戚のように自分たちの財産目当てにしろ、そうでないにしろ、やり方は別にいくらでもある。
…………少なくとも、車に轢かれるよりはましなやり方が。
ならば、その一点に関して言えば少年は白であるといえる。聡明な従者はそこを了解し、次いで新たな疑問をぶつけてみる。
「……では、彼とお嬢様はどうやって知りあったので?ご学友ですか?」
「ううん、今日、というか今夜初めて会った子だよ?」
「………は?」
従者、再びフリーズ。さすがにその可能性は予想外だった。少なくとも彼女の知る主は、初対面の相手にあそこまで気を許したりはしない。
ゆえに、少なくとも顔見知り程度の付き合いはあるものだと思っていたが………
「いや、ね?その、なんていうかさ………告白、されちゃったんだ。」
「………………………………は?」
ザ・○ールド!本日最大の衝撃が、ノエルを襲う!
ぶっちゃけ、こんな女の子らしい表情初めてみました。とか、いきなりお嬢様は何をおっしゃっておられるのでしょうか?とか、一瞬でいろいろ駆け巡りすぎた。
冗談抜きに、オーバーヒートが起きてしまいそうなほどに。
「ああ、ノエル!?ごめん、一からちゃんと説明するから!だから戻ってきて!!?」
そのままのろけようかと思っていたお嬢様であったが、大事な従者がギャグで死にかけているとあって、瞬時に現実へ復帰した。
〜しばらくおまちください〜
「……なるほど、不良少年から助けていただき、その後話をするうちに打ちとけ、そして……と。それで、席を外した彼を待っている間に、犯人にさらわれて……と。」
「うん、大体そんな感じ。かっこよかったんだよ?さっそうと現れて、こう、某邪眼の男なバトルの天才を彷彿とさせる感じで。」
(注:あくまで、誘拐の獲物をとられそうで焦った故の犯行です)
「その後も、すごく気さくで、そのくせちょっと照れてる感じがかわいくて………なんか、おひとよしって感じで、助けてもらったはずなのに、『放っておけない』って感じで〜」
(注:それも、犯罪者ゆえの葛藤です。少なくとも本人的には。)
「で、その……告白されて、ね?君をさらいたい、とか……命がけなんだとか……//////」
(注:……もはや何も言うまい………)
完全に恋する乙女な忍に対し、ノエルは内心、思考を巡らせていた。
(……確かに、お嬢様を助けていただいたのは事実。しかし、それでは私との会話に矛盾が………
………悪い人ではないのは確定としても、これは、いろいろと確認をとるべきかもしれません………)
主を守るものとして、不安要素は可能な限り取り除かなくてはいけない。
たとえそれが、主が信じる、そして自分もどこか気を許してしまう、あの少年を疑うことであったとしても。
まあ、とりあえずさしあたっての疑問はと言えば。
「それで………さくら様や、すずかお嬢様やファリンには、どのようにご説明なさるおつもりで………?」
「う!?………どうしよっか?」
この家の残りの住人二人と、主の後見人への説明であった。
「……まず、あの方はどういった素性の方なのでしょうか?そういえば、お名前もまだ伺ってはおりませんが?」
まあ、無難な線から質問してみる。主に協力して説明するにせよ、排斥するにせよ……最低限の情報がなくては、そもそも判断が下せない。
………のだが。
「う〜ん、どうなんだろうね?どう考えても悪人ではないだろうけど………」
「………………………………………………は?」
「いや、私もよくわからないんだよねぇ?よくよく考えたら、自己紹介すらしてないし?まあ、あんまり見かけない顔だし、
もしかしたらこの町の人じゃないのかも、っていうぐらいしか……」
「……そうなのですか。」
もうここまで来ると、いっそあきれるよりも感心してしまう。そんなほとんど何もわからない少年を、あそこまで信頼できる自分の主にも。
本来、他者とは一線を引いて接する、どこか臆病ともとれる主を、そこまで信頼させてしまう彼の少年にも。
「あ、でもでも、名前はわかるかも?」
「?どういうことですか?」
「うん、彼に借りたコートのポケットに、確か封筒があって。そこにあて名が書いてあったから、多分それが彼の名前かな、って。」
はい、と封筒を差し出され、何やらイラつく事態の文面を見れば、確かにそこには『ハヤテ君ヘ』との宛名が。
「ハヤテさん……ですか。しかし、この封書はいったい?『クリスマスプレゼント』とありますが………」
「さぁ?さすがに、中は見てないよ。」
まあ、常識的にいえば正論ではある。しかし、一切の手がかりがないこの状況。唯一といっていい手がかりだ。
「………心苦しいですが、中を改めてみましょう。彼という人物について、あまりに情報が少なすぎます。」
忍も、しぶしぶ承諾した。罪悪感よりも、『好きな男の子のことを知りたい』という乙女心が勝ったらしい。
