東方幻想郷〜刀夜録〜プロローグ
現世より浮き出た者たちが集いし郷、幻が行き交いその果てに辿り着く郷、想いが交差し合い行き場をなくした先にある郷、
すべての“モノ”に忘れられた“モノ”が住まう郷、いつしかそこに住まう“モノ”達はその郷をこう呼んだ。
「幻想郷」と……
夜も深くなって来た頃、とある場所にて1人の人物が誰かを待つかのようにたたずんでいた。
月が隠れてしまっているのでどのような人物かはわからない。
「来たわね」
その声は女性のものであった。その女性の声がその空間に響き渡ったとともにその場にもう1人、誰かの気配が現れる。
しかし、その人物もまた隠れてしまっているのでどのような人物かはわからない。
『私を呼び出すだなんていったい何なの?』
月の光がないため、どのような人物かはわからないが数は1人、声からして若い女性のようである。
これでこの場にいる人数は2人……既にいた人物は目的の人物が来たためか話をし始めた。
「単刀直入に言うわ。実はあなた達に幻想郷に来て欲しいの」
『何でまた急に?大体私が幻想郷に行けないことはあなたは知ってるでしょう?』
後から来た女性は何を今更といった風である。その声からは半ばあきらめの色が見える。
顔が見えていたならさぞ憂いた表情をしていることだろう。
「ええ、知ってるわ。そこは私の“能力”で何とかなるわ」
『あなたの“能力”で……』
「ええ、そうよ」
『何が目的なの?』
間髪入れずに後から来た女性は問いただした。相手が何かを企んでいることを確信しているかのように……
「いや〜ね〜。あなた前に幻想郷に行ってみたいって言ってたじゃない。そんな親友の願いを叶えようと思って」
既にいた女性心外だと言わんばかりにその問いに答えた。しかしその言葉にはこれっぽっちも心外と思っているといった感じがない。
『白々しいわね。それを言ったのは100年程前のことよ?今になってそれを持ち出すなんておかしいわ。
それに……さっきあなたはこう言ったわ。あなた“達”と』
言っている事と態度が一致していないことに少しばかり腹が立ったのか、
後から来た女性は少しばかり言葉に棘を含ませながら話の核心を突いた。
しばし、沈黙の時が過ぎる。
「……」
『私に何をさせるつもり?“八雲 紫”(やくも ゆかり)?』
「うふふふふふふ」
既にいた女性……紫は急に笑い始めた。
しかし下卑たる感じではなく本当に楽しく、どこか優雅な感じまでするような、
それでいて底が見えない、そんな掴みようがない笑い方であった。
「流石に貴女ほどの神に小細工は無駄のようね。ごめんなさい。謝るわ。だからそう怖い顔しないで?」
『……はぁ、で?何をすればいいの?』
そんな紫の言動に後から来た女性、紫曰く神様は早く続きを言えと促した。その声からはあきらめの色しか見えていないのだが。
「あら?引き受けてくれるの?」
『どうせ嫌といっても無理やりやらせるつもりだったくせに』
「……そんなことないわよ?」
『今の間だけで十分よ。それに……』
紫のわざとらしい返答に呆れ果てた神様であったが急にその空気がやわらかくなった。
「?」
その時、雲の切れ間から月の光が差し込み2人がいる場所を照らした。
ようやく2人の姿が見え始めた、その姿とは……
『私も幻想郷に行けるの、楽しみなのよ』
神と呼ばれた“少女”は本当に楽しみで仕方がないといった風の笑顔であった。
そんな笑顔を見て紫は、“妙齢の女性”は早々に用件を伝えることにしたようである。
「そう。……じゃあ用件を言うわ。ある男性も一緒に幻想郷に連れてきて欲しいの」
『それだけ?』
紫の言った用件に思わず神様は聞き返してしまった。無論、本当にそんなことでいいのか?という意味を込めて。
「ええ、それだけよ」
『怪しいわね。何を隠してるの?』
神様は紫を疑い始めた。
当然である、たった1人連れて来るだけで今まで自分が行くことが出来なかった幻想郷に行けるなどとは到底思えなかったためである。
「本当にそれだけよ」
『じゃあその男性は何者なの?妖怪?なら男性なんて言い方しないだろうし、もしかして、神の一柱?』
神様はう〜ん、う〜んと言いながら様々なことを思考していた。しかし見た目には少女が悩んでる様子にしか見えない。
そんな様子に紫はクスリと笑いながら答えを述べた。
「いいえ、“人間”よ」
そう紫が言うと再び月が雲に隠れて暗闇がその空間に広がった。
次に月が顔を出した時、その場には少女も妙齢の女性もいなかった。
あとがき
初めまして、ブレイドと申します。この度こちらの投稿小説に投稿していたものを修正致しました。
一応自分のHPでも書いているのですがこの度は初投稿ということでまだまだ不安もあります。
おかしい点等がございましたらどしどしお申し付けください。修正していく所存です。
書く速度は遅い、内容は陳腐といった作品ですが、応援していただけると幸いです。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。m(_ _)m
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