そして、中の手紙を読み上げる二人。
その探究心が、この世の無情を教えることとなる。
一方そのころ、借金野郎はと言えば……
「いやぁ〜、さすがは僕の夢。ぶっちゃけありえない豪華さだね。」
屋敷内を散策していた。
根っからの貧乏人である。この世界にはおそらく登場しないどこかのツンデレくぎみー(notアリサ)や、いつかの幼き日に執事を務めた初恋の人の城には負けるが、
溢れんばかりのボウケンソウルが刺激されるのも、仕方ないのかもしれない。
そうして、あちこち見て回るうち、人気のない屋敷の中で、話し声が聞こえる部屋を発見した。
(?ここが天国なら、僕と同じく逝っちゃった人か?もしくは天使?夢の中なら、ボケ両親か……アレはもういい。
というか、こんなところで優雅にくつろいでいたらぶっつぶしてやる……)
そして、扉を開けたそこには
なんか、むっちゃ微妙な顔をした、どっか見たことある気がしないでもない少女と、これまた見覚えのある、なぜかメイド服をまとった美人さんがいた。
数分前、好奇心と使命感に負けて手紙を開けた主従は、その選択を現在進行形で絶賛後悔中であった。
「………何よ……これ……」
忍は思わず茫然とつぶやいた。
彼女とて、別段家庭環境に恵まれていたわけではない。両親の死に、涙一つ流せはしなかった。
それでも、何かと面倒を見てくれる叔母、気弱なところもあるが、穏やかで優しい妹、自分たちに心から仕えてくれる姉妹の主従。家族と呼べる人、温かな場所。
それは、当り前のようにそばにあった。
しかし、それはとても恵まれたことなのだと、理解した。させられてしまった。
「……これは、さすがに……」
ノエルとて似た様な心境である。
金のため。自身の享楽のために、自分の血を分けた息子を、売り飛ばす。 一片の、罪の意識すら持たず。
人ではないと、自身を自覚している彼女をしてなお、この仕打ちが常軌を逸していると断ずるには十分すぎた。
あまりの予想外っぷりに、なんとも重苦しい空気が流れるが、それは破られた。
その主な原因たる、借金野郎の手によって。
(…………重い。空気が重い。これがあれか?絶界ってやつなのか?!!)
とりあえず入ってみて、予想外の重い空気をようやくハヤテは察した。
これが自分の夢だという妄想はすでに消えていた。いくらなんでも、ここまでカオスな状況はありえないだろう。そんなこと、別に望んでないし。
「………もう、起きられても大丈夫なのですか?綾崎ハヤテ様?」
と、思い悩んでいるうちにメイドさんに話しかけられた。なぜかフルネームで。
「え?あ、はい………というか、僕の名前………」
疑問に思い尋ねたところ、示されたのは一通の封筒。
「あ……」
「……まことに失礼ながら、中身を改めさせていただきました……大変な事情が、おありのようで。」
「い、いえ!なんというか、まあ……お気になさらず?(はじめてでもないですし……)」
真剣に謝罪してくるメイドさんに、ギャグ汗を浮かべながら答えるハヤテ。
「ですが……」
彼女はいまだ納得していないようだが、彼女には命を救われた。まっとうな道に戻るきっかけを与えてくれた恩人だ。
むしろ、自分で名乗れなかったことを恥じるべきだろう。
「本当に、お気になさらず。大丈夫ですから。」
だから、精いっぱいの感謝を込めて、ほほ笑んだ。
と、そこに
「まあ、なんにしても、君が無事でよかったよ。血まみれだから、心配してたんだよ?」
二人をなんだかほほえましそうに眺めていた忍が声をかけた。
「……!君は……というか、これって、どういう状況?」
「あっははは……自己紹介、まだだったよね。私は、忍。月村忍。状況については……ま、説明するから、座りなよ。」
そして忍は、ハヤテの活躍で無事助け出されたこと、
実際は(何故か)軽傷ですんでいたが血みどろだったため、親戚に連絡して医療スタッフをヘリで派遣してもらい、自宅へ運び込んで治療したこと、
互いの自己紹介も忘れていたため、ハヤテの持ち物を探ってしまったことなどを説明した。
「とまあ、こういうわけなんだけど……」
「そうなんだ……なんか、ゴメン。いろいろ、迷惑かけて……」
助けに行ったはずなのに、結局助けられた。何とも情けない話だと思った。
「そんなことないよ!ハヤテ君がいなかったら、今頃……本当に、ありがとう。」
そんなハヤテに、忍は満面の笑みを見せた。なんというか、おとめちっく。
「……それで、公園でのことなのですが………」
と、そこに割って入るノエル。本来の目的を果たすべきだと考えた。なんか、ほっといたらすとろべりぃな展開になりそうだし。置いてけぼりにされそうだし。
一方、借金野郎はその言葉に硬直していた。
(ま………マズイ!!ばれてる?!ていうかばれてる!?誘拐、未遂とはいえ重罪だ……しかも、相手はあからさまにお金持ち!
この日本で、自家用ヘリとか平気で飛ばせるほどの!
やっぱり、あれなのかな!?社会的に抹殺とか、物理的にジゴクに落とすとか、むしろ両方?!!
どうする、どうするんだ僕!選択肢はないのかライフカード的に!!順当にいけば『逃げる』『ごまかす』『謝る』『諦める』『開き直る』だろうけど……)
内心、すさまじい勢いでテンパっていたが。というか、いつから貴様はクウ○になった。
「あの……」「ハヤテ君……?」
そんな借金野郎の様子に、いぶかしんだ二人が声をかけ、
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!誘拐なんてもう二度と―――――――!」
「…………へ?」「はい…………?」
「……………………あれ?」
注:自白。隠していた事実を自ら打ち明けること。
注:自爆。今のこいつのような状況。
濁点が付くだけで、ずいぶん印象が変わります。日本語って不思議だね☆
「………えぇと……少し、お話を聞かせていただけますでしょうか……?」
「……ハイ……」
……その後、被告側の弁明は30分以上続いたという………
「…………というわけでして……ほんの、出来心だったんです………反省してます、公園の前で嘘をついたことも謝ります!二度とこのようなことはしないと誓います!
ですから、その………警察だけは、勘弁してほしいというか……取り立ての人に突き出すのも、できれば………」
と、地に額をこすりつけんばかりに謝罪するハヤテ。されてるほうの二人はというと、結構複雑な感情であった。
ノエルは、この少年に抱くべき感情がわからなかった。憎むべきか、怒るべきか。それとも………許すべきなのか。
(……お嬢様に対してしたことは、確かに許せるものではありません………しかし、結果的に助けてももらい、計算的にはプラスマイナスはゼロ。むしろプラス。
このやり取りでも、不思議と嫌悪感を感じません……というか、境遇的に、むしろ同情してしまうのは私がおかしいのでしょうか……
………けれど。どちらにせよ、お嬢様は………)
公園で流した涙。救ってみせると、誓ってくれた背中。そこに嘘はないと、感じ取ってしまったが故に。
けれど、確かに生まれてしまい、そして潰えた想い故に。
一方、忍は考えていた。
(……そっか……さらうとか、そのまんまの意味だったんだ……そりゃ、そうだよね。
いきなり、そんな愛の告白なんて………あるわけないもの。馬鹿みたいだ……て言うか、馬鹿だよね?私………)
裏切られたわけじゃない。自分が勝手に勘違いしただけ。勝手に浮かれて、勝手にはしゃいでいただけ。
けれど、胸の痛みは治まってくれない。目がしらに、熱が昇るのを、こらえるだけで必死だった。
けれど、思う。ならばなぜ、こらえるのか。悲しみを、吐き出してしまえばいいのに。恨み事を、吐きかけてしまえばいいのに。
身勝手な怒りを、ぶつけてしまえば、いいのに。
けれどそれは、決して取ってはいけない選択だと理解していた。思考よりもはるかに深いところで、心が叫んでいた。
(どうして……………あ)
そして、気づいた。なぜ、自分が惹かれたのか。それは、窮地を救われたからじゃない。
「……ねぇ、ハヤテ君。」
「は、ハイィ!」
何を考えたのか、素っ頓狂な返事をするハヤテに、忍は静かな声で問いかけた。
「公園で………私にさ、上着……かけて、くれたよね?あれは……どうしてだった、のかな?」
それは、きっと本当の始まり。自覚したきっかけはあの告白(もどき)であったとしても、自分が彼を想うようになったのは、あのやりとりからだ。
助けてくれたのが打算で。告白の言葉は勘違いで。
けれど、
「…………?言ったでしょ?女の子が、体冷やすのはよくないって。そこでほっといたら、まずいじゃない、男の子として。」
何一つ気負わず、当たり前のように答える彼。だからわかる。
あの時触れた、感じたぬくもりは、確かにあったものだと。
(………そっか。そうなんだ、私…………ホント、馬鹿だ。)
言葉の上では、同じ結論。だけれど、そこにもう悲しみはない。
一方通行だったことは残念だけど、終わりじゃない。始まってもいないのに、終わりにするなんて認めない。
届いていないなら、届ければいい。ありったけの力で、伝えればいい。
確かに芽生えた、この想いを。
だから、もう一度。世界に、彼に、自分に。全てを懸けた宣誓を。
「ハヤテ君………私の執事、やらない?」
一方のハヤテは、只管に怯えていた。
(ど、どどどどどどどどどどどうしよう!??なんか、空気がヤバい!あれだ、『ダーイ』とかって、地上最強の用務員こと某大貫さんバーサーク5秒前のような!
僕は一体いつの間に、カトリーヌをとらえて殺して煮つけて彼女に食べさせたんだ??!!)
…………わからない人は、ニコニコする動画で『ふもっふ』『大貫善治』で検索してください。
ずっと沈んだ表情をしていたかと思えば、すごく真剣な顔で、誘拐(未遂)時のやり取りについて尋ねられた。自分では内心反省していた、他愛ないやり取りについて。
特に考えることもなく、その時思ったままを答えた。
その後、少しうつむいたかと思ったら、どこかすっきりとした、晴れ晴れとした決意を浮かべた笑顔で、彼女はハヤテを見つめた。
あまりにも華やかで晴れやかなその笑みは、一瞬ハヤテの心を奪った。
しかし、同時におびえていた。
(え?何そのあまりにさわやかな微笑み!?あれかな、どこかの朝倉さんよろしく、『助けて』→『うん、それ無理』って結論が?!)
そして、その言葉を、聞いた。
「ほら、住み込みの仕事、探してるって言ってたじゃない?自慢じゃないけど、うち結構広いからさ。男手が必要かなぁって思ってたんだ。というわけで……どう、かな?」
明るく、気楽に。しかし、拒絶を恐れて震えそうになる声と体を押さえながら、それでもありったけの想いを込めて。
ノエルは、驚愕していた。
臆病なところがある主。想いは勘違いで、きっとひどく傷ついた。
けれど、それを乗り越えて、一歩を踏み出そうとしている。
(……本気、なのですね………お嬢様。)
そして、彼を見る。
きっと孤独な少年。行き倒れていて、嘘をついて。マフラーを巻いたら、何故だか泣いた。
そして、主を変えた少年。
だからだろうか。先ほどまでの複雑な思いは、いつしか消えていて。
「いかがでしょう、ハヤテ様。」
代わりに、自分でもなんだか分からない、けれどもほのかに温かい。そんな何かが、灯った気がした。
ハヤテは思う。
(な……なんて優しい子なんだ………誘拐なんて馬鹿な真似をした僕を許し、あまつさえ住む場所と仕事まで………!!)
単に優しさからだと思うあたり、アレなんだが。
それでも、心に届く思いがあるから。
「………やります!やらせてください!!」
そして、少女の手をとって、誓った。
「お任せください、お嬢様!!この綾崎ハヤテ!命を懸けて、お守りして見せます!!!」
「ヤダ………ノエルが見てるってば……//////」
…………この辺は天然なんだろうな、とノエルは悟った。だから
「……それでは、お夜食でもお持ちいたしましょうか……?」
「あ、お願いします!」「うん、よろしくノエル!」
…………軽く、流すことにした。
のえる は 9999999999 の けいけんち を えた!
のえる の れべる が 57 あがった!
のえる は するー を おぼえた!
…………だから、俺自重………
第4話へ続く!
A★TO★GA★KI〜という名の公開処刑〜
いつものあとがきを始める前に。
まことに、申し訳ありませんでした。
事情はいろいろあったとはいえ、自分で言った制作予定をはるかに遅れてのこの現状。言い訳の仕様もありません。
しかも、この続きは、夏休み前にもう一回投稿できればいいかなぁ〜、というレベル。
見捨てられても何も言えません。しかし、自分でできる限り頑張っていこうと思うので、生温かい目で見守っていただけたら、と思う次第です。
………では、いつもの座談会を―――――
作者(以下、S)「…………………」
ハヤテ(以下、H)「………あの、作者?」
(……返事がない。ただの屍のようだ)
H「いやいやいや!一応、この人進行役なんですけど!?トークテーマとか、まだ何も聞いてないんですけど、何この惨状!??」
(借金執事、赤黒くなっている『ナニカ』を指さし叫ぶ。具体的に言うと、正座した脚の上に、石畳を30枚ほど抱きしめている。古典的な、時代劇風反省ポーズ)
H「いやいやいや!反省っていうか、なんかもう人生丸ごと振り返ってるんですけど?!走馬灯的意味で!」
(ダイジョブダイジョブ〜)
H「いやいやいや!それ、まったく大丈夫じゃない人ですよね!?意外に粘ってますけど!!っていうか、作者これなのに、天の声は誰やってんですか!??」
(ちっちゃいことは〜気にすんな!それワカチ○ワカ○コ〜)
H「いや、それもっと気にするべきことを気にしないネタでしょ!??」
ナギ御嬢(以下、N)「ほうっておけ、ハヤテ。」
(御嬢、乱入)
H「お、お嬢様!?どうしてここに?!」
N「作者がいなくていい加減グダグダなんでな。今回のあとがきは、タイトル通りの感じらしい。」
(借金野郎改め借金執事、台本をみる。)
H「……なるほど。ここでの行動が、別ルートにつながる道になるわけですか。」
N「忌々しい限りだがな。実際にどうオチをつけるかは、いろいろ悩んだらしい。それもあっての、間半年だ。」
H「いや、実際は受験と引っ越しで5カ月、残りの部分が学業とそれ……という感じで。」
(作者だったもの、同意する雰囲気。)
H「………まだ、息があるみたいなんですけど、アレ……」
N「気にするな。どうせ、次回では、というかこの後の拍手返信では普通に、強制的に復活させるはずだからな。せいぜい地獄を見させておけ。」
(御嬢、生ゴミを見る目で言う。いや、実際似た様な(ry)
H「……じゃ、話し続けましょうか。」
N「うむ。実は今回、この第3話のみで、実に5つのBAD END(うち死亡エンド4)があったりする話とかな。」
H「へぇ〜、それは物騒で…………って、えぇぇぇええええ!!???」
N「何をそんなに驚いているのだ?」
H「いやいやいや!何故そんなことに?!どこの型月ですか僕?!」
N「うむ。選択一つで即死だな。暇なら、どこでどう死ぬのか、考えてみるのもいいだろう。
作者的に、実は死にそうな選択肢だけど実は死なないとか、選択の余地がなさそうで実は選択肢だとか、
選択肢なのに、実は無限ループなだけとか、いろいろ無駄に考えたらしいからな。」
H「いやいやいや!僕死ぬこと前提ですか!?て言うか、あれ?なんでエンドロール?なんで照明消えるんですか!なんで………」
(フェードアウト。本日のEndingは『ローレライ』)
〜拍手のお返事〜
みなさん、真にありがとうございます。
>見たことがない展開でこれからが楽しみです。
有難うございます。こっから先は、筋はなぞりながらも、原作とは違う展開を目指していくので、応援していただけたら嬉しいです。
<志之司 琳さんへ
文末の≪があり読みにくいです。
また改行もできてないうえ、新しい行には、一段あけるという基本的なところがだめです。
設定は嫌いではないのですが、読む気が半減してしまいます。頑張ってください。
………すいません。ほんと、アナログでだめなやつです。
改善は心がけていますが、原因もいまいち判明せず……今回は、大丈夫だといいのですが。
頑張る気は満々です。ご指摘、ありがとうございました!
>志之司 琳さんへ
これからのハヤテの行動や天然ジゴロといわれる実力など楽しみにしています
有難うございます。原作には到底及ばないのは当たり前ですが、なるべく迫れるよう精進していく所存です。
>まだ途中ですが、奇をてらい過ぎていないので安心して読める感じがします。
有難うございます。
自分が一番気をつけたいと思っているのが『バランス』です。
原作のなぞり具合、原作からのの離れ方。うまくやっていけるよう気をつけていくので、応援お願いいたします。
>最後まで読ませて頂きますね。執筆頑張って下さい。
有難うございます。本当に!
次回はもっと速く、できれば最低でも月一で更新していくつもりです。
応援お願いいたします。
>お・も・し・ろ・す・ぎ・る
暇なのでてきとーにssあさりしていたら見つけたので読んでみましたが、とても素晴らしい作品だと思います。
ぜひとも続きを書いてほしいです!!
なんとありがたい!
メールへの返信もここでまとめて、という形になりますが、まだまだ続けるつもりですので、応援お願いいたしますね。
今回は以上です。
作者はへたれのチキンですので、批評・批判は、ありがたく受け止めていく所存ですが、柔らかくしてもらえると寿命が延びますので。
なお、拍手は管理人さんが手作業で仕分けをしておられます。
拍手への宛名の記載に、どうかご留意いただけますよう、ご協力お願いいたします。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメール、投稿小説感想板、